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  • 特開-シート巻取装置及びシート巻取方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142911
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】シート巻取装置及びシート巻取方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/025 20060101AFI20241003BHJP
   B65H 18/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65H23/025
B65H18/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055310
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003753
【氏名又は名称】弁理士法人シエル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 真
(72)【発明者】
【氏名】武藤 庄治
(72)【発明者】
【氏名】藤稿 壮士
(72)【発明者】
【氏名】末松 大輔
【テーマコード(参考)】
3F055
3F104
【Fターム(参考)】
3F055AA05
3F055AA12
3F055EA01
3F055EA04
3F104AA03
3F104AA07
3F104BA04
3F104FA01
3F104FA07
(57)【要約】
【課題】帯状シートを巻芯に巻き取る際に、シートに浮きが発生した場合でも、シワの発生を抑制することが可能なシート巻取装置及びシート巻取方法を提供する。
【解決手段】帯状シート1の背面側に帯状シート1を巻芯に案内するガイド板11が設置されると共に、帯状シート1の前面側の帯状シート1を挟んでガイド板11と対向する位置に帯状シート1の幅方向端部に接触する一対の短ローラー12a,12bが帯状シート1の幅方向中心線CLに対して略線対称となるよう設置されており、ガイド板11と短ローラー12a,12bとの間を帯状シート1が通過する構成のシート巻取装置を用いて、帯状シート1を巻芯2に巻き取る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状シートを巻芯に巻き取るシート巻取装置であって、
前記帯状シートの背面側に配置され、前記帯状シートを前記巻芯に案内するガイド板と、
前記帯状シートの前面側に配置され、前記帯状シートの幅方向端部に接触する一対の短ローラーと、
を有し、
前記一対の短ローラーは、前記帯状シートを挟んで前記ガイド板と対向する位置に、前記帯状シートの幅方向中心線に対して略線対称となるよう配置されており、
前記帯状シートは前記ガイド板と前記短ローラーとの間を通過するシート巻取装置。
【請求項2】
前記帯状シートの幅をWとしたとき、
前記短ローラーは、前記帯状シートに0.05W以上0.25W以下の幅で接触する請求項1に記載のシート巻取装置。
【請求項3】
前記一対の短ローラーは、内側端部が外側端部よりも前記巻芯側に位置するよう斜めに傾けて配置されている請求項1に記載のシート巻取装置。
【請求項4】
前記一対の短ローラーは、その回転軸が、前記帯状シートの幅方向に対して、搬送方向下流側に1~20°傾けて配置されている請求項3に記載のシート巻取装置。
【請求項5】
更に、前記帯状シートを加熱する加熱ローラーと、前記帯状シートを前記加熱ローラーに押圧するタッチローラーとを有し、
前記一対の短ローラーは、前記加熱ローラーの手前に配置されている請求項1に記載のシート巻取装置。
【請求項6】
前記帯状シートの巻き取り時に前記巻芯の両端部を加圧する加圧部と、
前記巻芯の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力も大きく又は小さくなるよう前記加圧部から前記巻芯に印加される荷重を調整する加圧調整部と、
を更に備え、
前記加圧調整部は、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう荷重を調整する請求項1に記載のシート巻取装置。
【請求項7】
ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る装置である請求項1~6のいずれか1項に記載のシート巻取装置。
【請求項8】
帯状シートを巻芯に巻き取る方法であって、
