IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図1
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図2
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図3
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図4
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図5
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図6
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図7
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図8
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図9
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図10
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図11
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図12
  • 特開-鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142916
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/10 20060101AFI20241003BHJP
   B62L 3/08 20060101ALI20241003BHJP
   B62L 3/02 20060101ALI20241003BHJP
   B60T 11/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60T7/10 P
B62L3/08
B62L3/02 A
B60T11/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055324
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】永井 龍一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 南洋
【テーマコード(参考)】
3D047
3D124
【Fターム(参考)】
3D047AA01
3D047BB21
3D047BB48
3D047CC04
3D047CC05
3D047FF04
3D047FF23
3D124AA13
3D124BB01
3D124BB17
3D124CC06
3D124CC31
3D124DD06
3D124DD30
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により前輪ブレーキおよび後輪ブレーキを理想的な配分で作動させることができる鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ操作子(36)の初期位置で、揺動軸(51)を中心として前記ピボット軸(52)までの距離を第1半径(R1)とする第1回動円(C1)と前輪ブレーキケーブル(23)ないしは後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)に沿った第1接線(L1)とが接する第1接点(S1)より、イコライザ(60)のピボット軸(52)の中心点(52a)の方が、ブレーキ操作子(36)側にずれた位置に設けられる。前輪ブレーキケーブル(23)を支持する第1支持部(61)がピボット軸(52)より揺動軸(51)に近い側に位置すると共に、後輪ブレーキケーブル(32)を支持する第2支持部(62)がピボット軸(52)より揺動軸(51)から離間する側に位置する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラケット(41)に対して揺動軸(51)を中心に揺動可能に支持されるブレーキ操作子(36)と、該ブレーキ操作子(36)に対してピボット軸(52)で連結されるイコライザ(60)とを有し、前記ブレーキ操作子(36)を操作することで前記イコライザ(60)に支持される前輪ブレーキケーブル(23)および後輪ブレーキケーブル(32)が牽引されるように構成される鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置において、
