(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142925
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/012 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01G9/012 301
H01G9/012 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055340
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇治野 智大
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 克泰
(72)【発明者】
【氏名】福井 斉
(72)【発明者】
【氏名】田中 篤志
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄一郎
(57)【要約】
【課題】固体電解コンデンサの気密性を向上させる。
【解決手段】開示される固体電解コンデンサは、陽極部および陰極部を有するコンデンサ素子と、陽極部に電気的に接続される陽極端子20と、陰極部に電気的に接続される陰極端子30と、コンデンサ素子、陽極端子20、および陰極端子30を被覆する外装樹脂と、を備える。陽極端子20および陰極端子30の各々は、外装樹脂の内部に配置される非露出部21,31と、外装樹脂から露出する露出部25,35と、を有する。陽極端子20および陰極端子30の少なくとも一方は、非露出部21,31と露出部25,35とにまたがって形成された少なくとも2つの穴部26,36を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部および陰極部を有するコンデンサ素子と、
前記陽極部に電気的に接続される陽極端子と、
前記陰極部に電気的に接続される陰極端子と、
前記コンデンサ素子、前記陽極端子、および前記陰極端子を被覆する外装樹脂と、
を備え、
前記陽極端子および前記陰極端子の各々は、前記外装樹脂の内部に配置される非露出部と、前記外装樹脂から露出する露出部と、を有し、
前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記非露出部と前記露出部とにまたがって形成された少なくとも2つの穴部を有する、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記非露出部のうち前記穴部に対応する領域に、前記露出部から遠ざかる方向に向かって幅広になる段差部が設けられる、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記非露出部は、前記コンデンサ素子が載置される載置部と、前記載置部と前記露出部との間で階段状に曲がって延びる曲がり部と、を有し、
前記段差部は、前記曲がり部に設けられる、請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記曲がり部は、前記載置部に隣接する第1領域と、前記露出部に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とを接続する第3領域と、を有し、
前記段差部は、前記第2領域に、または前記第3領域のうち前記第2領域側の半部に設けられる、請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記段差部は、前記第3領域のうち前記第2領域側の半部に設けられる、請求項4に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記穴部を2つのみ有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
陽極部および陰極部を有するコンデンサ素子と、
前記陽極部に電気的に接続される陽極端子と、
前記陰極部に電気的に接続される陰極端子と、
前記コンデンサ素子、前記陽極端子、および前記陰極端子を被覆する外装樹脂と、
を備え、
前記陽極端子および前記陰極端子の各々は、前記外装樹脂の内部に配置される非露出部と、前記外装樹脂から露出する露出部と、を有し、
前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記非露出部に設けられ、前記露出部から遠ざかる方向に向かって幅広になる段差部を有する、固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記非露出部は、前記コンデンサ素子が載置される載置部と、前記載置部と前記露出部との間で階段状に曲がって延びる曲がり部と、を有し、
