(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142899
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】X線検査システムおよびそのキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
B07C 5/36 20060101AFI20241003BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20241003BHJP
B07C 5/346 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B07C5/36
B25J13/08 A
B07C5/346
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055289
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 壽晃
【テーマコード(参考)】
3C707
3F079
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS15
3C707DS01
3C707FS01
3C707FU01
3C707JS02
3C707KS01
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3C707KT06
3C707KX19
3C707LT06
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3C707LV06
3C707NS02
3F079AC06
3F079AD08
3F079CA38
3F079CA44
3F079CB07
3F079CB29
3F079CB34
3F079CC01
3F079CC06
3F079DA12
3F079EA02
3F079EA08
3F079EA15
3F079EA19
(57)【要約】
【課題】搬送される作業対象物に対してロボットの手先を的確に追従させ得るX線検査システムおよびそのキャリブレーション方法を提供する。
【解決手段】X線検査装置10と、トリガ信号を受け所定の稼働領域Arw内で所定の作業を実行するロボット30と、X線検査装置10およびロボット30と通信可能に接続された制御装置20とを備えたX線検査システムであり、逐次X線画像Xiに所定の検査結果とされた特定領域があるとき、少なくともその領域の領域位置情報を含む検査情報を制御装置20に通信出力し、制御装置20からロボット30に対して所定の作業実行位置情報をトリガ信号として通信出力させ、少なくともトリガ信号出力から作業対象の被検査物が稼働領域Arw内の所定作業位置に達するまでの間に、その搬送移動量に応じた信号をロボット30に対して出力させ、ロボット30が所定作業位置を教示された後に所定の作業を実行するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送条件で動作する搬送手段により搬送される被検査物(Wp)にX線を照射し、検出したX線透過データを処理して得られるX線画像に基づいて前記被検査物を検査するX線検査装置(10)と、
トリガ信号を受け、該トリガ信号に含まれる情報に基づいて所定の稼働領域(Arw)内で前記被検査物に対し所定の作業を実行するロボット(30)と、
前記X線検査装置および前記ロボットと通信可能に接続された制御装置(20)と、
を備えたX線検査システムであって、
前記X線検査装置は、所定周期で、該周期内に検出した前記X線透過データを処理して逐次X線画像(Xi)を生成し、該逐次X線画像に所定の検査結果とされた特定領域があるとき、少なくとも該特定領域の位置を示す領域位置情報を含む検査情報を前記制御装置に対して通信出力できるようになっており、
前記制御装置は、
前記検査情報に基づき、前記ロボットに対して前記所定の作業を実行すべき位置を示す情報を含む作業位置情報を前記トリガ信号として通信出力する位置情報出力手段(25、26)と、
少なくとも前記トリガ信号を出力してから、前記ロボットが前記所定の作業を実行すべき被検査物が前記稼働領域内の所定の作業位置に達するまでの間において、該被検査物が前記搬送手段により搬送されて移動した搬送移動量に応じて搬送信号を前記ロボットに対して出力する搬送信号出力手段と
を有し、
前記ロボットは、前記領域位置情報に対応する前記所定の作業位置を教示された後、前記所定の作業を実行する、ことを特徴とするX線検査システム。
【請求項2】
前記位置情報出力手段は、前記X線検査装置から通信出力される前記検査情報のうち、前記所定の検査結果を含む前記検査情報を受信したとき前記トリガ信号を通信出力し、該所定の検査結果を含まない前記検査情報を受信したとき前記トリガ信号を通信出力しないことを特徴とする請求項1に記載のX線検査システム。
【請求項3】
前記位置情報出力手段は、前記所定の検査結果を含む前記検査情報を受信する毎に、前記トリガ信号を通信出力することを特徴とする請求項2に記載のX線検査システム。
【請求項4】
前記位置情報出力手段は、前記所定の検査結果を含む前記検査情報を順次記憶し、所定のタイミングで該検査情報を読み出して通信出力することを特徴とする請求項2に記載のX線検査システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記領域位置情報と前記所定の作業位置との対応関係を前記ロボットに教示するための教示モードを実行可能とされ、前記ロボットは、前記対応関係を記憶可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記教示モードにおいて、
前記X線検査装置から前記検査情報を受けたとき、第1停止位置で前記被検査物の搬送を停止させ、前記ロボットに前記トリガ信号を通信出力したとき該被検査物の搬送を再開させ、該被検査物が前記ロボットの前記稼働領域に含まれる第2停止位置で該被検査物の搬送を再度停止させてから、前記ロボットに前記対応関係を教示させる、ことを特徴とする請求項5に記載のX線検査システム。
【請求項7】
前記制御装置は、所定の操作入力を受けるごとに前記搬送手段を所定時間だけ寸動させ、前記操作入力を複数受けることによって、前記被検査物を前記第1停止位置から前記第2停止位置まで搬送させることを特徴とする請求項6に記載のX線検査システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記被検査物が第2停止位置に停止しているとき、前記領域位置情報に基づく座標データを判読可能に表示する表示手段(19)を、さらに有することを特徴とする請求項6または7に記載のX線検査システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記座標データの位置を表す記号を、二次元座標において該座標データに直接的または間接的に対応させて前記表示手段に表示することを特徴とする請求項8に記載のX線検査システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記ロボットに前記対応関係を教示するために前記座標データの入力を受け付ける座標設定手段をさらに有し、該座標設定された座標データを該ロボットに通信出力することを特徴とする請求項8または9に記載のX線検査システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記被検査物が前記第2停止位置に停止しているとき、前記領域位置情報に基づく座標データを前記ロボットに通信出力することを特徴とする請求項6または7に記載のX線検査システム。
【請求項12】
請求項5に記載のX線検査システムを用いて、
前記制御装置を前記教示モードに設定し、前記X線検査装置により前記所定の検査結果とされる前記特定領域を生じさせるための複数の教示体が付された前記被検査物を搬送させ、前記ロボットに前記対応関係を教示させる、ことを特徴とするX線検査システムのキャリブレーション方法。
【請求項13】
前記教示体は、少なくとも1つの基点教示体と、少なくとも1つの他点教示体と、を含むことを特徴とする請求項12に記載のX線検査システムのキャリブレーション方法。
【請求項14】
前記ロボットに、前記基点教示体の存在位置を教示し、次いで前記他点教示体の存在位置を教示することにより、前記対応関係を教示することを特徴とする請求項13に記載のX線検査システムのキャリブレーション方法。
【請求項15】
各教示体が単一の基材シートに目視可能に設けられたテストチャートを前記被検査物として用いることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載のX線検査システムのキャリブレーション方法。
【請求項16】
コンベア上を搬送される被検査物について取得したX線透過画像における所定の特定領域の位置を特定して前記特定領域の位置情報を通信出力するステップと、
前記位置情報に基づいて、ロボットに対し、前記被検査物に所定の作業を実行させるための作業位置情報を前記ロボットに通信出力させるステップと、
前記作業位置情報に基づいて前記ロボットに前記所定の作業を実行させるステップと、を有するX線検査方法において、
前記被検査物として、前記X線透過画像に前記所定の特定領域を生じる所定の教示体を備えたテストチャートを搬送させ、教示モードを開始させるステップと、
前記テストチャートの前記X線透過画像を取得し、該X線透過画像における前記所定の特定領域の位置を特定して前記位置情報を前記所定のタイミングで通信出力するステップと、
前記コンベアを制御して前記テストチャートの搬送を停止するステップと、
前記位置情報に基づいて前記作業位置情報を通信出力するステップと、
前記コンベアを制御して、該テストチャートの搬送を再開し、該テストチャートを前記ロボットの前記稼働領域に停止するとともに、少なくとも該搬送を再開してから停止させるまでの間における該テストチャートの搬送移動量を示す搬送信号を前記ロボットに出力するステップと、
前記ロボットに対し、前記稼働領域にある該テストチャートにおける前記所定の教示体の存在位置を教示し、前記作業位置情報と該存在位置との対応関係を算出して記憶させるステップと、
該教示モードを終了するステップと、を含むことを特徴とするX線検査方法。
【請求項17】
X線検査装置の有するベルトコンベアに搬送されてX線照射領域を通過することにより、該X線検査装置に所定周期で逐次X線画像を生成させ、前記逐次X線画像に所定の特定領域を生じさせるためのテストチャートであって、
所定のX線透過率を有する基材シート(71)と、
