(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142885
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】油性固形クレンンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20241003BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055268
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】592106155
【氏名又は名称】ジェイオーコスメティックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514090658
【氏名又は名称】プレミアアンチエイジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰悟
(72)【発明者】
【氏名】樋口 みづき
(72)【発明者】
【氏名】中村 光佐
(72)【発明者】
【氏名】大西 ちひろ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB171
4C083AB172
4C083AC012
4C083AC112
4C083AC172
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC422
4C083AD662
4C083BB04
4C083BB12
4C083BB13
4C083CC23
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】 油性固形クレンジング化粧料のクレンジング性能を向上させつつ、肌への優しさにも優れ、且つ自然由来原料による鮮やかな色調を呈しながら、変色等の安定性の問題がない油性固形クレンジング化粧料を提供する。
【解決手段】 (A)融点が50~120℃である固形油分、(B)液状油分、(C)HLB値が5~13の非イオン性界面活性剤および(D)緑茶粉末を含有し、水含有量が1質量%(化粧料全量中の割合)以下であることを特徴とする油性固形クレンンジング化粧料を用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)融点が50~120℃である固形油分、(B)液状油分、(C)HLB値が5~13の非イオン性界面活性剤および(D)緑茶粉末を含有し、水含有量が1質量%(化粧料全量中の割合)以下であることを特徴とする油性固形クレンンジング化粧料。
【請求項2】
(A)成分を1~30質量%、(B)成分を50~95質量%、(C)成分を3~30質量%、および(D)成分を0.01~20質量%の割合(化粧料全量中の割合)で含有することを特徴とする油性固形クレンンジング化粧料。
【請求項3】
前記(D)緑茶粉末の平均粒子径が0.01~100μmである請求項1または2記載の油性固形クレンンジング化粧料。
【請求項4】
さらに(E)煙霧状シリカを含有する請求項1または2記載の油性固形クレンンジング化粧料。
【請求項5】
(E)成分が1次粒子径1~50nmの煙霧状シリカである請求項4に記載の油性固形クレンンジング化粧料。
【請求項6】
(E)成分が未処理の煙霧状シリカおよび疎水化処理煙霧状シリカからなる請求項4に記載の油性固形クレンンジング化粧料。
【請求項7】
化粧料の色調がマンセル表色系において色相(H)が7.5Y~5Gであり、彩度(C)が3以上である請求項1または2に記載の油性固形クレンンジング化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形の油性クレンンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口紅、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ等のメイクアップ化粧料において、耐水性および耐油性がともに優れた製品が開発され、化粧持ちが著しく向上している。そのため、メイクアップ化粧料による化粧を落とすに当たっては、メイク(肌上の化粧膜)とのなじみがよく、角質や皮脂などの汚れを除去する性能(汚れ落ち性)に優れた油性クレンジング化粧料が用いられている。油性クレンジング化粧料の具体例としては、クレンジングオイル、ゲル状クレンジング剤、クレンジングクリームなどがあるが、そのうちでも、常温で固形状の油性クレンジング化粧料は、使用時の垂れ落ちがなく、メイクとなじませる際のマッサージがしやすいという特長を有している。油性クレンジング化粧料の汚れ落ち性をさらに向上させるために、粉体等のスクラブ剤の配合も検討されているが、一方で、肌へのやさしさも求められ、高い汚れ落ち性と肌の保湿の両立が求められている。
【0003】
