(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142889
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】無人走行体の走行制御システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241003BHJP
【FI】
G05D1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055275
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】岡本 丈夫
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA09
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301EE06
5H301EE12
5H301EE13
5H301GG12
5H301JJ00
(57)【要約】
【課題】無人走行体を非自動走行によって走行経路へ復帰させて無人走行に切り換えても、無人走行体の走行経路からの逸脱を防止できる無人走行体の走行制御システムの提供にある。
【解決手段】無人走行体と、無人走行体Rの走行経路と、走行経路Rに沿って設定され、タグ番号が格納された情報タグTと、を有し、無人走行体は、走行駆動部と、情報タグTを検知する情報タグ検知部と、走行駆動部を制御するコントローラと、を有し、コントローラは、情報タグ検知部により取得されたタグ番号に基づき走行駆動部を制御する。タグ番号をコントローラへ入力可能とする入力部を備え、走行経路Rは、無人走行体が通過する情報タグTのタグ番号により設定される経路を含み、無人走行体は、手動操作による非自動走行が可能であり、コントローラは、非自動走行から自動走行へ切り換えられたとき、走行速度を通常の自動走行時の走行速度よりも低速に設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行可能な無人走行体と、
予め設定された前記無人走行体の走行経路と、
前記走行経路に沿って設定され、前記無人走行体の速度設定のためのタグ番号が格納された情報タグと、を有し、
前記無人走行体は、
走行駆動部と、
前記情報タグを検知する情報タグ検知部と、
前記走行駆動部を制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、前記情報タグ検知部により取得された前記タグ番号に基づき前記走行駆動部を制御する無人走行体の走行制御システムにおいて、
前記タグ番号を前記コントローラへ入力可能とする入力部を備え、
前記走行経路は、前記無人走行体が通過する前記情報タグのタグ番号により設定される経路を含み、
前記無人走行体は、手動操作による非自動走行が可能であり、
前記コントローラは、前記無人走行体の走行が前記非自動走行から前記自動走行へ切り換えられたとき、前記無人走行体の走行速度を通常の自動走行時の走行速度よりも低速に設定することを特徴とする無人走行体の走行制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記非自動走行から前記自動走行へ切り換え後の低速走行により最初に検知された情報タグから得られるタグ番号が、前記コントローラに予め設定されている前記経路の情報タグに含まれるか否かを判別し、
前記タグ番号が前記経路の情報タグに含まれないと判別されたとき、前記無人走行体を停止することを特徴とする請求項1記載の無人走行体の走行制御システム。
【請求項3】
前記走行経路は、前記コントローラに記憶された地図に設定された仮想走行経路であり、
前記情報タグは、前記仮想走行経路に沿って予め設定された仮想情報タグであり、
前記無人走行体が走行する路面には、前記非自動走行から前記自動走行に切り換えるための復旧位置が設定され、
前記復旧位置は可視化されていることを特徴とする請求項1又は2記載の無人走行体の走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無人走行体の走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無人走行体の走行制御システムの従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された自動走行台車の走行制御方法およびシステムが知られている。特許文献1に開示された自動走行台車の走行制御システムでは、自動走行台車は、下部に複数の車輪を備え、そのうち少なくとも一つの車輪を駆動回転させることにより、床面に設けた誘導線に沿って所定の走行経路を駆動走行可能に構成されている。誘導線は、高い光反射性を有する光反射式帯状体であり、自動走行台車には誘導線を検出するための光照射部および反射式光電管よりなるセンサに設けられる。