前記X線逐次画像において、前記基材シートに対応する部位に対して所定のコントラストとなるX線遮蔽率を有する複数の遮蔽体が所定の間隔で離間して固定され、かつ前記遮蔽体は前記基材シートの少なくとも一面側から視認可能とされていることを特徴とするテストチャート。
【請求項18】
前記テストチャートは、任意の搬送タイミングについて、複数の前記逐次X線画像にわたって前記特定領域を生じさせるように前記遮蔽体が配置されていることを特徴とする請求項17に記載のテストチャート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査システムおよびそのキャリブレーション方法に関し、特に、コンベア搬送中の物品を順次X線検査するX線検査装置とその検査結果に応じて物品搬送に追従しつつ所定の作業を行うロボットとを備えたX線検査システム、および、そのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送物品を順次検査するX線検査システムにおいて、不良となった物品を選別機等で搬送路外に排除する場合、搬送中の物品を物品検知センサで検知し、その検知信号をトリガとしてワークの排除タイミングが設定されるものが多い。
【0003】
しかし、比較的小サイズの複数の物品を整列させることなく散らばせた状態で搬送(以下、バラ状搬送ともいう)する場合、物品検知によって不良物品を確定することが容易でないため、搬送路上の所定エリア単位で物品検査を実行し、その検査エリアに対応する一定搬送距離毎に、不良品の有無に応じて被検査物品を搬送路上から選択的に系外に排除するものが知られていたが、不良品の排除時に良品の一部まで系外排出するため、製品歩留まりが悪いという問題があった。
【0004】
そこで、近時、ロボットを用いて物品搬送に追従しつつ不良品を排除可能にするコンベアトラッキングシステムが多用されてきており、特に視覚センサとして工業用のテレビカメラを用いるビジョントラッキングシステムがピンポイントでの排除に有効である。
【0005】
このようなトラッキングシステムでは、カメラ画像から撮像対象物の位置や姿勢等を正確に把握可能にするために個々のカメラのキャリブレーション(校正)に加え、ビジョントラッキングのためにカメラおよびその画像処理装置から得られるカメラ画像の座標値をロボット座標系の座標値に変換するためのキャリブレーションが実行される。
【0006】
すなわち、カメラ付きロボットでのコンベアトラッキングが採用される場合、搬送方向への座標追従のために、キャリブレーションと呼ばれる調整を実施することで、撮像信号(例えば原点信号)となるカメラの視野画像の座標値を、ロボット座標系の座標値に変換してロボットに入力させるとともに、搬送方向の移動についてエンコーダーで同期をとることにより、連動動作可能にしている。
【0007】
この種のビジョントラッキングのためのキャリブレーション方法としては、例えば、ロボットアームの先端が視野内に入る第1のカメラと、コンベア上の所定搬送区間内のワークは視野内に入るもののロボットアームの先端が視野内に入らない第2、第3のカメラと、隣り合う間隔が大小に異なる3つの穴(ここでは、便宜的に穴h1、h2、h3という)を有するキャリブレーション用ワークとを備え、穴h1、h2が第1のカメラの視野内に入り、穴h3が第2のカメラの視野内に入るようにキャリブレーション用ワークを配置して、穴h1、h2、h3のカメラ座標値を求め、カメラ座標値からロボット座標値への変換が平行移動と回転の組合せであるという考えに基づく所定の変換式により穴h1、h2のロボット座標値を求め、穴h1、h2、h3の位置関係と穴h1、h2のロボット座標値とから、h3のロボット座標値を求め、さらに、キャリブレーション用ワークを少しずらして、同様な計算を行うことにより、第2のカメラのキャリブレーションを行うというものが知られている(特許文献1参照)。
【0008】
また、目盛り付きのマーク板が視覚認識範囲内に入ったことを条件にその視覚認識処理を開始させるとともに、画像の取り込みタイミングに合わせてコンベア搬送による移動量を計測する一方で、マーク板がロボットの動作範囲の第1の位置にあるときに手先にポインタとなるピンを把持したロボットで、ピンに接するマーク板の所定の目盛り位置の座標を取得し、マーク板がロボットの動作範囲の第2の位置にあるとき、第1の位置からの移動距離(ΔConv)と、同様に読み取った目盛り位置の各座標成分(x、y、z)の変化量とに基いて、座標変換のパラメータQ、R、Sを求めるようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62-214403号公報
【特許文献2】特開平6-238584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のようなコンベアトラッキングをX線検査システムに適用し、座標出力機能を持ったX線検査装置とコンベアトラッキング機能を持ったロボットを備えたX線検査システムとして構成される場合では、物品ごとにその物品を基準にしたX線画像の座標をロボットの座標系に対応させる位置合わせができない場合があるためにX線画像の座標をコンベアトラッキングに有効活用することができなかった。
【0011】
具体的には、X線検査装置では、通常、X線ラインセンサによりX線ライン画像の取得が短周期で繰り返されるとともに、被検査物のコンベア搬送に伴って所定ライン数分のX線ライン画像のデータが画像メモリに蓄積されることで、周期的に所定画像サイズのX線画像(以下、逐次X線画像ともいう)が取得される。したがって、被検査物品が一定の形状を有する製品であって間隔をあけて整列搬送されるような場合であれば、物品検知センサの検知信号をトリガとして物品搬送と同期させた逐次X線画像を得ることで、物品を基準にロボットアームの手先と基準位置の位置合わせを行った物品のX線検査画像をロボットに入力させ、コンベアトラッキングに活用することができる。
【0012】
しかし、比較的小サイズの複数の物品を整列させることなくバラ状搬送するような場合、物品検知によって不良物品を確定することが困難である。例えば、コンベアの搬送幅方向(搬送方向に直交する方向)から見て被検査物が重なって搬送され得るバラ状検査や並列検査では、物品ごとにその物品を基準にした位置合わせを行うことができない。また、逐次X線画像を基準に不良品の座標を作成して位置合わせすることも考えられるが、X線画像上の原点とロボットアームの手先の原点との同期をとることができず、X線画像の座標とビジョントラッキングで用いる座標の位置ずれが生じる場合がある。
【0013】
そのため、細かな座標取得が可能なX線画像データが出力可能なX線検査装置を備えたシステム構成であるにもかかわらず、迅速・的確なトラッキングや排除動作を行うのに適したX線画像を取得するということができず、ビジョンカメラによる撮像画像の代わりにX線画像を有効に活用できないという未解決の課題があった。
【0014】
そこで、本発明は、物品搬送形態にかかわらず搬送される作業対象物に対してロボットの手先を的確に追従させることができる、X線画像によるビジョントラッキングを行うX線ビジョントラッキング方式のX線検査システムおよびそのキャリブレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るX線検査システムは、上記目的達成のため、(1)所定の搬送条件で動作する搬送手段により搬送される被検査物にX線を照射し、検出したX線透過データを処理して得られるX線画像に基づいて前記被検査物を検査するX線検査装置と、トリガ信号を受け、該トリガ信号に含まれる情報に基づいて所定の稼働領域内で前記被検査物に対し所定の作業を実行するロボットと、前記X線検査装置および前記ロボットと通信可能に接続された制御装置と、を備えたX線検査システムであって、前記X線検査装置は、所定周期で、該周期内に検出した前記X線透過データを処理して逐次X線画像を生成し、該逐次X線画像に所定の検査結果とされた特定領域があるとき、少なくとも該特定領域の位置を示す領域位置情報を含む検査情報を前記制御装置に対して通信出力できるようになっており、前記制御装置は、前記検査情報に基づき、前記ロボットに対して前記所定の作業を実行すべき位置を示す情報を含む作業位置情報を前記トリガ信号として通信出力する位置情報出力手段と、少なくとも前記トリガ信号を出力してから、前記ロボットが前記所定の作業を実行すべき被検査物が前記稼働領域内の所定の作業位置に達するまでの間において、該被検査物が前記搬送手段により搬送されて移動した搬送移動量に応じて搬送信号を前記ロボットに対して出力する搬送信号出力手段とを有し、前記ロボットは、前記領域位置情報に対応する前記所定の作業位置を教示された後、前記所定の作業を実行する、ことを特徴とする。
【0016】
この構成により、本発明では、制御装置が、所定の検査結果の被検査物に対応する逐次X線画像における特定領域の位置を示す領域位置情報を含む検査情報をX線検査装置から取得し、その検査情報に基づきロボットに対して所定の作業を実行すべき位置を示す情報を含む作業位置情報をトリガ信号として通信出力し、トリガ信号を出力してから、ロボットが所定の作業を実行すべき被検査物が前記稼働領域内の所定の作業位置に達するまでの搬送移動量を出力してロボット30が所定の作業を実行する構成とした上で、前作業としてロボットに領域位置情報に対応する作業位置の座標を教示させ、教示されたロボットがトリガ信号を受けると、そのトリガ信号に含まれる作業対象物(作業対象となる被検査物)の領域位置情報に対応する作業位置情報と搬送移動量とに基づいて前記所定の作業を実行する。したがって、作業対象物の位置情報をロボットの座標系に対応させる位置合わせが可能となり、X線検査装置から出力される位置情報をビジョントラッキングに有効活用できることになる。また、X線検査する被検査物のサイズやその被検査物に対するロボットの作業能力に応じた好適なX線検査画像サイズを設定することで、被検査物の搬送形態にかかわらずトラッキングに好適な作業対象のX線画像を取得でき、作業対象物の座標に対してロボットの手先を的確に追従させることができるX線検査システムとなる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、(2)前記位置情報出力手段は、前記X線検査装置から通信出力される前記検査情報のうち、前記所定の検査結果を含む前記検査情報を受信したとき前記トリガ信号を通信出力し、該所定の検査結果を含まない前記検査情報を受信したとき前記トリガ信号を通信出力しない構成とすることができる。このようにすると、例えば、検査が良否検査のとき、圧倒的多数の良品について無用な信号を出力しないようにすることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、(3)前記位置情報出力手段は、前記所定の検査結果を含む前記検査情報を受信する毎に、前記トリガ信号を通信出力する構成とすることができる。