特許文献1には、抹茶を配合した石鹸組成物が開示されていて、抹茶が硬くなく、適度な肌触りである(段落0004)ことからスクラブ剤として適していることが記載されている。該文献には、製造後1カ月経過後も退色がないことも記載されているが、石鹸組成物という剤型は、使用中に水と接触することが避けられないため、一度でも使用した場合は、抹茶が水分と反応し、変色、退色が起きることも避けられないことであった。
【0004】
特許文献2には、(A)融点が50~120℃である固形油分を1~30質量%、(B)液状油分を50~97質量%、(C)HLB値が5~13の非イオン性界面活性剤を3~30質量%、(D)体積平均粒子径が1~200μmの粉体を0.1~20質量%、および(E)煙霧状シリカを0.01~10質量%の割合(全化粧料基準)で配合すると、洗い流しやすさと洗い流し後のさっぱり感に優れた油性固形クレンジング化粧料が得られる旨記載されている。また、(D)成分の粉体としては、粘土鉱物や、炭粉末を使用すると汚れ落ち性、さっぱり感に優れるクレンジング化粧料が得られる旨が記載されている(段落0006)。しかしながら、このような無機粉末を使用すると、汚れ落ち性は向上するものの肌当たりが硬く、皮脂や油分を除去しすぎてしまい、皮膚の乾燥を招きやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-125556号公報
【特許文献2】特開2020-26420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景技術の下に完成したものであり、その目的は、油性固形クレンジング化粧料のクレンジング性能を向上させつつ、肌への優しさにも優れ、且つ自然由来原料による鮮やかな色調を呈しながら、変色等の安定性の問題がない油性固形クレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意研究した結果、高融点の固形油分、液状油、特定のHLB値を有する非イオン性界面活性剤と共に、緑茶粉末および煙霧状シリカを含有し、水の含有率が0.5質量%以下である油性固形クレンジング化粧料が、上記要求を満たすものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、(A)融点が50~120℃である固形油分、(B)液状油分、(C)HLB値が5~13の非イオン性界面活性剤および(D)緑茶粉末を含有し、水分含有量が0.5質量%(全化粧料規準)以下である油性固形クレンジング化粧料が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、クレンジング性能と肌への優しさに優れ、且つ自然由来原料による鮮やかな色調を呈しながら、安定性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(A:固形油分)
本発明において(A)成分の固形油分は常温(25℃)で固体の油であり、その融点は50~120℃、好ましくは55℃~105℃、より好ましくは60~100℃である。固形油分の融点は、医薬部外品原料規格の一般試験法である融点測定法第2法によって測定することができる。融点が低くなるにつれ、組成物が柔らかくなりクレンジング化粧料として使用する際に指取れが良くなるとともに、溶融させる際に常温での操作が容易になるため(B)成分および(C)成分の酸化劣化を引き起こしにくくなる。逆に、融点が高くなるにつれ、(B)成分の液状油を均一に固化させることが容易で、また、油性固形クレンジング化粧料の輸送時や携帯時に振動や衝撃で液状化しにくく、保形性が良く固形の形状を維持することができる。
【0011】
かかる固形油分としては、具体的には、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン-プロピレンコポリマー、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、オゾケライト、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックスや、モクロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ミツロウ(ビーズワックス)、水添ホホバ油、ベヘン酸ベヘニル、硬化油、高級アルコール、シリコーンワックス等が挙げられる。
【0012】
これら固形油分の市販品としては、パラフィンワックスである日本精鑞社製のパラフィンワックス135、パラフィンワックス140、パラフィンワックス150、HNP-11;マイクロクリスタリンワックスである日本精鑞社製のHNP-9、Hi-Mic-2065、Hi-Mic-1070、Hi-Mic-1080、Hi-Mic-1090、HNP-0190、Sonneborn社製のMultiwax W-445;ポリエチレンワックスであるNEW PHASE TECHNOLOGIES社のPERFORMALENE 400、PERFORMALENE 500、PERFORMALENE 655;合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス)であるCIREBELLE社のCIREBELLE 108、CIREBELLE 305;キャンデリラワックスであるセラリカNODA社の精製キャンデリラワックスNO.1、キャンデリラNC1630、横関油脂工業社の精製キャンデリラワックスCG-7、精製キャンデリラワックスSR-3、日本ナチュラルプロダクツ社の精製キャンデリラワックスCG-7、精製キャンデリラワックスSR-3、日本ナチュラルプロダクツ社の高融点キャンデリラワックスFR100、理研ビタミン社のベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