前記帯状シートの背面側に、前記帯状シートを前記巻芯に案内するガイド板を配置すると共に、前記帯状シートの前面側に、前記帯状シートの幅方向中心線に対して略線対称となるよう一対の短ロールを配置し、
前記帯状シートが前記ガイド板上を通過しているときに、前記帯状シートの幅方向両端部に前記一対の短ローラーを接触させるシート巻取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状シートを巻芯に巻き取るシート巻取装置及びシート巻取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布シートやプラスチックフィルムの製造工程では、ロール状に巻回された帯状のシートやフィルム(以下、これらをまとめて「帯状シート」という。)を、他の巻芯に巻替えることがある。また、カートリッジフィルタなどの円筒状積層体は、ロール状に巻回された帯状の不織布シートを巻芯に巻取り、各層を熱融着させることにより製造される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、不織布シートや薄厚のプラスチックフィルムのように剛性が低く伸びやすい帯状シートは、巻替えや他の巻芯に巻取りを行うと、原反から巻出す際に波打ちが生じ、巻取られたシートにシワや外観不良が発生するという問題がある。帯状シートを巻取る際にシワの発生を抑制する方法としては、例えば、張架区間内の張力変化に対応して速度差を自動的に変更し、巻取ローラーの巻取張力が一定になるようにした巻取装置(特許文献2参照)、及びエアーノズルから圧縮エアーを噴射することでシートの浮き上がりを抑制した巻取装置(特許文献3参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-056446号公報
【特許文献2】特開2016-108075号公報
【特許文献3】特開2019-1611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の巻取方法には、以下に示す問題点がある。特許文献2に記載の装置のように巻取ローラーの巻取張力が一定になるように速度差を調整する方法は、例えば巻芯のように駆動系を取り付けることができない細長いものには適用できない。また、巻芯の回転速度はヒートロールの速度とほぼ同じであるため、ヒートロールの速度を制御することで巻芯の回転速度を制御することも考えられるが、その場合、巻芯の回転速度が変化すると、巻取る際に不織布がヒートロールから受ける熱履歴の度合が変わるため、安定して円筒体を生産できなくなる。
【0006】
一方、特許文献3に記載の装置のように帯状シートに圧縮エアーを噴射する方法は、周囲の埃や塵が飛散して製品への異物混入の原因となる虞がある。また、不織布シートや薄厚のプラスチックフィルムでは幅方向両端部に浮きが発生し続けることがあるが、このような場合、圧縮エアーを噴射しただけではシートの浮きを完全に抑えることができず、巻き取った製品にシワが発生する。
【0007】
そこで、本発明は、帯状シートを巻芯に巻き取る際に、シートに浮きが発生した場合でも、シワの発生を抑制することが可能なシート巻取装置及びシート巻取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシート巻取装置は、帯状シートを巻芯に巻き取るシート巻取装置であって、前記帯状シートの背面側に配置され、前記帯状シートを前記巻芯に案内するガイド板と、前記帯状シートの前面側に配置され、前記帯状シートの幅方向端部に接触する一対の短ローラーと、を有し、前記一対の短ローラーは、前記帯状シートを挟んで前記ガイド板と対向する位置に、前記帯状シートの幅方向中心線に対して略線対称となるよう配置されており、前記帯状シートは前記ガイド板と前記短ローラーとの間を通過する。なお、本発明においては、幅方向中心線に対する各短ローラーの回転軸の角度の差が5°以内の場合を略線対称という。
本発明のシート巻取装置は、前記帯状シートの幅をWとしたとき、前記短ローラーは、前記帯状シートに0.05W以上0.25W以下の幅で接触することができる。
前記一対の短ローラーは、内側端部が外側端部よりも前記巻芯側に位置するよう斜めに傾けて配置してもよい。
また、前記一対の短ローラーは、その回転軸が、前記帯状シートの幅方向に対して、搬送方向下流側に1~20°傾けて配置することができる。
更に、本発明のシート巻取装置は、前記帯状シートを加熱する加熱ローラーと、前記帯状シートを前記加熱ローラーに押圧するタッチローラーとを有していてもよく、その場合、前記一対の短ローラーは、前記加熱ローラーの手前に配置することができる。
