(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142945
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】火災報知設備用機器及び火災報知設備用機器への回路基板の取り付け方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/14 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H05K7/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055367
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】後▲藤▼ 大祐
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 裕太
【テーマコード(参考)】
5E348
【Fターム(参考)】
5E348AA13
5E348AA21
5E348AA32
5E348CC08
(57)【要約】
【課題】回路基板の取り付けにおけるねじ止めに係る作業工数を従来よりも低減できる火災報知設備用機器及び火災報知設備用機器への回路基板の取り付け方法を得る。
【解決手段】筐体と、筐体に設けられた取付面に取り付けられる回路基板と、取付面との間に回路基板の第1辺を保持する第1係止部と、取付面との間に回路基板の第1辺と交差する第2辺を保持する第2係止部とを備え、第2係止部の上面は、第1係止部と取付面との間に第1辺が差し込まれた状態の回路基板がその上に載せられたときに、回路基板をスライドさせて取付面へ落下させる傾斜面を有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に設けられた取付面に取り付けられる回路基板と、
前記取付面との間に前記回路基板の第1辺を保持する第1係止部と、
前記取付面との間に前記回路基板の前記第1辺と交差する第2辺を保持する第2係止部とを備え、
前記第2係止部の上面は、前記第1係止部と前記取付面との間に前記第1辺が差し込まれた状態の前記回路基板がその上に載せられたときに、前記回路基板をスライドさせて前記取付面へ落下させる傾斜面を有している
火災報知設備用機器。
【請求項2】
前記第1係止部は、
前記取付面から突出した第1基部と、
前記第1基部の先端から第1方向に延びる第1爪部とを有し、
前記回路基板の前記第1辺は、前記第1爪部と前記取付面との間に保持される
請求項1記載の火災報知設備用機器。
【請求項3】
前記第2係止部は、
前記取付面から突出した第2基部と、
前記第2基部の先端から前記第1方向と交差する方向である第2方向に延びる第2爪部とを有し、
前記傾斜面は、前記第2爪部の上面に設けられており、前記第2方向に沿って前記取付面に近づくように傾斜している
請求項2記載の火災報知設備用機器。
【請求項4】
火災報知設備用機器への回路基板の取り付け方法であって、
前記火災報知設備用機器には、
第1方向に延びる第1爪部を有し、前記第1爪部と回路基板の取付面との間に前記回路基板の第1辺を保持する第1係止部と、
前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記取付面に近づく傾斜面を上面に有し、前記取付面との間に前記第1辺と交差する前記回路基板の第2辺を保持する第2係止部とが設けられており、
前記取り付け方法は、
前記第1辺が下で前記第1辺と平行な他の辺が上になるように傾けた状態の前記回路基板を、前記第1方向の逆向きに移動させて、前記第1爪部と前記取付面との間に前記第1辺を挿入する工程と、
前記第1爪部と前記取付面との間に前記第1辺が挿入された状態の前記回路基板の前記他の辺を前記取付面に近づけて、前記回路基板を前記第2係止部の前記傾斜面の上に載せる工程と、
前記傾斜面の上に載せられて、前記傾斜面に沿って前記取付面の上に落下した前記回路基板を、前記第2方向の逆向きに移動させて、前記第2係止部と前記取付面との間に前記回路基板の前記第2辺を挿入する工程とを備えた