【0003】
特許文献1に開示された自動走行台車の走行制御システムでは、例えば、自動走行台車を特定のステーションで停止させる手段として、床面上における誘導線近傍の適宜の位置にRFID用タグにより構成されるエリア用記憶体を設けている。自動走行台車は、このエリア用記憶体から走行に関するデータを受信するための受信装置を有している。この場合、受信装置がエリア用記憶体の走行に関するデータを受信し、例えば、走行に関するデータが停止の指示であれば、自動走行台車を特定のステーションに停止させることができる。なお、エリア用記憶体には、自動走行台車を停止させるだけでなく、高速走行や低速走行といった自動走行台車の走行に関するデータを記憶させることが可能である。
【0004】
ところで、この種の自動走行台車の走行制御システムでは、自動走行台車が何らかの原因で走行経路から外れた場合、例えば、作業者が手動操作による走行(手動走行)によって走行経路へ復帰させることが考えられる。あるいは、走行経路に障害物が存在して自動走行台車が停止した場合にも、例えば、手動走行によって障害物を回避して走行経路へ復帰させる場合もあり得る。そして、走行経路に復帰させた後に、手動走行から自動走行に切り換えることで自動走行台車の自動走行が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された走行制御システムでは、手動走行から自動走行に切り換えたとき、走行経路から外れる直前にエリア用記憶体から取得したデータに基づいて自動走行を再開する。このため、例えば、復帰した位置が低速走行の指示によって走行するカーブ区間であるにもかかわらず、走行経路から外れる直前に取得したエリア用記憶体のデータが高速走行の指示であれば、自動走行台車が走行経路から逸脱するおそれがある。なお、手動走行から自動走行に切り換える前に、適切な速度設定を自動走行台車に設定することも考えられるが、設定作業は煩雑である。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、無人走行体を非自動走行によって走行経路へ復帰させて無人走行に切り換えても、無人走行体の走行経路からの逸脱を防止できる無人走行体の走行制御システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、自動走行可能な無人走行体と、予め設定された前記無人走行体の走行経路と、前記走行経路に沿って設定され、前記無人走行体の速度設定のためのタグ番号が格納された情報タグと、を有し、前記無人走行体は、走行駆動部と、前記情報タグを検知する情報タグ検知部と、前記走行駆動部を制御するコントローラと、を有し、前記コントローラは、前記情報タグ検知部により取得された前記タグ番号に基づき前記走行駆動部を制御する無人走行体の走行制御システムにおいて、前記タグ番号を前記コントローラへ入力可能とする入力部を備え、前記走行経路は、前記無人走行体が通過する前記情報タグのタグ番号により設定される経路を含み、前記無人走行体は、手動操作による非自動走行が可能であり、前記コントローラは、前記無人走行体の走行が前記非自動走行から前記自動走行へ切り換えられたとき、前記無人走行体の走行速度を通常の自動走行時の走行速度よりも低速に設定することを特徴とする。
【0009】
本発明では、コントローラは、無人走行体の走行が非自動走行から自動走行へ切り換えられたとき、走行速度を通常の自動走行時の走行速度よりも低速に設定する。このため、非自動走行から自動走行へ切り換えられたときの走行経路における無人走行体の位置に関わらず、無人走行体は、次の記憶部と通信するまで低速走行を行う。よって、無人走行体を手動走行によって走行経路へ復帰させて無人走行に切り換えても、自動走行の再開後の無人走行体の走行経路からの逸脱を防止できる。
【0010】
また、上記の無人走行体の走行制御システムにおいて、前記コントローラは、前記非自動走行から前記自動走行へ切り換え後の低速走行により最初に検知された情報タグから得られるタグ番号が、前記コントローラに予め設定されている前記経路の情報タグに含まれるか否かを判別し、前記タグ番号が前記経路の情報タグに含まれないと判別されたとき、前記無人走行体を停止する構成としてもよい。
この場合、無人走行体が低速で走行して最初に検知された情報タグから得られるタグ番号が、コントローラに予め設定されている経路番号の情報タグに含まれているか否かを判別する。最初に検知された情報タグから得られるタグ番号がコントローラに予め設定されている経路番号の情報タグに含まれてないと判別されたとき、コントローラは、無人走行体を停止する。つまり、走行すべき経路番号の経路を走行していないという異常によって無人走行体を速やかに停止させることができる。
