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  • 特開-回生量制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142883
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】回生量制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/26 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B60L7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055264
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 智
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CB02
5H125DD11
5H125DD19
5H125EE42
5H125EE57
5H125EE62
5H125EE63
(57)【要約】
【課題】コースト回生制動において、スリップを抑えることができ、かつ摩擦制動の過度の使用を抑えることができる回生量制御装置を提供すること。
【解決手段】モータジェネレータ2と、車両重量を推定する車両重量推定部51と、道路勾配を推定する道路勾配推定部52と、コースト走行中でコースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していると判定した場合、推定された車両重量が大きいほど回生トルクを大きくする回生制動部53と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のコースト走行時にモータジェネレータの回生トルクによってコースト回生制動力を発生させる回生制動部と、
車両重量を推定する車両重量推定部と、
道路勾配を推定する道路勾配推定部と、を備え、
前記回生制動部は、コースト走行中で前記コースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していると判定した場合、推定された車両重量が大きいほど前記回生トルクを大きくする回生量制御装置。
【請求項2】
前記回生制動部は、コースト走行中で前記コースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していないと判定した場合、車両重量に関わらず所定の回生トルクを前記モータジェネレータに発生させる請求項1に記載の回生量制御装置。
【請求項3】
前記所定の回生トルクは、前記車両が空車状態での走行時に所定の制動力を発生させるトルクである請求項2に記載の回生量制御装置。
【請求項4】
前記所定の制動力は、所定の摩擦係数の路面においてスリップを防止できる制動力より小さくする請求項3に記載の回生量制御装置。
【請求項5】
前記回生制動部は、コースト走行中で前記コースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していると判定した場合、道路の勾配が急勾配であればあるほど前記回生トルクを大きくする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回生量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、惰性走行時に回生制動(コースト回生)を行なう車両において、スリップが発生した場合には、コースト回生制動トルクを減少させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6056340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
安全設計の観点からは、スリップを最小限に抑えるには、ウェットな路面のような低μ路を想定し、低μ路でもスリップしない最小の制動力にコースト回生制動トルクを設定しておけばよい。
【0005】
一方で、そのように設定すると、降坂路では十分な減速が得られず、摩擦制動の過度の使用によるフェード現象が生じる可能性が高くなる。こうしたフェード現象は、重量が大きい車両ほど、発生する可能性が高い。
【0006】
さらに、電気自動車では、従来のエンジンブレーキを使用することができないため、代替となる減速手段が求められる。
【0007】
そこで、本発明は、コースト回生制動において、スリップを抑えることができ、かつ摩擦制動の過度の使用を抑えることができる回生量制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、車両のコースト走行時にモータジェネレータの回生トルクによってコースト回生制動力を発生させる回生制動部と、車両重量を推定する車両重量推定部と、道路勾配を推定する道路勾配推定部と、を備え、前記回生制動部は、コースト走行中で前記コースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していると判定した場合、推定された車両重量が大きいほど前記回生トルクを大きくするものである。