前記ブレーキ操作子(36)の初期位置で、
前記揺動軸(51)を中心として前記ピボット軸(52)までの距離を第1半径(R1)とする第1回動円(C1)と前記前輪ブレーキケーブル(23)ないしは前記後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)に沿った第1接線(L1)とが接する第1接点(S1)より、前記ピボット軸(52)の中心点(52a)の方が前記ブレーキ操作子(36)側にずれた位置に設けられており、
前記前輪ブレーキケーブル(23)を支持する第1支持部(61)が前記ピボット軸(52)より前記揺動軸(51)に近い側に位置すると共に、前記後輪ブレーキケーブル(32)を支持する第2支持部(62)が前記ピボット軸(52)より前記揺動軸(51)から離間する側に位置することを特徴とする鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ブレーキ操作子(36)の初期位置で、
前記ピボット軸(52)を中心として前記第2支持部(62)の中心点(62a)までの距離を第2半径(R2)とする第2回動円(C2)と前記前輪ブレーキケーブル(23)ないしは後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)に沿う第2接線(L2)とが接する第2接点(S2)より、前記第2支持部(62)の中心点(62a)の方が前記前輪ブレーキケーブル(23)ないしは後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)と反対方向にずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置。
【請求項3】
前記ブレーキ操作子(36)の初期位置で、
前記第1支持部(61)の中心点(61a)が、前記前輪ブレーキケーブル(23)の牽引方向(W)に沿った軸線(L3)より、前記ピボット軸(52)に近い位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置。
【請求項4】
前記ブラケット(41)に、前記前輪ブレーキケーブル(23)が挿入される第1挿入孔(81)と、前記後輪ブレーキケーブル(32)が挿入される第2挿入孔(82)と、ストップランプスイッチ(73)が挿入される第3挿入孔(83)とが設けられており、
前記3つの挿入孔(81,82,83)は、該挿入孔(81,82,83)の軸方向視で、それぞれの中心を直線(L4)で結ぶことができる2つの挿入孔(81,82)と、前記直線(L4)から離間する1つの挿入孔(83)とからなり、
前記1つの挿入孔(83)が、前記2つの挿入孔(81,82)の外径に同時に接する第3接線(L5)に重なるように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置。
【請求項5】
前記第1挿入孔(81)より前記第2挿入孔(82)の方が大径とされており、
前記第1挿入孔(81)の周囲に壁部材(53)が立設していることを特徴とする請求項4に記載の鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置に係り、特に、単一の操作子の操作に応じて前輪ブレーキおよび後輪ブレーキを連動して作動させる鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、単一の操作子の操作に応じて前輪ブレーキおよび後輪ブレーキを連動して作動させる鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、自動二輪車の前後連動ブレーキ装置において、車幅方向左側の操向ハンドルに設けられたブレーキレバーを握ることで、前輪ブレーキケーブルおよび後輪ブレーキケーブルを支持するイコライザが牽引されて、前輪ブレーキおよび後輪ブレーキが連動して作動する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-130403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前輪ブレーキおよび後輪ブレーキを理想的な配分で作動させるためには、前輪ブレーキケーブルおよび後輪ブレーキケーブルを異なる比率で牽引する必要がある。