【0011】
また、上記の無人走行体の走行制御システムにおいて、前記走行経路は、前記コントローラに記憶された地図に設定された仮想走行経路であり、前記情報タグは、前記仮想走行経路に沿って予め設定された仮想情報タグであり、前記無人走行体が走行する路面には、前記非自動走行から前記自動走行に切り換えるための復旧位置が設定され、前記復旧位置は可視化されている構成としてもよい。
この場合、無人走行体が走行する路面には、非自動走行から自動走行に切り換えるための復旧位置が設定され、復旧位置が可視化されている。このため、作業者は、無人走行体が走行経路から外れても可視化された復旧位置へ移動させることができ、路面に走行経路が示されない場合であっても非自動走行から自動走行への復旧が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無人走行体を非自動走行によって走行経路へ復帰させて無人走行に切り換えても、無人走行体の走行経路からの逸脱を防止できる無人走行体の走行制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る無人搬送車の走行制御システムを示す平面である。
【
図2】(a)は第1の実施形態に係る無人搬送車の平面図であり、(b)は第1の実施形態に係る無人搬送車の側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る無人搬送車の概略構成図である。
【
図4】無人搬送車における入力部の入力画面の例を示す図である。
【
図5】無人搬送車の走行経路への復帰後に無人搬送車の走行経路からの逸脱を防止する手順を示すフロー図である。
【
図6】(a)は無人搬送車が走行経路から外れ手動走行により走行経路へ復帰させた状態を示す平面図であり、(b)は無人搬送車が自動走行を再開した状態を示す平面図である。
【
図7】(a)は第2の実施形態に係る無人搬送車の走行制御システムを示す平面図であり、(b)は第2の実施形態に係る無人搬送車における環境地図を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る無人走行体の走行制御システムについて図面を参照して説明する。本実施形態の無人走行体は、荷を搬送する無人搬送車である。方向を示す「前後」、「左右」は、前進時の無人搬送車において前方に向かった状態を基準としている。
【0015】
図1に示すように、無人搬送車の走行制御システム10(以下、単に「走行制御システム」と表記する)は、無人走行体としての無人搬送車11と、無人搬送車11の走行経路Rと、走行経路Rに沿って配設された複数の情報タグTと、を有している。まず、走行経路Rについて説明すると、走行経路Rは、無人搬送車11が走行する経路であり、具体的には、路面Fに貼着された磁気テープ12により形成されている。
【0016】
情報タグTは、無人搬送車11の走行に関する情報であるタグ番号が格納されているRFIDタグである。例えば、
図1に示す例では、情報タグT1は、タグ番号として「01」、情報タグT2は、タグ番号として「02」、情報タグT3は、タグ番号として「03」、情報タグT4は、タグ番号として「04」とする。また、
図1に示す例では、走行経路Rにおける情報タグT1、T2、T3の経路は、経路1とし、情報タグT1、T2、T4の経路は、経路2とする。
図1では、情報タグT1は、経路1、2における直線区間の開始付近に設置されている。情報タグT2は、経路1における情報タグT2と情報タグT3との間に含まれる右方へのカーブ区間の手前であって、経路2における情報タグT2と情報タグT4との間に含まれる左方へのカーブ区間の手前に設置されている。
【0017】
次に、無人搬送車11について説明する。
図2(a)に示すように、無人搬送車11の車体13の前部には左右一対の前輪14が備えられ、車体13の後部には左右一対の後輪15が備えられている。前輪14は操舵輪であり、後輪15は駆動輪である。
図2(b)に示すように、車体13の上部には、荷Wの搭載が可能な荷台16が備えられている。
【0018】
車体13には前輪14を操舵する操舵部17と、後輪15を駆動する走行駆動部18と、が搭載されている。
図3に示すように、操舵部17は、操舵機構19と、操舵用の電動モータ20と、を有している。操舵機構19は操舵用の電動モータ20の回転を前輪14の左右の操舵に変換するための機構である。操舵用の電動モータ20の駆動により操舵機構19が作動され、操舵機構19の作動により前輪14が操舵される。無人搬送車11は、前輪14の操舵角度により進行方向が定まる。
【0019】