本発明のシート巻取装置は、前記帯状シートの巻き取り時に前記巻芯の両端部を加圧する加圧部と、前記巻芯の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力も大きく又は小さくなるよう前記加圧部から前記巻芯に印加される荷重を調整する加圧調整部とを更に備えていてもよく、その場合、前記加圧調整部は、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう荷重を調整する。
前述したシート巻取装置は、例えばロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る際に用いられる。
【0009】
本発明に係るシート巻取方法は、帯状シートを巻芯に巻き取る方法であって、前記帯状シートの背面側に、前記帯状シートを前記巻芯に案内するガイド板を配置すると共に、前記帯状シートの前面側に、前記帯状シートの幅方向中心線に対して略線対称となるよう一対の短ロールを配置し、前記帯状シートが前記ガイド板上を通過しているときに、前記帯状シートの幅方向両端部に前記一対の短ローラーを接触させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、帯状シートを巻芯に巻き取る際に、シートに浮きが発生した場合でも、シワの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態のシート巻取装置の構成を模式的に示す側面図である。
図2図1に示すシート巻取装置において短ローラーの配置例を模式的に示す正面図である。
図3】本発明の第2の実施形態のシート巻取装置の構成を模式的に示す側面図である。
図4図3に示す加圧部21a,21bの構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係るシート巻取装置について説明する。本実施形態のシート巻取装置は、帯状シートを巻芯に巻き取る装置であり、例えばロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る際などに用いられる。図1は本実施形態のシート巻取装置の構成を模式的に示す側面図であり、図2は短ローラーの配置例を模式的に示す正面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施形態のシート巻取装置は、通常の巻取機構に加えて、帯状シート1を巻芯2に案内するガイド板11と、帯状シート1の幅方向端部に接触する一対の短ローラー12a,12bを備える。また、本実施形態のシート巻取装置をカートリッジフィルタなどの円筒状積層体の製造に用いる場合は、ガイド板11及び短ローラー12a,12bに加えて、帯状シート1を加熱する加熱ローラー13a,13bや、帯状シート1を加熱ローラー13aに押圧するタッチローラー14が設けられていてもよい。
【0015】
[ガイド板11]
ガイド板11は、帯状シート1を巻芯2に案内するものであり、帯状シート1の背面側に設置されている。ガイド板11は、帯状シート1よりも広幅で、表面が平滑な板状部材であればよい。また、ガイド板11の材質は、例えばステンレスなどのように耐熱性があり、変形しにくい材料が好ましいが、このような材料に限定されるものではなく、材質や厚さなどの帯状シート1の仕様及び巻取時の加熱温度などの製造条件に応じて適宜選択することができる。
【0016】
[短ローラー12a,12b]
一対の短ローラー12a,12bは、帯状シート1の前面側に、それぞれ帯状シート1の幅方向端部に接触し、かつ、帯状シート1の幅方向中心線CLに対して略線対称となるよう配置されている。ここで、幅方向中心線CLとは、帯状シート1の幅方向中心点を長手方向に結んだ線をいう。また、短ローラー12aと短ローラー12bは、幅方向中心線CLに対して完全に線対称でなくてもよく、幅方向中心線CLに対する回転軸の角度の差が5°以内であればよい。
【0017】
この一対の短ローラー12a,12bは、帯状シート1を挟んでガイド板11と対向しており、帯状シート1は、ガイド板11と短ローラー12a,12bとの間を通過する。その際、帯状シート1は、短ローラー12a,12bによって幅方向両端側に引っ張られ、幅方向に伸ばされながら巻き取られる。このように、幅方向両端部に荷重をかけながら帯状シート1を巻き取ることで、帯状シート1に浮きが発生し難くなり、また、浮きが発生したとしても、帯状シート1に生じている張力により解消されるため、シワなく巻き取ることができる。
【0018】
