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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142932
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】断熱配管
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/153 20060101AFI20241003BHJP
   F16L 59/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16L59/153
F16L59/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055352
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】林 亮佑
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA01
3H036AB33
3H036AB35
3H036AC06
3H036AD09
3H036AE07
(57)【要約】
【解決手段】断熱配管10は、内筒20と外筒30とを備える。内筒20は、軸方向に互いに間隔を置いて配置された一対の内管部材22、24と、一対の内管部材22、24の間に配置された第1ベローズ25と、軸方向における内筒20の膨張及び収縮を所定範囲に規制する規制機構40とを備える。規制機構40は、一対の膨出部28の少なくとも一方と摺動可能である。外筒30は、第2ベローズ34を有する一対の外管部材32、33と、第1ベローズ25及び規制機構40を収容する第2円筒部38とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、前記内筒を内包する外筒とを備え、前記外筒の両端と前記内筒とが接合されて前記外筒の内部が密閉されている断熱配管であって、
前記内筒は、
第1円筒部と、前記第1円筒部の外周面から径方向外側に突出した膨出部とを有し、前記内筒の軸方向に互いに間隔を置いて配置された一対の内管部材と、
前記一対の内管部材の間に配置され、配管の内部を流れる流体の温度による前記配管の熱膨張又は熱収縮を吸収する第1ベローズと、
一方の前記内管部材の前記膨出部と、他方の前記内管部材の前記膨出部とに連結され、前記軸方向における前記内筒の膨張及び収縮を所定範囲に規制する規制機構と、を備え、
前記規制機構は、一対の前記膨出部の少なくとも一方と摺動可能であり、
前記外筒は、
前記内筒の前記軸方向に沿って伸縮可能な第2ベローズを有し、前記一対の内管部材にそれぞれ接合された一対の外管部材と、
前記一対の外管部材の間に配置され、前記第1ベローズ及び前記規制機構を収容する第2円筒部と、を備える、断熱配管。
【請求項2】
請求項1記載の断熱配管において、
前記規制機構は、前記内筒の前記軸方向に沿って延在する連結ロッドを有し、
前記膨出部は、前記軸方向に貫通した貫通孔を有し、
前記貫通孔に前記連結ロッドの一部が摺動可能に挿通されている、断熱配管。
【請求項3】
請求項2記載の断熱配管において、
前記規制機構は、前記軸方向に互いに間隔を置いて前記連結ロッドの外周部に固定され前記外周部から突出した一対の規制部を有し、
前記連結ロッドのうち前記一対の規制部の間の部分が前記貫通孔に挿通されている、断熱配管。
【請求項4】
請求項1記載の断熱配管において、
前記規制機構は、前記内筒の周方向に互いに間隔を置いて複数配置されている、断熱配管。
【請求項5】
請求項1記載の断熱配管において、
前記内筒と前記外筒との間の空間は、所定の気圧に減圧されている、断熱配管。
【請求項6】
請求項1記載の断熱配管において、
前記内筒と前記外筒との間の空間には、不活性ガスが充填されている、断熱配管。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の断熱配管において、
前記第1ベローズの波形と前記第2ベローズの波形とは、互いに形状が異なる、断熱配管。
【請求項8】
請求項7記載の断熱配管において、
