(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014290
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ワーク加工システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/00 20060101AFI20240125BHJP
B23B 25/06 20060101ALI20240125BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B23Q15/00 307A
B23B25/06
B23Q17/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117001
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】八田 博之
【テーマコード(参考)】
3C029
3C045
【Fターム(参考)】
3C029BB02
3C045HA06
(57)【要約】
【課題】刃具取り付け後の最初のワークに対して加工精度出しを行うワーク加工システムを提供すること。
【解決手段】取り付け可能な刃具によってワークに対する加工を行うワーク加工機と、前記ワーク加工機によって加工が行われたワークに対して加工精度を検測するワーク検測装置と、前記ワーク加工機と前記ワーク検測装置との間でワークの搬送を行うワーク自動搬送機と、前記ワーク検測装置とのデータ通信および前記ワーク加工機の駆動を制御するものであり、前記刃具の取り付け後の1回目の加工において、ワークに対して行う本加工処理の前に検測用加工処理を行い、当該処理後のワークに対する前記ワーク検測装置からの検測情報を基に前記刃具の取り付け位置に対する補正処理を行う制御装置と、を有するワーク加工システム。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り付け可能な刃具によってワークに対する加工を行うワーク加工機と、
前記ワーク加工機によって加工が行われたワークに対して加工精度を検測するワーク検測装置と、
前記ワーク加工機と前記ワーク検測装置との間でワークの搬送を行うワーク自動搬送機と、
前記ワーク検測装置とのデータ通信および前記ワーク加工機の駆動を制御するものであり、前記刃具の取り付け後の1回目の加工において、ワークに対して行う本加工処理の前に検測用加工処理を行い、当該処理後のワークに対する前記ワーク検測装置からの検測情報を基に前記刃具の取り付け位置に対する補正処理を行う制御装置と、
を有するワーク加工システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記刃具について計測する使用回数の1回目の加工において前記検測用加工処理および前記補正処理を実行する請求項1に記載のワーク加工システム。
【請求項3】
前記制御装置は、本加工処理におけるワークの加工量の約2分の1で前記検測用加工処理が行われる請求項1または請求項2に記載のワーク加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工機において加工精度を出すため、刃具取り付け後の最初のワークに対して、正規寸法による本加工処理を実行する前に検測用加工処理を行うワーク加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク加工機における加工精度はミクロン単位で管理される。しかし、刃具の取り付けは作業員によって行われるものであるため、加工時には刃具の位置について加工ワークの検測結果に従って自動補正が行われる。この点、下記特許文献1には、刃具の取り付けに関するものではないが、ワーク加工に伴う刃具の摩耗に対する自動補正に関する提案がなされている。刃物台に備わるワークの寸法測定用の検測ユニットが、刃具によるワーク加工位置に移動し、主軸台ユニットにおいてチャックに把持された状態の校正用マスター及びワークの寸法が直接測定される。コントローラでは、校正用マスターの測定に基づいて行われたゼロセットに対して、ワークの測定値に基づく刃具位置のフィードバック補正が行われ、刃具に摩耗が生じたとしてもワークの加工精度が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例は、所定の刃具について加工が繰り返されたことによる摩耗の影響に対処する発明である。刃具の位置に対する補正処理は、前述したように刃物台への刃具取り付け時にも必要であるため、これまでは最初に加工処理されたワークに対する検測結果に従って補正処理が行われていた。しかし、それでは最初のワークに対して加工精度が出ていない場合は、当該ワークが廃棄処分となってしまい無駄が生じてしまっていた。