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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014292
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】モデル構造比較装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240125BHJP
   G06F 16/903 20190101ALI20240125BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06F16/903
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117005
(22)【出願日】2022-07-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「革新的先端研究開発支援事業」「胎児における神経幹細胞の制御はいかにして生後脳の発達と自閉症様行動に影響するか」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】平田 祥人
【テーマコード(参考)】
5B175
5L049
【Fターム(参考)】
5B175DA10
5B175HB03
5B175KA12
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】モデルが大きくなっても計算量を比較的少なく抑える。
【解決手段】モデル構造比較装置は、ノードによって構造を表すモデルであって、構造の類似度の比較対象となる第1モデルと第2モデルとを取得するモデル取得部と、モデル取得部が取得するモデルのノード数をNとして、第1モデルのノードのうち比較対象のノードである第11ノードと第12ノードとの組み合わせ、及び第2モデルのノードのうち比較対象のノードである第21ノードと第22ノードとの組合せを、それぞれ(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で選択するノード選択部と、ノード選択部が選択する組合せごとに、第1モデルのノード間の距離と、第2モデルのノード間の距離とを算出するノード間距離算出部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノードによって構造を表すモデルであって、構造の類似度の比較対象となる第1モデルと第2モデルとを取得するモデル取得部と、
前記モデル取得部が取得するモデルのノード数をNとして、前記第1モデルのノードのうち比較対象のノードである第11ノードと第12ノードとの組み合わせ、及び前記第2モデルのノードのうち比較対象のノードである第21ノードと第22ノードとの組合せを、それぞれ(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で選択するノード選択部と、
前記ノード選択部が選択する前記組合せごとに、前記第1モデルのノード間の距離と、前記第2モデルのノード間の距離とを算出するノード間距離算出部と、
を備えるモデル構造比較装置。
【請求項2】
前記ノード選択部は、
前記モデル取得部が取得するモデルの次元数をmとして、前記組合せを(2mN+1)以上の組合せ数の範囲内で選択する
請求項1に記載のモデル構造比較装置。
【請求項3】
前記ノード間距離算出部が前記組合せごとに算出する前記距離に基づいて、前記第1モデルの構造と前記第2モデルの構造との相関係数を算出する相関算出部
をさらに備える請求項1または請求項2に記載のモデル構造比較装置。
【請求項4】
前記相関算出部が算出する前記相関係数に基づいて、前記第1モデルの構造と前記第2モデルの構造との類似度に関する距離を算出する類似度距離算出部
をさらに備える請求項3に記載のモデル構造比較装置。
【請求項5】
前記モデル取得部が取得するモデルのノード数を取得するノード数取得部
をさらに備え、
前記ノード選択部は、
前記ノード数取得部が取得する前記ノード数に基づく組合せ数の範囲内で選択する
請求項1または請求項2に記載のモデル構造比較装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデル構造比較装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の形状などを表す多次元モデル(例えば三次元モデル)どうしを比較して、その類似性を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-136642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術においては、モデルの大きさによっては計算量が非常に大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