このようにすると、作業対象の被検査物の発生ごとに、トリガ信号に応じたロボットの作業、例えば不良品の被検査物のピンポイントの排除作業を実行させることができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、(4)前記位置情報出力手段は、前記所定の検査結果を含む前記検査情報を順次記憶し、所定のタイミングで該検査情報を読み出して通信出力する構成とすることができる。このようにすると、ロボットの作業が要求されるタイミングに応じて、ロボットに対し適時に検査情報を通信出力することができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、(5)前記制御装置は、前記領域位置情報と前記所定の作業位置との対応関係を前記ロボットに教示するための教示モードを実行可能とされ、前記ロボットは、前記対応関係を記憶可能とされている構成とすることができる。この場合、教示モード下で、領域位置情報と所定の作業位置との対応関係をロボットに教示するので、ロボットに、その対応関係を的確に記憶させることができる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、(6)前記制御装置は、前記教示モードにおいて、前記X線検査装置から前記検査情報を受けたとき、第1停止位置で前記被検査物の搬送を停止させ、前記ロボットに前記トリガ信号を通信出力したとき該被検査物の搬送を再開させ、該被検査物が前記ロボットの前記稼働領域に含まれる第2停止位置で該被検査物の搬送を再度停止させてから、前記ロボットに前記対応関係を教示させる構成とすることができる。このようにすると、X線検査装置側で所定の検査結果となった特定領域の位置情報を第1停止位置でロボット側の搬送位置情報に変換可能な教示を実行し、その教示後の停止位置から第2停止位置までの搬送移動量を的確に把握した上で、ロボット側で所定の作業を実行すべき作業位置を的確に教示できることになる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、(7)前記制御装置は、所定の操作入力を受けるごとに前記搬送手段を所定時間だけ寸動させ、前記操作入力を複数受けることによって、前記被検査物を前記第1停止位置から前記第2停止位置まで搬送させる構成とすることができる。この場合、作業者が第1停止位置から第2停止位置までの搬送移動量を寸動の回数に応じて容易に有効に把握可能となる。なお、搬送移動距離と方向をロボットに伝える搬送信号出力手段として、コンベア駆動源の動作量や制御信号(モーター回転数や動作パルス信号など)を出力し搬送移動量を算出する手段を設けることができ、または、単純に設定ベルトスピード値と経過時間からの搬送移動量の算出結果を搬送信号として出力する手段を設けることができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、(8)前記制御装置は、前記被検査物が第2停止位置に停止しているとき、前記領域位置情報に基づく座標データを判読可能に表示する表示手段を、さらに有する構成とすることができる。この場合、作業者が、ロボットに作業位置の座標を教示させる際に、座標データが判読可能に表示されるので、その教示位置を的確に把握させることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、(9)前記制御装置は、前記座標データの位置を表す記号を、二次元座標において該座標データに直接的または間接的に対応させて前記表示手段に表示する構成とすることができる。この場合、複数の教示位置とその配置をそれらの表示記号から容易に視認可能となり、作業性が向上する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、(10)前記制御装置は、前記ロボットに前記対応関係を教示するために前記座標データの入力を受け付ける座標設定手段をさらに有し、該座標設定された座標データを該ロボットに通信出力する構成とすることができる。この場合、制御装置側で座標設定された作業位置情報を座標設定手段からロボットに受け渡すので、ロボット側での迅速・的確な教示作業が可能となる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、(11)前記制御装置は、前記被検査物が前記第2停止位置に停止しているとき、前記領域位置情報に基づく座標データを前記ロボットに通信出力する構成とすることができる。このようにすると、ロボットへの教示がロボット側の操作で容易に実行可能となる。
【0027】
本発明に係るX線検査システムのキャリブレーション方法は、上記目的の達成のため、(12)本発明のX線検査システムにあって、前記制御装置は、前記領域位置情報と前記所定の作業位置との対応関係を前記ロボットに教示するための教示モードを実行可能とされ、前記ロボットは、前記対応関係を記憶可能とされている、上記(5)の構成を有するX線検査システムを用いて実施されるキャリブレーション方法であって、前記制御装置を前記教示モードに設定し、前記X線検査装置により前記所定の検査結果とされる前記特定領域を生じさせるための複数の教示体が付された前記被検査物を搬送させ、前記ロボットに前記対応関係を教示させる、ことを特徴とするものである。
【0028】
この構成により、本発明のキャリブレーション方法では、X線検査装置により所定の検査結果とされる特定領域を生じさせるための複数の教示体が付された被検査物を搬送させ、特定領域の位置を示す領域位置情報とロボットが作業を実行する所定の作業位置との対応関係をロボットに教示させる。その結果、X線検査時に得られるX線画像に所定の検査結果とされた特定領域があるとき、その特定領域の位置を示す領域位置情報からロボットの座標系に対応させる位置合わせが可能となり、被検査物の搬送形態にかかわらずトラッキングに好適な作業対象のX線画像を取得して、作業対象物に対してロボットの手先を的確に追従させることができる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態においては、(13)前記教示体は、少なくとも1つの基点教示体と、少なくとも1つの他点教示体と、を含む構成とすることができる。この場合、複数の教示体を用いて教示することになるので、より精度よく位置合わせが可能となり、ロボットの手先を的確に追従させることができる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態においては、(14)前記ロボットに、前記基点教示体の存在位置を教示し、次いで前記他点教示体の存在位置を教示することにより、前記対応関係を教示する構成とすることができる。この場合、少なくとも1つ、例えば3つの基点教示体の存在位置の教示により基点を基にロボット側の座標系の基準を設定でき、他点教示体の存在位置を教示することで、ロボットの稼働範囲に応じた好適な教示範囲設定が可能となる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態においては、(15)各教示体が単一の基材シートに目視可能に設けられたテストチャートを前記被検査物として用いる構成とすることができる。この場合、単一の基材シートに目視可能に設けられたテストチャートを教示用の被検査物として用いることで、作業者がより効率よく教示することができるようになる。
【0032】
本発明に係るX線検査方法は、上記目的達成のため、(16)コンベア上を搬送される被検査物について取得したX線透過画像における所定の特定領域の位置を特定して前記特定領域の位置情報を通信出力するステップと、前記位置情報に基づいて、ロボットに対し、前記被検査物に所定の作業を実行させるための作業位置情報を前記ロボットに通信出力させるステップと、前記作業位置情報に基づいて前記ロボットに前記所定の作業を実行させるステップ、を有するX線検査方法において、前記被検査物として、前記X線透過画像に前記所定の特定領域を生じる所定の教示体を備えたテストチャートを搬送させ、教示モードを開始させるステップと、前記テストチャートの前記X線透過画像を取得し、該X線透過画像における前記所定の特定領域の位置を特定して前記位置情報を前記所定のタイミングで通信出力するステップと、前記コンベアを制御して前記テストチャートの搬送を停止するステップと、前記位置情報に基づいて前記作業位置情報を通信出力するステップと、前記コンベアを制御して、該テストチャートの搬送を再開し、該テストチャートを前記ロボットの前記稼働領域に停止するとともに、少なくとも該搬送を再開してから停止させるまでの間における該テストチャートの搬送移動量を示す搬送信号を前記ロボットに出力するステップと、前記ロボットに対し、前記稼働領域にある該テストチャートにおける前記所定の教示体の存在位置を教示し、前記作業位置情報と該存在位置との対応関係を算出して記憶させるステップと、該教示モードを終了するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0033】
この構成により、本発明のX線検査方法では、X線透過画像に前記所定の特定領域を生じる所定の教示体を備えたテストチャートを搬送させてX線透過画像を取得し、テストチャートの搬送を停止して特定領域の位置を特定してロボットに対し作業を実行させるための作業位置情報を通信出力し、テストチャートの搬送を再開してテストチャートがロボットの稼働領域に到達したら搬送を再停止させて搬送の再開から再停止までの搬送移動量を示す搬送信号をロボットに出力し、ロボットに対してテストチャートにおける所定の教示体の存在位置を教示させて作業位置情報と存在位置との対応関係を算出して記憶するという教示モードの実行を含んでいる。そのため、X線検査時に得られるX線画像に所定の検査結果とされた特定領域があるとき、その特定領域の位置を示す領域位置情報と搬送移動量から、ロボットが記憶する対応関係を基にロボットの座標系に対応させる位置合わせが可能となり、作業対象物に対してロボットの手先を的確に追従させることができる。
【0034】
本発明に係るテストチャートは、(17)X線検査装置の有するベルトコンベアに搬送されてX線照射領域を通過することにより、該X線検査装置に所定周期で逐次X線画像を生成させ、前記逐次X線画像に所定の特定領域を生じさせるためのテストチャートであって、所定のX線透過率を有する基材シートと、前記X線逐次画像において、前記基材シートに対応する部位に対して所定のコントラストとなるX線遮蔽率を有する複数の遮蔽体が所定の間隔で離間して固定され、かつ前記遮蔽体は前記基材シートの少なくとも一面側から視認可能とされていることを特徴とするものである。
【0035】
