(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142930
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/62 20060101AFI20241003BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
F04D29/62 C
H02K11/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055348
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和彦
【テーマコード(参考)】
3H130
5H611
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB45
3H130AC30
3H130BA95H
3H130BA98H
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DF08X
3H130EA02H
3H130EB01H
3H130ED02H
5H611BB01
5H611TT01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】3相コイルの各相の端末を束ねて撚り合わせてコモン線結合部を形成することなく、コモン線結合部の絶縁状態を確実に維持することができる遠心送風機を提供する。
【解決手段】下ケーシング130の開口部にエンドキャップ180を設け、モータはステータを有する3相ブラシレスモータであり、ステータには3相のコイルがスター結線で巻回され、3相のコイルの各相の一方側の端末は、回路基板164の所定の配線パターンに電気的に接続され、3相のコイルの各相の他方端の端末は、エンドキャップ180に設けられた導電性材料からなる中性点パターン部187に電気的に接続されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内側にインペラと、前記インペラを回転するためのモータとを収容し、前記ケーシングの外側に、前記モータを駆動制御するための回路を搭載した回路基板を備えた遠心ファンであって、
前記ケーシングの開口部にエンドキャップを設け、
前記モータはステータを有する3相ブラシレスモータであり、前記ステータには3相のコイルがスター結線で巻回され、前記3相のコイルの各相の一方側の端末は、前記回路基板の所定の配線パターンに電気的に接続され、前記3相のコイルの各相の他方端の端末は、前記エンドキャップに設けられた導電性材料からなる中性点パターン部に電気的に接続されている遠心送風機。
【請求項2】
前記エンドキャップは、前記中性点パターン部をインサート材とした射出成形品であって、前記中性点パターン部は、前記コイルの前記他方端の端末が接続されるパッドを有し、前記パッドは前記エンドキャップの外側に露出し、前記パッド以外は、前記エンドキャップに埋設されている請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記エンドキャップは、前記ケーシングの開口部の内周に接触する外側環状部と、該外側環状部の内側に配置された内側環状部と、該内側環状部および前記外側環状部に架設された複数の放射状リブとを備え、前記中性点パターン部は、前記複数の放射状リブに亘って一体に成形されている請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項4】
前記エンドキャップは、前記回路基板を載置する回路基板載置部を備え、前記回路基板は、コイル端末挿入孔を備えるとともに、実装面を前記モータ側に向けた状態で前記回路基板載置部に載置されており、前記3相のコイルの各相の一方側の端末は、前記実装面側から前記コイル端末挿入孔に挿入されて半田付けされている請求項2に記載の遠心送風機。
【請求項5】
前記パッドは貫通孔を備え、前記3相のコイルの各相の他方端の端末は、前記実装面側から前記パッドの前記貫通孔に挿入されて半田付けされている請求項4に記載の遠心送風機。
【請求項6】
前記中性点パターン部は、前記回路基板載置部に近接して配置されている請求項4に記載の遠心送風機。
【請求項7】
前記中性点パターン部は、前記外側環状部と前記内側環状部との中間で前記外側環状部に添う形状をなしている請求項3に記載の遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相コイルの各相の端末を束ねて撚り合わせてコモン線結合部を形成する作業を省略できる遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠心送風機は、家電機器、OA機器、産業用や車両用の空気調和装置における送風、換気、冷却等に広く用いられている。遠心送風機は、ケーシングを備え、ケーシングの内側には、複数の羽根を備えたインペラと、インペラを回転させるためのモータが収容されている。
【0003】