【0013】
油性固形クレンジング化粧料は、口紅などのメイクアップ化粧料における油性固形化粧料とは大容量であるという点で大きく異なり、所定の容器に充填する工程において長時間にわたって組成物を溶融状態に維持することが必要である。そのため、固形油分としては、加熱時の酸化に対する安定性に優れたワックスが好ましく、具体的には炭化水素ワックス、とくにポリエチレンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスが好ましく使用される。また合成のワックスエステルであるベヘン酸ベヘニルも好ましく使用される。
【0014】
上記(A)成分は単一の化合物を選択して使用してもよいし、また、二種以上の化合物を適宜組み合わせて用いることもできる。(A)成分の含有量は、油性固形化粧料全体に対して好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは2~20質量%、特に好ましくは3~15質量%である。(A)成分が減少するにつれ、指取れが良く、また、使用する際に伸びが良くマッサージもしやすくなるが、振動や衝撃により、液状化しやすくなる。逆に、(A)成分が増加するにつれ、保形性が向上するため、剤型がスティック状の油性固形クレンジング化粧料を製造しやすくなる。剤型がスティック状の場合は、(A)成分の含有量は、化粧料全体に対し5~30質量%にすることが好ましく、それによって特に良好な保形性を得ることができる。
【0015】
(B:液状油分)
本発明の油性固形クレンジング化粧料においては、肌上のメイクとのなじみ易さや、肌に塗布する際の伸ばし易さの観点から(B)液状油分が用いられる。ここで「液状油分」とは、常温(25℃)で流動性を有する油分及び融点50℃未満の半固形油分を意味し、沸点が260℃未満の揮発性油分も含まれる。
【0016】
本発明で用いられる(B)液状油分は、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、動物油、植物油、合成油のいずれであってもよい。液状油分の具体例としては、トリエチルヘキサノイン、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、ダイマー酸とダイマージオールとのオリゴマーエステル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、テトライソステアリン酸ジグリセリル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ホホバ油等のエステル類; 揮発性イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、重質流動イソパラフィン、流動パラフィン、α - オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類; オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類; イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類; オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類; 低重合度ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルトリメチコン、カプリリルトリメチコン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン油類; パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類; ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;等が挙げられる。
【0017】
(B)液状油分の含有量は、油性固形化粧料全体に対して50~97質量%であることが好ましく、より好ましくは55~95質量%、さらに好ましくは60~90質量%である。(B)成分が多くなるにつれメイクとのなじみが良くなり、また、伸びが持続しマッサージもしやすくなる。逆に、(B)成分が少なくなるにつれ、保形性が良くなりマッサージ効果が上昇する。
【0018】
(C:界面活性剤)