この構成により、本発明のテストチャートでは、ロボットにX線画像の特定領域の位置を教示するための教示体となる遮蔽体が視認可能に付されているので、テストチャートをロボットの稼働領域内に搬送させ、テストチャートにおける教示体の存在位置を教示させてロボット座標の値をロボットに入力できることになる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態においては、(18)前記テストチャートは、任意の搬送タイミングについて、複数の前記逐次X線画像にわたって前記特定領域を生じさせるように前記遮蔽体が配置されている構成とすることができる。これにより、所定の作業が要求され得るロボットの稼働範囲内に模擬的な特定領域を、作業に有効な配置パターンで分散配置でき、所定の作業に有効なテストを実行できることになる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、搬送される作業対象物に対してロボットの手先を的確に追従させることができる、X線ビジョントラッキング方式のX線検査システムおよびそのキャリブレーション方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施形態に係るX線検査システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るX線検査システムの制御系の概略ブロック構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るX線検査システムにおけるピンポイント排除用のロボットの概略構成図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るX線検査システムにおけるX線ビジョントラッキングのためのキャリブレーション方法の説明図で、同図(a)は、周期的に得られる逐次X線画像Xiのうち対象物相当の複数の教示体画像を含む2つのX線画像の座標位置を搬送方向に調整して対象物基準でそれらを一画像領域内に含め得るようなX線画像Vpを生成する段階を示し、同図(b)は、対象物のX線画像Vpを搬送方向に所定距離Lrだけ移動させてロボットの稼働領域内に配置する段階を示している。
【
図5】本発明の一実施形態に係るX線検査システムでX線ビジョントラッキングのためのキャリブレーションを実行する際に用いるテストチャートの説明図で、対象物のサイズやロボットの作業能力に応じて適当数の対象物画像の座標を対象物基準で搬送方向に調整可能にする複数の教示体配置を示している。
【
図6】(a)は、本発明の一実施形態に係るX線検査システムでX線ビジョントラッキングのためのキャリブレーションを実行する際に用いるテストチャートの一例の平面図であり、(b)は、同図(a)のB6-B6矢視断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るX線検査システムにおいてX線ビジョントラッキングを実行する際に作業対象物であるNG品のX線ビジョンの設定領域を示す説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るX線検査システムにおいてX線ビジョントラッキングのためのキャリブレーションの手順を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係るX線検査システムにおいてX線ビジョントラッキングのためのキャリブレーション作業の中で用いる基点教示体の座標を表示する作業画面の説明図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るX線検査システムにおいてX線ビジョントラッキングのためのキャリブレーション作業の中で用いる基点教示体の座標を表示する他の作業画面の説明図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るX線検査方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0040】
図1~10は、本発明の一実施形態に係るX線検査システムを示している。
【0041】
まず、構成について説明する。
【0042】
図1ないし
図3に示すように、本実施形態に係るX線検査システム1においては、図示しない物品製造ライン中に配置されたコンベア11上で、被検査物である搬送中の物品Wpを少なくともX線検査装置10により順次検査する一方、X線検査装置10で不良品と判定された物品Wpを第1の選別装置であるロボット30によってコンベア11上からピンポイントで排除するようになっている。また、X線検査装置10で不良品と判定されながらロボット30によるピンポイントの排除で対処できない場合には、下流側の選別コンベア40によって所定搬送区間のエリア単位で選別排除されるようになっている。
【0043】
なお、物品Wpは、例えば食品(生鮮食品や加工食品)や薬品のように人や動物に摂取されるもの、あるいは、人や動物に装着されたり触れたりする製品として製造されるものであるが、特定の物品に限定されるものではない。また、
図1中において、コンベア11は、互いに同期駆動される上流側のコンベア11Aおよび下流側のコンベア11Bによって構成されているが、同期して駆動されることで1本の物品搬送路を構成しているものであり、単一のコンベア11として構成されでもよい。単一のコンベア11の場合、ベルト間の乗継時に発生する位置ずれをなくし、搬送速度の連動制御が不要となる。
【0044】
X線検査システム1は、X線検査装置10として、例えばX線異物検出機を含んでおり、コンベア11A上の所定の検査区間を通過する各々の物品Wpの品質状態を所定のX線検査手法で検査し、予め設定された判定条件を基に、例えばOK品すなわち良品かNG品すなわち不良品かを判定することができるようになっている。
【0045】
X線検査装置10は、検査内容に応じ、良品か否かの判断でなく、例えば物品Wpの品質状態を複数段階にランク分けする場合に、特定のランクか否かを判定するものであってもよい。また、X線検査装置10は、物品Wpの質量を計測する計量装置、混入異物を検出する異物検出装置、あるいは製品形状や包装袋のシール部位の不良を検出する外観検査装置等の機能を併有するものであってもよい。
【0046】
図2に示すように、X線検査システム1においては、また、X線検査装置10に内蔵される検査制御部15と、ロボット30および選別コンベア40の駆動制御をなす制御装置としての制御部20とが設けられており、これら検査制御部15および制御部20は、所定通信方式で接続されており、例えばEthernetベースのフィールドバスで構成され、コントローラ間でのデジタル通信(下位層での制御情報交換、上位層による下位層の稼働状況や各装置における事象のモニタリング等をなすための通信)が可能となっている。
【0047】
より具体的には、X線検査装置10は、コンベア11Aにより所定搬送方向D1に搬送される各検査対象の物品Wpに対しX線照射部12からX線を照射して、X線ラインセンサ13により所定時間毎の透過X線量を検出し、物品Wpが検査領域を通過する間にその検出値を順次画像メモリ14に記憶させることで、検査制御部15にて、画像メモリ14から周期的に物品Wpの一部または全部の透過X線量分布を示す逐次のX線検査画像(以下、逐次X線画像ともいう)のデータを取得することができるようになっている。したがって、逐次X線画像は、X線ラインセンサ13が出力するX線データを所定ライン数分蓄積して周期的に生成される。
【0048】
検査制御部15は、プロセッサやメモリを有するとともに、それらを用いて所定の機能を発揮させることができる各種の制御プログラムを内蔵しており、画像メモリ14からのX線検査画像データを基に画像処理機能を発揮する画像処理部16と、画像処理部16による画像処理結果に基づいて物品Wpの品質状態の判定機能を発揮する品質判定部17と、品質判定部17の判定結果の表示や操作入力が可能なタッチパネル等の操作表示部19とを含んで構成されている。
【0049】
品質判定部17は、画像処理部16による画像処理結果に基づき、例えば物品Wpの品質状態を所定の検査単位領域(物品Wpの搬送方向長さ以上の所定搬送距離区間内で任意の方向に等分された複数の検査領域の各々)毎に判定することができ、例えばその検査単位領域毎に異物が混入していないか判定するようになっている。よって、物品Wpのサイズや搬送間隔によって検査判定の単位となるエリア内に複数の物品Wpが入ることがある一方、そのエリア内に単一の物品Wpのみが入ることがある。
【0050】
コンベア11には、搬送信号出力手段としてのロータリエンコーダ18(以下、単にエンコーダ18という)が付設されている。このエンコーダ18は、コンベア11の搬送位置、搬送方向の変位および変位の方向を検出可能なものであり、コンベア11の移動距離と方向を正確にロボット30に伝えることができる。このエンコーダ18としては、例えば異なる位相でパルスが立ち上がるA相、B相の信号と、一回転ごとにパルスが立ち上がるZ相の信号とを出力するインクリメンタル型のロータリエンコーダを用いることができる。なお、搬送信号出力手段として、コンベア駆動源の動作量や制御信号(モーター回転数や動作パルス信号など)を出力し、搬送移動量を算出できるようにしてもよい。また、単純に設定ベルトスピード値と経過時間からの搬送移動量の算出結果を搬送信号として出力するようにしてもよい。
【0051】
制御部20は、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)や管理用PC等によって構成されており、それらを用いて、ロボット30および選別コンベア40の駆動制御機能を含む所定の機能を発揮させるよう各種の制御プログラムを内蔵している。
【0052】
この制御部20は、管理用PCと協働してPLCに対するプログラミングツールや設定入力切替器として機能するタブレット型の情報端末を含んでいてもよい。また、制御部20の管理用PCは、X線検査システム1の状態監視を行うとともに、生産計画に関連付けたX線検査装置10の検査結果の管理を実行するものであってもよい。また、X線検査装置の動作を制御するためのX線制御機能を有して実行できるようにしてもよく、このようにすることで、多様なX線検査装置およびロボットについて過度な仕様変更なく、効率良い制御を行うことができる。。
【0053】
制御部20および後述するロボットコントローラ39は、コンベア11の一定搬送距離毎にエンコーダ18からのエンコーダパルスを取得することで、検査対象となる物品Wpの搬送方向の位置や、ロボット30の可動範囲内でロボット30によるピンポイント排除動作が可能な所定の稼働領域Arw内に入る期間、その期間中の搬送位置等を計算できるようになっており、トリガ信号(以下、座標送信トリガ信号ともいう)を出力してからのロボット稼働領域Arw内の所定の作業位置に達するまでの搬送移動量Lrを求めることができるようになっている。ここにいうピンポイントの排除動作とは、
