(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142960
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車両用サイドミラー構造
(51)【国際特許分類】
B60R 1/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B60R1/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055387
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 アロンソ
【テーマコード(参考)】
3D053
【Fターム(参考)】
3D053FF24
3D053FF28
3D053GG06
(57)【要約】
【課題】モータ等の外力を何ら用いることなく、高速域では渦流に起因する空気抵抗を低減し、低中速域では空気抵抗が発生する要因を減少させることができるようにする。
【解決手段】車両用サイドミラー構造は、前部に走行風取入口が形成されて後部に開口部が形成されているミラーハウジングと、ミラーハウジング内に形成されて前記走行風取入口に連通して前記開口部側に開口する通風路と、開口部に設けられた後方視認用のミラー本体と、走行風取入口を開閉するフラップと、ミラーハウジングの開口部側であってミラー本体の後方に配置されて、開口部に発生する負圧で後方へ引かれる負圧受け部材と、フラップと前記負圧受け部材とを連結するロッドと、負圧受け部材を前方へ常時付勢する付勢部材とを備える。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側面に設けられ、前部に走行風取入口が形成され、後部に開口部が形成されているミラーハウジングと、
前記ミラーハウジング内に形成され、前記走行風取入口に連通して前記開口部側に開口する通風路と、
前記開口部に設けられた後方視認用のミラー本体と
を有する車両用サイドミラー構造において、
前記走行風取入口を開閉するフラップと、
前記ミラーハウジングの前記開口部側であって前記ミラー本体の後方に配置されて、前記開口部に発生する負圧で後方へ引かれる負圧受け部材と、
前記フラップと前記負圧受け部材とを連結するロッドと、
前記負圧受け部材を前方へ常時付勢する付勢部材と
を備えることを特徴とする車両用サイドミラー構造。
【請求項2】
前記ミラーハウジングの前記開口部側の車体幅方向の内側下部から車幅方向内側底部にかけて前記通風路の吹出口が開口されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両用サイドミラー構造。
【請求項3】
前記負圧受け部材は,前記ミラーハウジングの内周に沿ってリング状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両用サイドミラー構造。
【請求項4】
前記負圧受け部材が、前後方向への移動を許容して支持する支持ユニットに支持されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両用サイドミラー構造。
【請求項5】
前記支持ユニットは、前記負圧受け部材が負圧を最も強く受ける部位を支持している
ことを特徴とする請求項4記載の車両用サイドミラー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドミラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドミラーはフロントドアから車両外側に突き出しているため、走行時には走行風がミラーハウジングの前部表面に直接当たるばかりでなく、車体外側面に沿って流れる走行風(空気流)も衝突する。この走行風はミラーハウジングの後端縁からミラー背面部に巻き込まれて乱れが生じ、ミラー背面部に渦流が発生する。
【0003】
ミラー背面部に渦流が発生するとそれが騒音源となるばかりでなく、この渦流によりミラー背面部に車両後方へ引かれる力(負圧)が発生する。この負圧が空気抵抗となり、エネルギ消費率(燃費、電費)の悪化を招く。このミラーハウジングに発生する渦流に起因する空気抵抗は、車速が増加するに従い大きくなる。
【0004】
