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  • 特開-注意機能向上用香料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142919
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】注意機能向上用香料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241003BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 36/534 20060101ALI20241003BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241003BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/752
A61P25/00
A61Q13/00 101
A61K36/534
A23L33/105
C11B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055329
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 美幸
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
4H059
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018MD52
4B018MD66
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083BB41
4C083KK02
4C088AB38
4C088AB62
4C088CA03
4C088MA52
4C088MA55
4C088MA59
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA02
4C088ZA11
4H059BC10
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
【課題】本発明は、注意機能向上効果に優れた香料組成物を提供する。
【解決手段】
本発明の注意機能向上用香料組成物は、スペアミント抽出物、ペパーミント抽出物、及びレモン抽出物からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペアミント抽出物、ペパーミント抽出物、及びレモン抽出物からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する注意機能向上用香料組成物。
【請求項2】
請求項1記載の香料組成物を含有する吸入用組成物。
【請求項3】
請求項1記載の香料組成物を含有する化粧料組成物。
【請求項4】
請求項1記載の香料組成物を含有する経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注意機能向上用香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、香りが人間の生理や心理状態に種々の影響を与えることが報告されている。この影響としては、例えば、リラックス効果、鎮静効果、高揚効果、安眠促進効果、ストレス緩和効果等がある(特許文献1及び2)。このような香りによる効果を享受する方法として、香りを用いた芳香療法(アロマテラピー)が広く知られている。特に、職場や公共のスペース等においてストレスを緩和し、快適な環境を作るための手段としてアロマテラピーが用いられている。アロマテラピーは、香りによる刺激が主に嗅覚として脳に伝わり自律神経系に作用することで、気持ちを落ち着かせたり、興奮させたりするといった効果を発揮する。その一方で、香りによる「注意機能」を向上させる効果(すなわち、「注意機能向上効果」)についての研究は進んでいるとは言えない。
【0003】
人の脳は日常的に、目(視覚)、手(触覚)、鼻(嗅覚)、口腔(味覚)、耳(聴覚や平衡覚)に例示される全身の感覚器から、膨大な量の情報を受け取る。しかし、脳の情報処理能力には限界があるため、脳に送られてきた情報を取捨選択して、効率的にその一部のみを受け取っている。この認知機能、すなわち、人が外界からの情報や刺激に対して注意を向け、選択的に処理するための機能を「注意機能」という。
【0004】
「注意機能」は大きく分けて、下記の(1)喚起機能、(2)定位機能、(3)実行制御機能の3つの独立した機能で構成されており、これらが組み合わさって脳に送られてきた情報を効率的に処理している。また、各機能によって脳の活性部位も異なることが知られている(非特許文献1)。