前記第1ベローズの軸方向に沿った断面は、C字状又はU字状に湾曲する山部とC字状又はU字状に湾曲する谷部とを有する第1波形断面であり、
前記第2ベローズの軸方向に沿った断面は、V字状に折れ曲がる山部とV字状に折れ曲がる谷部とを有する第2波形断面である、断熱配管。
【請求項9】
請求項8記載の断熱配管において、
前記第2ベローズは、円環皿形状の複数の板材が直列に連結されて構成され、互いに隣接する前記板材の外周部同士が連結され、互いに隣接する前記板材の内周部同士が連結されている、断熱配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱配管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二重管構造を有する断熱配管において、温度変化に伴う軸方向の変形(熱膨張又は熱収縮)を吸収するためにベローズを備える構成は、公知である。長い範囲で配管を敷設する場合、単位配管としての断熱配管が複数、順次接続される。各ベローズの伸縮量が不均一になることを抑制するために、例えば特許文献1では、配管に突起と抑止金具を設ける構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭58-9164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図1に示された構成では、二重管の外側を構成する外管(特許文献1では、「保護外管3」)とは別に、抑止金具が取り付けられた筒状部材(特許文献1では、「外管12」)が必要となる。このため、配管全体の外径が大きくなるとともに、配管の部品点数が多くなる。また、特許文献1の図4に示された構成では、一方向(内管の軸方向中央に設けられたベローズが伸びる方向)への変形にしか対応できない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内筒と、前記内筒を内包する外筒とを備え、前記外筒の両端と前記内筒とが接合されて前記外筒の内部が密閉されている断熱配管であって、前記内筒は、第1円筒部と、前記第1円筒部の外周面から径方向外側に突出した膨出部とを有し、前記内筒の軸方向に互いに間隔を置いて配置された一対の内管部材と、前記一対の内管部材の間に配置され、配管の内部を流れる流体の温度による前記配管の熱膨張又は熱収縮を吸収する第1ベローズと、一方の前記内管部材の前記膨出部と、他方の前記内管部材の前記膨出部とに連結され、前記軸方向における前記内筒の膨張及び収縮を所定範囲に規制する規制機構と、を備え、前記規制機構は、一対の前記膨出部の少なくとも一方と摺動可能であり、前記外筒は、前記内筒の軸方向に沿って伸縮可能な第2ベローズを有し、前記一対の内管部材にそれぞれ接合された一対の外管部材と、前記一対の外管部材の間に配置され、前記第1ベローズ及び前記規制機構を収容する第2円筒部と、を備える、断熱配管である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、断熱配管が適用される配管の熱膨張又は熱収縮による第1ベローズの変形量を所定の範囲内に規制する規制機構が、外筒の内部(外筒と内筒との間に形成された空間)に配置されているため、規制機構を設けることに伴う断熱配管の外径の増大を抑制することができる。規制機構が、第1ベローズの変形量(伸縮量)を所定範囲に規制するため、熱膨張又は熱収縮の両方について変形量規制機能を発揮することができる。内筒と規制機構とが一体化されているため、断熱配管を組み立てる際に、規制機構と一体化された内筒を外筒内に配置でき、また、内筒の内管部材を外筒の外管部材の開口部に位置決めすることができる。このため、断熱配管を容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る断熱配管の断面図である。
図2図2は、内管部材の斜視図である。
図3図3は、断熱配管の適用例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す本実施形態に係る断熱配管10は、低温又は高温の流体を移送するための移送ラインに使用される。移送対象の流体は、液体又は気体である。この場合、液体は、例えば、液体燃料(極低温の液体窒素等)であり得る。気体は、例えば、排気ガス又は気体冷媒であり得る。