しかし、特許文献1のブレーキレバーは、前輪ブレーキケーブルおよび後輪ブレーキケーブルをほぼ同じ比率で牽引する構造とされており、前輪ブレーキおよび後輪ブレーキを理想的な配分で作動させるための構成に関しては、依然として工夫の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、簡単な構成により前輪ブレーキおよび後輪ブレーキを理想的な配分で作動させることができる鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ブラケット(41)に対して揺動軸(51)を中心に揺動可能に支持されるブレーキ操作子(36)と、該ブレーキ操作子(36)に対してピボット軸(52)で連結されるイコライザ(60)とを有し、前記ブレーキ操作子(36)を操作することで前記イコライザ(60)に支持される前輪ブレーキケーブル(23)および後輪ブレーキケーブル(32)が牽引されるように構成される鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置において、前記ブレーキ操作子(36)の初期位置で、前記揺動軸(51)を中心として前記ピボット軸(52)までの距離を第1半径(R1)とする第1回動円(C1)と前記前輪ブレーキケーブル(23)ないしは前記後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)に沿った第1接線(L1)とが接する第1接点(S1)より、前記ピボット軸(52)の中心点(52a)の方が前記ブレーキ操作子(36)側にずれた位置に設けられており、前記前輪ブレーキケーブル(23)を支持する第1支持部(61)が前記ピボット軸(52)より前記揺動軸(51)に近い側に位置すると共に、前記後輪ブレーキケーブル(32)を支持する第2支持部(62)が前記ピボット軸(52)より前記揺動軸(51)から離間する側に位置する点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記ブレーキ操作子(36)の初期位置で、前記ピボット軸(52)を中心として前記第2支持部(62)の中心点(62a)までの距離を第2半径(R2)とする第2回動円(C2)と前記前輪ブレーキケーブル(23)ないしは後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)に沿う第2接線(L2)とが接する第2接点(S2)より、前記第2支持部(62)の中心点(62a)の方が前記前輪ブレーキケーブル(23)ないしは後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)と反対方向にずれた位置に設けられている点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記ブレーキ操作子(36)の初期位置で、前記第1支持部(61)の中心点(61a)が、前記前輪ブレーキケーブル(23)の牽引方向(W)に沿った軸線(L3)より、前記ピボット軸(52)に近い位置に設けられている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記ブラケット(41)に、前記前輪ブレーキケーブル(23)が挿入される第1挿入孔(81)と、前記後輪ブレーキケーブル(32)が挿入される第2挿入孔(82)と、ストップランプスイッチ(73)が挿入される第3挿入孔(83)とが設けられており、前記3つの挿入孔(81,82,83)は、該挿入孔(81,82,83)の軸方向視で、それぞれの中心を直線(L4)で結ぶことができる2つの挿入孔(81,82)と、前記直線(L4)から離間する1つの挿入孔(83)とからなり、前記1つの挿入孔(83)が、前記2つの挿入孔(81,82)の外径に同時に接する第3接線(L5)に重なるように配設されている点に第4の特徴がある。
【0011】
さらに、前記第1挿入孔(81)より前記第2挿入孔(82)の方が大径とされており、前記第1挿入孔(81)の周囲に壁部材(53)が立設している点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0012】