例えば、特許文献1(特開平10-44865号公報)には、フロントドアにミラーベースを介して支持されているミラーハウジングの内周に、ミラーハウジングの前面に開口する通風口と連通する通風路を形成し、走行時に通風口から通風路内に流入した走行風を、ミラーハウジングの背面へ導き、ミラー面に沿って流すことで、ミラー面の後方に生じる剥離領域を縮小させ、風切り音の低減を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、ミラーハウジングの前面側に通風口が常時開口しているため、外観上の審美性が損なわれてしまう不具合がある。
【0007】
又、ミラーハウジングの表面に発生する渦流に起因する空気抵抗は高速域で増加するが、低中速域では少なく、低中速域においてもミラーハウジングの前面に空気取入口と空気吹出口が常時開口されている場合、それが空気抵抗となる可能性がある。
【0008】
本発明は、審美性を損なうことなく、しかもモータ等の外力を何ら用いることなく、高速域では渦流に起因する空気抵抗を低減し、低中速域では空気抵抗が発生する要因を減少させることのできる車両用サイドミラー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車体側面に設けられ、前部に走行風取入口が形成され、後部に開口部が形成されているミラーハウジングと、前記ミラーハウジング内に形成され、前記走行風取入口に連通して前記開口部側に開口する通風路と、前記開口部に設けられた後方視認用のミラー本体とを有する車両用サイドミラー構造において、前記走行風取入口を開閉するフラップと、前記ミラーハウジングの前記開口部側であって前記ミラー本体の後方に配置されて、前記開口部に発生する負圧で後方へ引かれる負圧受け部材と、前記フラップと前記負圧受け部材とを連結するロッドと、前記負圧受け部材を前方へ常時付勢する付勢部材とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、負圧受け部材が受ける負圧によってフラップを開動作させ、走行風取入口から通風路内に走行風を導いて、ミラーハウジングの開口部方向へ吹き出させることで、開口部側の負圧を低減させるようにしたので、モータ等の外力を何ら用いることなく、高速域では渦流に起因する空気抵抗を低減させることができる。又、負圧の低い低中速域では負圧受け部材が付勢部材の付勢力で前部方向へ移動し、ロッドを介して連設するフラップが走行風取入口を閉じるので、走行抵抗が発生する要因を減少させることができる。更に、停車時も走行風取入口がフラップによって閉塞されているので、審美性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】ミラー本体に発生する負圧の圧力分布を可視化した解析図
【
図4】ミラーハウジングとミラー本体との隙間から走行風を吹き出させた際のミラー本体に発生する負圧の圧力分布を可視化した解析図
【
図5A】走行風取入口を閉塞しているフラップのリンク機構を示す
図1のu-u断面図
【
図5B】走行風取入口を閉塞しているフラップのリンク機構を示す
図1のm-m断面図
【
図5C】走行風取入口を閉塞しているフラップのリンク機構を示す
図1のl-l断面図
【
図5D】負圧受け部材が戻されている状態を示す
図1のm-m相当の断面図
【
図6A】走行風取入口を開放しているフラップのリンク機構を示す
図1のu-u断面図
【
図6B】走行風取入口を開放しているフラップのリンク機構を示す
図1のm-m断面図
【
図6C】走行風取入口を開放しているフラップのリンク機構を示す
図1のl-l断面図
【
図6D】負圧受け部材が引かれている状態を示す
図1のm-m相当の断面図
【
図7】負圧受け部材の可動域を規制するユニットであって
図8のVII-VII相当断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1、
図2Aの符号1はサイドミラー、2は車両の車体側面としてのフロントドアである。このフロントドア2にミラーベース3が固定されている。サイドミラー1はミラーベース3に回動自在に支持されている。尚、図においては左側フロントドア2に設けられたサイドミラー1を示しているが、右側フロントドア(図示せず)にもサイドミラー1が取付けられている。左右のサイドミラーは対称構造であるため、右側のサイドミラー1の構造についての説明は省略する。又、以下においては、車体の前部側をサイドミラー1の「前部」、車体の後部側をサイドミラー1の「後部」と称する。
【0013】