【0010】
断熱配管10は、内筒20と、内筒20を内包する外筒30とを備える。外筒30の両端と内筒20とが接合されて外筒30の内部が密閉されている。内筒20と外筒30との間の空間が、断熱室12となっている。断熱室12は、所定の気圧に減圧されており、真空状態となっている。断熱室12が真空状態とされる代わりに、断熱室12には不活性ガスが充填されていてもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスが挙げられる。断熱室12が減圧されていなくても断熱効果が得られるため、断熱室12には大気圧の空気が封入されていてもよい。
【0011】
内筒20の中空部が、流体の通路となっている。内筒20は、一対の内管部材22、24と、一対の内管部材22、24の間に配置された第1ベローズ25とを有する。一対の内管部材22、24は、内筒20の軸方向に互いに間隔を置いて配置されている。一対の内管部材22、24の各々は、第1円筒部26と、第1円筒部26の外周面から径方向外側に突出した膨出部28とを有する。
【0012】
第1円筒部26は、内径及び外径が軸方向に略一定のストレート管である。膨出部28は、第1円筒部26の軸方向の一端部から径方向外方に突出する。膨出部28は、軸方向に貫通した貫通孔29を有する。
【0013】
図2に示すように、膨出部28は、第1円筒部26の軸方向の一端部における外周面から径方向外方に突出し且つ周方向に延在する円形リング状のフランジ部281と、フランジ部281の外周面から径方向外方に突出した突起部282とを有する。本実施形態では、周方向に間隔を置いて複数の突起部282が配置されている。各突起部282に貫通孔29が設けられている。従って、各内管部材22、24は、複数の貫通孔29を有する。
【0014】
図2では、120°間隔で3つの突起部282が配置されているが、突起部282の個数と配置間隔はこれに限らない。各内管部材22、24において、突起部282は1つのみ設けられてもよく、4つ以上設けられてもよい。
【0015】
図1に示すように、第1ベローズ25の軸方向の一端部は、一方の内管部材22の一端部(膨出部28が設けられた側の端部)に接合されている。第1ベローズ25の軸方向の他端部は、他方の内管部材24の一端部(膨出部28が設けられた側の端部)に接合されている。第1ベローズ25は、内筒20の内部を流れる流体の温度による内筒20の熱膨張又は熱収縮を吸収する。
【0016】
第1ベローズ25は、第1ベローズ25の外周部を構成する複数の山部251と、第1ベローズ25の内周部を構成する複数の谷部252とを有する。複数の山部251と複数の谷部252とが軸方向に交互に配置され且つ互いに連結されることで、第1ベローズ25は、軸方向に伸縮性を有する。第1ベローズ25の軸方向長さは、内管部材22、24の軸方向長さよりも長い。なお、第1ベローズ25の軸方向長さは、内管部材22、24の軸方向長さ以下でもよい。
【0017】
第1ベローズ25の軸方向に沿った断面は、円弧状に湾曲する山部251と、円弧状に湾曲する谷部252とを有する第1波形断面である。このため、第1波形断面は、S字を軸方向に複数繋げた形状である。第1ベローズ25の山部251は、C字状又はU字状の断面形状を有する。第1ベローズ25の谷部252は、C字状又はU字状の断面形状を有する。第1ベローズ25は、上記のような第1波形断面を有するため、内筒20の軸方向の伸縮性だけでなく、内筒20の軸線Axと垂直な方向への可撓性も有する。すなわち、第1ベローズ25は、曲がるような変形も可能である。第1ベローズ25は、上記の第1波形断面を有するため、断熱室12が減圧されていることによって第1ベローズ25にかかる圧力と、内筒20内を流れる流体の圧力とに耐え得る耐圧性を有する。本実施形態では、山部251と谷部252とを繋ぐ中継部253は、内筒20の軸線Axと垂直な面に対して傾斜している。なお、中継部253は、内筒20の軸線Axと垂直な面と平行でもよい。
【0018】