第1の特徴によれば、ブラケット(41)に対して揺動軸(51)を中心に揺動可能に支持されるブレーキ操作子(36)と、該ブレーキ操作子(36)に対してピボット軸(52)で連結されるイコライザ(60)とを有し、前記ブレーキ操作子(36)を操作することで前記イコライザ(60)に支持される前輪ブレーキケーブル(23)および後輪ブレーキケーブル(32)が牽引されるように構成される鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置において、前記ブレーキ操作子(36)の初期位置で、前記揺動軸(51)を中心として前記ピボット軸(52)までの距離を第1半径(R1)とする第1回動円(C1)と前記前輪ブレーキケーブル(23)ないしは前記後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)に沿った第1接線(L1)とが接する第1接点(S1)より、前記ピボット軸(52)の中心点(52a)の方が前記ブレーキ操作子(36)側にずれた位置に設けられており、前記前輪ブレーキケーブル(23)を支持する第1支持部(61)が前記ピボット軸(52)より前記揺動軸(51)に近い側に位置すると共に、前記後輪ブレーキケーブル(32)を支持する第2支持部(62)が前記ピボット軸(52)より前記揺動軸(51)から離間する側に位置するので、ブレーキ操作子の操作量が大きくなるにつれて、前輪ブレーキケーブルおよび後輪ブレーキケーブルの牽引方向に対して垂直方向のピボット軸移動量を大きくすることが可能となる。より詳しくは、ピボット軸は、ブレーキ操作子の操作に伴って前方側に移動することがなく、第1回動円に沿って後方側にのみ移動することとなる。これにより、前輪ブレーキケーブルと後輪ブレーキケーブルの牽引レシオが変化し、ブレーキ操作子の操作量が大きくなるにつれて、前輪ブレーキ制動力の増加量より後輪ブレーキ制動力の増加量の方が小さくなり、前後ブレーキの制動力配分を理想値に近づけることができる。
【0013】
第2の特徴によれば、前記ブレーキ操作子(36)の初期位置で、前記ピボット軸(52)を中心として前記第2支持部(62)の中心点(62a)までの距離を第2半径(R2)とする第2回動円(C2)と前記前輪ブレーキケーブル(23)ないしは後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)に沿う第2接線(L2)とが接する第2接点(S2)より、前記第2支持部(62)の中心点(62a)の方が前記前輪ブレーキケーブル(23)ないしは後輪ブレーキケーブル(32)の牽引方向(W)と反対方向にずれた位置に設けられているので、第2支持部が、ブレーキ操作子の操作に伴って一旦前方側に移動してから後方側に移動することとなる。これにより、第2支持部の振れ幅が小さくなり、後輪ブレーキケーブルの擦れを抑制してフリクションを低減することが可能となる。
【0014】
第3の特徴によれば、前記ブレーキ操作子(36)の初期位置で、前記第1支持部(61)の中心点(61a)が、前記前輪ブレーキケーブル(23)の牽引方向(W)に沿った軸線(L3)より、前記ピボット軸(52)に近い位置に設けられているので、ブレーキ操作子の操作時に前輪制動力の増加量が大きくなり、前輪制動力を理想値に近づけることができる。詳しくは、上記した構造により、ブレーキ操作子の回動動作に伴って第1支持部の中心点がケーブル牽引方向に対して垂直方向に大きく振れる為、前輪制動力の増加量が大きくなることとなる。
【0015】
第4の特徴によれば、前記ブラケット(41)に、前記前輪ブレーキケーブル(23)が挿入される第1挿入孔(81)と、前記後輪ブレーキケーブル(32)が挿入される第2挿入孔(82)と、ストップランプスイッチ(73)が挿入される第3挿入孔(83)とが設けられており、前記3つの挿入孔(81,82,83)は、該挿入孔(81,82,83)の軸方向視で、それぞれの中心を直線(L4)で結ぶことができる2つの挿入孔(81,82)と、前記直線(L4)から離間する1つの挿入孔(83)とからなり、前記1つの挿入孔(83)が、前記2つの挿入孔(81,82)の外径に同時に接する第3接線(L5)に重なるように配設されているので、3つの挿入孔が互いに近接配置されることとなり、ブラケットの小型化を図ることができる。
【0016】