サイドミラー1はミラーハウジング4を有し、このミラーハウジング4の後部が開口されている。この開口部4aにミラー本体5が配置されている(
図5D、
図6D参照)。このミラー本体5の後面に、後方視認用のミラー面5aが設けられている。尚、
図2A、
図5A~
図5C、
図6A~
図6Cでは、ミラー本体5が省略されている。
【0014】
更に、ミラーハウジング4内には、電動格納ユニット及びミラー角度調整ユニット(何れも図示せず)が収容されている。電動格納ユニットは、サイドミラー1を図に示す展開位置とフロントドア2側へ回動させる格納位置とに切り替える電動モータを有している。又、ミラー角度調整ユニットは、ミラー本体5を上下、左右方向へ傾斜させる電動アクチュエータを有し、この電動アクチュエータの動作によりミラー面5aの傾斜角度が調整される。
【0015】
又、ミラーハウジング4内におけるフロントドア2側に通風路6が前部から後部にかけて形成されている。この通風路6は仕切板7によってミラーハウジング4内で区画されている。この仕切板7は、ミラーハウジング4内のフロントドア2側の内壁に沿って形成されている。この仕切板7の前後方向がミラーハウジング4の前部及び後部付近まで延在されて開口されている。又、この仕切板7の上下方向の端部がミラーハウジング4の内壁側へ屈曲されて接合されている。更に、この仕切板7の後端にストッパ部7aが曲げ形成されている。このストッパ部7aは後述するフラップ8の開角を規制するものである。
【0016】
一方、ミラーハウジング4の開口部4a側に延在する仕切板7の端部が、ミラーハウジング4の車幅方向内側の内壁従い下部から車幅方向内側の底部にかけて開口されて、通風路6の吹出口6aが形成されている。
【0017】
又、
図1、
図6A~
図6Cに示すように、ミラーハウジング4の前部であって仕切板7の後端に対峙する位置に走行風取入口4bが開口されている。この走行風取入口4bにフラップ8が装着されている。
図1に示すよう、このフラップ8の車幅方向外側の端部が、走行風取入口4bの端部にヒンジ9を介して回動自在に支持されている。
【0018】
一方、ミラーハウジング4内であって、開口部4aに配置されているミラー本体5の前方にベースプレート10が所定間隙を有して配設されている。
【0019】
このベースプレート10は十字状に形成され、四方へ延在する各アーム部10aの端部がミラーハウジング4の内壁に固定されている。又、このベースプレート10の中央に逃げ孔10bが穿設されている。上述したミラー角度調整ユニットはミラーハウジング4内であって、ベースプレート10の前方に取付けられている。このミラー角度調整ユニットに設けられた電動アクチュエータから後方へミラー角度調整用軸部が延在されている。このミラー角度調整用軸部は、ベースプレート10に設けたアーム部10a間の空隙、及び逃げ孔10bを貫通してミラー本体5側へ突出されている。このミラー調整用軸部の先端がミラー本体5の前面にピボット等を介して連設されている。
【0020】
又、このベースプレート10の後面であって、ミラー本体5の前方に負圧受け部材11が配設されている。この負圧受け部材11はミラーハウジング4の内周よりもやや内側であって、この内周に沿ってリング状に形成されている。この負圧受け部材11は薄い金属板或いは樹脂板で形成されている。
図5A~
図5C、
図6A~
図6Cに示すように、ミラー本体5の外周は負圧受け部材11の外周よりもやや小さい形状に形成されている。従って、ミラーハウジング4の開口部4aではミラー本体5の外周から負圧受け部材11が露呈されている。
【0021】
一方、ベースプレート10に形成されているアーム部10aの、負圧受け部材11に対向する位置にばね収納部12が設けられている。このばね収納部12はアーム部10aに対向する側が開口されて前方へ突出する凹形状を有している。このばね収納部12の底部に引っ張りばね12aの一端が連結されている。又、この引っ張りばね12aの他端が負圧受け部材11の前面に連結されている。この引っ張りばね12aは弱い力で負圧受け部材11を引っ張っている。
【0022】
図5Dに示すように、負圧受け部材11は、ミラーハウジング4の開口部4aに負圧が発生していない状態では、引っ張りばね12aの付勢力を受けてその前面がベースプレート10に近接、或いは当接されている。一方、負圧受け部材11は、ミラーハウジング4の開口部4aに負圧が発生している状態では、
図6Dに示すように、引っ張りばね12aの付勢力に抗して、ミラー本体5側へ吸引される。
【0023】