内筒20は、一対の内管部材22、24に連結された規制機構40をさらに備える。規制機構40は、一方の内管部材22の膨出部28と、他方の内管部材22の膨出部28とに連結されている。規制機構40は、軸方向における内筒20の膨張及び収縮を所定範囲に規制する。規制機構40は、一対の膨出部28の少なくとも一方と摺動可能である。規制機構40は、内筒20の周方向に互いに間隔を置いて複数配置されている。
【0019】
規制機構40は、内筒20の軸方向に沿って延在する連結ロッド42を有する。一方の内管部材22の貫通孔29に、連結ロッド42の一端側が挿通されている。他方の内管部材24の貫通孔29に、連結ロッド42の他端側が挿通されている。
【0020】
規制機構40は、一対の規制部44(第1規制部44A及び第2規制部44B)をさらに有する。一対の規制部44は、軸方向に互いに間隔を置いて連結ロッド42の外周部に固定され、連結ロッド42の外周部から突出している。連結ロッド42のうち一対の規制部44の間の部分が貫通孔29に挿通されている。一対の規制部44は、連結ロッド42の一端側に配置されている。本実施形態では、各規制部44は、連結ロッド42に螺合した2つのナット45により構成されている。各規制部44を構成する2つのナット45は、軸方向に隣接し且つ互いに当接している。なお、規制部44の態様は、ナット45に限らず、例えば、連結ロッド42の外周部に一体成形された凸部であってもよい。
【0021】
一対の規制部44の間隔は、膨出部28(突起部282)の軸方向の厚みよりも大きい。このため、連結ロッド42の一端側は、一方の内管部材22の貫通孔29に対して軸方向に摺動可能に挿通されている。内筒20の熱膨張時及び熱収縮時の軸方向の変形量の上限は、一対の規制部44の間隔によって規定される。具体的には、第1ベローズ25が軸方向に伸ばされる方向に力を受けるとき、第1ベローズ25の伸張に伴って一方の内管部材22の膨出部28が第1規制部44Aに当接することで、第1ベローズ25がそれ以上伸ばされることが阻止される。第1ベローズ25が軸方向に潰される方向に力を受けるとき、第1ベローズ25の収縮に伴って一方の内管部材22の膨出部28が第2規制部44Bに当接することで、第1ベローズ25がそれ以上収縮することが阻止される。
【0022】
規制機構40は、連結ロッド42の他端側を他方の内管部材24の膨出部28(具体的には、突起部282)に固定する固定部材46をさらに有する。固定部材46は、突起部282の一端面に当接する第1固定ナット461と、突起部282の他端面に当接する第2固定ナット462とを有する。第1固定ナット461及び第2固定ナット462は、連結ロッド42に螺合している。固定部材46は、連結ロッド42の他端側と他方の内管部材24の膨出部28とが軸方向に相対移動することを阻止する。このため、連結ロッド42の他端側は、他方の内管部材24の貫通孔29に対して摺動不可能に挿通されている。連結ロッド42の他端側を他方の内管部材24の膨出部28(突起部282)に固定するための固定手段は、上記の態様に限らず、例えば溶接でもよい。なお、連結ロッド42の一端側と同様に、連結ロッド42の他端側も、他方の内管部材24の貫通孔29に対して摺動可能に挿通されてもよい。
【0023】
外筒30は、内筒20と同軸上に配置されている。内筒20と外筒30とにより二重管が構成されている。外筒30は、一対の外管部材32、33と、一対の外管部材32、33の間に配置された第2円筒部38とを有する。一対の外管部材32、33は、一対の内管部材22、24にそれぞれ接合されている。一対の外管部材32、33の各々は、内筒20の軸方向に沿って伸縮可能な第2ベローズ34を有する。各外管部材32、33は、第2ベローズ34の一端に接合された大径リング部材36と、第2ベローズ34の他端に接合された小径リング部材37とをさらに有する。
【0024】
第2ベローズ34は、第2ベローズ34の外周部を構成する複数の山部341と、第2ベローズ34の内周部を構成する複数の谷部342とを有する。複数の山部341と複数の谷部342とが軸方向に交互に配置され且つ互いに連結されることで、第2ベローズ34は、軸方向に伸縮性を有する。第2ベローズ34の内径は、内管部材22、24の第1円筒部26の外径よりも大きい。
【0025】