火災報知設備用機器への回路基板の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板が取り付けられた火災報知設備用機器、及び火災報知設備用機器への回路基板の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災受信機及び表示機等の火災報知設備用機器の筐体には、回路部品が実装された回路基板が設置される。例えば特許文献1には、回路基板の一方の側を、本体フレームに設けたねじスタッドとL字状の係止片との間に挿入し、他の係止片の係止爪を回路基板の上面に係止させている。さらに特許文献1では、回路基板に設けられたねじ挿通穴を、本体フレームに設けられたねじスタッドの上に配置して、ねじ挿通穴及びねじスタッドにねじを挿入してねじ止めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された係止片及びねじによる回路基板の固定方法のそれぞれには利点があるが、ねじ止めに係る作業工数の大きさが課題であった。すなわち、ねじ止め作業には、回路基板の位置合わせ、ねじ挿通穴へのねじの挿入、及びねじの螺合という複数の工程が生じるため、比較的作業工数が大きくなってしまう。このため、ねじ止めに係る作業工数を低減できる技術が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたものであり、回路基板の取り付けにおけるねじ止めに係る作業工数を従来よりも低減できる火災報知設備用機器及び火災報知設備用機器への回路基板の取り付け方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る火災報知設備用機器は、筐体と、前記筐体に設けられた取付面に取り付けられる回路基板と、前記取付面との間に前記回路基板の第1辺を保持する第1係止部と、前記取付面との間に前記回路基板の前記第1辺と交差する第2辺を保持する第2係止部とを備え、前記第2係止部の上面は、前記第1係止部と前記取付面との間に前記第1辺が差し込まれた状態の前記回路基板がその上に載せられたときに、前記回路基板をスライドさせて前記取付面へ落下させる傾斜面を有しているものである。
【0007】
本発明に係る火災報知設備用機器への回路基板の取り付け方法は、火災報知設備用機器には、第1方向に延びる第1爪部を有し、前記第1爪部と回路基板の取付面との間に前記回路基板の第1辺を保持する第1係止部と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記取付面に近づく傾斜面を上面に有し、前記取付面との間に前記第1辺と交差する前記回路基板の第2辺を保持する第2係止部とが設けられており、前記取り付け方法は、前記第1辺が下で前記第1辺と平行な他の辺が上になるように傾けた状態の前記回路基板を、前記第1方向の逆向きに移動させて、前記第1爪部と前記取付面との間に前記第1辺を挿入する工程と、前記第1爪部と前記取付面との間に前記第1辺が挿入された状態の前記回路基板の前記他の辺を前記取付面に近づけて、前記回路基板を前記第2係止部の前記傾斜面の上に載せる工程と、前記傾斜面の上に載せられて、前記傾斜面に沿って前記取付面の上に落下した前記回路基板を、前記第2方向の逆向きに移動させて、前記第2係止部と前記取付面との間に前記回路基板の前記第2辺を挿入する工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回路基板の第1辺が取付面と第1係止部との間に差し込まれた状態で、回路基板が第2係止部の上面に設けられた傾斜面に載せられると、傾斜面に沿って回路基板が取付面へ落下する。そして、落下した回路基板をスライドさせることで、回路基板の第1辺と交差する第2辺が、第2係止部と取付面との間に保持される。このように、回路基板の互いに交差する2つの辺が、第1係止部と第2係止部とによって保持されることにより、回路基板のねじ止めが必要な場合でもそのねじ止め箇所を低減できる。また、回路基板の互いに交差する2つの辺が固定されることにより、回路基板の取付面に対する水平方向における位置決めがなされるので、回路基板のねじ止めが必要な場合でもねじ穴の位置合わせが同時に実現され、ねじ止めに係る作業工数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る火災受信機の扉が開けられた状態の斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る回路基板及び取付面に取り付けられた回路基板の正面図である。
【
図3】実施の形態に係る第1係止部を説明する斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る第2係止部を説明する斜視図である。
【