、モデルが大きい場合でも計算量を比較的少なくすることができるモデル構造比較装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、ノードによって構造を表すモデルであって、構造の類似度の比較対象となる第1モデルと第2モデルとを取得するモデル取得部と、前記モデル取得部が取得するモデルのノード数をNとして、前記第1モデルのノードのうち比較対象のノードである第11ノードと第12ノードとの組み合わせ、及び前記第2モデルのノードのうち比較対象のノードである第21ノードと第22ノードとの組合せを、それぞれ(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で選択するノード選択部と、前記ノード選択部が選択する前記組合せごとに、前記第1モデルのノード間の距離と、前記第2モデルのノード間の距離とを算出するノード間距離算出部と、を備えるモデル構造比較装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、上述のモデル構造比較装置において、前記ノード選択部は、前記モデル取得部が取得するモデルの次元数をmとして、前記組合せを(2mN+1)以上の組合せ数の範囲内で選択する。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、上述のモデル構造比較装置において、前記ノード間距離算出部が前記組合せごとに算出する前記距離に基づいて、前記第1モデルの構造と前記第2モデルの構造との相関係数を算出する相関算出部をさらに備える。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、上述のモデル構造比較装置において、前記相関算出部が算出する前記相関係数に基づいて、前記第1モデルの構造と前記第2モデルの構造との類似度に関する距離を算出する類似度距離算出部をさらに備える。
【0010】
また、本発明の一実施形態は、上述のモデル構造比較装置において、前記モデル取得部が取得するモデルのノード数を取得するノード数取得部をさらに備え、前記ノード選択部は、前記ノード数取得部が取得する前記ノード数に基づく組合せ数の範囲内で選択する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、モデルの大きさが比較的大きい場合でも、計算量を比較的少なくすることができるモデル構造比較装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のモデル構造比較システムの機能構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態のモデルの一例を示す図である。
図3】本実施形態のモデル構造比較システムの動作の流れの一例を示す図である。
図4】本実施形態のノードの組合せの一例を示す図である。
図5】本実施形態のモデル構造比較システムの性能の一例を示す図である。
図6】本実施形態のモデル構造比較システムの性能の一例を示す別の図である。
図7】モデルの大きさと、モデル比較のための演算時間との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のモデル構造比較システム1の機能構成の一例を示す図である。モデル構造比較システム1は、2つのモデル化対象間の構造の類似度を比較する。モデル化対象には、例えば、細胞ごとの染色体の三次元構造や、脳の形状などがある。モデルMとは、モデル化対象の構造をノードnによってあらわす情報である。モデルMの構造比較の概要について、図2を参照して説明する。
【0014】
[モデルの構造の比較]
図2は、本実施形態のモデルMの一例を示す図である。モデル構造比較システム1の比較対象とする2つのモデルMを、第1モデルM1および第2モデルM2ともいう。すなわち、モデル構造比較システム1は、第1モデルM1の構造と、第2モデルM2の構造との類似度を比較する。
ここで、構造の類似度とは、比較対象の2つのモデルMの相似性の度合いをいう。2つのモデルMが相似形であれば、構造の類似度が高いという。
なお、以下の説明において、第1モデルM1の構造と、第2モデルM2の構造との類似度を比較することを、単に第1モデルM1と第2モデルM2とを比較するとも記載する。
【0015】
本実施形態では、モデル化対象が、細胞ごとの染色体の三次元構造である場合を一例にして説明する。この場合、モデル構造比較システム1は、ある細胞の染色体の三次元構造を第1モデルM1とし、他の細胞の染色体の三次元構造を第2モデルM2として、第1モデルM1と第2モデルM2との間の相似性を比較する。
【0016】
この一例において、モデルMは三次元モデルである。つまり、この一例のモデルMの次元数mは3である。
なお、モデル構造比較システム1が比較対象とするモデルMの次元数mは、3に限られず、数学的に表現できる範囲であれば、いずれの数であってもよい。
【0017】