第2ベローズ34の波形状は、第1ベローズ25の波形状と異なる。第2ベローズ34の軸方向に沿った断面は、V字状に折れ曲がる山部341とV字状に折れ曲がる谷部342とを有する第2波形断面である。このため、第2波形断面は、互いに逆向きのV字を軸方向に複数繋げた形状である。第2ベローズ34の外径は、第2円筒部38の外径以下である。第2ベローズ34は、円環皿形状の複数の板材340が直列に連結されて構成されている。具体的には、互いに隣接する板材340の外周部同士が連結され、互いに隣接する板材340の内周部同士が連結されている。第2ベローズ34のばね定数は、第1ベローズ25のばね定数よりも小さい。
【0026】
一方の外管部材32の大径リング部材36は、第2円筒部38の一端部に接合されている。他方の外管部材33の大径リング部材36は、第2円筒部38の他端部に接合されている。各大径リング部材36の外径は、第2円筒部38の外径と略同一である。大径リング部材36は、第2円筒部38に接合された円環状の第1外周壁361と、第1外周壁361の第2円筒部38とは反対側の端部から径方向内方に突出した円環状の第1側壁362とを有する。第1側壁362の内周部が、第2ベローズ34の一端に接合されている。
【0027】
各外管部材32、33において、第2ベローズ34の他端に小径リング部材37が接合されている。小径リング部材37の外径は、第2円筒部38の外径及び第2ベローズ34の外径よりも小さい。小径リング部材37は、第2ベローズ34の他端に接合された円環状の第2外周壁371と、第2外周壁371の第2ベローズ34とは反対側の端部から径方向内方に突出した円環状の第2側壁372とを有する。第2側壁372の内周部が、内管部材22、24の第1ベローズ25とは反対側の端部において、内管部材22、24の外周部に接合されている。外管部材32、33(具体的には、小径リング部材37の第2側壁372)から内管部材22、24の第1円筒部26が軸方向に突出している。
【0028】
第2円筒部38は、第1ベローズ25及び規制機構40を収容する。第2円筒部38は、内径及び外径が軸方向に略一定のストレート管である。第2円筒部38の内径は、第2円筒部38の内周面が内管部材22、24の膨出部28(突起部282)及び規制機構40に接触しない大きさに設定されている。すなわち、内筒20の軸線Axから第2円筒部38の内周面までの距離(第2円筒部38の内径の半径)は、内筒20の軸線Axと内管部材22、24の突起部282の突端との距離、及び、内筒20の軸線Axと、規制機構40のうち軸線Axから最も離れた箇所との距離よりも大きい。第2円筒部38の軸方向長さは、外管部材32、33の軸方向長さよりも長い。
【0029】
断熱配管10の適用例の1つを図3に示す。液化冷凍機60と被供給機器62とに移送ライン64が接続されている。液化冷凍機60から被供給機器62へと移送ライン64を介して極低温冷媒が供給される。極低温冷媒が流れる移送ライン64の熱収縮を吸収するため、移送ライン64には熱収縮構造が備えられる。具体的には、移送ライン64は、複数の配管部材66(配管本体)と、複数の配管部材66の間に継手装置として配置された複数の断熱配管10とを有する。図1に示すように、断熱配管10には、第1ベローズ25の熱膨張又は熱収縮による断熱配管10の変形量を所定の範囲内に規制する規制機構40が備えられるため、複数の断熱配管10において、第1ベローズ25の伸縮量が不均一になることを抑制することができる。
【0030】
断熱配管10は、自動車等の排気管の継手装置として適用されてもよい。断熱配管10は、継手装置として適用されることに限らない。複数の断熱配管10が相互に連結されて長尺な配管が構成されてもよい。
【0031】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0032】
図1に示すように、断熱配管10が適用される配管の熱膨張又は熱収縮による内筒20(第1ベローズ25)の変形量を所定の範囲内に規制する規制機構40が、外筒30の内部(外筒30と内筒20との間に形成された空間)に配置されているため、規制機構を設けることに伴う断熱配管10の外径の増大を抑制することができる。規制機構40が、第1ベローズ25の変形量(伸縮量)を所定範囲に規制するため、熱膨張又は熱収縮の両方について変形量規制機能を発揮することができる。内筒20と規制機構40とが一体化されているため、断熱配管10を組み立てる際に、規制機構40と一体化された内筒20を外筒30内に配置でき、また、内筒20の内管部材22、24を外筒30の外管部材32、33の開口部に位置決めすることができる。このため、断熱配管10を容易に組み立てることができる。