前記段差部は、前記曲がり部に設けられる、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
前記曲がり部は、前記載置部に隣接する第1領域と、前記露出部に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とを接続する第3領域と、を有し、
前記段差部は、前記第2領域に、または前記第3領域のうち前記第2領域側の半部に設けられる、請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
前記段差部は、前記第3領域のうち前記第2領域側の半部に設けられる、請求項9に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記非露出部と前記露出部とにまたがって形成された少なくとも1つの穴部を有する、請求項7~10のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体電解質を用いる電解コンデンサ(固体電解コンデンサ)が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の固体電解コンデンサは、コンデンサ素子と、陽極端子と、陰極端子と、これらを被覆する外装樹脂とを備え、陽極端子および陰極端子の各々は、外装樹脂の内外にわたって延びる穴部または切欠き部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の固体電解コンデンサは、各端子の加工時などに、各端子の一部に応力が集中することで、各端子と外装樹脂との間の界面に剥離が生じるおそれがある。そのような剥離が生じると、外装樹脂の内部に空気が侵入し、コンデンサ素子が酸化して劣化し得る。このような状況において、本開示は、固体電解コンデンサの気密性を向上させることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、固体電解コンデンサに関する。当該固体電解コンデンサは、陽極部および陰極部を有するコンデンサ素子と、前記陽極部に電気的に接続される陽極端子と、前記陰極部に電気的に接続される陰極端子と、前記コンデンサ素子、前記陽極端子、および前記陰極端子を被覆する外装樹脂と、を備え、前記陽極端子および前記陰極端子の各々は、前記外装樹脂の内部に配置される非露出部と、前記外装樹脂から露出する露出部と、を有し、前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記非露出部と前記露出部とにまたがって形成された少なくとも2つの穴部を有する。
【0006】
本開示に係る別の一局面は、固体電解コンデンサに関する。当該固体電解コンデンサは、陽極部および陰極部を有するコンデンサ素子と、前記陽極部に電気的に接続される陽極端子と、前記陰極部に電気的に接続される陰極端子と、前記コンデンサ素子、前記陽極端子、および前記陰極端子を被覆する外装樹脂と、を備え、前記陽極端子および前記陰極端子の各々は、前記外装樹脂の内部に配置される非露出部と、前記外装樹脂から露出する露出部と、を有し、前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記非露出部に設けられ、前記露出部から遠ざかる方向に向かって幅広になる段差部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、固体電解コンデンサの気密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る固体電解コンデンサの一例を模式的に示す側面透視図である。
【
図2】実施形態1の陽極端子および陰極端子を示す斜視図であって、陰極端子が紙面手前側に示されている。
【
図3】実施形態1の陽極端子および陰極端子を示す別の斜視図であって、陽極端子が紙面手前側に示されている。
【
図4】実施形態2の陽極端子および陰極端子を示す斜視図であって、陰極端子が紙面手前側に示されている。
【
図5】実施形態3の陽極端子および陰極端子を示す斜視図であって、陰極端子が紙面手前側に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る固体電解コンデンサの実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0010】