インペラを回転させるためモータに3相ブラシレスモータを使用する場合がある。3相ブラシレスモータのU相、V相、W相の各コイルをスター結線(Y結線)した場合、中性点であるコモン線で接続しており、このコモン線を他の部材から絶縁する必要がある。
【0004】
コモン線を他の部材から絶縁するため、一般的にはコモン線の結合部に絶縁チューブを被せているが、絶縁チューブに代えて、回路基板を結合したエンドキャップに、コモン線結合部を収容するためのポケットを設けた遠心送風機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の遠心送風機では、3相コイルのU相、V相、W相それぞれの端末を束ねて撚り合わせてコモン線結合部143aとし、半田接合する。半田接合したコモン線結合部143aを、回路基板144の外周縁に形成した切欠144aから実装面側に突出させてエンドキャップ160の内周面に形成したポケット部163内に収容する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の遠心送風機は、エンドキャップ160の内周面に形成したポケット部163に3相コイルのコモン線結合部143aを収容することによって、他の部材から容易に絶縁することができるが、3相コイルのU相、V相、W相それぞれの端末を束ねて撚り合わせ、コモン線結合部143aを形成する作業が必要になる。このため、作業効率を向上するために、更なる作業改善を図る必要がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、3相コイルの各相の端末を束ねて撚り合わせてコモン線結合部を形成することなく、コモン線結合部の絶縁状態を確実に維持することができる遠心送風機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ケーシングの内側にインペラと、前記インペラを回転するためのモータとを収容し、前記ケーシングの外側に、前記モータを駆動制御するための回路を搭載した回路基板を備えた遠心ファンであって、前記ケーシングの開口部にエンドキャップを設け、前記モータはステータを有する3相ブラシレスモータであり、前記ステータには3相のコイルがスター結線で巻回され、前記3相のコイルの各相の一方側の端末は、前記回路基板の所定の配線パターンに電気的に接続され、前記3相のコイルの各相の他方端の端末は、前記エンドキャップに設けられた導電性材料からなる中性点パターン部に電気的に接続されている遠心送風機である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の遠心送風機の斜視図である。
【
図5】(A)は
図4のV-V線断面図、(B)は(A)の矢印Bで示す部分の拡大図である。
【
図6】
図1に示す遠心送風機からカバーを取り外した斜視図である。
【
図7】実施形態におけるエンドキャップを示す斜視図である。
【
図8】
図7に示すエンドキャップに回路基板を装着した状態を示す斜視図である。
【
図9】ハウジングに下ケーシングと軸受ホルダーとを一体成形した状態を示す斜視図である。
【
図10】(A)は
図9に示す一体成形体を裏側から視た斜視図、(B)は(A)の矢印Bで示す部分の拡大図である。
【
図11】実施形態におけるカバーを示す斜視図である。
【
図12】(A)は従来の遠心送風機(特許文献1)の要部を示す斜視図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.遠心送風機の全体構成
図1~
図11を参照して本発明の一実施形態の遠心送風機100を説明する。なお、以下の説明において「上」や「下」等の方向を示す用語は、
図3における方向を示すものとして用いる。また、後述するロータ170のシャフト171の延在方向を軸方向と称し、軸方向と直交する方向を径方向と称する。さらに、シャフト171の回転方向を周方向と称する。
【0012】
遠心送風機100は、
図1に示すように、ケーシング110を備えている。ケーシング110は、樹脂で成形した上ケーシング120と、樹脂で成形した下ケーシング130とから構成されている。
図3に示すように、上ケーシング120の外周の上縁部には、その全周に亘って軸方向上側へ向けて突出する環状凸部121が形成されている。一方、下ケーシング130の外周の下縁部には、その全周に亘って環状凹部131が形成されている。そして、環状凹部131に環状凸部121が嵌合している。
【0013】
図5および
図10に示すように、下ケーシング130の外周の下縁部には、複数(この例では5個)の突起132が形成されている。突起132の径方向内側の面には、凹部133が形成され、凹部133の軸方向の先には貫通孔134が形成されている。一方、上ケーシング120の環状凸部121のうち、突起132と対応する部分には、径方向外側に突出する爪部121aが形成されている。爪部121aは、凹部133と嵌合するとともに、貫通孔134の縁部に係合している。これにより、上ケーシング120と下ケーシング130とが結合している。
【0014】