本発明においては、(C)成分としてHLB値が5~13の範囲にある非イオン性界面活性剤が用いられる。ここで「HLB値が5~13の範囲にある非イオン性界面活性剤」とは、HLB値が5~13の範囲にある1種の非イオン性界面活性剤であるか、その範囲のHLB値を有する複数の非イオン性界面活性剤の組合せであるか、またはHLB値が異なる2種以上の非イオン性界面活性剤を組み合わせた結果としてその加重平均のHLB値が5~13の範囲になる複数の非イオン性界面活性剤の組合せであることを意味する。
【0019】
なお、HLBとは親水性と親油性のバランスを0~20までの値で示す指標であり、0に近づくほど親油性が高く、20に近づくほど親水性が高いことを示している。HLB値の算出法としては種々の計算法が知られている他、製造元から提供されるカタログなどにその値が記載されている。本明細書においては、非イオン性界面活性剤のHLB値は、非イオン性界面活性剤が市販品である場合には、メーカーカタログ記載のHLB値を採用しており、また、市販品ではない場合には、「界面活性剤便覧」第307頁(産業図書株式会社出版、1960年発行)に記載されているグリフィン(Griffin)の方法(HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量)により算出した数値を採用している。
【0020】
非イオン性界面活性剤のHLB値が5未満の場合は、肌の上でメイクをクレンジング化粧料になじませた後に水またはぬるま湯で洗い流そうとしても、水とのなじみが悪いためにきれいに洗い流すことができず、洗い流し後のさっぱり感が得られない。逆に、HLB値が13を越える場合には、疎水性のメイクをクレンジング化粧料になじませることができず、メイク落ちが不十分となる。なかでも、HLB値が6~11の範囲にあると、メイク落ちおよび洗い流しやすさが良好である。(C)成分の非イオン性界面活性剤は、固体状、液状のいずれでもよいが、25℃で液状の非イオン性界面活性剤を使用するとメイク落ち及び洗い流しやすさの点でより優れた性能が得られる。
【0021】
(C)成分として用いるHLB値が5~13の非イオン性界面活性剤、及び組み合わせて用いることによりHLB値が上記範囲に入る非イオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジステアリン酸ポリグリセリル-10などのポリグリセリン脂肪酸エステル; PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油; ステアリン酸PEG-2、ステアリン酸PEG-5などのポリオキシエチレン脂肪酸エステル; セテス-2、オレス-3、ステアレス-6などのポリオキシエチレンアルキルエーテル; ステアリン酸ステアレス-6、イソステアリン酸ラウレス-8、ステアリン酸ステアレス-12などの脂肪酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル; イソステアリン酸PEG-3グリセリル、トリステアリン酸PEG-15グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-10グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、トリステアリン酸PEG-20グリセリルなどのポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル; イソステアリン酸PEG-15水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油などの脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;などが挙げられる。その他にもソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーと長鎖アルコールとのエーテル、ポリブチレングリコールポリグリセリンコポリマーと長鎖アルコールのエーテルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および脂肪酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、メイク落ち及び洗い流しやすさの観点から好ましく用いられる。
【0022】
(C)成分として用いる非イオン性界面活性剤が分子中に脂肪酸残基を有する場合、その脂肪酸残基としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などのような炭素数10~22の高級脂肪酸の残基であることが好ましく、中でも非イオン性界面活性剤の性状が液状となり、耐酸化安定性に優れる分岐高級脂肪酸の残基であることが好ましく、特にイソステアリン酸残基が好ましい。
【0023】