本開示の一実施形態に係る固体電解コンデンサ(以下、固体電解コンデンサAともいう。)は、コンデンサ素子と、陽極端子と、陰極端子と、外装樹脂とを備える。
【0011】
コンデンサ素子は、陽極部および陰極部を有する。コンデンサ素子は、複数設けられて互いに積層されてもよい。コンデンサ素子は、陽極部と陰極部との間に設けられ、両者を電気的に絶縁する絶縁部をさらに有してもよい。絶縁部は、例えば、絶縁テープまたは絶縁樹脂で構成されてもよい。
【0012】
陽極部は、コンデンサ素子が有する弁作用金属からなる陽極体の一部(絶縁部を基準として一端側の一部)を含むように構成されてもよい。陰極部は、陽極体の残部(絶縁部を基準として他端側の一部)である陰極形成部の表面上に順次形成された固体電解質層および陰極層で構成されてもよい。陽極体と固体電解質層との間には、誘電体層が設けられる。
【0013】
陽極体を構成する弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンなどが挙げられる。陽極体は、弁作用金属の箔であってもよいし、弁作用金属粒子の焼結体であってもよい。
【0014】
誘電体層は、少なくとも陽極体の残部である陰極形成部の表面に形成される。誘電体層は、陽極体の表面に陽極酸化などの液相法や、蒸着、原子層堆積法などの気相法などにより形成された酸化物(例えば、酸化アルミニウム)で構成されてもよい。
【0015】
固体電解質層は、誘電体層の表面に形成される。固体電解質層は、導電性高分子を含んでもよい。固体電解質層は、必要に応じて、さらに、ドーパントを含んでもよい。
【0016】
導電性高分子としては、固体電解コンデンサに使用される公知のもの、例えば、π共役系導電性高分子などが使用できる。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフラン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、およびポリチオフェンビニレンを基本骨格とする高分子が挙げられる。これらのうち、ポリピロール、ポリチオフェン、またはポリアニリンを基本骨格とする高分子が好ましい。上記の高分子には、単独重合体、二種以上のモノマーの共重合体、およびこれらの誘導体(置換基を有する置換体など)も含まれる。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。導電性高分子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ドーパントとしては、例えば、低分子アニオンおよびポリアニオンからなる群より選択される少なくとも一種が使用される。低分子アニオンとしては、例えば、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼酸イオン、有機スルホン酸イオン、カルボン酸イオンなどが挙げられるが、特に制限されない。有機スルホン酸イオンを生成するドーパントとしては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびナフタレンスルホン酸などが挙げられる。ポリアニオンとしては、例えば、高分子タイプのポリスルホン酸および高分子タイプのポリカルボン酸などが挙げられる。高分子タイプのポリスルホン酸としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、およびポリメタクリルスルホン酸などが挙げられる。高分子タイプのポリカルボン酸としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などが挙げられる。ポリアニオンには、ポリエステルスルホン酸、およびフェノールスルホン酸ノボラック樹脂なども含まれる。しかし、ポリアニオンは、これらに制限されるものではない。
【0018】
固体電解質層は、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、および導電性高分子以外の公知の導電性材料を含んでもよい。このような導電性材料としては、例えば、二酸化マンガンなどの導電性無機材料、およびTCNQ錯塩からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0019】
陰極層は、固体電解質層の表面に形成されたカーボン層と、カーボン層の表面に形成された導電体層とで構成されてもよい。導電体層は、銀ペーストで構成されてもよい。銀ペーストとしては、例えば、銀粒子と樹脂成分(バインダ樹脂)とを含む組成物を用い得る。樹脂成分としては、熱可塑性樹脂を用いることもできるが、イミド系樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