又、負圧受け部材11の前面とフラップ8とがロッドピン13を介して連結されている。フラップ8は負圧受け部材11の動作に従い、ロッドピン13を介して開閉動作される。このロッドピン13の中途に屈曲部13aが形成されている。一方、仕切板7の屈曲部13aに対向する側にストッパ部材14が突設されている。このストッパ部材14は、ロッドピン13の屈曲部13aに当接して、ロッドピン13の後方への移動を規制するものである。
【0024】
負圧受け部材11が、引っ張りばね12aの付勢力でベースプレート10側に位置している場合(
図5D参照)、
図5Aに示すように、フラップ8は走行風取入口4bを閉塞している。一方、負圧受け部材11が、ミラーハウジング4の後部に発生する負圧で後方へ吸引された場合、
図6Aに示すように、ロッドピン13の屈曲部13aがストッパ部材14に当接し、更に、フラップ8が仕切板7に形成されたストッパ部7aに当接して前後方向の可動域が規制される。尚、ストッパ部材14とストッパ部7aとの何れか一方は省略しても良い。
【0025】
又、
図2Aに示すサイドミラー1の背面視において、負圧受け部材11の右斜め下部と、それに対向するミラーハウジング4の内周との間に、支持ユニット21が設けられている。この支持ユニット21は、負圧受け部材11が前後方向へ移動する際に生じるぶれを規制するものである。
【0026】
ところで、サイドミラー1の後部には、サイドミラー1の車幅方向において、内側下部と内側底部に走行風の巻き込みが強く発生する。従って、
図3に示すように、サイドミラー1の背面視で右斜め下部側へ偏った負圧分布となる。支持ユニット21は、負圧受け部材11が負圧を最も強く受ける部位を支持するものである。
【0027】
図7、
図8に示すように、この支持ユニット21は軸部22aと、この軸部22aに回動自在に支持されているガイドローラ22bとを有する。
図7、
図8に示すように、軸部22aは、その下端部がミラーハウジング4の内周の下部に固定され、上部がフロントドア2側の内壁に傾斜された状態で延在されている。
【0028】
更に、
図7、
図8に示すように、支持ユニット21は、同一構造をなす一対の可動方向規制部材23を有している。
図2Aに示すように、両可動方向規制部材23は、ミラーハウジング4の内壁においてガイドローラ22bの軸方向に沿い、所定間隔を開けて配設されている。この各可動方向規制部材23はガイドホルダ24を有している。ガイドホルダ24は一端がミラーハウジング4の内壁に固定され、他端がガイドローラ22bに対し直行する姿勢で臨まされている。尚、以下においては、ガイドホルダ24の位置を、ミラーハウジング4の内壁側に固定されている側を後部、ガイドローラ22bに面する側を前部、ミラーハウジング4の後部側を上部、ミラーハウジング4の前部側を下部と称する。
【0029】
図7、
図8に示すように、ガイドホルダ24の後部側から前部方向にかけてガイド溝24aが形成されている。このガイド溝24aの上面にスリット24bがガイド溝24aに沿って形成されている。ガイド溝24aにスライダ25が摺動自在に装着されている。このスライダ25の上端に突部25aが形成されており、この突部25aがスリット24bに挿通されてスライド方向が規制されている。又、この突部25aの上面がガイドホルダ24の上面と同一面に設定されている。
【0030】
又、支持ユニット21は可動域規制ベルト26を有している。この可動域規制ベルト26の一端部が負圧受け部材11の、ガイドローラ22b側の端部に固定されている。又、この可動域規制ベルト26の他端部に係止部26aが形成されており、この係止部26aがスライダ25に固定されている。更に、この可動域規制ベルト26は、両可動方向規制部材23のスライダ25に両側部を固定する幅の広い1枚のベルトで形成されている。
【0031】
この可動域規制ベルト26の中途がガイドローラ22bとガイドホルダ24の上面との間に軽い圧で挟持されている。
図7に示すように、負圧受け部材11が引っ張りばね12aの付勢力を受けてベースプレート10に近接、或いは当接されている状態では、可動域規制ベルト26に連設しているスライダ25が、ガイドホルダ24に形成されたガイド溝24aの後端に当接、或いは近接されている。
【0032】
一方、