図5】実施の形態に係る取付面への回路基板の取り付け方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、以下の実施の形態及び図示された態様に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含む。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又は相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る火災受信機1の扉3が開けられた状態の斜視図である。火災受信機1は、図示しない感知器回線及び移報回線に接続され、感知器回線に接続された火災感知器からの発報信号を受けると、報知を行うとともに、移報回線に接続された防排煙機器等を連動させる。火災受信機1は、金属板で構成された筐体を有する。筐体は、一面を開口した箱状の本体2と、本体2の開口を開閉する扉3とを有する。扉3の内面には、取付面4と、取付面4に取り付けられた回路基板5とを備える。回路基板5は、第1係止部6、第2係止部7、及びねじ8によって、取付面4に取り付けられている。
【0012】
図2は、実施の形態に係る回路基板5及び取付面4に取り付けられた回路基板5の正面図である。
図2(A)は回路基板5の正面図、
図2(B)は取付面4に回路基板5が取り付けられた状態の正面図である。
【0013】
これ以降の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語を適宜用いる。方向は、水平面に載置された回路基板5を
図2に示すように正面視した状態を基準として説明する。
図2においてX-Y平面は、水平面である。X方向は第1方向、-X方向は第1方向逆向きとも称する。また、Y方向は、X方向と直交する方向であり、第2方向とも称する。-Y方向は、第2方向逆向きとも称する。後述する
図2~5に示すZ-Z方向は、上下方向であり、Z方向は上向きとも称し、-Z方向は下向きとも称する。
【0014】
図2(A)に示すように、回路基板5は、Y方向に沿って延びる第1辺51と、第1辺51と交差又は直交するX方向に沿って延びる第2辺52と、第1辺51と平行な第3辺53とを有する。
図2の例では、回路基板5は紙面右下の領域が切り欠かれた形状であるが、回路基板5の外形は図示の例に限定されず、第1辺51、第2辺52及び第3辺53に相当する辺があればよい。回路基板5には、ねじ8が挿入される1以上のねじ穴54が設けられている。図示しないが、回路基板5の実装面には、電気回路、信号線が接続される端子、LED等の発光体、液晶画面又は操作スイッチ等の回路部品が実装され、回路基板5の被実装面には銅箔等の導体により回路パターンが形成されている。
【0015】
図2(B)に示すように、回路基板5は、取付面4に取り付けられる。取付面4は、本実施の形態では、扉3(
図1参照)の内面に設けられた合成樹脂製の部材である。なお、取付面4は、扉3の内面又は外面、本体2を構成する壁の内面又は外面、若しくは本体2内に設置される板状の部材の表面であってもよい。
【0016】
取付面4には、1以上の第1係止部6及び1以上の第2係止部7が設けられており、これらと取付面4との間に回路基板5が保持される。また、ねじ8は、
図2(A)に示したねじ穴54に挿入され、取付面4に設けられたねじ固定部(図視せず)に螺合される。
【0017】
図3は、実施の形態に係る第1係止部6を説明する斜視図である。第1係止部6は、取付面4からZ方向に突出した板状又は棒状の第1基部61と、第1基部61の上側の先端からX方向に延びる板状又は棒状の第1爪部62とを有する。第1係止部6は、Y方向に見てL字状の部材である。Z方向において第1爪部62と取付面4との間には空間があり、この空間に回路基板5の第1辺51が保持される。第1爪部62の下面は回路基板5の上面に接触してもよいし、第1爪部62の下面と回路基板5の上面との間に回路基板5の移動を容易にするための隙間があってもよい。
【0018】
図4は、実施の形態に係る第2係止部7を説明する斜視図である。第2係止部7は、取付面4からZ方向に突出した板状又は棒状の第2基部71と、第2基部71の上側の先端からY方向に延びる板状又は棒状の第2爪部72とを有する。第2係止部7の上面、すなわち本実施の形態では第2爪部72の上面には、傾斜面73が設けられている。傾斜面73は、Y方向に沿って下降して取付面4に近づいている。Z方向において第2爪部72と取付面4との間には空間があり、この空間に回路基板5の第2辺52が保持される。第2爪部72の下面は回路基板5の上面に接触してもよいし、第2爪部72の下面と回路基板5の上面との間に回路基板5の移動を容易にするための隙間があってもよい。
【0019】
第1係止部6及び第2係止部7は、取付面4と一体に構成されていてもよいし、取付面4とは別部材として形成されて取付面4に取り付けられてもよい。例えば本実施の形態では、取付面4、第1係止部6及び第2係止部7は合成樹脂で一体成形され、一体成形された部材が扉3(
図1参照)に固定されている。
【0020】
図5は、実施の形態に係る取付面4への回路基板5の取り付け方法を説明する図である。