ここで、短ローラー12a,12bの長さ(幅)は、特に限定されるものではないが、帯状シート1の幅Wの0.5倍(1/2)よりも短く、かつ、帯状シート1に接触する部分の長さLを帯状シート1の幅Wの0.05~0.25倍とすることが可能な長さであることが好ましい。短ローラー12a,12bの帯状シート1に接触する部分の長さLが0.05W未満の場合、帯状シート1に生じる幅方向の張力が弱くなり、浮きを解消する効果が十分に得られないことがある。一方、帯状シート1に接触する部分の長さLが0.25Wを超えると、帯状シート1に生じる幅方向の張力が大きくなり過ぎて、巻取られた製品の長さが伸びて、その後の工程で不具合が発生することがある。
【0019】
また、一対の短ローラー12a,12bは、帯状シート1の内側に配置される内側端部が、帯状シート1の外側に配置される外側端部よりも巻芯2側(下流側)に位置するよう、即ち、帯状シート1の繰り出し側(上流側)から見て「ハの字状」になるよう斜めに傾けて配置することが好ましく、その回転軸が、帯状シート1の幅方向に対して搬送方向上流側に1~20°(図2に示す角度α)傾けて配置されていることがより好ましい。
【0020】
短ローラー12a,12bを、その回転軸が帯状シート1の幅方向中心線CLに対して垂直になるよう配置すると、帯状シート1を幅方向に引っ張る力が弱まり、浮きを解消する効果が低下する。一方、短ローラー12a,12bを、その回転軸が帯状シート1の幅方向中心線CLに対して平行又はそれに近い角度で配置すると、帯状シート1の搬送方向に対して垂直の浮きが幅方向全体に発生することがあり、これにより巻取り後の帯状シートに新たなシワが発生する虞がある。
【0021】
なお、短ローラー12a,12bの回転軸の傾き(角度α)は、帯状シート1や短ローラー12a,12bの幅や種類に応じて、適宜調整することができ、幅方向中心線CLに対して略線対称となる範囲であれば、短ローラー12aと短ローラー12bとで回転軸の傾き(角度α)が異なっていてもよい。
【0022】
本実施形態のシート巻取装置に、加熱ローラー13a,13b及びタッチローラー14が設けられている場合、短ローラー12a,12bは、帯状シート1が加熱ローラー13aとタッチローラー14に挟まれる位置よりも上流側に配置することが好ましく、加熱ローラー13aから30~150mm上流側に配置することがより好ましい。
【0023】
短ローラー12a,12bを加熱ローラー13aから30mm未満の位置に配置すると、浮きが解消する前に帯状シート1がタッチローラー14と加熱ローラー13aで挟まれてしまい、巻き取られた製品にシワが生じる虞がある。一方、短ローラー12a,12bを加熱ローラー13aから150mmを超える位置に配置すると、タッチローラー14と加熱ローラー13aで挟まれる前に帯状シート1内に生じた幅方向の張力が弱まって浮きが発生し、巻き取られた製品にシワが生じる虞がある。
【0024】
短ローラー12a,12bは、駆動系を備えて自ら駆動してもよいが、帯状シート1が繰り出される際の摩擦で回転可能であるため、駆動系を備えず自ら駆動しなくてもよい。短ローラー12a,12bのローラー部分の材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属、ナイロン、シリコンゴム、各種樹脂などが挙げられるが、帯状シート1との間である程度摩擦を生じるものが好ましい。帯状シート1との摩擦が少ないと、短ローラー12a,12bのローラー部分が回転せず、浮きを解消する効果が低下する。
【0025】
ただし、帯状シート1の伸びやすさと摩擦との関係において、例えば帯状シート1が不織布のような伸びやすい素材である場合、摩擦が大きいロールを使用すると帯状シート1が横に伸ばされ過ぎて、巻き取られた製品の長さが長くなり、次工程で不具合が生じる可能性がある。このため、短ローラー12a,12bのローラー部分は、帯状シート1の性質によって材質を選定する必要があり、具体的には、帯状シート1が伸びにくい素材の場合は、短ローラー12a,12bのローラー部分は摩擦の大きい材質とし、帯状シート1が伸びやすい素材の場合は、短ローラー12a,12bのローラー部分は摩擦の小さい材質とすることが好ましい。
【0026】
[シート巻取方法]
次に、本実施形態のシート巻取装置を用いて帯状シート1を巻芯2に巻取る方法について説明する。本発明の実施形態に係るシート巻取方法では、帯状シート1の背面側に、帯状シート1を巻芯2に案内するガイド板11を配置すると共に、帯状シート1の前面側に、帯状シート1の幅方向中心線CLに対して略線対称となるよう一対の短ロール12a,12bを配置し、帯状シート1がガイド板11上を通過しているときに、帯状シート1の幅方向両端部に一対の短ローラー12a,12bを接触させる。
【0027】