(1)喚起機能(Alerting):予測される刺激に対して反応準備を高め、それを維持しておく能力を意味する指標であり、持続注意や注意のヴィジランスを反映する
(2)定位機能(Orienting):注意によって複数の選択肢からある情報を選択する機能を意味し、選択的注意や集中力を反映する
(3)実行制御機能(Executive control):モニタリングや複数の処理過程に対立を含む場合の機能を意味し、分割注意や葛藤モニタリングを反映する
【0005】
音楽、食品、及びエナジードリンク等は、「注意機能」を高めるソリューションとして知られている。音楽は、モチベーションに与える影響が報告されている。また、食品やエナジードリンクでは、その含有成分が人体へ与える効果について報告されている(特許文献3)。しかしながら、香り単独によるエビデンスについては明確にされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-5403号公報
【特許文献2】特開2014-5404号公報
【特許文献3】特開2020-11908号公報
【特許文献4】特開2019-104730号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Fan et al., The activation of attentional networks, NeuroImage, 26 (2005) 471-479.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、特許文献4には、紅茶香気成分を有効成分として含んでなる、認知機能の向上、維持/改善に用いるための組成物が開示されている。認知機能に含まれる高次脳機能として注意機能が挙げられ、注意機能向上効果を有する香気成分も記載されているが、その効果の検証ではマウスが用いられ、ヒトでの認知機能の効果を確認していないこともあり、その効果は十分であるとは言い難く、より効果に優れた香料組成物が求められている。
【0009】
したがって、本発明は、注意機能向上効果に優れた香料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の様な事情に鑑み、その課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者は、スペアミント抽出物、ペパーミント抽出物、及びレモン抽出物からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する香料組成物が、注意機能を向上させることを見出して本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明では、スペアミント抽出物、ペパーミント抽出物、及びレモン抽出物からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する注意機能向上用香料組成物を提供する。
【0012】
本発明では、上記香料組成物を含有する吸入用組成物についても提供する。
【0013】
本発明では、上記香料組成物を含有する化粧料組成物についても提供する。
【0014】
本発明では、上記香料組成物を含有する経口組成物についても提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の香料組成物は、注意機能を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例における注意ネットワークテスト(ANT)を説明する図である。
図2】実施例におけるANT試験の流れを説明する図である。
図3】実施例における試験系の妥当性に係る結果を示す、香り強度に関する図である。横軸はサンプル名であり、縦軸は各サンプルの香り強度を割合(%)で示したものである。Nは被験者数である。
図4】実施例における、ANTの結果に基づいた、レモン抽出物、ペパーミント抽出物、スペアミント抽出物、及びラベンダー抽出物による喚起機能の評価結果である。横軸はサンプル名であり、縦軸は各サンプルにおける反応時間(ms)である。反応時間は長いほど喚起機能の評価は良好となる。nは被験者数である。
図5】実施例における、ANTの結果に基づいた、レモン抽出物、ペパーミント抽出物、スペアミント抽出物、及びラベンダー抽出物による定位機能の評価結果である。横軸はサンプル名であり、縦軸は各サンプルにおける反応時間(ms)である。反応時間は短いほど定位機能の評価は良好となる。nは被験者数である。
図6】実施例における、ANTの結果に基づいた、レモン抽出物、ペパーミント抽出物、スペアミント抽出物、及びラベンダー抽出物による実行制御機能の評価結果である。横軸はサンプル名であり、縦軸は各サンプルにおける反応時間(ms)である。反応時間は短いほど実行制御機能の評価は良好となる。nは被験者数である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[香料組成物]