(C)成分として用いる液状の非イオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、エマレックスRWIS-320(トリイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油;日本エマルジョン社製;HLB 6) 、エマレックスGWIS-305( トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル;日本エマルジョン社製;HLB 3)、ユニオックスGT-20IS(トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル;日油社製;HLB 10.4)等があり、また、25℃で固体状の市販品としては、例えば、エマレックスGWS-320(トリステアリン酸PEG-20グリセリル;日本エマルジョン社製;HLB8)、エマレックスSWS-12(ステアリン酸ステアレス-12;日本エマルジョン社製;HLB8)、エマレックス608(ステアレス-8;日本エマルジョン社製;HLB 9)等がある。
【0024】
(C)成分の使用量は、全組成中に3~40質量%であることが好ましく、より好ましくは4~35質量%、さらに好ましくは5~30質量%、特に好ましくは7~25質量%である。この量が適度に低くなるにつれて皮膚への刺激が少なくなる。逆に、量が高くなるにつれ、メイク落ち及び洗い流しやすさが向上する。
【0025】
(D:緑茶粉末)
本発明においては、上記(A)~(C)成分に加えて、(D)緑茶粉末が用いられる。(D)成分を含有すると、ソフトな肌当たりで、スクラブ効果によりメイク落ちや汚れ落ち等のクレンジング性能が向上させることができる。また化粧料に合成色素を使わずに、鮮やかな緑色の色調を付与することができる。緑茶はチャノキの葉から作った茶のうち、摘み取ったチャ葉を加熱処理してチャ葉中の酵素反応(茶業界では「発酵」と呼ばれる)を妨げたものであり、緑色(黄緑色~青緑色)の色調を呈する。本発明において緑茶とは、このような方法で製造されるチャ葉であれば、特に限定されず、煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、碾茶、抹茶等が含まれるが、これらに限定されない。本発明において緑茶粉末とは、緑茶を粉末状にしたものであり、緑茶をそのまま、または粉砕して製造することでき、体積平均粒子径は、0.01~100μmであることが好ましく、より好ましくは、0.1~80μmであり、特に好ましくは、1~50μmである。緑茶粉末は、抹茶であることが好ましく、市販の抹茶をそのまま、または、粉砕、分級して使用することができる。抹茶の市販品として、福寿園社が販売する福寿園抹茶(化粧品用)、大日本化成社が販売する宇治の郷茶M等を挙げることができる。ここで、体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱粒度分布測定装置(例えば堀場製作所製LA-950)を用い、且つ、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを溶媒として5分間超音波分散処理した試料を用いて測定されるものであり、1次粒子径を指すものではない。なお、超音波分散処理は、超音波洗浄機W-113(本多電子社製)を用いて振動数28kHzで行われる。
【0026】
(D)成分の配合量は、全化粧料に対して0.01~20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~15質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。この範囲で(D)成分を含むと、汚れ落ち性とマッサージ効果が改善され、且つ、肌への負担が少ない。
【0027】
本発明においては、さらに(E)成分として煙霧状シリカを含有することが好ましい。固形油分を含む配合物でクレンジング化粧料を製造するには、均一に混合された溶融状態にある配合物を所定の容器に充填した後、冷却して固化する工程が必要である。(D)成分の緑茶粉末を含む配合物の場合、容器に充填された配合物が速やかに固化すれば該粉末の分散状態を均一に保つことができる。たとえば、口紅のようなメイクアップ化粧料は、一般的に製品の重量が数グラムであるため充填から固化までが極めて短時間であり、配合物中に含まれている粉末類の分散性が損なわれるリスクは少ない。しかし、クレンジング化粧料の場合は、製品当たりの重量が100グラム程度またはそれを超えるものが一般的であるため、配合物を充填した容器を外側から冷風等で冷却しても固化までの所要時間が長く、その間に粉末類の沈降や凝集を起こすことがある。緑茶粉末の場合は、油に分散した状態で凝集しやすいため、不均一な外観となりやすい。(E)成分の配合により、より均一な外観の化粧料とすることができる。
【0028】
(E)成分の配合量は、全化粧料に対して0.01~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.2~3質量%である。また、(D)成分の緑茶粉末に対する(E)成分の質量比〔(E)/(D)〕は、0.01~10であることが好ましく、より好ましくは0.05~5である。(E)成分の配合量が上記の範囲であると、化粧材中に含まれる(D)成分の分散状態が向上し、クレンジング化粧料の製造工程において配合物を溶融充填する際に(D)成分の凝集を効果的に抑制することができる。