陽極端子は、コンデンサ素子の陽極部に電気的に接続される。陽極端子は、銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金で構成されてもよく、めっき処理が施されていてもよい。陽極端子は、かしめ固定によって陽極部に電気的に接続されてもよいし、溶接(例えば、レーザ溶接または抵抗溶接)によって陽極部に電気的に接続されてもよい。
【0021】
陰極端子は、コンデンサ素子の陰極部に電気的に接続される。陰極端子は、銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金で構成されてもよく、めっき処理が施されていてもよい。陰極端子の構成材料は、陽極端子の構成材料とおよび同じでも異なってもよい。陰極端子は、導電性接着剤を介して、陰極部に電気的に接続されてもよい。
【0022】
外装樹脂は、コンデンサ素子、陽極端子、および陰極端子を被覆する。外装樹脂は、これらの要素を、陽極端子および陰極端子の各々の一部が露出するように被覆してもよい。外装樹脂は、絶縁性の樹脂材料で構成されてもよい。外装樹脂は、例えばエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂の硬化物であってもよく、必要に応じて、フィラーを含んでもよい。
【0023】
上記の陽極端子および陰極端子の各々は、外装樹脂の内部に配置される非露出部と、外装樹脂から露出する露出部とを有する。陽極端子の非露出部は、コンデンサ素子の陽極部に電気的に接続されてもよい。陰極端子の非露出部は、コンデンサ素子の陰極部に電気的に接続されてもよい。陽極端子の露出部は、固体電解コンデンサAの一方の外部端子を構成してもよい。陰極端子の露出部は、固体電解コンデンサAの他方の外部端子を構成してもよい。
【0024】
陽極端子および陰極端子の少なくとも一方は、非露出部と露出部とにまたがって形成された少なくとも2つの穴部を有する。換言すると、陽極端子および陰極端子の少なくとも一方における非露出部と露出部とにまたがる部分は、3つ以上に分岐して延びている。このような構成によると、各端子に引張力が作用しても、非露出部と露出部とにまたがる領域(特に、非露出部と露出部との境界)で、3つ以上に分岐した部分に応力が分散される。特定の箇所に応力が集中しにくいので、各端子と外装樹脂との剥離が生じにくい。よって、固体電解コンデンサAの気密性を向上させることができる。なお、各端子が有する穴部の数は、2つ以上であれば特に限定されない。
【0025】
非露出部のうち穴部に対応する領域に、露出部から遠ざかる方向に向かって幅広になる段差部が設けられてもよい。この構成では、各端子に引張力が作用する際に、当該段差部とその近傍の外装樹脂との間でアンカー効果が生じ、端子内で生じる応力が段差部よりもコンデンサ素子側に伝わるのを抑制することができる。また、各端子に引張力が作用する際に、端子内で生じる応力が当該段差部に集中するので、当該応力が段差部よりもコンデンサ素子側に伝わるのを抑制することができる。その結果、露出部側から見たときに、段差部よりも手前側で端子と外装樹脂との剥離が生じたとしても、段差部よりも奥側に当該剥離が進展することが抑制される。
【0026】
非露出部は、コンデンサ素子が載置される載置部と、載置部と露出部との間で階段状に曲がって延びる曲がり部と、を有してもよい。段差部は、曲がり部に設けられてもよい。この構成によると、載置部から露出部までが直線状に形成される場合に比べて、載置部から露出部までの沿面距離を長くすることができ、よってコンデンサ素子まで空気が到達するのをより一層抑制することができる。
【0027】
曲がり部は、載置部に隣接する第1領域と、露出部に隣接する第2領域と、第1領域と第2領域とを接続する第3領域と、を有してもよい。段差部は、第2領域に、または第3領域のうち第2領域側の半部に設けられてもよい。このような領域に段差部を設けることで、上述のアンカー効果を発揮しやすくすると共に、コンデンサ素子まで空気が到達するのをより一層抑制することができる。
【0028】
段差部は、第3領域のうち第2領域側の半部に設けられてもよい。この場合、各端子や外装樹脂などに製造公差が存在しても、上述のアンカー効果を確実に発揮させることができ、よって固体電解コンデンサAの信頼性を高めることができる。
【0029】