本発明の香料組成物は注意機能を向上する機能を有するものであり、スペアミント抽出物、ペパーミント抽出物、及びレモン抽出物からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする。このため、上記香料組成物は注意機能を向上する用途、すなわち、注意機能向上用香料組成物として使用される。以下、スペアミント抽出物、ペパーミント抽出物、及びレモン抽出物をまとめて抽出物(A)と称することがある。
【0018】
・スペアミント抽出物
スペアミント抽出物は、植物のスペアミントから得られる抽出物をいう。スペアミント(英語名:Spearmint、学名:Mentha spicata)は、シソ科ハッカ属に属する多年生の植物であり、古くからハーブとして用いられている。
【0019】
スペアミント抽出物は、スペアミントの一部又は全体から抽出されることができる。抽出対象となるスペアミントの一部としては、特に限定されないが、葉、茎、花、実、及び根等が挙げられる。本発明に係るスペアミント抽出物は、好ましくはスペアミントの葉から抽出されたものである。
【0020】
スペアミント抽出物は、スペアミントの植物体又は植物体の部位や器官をそのまま材料として使用して得られるものでもよく、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ったものを材料として使用して得られるものであってもよい。スペアミントの植物体の部位としては、例えば、根、塊根、根茎、幹、枝、茎、葉(葉身、葉柄等)、樹皮、樹液、樹脂、花(花弁、子房等)、果実(果肉や果皮)、種子等が挙げられる。また、これらの部位を複数組み合わせて用いてもよい。その中でも、根、茎、葉、花、及び果実からなる群より選択される少なくとも一種以上を材料として用いることが好ましく、葉を材料として用いるのがより好ましい。
【0021】
スペアミント抽出物の調製方法は特に限定されないが、例えば、材料としてのスペアミント(好ましくは葉、より好ましくは乾燥した葉)を蒸留器の釜に入れ、水蒸気を吹き込んで蒸留した後、冷却、油水分離することによって得ることができる。蒸留処理に関する温度や時間、圧力は特に限定されるものではない。また、スペアミント抽出物は、例えば、乾燥し、粉砕したスペアミント(好ましくは葉)を、30℃~沸点付近の溶媒(食品の製造に許容される溶媒が好ましく、水やエタノール等の有機溶媒がより好ましい)、又はその混合物で抽出することによっても得ることができる。水と有機溶媒との混合物としては特に限定されないが、例えば、10~90%エタノール等が挙げられる。また、抽出操作の温度や時間は特に限定されず、例えば室温で、1分~12時間かけて抽出を行うことができる。
【0022】
・ペパーミント抽出物
ペパーミント抽出物は、植物のペパーミント(別名:セイヨウハッカ、コショウハッカ)から得られる抽出物をいう。ペパーミント(英語名:Peppermint、学名:Mentha x piperita)は、シソ科ハッカ属に属する多年生の植物であり、ハーブとして用いられている。
【0023】
ペパーミント抽出物は、ペパーミントの植物体又は植物体の部位や器官をそのまま材料として使用して得られるものでもよく、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ったものを材料として使用して得られるものであってもよい。ペパーミントの植物体の部位としては、例えば、根、塊根、根茎、幹、枝、茎、葉(葉身、葉柄等)、樹皮、樹液、樹脂、花(花弁、子房等)、果実(果肉や果皮)、種子等が挙げられる。また、これらの部位を複数組み合わせて用いてもよい。その中でも、根、茎、葉、花、及び果実からなる群より選択される少なくとも一種以上を材料として用いることが好ましく、葉及び花からなる群より選択される少なくとも一種以上を材料として用いるのがより好ましい。
【0024】
ペパーミント抽出物の調製方法は特に限定されないが、例えば、材料としてのペパーミント(好ましくは葉や花、より好ましくは乾燥した葉や花)を蒸留器の釜に入れ、水蒸気を吹き込んで蒸留した後、冷却、油水分離することによって得ることができる。蒸留処理に関する温度や時間、圧力は特に限定されるものではない。また、ペパーミント抽出物は、例えば、乾燥し、粉砕したペパーミント(好ましくは葉)を、30℃~沸点付近の溶媒(食品の製造に許容される溶媒が好ましく、水やエタノール等の有機溶媒がより好ましい)、又はその混合物で抽出することによっても得ることができる。水と有機溶媒との混合物としては特に限定されないが、例えば10~90%エタノール等が挙げられる。また、抽出操作の温度や時間は特に限定されず、例えば室温で、1分~12時間かけて抽出を行うことができる。