図7に示すように、コンベア11B上の所定搬送区間である所定の稼働領域Arw内に入ってバラ状搬送される複数の物品Wpに対する局所的な排除動作で、例えば複数のうち一部となる小サイズの単体(個体)もしくは少数を、あるいは、稼働領域Arw内に広がるミンチ状その他の任意に分離可能な物品Wpの一部を、コンベア11A上から外方に排除する動作である。
【0054】
また、制御部20は、X線検査装置10の検査制御部15から検査済みの各物品Wpについての品質判定部17での検査判定結果と位置情報を取得するとともに、X線検査画像データをその座標基準データと併せて取得する。そして、制御部20は、X線検査装置10による検査区間とロボット30によるピンポイント排除動作の稼働領域Arwとなるコンベア11B上の所定搬送区間内で、X線検査画像データ中の不良品判定された物品Wpまたは検査単位の特定領域の位置を示す領域位置情報(例えば、X線画像の画素座標)とその搬送に伴う搬送方向位置(
図1中x方向の座標)の変化とをリンクさせるようになっている。すなわち、制御部20は、ロボット30による不良判定品のピンポイント排除動作位置をX線検査装置10の品質判定部17でのNG判定領域の位置の移動に追従させる機能(トラッキング機能)が得られるように、X線検査装置10の領域位置情報をロボット30が用いる座標系のロボット座標に変換可能にするためのキャリブレーションを予め実行して得られた設定パラメータに基いて、ロボット30に対するトリガ信号として作業対象のロボット座標情報を含んだ座標送信トリガ信号を出力するようになっている。なお、ロボット座標への変換はロボットコントローラで行うようにしても良く、その場合は作業対象のX線画像の領域位置情報を出力する。ここで、特定領域の位置を示す領域位置情報は、X線画像においてはドット(dot)単位の位置情報であり、制御部20により、例えば制御部20を構成するPLCにより検査画像中の被検査物の拡大率や画像補正処理の影響等を考慮してmm単位の位置情報に換算された後、後述する第1停止位置および第2停止位置での教示の情報に基づいてロボット座標系の座標(mm単位)に変換可能となる。
【0055】
図1に示すように、ロボット30は、制御部20からの座標送信トリガ信号に含まれる作業対象のロボット座標情報を入力するロボットコントローラ39を有しており、このロボットコントローラ39により、予め設定された第1の選別条件が成立することを条件に、X線検査装置10による検査済みの物品WpをX線検査装置10による検査の結果に応じてピンポイント排除するように制御される。
【0056】
図2および
図3に示すように、ロボット30は、例えばバキュームヘッド31を関節付きのロボットアーム32で少なくとも物品搬送方向と直交する搬送路幅員方向(ラインセンサ13の長手方向)、ここでは物品搬送方向および搬送路幅員方向の双方に追従移動させることができ、コンベア11B外(以下、系外ともいう)の不良品受け34に排出することができるようになっている。
【0057】
より具体的には、バキュームヘッド31は、下端部に下向きの開口を有し、上端部に横向きの開口を有する昇降式のバキュームノズル31aと、バキュームノズル31aを昇降駆動軸35aを介して昇降駆動可能に支持するヘッド本体35と、バキュームノズル31aに接続された吸引用のダクト33と、吸引用のダクト33の出口の周囲から下流側に向けて高圧の駆動流体(ここでは圧縮空気であるエア)を噴射させて吸引用のダクト33内に負圧を発生させるエジェクタ機能を有する駆動流体噴射部37と、吸引用のダクト33および駆動流体噴射部37の出口側に接続され、不良品受け34に向かい内通路断面積が漸増するディフューザ通路を形成する排出用のダクト36とを有している。そして、バキュームヘッド31は、バキュームノズル31aから吸引用のダクト33内に不良品の物品Wpを吸い込ませ、排出用のダクト36から不良品受け34に排出させることができるようになっている。
【0058】
エジェクタ方式のバキュームヘッド31は、検査済みの物品Wpのうち検査結果が所定品質条件から外れる特定の物品、例えば不良品を吸引してコンベア11B外に排除するピンポイント排除手段となっている。このバキュームヘッド31は、ロボットアーム32に支持されることで、X線検査装置10による検査の結果が所定品質条件から外れると、その検査の結果に応じて少なくとも所定搬送方向と直交する方向に、ここではコンベア11Bの搬送方向vおよびこれと直交する幅員方向wの双方に移動することができるようになっている。
【0059】
バキュームヘッド31においては、不良品の物品Wpがバキュームノズル31aに吸引されてその入口を通過したとき、その物品Wpがバキュームノズル31aまたは吸引用のダクト33の上流端部側に装着された反射型レーザセンサ等の小型の通過検知センサ31sで検知されるようになっている。また、不良品の物品Wpが吸引用のダクト33内に吸引されて排出側に通過するとき、その物品Wpは吸引用のダクト33の下流端部側または駆動流体噴射部37の近傍に装着された通過検知センサ36sで検知されるようになっている。駆動流体噴射部37は、図外の電磁弁およびフィルタレギュレータを介して圧縮空気(エア)の供給源側に接続されている。
【0060】
ここで、バキュームノズル31aは、ヘッド本体35と共に第2アーム32eに一体に支持された昇降駆動機構32fによって、昇降駆動軸35aを介し
図3中に実線で示す上昇位置と
図3中に仮想線で示す下降位置との間で昇降させることができ、下降位置側で不良品をピンポイントに吸引してコンベア11B外(以下、系外ともいう)に排除させることができるように、その下降位置の高さが物品Wpの品種毎に設定されている。
【0061】
ロボットアーム32は、例えば第1アーム32aの基端部を支持台32bに旋回可能に支持するとともに、ギヤドモータ32cを介して旋回駆動可能とし、第1アーム32aの先端部にギヤドモータ32dを有する関節部を介して第2アーム32eを旋回駆動可能に支持させたものである。また、第2アーム32eは、バキュームヘッド31を一体的に支持しており、ロボットコントローラ39によってギヤドモータ32c、32dのサーボ制御によりそれぞれの駆動角度位置を目標値に制御することで、バキュームノズル31aを稼働領域Arw内の任意の座標位置に移動(搬送追従を含む)することができるようになっている。
【0062】
選別コンベア40は、所定搬送方向でコンベア11Bより下流側に配置されており、X線検査装置10による検査後の物品Wpを、X線検査装置10による検査の結果および予め設定された第2の選別条件に応じ、所定搬送距離分のエリア選別区間を単位として排除動作するようになっている。
【0063】
図2に示すように、選別コンベア40は、ロボット30によるピンポイント排除区間であるコンベア11Bより搬送方向に短い選別区間を有する上下揺動式のコンベア41と、コンベア41をその搬送方向のいずれか一端側、例えば上流端41a側で上昇させるエアシリンダ等のアップアウト駆動アクチュエータ42と、不良品受け43とを有している。また、アップアウト駆動アクチュエータ42は、図示しない方向制御弁、エア供給制御弁およびフィルタレギュレータ等を介してエア供給源に接続されており、方向制御弁の切替えによりアップアウト駆動アクチュエータ42へのエアの給排制御方向が切り替わり、アップアウト選別機としての動作方向が切替え制御されるようになっている。
【0064】
この選別コンベア40は、コンベア41を上流端41a側で上昇するよう傾動させたとき、ロボット30の所定の稼働領域Arwを形成するコンベア11B上の所定搬送区間を通過した物品Wpを選択的に落下させて、コンベア11B外の不良品受け43に排出させることができるようになっている。なお、選別コンベア40は、他の方式、例えば水平方向に機長が伸縮稼働するシャトル方式、または、傾斜したシュート板で形成されるような方式にしても良い。
【0065】
図2に示すように、制御部20は、管理用PCやPLCを用いて所定の制御プログラムで実現される複数の機能部として、検査情報入力部21と、選別条件設定部22と、選別要求出力部23とを有している。
【0066】
検査情報入力部21は、X線検査装置10の画像処理部16および品質判定部17からの判定結果に係る情報を入力する第1入力手段21aと、画像処理部16からの画像情報に加えて物品Wpまたは検査単位領域の位置を示す領域位置情報を入力する第2入力手段21bと、ロボット30によるピンポイントの排除動作が失敗したことを示す通過検知センサ31s、36sからの特定のセンサ情報をそれぞれ取得する第3入力手段21cとを有している。ここにいう特定のセンサ情報とは、通過検知センサ31s、36sのうち少なくとも片方がロボット30への選別指令(ピンポイント排除要求Raの出力)から所定時間内に不良品の物品Wpの通過を検知せず、吸引によるピンポイント排除動作が失敗したことを示すもの、あるいは、バキュームノズル31aに装着された通過検知センサ31sでの物品Wpの通過検知から吸引用のダクト33の下流端側に装着された通過検知センサ36sでの検知までの経過時間が、予め設定された許容吸引時間を超える遅れを示すものである。
【0067】
選別条件設定部22は、検査情報入力部21での取得情報を基に、X線検査装置10による検査の結果および検査済みの物品Wpの搬送状態に応じて第1の選別条件が成立するか否かを判定するとともに、第1の選別条件の成立の有無およびロボット30によるピンポイント排除の成否(成功の有無)に応じて第2の選別条件が成立するか否かを判定する選別条件判定手段24を有している。
【0068】
選別要求出力部23は、選別条件判定部24による第1の制御条件成立の判定結果に応じて、ロボット30へのピンポイント排除要求Raおよび逐次の作業対象物のロボット座標を出力するピンポイント排除要求手段23aと、選別条件判定部24による第2の制御条件成立の判定結果に応じて、選別コンベア40のアップアウト駆動アクチュエータ42を制御する方向制御弁等にエリア選別の排除指令相当の方向切換え信号を出力する系外排出要求手段23bとを有している。
【0069】
選別条件判定手段24は、第1の選別条件の不成立またはロボット30によるピンポイント排除動作の不成功を条件に、第2の選別条件が成立すると判定するようになっている。第1の選別条件とは、ロボット30によるピンポイント排除動作で所定搬送区間内の所定品質条件外の物品Wp(不良品)が全て所定の選別期間内に排除可能となる条件であり、ここでは、
図1に示すロボット30の所定の稼働領域Arw内に入っている不良品の物品Wpの数がロボット30の処理能力に基づき予め設定された上限個数に達しないこと、又はロボットの処理能力に基づき、排除しようとする不良品の物品Wpの位置があらかじめ設定された位置より前方(上流側)に位置していることである。