第5の特徴によれば、前記第1挿入孔(81)より前記第2挿入孔(82)の方が大径とされており、前記第1挿入孔(81)の周囲に壁部材(53)が立設しているので、第1挿入孔に後輪ブレーキケーブルを組み付けることが困難となり、誤組を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
図2】前後連動ブレーキ装置の構成説明図である。
図3】車幅方向左側のブレーキレバーを支持するブラケットの斜視図である。
図4】ブラケットの平面図である。
図5】ブラケットの断面図である。
図6】ブラケットの断面図である。
図7】ブラケットの断面図である。
図8】ブレーキレバーを中間位置まで握った状態のブラケットの断面図である。
図9】ブレーキレバーを限界位置まで握った状態のブラケットの断面図である。
図10】前輪制動力と後輪制動力との関係を示すグラフである。
図11】前輪制動力および後輪制動力の推移を示すグラフである。
図12】ブラケットを車幅方向内側から見た側面図である。
図13】本実施形態の変形例に係るブラケットを車幅方向内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両の前後連動ブレーキ装置40を適用した自動二輪車1の左側面図である。また、図2は前後連動ブレーキ装置40の構成説明図である。
【0019】
自動二輪車1は、運転者が足を乗せる低床フロア25を有するスクータ型の鞍乗型車両である。自動二輪車1の車体フレーム39は、操向ハンドル24および前輪WFが支持されたフロントフォーク11を操向可能に支承するヘッドパイプ38と、該ヘッドパイプ38から下方に延出するダウンチューブ5と、該ダウンチューブ5の下端部に連設されて後方に延びるリヤフレーム10とを備える。
【0020】
リヤフレーム10は、前端部がダウンチューブ5の下端に連結されて後方側に向けてほぼ水平に延びる一対の前部フレーム部6Aと、前部フレーム部6Aの後端から後上方に延びる左右一対の中間フレーム部6Bと、中間フレーム部6Bの後端を相互に連結する後部フレーム部6Cとを有する。
【0021】
車体フレーム4は、合成樹脂製のカバー2で覆われている。カバー2は、ヘッドライト3を有して操向ハンドル24の周辺の部品を覆うハンドルカバー2Gと、ヘッドパイプ38の前部および前輪WFの上部を覆うフロントカバー2Aと、フロントカバー2Aに接合されて運転者の脚部前方を覆うレッグシールド2Bと、フロントカバー2Aおよびレッグシールド2Bに接合されて前部車体の両側を覆う左右一対のフロントサイドカバー2Cと、レッグシールド2Bに接合されて運転者の足元を支持するフロアボード2Dと、両フロントサイドカバー2Cおよびフロアボード2Dに接合されて後部車体の両側を覆う左右一対のリヤロアカバー2Eと、両リヤロアカバー2Eおよびフロアボード2Dに接合されるリヤアッパカバー2Fとを含む。リヤアッパカバー2Fの後部には後輪WRの上部を覆うリヤフェンダ8が装着される。リヤアッパカバー2Fの上部には、運転者が座るシート7が設けられる。
【0022】
後輪WRは、車体フレーム39に揺動可能に支承されるパワーユニットPの後部に軸支される。パワーユニットPは、エンジンEと、該エンジンEの出力を後輪WRに伝達する無段変速機Mとによって構成される。パワーユニットPの前部は、図示しないリンク機構を介して中間フレーム部6Bに対して後輪WRの回転軸線と平行な揺動軸によって支承される。パワーユニットPの後部は、リヤクッション9を介して中間フレーム部6Bに吊り下げられている。
【0023】
図2を併せて参照して、フロントフォーク11の下端部には、前輪WFを制動する前輪ブレーキ12が配置され、この前輪ブレーキ12の側方を覆うカバー部材としての前輪ブレーキパネル13が配置されている。一方、パワーユニットPの後端部には、後輪WRを制動する後輪ブレーキ16が配置され、この後輪ブレーキ16の側方を覆うカバー部材としての後輪ブレーキパネル17が配置されている。
【0024】
前輪ブレーキパネル13には、前輪ブレーキ12に制動力を加える前輪ブレーキアーム21が揺動軸18によって揺動可能に軸支されている。前輪ブレーキアーム21には、第1前輪ブレーキケーブル22および第2前輪ブレーキケーブル23が連結されている。
【0025】
第1前輪ブレーキケーブル22には、右側の操向ハンドル24に固定されたブラケット41に軸支される右側のブレーキレバー26に連結され、この右側のブレーキレバー26の操作によって前輪を制動する。左右の操向ハンドル24の端部には、ハンドルグリップ27が取り付けられる。
【0026】