【0025】
・レモン抽出物
レモン抽出物は、植物のレモンから得られる抽出物をいう。レモン(檸檬、英語名:lemon、学名:Citrus limon)はミカン科ミカン属に属する常緑低木や、その果実をいう。レモンは柑橘類であり、果肉は酸味が強く、香気がある。料理の添え物や菓子、清涼飲料等に使用される。
【0026】
レモン抽出物は、レモンの植物体又は植物体の部位や器官をそのまま材料として使用して得られるものでもよく、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ったものを材料として使用して得られるものであってもよい。レモンの植物体の部位としては、例えば、根、塊根、根茎、幹、枝、茎、葉(葉身、葉柄等)、樹皮、樹液、樹脂、花(花弁、子房等)、果実(果肉や果皮)、種子等が挙げられる。また、これらの部位を複数組み合わせて用いてもよい。その中でも、茎、葉、花、及び果実からなる群より選択される少なくとも一種以上を材料として用いることが好ましく、果実(特に果皮)を材料として用いるのがより好ましい。
【0027】
レモン抽出物の調製方法は特に限定されないが、例えば、材料としてのレモン(好ましくは果実、より好ましくは果皮)をローラーや遠心分離機で物理的に圧力を加えて絞り出すことで、熱を加えずに抽出することができる。また、レモンを蒸留器の釜に入れ、水蒸気を吹き込んで蒸留した後、冷却、油水分離することによって得ることができる。蒸留処理に関する温度や時間、圧力は特に限定されるものではない。さらに、レモン抽出物は、例えば、乾燥し、粉砕したレモン(好ましくは果実、より好ましくは果皮)を、30℃~沸点付近の溶媒(食品の製造に許容される溶媒が好ましく、水やエタノール等の有機溶媒がより好ましい)、又はその混合物で抽出することによっても得ることができる。水と有機溶媒との混合物としては特に限定されないが、例えば10~90%エタノール等が挙げられる。また、抽出操作の温度や時間は特に限定されず、例えば室温で、1分~12時間かけて抽出を行うことができる。
【0028】
スペアミント、ペパーミント、及びレモンの抽出に使用する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。この中でも、水、低級アルコール等の極性溶媒(特にエタノール)が好ましい。これらの溶媒は、一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明の香料組成物において、抽出物(A)は、抽出した溶液のまま用いてもよく、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、溶媒(例えば、エタノール)による沈殿等の処理をして用いてもよい。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いてもよい。
【0030】
スペアミント抽出物としては、例えば、スペアミントエッセンシャルオイル(株式会社生活の木製)、スペアミント(株式会社インセント製)、スペアミント油(山本香料株式会社製)等の市販品を使用することができる。
ペパーミント抽出物としては、例えば、ペパーミントエッセンシャルオイル(株式会社生活の木製)、ペパーミント(株式会社インセント製)、セイヨウハッカ油(山本香料株式会社製)等の市販品を使用することができる。
レモン抽出物としては、例えば、レモンエッセンシャルオイル(株式会社生活の木製)、レモン(株式会社インセント製)、レモン果皮油(山本香料株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0031】
本発明の香料組成物は、抽出物(A)をそのまま使用してもよく(すなわち、抽出物(A)を上記香料組成物として使用してもよく)、抽出物の効果を損なわない範囲内において、抽出物(A)以外の成分(他の成分)を配合して使用することもできる。つまり、上記香料組成物は、抽出物(A)及び上記他の成分を含有するものであってもよい。上記他の成分としては特に限定されないが、例えば、化粧品、医薬品、医薬部外品、及び食品等の用途に通常用いられる成分等が挙げられる。