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、刃具取り付け後の最初のワークに対して加工精度出しを行うワーク加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るワーク加工システムは、取り付け可能な刃具によってワークに対する加工を行うワーク加工機と、前記ワーク加工機によって加工が行われたワークに対して加工精度を検測するワーク検測装置と、前記ワーク加工機と前記ワーク検測装置との間でワークの搬送を行うワーク自動搬送機と、前記ワーク検測装置とのデータ通信および前記ワーク加工機の駆動を制御するものであり、前記刃具の取り付け後の1回目の加工において、ワークに対して行う本加工処理の前に検測用加工処理を行い、当該処理後のワークに対する前記ワーク検測装置からの検測情報を基に前記刃具の取り付け位置に対する補正処理を行う制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、ワーク加工機によってワークに対する加工を行う際、それが刃具取り付け後の1回目の加工である場合には、ワークに対して行う本加工処理の前に検測用加工処理を行い、そのワークについて行われるワーク検測装置による検測の検測情報を基に刃具の取り付け位置に対する補正処理が行われる。従って、そうした補正処理後に本加工処理が行われるため、刃具取り付け後の最初のワークに対しても精度を出した加工が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ワーク加工機を中心に加工機ラインの制御構成を示したブロック図である。
【
図3】ワークの内径加工を回転中心の方向から見たイメージ図である。
【
図4】補正処理プログラムにおけるフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るワーク加工システムの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本実施形態のワーク加工システムを備えた加工機ラインを示す正面図である。本実施形態の加工機ライン1は、図面左側から右側へとワークが流れるように構成されている。左から順番にワーク供給装置2、ワーク加工機3、そしてワーク検測装置4が配置されている。それぞれの構造について詳しく図示しないが、例えばワーク供給装置2には、複数のワークを搭載して送り出すストッカや、搬送コンベアからのワークをワーク加工機3へと受け渡しする装置が用いられる。
【0010】
ワーク加工機3は、旋盤やフライス盤など刃具を取り換えて使用する工作機械が対象となる。本実施形態では主軸装置17とタレット装置18とが設けられた旋盤を想定し(
図2参照)、刃具にはチップの取り換えが行われるバイトを例に挙げて説明する。ワーク加工機3の主軸装置17は、ワークを把持する主軸チャックが回転可能に構成されたものである。タレット装置18では刃具の旋回割り出しが行われ、ワークに対する刃具の移動によって、例えばバイトによる内径加工などが行われる。
【0011】
ワーク検測装置4は、接触子が取り付けられた測定ヘッドを有し、接触子の変位量を検出することによってワークに対する加工寸法が計測される。そして、加工機ライン1にはワーク自動搬送機5が設けられ、ワーク加工機3とワーク検測装置4との間でワークを搬送が行われるよう構成されている。本実施形態のワーク自動搬送機5はガントリー式であり、アーム下端部にロボットハンドを備え、把持したワークを上下左右に移動させることができるようになっている。
【0012】
図2は、ワーク加工機3を中心に加工機ライン1の制御構成を示したブロック図である。ワーク加工機3の制御装置6にはマイクロプロセッサ(CPU)11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14がバスラインを介して接続されている。CPU11は、制御装置全体を統括制御するものであり、ROM12にはCPU11が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM13には一時的な計算データや表示データ等が格納される。
【0013】
制御装置6にはI/Oポート15が設けられており、そのI/Oポート15を介して主軸装置17およびタレット装置18に接続されている。また、加工機ライン1を構成するワーク供給装置2、ワーク検測装置4およびワーク自動搬送機5の各制御装置にも接続され、互いのデータ通信が可能になっている。そして、制御装置6の不揮発性メモリ14にはCPU11が行う処理に必要な情報が記憶され、シーケンスプログラムのほか特に本実施形態では、刃具取り付け後の補正処理プログラムが格納されている。
【0014】
図3は、ワーク加工機3におけるワークWの内径加工を回転中心の方向から見たイメージ図である。ワークWは、ワーク供給装置2からワーク加工機3へと搬送され、主軸装置17のチャックに把持され回転Rが与えられる。そこへタレット装置18の駆動によって刃具21が内周面に当てられて内径加工が行われる。すなわち、刃具21が外径方向(図面上方)へと移動することにより旋削加工が行われる。このときタレット装置18では、座標データを基に刃具21の移動量が決定され、ワークWの内周面が設計値に従って削られることになる。
【0015】