【0033】
規制機構40は、内筒20の軸方向に沿って延在する連結ロッド42を有する。膨出部28は、軸方向に貫通した貫通孔29を有する。貫通孔29に連結ロッド42の一部が摺動可能に挿通されている。この構成により、連結ロッド42が貫通孔29によって軸方向に案内されるため、配管の熱膨張時及び熱収縮時において変形量規制機能を適切に発揮することができる。
【0034】
規制機構40は、軸方向に互いに間隔を置いて連結ロッド42の外周部に固定され外周部から突出した一対の規制部44を有する。連結ロッド42のうち一対の規制部44の間の部分が貫通孔29に挿通されている。この構成により、連結ロッド42に対する突起の可動範囲が一対の規制部44の間で規定されるため、内筒20の膨張及び収縮を所定範囲に効果的に規制することができる。
【0035】
規制機構40は、内筒20の周方向に互いに間隔を置いて複数配置されている。この構成により、断熱配管10の熱膨縮時における規制機構40に対する規制負荷が周方向に分散されるため、変形量規制機能を一層良好に発揮することができる。
【0036】
内筒20と外筒30との間の空間が所定の気圧に減圧されている場合、高い断熱効果が得られる。
【0037】
内筒20と外筒30との間の空間に不活性ガスが充填されている場合、高い断熱効果が得られる。
【0038】
第1ベローズ25の波形と第2ベローズ34の波形とは、互いに形状が異なる。この構成により、内筒20と外筒30とでそれぞれ最適のベローズ形状を採用することで、断熱配管10全体として一層良好に熱膨張及び熱収縮の吸収機能を発揮することができる。
【0039】
第1ベローズ25の軸方向に沿った断面は、円弧状に湾曲する山部251と円弧状に湾曲する谷部252とを有する第1波形断面である。第2ベローズ34の軸方向に沿った断面は、V字状に折れ曲がる山部341とV字状に折れ曲がる谷部342とを有する第2波形断面である。山部251と谷部252が円弧状に湾曲する波形断面は、軸方向から受ける外力に対しては潰れるよりも全体的に撓むように変形しやすいため、内部を流れる流体から圧力を受ける内管の第1ベローズ25の断面形状として好適である。山部341と谷部342がV字状に折れ曲がる波形断面は、軸方向から受ける外力に対して潰れやすいため、断熱配管10全体の変形を受ける第2ベローズ34の断面形状として好適である。
【0040】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0041】
(付記1)
内筒(20)と、前記内筒を内包する外筒(30)とを備え、前記外筒の両端と前記内筒とが接合されて前記外筒の内部が密閉されている断熱配管(10)であって、前記内筒は、第1円筒部(26)と、前記第1円筒部の外周面から径方向外側に突出した膨出部(28)とを有し、前記内筒の軸方向に互いに間隔を置いて配置された一対の内管部材(22、24)と、前記一対の内管部材の間に配置され、前記配管の内部を流れる流体の温度による前記配管の熱膨張又は熱収縮を吸収する第1ベローズ(25)と、一方の前記内管部材の前記膨出部と、他方の前記内管部材の前記膨出部とに連結され、前記軸方向における前記内筒の膨張及び収縮を所定範囲に規制する規制機構(40)と、を備え、前記規制機構は、一対の前記膨出部の少なくとも一方と摺動可能であり、前記外筒は、前記内筒の前記軸方向に沿って伸縮可能な第2ベローズ(34)を有し、前記一対の内管部材にそれぞれ接合された一対の外管部材(32、33)と、前記一対の外管部材の間に配置され、前記第1ベローズ及び前記規制機構を収容する第2円筒部(38)と、を備える。この構成により、断熱配管が適用される配管の熱膨張又は熱収縮による第1ベローズの変形量を所定の範囲内に規制する規制機構が、外筒の内部(外筒と内筒との間に形成された空間)に配置されているため、規制機構を設けることに伴う断熱配管の外径の増大を抑制することができる。規制機構が、第1ベローズの変形量(伸縮量)を所定範囲に規制するため、熱膨張又は熱収縮の両方について変形量規制機能を発揮することができる。内筒と規制機構とが一体化されているため、断熱配管を組み立てる際に、規制機構と一体化された内筒を外筒内に配置でき、また、内筒の内管部材を外筒の外管部材の開口部に位置決めすることができる。このため、断熱配管を容易に組み立てることができる。