図3に示すように、走行駆動部18は、走行用の電動モータ21と、走行用の電動モータ21を駆動するモータドライバ22と、を有している。走行用の電動モータ21がモータドライバ22によって制御されて駆動される。電動モータ21の駆動により後輪15が回転する。無人搬送車11は、後輪15の回転により前進又は後進する。走行用の電動モータ21には、回転量を読み取るエンコーダ(図示せず)が備えられている。
【0020】
車体13にはコントローラ23が搭載されている。コントローラ23は、操舵用の電動モータ20およびモータドライバ22と接続されており、操舵用の電動モータ20およびモータドライバ22を制御する。
図3に示すように、コントローラ23は、演算処理部としてのCPU24と、RAMおよびROM等からなる記憶部25と、を備えている。コントローラ23は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えていてもよい。コントローラ23は、コンピュータプログラムにしたがって動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。なお、記憶部25は、コントローラ23と別に設けて、コントローラ23と通信可能に接続してもよい。
【0021】
車体13の前部には、磁気テープ12を検出するための誘導ガイドセンサ26が備えられている。誘導ガイドセンサ26はコントローラ23と接続されている。誘導ガイドセンサ26が磁気テープ12を検出することで、コントローラ23は、無人搬送車11が走行経路Rから逸脱していないことを認識できる。誘導ガイドセンサ26は、誘導線検出センサに相当する。無人搬送車11には警告器(図示せず)が備えられており、誘導ガイドセンサ26が磁気テープ12を検出しなくなると、コントローラ23は警告器を作動させる。
【0022】
コントローラ23は、情報タグTを検知する情報タグ検知部としてのタグ通信部27と接続されている。タグ通信部27は、車体13において情報タグTと対向する位置に備えられており、情報タグTに近接したときに無線通信が可能である。タグ通信部27は、情報タグTと通信して情報タグTに格納されているタグ番号を取得してコントローラ23へ伝達する。無人搬送車11がタグ番号に基づいて走行するように、コントローラ23は、走行駆動部18を制御する。
【0023】
本実施形態の無人搬送車11の走行は、高速走行と低速走行のほか、中速走行、最低速度走行が可能である。走行経路Rにおける直線区間を走行する場合、無人搬送車11は高速走行で走行され、走行経路Rにおけるカーブ区間を走行する場合、無人搬送車11は低速走行で走行される。また、無人搬送車11は、無人による自動走行のほか、作業者による手動操作による走行(以下「手動走行」と表記する)が可能である。手動走行は、非自動走行に相当し、操舵部17および走行駆動部18の駆動を作業者が操作する走行である。無人搬送車11の加速、減速および停止は、コントローラ23が情報タグTから取得したタグ番号に基づき、走行駆動部18を制御することで行われる。また、コントローラ23は、情報タグTから取得したタグ番号に基づき、操舵部17を制御する。
【0024】
例えば、
図1に示す例では、経路1の走行中にタグ通信部27により情報タグT1のタグ番号「01」が取得されると、コントローラ23は、無人搬送車11が情報タグT1からの直線区間において中速走行を行うように、走行駆動部18を制御する。さらに経路1の走行中に情報タグT2のタグ番号「02」が取得されると、コントローラ23は無人搬送車11が低速走行で右折するように操舵部17および走行駆動部18を制御する。なお、経路2の走行中に情報タグT2のタグ番号「02」が取得されると、コントローラ23は無人搬送車11が低速走行で左折するように操舵部17および走行駆動部18を制御する。このように、コントローラ23は、情報タグTのタグ番号により予め設定された経路に基づいて、タグ通信部27により取得したタグ番号に応じた制御を操舵部17および走行駆動部18に対して行う。
【0025】
無人搬送車11は、コントローラ23と接続されている入力部28を有する。入力部28は、経路番号とタグ番号を入力することが可能である。例えば、
図4に示すように、入力部28の入力画面29は、経路番号の入力欄30と、情報タグTのタグ番号の入力欄31と、設定ボタン33と、を備えている。
図4に示す入力画面29は、無人搬送車11が走行経路Rから外れた場合に、走行経路Rまで手動走行により移動した後に、走行経路Rでの自動走行に復帰させるときに経路番号、タグ番号を再入力するための設定画面である。コントローラ23に予め設定されている経路番号および情報タグTから取得されてコントローラ23に設定された経路番号は、機側経路番号に相当する。
【0026】
ところで、本実施形態では、コントローラ23の記憶部25には、無人搬送車11が走行経路Rから外れた場合に、無人搬送車11の走行経路Rへの復帰後に、無人搬送車11の走行経路Rからの逸脱を防止するためのプログラムが格納されている。