ケーシング110には、インペラ140が収容されている。インペラ140は、軸中心側の内側空間の周囲の環状の部分に配置された複数の羽根141を備え、回転することで内側空間から複数の羽根141の間を介して遠心方向に排気を行う。ケーシング110は、インペラ140の内側空間を臨む位置に設けられた開口であってインペラ140の内側空間に空気を導く吸込口114を備えている。
【0015】
ケーシング110の内側には、渦巻き状の流路113が形成されている。流路113は、インペラ140とケーシング110の間の隙間が最小となる部分を始端とし、そこから
図1における時計回りの周方向に進むに従って断面積が徐々に大きくなる構造を有している。流路113の終端には、矩形の吹出口115が形成されている。すなわち、渦巻き状の流路113は、吹出口115に向かって徐々に断面積が拡大する構造を有している。
【0016】
下ケーシング130は他の装置や筐体に取り付けて固定するための固定脚116を備えていると共に、インペラ140を回転させるためのモータ150が取り付けられている。なお、
図1において符号116aは金属製のカラーである。
【0017】
図3に示すように、モータ150のシャフト171にインペラ140が固定され、モータ150が回転すると、インペラ140が回転する。インペラ140が回転すると、空気が吸込口114から吸い込まれ、インペラ140の内側(軸中心側の内部空間)に導かれる。この空気が羽根141の作用により、インペラ140の内側から遠心方向に吹き出される。インペラ140から吹き出された空気は、渦巻き状の流路113を吹出口115に向かって流れ、吹出口115から排気される。
【0018】
インペラ140は、頂面を構成するカップ状のハブ142と、ハブ142の外周部から径方向外側に延在するフランジ部148と、フランジ部148に矩形板状の部分を軸方向に立てた状態で配置された複数の羽根141と、複数の羽根141のハブ142と反対側の端部を連結する環状の連結リング143とを有している。羽根141はすべて同じ形状で、インペラ140の回転方向に対して凹んだ前向き羽根形状を有し、周方向に均等配置されている。複数の羽根141の内側(軸中心側)には内側空間が設けられ、インペラ140が回転すると、この内側空間から羽根141を介して遠心方向に空気が吹き出される。
【0019】
図3および
図5に示すように、ハブ142は、その中央に凸形状に上下方向に向けて突出するボス部144を有し、ボス部144の内部には空間144aが形成されている。この空間144aには、筒状をなす金属製(例えば真鍮)のブッシュ145がインサート成形により固定され、ブッシュ145にモータ150のシャフト171が圧入され、これにより、インペラ140がシャフト171に結合されている。シャフト171は、モータ150の回転軸であり、インペラ140と結合されることで、インペラ140の回転軸も兼ねている。ハブ142と複数の羽根141と連結リング143は樹脂で一体に形成されている。
【0020】
2.モータの構成
モータ150は、インナーロータ型の3相ブラシレスモータであり、導電性の金属材料からなるカップ状のハウジング151を備えている。ハウジング151の内周面には、ステータ160が配置されている。ステータ160は、電磁鋼板からなるコアを所定枚数積層したステータコア161と、ステータコア161に装着したインシュレータ162と、インシュレータ162を介してステータコア161に巻回した3相のコイル163と、インシュレータ162の上方に配置された回路基板164(
図3、
図5参照)とを備えている。3相のコイル(U相、V相、W相)はスター結線(Y結線)にて巻回されている。ステータコア161は環状のコアバック部161aから径方向内側に延在する複数のティース161bを有し、ティース161bにはインシュレータ162を介してコイル163が巻回されている。
【0021】
ステータコア161の内側には、ロータ170が配置されている。ロータ170は、金属製のシャフト171と、シャフト171の上端部に結合された略傘状のロータ支持部172と、ロータ支持部172の外周面に固着されたリング状のロータマグネット173とを備えている。ロータマグネット173は、焼結磁石であって予め着磁されており、外周面側において極性(N・S)が周方向に交互に並ぶ状態とされている。磁性の金属材料からなるロータ支持部172の中央には、例えば、鍛造によってボス部172aが形成され、ボス部172aにシャフト171が圧入されることでシャフト171とロータ支持部172が結合されている。
【0022】
3.ハウジングの構成
ハウジング151の中央には、軸受ホルダー152がハウジング151をインサート材として樹脂で一体に成形されている。軸受ホルダー152には、一対のボールベアリング153が装着され、シャフト171は、一対のボールベアリング153によって回転可能に支持されている。一方のボールベアリング153とインペラ140のボス部144との間には、圧縮コイルバネ154が介装され、ボールベアリング153の内輪を軸方向に付勢することにより、ボールベアリング153に予圧を付与している。
【0023】
図9および
図10に示すように、下ケーシング130、軸受ホルダー152、およびハウジング151は、ハウジング151をインサート材として樹脂で一体に成形されている。ハウジング151の外周部には、径方向外側に突出するフランジ部151aが、次に説明するエンドキャップ取付部135の箇所を除いた全周に亘って形成されている(