後輪ブレーキパネル17には、後輪ブレーキ16に制動力を加える後輪ブレーキアーム31が揺動軸28によって揺動可能に軸支されている。後輪ブレーキアーム31には、後輪ブレーキケーブル32が連結される。第2前輪ブレーキケーブル23および後輪ブレーキケーブル32は、左側の操向ハンドル24に固定されたブラケット41に軸支される左側のブレーキレバー36に連結される。
【0027】
本発明に係る前後連動ブレーキ装置40は、前輪WFを制動する前輪ブレーキ12と、後輪WRを制動する後輪ブレーキ16と、前輪ブレーキ12に連結される前輪ブレーキケーブル20と、後輪ブレーキ16に連結される後輪ブレーキケーブル32とを備える。前輪ブレーキケーブル20は、右側ブレーキレバー26に連結される第1前輪ブレーキケーブル22と、左側のブレーキレバー36に連結される第2前輪ブレーキケーブル23とからなる。
【0028】
図3は、車幅方向左側のブレーキレバー36を支持するブラケット41の斜視図である。また、図4はブラケット41の平面図である。ブラケット41は、操向ハンドル24を挟み込んでクランプ部材41aを締め付けることで操向ハンドル24に固定される。ブレーキ操作子としてのブレーキレバー36は、ボルトからなる揺動軸51によってブラケット41に揺動可能に軸支されている。ブレーキレバー36の下面には、ボルトからなるピボット軸52によってイコライザ60が揺動可能に軸支されている。
【0029】
イコライザ60には、第2前輪ブレーキケーブル(以下、単に前輪ブレーキケーブルと示す)23および後輪ブレーキケーブル32の端部が支持されている。この構成により、ブレーキレバー36を握ることでイコライザ60が図示左方に牽引され、前輪ブレーキケーブル23および後輪ブレーキケーブル32が共に牽引されることとなる。
【0030】
ブラケット41の車幅方向内側の面には、3つの挿入孔が形成されており、前輪ブレーキケーブル23を支持する筒状の第1ホルダ71と、後輪ブレーキケーブル32を支持する筒状の第2ホルダ72と、ストップランプスイッチ73とがそれぞれ挿入されている。ブラケット41には、第1ホルダ71の抜け止めピン91および第2ホルダ72の抜け止めピン92が埋設される。また、ブラケット41の車幅方向内側の面には、第1ホルダ71の一部を覆う壁部材53が車幅方向内側に向けて立設している。
【0031】
ブラケット41の前部には、ブレーキロックを作動させるためのブレーキロックレバー56が第2揺動軸54によって軸支されている。第2揺動軸54には、ブレーキロックレバー56を初期位置に戻す方向の付勢力を与えるスプリング57が巻回されている。ブレーキレバー36を握った状態でブレーキロックレバー56を手前に引き、ここでブレーキレバー36をリリースすると、ブレーキロックレバー56に設けられたロックピン55がイコライザ60に係合して、ブレーキレバー36を握った状態が保持される。これにより、ブレーキロックが作動することとなる。
【0032】
図5は、ブラケット41の断面図である。この図では、ブレーキレバー36が初期位置にある状態を示す。前輪ブレーキケーブル23の端部には、円柱状の第1支持部61が取り付けられており、後輪ブレーキケーブル32の端部には、円柱状の第2支持部62が取り付けられている。板状部材からなるイコライザ60は、ピボット軸52の後方側の位置で第1支持部61を支持すると共に、ピボット軸52の前方側の位置で第2支持部62を支持する。イコライザ60の前端部には、ロックピン55と係合する係合突起63が形成されている。ブラケット41の第2揺動軸54の近傍には、スプリング57の端部58が係合している。
【0033】
本実施形態では、前輪ブレーキケーブルおよび後輪ブレーキケーブルを異なる比率で牽引して前輪ブレーキおよび後輪ブレーキを理想的な配分で作動させるために、各部の配設構造等に工夫が施されている。
【0034】
1つ目の工夫は、ブレーキレバー36の揺動軸51を中心とした半径を第1半径R1とする第1回動円C1と、前輪ブレーキケーブル23ないしは後輪ブレーキケーブル32の牽引方向Wに沿った第1接線L1とが接する第1接点S1より、ピボット軸52の中心点52aの方がブレーキレバー36側、すなわち、図示左方にずれた位置に設けられていることである。そして、前輪ブレーキケーブル23を支持する第1支持部61が、ピボット軸52より揺動軸51に近い側に位置すると共に、後輪ブレーキケーブル32を支持する第2支持部62がピボット軸52より揺動軸51から離間する側に位置する。これにより、第1支持部61が第1回動円C1の内側に位置すると共に、第2支持部62が第1回動円C1の外側に位置するように構成されることとなる。なお、本実施例では、半径R1は、揺動軸51からピボット軸52の距離に設定されている。