図5は、無人搬送車11の走行経路Rへの復帰後に、無人搬送車11の走行経路Rからの逸脱を防止するための一連のステップを示すフロー図である。
【0027】
無人搬送車11が走行経路Rから外れると、無人搬送車11の自動運転が停止される(ステップS01)。無人搬送車11の自動運転停止後に、コントローラ23は、電動モータ21のエンコーダに変化があるか否かを判別する(ステップS02)。エンコーダに変化があると判別された場合、コントローラ23は、無人搬送車11の走行は手動走行であると判別する(ステップS03)。自動運転停止後に作業者の操作なく自動運転が再開されることはないので、エンコーダに変化があれば、手動走行と判別できる。作業者による無人搬送車11の手動走行は、走行経路Rから外れた無人搬送車11を走行経路Rへ復帰させるための走行である。なお、自動運転停止後にエンコーダに変化がないと判別されると、エンコーダに変化があるまでループする。
【0028】
無人搬送車11の走行が手動走行であると判別されると、コントローラ23は無人搬送車11の自動走行が開始されたか否かを判別する(ステップS04)。具体的には、コントローラ23は、車体13に設けられたスイッチ(図示せず)が作業者によってONされたか否かを判断することで無人搬送車11の自動走行が開始されたか否かを判別する。無人搬送車11の自動走行が開始されたと判別されると、コントローラ23は、経路番号およびタグ番号が再設定されているか否かを判別する(ステップS05)。自動走行が開始される前に、作業者は、入力部28の入力画面29から経路番号やタグ番号を入力することが可能である。経路番号およびタグ番号が再設定されていると判別されると、コントローラ23は、無人搬送車11の速度設定を経路番号およびタグ番号に応じた速度設定とする(ステップS06)。経路番号およびタグ番号が再設定されていないと判別されると、コントローラ23は、無人搬送車11の速度設定を最低速度に設定する(ステップS07)。なお、ステップS05で経路番号が入力されない場合、無人搬送車11は、停止前の状態で設定されている経路番号を引き継ぎ、引き継がれた経路番号に対応する経路を走行する。
【0029】
次に、コントローラ23は、ステップS06又はステップS07の速度設定に基づいて走行駆動部18を制御し、無人搬送車11を自動走行させる(ステップS08)。次に、コントローラ23は、タグ通信部27が情報タグTを検知したか否かを判別する(ステップS09)。タグ通信部27が情報タグTを検知したと判別されると、コントローラ23は、検知した情報タグTから取得されたタグ番号が無人搬送車11に設定されている経路番号のタグ番号に含まれているか否かを判別する(ステップS10)。なお、ステップS09で、情報タグTを検知しないと判別されると、情報タグTを検知するように自動走行を継続する。
【0030】
ステップS10において、検知した情報タグTから取得されたタグ番号が、無人搬送車11に設定されている経路番号の情報タグTのタグ番号に含まれると判別されると、コントローラ23は、検知された情報タグTのタグ番号に基づく速度設定に設定する(ステップS11)。例えば、経路1を走行する無人搬送車11が情報タグT3のタグ番号「03」を取得した場合、コントローラ23は、タグ番号「03」は経路1を設定する情報タグT1~T3に含まれるタグ番号であると判別する。無人搬送車11の速度設定が検知された情報タグTのタグ番号に基づく速度設定に設定されると、コントローラ23は、無人搬送車11の自動走行を継続させる(ステップS13)。一方、ステップS10において、検知した情報タグTから取得されたタグ番号が、無人搬送車11の経路番号の情報タグTのタグ番号に含まれないと判別されると、コントローラ23は、異常として無人搬送車11を異常停止する(ステップS12)。例えば、経路1を走行する無人搬送車11が情報タグT4のタグ番号「04」を取得した場合、コントローラ23は、タグ番号「04」は経路1を設定する情報タグT1~T3に含まれないタグ番号であると判別する。
【0031】
次に、本実施形態に係る無人搬送車11の走行制御システム10の作用について説明する。
図6(a)に示すように、例えば、経路1を走行中に無人搬送車11が、何らかの理由で、走行経路Rから外れると、自動走行中の無人搬送車11は走行経路Rからの逸脱異常により停止する。
図6(a)の例では、無人搬送車11は、情報タグT1を読み取った後に走行経路Rから外れ、停止する。そこで、作業者は無人搬送車11を手動操作により走行経路Rに復帰させる。この場合、作業者は、情報タグT2を検知せずに、走行経路Rの情報タグT2の前方へ無人搬送車11を復帰させたとする。
【0032】
