(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142923
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】紙ホルダー支持構造
(51)【国際特許分類】
A47K 17/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A47K17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055337
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秋甫
【テーマコード(参考)】
2D037
【Fターム(参考)】
2D037EA00
2D037EA02
(57)【要約】
【課題】紙ホルダーからロール紙を引き出して巻き取る際に、このロール紙の芯と紙ホルダーの支持軸との接触等により音が発生しても、この音が隣室へ伝搬するのを低減できる紙ホルダー支持構造を提供する。
【解決手段】紙ホルダー支持構造1は、ロール紙を回転可能に保持する紙ホルダー2を支持するホルダー支持体11を備える。このホルダー支持体11は、紙ホルダー2からの音の伝搬を避ける対象隣室の対象壁81に対して隙間Gをあけて非接触で配置され、天井85および86床に接触してビス等により固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を回転可能に保持する紙ホルダーからの音の伝搬を避ける対象隣室の壁に対して非接触であり、上記対象隣室の壁とは異なる非対象壁、天井、および床の少なくとも一つに接触して固定されるホルダー支持体によって、上記紙ホルダーが支持されることを特徴とする紙ホルダー支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の紙ホルダー支持構造において、上記ホルダー支持体は、上記床および上記天井に固定されていることを特徴とする紙ホルダー支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の紙ホルダー支持構造において、上記ホルダー支持体の上記床側の厚みは、当該ホルダー支持体の上記天井側の厚みよりも薄くされることを特徴とする紙ホルダー支持構造。
【請求項4】
請求項1に記載の紙ホルダー支持構造において、上記ホルダー支持体は、上記床には固定されず、上記天井から吊り下げられることを特徴とする紙ホルダー支持構造。
【請求項5】
請求項1に記載の紙ホルダー支持構造において、上記ホルダー支持体は、上記天井側には固定されず、上記床上に立設されることを特徴とする紙ホルダー支持構造。
【請求項6】
請求項1に記載の紙ホルダー支持構造において、上記ホルダー支持体は、上記対象隣室の壁とは異なる対向する二面の非対象壁に固定されることを特徴とする紙ホルダー支持構造。
【請求項7】
請求項1に記載の紙ホルダー支持構造において、上記ホルダー支持体は、上記対象隣室の壁とは異なる一面の非対象壁と、天井および床の少なくとも一方に固定されることを特徴とする紙ホルダー支持構造。
【請求項8】
請求項1に記載の紙ホルダー支持構造において、上記ホルダー支持体は、吸音材を備えることを特徴とする紙ホルダー支持構造。
【請求項9】
請求項1に記載の紙ホルダー支持構造において、上記ホルダー支持体が収納部を備えることを特徴とする紙ホルダー支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロール紙を回転可能に保持する紙ホルダーから発生する音の隣室への伝搬を抑制する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トイレの床による音の固体伝搬を抑制する防音床構造が開示されている。上記トイレの床は、特定領域となる第1床部材と、この第1床部材の周囲に位置する周囲領域となる第2床部材とに分離されて縁切りされている。上記縁切りされた箇所には、所定の弾性復元率を有するシーリング材が充填されている。
【0003】
ところで、
図8(A)および
図8(B)に示すように、トイレ室9の間仕切り壁92には、ロール紙を回転可能に保持する紙ホルダー91が取り付けられるが、紙ホルダー91から上記ロール紙を引き出して巻き取る際には、このロール紙の芯と上記紙ホルダー91の支持軸との接触等によってガラガラという音が発生する。そして、上記のガラガラという音は、間仕切り壁92の下地桟92aを介して隣室へ伝搬するため、この隣室に居る人に不快な思いをさせることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の防音床構造等では、上記ガラガラという音が、紙ホルダーを支持する壁から隣室へ伝搬するのを低減できない。また、間仕切り壁92の下地桟92aを千鳥状に配置して縁切りする構造も知られているが、このような構造では、施工手間が生じる欠点がある。
【0006】