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、コースト回生制動において、スリップを抑えることができ、かつ摩擦制動の過度の使用を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係る回生量制御装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る回生量制御装置の車両重量に応じた回生トルクの例を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る回生量制御装置の勾配率に応じた回生トルクの例を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る回生量制御装置の回生トルク制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る回生量制御装置は、車両のコースト走行時にモータジェネレータの回生トルクによってコースト回生制動力を発生させる回生制動部と、車両重量を推定する車両重量推定部と、道路勾配を推定する道路勾配推定部と、を備え、回生制動部は、コースト走行中でコースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していると判定した場合、推定された車両重量が大きいほど回生トルクを大きくするよう構成されている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る回生量制御装置は、コースト回生制動において、スリップを抑えることができ、かつ摩擦制動の過度の使用を抑えることができる。
【実施例0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る回生量制御装置について詳細に説明する。
【0014】
図1において、本発明の一実施例に係る回生量制御装置を搭載した車両1は、モータジェネレータ2と、インバータ3と、バッテリ4と、制御部5と、を含んで構成される。
【0015】
モータジェネレータ2は、例えば、複数の永久磁石が埋め込まれたロータと、ステータコイルが巻きつけられたステータと、を備えた同期型モータで構成される。モータジェネレータ2は、ステータコイルに三相交流電力が印加されることでステータに回転磁界が形成され、この回転磁界によりロータが回転して駆動力を生成する。
【0016】
また、モータジェネレータ2は、発電時における回転抵抗を車両1の制動に利用するように駆動される。これにより、モータジェネレータ2は、回生によって発電できる機能を有する。このように、モータジェネレータ2は、発電機としても機能し、バッテリ4を充電するための電力を生成できるようになっている。
【0017】
モータジェネレータ2の回転軸は、減速機21を介して駆動軸11に連結されている。モータジェネレータ2は、駆動軸11を介して駆動輪10を駆動する。
【0018】
モータジェネレータ2には、モータジェネレータ2の回転軸の回転速度を検出する回転速度センサ91が設けられている。駆動輪10には、駆動輪10の回転速度を検出する車輪速センサ96が設けられている。回転速度センサ91及び車輪速センサ96は、車両1が前進する場合の回転方向の回転を正の回転速度として出力する。
【0019】
インバータ3は、制御部5の制御により三相交流電力をモータジェネレータ2に供給する。また、インバータ3は、モータジェネレータ2が発電した三相交流電力を直流電力に変換してバッテリ4を充電する。
【0020】
バッテリ4は、例えば、ニッケル蓄電池やリチウム蓄電池等からなり、複数のセルを直列に接続して構成されている。バッテリ4は、インバータ3を介してモータジェネレータ2に電力を供給する。インバータ3とバッテリ4の間には、インバータ3の直流電流を検出する電流センサ92が設けられている。電流センサ92は、バッテリ4が放電する方向(バッテリ4からインバータ3への方向)の電流を正の電流値として出力する。
【0021】
バッテリ4の各セルのセル電圧や温度は制御部5において検出できるようになっており、制御部5は、これらの検出値と電流センサ92の出力によりバッテリ4の充電状態(SOC:State of Charge)を検知することができる。
【0022】
制御部5は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0023】
制御部5のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部5として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、制御部5として機能する。
【0024】
制御部5の入力ポートには、前述の回転速度センサ91と、電流センサ92と、車輪速センサ96に加え、イグニッションスイッチ93と、アクセル開度センサ94と、勾配センサ95と、加速度センサ97と、トルクセンサ98とを含む各種センサ類が接続されている。一方、制御部5の出力ポートには、前述のインバータ3を含む各種制御対象類が接続されている。
【0025】
イグニッションスイッチ93は、車両1のシステムの起動操作の有無と、モータジェネレータ2の始動操作の有無を検出する。
【0026】
アクセル開度センサ94は、運転者によって操作される図示しないアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度を検出する。
【0027】
勾配センサ95は、車両1が走行中の路面の勾配を検出する。勾配センサ95は、例えば、車両1が走行中の路面が水平面となす角度に応じた信号を制御部5に送信するようになっている。制御部5は、勾配センサ95が出力する信号により、車両1が走行中の路面が水平面となす角度を算出することができる。
【0028】
加速度センサ97は、車両1の加速度を検出する。トルクセンサ98は、駆動輪10におけるトルクを検出する。
【0029】
本実施例において、制御部5は、アクセルペダルがオフされると、惰性で車両1を走行させるコースト走行を行なう。