【0029】
(E)成分の煙霧状シリカはフュームドシリカとも称される微細な非晶質のシリカであり、外観はふわふわとした軽い白色の粉末である。煙霧状シリカは、例えば、四塩化ケイ素のような原料を酸水素炎中で高温加水分解して得ることができる。煙霧状シリカの比表面積は、好ましくは30m2/g以上であり、さらに好ましくは50~400m2/gであり、とくに好ましくは、100~400m2/gである。比表面積が過度に小さい場合は、クレンジング化粧料の製造工程において配合物を溶融充填する際に(D)成分の沈降を効果的に抑制することができない。
【0030】
また、これらの煙霧状シリカの一次粒子径は1~50nmが好ましく、2~30nmであることが特に好ましい。一次粒子径は、電子顕微鏡写真により測定した3,000~5,000個の粒子の平均値として求めることができ、煙霧状シリカ製造メーカーのカタログ等により確認することができる。(E)成分は親水性を示す未処理の煙霧状シリカであっても、疎水化処理を施した煙霧状シリカであってもよい。疎水化処理の具体例としてはジメチルジクロロシラン処理、トリメチルシリルクロライドやヘキサメチルジシラザンによるトリメチルシロキシ処理、オクチルシラン化処理、ジメチルシリコーンオイル処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼付け処理、金属石鹸によるコーティング等が挙げられる。(D)成分の凝集を抑制し、より均一な外観を得られやすくするためには、未処理および疎水化処理煙霧状シリカの両方を含有することが好ましく、未処理煙霧状シリカと疎水化処理煙霧状シリカの質量比(未処理/疎水化処理比)は、1/9~9/1であることが好ましい。
【0031】
(E)成分の市販品としては、未処理の煙霧状シリカとしてAEROSIL 50、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 200V、AEROSIL 200CF、AEROSIL 200FAD、AEROSIL 300、AEROSIL 300CF、AEROSIL 380、AEROSIL 380S(以上、日本アエロジル社製)等;疎水化処理したものとして、AEROSIL R972、AEROSIL R972V、AEROSIL R972CF、AEROSIL R974、AEROSIL R976S、AEROSIL RX200、AEROSIL RX300、AEROSIL RY200、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL R812、AEROSIL RA200H(以上、日本アエロジル社製)、CAB-O-SIL TS530(キャボット社製)等が挙げられる。
【0032】
本発明の油性固形クレンジング化粧料においては、水の含有量は1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。水の含有量をこの範囲に収めると、(D)緑茶粉末の色調が鮮やかさを維持するとともに、変色もしにくくなる。
【0033】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、(D)緑茶粉末を含有することにより、肌当たりの良いスクラブ効果を奏するものであるが、化粧料が合成色素を使用しなくても鮮やかな緑色を呈するという審美的な効果も奏するものである。本発明の油性固形クレンジング化粧料の外観の色調は、マンセル表色系において、色相(H)が7.5Y~5Gであり、彩度(C)が3以上であることが好ましく、より好ましくは色相(H)が10Y~2.5Gであり、彩度(C)が4以上である。色相(H)、彩度(C)は、マンセル色票との比較により評価することができ、また、色差計(例えば日本電色工業社製色彩白色度計NW-12等)による測色値により求めることができる。
【0034】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、(D)緑茶粉末に加え、チャ葉エキスを含有することにより、緑茶の鮮やかな緑色の色調とチャ葉の有する生理活性効果を使用者が享受することができる。チャ葉エキスは、緑茶抽出物であることが好ましい。抽出溶媒は特に限定されず、水溶性でも油溶性でも良い。生理活性効果として、抗酸化、抗老化効果を奏するものが好ましい。緑茶由来のチャ葉エキスの市販品の例としては、丸善製薬社製の、チャ抽出液(B)-BG、チャ抽出液(O)-SQ等を挙げることができる。
【0035】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、(D)成分以外の粉体、染料、油性ゲル化剤、油溶性樹脂、多価アルコール類、低級アルコール、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、各種エキス等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0036】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、常温(25℃)、常圧(1気圧)で流動性を示さないものであり、その形状はとくに限定されない。形状の具体例としては、スティック状、棒状、板状、容器への流し込み成形したものなどが挙げられる。これら各種のクレンジング化粧料は、常法にしたがって調製することができる。たとえば、全原料を融点以上に加熱し、均一に混合した後、溶融状態のままジャー容器などの所定の容器や金皿または樹脂皿などに流し込み、冷却または放冷し、油性固形クレンジング化粧料とすることができる。また、スティック容器に充填してスティック状とすることができる。