図3および
図9参照)。
【0024】
下ケーシング130の外周部には、平坦なエンドキャップ取付部135,136が周方向に間隔をおいて形成されている。エンドキャップ取付部135,136には、軸方向に延在するネジ穴135a,136aが形成されている。また、
図10に示すように、下ケーシング130の外周部には、径方向外側に突出するコネクタハウジング受137が形成され、コネクタハウジング受137の中央部には貫通孔137aが形成されている。
【0025】
4.エンドキャップの構成
図6~
図8に示すように、下ケーシング130にはエンドキャップ180が装着されている。
図7はエンドキャップ180示す斜視図で、
図8はエンドキャップ180に回路基板164を装着した状態を示す斜視図である。なお、
図6は
図1においてカバー190を省略して記載したものである。
【0026】
エンドキャップ180は樹脂製であり、略円形の外側環状部181と内側環状部182と、これら外側環状部181および内側環状部182に架設された放射状リブ183とを備えている。エンドキャップ180の一方端の内側環状部182が屈曲した部分は、軸方向に一段下がった段差が設けられて回路基板載置部184とされている。
【0027】
エンドキャップ180には、コネクタピン185をインサート材としてコネクタハウジング186が樹脂で一体に成形されている。コネクタピン185は略コ字状をなし、一方端はエンドキャップ180から突出し、他方端はコネクタハウジング186内に突出している。そして、回路基板載置部184に回路基板164を載置することで、回路基板164に形成した貫通孔164b(
図6参照)からコネクタピン185が突出する。
【0028】
コネクタハウジング186の裏面には、軸方向に突出する突起186aが形成されている(
図5参照)。コネクタハウジング186の裏面は、コネクタハウジング受137に接触し、突起186aは、コネクタハウジング受137の貫通孔137aに挿入されている。
【0029】
エンドキャップ180には、複数の放射状リブ183に亘って中性点パターン部187が形成されている。中性点パターン部187は、導電性のある金属(例えば銅)の帯をインサート材としてエンドキャップ180と一体に成形し、3箇所でパッド187aを露出させたものである。パッド187aには、コイル163の端線を通すための貫通孔187bが形成されている。
【0030】
エンドキャップ180の外周部には、径方向外側に突出するフランジ部188が形成され、フランジ部188には貫通孔188aが形成されている。また、回路基板載置部184のコネクタハウジング186に隣接した箇所にも貫通孔185aが形成されている。
【0031】
図8に示すように、エンドキャップ180の回路基板載置部184には、回路基板164が載置されている。回路基板164は、エンドキャップ180の
図7における右側のフランジ部188に対応するフランジ部165を備えており、フランジ部165には貫通孔188aと同芯の貫通孔165aが形成されている。また、回路基板164には、エンドキャップ180の貫通孔185aと同芯の貫通孔164aが形成されている。貫通孔164aの周囲には、GNDパターンが形成され、GNDパターンには、回路基板164に接続した接地用の接続端子が接続されている。
【0032】
図6に示されている回路基板164の裏面が実装面である。実装面には、モータ150を駆動するための制御回路が搭載されている。回路基板164には、コネクタピン185の一端部を挿通させるコネクタピン挿入孔164b(
図6参照)が形成され、コネクタピン185の一方端はそこで半田付けされている。また、回路基板164には、3相ブラシレスモータであるモータ150のU相、V相、W相の各コイル163の端末を通すコイル端末挿入孔164cが形成されている。コイル163の端末は、中性点パターン部187のパッド187aに形成した貫通孔187bに挿通さ、そこで半田付けされている。これにより、3相のコイル163のコモン結合が構成されている。
【0033】
エンドキャップ180の外周には、径方向外側に突出する複数の突起189が周方向に間隔を開けて形成されている。突起189の外周面は、
図9に示す下ケーシング130の内周面に密着してエンドキャップ180と下ケーシング130との芯を合わせるとともに、突起189以外の部分と下ケーシング130の内周面との間に、カバー190の円筒部192が挿入される隙間138(
図6参照)を形成する。
【0034】
5.カバーの構成
カバー190は、回路基板164の実装面に実装された電子部品の保護、及び内部への異物侵入を防止するものであり、導電性のある金属から構成されている。カバー190は、
図11に示すように、略円板状の平板部191と、平板部191の周縁部から軸方向に延在する円筒部(接触部)192とを備えている。
【0035】
平板部191の周縁部には、径方向外側に突出するフランジ部193が形成され、フランジ部193の一側には、軸方向に凹む凹部194が形成されている。