【0030】
制御部5は、コースト走行時に、モータジェネレータ2の回生トルクによってコースト回生制動力を発生させる。
【0031】
制御部5は、コースト走行中でコースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していると判定した場合、車両1の重量を推定し、推定された車両重量が大きいほど回生トルクを大きくする。
【0032】
このため、制御部5は、車両1の重量を推定する車両重量推定部51と、道路勾配を推定する道路勾配推定部52と、コースト走行時にモータジェネレータ2の回生トルクによってコースト回生制動力を発生させる回生制動部53とを備えている。
【0033】
車両重量推定部51は、例えば、加速度センサ97、トルクセンサ98などから車両1の状態を検出し、運動方程式を通して車両重量を算出して推定車両重量とする。
【0034】
道路勾配推定部52は、例えば、勾配センサ95の出力する信号に基づいて道路勾配を推定して勾配値として勾配率を算出する。道路勾配推定部52は、加速度と車輪速を検出し、その情報から車両1が走行中の道路の勾配率を推定してもよい。また、道路勾配推定部52は、GPS(Global Positioning System)位置情報と道路の勾配情報を含む地図情報を照らし合わせて車両1が走行中の道路の勾配率を推定してもよい。
【0035】
回生制動部53は、例えば、図2に示すようなマップに従って、車両重量から回生トルクを算出する。
【0036】
回生制動部53は、コースト走行中でコースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していないと判定した場合、車両1の重量に関わらず所定の回生トルクをモータジェネレータ2に発生させる標準回生トルク制御を行なう。
【0037】
所定の回生トルクは、車両1が空車状態での走行時に所定の制動力を発生させるトルクとするとよい。空車状態とは、運転者のみが乗車し、荷物等を積載しない状態のことであり、この状態でコースト走行させたときの制動力をシミュレーション等で求めればよい。
【0038】
所定の制動力は、所定の摩擦係数の路面においてスリップを防止できる制動力より小さく設定される。
【0039】
回生制動部53は、コースト走行中でコースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していると判定した場合、道路の勾配が急勾配であればあるほど回生トルクを大きくする。
【0040】
回生制動部53は、例えば、図3に示すようなマップに従って、降坂路の勾配率から回生トルクを算出する。
【0041】
回生制動部53は、例えば、車両重量に応じて増量した回生トルクに、降坂路の勾配に応じてさらに回生トルクを増量してもよい。
【0042】
以上のように構成された本実施例に係る回生量制御装置による回生トルク制御処理について、図4を参照して説明する。なお、以下に説明する回生トルク制御処理は、制御部5が動作を開始すると開始される。
【0043】
ステップS1において、制御部5は、車両重量の推定を行ない推定車両重量とする。ステップS1の処理を実行した後、制御部5は、ステップS2の処理を実行する。なお、ステップS1では、回生トルクは生じていない状態となる。
【0044】
ステップS2において、制御部5は、アクセル開度センサ94によりアクセルオフが検出されているか否かを判定する。
【0045】
アクセルオフが検出されていると判定した場合には、制御部5は、ステップS3の処理を実行する。アクセルオフが検出されていないと判定した場合には、制御部5は、ステップS1の処理を実行する。
【0046】
ステップS3において、制御部5は、イグニッションスイッチ93からイグニッションオフが検出されているか否かを判定する。
【0047】
イグニッションオフが検出されていると判定した場合には、制御部5は、回生トルク制御処理を終了する。イグニッションオフが検出されていないと判定した場合には、制御部5は、ステップS4の処理を実行する。
【0048】
ステップS4において、制御部5は、車両1の重量に関わらず所定の回生トルクをモータジェネレータ2に発生させる標準回生トルク制御を行なう。ステップS4の処理を実行した後、制御部5は、ステップS5の処理を実行する。
【0049】
ステップS5において、制御部5は、勾配センサ95の出力する信号から下り勾配を検出しているか否かを判定する。
【0050】
下り勾配を検出していると判定した場合には、制御部5は、ステップS6の処理を実行する。下り勾配を検出していないと判定した場合には、制御部5は、ステップS11の処理を実行する。
【0051】
ステップS6において、制御部5は、推定車両重量を読み込む。ステップS6の処理を実行した後、制御部5は、ステップS7の処理を実行する。
【0052】
ステップS7において、制御部5は、勾配値として勾配率を読み込む。ステップS7の処理を実行した後、制御部5は、ステップS8の処理を実行する。
【0053】
ステップS8において、制御部5は、推定車両重量と勾配値に基づいて勾配回生トルクを算出する。ステップS8の処理を実行した後、制御部5は、ステップS9の処理を実行する。なお、下り坂から平坦路を走行するといった場合に、勾配率がゼロ付近になったときには、勾配回生トルクはステップS4の所定の回生トルクと同等になるように算出される。
【0054】
ステップS9において、制御部5は、勾配回生トルクをモータジェネレータ2に発生させる勾配回生トルク制御を行なう。ステップS9の処理を実行した後、制御部5は、ステップS10の処理を実行する。
【0055】
ステップS10において、制御部5は、アクセル開度センサ94によりアクセルオンが検出されているか否かを判定する。