この発明は、紙ホルダーからロール紙を引き出して巻き取る際に、このロール紙の芯と紙ホルダーの支持軸との接触等により音が発生しても、この音が隣室へ伝搬するのを抑制できる紙ホルダー支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の紙ホルダー支持構造は、ロール紙を回転可能に保持する紙ホルダーからの音の伝搬を避ける対象隣室の壁に対して非接触であり、上記対象隣室の壁とは異なる非対象壁、天井、および床の少なくとも一つに接触して固定されるホルダー支持体によって、上記紙ホルダーが支持されることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、紙ホルダーからロール紙を引き出して巻き取る際に、このロール紙の芯と紙ホルダーの支持軸との接触等によりガラガラという音が発生しても、このホルダー支持体は、音の伝搬を避ける対象隣室の壁に対して非接触であるので、このガラガラ音は、当該対象隣室へは伝搬し難くなる。
【0009】
上記ホルダー支持体は、上記床および上記天井に固定されてもよい。これによれば、上記ホルダー支持体は、上記天井および床の両方に固定されるので、安定的に設置される。
【0010】
上記ホルダー支持体の上記床側の厚みは、当該ホルダー支持体の上記天井側の厚みよりも薄くされてもよい。これによれば、この厚みの薄さによって上記対象隣室の壁との間隔が広くなる場合、床の壁際の清掃が行いやすくなる。その逆に、この厚みの薄さによって、トイレ内側の足元スペースが広くなる場合、トイレの使用時の足元の圧迫感や狭小感が軽減される。
【0011】
上記ホルダー支持体は、上記床には固定されず、上記天井から吊り下げられてもよい。これによれば、トイレ内側の足元スペースが狭くならず、トイレの使用時の足元の圧迫感や狭小感が軽減される。
【0012】
上記ホルダー支持体は、上記天井側には固定されず、上記床上に立設されてもよい。これによれば、トイレ内側の上部側空間が狭くならず、トイレの使用時の圧迫感や狭小感が軽減される。
【0013】
上記ホルダー支持体は、上記対象隣室の壁とは異なる対向する二面の非対象壁に固定されてもよい。これによれば、例えば、上記非対象壁として、例えば、外壁側壁と廊下側壁とに音が伝搬されるものの、ホルダー支持体は、音の伝搬を避ける対象隣室の壁に対して非接触であるので、音の当該対象隣室への伝搬は抑制される。また、トイレ内側の足元スペースおよび上部空間が狭くならないので、トイレの使用時の圧迫感や狭小感が軽減される。
【0014】
上記ホルダー支持体は、上記対象隣室の壁とは異なる一面の非対象壁と、天井および床の少なくとも一方に固定されてもよい。
【0015】
上記ホルダー支持体は、吸音材を備えてもよい。これによれば、上記ガラガラという音の空気伝搬を上記吸音材によって低減することができる。
【0016】
上記ホルダー支持体は収納部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明であれば、紙ホルダーからロール紙を引き出して巻き取る際に、このロール紙の芯と紙ホルダーの支持軸との接触等により音が発生しても、この音が隣室へ伝搬するのを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態の紙ホルダー支持構造を示した概略の斜視図である。
【
図2】実施形態の紙ホルダー支持構造における音の固体伝搬を示した説明図である。
【
図3】実施形態の紙ホルダー支持構造の変形例を示した説明図である。
【
図4】
図3の紙ホルダー支持構造における音の空気伝搬を示した説明図である。
【
図5】実施形態の紙ホルダー支持構造の変形例を示した説明図である。
【
図6】実施形態の紙ホルダー支持構造の変形例を示した説明図である。
【
図7】実施形態の紙ホルダー支持構造の変形例を示した説明図であり、同図(A)は正面視、同図(B)は側面視である。
【
図8】同図(A)は従来のトイレ室を示した説明図であり、同図(B)は紙ホルダーからの音の隣室壁への固体伝搬を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。実施形態の紙ホルダー支持構造1は、
図1および
図2に示すように、便器8が設置されるトイレ室80内に設置される。このトイレ室80は、ロール紙であるトイレットペーパーを回転可能に保持する紙ホルダー2からの音の伝搬を避ける対象隣室の対象壁81と、外壁に面する外側壁82と、廊下側に面する廊下壁83と、他の壁とを備える。また、このトイレ室80は、天井85および床86を備える。
【0020】
紙ホルダー支持構造1は、縦長がトイレ室80の高さに一致する縦長板からなるホルダー支持体11と、このホルダー支持体11の中間高さ位置から上部位置の表面側に配置された収納棚部12とを備える。収納棚部12には、例えば、予備のロール紙を収納することができる。
【0021】
また、ホルダー支持体11は、上部側固定部11aおよび下部側固定部11bを備えるとともに、便器8に座っている人の手が届く位置において上記紙ホルダー2を支持する。
【0022】
上部側固定部11aには、ビス挿通孔が鉛直方向に形成されており、このビス挿通孔に挿通されたビスによって、上部側固定部11aが天井85に固定される。また、下部側固定部11bにも、ビス挿通孔が鉛直方向に形成されており、このビス挿通孔に挿通されたビスによって、下部側固定部11bが床86に固定される。
【0023】
ホルダー支持体11の背面は、上記対象隣室の対象壁81に対して非接触であり、ホルダー支持体11の背面と対象壁81との間には、例えば、10mm程度の隙間Gが設けられる。
【0024】
上記の構成であれば、紙ホルダー2からロール紙を引き出して巻き取る際に、このロール紙の芯と紙ホルダー2の支持軸との接触等によりガラガラという音が発生しても、