【0035】
この構成により、ブレーキレバー36を握る量が大きくなるにつれて、前輪ブレーキケーブル23ないしは後輪ブレーキケーブル32の牽引方向Wに対して垂直方向のピボット軸52の移動量を大きくすることが可能となる。より詳しくは、ピボット軸52は、ブレーキレバー36の操作に伴って前方側に移動することがなく、第1回動円C1に沿って後方側にのみ移動することとなる。その結果、前輪ブレーキケーブル23と後輪ブレーキケーブル32の牽引レシオが変化し、ブレーキレバー36を握る量が大きくなるにつれて、前輪ブレーキ制動力の増加量より後輪ブレーキ制動力の増加量の方が小さくなり、前後ブレーキの制動力配分を理想値に近づけることができる。
【0036】
図6は、ブラケット41の断面図である。この図では、図5と同様にブレーキレバー36が初期位置にある状態を示す。2つ目の工夫は、ピボット軸52を中心として第2支持部62の中心点62aまでの距離を半径R2とする第2回動円C2と、前輪ブレーキケーブル23ないしは後輪ブレーキケーブル32の牽引方向Wに沿った第2接線L2とが接する第2接点S2より、第2支持部62の中心点62aの方が前輪ブレーキケーブル23ないしは後輪ブレーキケーブル32の牽引方向Wと反対方向にずれた位置に設けられることである。この構成により、第2支持部62が、ブレーキレバー36の操作に伴って一旦前方側に移動してから後方側に移動することとなる。これにより、第2支持部62の振れ幅が小さくなり、後輪ブレーキケーブル32の擦れを抑制してフリクションを低減することが可能となる。より詳しくは、第2支持部62の中心点62aの方が第2接点S2より牽引方向Wと反対方向にずれた位置に設けられることで、ブレーキレバー36を握る際の中心点62aは、一旦前方に振れてから後方に移動する山型の曲線をなすこととなる。これにより、ブレーキケーブルの牽引方向Wと垂直方向における第2支持部62の振れ幅が小さくなり、後輪ブレーキケーブル32のフリクションが低減されることとなる。
【0037】
図7は、ブラケット41の断面図である。この図では、図5,6と同様にブレーキレバー36が初期位置にある状態を示す。3つ目の工夫は、第1支持部61の中心点61aが、前輪ブレーキケーブル23の牽引方向Wに沿った軸線L3より、ピボット軸52に近い位置に設けられていることである。これにより、ブレーキレバー36の握り込み時に前輪制動力の増加量が大きくなり、前輪制動力を理想値に近づけることができる。
【0038】
図8は、ブレーキレバー36を中間位置まで握った状態のブラケット41の断面図である。また、図9はブレーキレバー36を限界位置まで握った状態のブラケット41の断面図である。図5,6,7を用いて説明した工夫により、本実施形態では、ブレーキレバー36を握る量が大きくなるほど、前輪ブレーキケーブル23と後輪ブレーキケーブル32の牽引レシオが前輪側に寄ることとなり、後輪ブレーキ制動力の増加量に比して前輪ブレーキ制動力の増加量を急にすることが可能となる。
【0039】
図10は、前輪制動力と後輪制動力との関係を示すグラフである。線Cは前輪制動力および後輪制動力の理想配分曲線を示す。前後輪の制動力は、制動の初期では前後輪共にリニアに立ち上がった後は、前輪制動力の上限に比して後輪制動力の上限の方が低いことから、制動力が高まるにつれて後輪制動力の増加量が抑えられると共に前輪制動力の増加量が大きくなることが理想的とされる。ところが、線Aで示す従来の前後連動ブレーキ装置では、前輪ブレーキケーブルおよび後輪ブレーキケーブルを同じ比率で牽引するため、前後輪の制動力が直線的に増加することとなり、制動の中期から後期にかけては後輪制動力の増加量を抑えると共に前輪制動力の増加量を大きくしたいという課題が生じていた。
【0040】
これに対し、本発明に係る構成によれば、線Bで示すように、制動力が高まるにつれて後輪制動力の増加量が抑えられると共に前輪制動力の増加量が大きくなることが実現され、ブレーキレバー36を操作した際の前後輪の制動力を理想配分曲線に近づけることを可能としている。
【0041】
図11は、前輪制動力および後輪制動力の推移を示すグラフである。本実施形態に係る前後連動ブレーキによる後輪制動力Gは、直線的に増加する従来の後輪制動力Eに比して、制動力が大きくなるにつれて増加量が抑えられている。また、本実施形態に係る前後連動ブレーキによる前輪制動力Fは、直線的に増加する従来の前輪制動力Dに比して、制動力が大きくなるにつれて増加量が大きくなるように設定される。これにより、前後輪の制動力が理想配分曲線に近づくこととなる。