【0056】
アクセルオンが検出されていると判定した場合には、制御部5は、ステップS1の処理を実行する。アクセルオンが検出されていないと判定した場合には、制御部5は、ステップS7の処理を実行する。
【0057】
ステップS11において、制御部5は、アクセル開度センサ94によりアクセルオンが検出されているか否かを判定する。
【0058】
アクセルオンが検出されていると判定した場合には、制御部5は、ステップS1の処理を実行する。アクセルオンが検出されていないと判定した場合には、制御部5は、ステップS4の処理を実行する。
【0059】
このように、本実施例では、回生制動部53は、コースト走行中でコースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していると判定した場合、車両1の重量を推定し、推定された車両重量が大きいほど回生トルクを大きくする。
【0060】
これにより、降坂路でのみ車両重量が大きいほど大きい減速度を与えて、コースト回生制動において、スリップを抑えることができ、かつ摩擦制動の過度の使用を抑えることができる。また、降坂路での回生制動力を高めて、摩擦制動の過度の発生を抑えることができる。
【0061】
また、回生制動部53は、コースト走行中でコースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していないと判定した場合、車両1の重量に関わらず所定の回生トルクをモータジェネレータ2に発生させる標準回生トルク制御を行なう。
【0062】
これにより、降坂路でのみ車両重量が大きいほど大きい減速度を与えて、降坂路でないときは、車両重量に関わらず所定の回生トルクを発生させるため、コースト回生制動において、スリップを抑えることができ、かつ摩擦制動の過度の使用を抑えることができる。また、平坦路では、回生電力を回収しつつ、スリップを最小限にすることができる。
【0063】
また、所定の回生トルクは、車両1が空車状態での走行時に所定の制動力を発生させるトルクとする。
【0064】
これにより、降坂路でのみ車両重量が大きいほど大きい減速度を与えて、降坂路でないときは、車両重量に関わらず空車状態での走行時に所定の制動力を発生させる回生トルクを発生させるため、空車状態以上に車両重量が大きくなっても所定の制動力以上となることがないので、コースト回生制動において、スリップを抑えることができ、かつ摩擦制動の過度の使用を抑えることができる。
【0065】
理論上は、積載状態でも、その分回生トルクを大きくして、空車状態でのコースト回生時と同等の制動力を発生させることはでき、そのようにしてもよい。
【0066】
しかし、その方法が有効であるのは、車両重量を正確に推定することができる場合である。
【0067】
一例として、トルクと加速度から車両重量を推定する方法もあるが、各センサの測定誤差などが実際には発生し、ワーストケースで算出される回生トルクの値は、車両挙動に大きな影響を与えるものとなる可能性がある。
【0068】
特に、実際よりも大きく車両重量が算出されて、それに対応する回生トルクを発生させると、過剰な制動力となる可能性がある。
【0069】
よって、スリップを最小限にするには、空車状態において、所定の制動力を発生させることのできる回生トルクとするのが良い。
【0070】
また、車両重量の推定による回生トルクの上乗せは、降坂路のような摩擦による制動力が極端に損なわれる可能性がある場面に絞ることが望ましい。
【0071】
また、所定の制動力は、所定の摩擦係数の路面においてスリップを防止できる制動力より小さく設定する。
【0072】
これにより、降坂路でのみ車両重量が大きいほど大きい減速度を与えて、降坂路でないときは、車両重量に関わらず空車状態での走行時に所定の摩擦係数の路面でスリップしない制動力を発生させる回生トルクを発生させるため、空車状態以上に車両重量が大きくなっても所定の摩擦係数の路面でスリップする制動力以上となることがないので、コースト回生制動において、スリップを抑えることができ、かつ摩擦制動の過度の使用を抑えることができる。
【0073】
一例としては、平坦路を前進走行している場合は、路面摩擦係数μに重力加速度を掛けた制動力より小さくすればよい。
【0074】
また、回生制動部53は、コースト走行中でコースト回生制動力を発生させているときに、降坂路を走行していると判定した場合、道路の勾配が急勾配であればあるほど回生トルクを大きくする。
【0075】
これにより、降坂路でのみ車両重量が大きいほど、または下り勾配が急勾配であるほど大きい減速度を与えて、コースト回生制動において、スリップを抑えることができ、かつ摩擦制動の過度の使用を抑えることができる。
【0076】
なお、本実施例においては、電気自動車の場合を示したが、モータジェネレータの駆動力により走行する車両であれば、ハイブリッド車両のような車両でも同様に適用可能である。
【0077】
また、降坂路で上乗せする回生トルクは、走行中の路面の摩擦係数を事前に推定しておき、走行中の路面でスリップしないように制限してもよい。
【0078】
本実施例では、各種センサ情報に基づき制御部5が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0079】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0080】
1 車両
2 モータジェネレータ
5 制御部
51 車両重量推定部
52 道路勾配推定部
53 回生制動部
93 イグニッションスイッチ
94 アクセル開度センサ
95 勾配センサ
96 車輪速センサ
97 加速度センサ
98 トルクセンサ
図1
図2
図3
図4