モデルMは、ノードnによってその構造を表す。一例として、モデルMは、互いに直交したX軸、Y軸、Z軸による三次元空間内に表現される。
【0018】
モデルMは、三次元空間内のノードnの座標(X,Y,Z)と、ノードnどうしの連結の状態によって示される。同図の一例では、第1モデルM1は、ノードn1-1~n1-NのN個のノードn1を有する。ノードn1-1は、ノードn1-2に連結されている。ノードn1-2は、ノードn1-3と、ノードn1-4とに連結されている。ノードn1-3は、ノードn1-4に連結されている。以降、ノードn1-Nまでの連結の状態の説明は省略する。第2モデルM2も、第1モデルM1と同様にN個のノードn2を有する。
第1モデルM1や第2モデルM2が、ある細胞の染色体の三次元構造を表す場合、そのノードnの数(ノード数N)は、例えば、数百万点に達する。
【0019】
第1モデルM1と第2モデルM2との間の相似性を比較することは、第1モデルM1や第2モデルM2について、三次元空間内でのノードn間の距離を定数倍(例えば、拡大・縮小)や、三次元空間内でモデルMを回転/反転変換させた場合に、互いのノードnの配置の類似度を判定することに相当する。
【0020】
[モデル構造比較システムの機能構成]
図1に戻り、モデル構造比較システム1は、モデル構造比較装置10と、モデル記憶部20と、出力装置30とを備える。
【0021】
モデル記憶部20は、例えばサーバ装置やクラウドサーバとして構成されており、モデルMを記憶する。
【0022】
モデル構造比較装置10は、制御部100と、記憶部180とを備える。
記憶部180は、半導体メモリなどを備えており、制御部100を動作させるプログラムや、制御部100が利用する種々の情報を記憶する。
制御部100は、中央演算処理装置(CPU)などを備えており、記憶部180に記憶されているプログラムに基づいて動作する。制御部100は、モデル取得部110、ノード数取得部120、ノード選択部130、ノード間距離算出部140、相関算出部150、および類似度距離算出部160をその機能部として備える。
【0023】
モデル取得部110は、モデル記憶部20から、構造の類似度の比較対象となる第1モデルM1と第2モデルM2とを取得する。上述したように、第1モデルM1および第2モデルM2は、いずれもノードnによって構造を表すモデルMである。
【0024】
ノード数取得部120は、モデル取得部110が取得するモデルMのノード数を取得する。モデルMのノード数は、例えば、モデル記憶部20に、モデルMのメタデータとしてモデルMに対応づけられて記憶されている。この場合、ノード数取得部120は、モデルMに対応づけられたノード数の情報を取得する。なお、ノード数取得部120は、モデル取得部110が取得するモデルMの構造を解釈して、ノード数を計数することにより、モデルMのノード数を取得してもよい。
本実施形態の一例の場合、ノード数取得部120は、第1モデルM1のノード数と、第2モデルM2のノード数とを取得する。なお、本実施形態の場合、第1モデルM1のノード数と、第2モデルM2のノード数とは、あらかじめ一致した数(例えば、N個)にされている。
ノード数取得部120は、取得したモデルMのノード数を、ノード選択部130に出力する。
【0025】
ノード選択部130は、ノード数取得部120が取得するノード数に基づく組合せ数の範囲内で選択する。
具体的には、ノード選択部130は、第1モデルM1の中から、2つのノードnを選択する。例えば、ノード選択部130は、第1モデルM1の中から、ノードn1-1と、ノードn1-2とを選択する。第1モデルM1のノード数がN個であるとき、第1モデルM1の中から、2つのノードnを選択した場合の組合せの数は、(N(N-1)/2)である。
【0026】
ノード選択部130は、第1モデルM1の中から、2つのノードnを選択した場合の組合せの数が、ノード数Nの一乗のオーダー(つまり、Landauの記号O()によって表現した場合に、O(N))となるように選択する。例えば、ノード選択部130は、第1モデルM1の中から2つのノードnの組をランダムに選択することによって、2つのノードnの組合せの数がO(N)となるように選択する。
一例として、ノード選択部130は、(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で、第1モデルM1の中から、2つのノードnを選択する。
また、ノード選択部130は、モデル取得部110が取得するモデルMの次元数をmとして、(2mN+1)以上の範囲内で、第1モデルM1の中から、2つのノードnを選択する。
すなわち、この一例では、ノード選択部130は、(2mN+1)以上かつ(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で、第1モデルM1の中から、2つのノードnを選択する。
第1モデルM1のノードnについて、ノード選択部130によって選択された2つのノードnのうち、一方を第11ノードn1a、他方を第12ノードn1bともいう。つまり、第11ノードn1a及び第12ノードn1bは、第1モデルM1のノードnのうち比較対象のノードnである。