陽極端子および陰極端子の少なくとも一方は、穴部を2つのみ有してもよい。換言すると、陽極端子および陰極端子の少なくとも一方における非露出部と露出部とにまたがる部分は、3つに分岐して延びていてもよい。この場合、本開示に係る固体電解コンデンサAを特に容易に製造できる。また、穴部に外装樹脂が充填されやすくなると共に、固体電解コンデンサAの等価直列抵抗や等価直列インダクタンスを小さくすることができる。
【0030】
非露出部のうち穴部に対応する領域の幅寸法(すなわち、穴部も含めた当該領域の幅方向の寸法)の最大値をW[mm]とし、かつ当該幅方向における2つ以上の穴部の合計寸法をL[mm]として、0.1≦L/W≦0.5が成り立ってもよい。L/Wがこのような範囲内にある場合、非露出部のうち穴部に対応する領域の曲げ強度の向上と、当該領域の電気的抵抗の低減とを高いレベルで両立させることができる。
【0031】
本開示の別の一実施形態に係る固体電解コンデンサ(以下、固体電解コンデンサBともいう。)は、コンデンサ素子と、陽極端子と、陰極端子と、外装樹脂とを備える。コンデンサ素子および外装樹脂は、固体電解コンデンサAのものと同様であってもよい。
【0032】
陽極端子および陰極端子の各々は、外装樹脂の内部に配置される非露出部と、外装樹脂から露出する露出部とを有する。陽極端子の非露出部は、コンデンサ素子の陽極部に電気的に接続されてもよい。陰極端子の非露出部は、コンデンサ素子の陰極部に電気的に接続されてもよい。陽極端子の露出部は、固体電解コンデンサBの一方の外部端子を構成してもよい。陰極端子の露出部は、固体電解コンデンサBの他方の外部端子を構成してもよい。
【0033】
陽極端子および陰極端子の少なくとも一方は、非露出部に設けられ、露出部から遠ざかる方向に向かって幅広になる段差部を有する。このような構成によると、各端子に引張力が作用する際に、当該段差部とその近傍の外装樹脂との間でアンカー効果が生じ、端子内で生じる応力が段差部よりもコンデンサ素子側に伝わるのを抑制することができる。また、各端子に引張力が作用する際に、端子内で生じる応力が当該段差部に集中するので、当該応力が段差部よりもコンデンサ素子側に伝わるのを抑制することができる。その結果、露出部側から見たときに、段差部よりも手前側で端子と外装樹脂との剥離が生じたとしても、段差部よりも奥側に当該剥離が進展することが抑制される。よって、固体電解コンデンサBの気密性を向上させることができる。
【0034】
非露出部は、コンデンサ素子が載置される載置部と、載置部と露出部との間で階段状に曲がって延びる曲がり部と、を有してもよい。段差部は、曲がり部に設けられてもよい。この構成によると、載置部から露出部までが直線状に形成される場合に比べて、載置部から露出部までの沿面距離を長くすることができ、よってコンデンサ素子まで空気が到達するのをより一層抑制することができる。
【0035】
曲がり部は、載置部に隣接する第1領域と、露出部に隣接する第2領域と、第1領域と第2領域とを接続する第3領域と、を有してもよい。段差部は、第2領域に、または第3領域のうち第2領域側の半部に設けられてもよい。このような領域に段差部を設けることで、上述のアンカー効果を発揮しやすくすると共に、コンデンサ素子まで空気が到達するのをより一層抑制することができる。
【0036】
段差部は、第3領域のうち第2領域側の半部に設けられてもよい。この場合、各端子や外装樹脂などに製造公差が存在しても、上述のアンカー効果を確実に発揮させることができ、よって固体電解コンデンサBの信頼性を高めることができる。
【0037】
陽極端子および陰極端子の少なくとも一方は、非露出部と露出部とにまたがって形成された少なくとも1つの穴部を有してもよい。換言すると、陽極端子および陰極端子の少なくとも一方における非露出部と露出部とにまたがる部分は、2つ以上に分岐して延びていてもよい。この構成によると、各端子に引張力が作用しても、非露出部と露出部とにまたがる領域(特に、非露出部と露出部との境界)で、2つ以上に分岐した部分に応力が分散される。特定の箇所に応力が集中しにくいので、各端子と外装樹脂との剥離が生じにくい。よって、固体電解コンデンサBの気密性を向上させることができる。なお、各端子が有する穴部の数は、1つ以上であれば特に限定されず、例えば2つであってもよい。
【0038】
以上のように、本開示によれば、陽極端子および/または陰極端子に2つ以上の穴部を設けることで、または陽極端子および/または陰極端子に段差部を設けることで、固体電解コンデンサの気密性を向上させることができる。
【0039】