本実施形態のシート巻取方法で巻取られる帯状シート1は、特に限定されるものではなく、厚さ0.2~3.0mmの薄厚のプラスチックフィルムや、引張伸度が100%以下かつ引張り強度が3N/50mm以上のシートのように、容易に折り曲げることができ、ロール状に巻くことのできるものであればよい。帯状シート1の具体例としては、不織布、紙、ゴム状シート、フィルム及び薄膜金属などが挙げられる。
【0028】
巻芯2も特に限定されず、目的や用途に応じて適宜選択して使用することができ、例えば外径が4~45mmで、ステンレスや鉄などの金属製又はセラミックス製で150℃程度の高温に加熱したり、接圧をかけたりしても変形しないものを使用することができる。
【0029】
本実施形態のシート巻取装置及びシート巻取方法では、帯状シートがガイド板上を通過しているときに、帯状シートの幅方向両端部に一対の短ローラーを接触させて、帯状シートが幅方向両端側に引っ張られるようにしているため、巻取り中に生じた浮きを解消することができる。その結果、帯状シートに浮きが生じても、巻き取られた製品にシワが発生することを抑制することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るシート巻取装置について説明する。図3は本実施形態のシート巻取装置の構成を模式的に示す側面図である。なお、図3においては、図1に示すシート巻取装置の構成と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0031】
図3に示すように、実施形態のシート巻取装置は、前述した第1の構成に加えて、巻芯2の両端部を加圧する一対の加圧部21a,21bと、加圧部21a,21bから巻芯2に付加される荷重を調整する加圧調整部22が設けられている。このシート巻取装置では、加圧調整部22により、巻芯2の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力よりも大きく又は小さくなるよう加圧部21a,22bによって他の巻芯2に付加される荷重を調整する。
【0032】
[加圧部21a,21b]
図4は加圧部21a,21bの構成例を示す斜視図である。図4に示すように、加圧部21a,21bは、例えばロードセル211と、円盤型又は円柱状の一対のベアリング212で構成することができる。ここで、ベアリング212を用いる理由は、帯状シート1を巻取る際、巻芯2は回転するため、接圧がかかる接触部分も回転させておかなければ、接触部分が擦れて金属粉が発生し、それらが製品に付着して外観不良の原因となるためである。
【0033】
ベアリングの数が1個の場合、巻芯2と1本の線で接触(線接触)することになるため、接触位置が少しずれるだけで、巻芯2に対して安定して接圧を加えることができなくなる。そこで、ベアリング212は、巻芯2を斜め上方の二方向から押さえるように配置することが好ましい、これにより、摩擦を低減し、巻芯2に対して安定して接圧を印加することができる。
【0034】
加圧部21a,21bは、帯状シート1が巻回されない巻芯2の端部に配置されていればよいが、長さxmmの巻芯を用いる場合は、各ベアリング212の長さ又は厚さの中間点が、巻芯2の端縁から0.07x~0.14xmmの範囲に位置するよう配置することが好ましい。巻芯2の端縁から各ベアリング212の長さ又は厚さの中間点までの距離dが0.07xmmよりも小さいと、即ち中間点の位置が巻芯2の端縁から0.07xmmの位置よりも外側(端縁側)の場合、加圧により帯状シート1に及ぼす効果が低下すると共に、巻芯2が撓んで変形してしまう可能性がある。
【0035】
一方、巻芯2の端縁から各ベアリング212の長さ又は厚さの中間点までの距離dが0.14xmmよりも大きいと、即ち、中間点の位置が巻芯2の端縁から0.14xmmの位置よりも内側の場合、ベアリング212が巻取っている帯状シート1に近づくため、巻取位置が少しずれただけで帯状シート1とベアリング212とが接触し、巻取りできなくなる虞がある。
【0036】
[加圧調整部22]
加圧調整部22は、加圧部21aにより印加される圧力(接圧)が、加圧部21bにより印加される圧力(接圧)よりも大きく又は小さくなるように、各加圧部21a,21bの荷重を調整するものである。具体的には、巻芯2にかかる圧力(接圧)を、波打ちが発生している側が高く、波打ちが発生していない側が低くなるようにする。
【0037】
例えば、図3に示す巻取装置により、不織布シートを巻取る場合、波打ちが発生している側の圧力(接圧)を高くして巻取ることで、波打ちしている部分は加熱ローラー13aに密着しながら巻かれる。一方、波打ちしていない部分は、比較的弱い圧力(接圧)とすることで、少し緩和された状態で巻取られる。これにより、波打ちが解消され、シワなどの外観不良がない、円筒体を製造することができる。