【0042】
図12は、ブラケット41を車幅方向内側から見た側面図である。前記したように、ブラケット41の右側面には、前輪ブレーキケーブル23を支持する第1ホルダ71が挿入される第1挿入孔81と、後輪ブレーキケーブル32を支持する第2ホルダ72が挿入される第2挿入孔82と、ストップランプスイッチ73が挿入される第3挿入孔83とが設けられている。
【0043】
3つの挿入孔81,82,83は、その軸方向視で、それぞれの中心を直線L4で結ぶことができる2つの挿入孔81,82と、直線L4から離間する1つの挿入孔83とからなり、1つの挿入孔83が、2つの挿入孔81,82の外径に同時に接する第3接線L5に重なるように配設されている。これにより、3つの挿入孔が互いに近接配置されることとなり、ブラケット41の小型化を図ることができる。なお、第3挿入孔83が第3接線L5に重なる量は、第3挿入孔83の直径の半分以下とされる。
【0044】
また、本実施形態では、第1挿入孔81より第2挿入孔82の方が大径とされており、第1挿入孔81の周囲に壁部材53が立設している。これにより、第2ホルダ72を第1挿入孔81に挿入することができず、壁部材53とも干渉するため、ブレーキケーブルの誤組を防ぐことができる。壁部材53は、第1ホルダ71を第1挿入孔81に組み付ける際のガイドとして機能すると共に、ブレーキケーブルを保護する機能を有する。
【0045】
また、図示しないが、第2ホルダ72の抜け止めピン92の代わりに、ブレーキロックレバー56を初期位置に戻す付勢力を与えるスプリング57の一端部を挿入するように構成してもよい。これにより、抜け止めピン92を不要とし、部品点数を低減することが可能となる。また、第1ホルダ71および第2ホルダ72を持たず、第1挿入孔81および第2挿入孔82に前輪ブレーキケーブル23および後輪ブレーキケーブル32を直接取り付ける構成としてもよい。
【0046】
図13は、本実施形態の変形例に係るブラケット41を車幅方向内側から見た側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。この変形例では、第2挿入孔82より第1挿入孔81の方が大径とされている点に特徴がある。この態様においても、第1ホルダ71を第2挿入孔82に挿入することができず、ブレーキケーブルの誤組を防ぐことができる。
【0047】
なお、自動二輪車の形態、ブラケットやブレーキレバーの形状や構造、イコライザの形状、第1回動円とブレーキケーブルの牽引方向に沿った接線とが接する接点と、ピボット軸の中心点とのずれ量、第2回動円とブレーキケーブルの牽引方向に沿って第2支持部の中心点を通る第2接線とが接する第2接点と、第2支持部の中心点とのずれ量、第1支持部の中心点と前輪ブレーキケーブルの牽引方向に沿った軸線とのずれ量等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、イコライザをブレーキ操作子としてのブレーキペダルや車幅方向右側のブレーキレバーに設けてもよい。また、ブラケットの第1挿入孔、第2挿入孔、第3挿入孔に挿入される、第1ホルダ、第2ホルダ、ストップランプスイッチの配置は、上記した実施形態と異なるものとしてもよい。本発明に係る前後連動ブレーキ装置は、種々の二輪車や三輪車等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、23…前輪ブレーキケーブル(第2前輪ブレーキケーブル)、32…後輪ブレーキケーブル、36…ブレーキレバー(ブレーキ操作子)、41…ブラケット、51…揺動軸、52…ピボット軸、60…イコライザ、52a…ピボット軸の中心点、53…壁部材、61…第1支持部、61a…第1支持部の中心点、62…第2支持部、62a…第2支持部の中心点、71…第1ホルダ、72…第2ホルダ、73…ストップランプスイッチ、81…第1挿入孔、82…第2挿入孔、83…第3挿入孔、C1…第1回動円、C2…第2回動円、S1…第1接点、S2…第2接点、L1…第1接線、L2…第2接線、L3…軸線、L4…直線、L5…第3接線、W…前輪ブレーキケーブルおよび後輪ブレーキケーブルの牽引方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13