以下では、本開示に係る固体電解コンデンサの一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例の固体電解コンデンサの構成要素には、上述した構成要素を適用できる。以下で説明する一例の固体電解コンデンサの構成要素は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例の固体電解コンデンサの構成要素のうち、本開示に係る固体電解コンデンサに必須ではない構成要素は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0040】
《実施形態1》
本開示の実施形態1について説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態の固体電解コンデンサ10は、複数(この例では、6つ)のコンデンサ素子12を積層してなる積層体11と、陽極端子20と、陰極端子30と、外装樹脂40とを備える。
【0041】
複数のコンデンサ素子12の各々は、一端側(
図1における左端側)に配置される陽極部13と、他端側(
図1における右端側)に配置される陰極部14と、陽極部13と陰極部14との間に設けられ、両者を電気的に絶縁する絶縁部15とを有する。
【0042】
陽極端子20は、コンデンサ素子12の陽極部13に電気的に接続される。陽極端子20は、かしめ固定および溶接によって陽極部13に電気的に接続される。陽極端子20は、銅または銅合金で構成されてもよい。
【0043】
陰極端子30は、コンデンサ素子12の陰極部14に電気的に接続される。陰極端子30は、導電性接着剤(図示せず)を介して、陰極部14に電気的に接続される。陰極端子30は、銅または銅合金で構成されてもよい。
【0044】
外装樹脂40は、積層体11、陽極端子20、および陰極端子30を、陽極端子20および陰極端子30の各々の一部が露出するように被覆する。陽極端子20および陰極端子30の各々の露出部分は、固体電解コンデンサ10の外部端子として機能する。外装樹脂40は、絶縁性の樹脂材料で構成されてもよい。
【0045】
陽極端子20および陰極端子30の各々は、外装樹脂40の内部に配置される非露出部21,31と、外装樹脂40から露出する露出部25,35とを有する。各露出部25,35は、外装樹脂40の外面に沿った形状になっている。
【0046】
陽極端子20の非露出部21は、コンデンサ素子12の陽極部13が載置される載置部22と、載置部22と陽極端子20の露出部25との間で階段状に曲がって延びる曲がり部23と、載置部22と一体に設けられ、陽極部13をかしめ固定するための固定部24とを有する。曲がり部23は、載置部22に隣接する第1領域23aと、露出部25に隣接する第2領域23bと、第1領域23aと第2領域23bとを接続する第3領域23cとを含む。
【0047】
陰極端子30の非露出部31は、コンデンサ素子12の陰極部14が載置される載置部32と、載置部32と陰極端子30の露出部35との間で階段状に曲がって伸びる曲がり部33と、載置部32と一体に設けられ、陰極部14の側面に電気的に接続される側壁部34とを有する。曲がり部33は、載置部32に隣接する第1領域33aと、露出部35に隣接する第2領域33bと、第1領域33aと第2領域33bとを接続する第3領域33cとを含む。
【0048】
陽極端子20は、その非露出部21と露出部25とにまたがって形成された2つの穴部26を有する。陽極端子20のうち2つの穴部26が形成された領域は、3つに分岐して延びている。各穴部26は、陽極端子20の延在方向に沿って延びている。3つに分岐して延びる部分について、両端の2つをそれぞれ第1分岐部とし、かつ中央の1つを第2分岐部として、第2分岐部は、第1分岐部よりも細くてもよい。
【0049】
陽極端子20の非露出部21のうち穴部26に対応する領域には、外装樹脂40の内側に向かって幅広になる段差部27が設けられる。本実施形態の段差部27は、陽極端子20の曲がり部23の第3領域23cのうち第2領域23b側の半部(各図における上半部)に設けられるが、これに限られるものではない。
【0050】
陰極端子30は、その非露出部31と露出部35とにまたがって形成された2つの穴部36を有する。陰極端子30のうち2つの穴部36が形成された領域は、3つに分岐して延びている。各穴部36は、陰極端子30の延在方向に沿って延びている。
【0051】
陰極端子30の非露出部31のうち穴部36に対応する領域には、外装樹脂40の内側に向かって幅広になる段差部37が設けられる。本実施形態の段差部37は、陰極端子30の曲がり部33の第3領域33cのうち第2領域33b側の半部(各図における上半部)に設けられるが、これに限られるものではない。
【0052】
《実施形態2》
本開示の実施形態2について説明する。本実施形態の固体電解コンデンサ10は、