【0042】
(付記2)
付記1記載の断熱配管において、前記規制機構は、前記内筒の前記軸方向に沿って延在する連結ロッド(42)を有し、前記膨出部は、前記軸方向に貫通した貫通孔(29)を有し、前記貫通孔に前記連結ロッドの一部が摺動可能に挿通されていてもよい。この構成により、連結ロッドが貫通孔によって軸方向に案内されるため、配管の熱膨張時及び熱収縮時において変形量規制機能を適切に発揮することができる。また、配管に軸方向の荷重が入力された場合でも、連結ロッドが設けられていることにより、第1ベローズが座屈することを防止することができる。例えば、図3に示したような配管レイアウトを採用した場合に配管を構成する各部材の膨張量又は収縮量の違いにより生じる荷重は、配管に対する軸方向の荷重となり得る。
【0043】
(付記3)
付記2記載の断熱配管において、前記規制機構は、前記軸方向に互いに間隔を置いて前記連結ロッドの外周部に固定され前記外周部から突出した一対の規制部(44)を有し、前記連結ロッドのうち前記一対の規制部の間の部分が前記貫通孔に挿通されてもよい。この構成により、連結ロッドに対する突起の可動範囲が一対の規制部の間で規定されるため、内筒の膨張及び収縮を所定範囲に効果的に規制することができる。
【0044】
(付記4)
付記1~3のいずれか1つに記載の断熱配管において、前記規制機構は、前記内筒の周方向に互いに間隔を置いて複数配置されてもよい。この構成により、断熱配管の熱膨縮時における規制機構に対する規制負荷が周方向に分散されるため、変形量規制機能を一層良好に発揮することができる。
【0045】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載の断熱配管において、前記内筒と前記外筒との間の空間は、所定の気圧に減圧されてもよい。この構成により、高い断熱効果が得られる。
【0046】
(付記6)
付記1~4のいずれか1つに記載の断熱配管において、前記内筒と前記外筒との間の空間には、不活性ガスが充填されてもよい。この構成により、高い断熱効果が得られる。
【0047】
(付記7)
付記1~6のいずれか1つに記載の断熱配管において、前記第1ベローズの波形と前記第2ベローズの波形とは、互いに形状が異なってもよい。この構成により、内筒と外筒とでそれぞれ最適のベローズ形状を採用することで、断熱配管全体として一層良好に熱膨張及び熱収縮の吸収機能を発揮することができる。
【0048】
(付記8)
付記7記載の断熱配管において、前記第1ベローズの軸方向に沿った断面は、C字状又はU字状に湾曲する山部(251)とC字状又はU字状に湾曲する谷部(252)とを有する第1波形断面であり、前記第2ベローズの軸方向に沿った断面は、V字状に折れ曲がる山部(341)とV字状に折れ曲がる谷部(342)とを有する第2波形断面であってもよい。山部と谷部が円弧状に湾曲する波形断面は、軸方向から受ける外力に対しては潰れるよりも全体的に撓むように変形しやすいため、内部を流れる流体から圧力を受ける内管の第1ベローズの断面形状として好適である。山部と谷部がV字状に折れ曲がる波形断面は、軸方向から受ける外力に対して潰れやすいため、断熱配管全体の変形を受ける第2ベローズの断面形状として好適である。
【0049】
(付記9)
付記8記載の断熱配管において、前記第2ベローズは、円環皿形状の複数の板材(340)が直列に連結されて構成され、互いに隣接する前記板材の外周部同士が連結され、互いに隣接する前記板材の内周部同士が連結されてもよい。
【0050】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0051】
10…断熱配管
20…内筒
22、24…内管部材
25…第1ベローズ
26…第1円筒部
30…外筒
32、33…外管部材
34…第2ベローズ
38…第2円筒部
40…規制機構
図1
図2
図3