【0027】
ここまで、第1モデルM1のノード選択の例について説明した。ノード選択部130は、第2モデルM2についても同様にして、2つのノードnを選択する。
すなわち、ノード選択部130は、第2モデルM2の中から、2つのノードnを選択する。ここで、ノード選択部130は、第1モデルM1の中からランダムに選択された2つのノードnの組に対応する、第2モデルM2の2つのノードnの組を選択する。例えば、ノード選択部130は、第2モデルM2の中から、ノードn2-1と、ノードn2-2とを、2つのノードnとして選択する。この一例の場合、第1モデルM1のノードn1-1と、第2モデルM2のノードn2-1が対応し、第1モデルM1のノードn1-2と、第2モデルM2のノードn2-2が対応する。すなわち、この一例の場合、第1モデルM1のノードn1-1とノードn1-2との2つのノードnの組と、第2モデルM2のノードn2-1とノードn2-2との2つのノードnの組とが、対応する。
第2モデルM2のノード数がN個であるとき、第2モデルM2の中から、2つのノードnを選択した場合の組合せの数は、(N(N-1)/2)である。
ノード選択部130は、第2モデルM2の中から、2つのノードnを選択した場合の組合せの数が、ノード数Nの一乗のオーダー(つまり、O(N))となるように選択する。
一例として、ノード選択部130は、(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で、第2モデルM2の中から、2つのノードnを選択する。
また、ノード選択部130は、モデル取得部110が取得するモデルMの次元数をmとして、(2mN+1)以上の範囲内で、第2モデルM2の中から、2つのノードnを選択する。
すなわち、この一例では、ノード選択部130は、(2mN+1)以上かつ(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で、第2モデルM2の中から、2つのノードnを選択する。
第2モデルM2のノードnについて、ノード選択部130によって選択された2つのノードnのうち、一方を第21ノードn2a、他方を第22ノードn2bともいう。つまり、第21ノードn2a及び第22ノードn2bは、第2モデルM2のノードnのうち比較対象のノードnである。
【0028】
すなわち、ノード選択部130は、モデル取得部110が取得するモデルMのノード数をNとして、第1モデルM1のノードnのうち比較対象のノードnである第11ノードn1aと第12ノードn1bとの組合せ、及び第2モデルM2のノードnのうち比較対象のノードnである第21ノードn2aと第22ノードn2bとの組合せを、それぞれ(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で選択する。
【0029】
また、ノード選択部130は、モデル取得部110が取得するモデルMの次元数をmとして、組合せを(2mN+1)以上の組合せ数の範囲内で選択する。
【0030】
ノード選択部130は、選択した第11ノードn1aと第12ノードn1bとの組合せ、及び第21ノードn2aと第22ノードn2bとの組合せを、ノード間距離算出部140に出力する。
【0031】
ノード間距離算出部140は、ノード選択部130が選択する組合せごとに、第1モデルM1の2つのノードn間の距離と、第2モデルM2の2つのノードn間の距離とを算出する。
ノード間距離算出部140は、算出した距離(つまり、ノード間距離)を、相関算出部150に出力する。なお、ノード間距離算出部140は、ノード間距離を出力装置30に出力してもよい。
【0032】
相関算出部150は、ノード間距離算出部140が組合せごとに算出する距離に基づいて、第1モデルM1の構造と第2モデルM2の構造との相関係数を算出する。相関算出部150は、算出した相関係数を類似度距離算出部160に出力する。なお、相関算出部150は、相関係数を出力装置30に出力してもよい。
【0033】
類似度距離算出部160は、相関算出部150が算出する相関係数に基づいて、第1モデルM1の構造と第2モデルM2の構造との類似度に関する距離を算出する。類似度距離算出部160は、算出した類似度に関する距離を出力装置30に出力する。
【0034】
出力装置30は、例えば液晶ディスプレイやプリンタなどを備えており、モデル構造比較装置10が算出したノード間距離、相関係数、または類似度に関する距離を出力する。
【0035】
[モデル構造比較システムの動作]
図3は、本実施形態のモデル構造比較システム1の動作の流れの一例を示す図である。
(ステップS10)モデル取得部110は、モデル記憶部20からモデルMを取得する。この一例では、モデル取得部110は、第1モデルM1と、第2モデルM2とを取得する。
(ステップS20)ノード数取得部120は、モデル取得部110が取得したモデルMのノード数を取得する。この一例では、第1モデルM1および第2モデルM2のノード数はいずれもN個である。ノード数取得部120は、第1モデルM1および第2モデルM2のノード数Nを取得する。