作業者は、復帰させた後に無人搬送車11の自動運転を再開するため、経路番号と、情報タグTのタグ番号を入力することができる。ここでは情報タグT3が設置されている経路1とし、情報タグT4が設置されている経路2とする。作業者は、経路1を無人搬送車11に走行させたいので、入力画面29から経路番号の入力欄30に「1」を入力し、検知されなかった情報タグT2のタグ番号の「02」を入力欄31に入力し、設定ボタン33を押す。そして、作業者は無人搬送車11の自動走行を再開させる。
【0033】
無人搬送車11は、経路番号およびタグ番号が再設定されているので、情報タグT2のタグ番号「02」に基づく速度設定(低速走行)で、情報タグT3へ向けて経路1を自動走行する。無人搬送車11は、情報タグT3を検知すると、情報タグT3のタグ番号「03」を取得する。情報タグT3のタグ番号「03」は、無人搬送車11に再設定された経路1の情報タグT1~T3に含まれるので、自動走行が継続される。
【0034】
ところで、無人搬送車11が走行経路Rから外れて手動走行により走行経路Rに復帰された後、自動走行のための再設定の作業は、情報タグTのタグ番号が何番であるかを調べたりする必要がある等煩雑である。そこで、本実施形態では再設定の作業を行わずに無人搬送車11の自動走行を再開させることが可能である。この場合、無人搬送車11の自動走行を再開したときの速度設定は、最低速度に設定される。したがって、無人搬送車11が自動走行を再開しても、高速走行によって走行経路Rから逸脱するという現象は生じない。
【0035】
再設定を行わずに自動走行を再開した無人搬送車11には、走行経路Rから外れたときの経路番号が設定されている。無人搬送車11に設定されている経路番号が「1」であれば、自動走行を再開した無人搬送車11は、最低速度で経路1を走行する。そして、タグ通信部27が情報タグT3を検知することで、無人搬送車11の速度設定は情報タグT3のタグ番号「03」に基づき速度設定される。
【0036】
再設定を行わずに自動走行を再開した無人搬送車11には、走行経路Rから外れたときの経路番号が設定されているので、例えば、経路番号が「1」であれば、自動走行を再開した無人搬送車11は、最低速度で経路1を走行する。しかし、無人搬送車11が、何らかの理由で経路2を最低速度で走行すると、タグ通信部27が情報タグT4を最初に検知することになる。自動走行の再開後に最初に検知され取得された情報タグT4のタグ番号「04」は、無人搬送車11に設定されている経路番号の経路1の情報タグT1~T3に含まれないので、無人搬送車11は異常停止する。したがって、再設定を行わずに無人搬送車11の自動走行を再開させても、取得された情報タグTのタグ情報が無人搬送車11に設定されている経路番号の情報タグTのタグ情報に含まれない場合には、無人搬送車11を異常停止させることができる。
【0037】
本実施形態に係る走行制御システム10によれば、以下の効果を奏する。
(1)コントローラ23は、自動走行の再開前に再設定を行わない場合には、無人搬送車11の走行が手動走行から自動走行へ切り換えられたとき、走行速度を最低速度に設定する。このため、手動走行から自動走行へ切り換えられたときの走行経路Rにおける無人搬送車11の位置に関わらず、無人搬送車11は、次の情報タグTを検出するまで最低速度による走行を行う。よって、無人搬送車11を手動走行によって走行経路Rへ復帰させて無人走行に切り換えても、自動走行再開後の無人搬送車11の走行経路Rからの逸脱を防止できる。
【0038】
(2)コントローラ23は、無人搬送車11の走行経路Rを示す経路番号およびタグ番号を設定可能な入力部28を有する。そして、コントローラ23は、自動走行の再開後に低速走行で走行するときに最初に検知された情報タグTから得られるタグ番号が、コントローラ23に予め設定されている経路番号の情報タグTに含まれているか否かを判別する。最初に検知された情報タグTから得られるタグ番号がコントローラ23に予め設定されている経路番号の情報タグTに含まれてないと判別されたとき、コントローラ23は、無人搬送車11を停止する。つまり、走行すべき経路番号の経路を走行していないという異常によって無人搬送車11を速やかに停止させることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の走行制御システムについて説明する。本実施形態では、走行経路が磁気テープにより構成されるのではなく、無人搬送車のコントローラに記憶されている環境地図において設定される仮想走行経路である点で第1の実施形態と相違する。また、情報タグについても環境地図における仮想走行経路に沿って設定される仮想情報タグである。本実施形態は、第1の実施形態と共通する構成について第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0040】