加工が行われたワークWは、次にワーク自動搬送機5によってワーク検測装置4へと運ばれ、そこで加工部分である内径に対する検測が行われ、寸法公差内に収まっているか否かの判定が行われる。例えば、バイトである刃具21のチップ交換時には、その取り付け位置によってワークWに刃具21が設計値以上に入り込んで内周面が削られてしまうことがある。こうして加工精度が出ていない場合には、検測値に基づき刃具21の取り付けによる位置ズレに対応した補正が行われる。ただし、刃具21を取り付けた直後のワークWはNGワークとして廃棄されてしまうことになる。
【0016】
本実施形態では、こうしたワークWの無駄をなくため補正処理プログラムが実行される。
図4は、補正処理プログラムにおけるフローチャートを示した図である。ワーク加工機3では、タレット装置18に取り付けた複数の刃具についてそれぞれ使用回数が計測され、各刃具について使用回数が設定値に達すると寿命として交換指令が出される。そのため、所定のタイミングで刃具交換が行われる。交換によって取り付けられた刃具21は、未使用であるため使用回数がリセットされ、改めて1から使用回数がカウントされることになる。その1回目のタイミングで本実施形態の補正処理プログラムが実行される。
【0017】
図3に示す内径加工では、例えば正規の旋削位置が一点鎖線で示す本加工線23であり、ここでは例えばその旋削量(加工量)がほぼ1ミリであるとする。これまでは、刃具21の取り付け後であっても通常通り本加工線23の位置まで一気に旋削が行われていた。しかし、刃具21の取り付け位置が正確ではない場合には、予め設定された座標データに従って加工してもワークWを削り過ぎてしまうことがある。
【0018】
そこで、補正処理プログラムでは、ワーク加工機3において刃具21の取り付け後の1回目に検測用加工処理が行われる(S101)。検測用加工処理は、
図3に二点鎖線で示す検測用加工線25の位置までの旋削であり、本実施形態では本加工線23までの約2分の1で設定されている。すなわち、ワークWの内周面から本加工線23の位置までの中央値(約0.5ミリ分)が検測用加工処理の旋削量(加工量)として設定されている。
【0019】
ワーク加工機3により検測用加工処理が行われると、そのワークWはワーク自動搬送機5によってワーク検測装置4へと搬送され、そこで内径寸法が検測される(S102)。ここでは、ワーク加工機3からワーク検測装置4へと加工データが送信され、それに基づき検測用加工線25に対する加工精度が検測される。そして、ワーク検測装置4からワーク加工機3へと検測データが送信され、その検測値が本加工線23の値を超えない加工寸法内であるか否かが確認される(S103)。検測値が本加工線23の値を超えて深く旋削が行われてしまえば、ワークW自体がすでにNGワークになってしまい廃棄しなければならないからである。
【0020】
従って、検測値が本加工線23の値を超えた場合は(S103:NO)、警報音や警告表示などによって作業員に当該事実を知らせるための報知処理が行われ(S104)、補正処理プログラムが終了する。一方、検測値が本加工線23の値を超えることなく加工寸法内に収まっていれば(S103:YES)、次に検測用加工線25の位置と検測値との誤差が求められ、刃具21の取り付けにおける位置ズレに対処した補正処理が行われる(S105)。すなわち寸法公差を超える誤差が生じた場合には、その誤差を解消するタレット装置18の駆動制御が行われるように、座標データの書き換えが行われる。
【0021】
ステップS102の検測処理が行われたワークWは、ワーク自動搬送機5によってワーク検測装置4からワーク加工機3へと戻され、2回目の加工として本加工処理が行われる(S106)。この本加工処理では、補正処理された座標データに従いワークWに対する本加工線23の位置までの旋削が行われ、補正処理プログラムが終了する。その後、当該ワークWは再びワーク検測装置4へと搬送されて検測される。そして、工具21の取り付け後の2回目以降の加工では、ワーク加工機3へと搬送されたワークWは本加工線23の位置まで一度に旋削が行われ、ワーク検測装置4へと搬送される。
【0022】
本実施形態によれば、検測用加工処理(S101)、検測処理(S102)および補正処理(S105)を行うことにより、刃具取り付け後の最初のワークWに対する本加工において加工精度を出すことができる。よって、これまで刃具の取り付け後に加工精度が出ずに廃棄対象となっていたワークWの無駄を解消することができる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、検測用加工処理(S101)で行う検測用加工線25までの加工量を本加工における本加工線23までの2分の1で設定したが、この値は任意に設定することが可能である。
また、前記実施形態ではワークの内径加工を一例として説明したが、刃具取り付け後の加工にはそのほかにも外径加工や面削り加工、あるいはフライス加工など様々な刃具およびそれに伴う加工に適応できる。
【符号の説明】
【0024】
1…加工機ライン 2…ワーク供給装置 3…ワーク加工機 4…ワーク検測装置 5…ワーク自動搬送機 6…制御装置 21…刃具 23…本加工線 25…検測用加工線