図5(A)~(E)の順で、回路基板5が取付面4に取り付けられる。また、
図5において白抜き矢印は、回路基板5の移動方向を示している。取り付け作業の際には、取付面4が実質的に水平になるようにして作業台等に載置されているものとする。
【0021】
図5(A)に示すように、回路基板5は、第1辺51が下(
図5の紙面奥)、第3辺53が上(
図5の紙面手前)になるように傾けられた状態とされる。このとき、第3辺53は、第2係止部7の上面よりも上に位置するように傾けられる。このように傾けられた状態の回路基板5が、-X方向に移動され、第1係止部6と取付面4との間に第1辺51が挿入される。第1係止部6の第1爪部62と取付面4との間に第1辺51が挟み込まれた状態を、
図5(B)に示す。
【0022】
図5(B)に示すように傾いた状態の回路基板5を、第3辺53を下降させて水平に近づける。
図5(C)に示すように、高い位置にあった回路基板5の第3辺53が降下することにより、回路基板5の第2辺52の近傍が、第2係止部7の傾斜面73の上に載る。この状態で、回路基板5を支持していた手又は器具を回路基板5から離す。
【0023】
そうすると、
図5(D)に示すように、傾斜面73の上の回路基板5が、Y方向に向かって下降した傾斜面73に沿ってスライドし、自重により取付面4の上に落下する。この状態で、回路基板5を、-Y方向に移動させる。このようにすると、
図5(E)に示すように、回路基板5の第2辺52が、第2係止部7の第2爪部72と取付面4との間に挿入される。
【0024】
図5(E)に示す状態においては、X-X方向における回路基板5の位置が第1係止部6によって位置決めされ、Y-Y方向における回路基板5の位置が第2係止部7によって位置決めされる。これにより、回路基板5は、取付面4に対する水平方向における位置決めがなされたことになる。回路基板5が水平方向に位置決めされることによって、回路基板5のねじ穴54と、取付面4に設けられたねじ固定部(図視せず)との位置合わせも同時に実現される。その後、ねじ8をねじ穴54に挿入して締め付けることで、
図2(B)に示すように回路基板5の取付面4への取り付け作業が終了する。なお、第1係止部6及び第2係止部7によって回路基板5が十分に固定される場合には、ねじ8による固定は必要とされない。
【0025】
以上のように、本実施の形態によれば、回路基板5の第1辺51が取付面4と第1係止部6との間に差し込まれた状態で、回路基板5が第2係止部7の上面に設けられた傾斜面73に載せられると、傾斜面73に沿って回路基板5が取付面4へ落下する。そして、落下した回路基板5を-Y方向にスライドさせることで、回路基板5の第1辺51と交差する第2辺52が、第2係止部7と取付面4との間に保持される。このように、回路基板5の互いに交差する2つの辺が、第1係止部6と第2係止部7とによって保持されることにより、従来であればねじ止めが必要とされていた箇所のねじ止めが不要となる。したがって、回路基板5のねじ止めが必要な場合でも、そのねじ止め箇所を低減できる。また、回路基板5の互いに交差する第1辺51と第2辺52とが固定されることにより、回路基板5の取付面4に対する水平方向における位置決めがなされる。これにより、回路基板5のねじ止めが必要な場合でも、ねじ穴54と取付面4のねじ固定部(図視せず)との位置合わせが同時に実現されるので、ねじ止めに係る作業工数を低減できる。
【0026】
なお、本実施の形態では、火災報知設備用機器の例として火災受信機1を説明したが、発報した感知器回線を表示する表示機、又は火災受信機1と火災感知器との間の通信を中継する中継機に、本実施の形態の回路基板5の取り付けに係る構造及び方法を適用してもよい。当該構造及び方法は、筐体に回路基板が取り付けられる火災報知設備用機器以外の装置にも適用可能である。また、実施の形態では、
図2における回路基板5の紙面右側の辺(第1辺51)が第1係止部6にて固定される例を示したが、紙面左側の辺(第3辺53)が第1係止部6にて固定されてもよい。また、回路基板5の紙面下側の辺(第2辺52)が第2係止部7に固定されることに代えて、紙面上側の辺が第2係止部7に固定されてもよい。また、実施の形態では、火災報知設備用機器の一例として火災受信機1を示したが、火災報知設備用機器は火災受信機1に限定されたものではない。火災報知設備用機器は、火災受信機からの信号により、火災を表示する火災表示機などでもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 火災受信機、2 本体、3 扉、4 取付面、5 回路基板、6 第1係止部、7 第2係止部、8 ねじ、51 第1辺、52 第2辺、53 第3辺、54 ねじ穴、61 第1基部、62 第1爪部、71 第2基部、72 第2爪部、73 傾斜面。