図7に一点鎖線で示すように、負圧受け部材11がミラーハウジング4の後部に発生する負圧で吸引されて、ミラー本体5の方向へ移動すると、可動域規制ベルト26がスライダ25を、ガイドホルダ24の前部方向へ移動させる。そして、スライダ25の前部がガイド溝24aの前部側壁面に当接して、負圧受け部材11の移動が規制される。負圧受け部材11の可動域は、ガイド溝24aの前後長さ、及び可動域規制ベルト26の長さで決定される。そのため、ガイド溝24a、及び可動域規制ベルト26の長さは負圧受け部材11の可動域に基づいて予め設定されている。
【0033】
ところで、
図3には、ソフトウエアのCFDシミュレーションにより算出されるサイドミラー1の背面にかかる圧力変動の分布が示されている。このCFDシミュレーションによれば、サイドミラー1の背面(ミラー面5a側)において、フロントドア2側の下部方向に負圧の高い領域が偏って発生していることが解る。これは、サイドミラー1の背面視で右斜め下部の空気流がミラー面5a側に巻き込まれて、ミラー面5aに渦流が発生するためである。この渦流により、ミラー面5aに負圧が発生し、この負圧が空気抵抗となって、エネルギ消費率(燃費、電費)の悪化を招く。
【0034】
一方、ソフトウエアのCFDシミュレーションによれば、
図4に矢印で示すように、サイドミラー1の背面視で右斜め下部であって、ミラーハウジング4の内周から後方へ走行風を吹き出させることで、ミラー面5a側に発生する渦流が攪乱され、負圧が全体的に低減されていることが解る。従って、ミラー面5aに発生する渦流を攪乱させれば、エネルギ消費率を改善することができる。
【0035】
本実施形態では、CFDシミュレーション結果に従い、サイドミラー1の背面視で右斜め下部に対して、前方から後方へ走行風を吹き出させるようにしたものである。
【0036】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。車両が停車している状態では、ミラーハウジング4の前部に開口されている走行風取入口4bがフラップ8によって閉塞されている。
【0037】
図1に示すように、フラップ8は車幅方向外側の端部がヒンジ9介してミラーハウジング4に開閉自在に支持されている。又、このフラップ8の車幅方向内側端部の内面に、ロッドピン13の一旦が固定されている。このロッドピン13の他端が、ミラーハウジング4の後部に配置されているリング状の負圧受け部材11に固定されている。
【0038】
負圧受け部材11が引っ張りばね12の付勢力によりベースプレート10に近接或いは当接されている状態では、ロッドピン13を介してフラップ8を前方へ押圧して、走行風取入口4bを閉塞している。
【0039】
そして、車両の高速走行時に発生した走行風の一部は、ミラーハウジング4の周辺を通り後方へ抜ける。その際、ミラーハウジング4の前部に走行風の巻き込みが発生する。この走行風の巻き込みにより、
図3に示すように、サイドミラー1の前部に負圧が発生する。
【0040】
負圧受け部材11は、後面が受ける負圧により引っ張りばね12の付勢力に抗して、後方へ移動する。この負圧受け部材11は、サイドミラー1の背面視で、右斜め下部が支持ユニット21を介してミラーハウジング4の内周に支持されている。上述したように、この支持ユニット21は、負圧受け部材11が最も負圧を強く受ける部位を支持しているため、負圧受け部材11が前後方向へ移動する際のぶれを抑制することができる。
【0041】
図7には、負圧受け部材11がベースプレート10に近接或いは当接されているときの支持ユニット21の状態が示されている。この状態から負圧受け部材11が負圧を受けて、一点鎖線で示すようにミラー本体5の方向へ移動すると、負圧受け部材11の端部に一端が連結されている可動域規制ベルト26が引かれる。すると、この可動域規制ベルト26がガイドホルダ24とガイドローラ22bとの間から繰り出される。
【0042】
その際、可動域規制ベルト26の他端に形成されている係止部26aを嵌合するスライダ25が、ガイドホルダ24に形成したガイド溝24aに沿って移動する。負圧受け部材11は、ガイドホルダ24とガイドローラ22bとに挟持された可動域規制ベルト26に支持された状態で、ミラー本体5の前面に近接する方向へ移動する。
【0043】
一方、負圧受け部材11がミラー本体5の前面方向へ移動すると、この負圧受け部材11にロッドピン13を介して連結されているフラップ8が引かれる。すると、このフラップ8はヒンジ9に支持された状態で、ミラーハウジング4内へ片開きし、走行風取入口4bを開く。そして、フラップ8は負圧受け部材11の移動に追従して、開き角を次第に大きくし、