【0038】
ここで、接圧の差は、特に限定されるものではないが、例えば波打ちが発生している側の端部に印加される圧力(接圧)Pを、波打ちが発生していない側の端部に印加される圧力(接圧)Pよりも2.0N以上大きくする(P≧P+2.0N)ことが好ましい。このように、波打ちが発生している側では、接圧Pを高くして、不織布シートを加熱ローラー13aに密着しやすくすると共に、波打ちがない側では、接圧Pを低くして、不織布シートをある程度緩和された密着状態とすることで、全体では幅方向に伸ばされつつ不織布シートをシワなく巻芯2に巻取ることができる。
【0039】
なお、不織布シートを巻取る場合、接圧の差(P-P)が大きすぎると、波打ちが発生している側で加熱ローラー13aへの密着が強くなりすぎることがある。その場合、不織布の熱融着が進んで、隙間が小さくなり、円筒体としたときにエアーの通り道が少なくなって、フィルタ―性能を発揮できなくなる虞がある。そこで、不織布シートを巻取る場合は、接圧の差(P-P)は6N以下とすることが好ましい。また、各加圧部21a,21bにより印加される圧力(接圧)P,Pの大きさは、特に限定されるものではなく、帯状シート1の厚さや巻取後の円筒体の外径などに応じて適宜設定することができるが、例えば0.2~35Nとすることができる。
【0040】
本実施形態のシート巻取方法では、帯状シート1を巻芯2に巻取る際に、例えば波打ちが発生している側の圧力(接圧)を高くして巻取る。その際、波打ちが発生している側の端部に印加される圧力(接圧)Pを、波打ちが発生していない側の端部に印加される圧力(接圧)Pよりも2.0N以上大きくする(P≧P+2.0N)ことが好ましい。これにより、波打ちの影響が解消され、シワの発生を抑制することができる。
【0041】
以上詳述したように、本実施形態のシート巻取装置及びシート巻取方法は、幅方向両端部において短ローラーにより帯状シートを幅方向に引っ張ると共に、巻芯の一方の端部と他方の端部で印加する圧力に差をつけているため、浮きや波打ちの影響を緩和し、シワの発生を抑制することができる。
【実施例0042】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、以下に示す方法で不織布シートの巻取りを行い、浮きに由来するシワ発生の有無を確認した。
【0043】
(比較例1)
短ローラーを設置していない従来の巻取装置を用いて、目付35gの不織布シートを巻取り、円筒体を40本形成した。形成された円筒体を確認したところ、2本にシワが発生しており、比較例1におけるシワ発生率は5.0%であった。
【0044】
(実施例1)
図1に示す巻取装置により目付35gの不織布シートを巻取り、円筒体を111本形成した。その際、短ローラーのローラー部分には、摩擦の大きいゴムロールを用いた。形成された円筒体を確認したところ、シワが発生しているものはなく、実施例1におけるシワ発生率は0%であった。
【0045】
(比較例2)
短ローラーを設置していない従来の巻取装置を用いて、目付60gの不織布シートを巻取り、円筒体を181本形成した。形成された円筒体を確認したところ、22本にシワが発生しており、比較例2におけるシワ発生率は12.2%であった。
【0046】
(実施例2)
図1に示す巻取装置により目付60gの不織布シートを巻取り、円筒体を96本形成した。その際、短ローラーのローラー部分には、摩擦の大きいゴムロールを用いた。形成された円筒体を確認したところ、シワが発生しているものはなく、実施例2におけるシワ発生率は0%であった。
【0047】
以上の結果を、下記表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
上記表1に示すように、比較的伸びやすい目付35gの不織布シートでは、比較例1のシワ発生率が5.0%であったものを、実施例1では0%に低減することができた。しかし、実施例1では摩擦の大きいゴムローラーを用いたため、形成された円筒体の長さは10mm長くなっていた。そこで、伸びやすい帯状シートを巻き取る際は、ポリエチレンなどの摩擦の小さい樹脂製ローラーを用いることが望ましいと思われる。
【0050】
一方、熱処理してあり比較的伸びにくい目付60gの不織布シートでは、比較例2のシワ発生率が12.2%であったのに対して、実施例2では0%に大幅に低減することができた。実施例2でもゴムローラーを用いたが、形成された円筒体には、横方向への伸びも見られず、良好な状態で製品を生産することができた。
【0051】
以上の結果から、本発明によれば、帯状シートを巻芯に巻き取る際に、シートに浮きが発生した場合でも、シワの発生を抑制できることが確認された。