図4に示すように、陽極端子20および陰極端子30の各々に穴部26,36が設けられない。それ以外の構成は、上記実施形態1と同様である。
【0053】
《実施形態3》
本開示の実施形態3について説明する。本実施形態の固体電解コンデンサ10は、
図5に示すように、陽極端子20および陰極端子30の各々に穴部26,36が1つずつ設けられる。それ以外の構成は、上記実施形態1と同様である。
【0054】
《付記》
以上の実施形態の記載により、下記の技術が開示される。
(技術1)
陽極部および陰極部を有するコンデンサ素子と、
前記陽極部に電気的に接続される陽極端子と、
前記陰極部に電気的に接続される陰極端子と、
前記コンデンサ素子、前記陽極端子、および前記陰極端子を被覆する外装樹脂と、
を備え、
前記陽極端子および前記陰極端子の各々は、前記外装樹脂の内部に配置される非露出部と、前記外装樹脂から露出する露出部と、を有し、
前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記非露出部と前記露出部とにまたがって形成された少なくとも2つの穴部を有する、固体電解コンデンサ。
(技術2)
前記非露出部のうち前記穴部に対応する領域に、前記露出部から遠ざかる方向に向かって幅広になる段差部が設けられる、技術1に記載の固体電解コンデンサ。
(技術3)
前記非露出部は、前記コンデンサ素子が載置される載置部と、前記載置部と前記露出部との間で階段状に曲がって延びる曲がり部と、を有し、
前記段差部は、前記曲がり部に設けられる、技術2に記載の固体電解コンデンサ。
(技術4)
前記曲がり部は、前記載置部に隣接する第1領域と、前記露出部に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とを接続する第3領域と、を有し、
前記段差部は、前記第2領域に、または前記第3領域のうち前記第2領域側の半部に設けられる、技術3に記載の固体電解コンデンサ。
(技術5)
前記段差部は、前記第3領域のうち前記第2領域側の半部に設けられる、技術4に記載の固体電解コンデンサ。
(技術6)
前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記穴部を2つのみ有する、技術1~5のいずれか1つに記載の固体電解コンデンサ。
(技術7)
陽極部および陰極部を有するコンデンサ素子と、
前記陽極部に電気的に接続される陽極端子と、
前記陰極部に電気的に接続される陰極端子と、
前記コンデンサ素子、前記陽極端子、および前記陰極端子を被覆する外装樹脂と、
を備え、
前記陽極端子および前記陰極端子の各々は、前記外装樹脂の内部に配置される非露出部と、前記外装樹脂から露出する露出部と、を有し、
前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記非露出部に設けられ、前記露出部から遠ざかる方向に向かって幅広になる段差部を有する、固体電解コンデンサ。
(技術8)
前記非露出部は、前記コンデンサ素子が載置される載置部と、前記載置部と前記露出部との間で階段状に曲がって延びる曲がり部と、を有し、
前記段差部は、前記曲がり部に設けられる、技術7に記載の固体電解コンデンサ。
(技術9)
前記曲がり部は、前記載置部に隣接する第1領域と、前記露出部に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とを接続する第3領域と、を有し、
前記段差部は、前記第2領域に、または前記第3領域のうち前記第2領域側の半部に設けられる、技術8に記載の固体電解コンデンサ。
(技術10)
前記段差部は、前記第3領域のうち前記第2領域側の半部に設けられる、技術9に記載の固体電解コンデンサ。
(技術11)
前記陽極端子および前記陰極端子の少なくとも一方は、前記非露出部と前記露出部とにまたがって形成された少なくとも1つの穴部を有する、技術7~10のいずれか1つに記載の固体電解コンデンサ。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示は、固体電解コンデンサに利用できる。
【符号の説明】
【0056】
10:固体電解コンデンサ
11:積層体
12:コンデンサ素子
13:陽極部
14:陰極部
15:絶縁部
20:陽極端子
21:非露出部
22:載置部
23:曲がり部
23a:第1領域
23b:第2領域
23c:第3領域
24:固定部
25:露出部
26:穴部
27:段差部
30:陰極端子
31:非露出部
32:載置部
33:曲がり部
33a:第1領域
33b:第2領域
33c:第3領域
34:側壁部
35:露出部
36:穴部
37:段差部
40:外装樹脂