図6Aに示すように、ロッドピン13に形成した屈曲部13aが、仕切板7に突設したストッパ部材14に当接し、或いは
図6Bに示すようにフラップ8の型開き側端部が仕切板7の端部に形成したストッパ部7aに当接して、フラップ8の開度が規制される。
【0044】
フラップ8が走行風取入口4bを開くと、前方からの走行風が走行風取入口4bからミラーハウジング4内に流れ込む。そして、この走行風が型開きしているフラップ8の表面に沿って流れ、仕切板7とミラーハウジング4の内周とで区画されている通風路6の方向へ導かれる。
【0045】
その後、この通風路6を流れる走行風は、ミラーハウジング4の後部に開口されている吹出口6aから、
図4に白抜き矢印で示すように後方へ吹き出される。すると、吹き出された走行風によってミラー面5a側に発生する渦流が攪乱され、
図4に示す負圧分布のように、ミラーハウジング4の後方に発生する負圧が全体的に低減され、エネルギ消費率が改善される。
【0046】
一方、車両が低中速まで減速すると走行風が弱くなり、ミラーハウジング4の後方に発生する負圧が低減される。その結果、負圧受け部材11が受ける負圧も低減されるため、この負圧受け部材11は引っ張りばね12の付勢力を受けてベースプレート10側へ移動する。すると、負圧受け部材11の端部に一端を固定する可動域規制ベルト26が
図7の実線矢印で示すように、戻り方向へ押圧される。この可動域規制ベルト26の他端に形成した係止部26aを嵌合するスライダ25が、ガイドホルダ24に形成されているガイド溝24aに沿って移動して、負圧受け部材11のぶれを規制する。そして、負圧受け部材11は引っ張りばね12の付勢力で、ベースプレート10に近接或いは当接されて初期位置に戻される。
【0047】
その間、負圧受け部材11にロッドピン13を介して連結するフラップ8は、走行風取入口4bを次第に閉塞する。そして、負圧受け部材11がベースプレート10に近接或いは当接した際に、走行風取入口4bを閉塞する(
図5A~
図5C参照)。
【0048】
ミラーハウジング4の後方に発生する負圧が低い低中速域においては、走行風取入口4bが閉塞される。そのため、走行風取入口4bが空気抵抗とならず、この領域におけるエネルギ消費率を改善することができる。更に、停車時においても、走行風取入口4bはフラップ8によって閉塞されているため、良好な審美性を得ることができる。
【0049】
このように、本実施形態では、車両が停車しているときはミラーハウジング4の前面に形成した走行風取入口4bがフラップ8によって閉塞されているため、良好な審美性を得ることができる。又、フラップ8の開閉にモータ等の外力を必要としないため、サイドミラー1の軽量化、及び構造の簡素化によるコストの低減を実現することができる。
【0050】
更に、高速走行時は、サイドミラー1の後方で発生する負圧を利用して、フラップ8を片開きさせて、前方の走行風を、通風路6を経て後部に開口する吹き出し口6aから後方へ吹き出させる。この吹き出した走行風によって、ミラーハウジング4の後方に発生する負圧を全体的に低減するようにしたので、高速域でのエネルギ消費率の改善を図ることができる。又、低中速域ではフラップ8が走行風取入口4bを閉塞するため、走行風取入口4bが空気抵抗とならず、この領域でのエネルギ消費率の改善を図ることができる。
【0051】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、ガイドホルダ24に形成したガイド溝24aに沿って移動するスライダ25は、圧縮ばね或いは引っ張りばねによって、可動域規制ベルト26を常時戻す方向へ付勢されていても良い。この場合、スライダ25に対するばねの付勢力は、負圧受け部材11に連結する引っ張りばね12の付勢力よりも弱い値に設定する。
【符号の説明】
【0052】
1…サイドミラー、
2…フロントドア、
3…ミラーベース、
4…ミラーハウジング、
4a…開口部、
4b…走行風取入口、
5…ミラー本体、
5a…ミラー面、
6…通風路、
6a…吹出口
7…仕切板、
7a…ストッパ部、
8…フラップ、
9…ヒンジ、
10…ベースプレート、
10a…アーム部、
10b…逃げ孔、
11…負圧受け部材、
12…収納部、
13…ロッドピン、
13a…屈曲部、
14…ストッパ部材、
21…支持ユニット、
22a…軸部、
22b…ガイドローラ、
23…可動方向規制部材、
24…ガイドホルダ、
24a…ガイド溝、
24b…スリット、
25…スライダ、
25a…突部、
26…可動域規制ベルト、
26a…係止部