図3に示すように、凹部194には、貫通孔194aが形成されている。凹部194の周縁部には、軸方向の回路基板164側に延在する延在部194bが形成されている。延在部194bの軸方向端面は下ケーシング130に当接し、内周面は回路基板164に対向している。また、平板部191の周縁部には、回路基板164のフランジ部165とエンドキャップ180のフランジ部188を覆うフランジ部196が形成されている。
【0036】
貫通孔194aは、回路基板164に形成した貫通孔164a,165aと、エンドキャップ180に形成した貫通孔185a,188aと位置が一致しており、それら貫通孔194a,164a,165a,185a,188aを挿通させたネジ195を下ケーシング130に形成したネジ穴139にねじ込むことにより、カバー190、回路基板164、およびエンドキャップ180は、下ケーシング130に共締めされている。なお、ネジ195はステンレス鋼などの導電性材料で構成されている。
【0037】
円筒部192には、複数の切欠192aが周方向に間隔を開けて形成されている。切欠192aは、エンドキャップ180の突起189と、コネクタハウジング186の首部を避けるために形成されている。これにより、円筒部192は、エンドキャップ180の突起189同士の間に挿入されてハウジング151と接触している。
【0038】
図3の左側に示すように、カバー190の円筒部192の端面は、ハウジング151のフランジ部(接触部)151aと接触している。これにより、回路基板164のGNDパターン→カバー190→ハウジング151と導通し、回路基板164のGNDパターンが基準電位(例えばゼロボルト)に設定される。
【0039】
6.遠心送風機の組立方法
i)回路基板とエンドキャップとの結合
エンドキャップ180の回路基板載置部184に回路基板164を載置して結合する。具体的には、エンドキャップ180に植設された複数のコネクタピン185の一方端をそれぞれ回路基板164の実装面側からコネクタピン挿入孔164bに挿入し、回路基板164の反実装面側から突出したそれぞれのコネクタピン185の先端を半田で接続する。この作業によって、エンドキャップ180と回路基板164が結合される。なお、コネクタピン185の他方端は、コネクタハウジング183の中に突出している。
【0040】
ii)モータと回路基板との結合
モータ150を、ステータコア151を介してハウジング151の内周面に固定する。その際に、ロータ170のシャフト171を、軸受ホルダー152に装着されたボールベアリング153の内輪に圧入や接着等の手段で固定する。
【0041】
モータ150のステータコア161にインシュレータ162を介して巻回したコイル163のU相、V相、W相それぞれの一方側の端末と、中性点となるそれぞれの他方側の端末を軸方向に直立させた状態にし、U相、V相、W相それぞれの一方側の端末は、回路基板164の反実装面側から所定のコイル端末挿入孔164cに挿入すると共に、中性点結合部となる他方側の端末は、エンドキャップ180に埋設した中性点パターン部187の所定のパッド187aの貫通孔187bに挿入する。そして、実装面側に突出したU相、V相、W相それぞれの一方側の端末の先端をコイル端末挿入孔164cにおいて半田付けすると共に、中性点結合部となる他方側の端末の先端を中性点パターン部187のパッド187aに半田付けする。
【0042】
iii)下ケーシングへのエンドキャップおよびカバーの取付
下ケーシング130のエンドキャップ取付部136にエンドキャップ180のフランジ部188を合わせ、その状態でエンドキャップ180を下ケーシング130の内側にハウジング151側へ向けて挿入する。これにより、エンドキャップ180は、ハウジング151のフランジ部151aに当接する。
【0043】
次に、カバー190の円筒部192を下ケーシング130とエンドキャップ180との隙間138に挿入して、円筒部192をハウジング151のフランジ部151aに当接させる。これにより、回路基板164の貫通孔164aの周囲に形成したGNDパターンとカバー190とが接触して導通状態になるとともに、カバー190の円筒部192とハウジング151とが接触して導通状態となる。その状態で、カバー190の貫通孔194a、回路基板164の貫通孔164a,165a、およびエンドキャップ180の貫通孔185a,188aにネジ195を挿通し、下ケーシング130のネジ穴139にねじ込む。これにより、エンドキャップ180とカバー190が下ケーシング130に結合される。
【0044】
iv)インペラのモータへの結合
下ケーシング130の開口側(上ケーシング120との合わせ面側)から、インペラ140をシャフト171に結合させる。具体的には、ボールベアリング153に予圧を付与するための圧縮コイルばね154をシャフト171に装着し、インペラ140に設けたブッシュ145の貫通孔にシャフト171の先端を圧入して、インペラ140をシャフト171に結合する。
【0045】
v)上下ケーシングの結合
下ケーシング130の突起132の凹部133に上ケーシング120の爪部121aを嵌合し、両者を軸方向に向かって接近させる。すると、下ケーシング130の環状凹部131が爪部121aによって径方向に押し拡げられ、爪部121aが下ケーシング130の貫通孔134に達すると環状凹部131が弾性復帰し、爪部121aが貫通孔134の縁部と係合して上下ケーシング120,130が互いに結合する。