【0037】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、メイク落としの機能に加えて、マッサージ化粧料に求められる特性、すなわち、適度な粘性と滑り性および滑り性の持続性を備えている。そのため、本発明の油性固形クレンジング化粧料とは別に、マッサージ化粧料としても使用することができる。本発明の油性固形クレンジング化粧料を使用するに際しては、メイクに化粧料をなじませた後、水またはぬるま湯で洗い流すことによってメイクを除去することができる。そのため、従来の油性固形クレンジング化粧料を使用する際には、使用後に必要と考えられていたセッケンなどの洗顔料による洗顔操作を省くことが可能である。もちろん、メイクをしていない皮膚に蓄積した皮脂などの汚れを除去するクレンジング剤として使用することもできる。
【実施例0038】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における処方中の配合量は、特に断りのない限り全量に対する質量%である。
また、以下の実施例および比較例における本発明の油性固形クレンジング化粧料の評価方法は、以下のとおりである。
【0039】
(メイク落ちの良さ、洗い流し後のさっぱり感、マッサージ中の刺激感のなさ)
化粧経験のある女性評価パネル10名が市販のパウダーファンデーション(セザンヌ化粧品社製、セザンヌ UVファンデーションEX プラス)を肌に塗布した後、評価用のサンプルでクレンジングを行い、各項目について下記(1)に示す評価基準に基づき1~5の5段階で評点を付けた。評価者10名の評点の平均値を算出し、下記(2)に示す4段階判定基準によりクレンジング化粧料としての性能を判定した。
【0040】
(1)評価基準
5点:良い
4点:やや良い
3点:どちらとも言えない
2点:やや悪い
1点:悪い
【0041】
(2)4段階判定基準
A:平均点が4~5
B:平均点が3以上4未満
C:平均点が2以上3未満
D:平均点が2未満
【0042】
(外観の均一性)
ジャー容器に充填されたサンプルについて目視で色調の均一性を観察し、色むらの有無について、下記の判定基準にしたがって判定した。
【0043】
(判定基準)
A:均一な色調である。
B:5倍の拡大鏡で観察すると細かい色むらが見られる。
C:細かい色むらが肉眼で観察される。
D:緑色の濃い部分と淡い部分が明らかに観察される。
【0044】
(色調)
ジャー容器に充填されたサンプルの色調について、マンセル色票と比較し、色相(H)および彩度(C)の値を求めた。
【0045】
(色調安定性)
ジャー容器に充填されたサンプルを40℃の恒温槽に1カ月保存し、目視で、色相の変化を観察し、下記の判定基準で判定した。
【0046】
(判定基準)
A:色調の変化がない。
B:緑色がやや薄くなる。
C:緑色が黄味がかる
D:茶色になる。
【0047】
実施例1~4及び比較例1~3
(油性固形クレンジング化粧料)
表1に示す処方の油性固形クレンジング化粧料を下記の製造手順に従って調製した。これらの処方においては、(C)成分としてHLB値が異なる2種の非イオン性界面活性剤を組み合わせて使用しており、その組み合わせの加重平均によるHLB値は8.8であった。得られた油性固形クレンジング化粧料について、メイク落ちの良さ、洗い流し後のさっぱり感、マッサージ中の刺激のなさ、外観の均一性、色相および彩度、色調安定性について、上記の方法により評価した。評価結果は表1に示すとおりである。
【0048】
(製造手順)
(1)表1に示す1~8の成分を約90℃に加熱し、均一に混合する。
(2)上記(1)で調製した混合液に、9~17の成分を添加し、90℃で均一に混合する。
(3)上記(2)で調製した混合液を、溶融状態のまま70℃でジャー容器に充填した後、放冷して油性固形クレンジング化粧料とする。
【0049】
【0050】
表1の結果から、本発明の油性固形クレンジング化粧料は、メイク落ちの良さ、洗い流し後のさっぱり感、マッサージ中の刺激のなさといったクレンジング化粧料としての性能に優れるとともに、色調の鮮やかさ、色調安定性に優れることから審美的にも優れるものであることがわかった(実施例1~4)。これに対し、(D)成分の緑茶粉末を含まない場合は、メイク落ち、さっぱり感の性能が不足し(比較例1)、水を1.5質量%含有する場合は、色調安定性に著しく劣る(比較例2)。また、緑茶粉末の代わりに無機鉱物であるクレイを含む場合には、メイクをなじませるマッサージの動作中に刺激感を覚えるものであった(比較例3)。