具体的には、溶媒;油脂、高級アルコール、エステル油、植物油、炭化水素油等の油性成分;界面活性剤;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖増粘剤等の増粘剤;殺菌剤;パール化剤;スクラブ剤;グリチルリチン酸及びその塩等の抗炎症剤;メントール等の清涼剤;リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類、乳酸及びその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤;抽出物(A)以外の香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;金属イオン封鎖剤(キレート剤);粉体;色素;顔料;乳糖、デンプン、セルロース、マルチトール、デキストリン等の賦形剤;ミツロウ、米糠ロウ、カルナウバロウ等のワックス類;ショ糖、ブドウ糖、果糖、ステビア、サッカリン、スクラロース等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等の酸味料;ビタミン類;ミネラル類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;酸;アルカリ、繊維状セルロース等が挙げられる。
【0032】
上記溶媒としては特に限定されないが、上記の抽出に使用する溶媒として説明したものが挙げられる。その中でも、食品添加物として許容される溶媒が好ましく、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0033】
本発明の香料組成物における抽出物(A)の含有量は、その用途や剤型により適宜選択されるものであり特に限定されないが、例えば、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは10.0重量%以上である。なお、その上限は、例えば、100.0重量%であってもよく、より好ましくは90.0重量%、さらに好ましくは80.0重量%である。
【0034】
本発明の香料組成物は、例えば、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品に用いることができる。その形態は種々のものを選択できるが、例えば、吸入用組成物、化粧料組成物、経口組成物であってもよい。すなわち、上記吸入用組成物は本発明の香料組成物を含有するものであってもよく、上記化粧料組成物は本発明の香料組成物を含有するものであってもよく、上記経口組成物は本発明の香料組成物を含有するものであってもよい。
【0035】
[吸入用組成物]
上記吸入用組成物は、抽出物(A)以外に、界面活性剤、噴射剤、アルコール等の溶媒、ビタミン類、酸化防止剤、防腐成分、紫外線吸収剤を目的に応じて適宜配合することができる。
【0036】
上記吸入用組成物の剤型としては、液状剤型、エアゾール剤型、及びドライパウダー剤型が挙げられ、特に限定されないが、液状剤型及びエアゾール剤型であることが好ましい。
【0037】
上記吸入用組成物は、吸引により呼吸器官内、粘膜、気管、及び気管支領域内へ有効成分(具体的には抽出物(A))を送達するために採用されるものである。本実施形態は、例えば、医薬品、医薬部外品等に適用される。
【0038】
[化粧料組成物]
上記化粧料組成物は、抽出物(A)以外に、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等の界面活性剤;カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びキサンタンガム等の増粘剤;水溶性高分子;多価アルコール、高級アルコール、及び低級アルコール等のアルコール;炭化水素油;シリコーン油;ビタミン類;酸化防止剤;防腐成分;紫外線吸収剤;染料や顔料等の着色剤;殺菌剤;制汗剤;粉体;動物抽出エキス;植物抽出エキス;香料:pH調整剤等を目的に応じて適宜配合することができる。ただし、上記植物抽出エキス及び香料からは、抽出物(A)は除かれる。
【0039】
上記化粧料組成物の剤型としては、液状剤型、ジェル状剤型、エアゾール剤型等が挙げられる。本実施形態に係る化粧料組成物の製品形態としては、例えば、化粧水、エアゾールスプレー、ロールオン、拭取り用シート、ミスト等が挙げられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0040】
上記化粧料組成物は、主に、皮膚(肌)に塗布するために用いられる。塗布する部位としては、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、目元、目じり、頬、口元等)や、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中等が挙げられる。
【0041】
[経口組成物]
上記経口組成物は、抽出物(A)以外に、保存料、増粘剤、防腐剤、ゲル化剤、着色剤、香料、調味料、食品添加物として許容される溶媒(例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、酢酸エチル等)等を含有することができる。
【0042】