【0070】
また、選別条件判定手段24は、所定の稼働領域Arw内における不良品の物品Wpの位置や姿勢のばらつき、ロボット30によるピンポイント排除動作の失敗あるいはバキュームノズル31a内等での物品詰まりによるピンポイント排除動作の遅れ等により所定の稼働領域Arw内の全不良品の排除動作の完結が不確実となった場合には、ロボット30によるピンポイント排除動作の不成功と判定して、選別コンベア40による確実な排除を実行させるようになっている。
【0071】
すなわち、選別条件判定手段24は、ロボット30を主に使用する場合は、第1の選別条件の不成立時に、またはロボット30によるピンポイント排除動作の失敗時か所定時間内の成功が未確定であることを条件に、第2の選別条件を成立させ、選別コンベア40を作動させることができる。
【0072】
勿論、ロボット30を優先的に使用するか、選別コンベア40を優先的に使用するかを、手動または物品Wpの品種に応じた自動のモード設定等により、可変設定するようにしてもよい。
【0073】
選別条件設定部22は、また、ロボット30によるピンポイント排除動作を可能とするX線ビジョントラッキング機能を実現する手段として、座標情報取得手段25、座標調整手段26および座標値換算手段27を有しており、これら座標情報取得手段25、座標調整手段26および座標値換算手段27は、本システムにおけるX線ビジョントラッキング機能を実現すべく、
図1および
図6に示すようなテストチャート60を用いて予めキャリブレーション作業を実行した結果として得られる各種設定パラメータを基に、作動するようになっている。
【0074】
座標情報取得手段25は、品質判定部17から検査情報入力部21にX線検査結果が所定の検査結果、例えばNG判定となったことが通知され、そのX線検査の画像領域に含まれる特定領域の位置を示す領域位置情報、すなわちNG判定の対象物となる画像(作業対象画像)における位置情報(例えば、外接円の中心や重心等の座標)を取得する。なお、連なる複数の逐次X線画像Xiを用いて搬送方向の画像領域を拡張して領域位置情報を取得するようにしてもよい。例えば、便宜的に撮像順の番号nを用いて、所定の検査結果となったときの最新の逐次X線画像をXi(n)、その直前の逐次X線画像をXi(n-1)とするとき、所定の検査結果となったときおよびその直前の逐次X線画像Xi(n)、Xi(n-1)を取得した上で、それらX線画像に対し領域位置情報を取得することができる。また、領域位置情報には対象物となる画像のIDや撮像順の番号、同一画像内の特定領域のIDや重み等の情報が含まれていてもよく、例えば、特定領域の重みの高いものを選別条件設定部22にて優先的に第1の選別条件が成立するようにしてピンポイント排除を行わせることが可能となる。
【0075】
座標値換算手段27は、座標情報取得手段25で取得した領域位置情報(例えば作業対象画像Vpの座標(x、y)をロボット座標(xr、yr)の値に換算する換算手段の機能を有し、換算した値を作業位置情報としてロボット30への座標送信トリガ信号を出力する位置情報出力手段として機能するようになっている。なお、検査結果が良品の場合は、座標情報取得手段25が領域位置情報を取得しないので作業位置情報は出力されず、良否検査の場合の圧倒的多数の良品について無用な信号は出力されない。また、座標値換算手段27の換算手段の機能を制御部20の機能の1つとして説明したが、ロボットコントローラ39の機能とした構成とするようにしてもよい。この場合は、座標情報取得手段25が取得した領域位置情報がそのままロボット30への座標送信トリガ信号に含まれて出力されることになる。
【0076】
座標調整手段26および座標値換算手段27は、ロボット30を設定状態にしてキャリブレーション作業を行う教示モードにおいて、ロボット30に作業対象画像Vpの領域位置情報(x、y)を教示するための基準点となる教示体61、62、64等が目視可能にかつX線撮像可能に付されたテストチャート60について、作業対象画像Vpとなる1つの逐次X線画像Xiに含まれる複数の基準点、例えばA、B、Cの座標値(Ax、Ay)、(Bx、By)、(Cx、Cy)が座標値換算手段27によりロボット座標系の座標(Arx、Ary)、(Brx、Bry)、(Crx、Cry)となって作業位置情報としてのロボット座標の情報が出力され、そのテストチャート60を稼働領域内に搬送させて作業対象の教示体61、62、64の座標を教示させるとき、ロボット座標系の座標値(Arx、Ary)、(Brx、Bry)、(Crx、Cry)に基づいて、ロボット30に稼働領域Arw内における作業対象画像Vpの座標を入力させるようになっている。なお、制御部20側に座標データの入力を受け付ける機能を設け、入力された座標データをロボットに通信出力するような場合の座標設定手段として機能するようにしてもよく、座標データは、領域位置情報に基づくロボット座標系の座標だけでなく、換算前の領域位置情報に基づくX線画像の座標について、データ入力または自動判別してロボットに通信出力するようにしてもよい。
【0077】
また、座標調整手段26および座標値換算手段27は、ロボット30に作業位置の座標を教示させるとき、X線検査装置10の被検査物となるテストチャート60のテスト搬送を開始して教示体61、62、64の領域位置情報を取得した後、予め設定したトリガ設定領域Atsのロボット30へのトリガ信号出力位置Et0に達した第1停止位置で搬送を停止させて搬送移動量をゼロにし、操作表示部19からの操作入力により搬送を再開して寸動させながらテストチャート60を搬送して稼働領域Arwの作業位置(第2停止位置)に達したら、ロボットへの教示を行わせるために搬送を停止させる。
【0078】
第2停止位置にテストチャート60が停止しているとき、教示体61、62、64のロボット座標(Arx、Ary)、(Brx、Bry)、(Crx、Cry)の座標情報を座標データとして数値で、表示手段である操作表示部19に画面表示させる。そして、この表示により、テストチャート60の教示体を確認しながらロボット30に作業位置の座標を教示させることができる。なお、座標データの表示は座標グラフ等のグラフ表示や容易に変換できるコード表示など判読可能であればよい。また、数値に加え、二次元座標において座標データに直接的または間接的に対応させて画面表示させるようにしてもよい。また、コンベア11Bを寸動させるための操作入力や座標データの表示は、制御部20に備えた操作部や表示部であってもよい。
【0079】
また、
図4(a)に示すように複数の逐次X線画像Xiから作業対象画像Vpを調整して教示体を取得し、教示させるようにしてもよい。この場合は、座標情報取得手段25により取得済みの逐次X線画像Xi(n-1)、Xi(n)が教示体61、62、64の領域位置情報から基準点、例えば教示体画像D、E、Fの座標(Dx、Dy)、(Ex、Ey)、(Fx、Fy)を画面表示させ、D、E、Fの座標が作業対象画像Vpの設定サイズSvp(
図5参照)内に所定数以上入るように、所定数以上の基準点A、B、Cの座標値((Ax、Ay)、(Bx、By)、(Cx、Cy)に対応する)を基に算出した作業対象画像Vpの原点Oxの搬送方向の座標(x0)を、トリガ信号出力位置Et0に設定するようにする。そして、逐次X線画像Xiの教示体画像D、E、Fの座標取得値に対し、同一の原点Oxとするようそれらの搬送方向の座標Dx、Ex、Fxを調整した座標値Ax、Bx、Cxを算出し、作業対象物がX線撮像ピッチPm内に配置されるよう数値を操作することで、その調整後の座標値(Ax、Ay)、(Bx、By)、(Cx、Cy)でトラッキング用のキャリブレーションを行う。このようにすることで、教示体の画像の欠けを回避し、少ない教示体でキャリブレーションを行うことができる。もっとも、原点Oxは、ロボット30の作業位置を特定するためトリガ信号出力位置Et0に対応するものとして、基準点A、B、Cのいずれかに設定されてもよい。
【0080】
テストチャート60は、基材シート71と、基材シート71上に所定の配置パターンで配置され、ロボット30に作業対象画像の基準点を教示するための複数の教示体61、62、64を、X線撮像されたX線画像中に複数の基準点を特定可能な特定領域の教示体画像を形成する、視認可能な複数の金属製(例えば、ステンレス製)の遮蔽体72とを有しており、基材シート71と同等以上にX線を透過し易い保護フィルムやケース等に収納されていてもよい。
【0081】
また、
図5に示すように、座標探索窓Vp´内の複数の複数の教示体61、62、64の輪郭座標が既知であるので、それらの搬送方向の座標成分の最大値が、対象物画像Vpの原点Oxの位置よりわずかに搬送方向の上流側位置となるように、すなわち、対象物画像Vpの原点Oxの位置が複数の教示体61、62、64の輪郭座標のうち最も下流側のx方向座標成分より搬送方向に先行する位置となるように、x方向の座標成分を調整し、原点Oxのx方向座標成分を基準(x0、y0)として座標の値を再設定するようにしてもよい。
【0082】
このテストチャート60は、コンベア11の搬送方向D1と直交する幅方向の全域に及ぶ長さを有しており、X線検査装置10で周期的に得られる逐次X線画像Xiの原点ピッチPoの2倍以上の搬送方向幅を有しており、作業対象画像Vpの設定サイズSvpは、例えば逐次X線画像Xiのサイズに設定されるが、同一原点の基準点をロボット30の処理能力に応じて所定数以上取得できる程度の配置・数量に対応するテストチャートを作成することが可能であることはいうまでもない。
【0083】
制御部20は、不良判定の物品Wp(NG品)の作業対象画像Vp内の座標とコンベア搬送によるトリガ信号出力位置Et0からロボット30の稼働領域Arw内の作業位置までの距離である搬送移動量Lrを基に、ピンポイント排除の個数と順序を設定する。ここでのピンポイント排除の個数は、設定数(例えば5個)未満であり、設定数以上の不良判定の物品Wp(NG品)が含まれる場合、制御部20は、それを条件に、第2の選別条件が成立すると判定するようになっている。
【0084】
本実施形態では、このように、コンベア11で所定搬送方向D1に搬送される被検査物WpにX線を照射して、その被検査物を透過したX線のデータを含み周期的に得られる逐次X線画像Xiを基に被検査物である物品Wpを順次検査するX線検査装置10と、トリガ信号が入力されたとき、そのトリガ信号に含まれる位置情報で特定される作業対象の被検査物Wpに対し、所定の稼働領域Arw内で被検査物Wpのコンベア搬送に追従しつつ所定の作業を実行するロボット30とを備えている。
【0085】