【0052】
なお、本発明は、以下の形態をとることもできる。
〔1〕
帯状シートを巻芯に巻き取るシート巻取装置であって、
前記帯状シートの背面側に配置され、前記帯状シートを前記巻芯に案内するガイド板と、
前記帯状シートの前面側に配置され、前記帯状シートの幅方向端部に接触する一対の短ローラーと、
を有し、
前記一対の短ローラーは、前記帯状シートを挟んで前記ガイド板と対向する位置に、前記帯状シートの幅方向中心線に対して略線対称となるよう配置されており、
前記帯状シートは前記ガイド板と前記短ローラーとの間を通過するシート巻取装置。
〔2〕
前記帯状シートの幅をWとしたとき、
前記短ローラーは、前記帯状シートに0.05W以上0.25W以下の幅で接触する〔1〕に記載のシート巻取装置。
〔3〕
前記一対の短ローラーは、内側端部が外側端部よりも前記巻芯側に位置するよう斜めに傾けて配置されている〔1〕又は〔2〕に記載のシート巻取装置。
〔4〕
前記一対の短ローラーは、その回転軸が、前記帯状シートの幅方向に対して、搬送方向下流側に1~20°傾けて配置されている〔3〕に記載のシート巻取装置。
〔5〕
更に、前記帯状シートを加熱する加熱ローラーと、前記帯状シートを前記加熱ローラーに押圧するタッチローラーとを有し、
前記一対の短ローラーは、前記加熱ローラーの手前に配置されている〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のシート巻取装置。
〔6〕
前記帯状シートの巻き取り時に前記巻芯の両端部を加圧する加圧部と、
前記巻芯の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力も大きく又は小さくなるよう前記加圧部から前記巻芯に印加される荷重を調整する加圧調整部と、
を更に備え、
前記加圧調整部は、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう荷重を調整する〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のシート巻取装置。
〔7〕
ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る装置である〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のシート巻取装置。
〔8〕
帯状シートを巻芯に巻き取る方法であって、
前記帯状シートの背面側に、前記帯状シートを前記巻芯に案内するガイド板を配置すると共に、前記帯状シートの前面側に、前記帯状シートの幅方向中心線に対して略線対称となるよう一対の短ロールを配置し、
前記帯状シートが前記ガイド板上を通過しているときに、前記帯状シートの幅方向両端部に前記一対の短ローラーを接触させるシート巻取り方法。
〔9〕
前記帯状シートの幅をWとしたとき、
前記短ローラーを、前記帯状シートに0.05W以上0.25W以下の幅で接触させる〔8〕に記載のシート巻取り方法。
〔10〕
前記一対の短ローラーを、内側端部が外側端部よりも前記巻芯側に位置するよう斜めに傾けて配置する〔8〕又は〔9〕に記載のシート巻取り方法。
〔11〕
前記一対の短ローラーを、その回転軸が、前記帯状シートの幅方向に対して、搬送方向下流側に1~20°傾くように配置する〔10〕に記載のシート巻取り方法。
〔12〕
更に、前記帯状シートを加熱する加熱ローラーと、前記帯状シートを前記加熱ローラーに押圧するタッチローラーとを配設し、
前記一対の短ローラーを、前記加熱ローラーの手前に設置する〔8〕~〔11〕のいずれかに記載のシート巻取り方法。
〔13〕
前記帯状シートの巻き取り時に前記巻芯の両端部を加圧する加圧部と、
前記巻芯の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力も大きく又は小さくなるよう前記加圧部から前記巻芯に印加される荷重を調整する加圧調整部と、
を更に設け、
前記加圧調整部により、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう荷重を調整する〔8〕~〔12〕のいずれかに記載のシート巻取り方法。
〔14〕
ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る〔8〕~〔13〕のいずれかに記載のシート巻取り方法。
【符号の説明】
【0053】
1 帯状シート
2 巻芯
11 ガイド板
12a,12b 短ローラー
13a,13b 加熱ローラー
14 タッチローラー
21a,21b 加圧部
22 加圧調整部
211 ロードセル
212 ベアリング
図1
図2
図3
図4