(ステップS30)ノード選択部130は、モデル取得部110が取得した2つのモデルMのノードnの組合せを選択する。この一例では、ノード選択部130は、第1モデルM1のノードnの中から第11ノードn1a及び第12ノードn1bを、第2モデルM2のノードnの中から第21ノードn2a及び第22ノードn2bを選択する。
【0036】
図4は、本実施形態のノードnの組合せの一例を示す図である。第1モデルM1は、ノードn1-1~ノードn1-NまでのN個のノードnを有する。
例えば、第1モデルM1のノードn1-1が第11ノードn1aとして選択され、第1モデルM1のノードn1-2が第12ノードn1bとして選択された場合、その組合せは、組み合せC12となる。
第2モデルM2も同様にして、ノードn2-1~ノードn2-NまでのN個のノードnを有する。第2モデルM2についての図示は省略している。
【0037】
(ステップS40)図3に戻り、ノード間距離算出部140は、ノード選択部130が選択した2つのノードnどうしの距離(ノード間距離)を算出する。この一例では、ノード間距離算出部140は、ノード選択部130が選択した第11ノードn1aと、第12ノードn1bとの間の距離、及び第21ノードn2aと、第22ノードn2bとの間の距離を、それぞれ算出する。
【0038】
ここで、x、yをいずれも任意の空間とした場合、xの空間で表現した距離D(i,j)と、yの空間で表現した距離Δ(i,j)との関係を検討した。
【0039】
【数1】
【0040】
xの空間で表現した距離D(i,j)は、式(1)によって示される。ただし、
D:ユークリッド距離
A:三次元内での回転と反転に関する変換
c:変換倍率
b:三次元内での平行移動
である。
なお、式(1)は、"Yoshito Hirata, Arisa Oda, Kunihiro Ohta, Kazuyuki Aihara,Three-dimensional reconstruction of single-cell chromosome structure using recurrence plots, Scientific Reports 6, 34982 (2016)" に基づく。
【0041】
yの空間で表現した距離Δ(i,j)を、xの空間で表現した距離D(i,j)によって表すと、式(2)となる。なお、式(2)は、(i,j)の任意の組合せについて成立する。
【0042】
【数2】
【0043】
なお、式(2)は、"Yoshito Hirata, Arisa Oda, Kunihiro Ohta, Kazuyuki Aihara,Three-dimensional reconstruction of single-cell chromosome structure using recurrence plots, Scientific Reports 6, 34982 (2016)" に基づく。
式(2)に示されるように、yの空間で表現した距離Δ(i,j)は、xの空間で表現した距離D(i.j)をc倍したもの(すなわち、cD(i,j))に相当することが分かった。つまり、yの空間で表現した距離Δ(i,j)とxの空間で表現した距離D(i,j)とは相似である。
相似であればその相関は同じであるので、変換倍率(c倍)の影響は無視でき、(i,j)のすべての組合せ(つまり、(N(N-1)/2)個の組合せ)について相関を求めれば、任意の距離D(i,j)との間の相関関係が判明する。しかしながら、例えば、モデルMがある細胞の染色体の三次元構造を表す場合、ノード数Nは、数百万個に達する。このような場合に、(N(N-1)/2)個のすべての組合せについて相関を求めることは、計算量が莫大となり現実的ではない。
そこで、本実施形態のノード選択部130は、選択する2つのノードnの組合せの数が、O(N)となるようにして、ノードnの組合せを選択することにより、計算量を削減する。
【0044】
具体的には、ノード選択部130は、(2mN+1)以上かつ(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で、2つのノードnの組合せを選択する。ノード間距離算出部140は、ノード選択部130が選択した(2mN+1)以上かつ(N(N-1)/2)未満の組について、その距離を算出する。
【0045】
なお、上述した(2mN+1)組の距離という条件は、Whitneyの埋め込み定理における十分条件である。Whitneyの埋め込み定理の拡張であるTakensの埋め込み定理(1981)を使った非線形時系列解析の文脈では、k次元の多様体を埋め込む時に、実践的には、k次元のベクトル空間で十分な場合の例が広く知られている。そのため、本実施形態における、比較すべき距離の組数の下限をN組とする。
すなわち、ノード選択部130は、N以上かつ(N(N-1)/2)未満の組合せ数の範囲内で、第1モデルM1のノードnと、第2モデルM2のノードnとの組合せを選択するとして構成されていてもよい。
【0046】