そして、これらを制御する制御部20が、X線検査装置10の特定の検査結果が得られたことを条件に、その特定の検査結果の物品Wp(例えば、NG品)に対応する少なくとも1つの逐次X線画像Xiにおける領域位置情報を取得して、対象となる物品Wpの作業位置情報としてそれらの座標を出力する位置情報出力手段の機能を、座標情報取得手段25および座標値換算手段27によって発揮させる。
【0086】
これにより、制御部20は、X線検査装置10から検査画像および判定結果が出力可能となる時点におけるその検査対象の物品Wpの搬送位置(所定搬送位置Tg)をトリガ信号出力位置Et0と設定し、、ロボット30への座標送信トリガ信号を出力する。なお、トリガ信号出力位置Et0を所定搬送位置Tgよりロボット30寄りの所定の位置に設定する場合は、検査結果と領域位置情報を含む検査情報を順次記憶し、検査画像を取得してから設定位置に達する所定のタイミングで記憶した検査情報を読み出して通信出力する構成とするようにしてもよく、この場合の検査情報の読み出しには、領域位置情報に含むようにした対象物となる画像のIDや撮像順の番号を利用することができる。
【0087】
さらに、制御部20は、作業対象画像Vpの領域位置情報(x、y)に対応するロボット30に作業位置の座標(xr、yr)を教示させることで、座標調整手段26および座標値換算手段27にロボット座標調整手段の機能を発揮させ、ロボット30へのトリガ信号出力位置Et0からのロボット30の稼働領域Arw内までの搬送方向の移動距離Lrを把握させた上で、ロボット30に作業位置の座標(xr、yr)を教示させ、作業対象画像Vpの領域位置情報(x、y)をロボットの座標系の座標値(xr、yr)に入力させることができる。
【0088】
次に、上記構成を用いて実行される本実施形態のX線検査システム1のキャリブレーション方法について、
図8のフローを参照して説明する。
【0089】
まず、ロボット30をキャリブレーション可能な設定状態にし、
図6に示すような複数の基点教示体61、62、64とそれら基点教示体61、62、64から所定距離の位置に配された他点教示体63、65とが目視可能にかつX線撮像可能に付されたテストチャート60を準備し、そのテストチャート60をX線検査装置10に教示モードで所定搬送方向にテスト搬送させ、制御部20の座標情報取得手段25によって周期的にX線撮像させて得られる逐次X線画像Xiから、各教示体の領域位置を取得する(ステップS1)。
【0090】
次いで、テストチャート60がロボット30へのトリガ信号出力位置Et0に達したとき(例えば、逐次X線画像を取得してから判定結果が出力可能となる所定時間後に移動する位置)に対象画像の教示体の領域位置からロボット座標に換算した作業位置情報(例えば、基点教示体61、62、64および他点教示体63、65のうち基点教示体61、62、64のそれぞれ1つ以上の教示体画像を含む対象画像Vpの領域位置情報に基づくロボット座標)を出力する(ステップS2)。
【0091】
次いで、テストチャート60をコンベア11によりロボット30へのトリガ信号出力位置Et0から所定距離Lrだけ移動させて、基点教示体61、62、64および他点教示体63、65をロボット30の稼働領域Arw内に入れ、ステップS2で出力された作業位置情報を基に教示するための基準点となる各教示体の座標をロボット30に教示させる(ステップS3)。
【0092】
ここにいう教示は基準点となる複数の座標をロボット30に記憶させることである。ロボット30への教示は、ロボット30のロボットアーム32を、手先の作業中心位置と基準点となる各基点教示体61、62、64の中心座標を一致させるように移動させるティーチング作業により、各基点教示体61、62、64の中心座標に対応するロボット座標を実際の作業位置として記憶させることであり、ステップS2で出力される座標に対応する教示体の中心を記憶させる。また、出力される座標すべてを記憶させるのではなく、基点教示体の1つを原点として選択してロボット座標の原点として記憶させた後、他点教示体の座票を選択してロボット座標の原点からの座標値に換算して記憶させるようにしてもよい。このようにすることで教示する基準点の数を減らすことができる。
【0093】
次いで、ロボットへ教示した座標と、ロボット30へのトリガ信号出力位置Et0からロボット30の稼動働領域Arw内で教示を行うためにコンベア11を停止させた位置までの搬送距離Lrを求めてパラメータとしてロボットに設定し、キャリブレーション作業を終了させることができる(ステップS4)。そのキャリブレーション作業を終了するに際して、計算した各種パラメータ等のデータをロボットコントローラ39に設定してよいかを再確認するようにして、例えば「OK」等のボタンの操作により、キャリブレーション作業の結果がロボット30に反映されることになる。
【0094】
なお、この搬送距離Lrは、一定速度による搬送の場合は、あらかじめ測定した既知の距離と速度をパラメータとして入力することにより、移動時間でロボット30が動作するようになる。また、エンコーダ18を用いてエンコーダパルスを数えるエンコーダ用のカウンタで搬送距離Lrを測定する場合は、トリガ信号出力位置Et0にてエンコーダ用のカウンタをクリアし、教示を行うためにコンベア11を停止させた位置におけるエンコーダ用のカウンタの値をロボット30に設定することで、搬送速度の変動があっても追従して搬送距離Lrを測定することができ、安定してロボットが動作する。
【0095】
また、ステップS2の出力される位置情報を、
図9(a)に示すように基準点を示す記号を二次元座標上に配置した画像とともに各基準点の座標情報を数値表示させて、各基準点の座標をロボット30に教示させるようにしてもよい。また、
図9(b)に示すように各基準点を示す記号に教示体画像を重ねた2次元画像とともに各基点の座標を表示させて、各基準点の座標をロボット30に教示させるようにしてもよい。このような表示にすることで、ロボットに座標の教示をより確実に行うことができる。また、
図10に示すように、複数の逐次X線画像を合成した画像について基準点の座標を表示させ、各基準点の座標をロボット30に教示させるようにしてもよい。このような表示にすることで、複数の逐次X線画像の境界に位置する教示体に対して欠けることなく抽出でき、教示体の中心座標を正確に取得することができる。
【0096】
次に、本実施形態のX線検査方法について、
図11のフローを参照して説明する。なお、上記のX線検査システムと同-の部分については同一の符号を付すものとする。
【0097】
本実施形態のX線検査方法は、コンベア11上を搬送される被検査物となる物品WpについてX線を照射して取得したX線透過画像における所定の特定領域の位置を特定して前記特定領域の位置情報を通信出力するステップと、位置情報に基づいて、ロボット30に対し、物品Wpに所定の作業を実行させるための作業位置情報を前記ロボット30に通信出力させるステップと、作業位置情報に基づいてロボット30に所定の作業を実行させるステップ、を有し、さらに、上述したステップを実行する検査モードを実施するための前作業である以下に示すロボット30を設定状態にして行う教教示モードを実施するステップを含んでいる。
【0098】
まず、X線透過画像に所定の特定領域を生じる所定の教示体を備えたテストチャート60を搬送させ、教示モードを開始させる(ステップS11)。
【0099】
次いで、テストチャート60のX線透過画像を取得し、X線透過画像における所定の特定領域の位置を特定してその特定領域の位置情報を所定のタイミングで通信出力する。(ステップS12)、
次いで、コンベア11を制御してテストチャート60の搬送を停止させ(ステップS13)、ステップS12で出力される特定領域の位置情報に基づいてロボットに対する作業位置情報をロボット30に通信出力する(ステップS14)。
【0100】
次いで、コンベア11を制御して、テストチャート60の搬送を再開し、テストチャート60をロボットの稼働領域に停止させるとともに、少なくとも搬送を再開してから停止させるまでの間におけるテストチャートの搬送移動量を示す搬送信号をロボット30に出力する(ステップS15)。
【0101】
次いで、ロボット30に対し、稼働領域Arwにあるテストチャート60における所定の教示体の存在位置を教示し(ステップS16)、ステップS12で出力される特定領域の位置情報に基づく作業位置情報と存在位置との対応関係を算出してロボット30に記憶させて(ステップS17)、教示モードを終了し、検査モードに移行する。
【0102】
次に、作用について説明する。
【0103】
上述のように構成された本実施形態のX線検査システム1においては、制御部20が、所定の検査結果の被検査物に対応する逐次X線画像Xiにおける特定領域の位置を示す領域位置情報を含む検査情報をX線検査装置10から取得して、その検査情報に基づきロボット30に対して所定の作業を実行すべき位置を示す情報を含む作業位置情報をトリガ信号として通信出力し、トリガ信号を出力してから、ロボット30が前記所定の作業を実行すべき被検査物が稼働領域Arw内の所定の作業位置に達するまでの搬送移動量Lrを出力してロボット30が所定の作業を実行する構成とした上で、前作業としてロボット30にX線画像の座標系における作業対象の領域位置情報、例えば(Ax、Ay)、(Bx、By)、(Cx、Cy)を、予めキャリブレーション結果を反映したトラッキングキャリブレーション条件に従って、ロボット座標系における作業位置、例えば(Arx、Ary)、(Brx、Bry)、(Crx、Cry)を教示させ、教示されたロボット30がトリガ信号を受けると、そのトリガ信号に含まれる作業対象物(作業対象となる物品Wp)の作業位置情報と搬送移動量Lrとに基づいて前記所定の作業を実行する。したがって、作業対象物の領域位置情報(作業対象のX線画像における座標)の座標をロボット30の座標系に対応させる位置合わせが可能となり、X線検査装置から出力される座標取得可能なX線画像をビジョントラッキングに有効活用できることになる。また、X線検査する被検査物のサイズやその被検査物に対するロボット30の作業能力に応じた好適な作業対象画像サイズを設定することで、被検査物の搬送形態にかかわらずトラッキングに好適な作業対象のX線画像を取得でき、作業対象物の座標に対してロボット30の手先を的確に追従させることができることになる。
【0104】
また、本実施形態では、ロボット30に作業対象画像Vpの座標を教示するための基点教示体61、62、64が目視可能にかつX線撮像可能に付されたテストチャート60を用いることで、テストチャート60をロボット30の稼働領域Arw内に搬送させて基点教示体の中心を基準点として教示した座標の教示値と、搬送距離Lrに基づき、作業対象画像Vpの領域位置情報を、ロボット座標系の座標に変換してロボット30に容易・的確に入力できることになる。しかも、テストチャート60の教示体サイズや複数の教示体の配置によってロボット30の作業能力に適した作業対象画像Vpの取得が可能となる。