図7(a)に示す走行制御システム40の無人搬送車41は、自律走行により自己位置を推定しつつ環境地図を作成する機能を有する。無人搬送車41にはレーザ式測距装置42が搭載されている。レーザ式測距装置42は、無人搬送車41の周囲に対してレーザ光を照射することで障害物等を点群で取得し、障害物の位置を特定する。自己位置を推定しつつ環境地図を同時に作成する技術として、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)が知られている。無人搬送車41におけるコントローラ23の記憶部25には、環境地
図43が記憶されている。
【0041】
図7(b)に示すように、環境地
図43には仮想走行経路Rvが設定されている。環境地
図43における走行経路Rに沿って仮想情報タグTv(Tv1~Tv4)が設定されている。仮想走行経路Rvは走行経路Rに相当するが、無人搬送車41が走行する路面Fには存在しない。また、仮想情報タグTvも情報タグTと同等の機能を有するが、無人搬送車41が走行する路面Fには存在しない。なお、
図7(a)では、説明の便宜上、仮想走行経路Rvおよび仮想情報タグTv(Tv1~Tv4)を仮想線にて示す。無人搬送車11におけるタグ通信部27相当の位置が、コントローラ23に記憶されている環境地図における仮想情報タグTv(Tv1~Tv4)の位置情報と重なることで、コントローラ23は仮想情報タグTv(Tv1~Tv4)のタグ番号を読み取ったと判断する。つまり、コントローラ23は、仮想情報タグTvの検知を判断する仮想情報タグ検知判断部であり、仮想情報タグTvを検出する情報タグ検知部に相当する。
【0042】
一方、無人搬送車11が実際に走行する路面Fには、可視化された復旧位置Xが設定されている。復旧位置Xは、無人搬送車11が仮想走行経路Rvから外れたときに自動走行を再開する復旧のための位置であり、仮想走行経路Rvに対応する位置に設定されている。作業者が復旧位置Xを認識できるように可視化のための手段(塗料、色テープ等)により表示されている。なお、路面Fには複数の復旧位置Xを設定してもよい。
【0043】
本実施形態によれば、無人搬送車41が走行する路面Fには、非自動走行から自動走行に切り換えるための復旧位置Xが設定され、復旧位置Xが可視化されている。このため、作業者は、無人搬送車41が走行経路Rから外れても可視化された復旧位置Xへ移動させることができ、SLAM等の技術によって路面Fに走行経路が示されない場合であっても非自動走行から自動走行への復旧が可能となる。
【0044】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0045】
○ 上記の実施形態では、自動走行の再開前に経路番号およびタグ情報の再設定を行わない場合には、無人走行体は再開後の自動走行を最低速度で走行するとしたがこれに限らない。無人走行体の再開後の自動走行は、低速設定による低速での走行であってもよく、少なくとも、無人走行体が走行経路から逸脱しない程度の低速で走行すればよい。
○ 上記の実施形態では、無人走行体の非自動走行の例として、無人走行体が作業者の操作による手動走行を例示したが、この限りではない。無人走行体の非自動走行は、例えば、作業者の人力による無人走行体の移動であってもよい。作業者の人力によって無人走行体を移動する場合、駆動輪を遊転できる状態にすることが好ましい。
○ 上記の実施形態では、無人走行体の手動走行(非自動走行)は、電動モータのエンコーダの変化の有無により判別されたが、これに限らない。無人走行体の手動走行(非自動走行)は、例えば、無人走行体に設けられた手動走行の切り替えのためのスイッチのON・OFFによる判別や、アクセル手段の操作の有無による判別としてもよい。
○ 上記の実施形態では、無人走行体の速度設定は、高速走行と低速走行のほか、最低速度走行が可能であるとしたがこの限りではない。例えば、高速走行、中速走行および低速走行というように、無人走行体の速度設定を設定してもよく、無人走行体の速度設定は自由である。
○ 上記の実施形態では、無人走行体として無人搬送車を例示して説明したが、これに限定されない。無人走行体は、例えば、無人フォークリフトや牽引車であってもよく、無人で走行することが可能な走行体であればよい。
【符号の説明】
【0046】
10、40 無人搬送車の走行制御システム
11、41 無人搬送車(無人走行体)
12 磁気テープ
13 車体
14 前輪
15 後輪
16 荷台
17 操舵部
18 走行駆動部
19 操舵機構
20 電動モータ(操舵用)
21 電動モータ(走行用)
22 モータドライバ
23 コントローラ
24 CPU
25 記憶部
26 誘導ガイドセンサ
27 タグ通信部
28 入力部
29 入力画面
F 路面
R 走行経路
Rv 仮想走行経路
T(T1、T2、T3、T4) 情報タグ
Tv(Tv1、Tv2、Tv3、Tv4) 仮想情報タグ