(ステップS50)ノード間距離算出部140は、ノード選択部130が選択したすべての組合せについて距離を算出したか否か(つまり、組合せ数の上限に達したか否か)を判定する。ノード間距離算出部140は、組合せ数の上限に達していないと判定した場合(ステップS50;NO)には、処理をステップS30に戻して、他の組合せについて距離の算出を行う。ノード間距離算出部140は、組合せ数の上限に達したと判定した場合(ステップS50;YES)には、処理をステップS60に進める。
【0047】
(ステップS60)相関算出部150は、ノード間距離算出部140が算出したノード間距離に基づいて、モデルMどうしの相関係数を算出する。相関係数の算出には既知の手段が用いられる。
(ステップS70)類似度距離算出部160は、相関算出部150が算出した相関係数に基づいて、類似度に関する距離(類似度の距離、あるいは類似度距離ともいう。)を算出する。
【0048】
【数3】
【0049】
なお、式(3)は、"Victor Solo, Pearson distance is not a distance, ArXiv: 1908.06029v1 (2019)" に基づく。
式(3)は、類似度距離算出部160が類似度に関する距離の算出に用いる算出式である。一般に、相関係数は、1から-1の値をとり、絶対値が大きいほど(正あるいは負の)相関が強く、絶対値が小さいほど相関が弱いことを意味する。モデルMどうしの類似度は、正の相関が強い場合(つまり、相関係数が1に近い場合)、相関が弱い場合(つまり、相関係数が0(ゼロ)に近い場合)、負の相関が強い場合(つまり、相関係数が-1に近い場合)、の順に表現されると扱いやすい。類似度距離算出部160は、式(3)に基づいて類似度に関する距離を求めることにより、類似度に関する距離を、類似度が最も高い状態を0(ゼロ)で、類似度が最も低い状態を2(つまり、ゼロから最も離れた値)で表現することができる。
【0050】
図5は、本実施形態のモデル構造比較システム1の性能の一例を示す図である。
図6は、本実施形態のモデル構造比較システム1の性能の一例を示す別の図である。
いずれの図も、ノード数Nが500点である三次元構造のモデルMに対して、モデル構造比較システム1が相関係数を算出する際に、選択されるノードnの組合せ数を変化させた場合の性能の変化を示す。なお、モデルMは、三次元ブラウン運動によって生成されている。比較対象のモデルMの数は100個である。
両図において、横軸は、選択されるノードnの組合せ数を示す。図5において、縦軸は相関係数間の相関係数を示しており、値が1に近づくほど、モデルMの比較性能が高いことを示している。図6において、縦軸は相関係数の誤差を示しており、値が0に近づくほど、モデルMの比較性能が高いことを示している。
モデルMのノード数Nが500点である場合、2つのモデルM間の比較を行う際のノードnの組合せは、(N(N-1)/2)=1.2475×10通り存在する。
上述したように、本実施形態のモデル構造比較システム1は、ノードnの組合せの数が、ノード数Nの一乗のオーダー(つまり、O(N))となるように選択する。
この一例では、ノードnの組合せの数が(6N+1)程度あれば、モデルMの比較性能が十分に高いことが示された。
【0051】
図7は、モデルの大きさと、モデル比較のための演算時間との関係の一例を示す図である。同図に示すように、2つのモデルM間の比較を行う際のノードnの組合せの数を、(N(N-1)/2)にした場合に比べ、(6N+1)にした場合には、モデルMを比較するための演算時間を削減できることがわかる。モデルMを比較するための演算時間の削減の効果は、特にモデルMの大きさが大きいほど顕著である。
【0052】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組合せてもよい。
【0053】
なお、上記の実施形態における各装置が備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0054】
なお、各装置が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0055】
また、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、制御部が備える各部による処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0056】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…モデル構造比較システム、10…モデル構造比較装置、20…モデル記憶部、30…出力装置、100…制御部、110…モデル取得部、120…ノード数取得部、130…ノード選択部、140…ノード間距離算出部、150…相関算出部、160…類似度距離算出部、180…記憶部、M…モデル、M1…第1モデル、M2…第2モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7