【0105】
さらに、本実施形態ではテストチャート60のテスト搬送に応じて、取得済みの逐次X線画像Xiから作成される教示体の座標位置を示す画像が操作表示部19によって座標教示用の基点教示体61、62、64の座標と共にキャリブレーション作業画面80に表示されると、画面表示された基点教示体61、62、64の作業対象画像Vp内における配置状況が確認できることになる。
【0106】
したがって、テストチャート60の教示体画像位置を基にロボット30へ教示する教示体61、62、64等を容易に設定可能となる。また、
図10のような複数の逐次X線画像Xiを表示させて教示する場合にも教示体61、62、64等を容易に選択可能となる。さらに、複数の逐次X線画像Xiを表示させて作業対象画像Vpを調整する場合には、最新の逐次X線画像Xi(n)の先端側で作業対象物の画像が切れて、直前の逐次X線画像Xi(n-1)側にまたがったりすることを有効に防止できるように作業対象画像Vpの原点座標設定ができることになる。
【0107】
加えて、本実施形態においては、位置情報出力手段としての座標値換算手段27が所定の検査結果を含む検査情報を受信する毎にトリガ信号を通信出力するので、作業対象の被検査物Wpの発生ごとに、トリガ信号に応じたロボット30の作業で、例えばNG品またはNG領域のピンポイントの排除作業を実行できる。しかも、座標値換算手段27が検査情報を順次記憶し、所定のタイミングでその検査情報を読み出して通信出力するので、ロボット作業が要求されるタイミングに応じて、ロボット30に対し適時に検査情報を通信出力することができる。
【0108】
教示モード下では、領域位置情報に基づく作業位置情報と所定の作業位置との対応関係をロボット30に教示するので、ロボット30にその対応関係を的確に記憶させることができる。また、制御装置としての制御部20は、教示モードにおいて、X線検査装置10から検査情報を受けたとき第1停止位置で被検査物Wpの搬送を停止させ、ロボット30にトリガ信号を通信出力したとき搬送を再開させ、ロボット30稼働領域Arwに含まれる第2停止位置でその被検査物Wpの搬送を再度停止させてから、ロボット30に前記対応関係を教示させる。したがって、X線検査装置10側で所定の検査結果となった特定領域の位置情報を第1停止位置でロボット30側の搬送位置情報に変換可能な教示を実行し、その教示後の停止位置から第2停止位置までの搬送移動量Lrを的確に把握した上で、ロボット30側で所定の作業を実行すべき作業位置を的確に教示することができる。
【0109】
さらに、制御部20は、所定の操作入力を受けるごとにコンベア11を所定時間だけ寸動させ、操作入力を複数受けることによって、被検査物Wpを第1停止位置から第2停止位置まで搬送させるので、作業者が第1停止位置から第2停止位置までの搬送移動量Lrを寸動の回数に応じて容易に有効に把握可能となる。また、
図9、
図10に例示するように、領域位置情報に基づく基準点となる位置の座標データを、表示手段であるキャリブレーション作業画面80上に判読可能に表示するので、作業者が、ロボット30に作業位置の座標を教示させる際にその教示位置を的確に把握させることができる。しかも、座標データの位置を表す記号を、二次元座標において座標データに直接的または間接的に対応させて表示するので、複数の教示位置とその配置を表示記号から容易に視認可能となる。
【0110】
加えて、本実施形態では、ロボット30に前記対応関係を教示するために領域位置情報に基づく座標データの入力を受け付ける座標設定手段を制御部20に設けるようにすれば、座標設定された座標データをロボット30に通信出力することができ、ロボット30側での迅速・的確な作業が可能となる。また、被検査物Wpが第2停止位置に停止しているとき、領域位置情報に基づく座標データをロボット30に通信出力するようにすれば、ロボット30への教示がロボット側の操作で容易に実行可能となる。
【0111】
本実施形態のX線検査システム1におけるX線ビジョントラッキングのためのキャリブレーション方法では、X線検査装置10により所定の検査結果とされる特定領域を生じさせるための複数の教示体61、62、64、63,65が付された代用の被検査物となるテストチャート60を搬送させ、特定領域の位置を示す領域位置情報とロボット30が作業を実行する所定の作業位置との対応関係をロボット30に教示させる。その結果、X線検査時に得られるX線画像に所定の検査結果とされた特定領域があるとき、その特定領域の位置を示す領域位置情報からロボット30の座標系に対応させる位置合わせが容易・的確に可能となり、被検査物の搬送形態にかかわらずトラッキングに好適な作業対象のX線画像を取得して、作業対象物に対してロボット30の手先を的確に追従させることができることになる。
【0112】
また、本実施形態におけるX線検査システム1のキャリブレーションに用いるテストチャート60は、基材シート71と、その基材シート71上に所定の配置パターンで配置され、ロボット30に基準点となる座標を教示するための複数の教示体61、62、64を、視認可能で、かつ、X線撮像されたX線画像中に複数の特定可能な画像を形成する複数の遮蔽体72とを具備している。
【0113】
したがって、基点Et0をテストチャート60の教示体画像位置を基に設定可能であり、テストチャート60をロボット30の稼働領域内に搬送させて教示した教示体61、62、64の座標の教示値と、搬送距離Lrとに基づいて、対象物画像の原点Oxに対応した座標をロボット座標系の座標に換算してロボット30に容易・的確に入力することができる。
【0114】
このように、本実施形態のX線検査システム1においては、物品Wpの搬送形態にかかわらずトラッキングに好適な作業対象物を含んだ所定の大きさの対象物画像Vpを取得できるようにして、作業対象物の座標に対してロボットの手先を的確に追従させることができる、X線ビジョントラッキング方式のX線検査システムおよびそのキャリブレーション方法を提供することができる。
【0115】
なお、上述の一実施形態においては、逐次X線画像Xiが、X線ラインセンサ13の出力するX線データを所定ライン数分蓄積して周期的に生成されるものとしたが、X線ラインセンサ13の出力を所定ライン数分蓄積した逐次X線画像Xiを、2次元のX線画像として取得するX線検出器を用いて、逐次X線画像Xiを周期的に生成するようにしてもよい。
【0116】
また、作業対象画像Vpは逐次X線画像Xiの搬送方向サイズとして説明したが、作業対象物の搬送方向サイズが大きく、複数の逐次X線画像を基に検査判定結果が出力されるような場合は、作業対象画像Vpは逐次X線画像Xiの搬送方向サイズの所定倍のサイズであってもよい。その場合、例えば最新の逐次X線画像Xi(n)と直前の逐次X線画像Xi(n-1)が検査画像サイズであったとすると、位置情報出力手段は、画像位置調整のために、さらに前の逐次X線画像Xi(n-2)を含めた対象画像の座標情報を取得するようにして、直前の逐次X線画像Xi(n-1)の先端側で対象物の輪郭が途切れてしまうことを有効に防止可能となる。
【0117】
さらに、一実施形態では、座標情報取得手段が、検査中において、作業対象の被検査物が全体として逐次X線画像Xiの搬送方向のサイズSxi以上の所定の作業対象画像サイズSvp内に入っているか否かを判定し、その判定の結果に応じて、作業対象の被検査物が全体として作業対象画像サイズSvp内に入るよう取得済みの逐次X線画像Xiの座標値を所定搬送方向に調整するようにすることも考えられる。
【0118】
また、座標値換算手段27が出力する座標を画面表示する操作表示部19を有し、テストチャート60をX線検査装置10に撮像させて取得した対象物画像Vp内の教示体61、62、64のいずれかがトリガ設定領域Atsに到達したことが確定する(確定入力か到達後所定時間経過)まで表示させるといったことも考えられる。
【0119】
ロボット30は、バキュームヘッド31を関節付きのロボットアーム32で移動させるものとしたが、バキュームヘッド31に限定されないことはいうまでもなく、ハンドリング用のロボットハンドや、連続搬送される比較的軟質の食材(挽肉、チーズ、バター、練物等)を打ち抜く打ち抜きヘッド等を有するものであってもよい。
【0120】
以上説明したように、本発明のX線検査システムは、作業対象物の座標に対してロボットの手先を的確に追従させることができる、X線ビジョントラッキング方式のX線検査システムおよびそのキャリブレーション方法を提供することができるものである。かかる本発明は、コンベア搬送中の物品を順次X線検査するX線検査装置とその検査結果に応じて物品搬送に追従しつつ所定の作業を行うロボットとを備えたX線検査システム、および、そのキャリブレーション方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0121】
1 X線検査システム
10 X線検査装置
11 コンベア
11A コンベア(X線検査装置側のコンベア)
11B コンベア(ロボット側のコンベア、稼働領域側のコンベア)
12 X線照射部
13 X線ラインセンサ
14 画像メモリ
15 検査制御部
16 画像処理部
17 品質判定部
18 エンコーダ(ロータリエンコーダ)
19 操作表示部
20 制御部
21 検査情報入力部
21a 第1入力手段
21b 第2入力手段
21c 第3入力手段
22 選別条件設定部
23 選別要求出力部
24 選別条件判定手段
25 座標情報取得手段
26 座標調整手段(座標設定手段)
27 座標値換算手段(換算手段、位置情報出力手段)
30 ロボット
31 バキュームヘッド
31a バキュームノズル
31s、36s 通過検知センサ
32 ロボットアーム
32a 第1アーム
32b 支持台
32c、32d ギヤドモータ
32e 第2アーム
32f 昇降駆動機構
33、36 ダクト
35 ヘッド本体
35a 昇降駆動軸
37 駆動流体噴射部
39 ロボットコントローラ
40 選別コンベア
41 コンベア
42 アップアウト駆動アクチュエータ
60 テストチャート
61、62、64 基点教示体(教示体)
63、65 他点教示体(教示体)
71 基材シート
72 遮蔽体
80 キャリブレーション作業画面
A、B、C、D、E、F 座標
Arw 所定の稼働領域
Ats トリガ設定領域
D1 所定搬送方向
Et0 基点(画像トリガとなる基点)
Lr 搬送距離(搬送距離)
Ox 原点(作業対象物画像の原点、対象物画像の基準位置)
Or 原点(作業対象物画像のロボット座標系の原点、)
Svp 対象画像の設定サイズ
Sxi サイズ(逐次X線画像の搬送方向のサイズ)
Tg 所定搬送位置
Vp、Vp(n) 作業対象画像(対象物画像)
Vp´ 座標探索窓
Wp 物品(被検査物、検査対象の物品)
Xi、Xi(n)、Xi(n-1) 逐次X線画像