上記経口組成物は、経口により体内に有効成分(具体的には抽出物(A))を送達するために採用されるものである。本実施形態は、例えば、医薬品、医薬部外品、食品等に適用される。上記食品は飲料を含む概念であり、健康食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、サプリメント等を含む意味で用いられる。
【0043】
上記経口組成物は、抽出物(A)を口腔及び咽頭を通じて鼻腔内に拡散させるために、口腔内で咀嚼される食品や製剤(例えば、チューインガム等)、口腔内で滞留する食品や製剤(例えば、キャンディ、グミ、清涼菓子、トローチ等)、飲料(例えば、スポーツドリンク等)の形態で提供することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
上記経口組成物が摂取され、経口により体内に有効成分(具体的には抽出物(A))が送達された場合、これを摂取した人間の注意機能が向上する。よって、一時的または継続的に高いレベルの注意機能を発揮しなければならない状態、例えば、スポーツの試合前や試合中、勉強中、仕事中において、上記経口組成物は有用である。よって、上記経口組成物は、スポーツ、勉強、仕事の前及び最中に、食品や製剤の形態で摂取することが好ましい。
【実施例0045】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0046】
1.被験者の選定
以下の条件を満たす被験者を102人選定した。
(1)裸眼で、視力が0.8以上、且つ左右の視力の差が0.2未満である、20~35歳の男女
(2)利き手が左手ではない人
(3)視力矯正手術歴(レーシック手術等)がない人
上記選定条件は、後述の注意ネットワークテストを行う際において、視力による影響を小さくするために設けられたものである。
【0047】
2.被験者の生活規制
(1)試験24時間前から、以下の生活規制を行った。
・ニオイの強い食べ物(ニンニクや香辛料)の摂取及びニオイが付着する行為の禁止
・喫煙の禁止
(2)試験当日は以下の生活規制を行った。
・香水の使用禁止
・サプリメント及びカフェイン含有飲食物の摂取の禁止
(3)試験2時間前からは以下の生活規制を行った。
・試験2時間前の食事禁止(飲料は水のみ摂取可)
【0048】
3.試験内容
以下の5種のサンプルを用意し、被験者に香りを嗅がせた後、注意ネットワークテスト(ANT)を行った。
・サンプル
レモン抽出物、ペパーミント抽出物、スペアミント抽出物、及びラベンダー抽出物をそれぞれコットンに0.6g含浸させたインヘラー容器と、ブランクとしての無賦香のインヘラー容器
【0049】
[注意ネットワークテスト(ANT)]
ANTは、人の注意機能(喚起機能、定位機能、実行制御機能)を評価するための検証手段である。ANTでは、各試行でPC画面上に左または右を指す5つの矢印が表示される。5つの矢印のうち、中央(左から3番目)の矢印をTarget刺激と称する。その他の矢印(左から1、2、4、5番目)をFlanker刺激と称する。Flanker刺激としての4つの矢印は同一方向を指す。5つの矢印は、例えば、次のいずれかになる(1)「←←←←←」、(2)「←←→←←」、(3)「→→→→→」、(4)「→→←→→」(図1を参照)。上記(2)では、Target刺激は右であり、Flanker刺激は左である。
被験者は、Target刺激が右または左いずれかの方向であるかを判断し、素早く正確に回答する。矢印が表示されてからボタンを押すまでの反応時間とその正誤を記録し、これらの結果から、喚起機能、定位機能、実行制御機能の3つの注意機能が算出される。
【0050】
以下、ANTの試験条件とその詳細(試行の説明)を行う。
画面の中央には常に注視点(+)、その両側に長方形の枠が表示され、Target刺激は左右どちらかの長方形枠内に表示される。
被験者は、Target刺激が表示されるまで注視点を注視する。
Target刺激より前に、手がかり(以降、Cue刺激)がランダムに呈示されるが、試験そのものは常にTarget刺激の矢印の方向の判断(選択)による。Cue刺激は、上記長方形の枠の点滅(一定時間の消滅)により説明され、この事象をCue刺激の表示を称する。
刺激の総条件としては、Target4種類、Cue4種類(右側、左側、両側、なし)の合計16条件(4×4)である。
・Cueの条件
No Cue条件:点滅はしない(Cue刺激は表示されない)
Double Cue条件:注視点を挟んで両側の長方形の枠が同時に点滅
Single Cue条件:注視点を挟んで左右どちらか一方の長方形の枠が点滅
Valid Cue条件:Target刺激が表示される位置にCue刺激が表示される(例えば、Target刺激が注視点の右側の長方形の枠内に表示される場合、Cue刺激も右側の長方形の枠に表示される)
Invalid Cue条件:Target刺激が表示される位置とは対称な位置にCue刺激が表示される(例えば、Target刺激が注視点の右側の長方形の枠内に表示される場合、注視点を挟んでTarget刺激とは逆の位置である、左側の長方形の枠にCue刺激が表示される)