図2にも示すように、ホルダー支持体11は、音の伝搬を避ける対象隣室の対象壁81に対して非接触であるので、この音は、当該対象隣室へは伝搬し難くなる。
【0025】
なお、ホルダー支持体11は、両サイドに板部材を有して横断面略コ字形状とされることで、当該ホルダー支持体11の剛性が向上し、紙ホルダー2からロール紙を引き出して巻き取る際にホルダー支持体11に撓みが生じるのを低減することができる。また、ホルダー支持体11は、紙ホルダー2の下方側にも収納棚部を備えることもできる。
【0026】
紙ホルダー支持構造1は、上記のような構造に限らない。例えば、紙ホルダー支持構造1は、
図3および
図4に示すように、ホルダー支持体11Aを用いて構成されてもよい。ホルダー支持体11Aは、背面側で幅方向に離間して位置する一対の背面側縦桟部13と、表面側で幅方向に離間して位置する一対の表面側縦桟部14と、上記一対の背面側縦桟部13で支持された背板部(合板等)15と、左右の背面側縦桟部13と表面側縦桟部14の側面を覆う例えば2.5mm程度の側板(繊維板等)16とを備える。
【0027】
また、ホルダー支持体11Aは、背面側縦桟部13と表面側縦桟部14との間に、グラスウール等からなる吸音材17を備えている。この吸音材17によって、上記ガラガラという音の空気伝搬も低減される。
【0028】
ホルダー支持体11Aは、
図5に示すように、例えば、紙ホルダー2の下方側で表面側縦桟部14が省かれ、背面側縦桟部13のみが天井85から床86まで延びる構成とされてもよい。かかる構成は、ホルダー支持体11Aが、天井85および床86に固定されつつ、当該ホルダー支持体11Aの下側の厚みが上側の厚み比べて薄くされた構造となる。このように、当該ホルダー支持体11Aの下側の厚みの薄さによって、トイレ内側の足元スペースが広くなるので、トイレの使用時の足元の圧迫感や狭小感が軽減される。なお、紙ホルダー2の下方側で背面側縦桟部13が省かれ、表面側縦桟部14のみが天井85から床86まで延びる構成とされてもよく、このような構成では、当該ホルダー支持体11Aの下側と上記対象隣室の対象壁81との間隔が広くなり、床86の壁際の清掃が行いやすくなる。
【0029】
ホルダー支持体11Aは、
図6に示すように、例えば、紙ホルダー2の下方側で表面側縦桟部14および背面側縦桟部13の両方が省かれた吊り下げタイプとされてもよい。このような構成であれば、トイレ室80内の足元スペースが狭くならず、トイレの使用時の足元の圧迫感や狭小感が軽減されるとともに、床86の清掃も行い易くなる。
【0030】
図示はしていないが、ホルダー支持体11Aは、紙ホルダー2の上方側で表面側縦桟部14および背面側縦桟部13の両方が省かれたスタンドタイプとされてもよい。すなわち、ホルダー支持体11Aは、天井85側には固定されず、床86上に立設されてもよく、これによれば、トイレ室80内側の上部側の空間が狭くならず、トイレの使用時の上部側の圧迫感や狭小感が軽減される。
【0031】
なお、先に示した縦長板からなるホルダー支持体11を用いる構造でも、上記の吊り下げタイプやスタンドタイプとすることもできる。
【0032】
また、ホルダー支持体11Aは、
図7(A)および
図7(B)に示すように、例えば、紙ホルダー2の上方側および下方側において、背面側縦桟部13および表面側縦桟部14等により形成される空間部を利用して、収納棚部12を備える構成とすることもできる。
【0033】
また、図示はしていないが、ホルダー支持体11,11Aは、対象隣室の対象壁81とは異なる非対象壁である外壁に面する外側壁82と廊下側に面する廊下壁83との両方に或いは一方に例えば水平な横配置で固定されてもよい。このような横配置構成でも、ホルダー支持体は、音の伝搬を避ける対象隣室の対象壁81に対して非接触であるので、ガラガラ音は、当該対象隣室へは伝搬し難くなる。また、トイレ室80内の足元スペースおよび上部側の空間が狭くならないので、トイレの使用時の圧迫感や狭小感が軽減される。
【0034】
さらに、上記のような横配置としたホルダー支持体11,11Aの途中部から床86側に延びる延設部分が床86に固定されるT字形、或いは、横配置としたホルダー支持体11,11Aの途中部から天井85側に延びる延設部分が天井85に固定される逆T字形とすることもできる。
【0035】
さらに、上記した吊り下げタイプ或いはスタンドタイプのホルダー支持体11,11Aの端部を、対象隣室の対象壁81とは異なる非対象壁である外壁に面する外側壁82側、または、廊下側に面する廊下壁83側に横に延設し、この延設部分を外側壁82または廊下壁83に固定した略鉤形状とすることもできる。
【0036】
また、ホルダー支持体11,11Aに、手摺部としての機能を持たせることも可能である。
【0037】
また、例えば、ホルダー支持体として、外側パイプ内に内側パイプが摺動自在に嵌合されて長さの調節が可能であり、且つ調節した長さを保持できる伸縮部材(いわゆる突っ張り棒)を例えば2本用い、この2本の伸縮部材間に配置される板材で紙ホルダー2を支持する構成とすることもできる。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 :紙ホルダー支持構造
2 :紙ホルダー
8 :便器
11 :ホルダー支持体
11A :ホルダー支持体
11a :上部側固定部
11b :下部側固定部
12 :収納棚部
13 :背面側縦桟部
14 :表面側縦桟部
17 :吸音材
80 :トイレ室
81 :対象壁
82 :外側壁
83 :廊下壁
85 :天井
86 :床
G :隙間