【0046】
7.効果
上記構成の遠心送風機100によれば、コイル163のU相、V相、W相の中性点となるそれぞれの端末(コモン線)を、エンドキャップ180に埋設した中性点パターン部187に電気的に接続するため、作業が容易であり、コイルの端末を束ねて撚り合わせ、チューブを被せる作業を必要としない。
【0047】
上記実施形態では、エンドキャップ180は、中性点パターン部187をインサート材とした射出成形品であって、中性点パターン部187は、コイル163の他方端の端末が接続されるパッド187aを有し、パッド187aはエンドキャップ180の外側に露出し、パッド187a以外は、エンドキャップ180に埋設されているから、簡単な構成でコモン線結合部を他の部材から確実に絶縁することができる。
【0048】
また、エンドキャップ180は、下ケーシング130の開口部の内周に接触する略円形の外側環状部181と、外側環状部181の内側に配置された内側環状部182と、内側環状部182および外側環状部181に架設された複数の放射状リブ183とを備え、中性点パターン部187は、複数の放射状リブ183に亘って一体に成形されているから、中性点パターン部187がエンドキャップ180に強固に固定されている。
【0049】
さらに、エンドキャップ180は、回路基板164を載置する回路基板載置部184を備え、回路基板164は、コイル端末挿入孔164cを備えるとともに、実装面をモータ150側に向けた状態で回路基板載置部184に載置されているから、回路基板164が回路基板載置部184に確実に位置決めされる。加えて、3相のコイルの各相の一方側の端末は、実装面側からコイル端末挿入孔に挿入されて半田付けされているから、半田付けの作業が容易である。
【0050】
上記実施形態では、中性点パターン部187のパッド187aは貫通孔187bを備え、3相のコイルの各相の他方端の端末は、実装面側からパッド187aの貫通孔187bに挿入されて半田付けされているから、半田付けの作業が容易である。
【0051】
また、中性点パターン部187は、回路基板載置部184に近接して配置されているから、コイル163のU相、V相、W相それぞれの一方側の端末と、中性点となるそれぞれの他方側の端末の位置が近くなり、端末の取り回しが容易になる。
【0052】
8.変更例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく以下のように種々の変更が可能である。
i)中性点パターン部187はエンドキャップ180と一体に成形されたものである必要はなく、エンドキャップ180に接着や溶着等の手段で固着されたものであってもよい。
【0053】
ii)コイル163のU相、V相、W相それぞれの他方側の端末を貫通孔187bに固定する方法は、半田付けに限らない。たとえば、パッド187aの貫通孔187bに隣接してカシメ片を立設しておき、カシメ片を、端末を貫通孔187bに通した後にカシメ、端末をパッド187aに固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、家電機器、OA機器、産業用や車両用の空気調和装置における送風、換気、冷却等に用いられる遠心送風機に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
100…遠心送風機、110…ケーシング、113…流路、114…吸込口、115…吹出口、116…固定脚、116a…カラー、120…上ケーシング、121…環状凸部、121a…爪部、130…下ケーシング、131…環状凹部、132…突起、133…凹部、134…貫通孔、135,136…エンドキャップ取付部、135a,136a…ネジ穴、137…コネクタハウジング受、137a…貫通孔、138…隙間、139…ネジ穴、140…インペラ、141…羽根、142…ハブ、143…連結リング、144…ボス部、144a…空間、145…ブッシュ、148…フランジ部、150…モータ、151…ハウジング、151a…フランジ部(接触部)、152…軸受ホルダー、153…ボールベアリング、154…圧縮コイルバネ、160…ステータ、161…ステータコア、161a…コアバック部、161b…ティース、162…インシュレータ、163…コイル、164…回路基板、164a…貫通孔、164b…コネクタピン挿入孔、164c…コイル端末挿入孔、165…フランジ部、165a…貫通孔、170…ロータ、171…シャフト、172…ロータ支持部、172a…ボス部、173…ロータマグネット、180…エンドキャップ、181…外側環状部、182…内側環状部、183…放射状リブ、184…回路基板載置部、185…コネクタピン、185a…貫通孔、186…コネクタハウジング、186a…突起、187…中性点パターン部、187a…パッド、187b…貫通孔、188…フランジ部、188a…貫通孔、189…突起、190…カバー、191…平板部、192…円筒部(接触部)、192a…切欠、193…フランジ部、194…凹部、194a…貫通孔、194b…延在部、195…ネジ、196…フランジ部。