Cue刺激が表示される場合、Cue刺激の表示からTarget刺激の表示までの間隔は0、400ms、800msの3つのパターンがある
FlankerのCongruent条件では5つの矢印が全て同じ方向に表示される
Incongruent条件ではTarget刺激とFlanker刺激が逆方向を向いた矢印が表示される。
LocationのCongruent条件では中央の矢印(Target刺激)が指す方向と同じ側の長方形の枠内にTarget刺激が表示される。例えば、中央の矢印が「→」を指す場合、注視点の右側にTarget刺激が表示される。
Incongruent条件では中央の矢印がさす方向とは逆側の長方形の枠内にTarget刺激が表示される。例えば、中央の矢印が「→」を指す場合、注視点の左側にTarget刺激が表示される。
【0051】
以上の条件でTarget刺激をランダムに表示させる試験を144回実施し、各注意機能を算出した。試験の流れとしては、サンプルの吸引、ANTの実施、休憩(15分)、サンプルの吸引、ANTの実施の順で行った(図2を参照)。
なお、サンプルの吸引は、(1)対象のサンプルが入ったインヘラー容器を一方の鼻孔にあて、他方の鼻孔を閉じて、3秒間呼吸を行うことで香りを嗅ぐ、(2)次いで、香りを嗅いだ方の鼻孔を閉じ、他方の鼻孔から3秒間呼吸を行うことで香りを嗅ぐ、という行為を一セットとして、3回同じことを繰り返すことによって実施した。
【0052】
[試験系の妥当性の確認]
ANT1回目及び2回目の終了直後、被験者から下記表1の様なアンケートを行った。サンプルの香り強度はVAS法(visual analog scale)を用いた。なお、ANTの結果において、正答率が80%未満、反応(回答)時間が1000ms未満の被験者の結果は除外した。以上の結果を図3に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
その結果、被験者群が感じる香りサンプルの香り強度は同程度であり、群間による強度の差はほとんどなかったことがわかった(図3)。
【0055】
[ANTの結果]
ANTの結果から、レモン抽出物、ペパーミント抽出物、スペアミント抽出物、及びラベンダー抽出物による注意機能評価を行った(図4~6及び表2)。図4~6はレモン抽出物、ペパーミント抽出物、スペアミント抽出物、及びラベンダー抽出物の、ブランクに対する喚起機能、定位機能、実行制御機能の算出値である。表2では、図4~6で示された各算出値のp値により、(1)p値<0.05の場合は、ポジティブ効果/+++、ネガティブ効果/---、(2)0.05≦p値<0.1の場合は、ポジティブ効果/++、ネガティブ効果/--、(3)0.1≦p値<0.4の場合は、ポジティブ効果/+、ネガティブ効果/-、(4)p値≧0.4の場合は、ポジティブ効果・ネガティブ効果無しとして評価した。
【0056】
【表2】
【0057】
結果、スペアミント抽出物では、定位機能及び実行制御機能のポジティブな向上が見られ、特に実行制御機能の向上は有意に認められた。また、ペパーミント抽出物では、喚起機能のポジティブな向上が有意に認められた。また、レモン抽出物では喚起機能のポジティブな向上が見られた。その一方で、ラベンダー抽出物では、注意機能のポジティブな向上は見られなかった。
【0058】
上述の通り、スペアミント抽出物、ペパーミント抽出物、及びレモン抽出物は、注意機能を向上する効果を有することが明らかになった。このことから、これらの少なくとも一種を含む香料組成物が注意機能向上用途として使用できることが理解できる。特に、スペアミント抽出物では、定位機能及び実行制御機能のポジティブな向上が見られたことから、その香料組成物が定位機能及び/又は実行制御機能向上用途として有効に使用できることが理解できる。特に、実行制御機能のポジティブな向上が顕著に見られたことから、実行制御機能向上用途として特に有効に使用できることが理解できる。また、ペパーミント抽出物では、喚起機能のポジティブな向上が顕著に見られたことから、その香料組成物が喚起機能向上用途として有効に使用できることが理解できる。また、レモン抽出物では、喚起機能のポジティブな向上が見られたことから、その香料組成物が喚起機能向上用途として有効に使用できることが理解できる。その一方で、ラベンダー抽出物では、注意機能のポジティブな向上が見られなかったため、注意機能向上用途としては使用できないことが理解できる。
【0059】
以下、実施例にて使用したサンプルを以下に説明する。
スペアミント抽出物:スペアミントエッセンシャルオイル(株式会社生活の木製)
ペパーミント抽出物:ペパーミントエッセンシャルオイル(株式会社生活の木製)
レモン抽出物:レモンエッセンシャルオイル(株式会社生活の木製)
図1
図2
図3
図4
図5
図6