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  • 特開-漏洩止水装置及び漏洩止水方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142964
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】漏洩止水装置及び漏洩止水方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/00 20060101AFI20241003BHJP
   G21F 9/22 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65D90/00 M
G21F9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055391
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】倉員 宗一
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB01
3E170AB08
3E170BA07
3E170DA01
3E170JA09
3E170VA20
(57)【要約】
【課題】液体を貯留させたままタンクを補修する漏洩止水技術を提供する。
【解決手段】漏洩止水装置10は、タンク11の内側から漏洩箇所12を塞ぐ位置において止水部材15を挟んでタンク11を磁化させる励磁手段20を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの内側から漏洩箇所を塞ぐ位置において止水部材を挟んで前記タンクを磁化させる励磁手段を備える漏洩止水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の漏洩止水装置において、
前記止水部材を前記励磁手段に機械的に支持させる支持手段を備える漏洩止水装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の漏洩止水装置において、
前記励磁手段を吊り下げて鉛直方向に変位させるクレーンと、
前記クレーンを水平方向に変位させる水平レールと、を備える漏洩止水装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の漏洩止水装置において、
前記励磁手段を鉛直方向に変位させる鉛直レールを備える漏洩止水装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の漏洩止水装置において、
前記漏洩箇所の周縁及び前記止水部材を前記タンクの外側から溶接する溶接手段を備える漏洩止水装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の漏洩止水装置において、
前記タンクに接する前記止水部材の接触面には、前記漏洩箇所を取り囲むように封止部材が設けられている漏洩止水装置。
【請求項7】
タンクの内側から漏洩箇所を塞ぐ位置において止水部材を励磁手段で挟む工程と、
前記励磁手段を励磁させ前記タンクを磁化させる工程と、
前記漏洩箇所の周縁及び前記止水部材を前記タンクの外側から溶接する工程と、
前記励磁手段を消磁して前記タンクから分離し回収する工程と、を含む漏洩止水方法。
【請求項8】
タンクの内側から漏洩箇所を塞ぐ位置において止水部材を励磁手段で挟む工程と、
前記励磁手段を励磁させ前記タンクを磁化させる工程と、
前記タンクの外側から前記漏洩箇所を塞ぐ位置において補修部材を溶接する工程と、
前記励磁手段を消磁して前記タンクから分離し回収する工程と、を含む漏洩止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体を貯留したタンクの漏洩止水技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の過酷事故処理で発生し原子炉施設内に滞留した放射性汚染水は、放射性核種を除去し浄化した後に、鋼製タンクに貯留されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6199703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この鋼製タンクの経年劣化に伴い、貯留している浄化水が漏洩することを想定し、止水措置が検討されている。一般に、タンクの漏洩が確認された場合、貯留した液体を排出してから、漏洩箇所を止水する補修作業が施される。しかし、貯留した液体を排出したり移し替えたりすることは、タンクの補修作業の効率性を低下させてしまう。
【0005】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、液体を貯留させたままタンクを補修する漏洩止水技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る漏洩止水装置において、タンクの内側から漏洩箇所を塞ぐ位置において止水部材を挟んで前記タンクを磁化させる励磁手段を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、液体を貯留させたままタンクを補修する漏洩止水技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)(B)(C)(D)本発明の実施形態に係る漏洩止水装置、並びに漏洩止水方法の工程の説明図。
図2】(A)(B)第1実施形態に係る漏洩止水装置の縦断面図。
図3】(A)(B)(C)(D)実施形態において止水部材を励磁手段に機械的に支持させる支持手段の機能説明図。
図4】(A)第2実施形態に係る漏洩止水装置の縦断面図、(B)同・水平断面図。
図5】(A)(B)(C)実施形態に係る封止部材の機能説明図。
図6】(A)(B)(C)(D)第3実施形態に係る漏洩止水装置、並びに漏洩止水方法の工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1(A)(B)(C)(D)のZ-X縦断面図に基づいて、本発明の実施形態に係る漏洩止水装置10、並びに漏洩止水方法の工程を説明する。
【0010】
図1(A)に示すように漏洩止水装置10は、タンク11の内側から漏洩箇所12を塞ぐ位置において止水部材15を挟んで磁性体から成るタンク11を磁化させる励磁手段20を備えている。ここで「挟んで」の態様は、タンク11の内側表面と励磁手段20とが成す間隙に止水部材15が挿入されている状態を指す。またタンク11の内側表面と励磁手段20とが成す間隙の大きさは、励磁手段20が励磁した際、磁力のみで間隔が詰まる程度の大きさである。また励磁前に、この間隔において止水部材15が面接触しているか否かについて、特に限定はない。
【0011】
そして、タンク11は、放射性汚染水から放射性核種を除去した浄化水(液体16)を貯留する用途を例示するが、貯留対象の液体16は特に限定されない。また、タンク11の材質は、鉄または鉄合金であることが一般的であるが、特に限定はなく、励磁手段20により磁化するものであれば適宜採用される。
【0012】
漏洩箇所12は、タンク11の経年劣化により内側から外側に液体16が漏洩する箇所である。このような漏洩を防止するためにタンク11の内側から止水部材15で漏洩箇所12を塞ぐ補修が行われる。この止水部材15の形状は、漏洩箇所12が位置するタンク11の内側面に面接触するよう予め加工されている。
【0013】
なお実施形態において、タンク11の側面の補修を例示しているが、補修対象の漏洩箇所12の発生位置に特に限定はなく、例えば、タンク11の底面や底縁部も補修対象となり得る。またタンク11の形状も特に限定はなく、円筒、直方体、立方体等を含め任意の形状を対象にする。種々の形状のタンクのいかなる位置の補修であっても、止水部材15の形状は、漏洩箇所12が位置する内側面に面接触するよう予め加工されている。
【0014】
また、止水部材15の材質は、後工程で溶接すること鑑みれば、をタンク11の材質と共通であることが一般的であるが、特に限定はない。止水部材15の材質は、励磁手段20により磁化する必要は特になく、有機材料(樹脂等)や、有機と無機との複合材料であってもよい。
【0015】
そして、励磁手段20は、コイルを巻回させた電磁石が用いられ、通電をON/OFFすることで、磁束の発生がON/OFFし、励磁/消磁が切り替わる。このように励磁手段20が発生する外部磁場に従って、近接させたタンク11の磁化の維持/解消も切り替わる。そして、タンク11が磁化されることで、励磁手段20に挟まれる止水部材15への押圧力が付与される。なお、励磁手段20は電磁石からなることを例示したが、近接するタンク11の磁化の維持/解消の切り替えができれば、永久磁石等その他の手段を用いることができる。
【0016】
また止水部材15の材質が励磁手段20により磁化される材料(例えば鉄板等)の場合は、励磁手段20により止水部材15もタンク11へ磁気吸引されることで止水部材15の密着性をより強固にすることが可能となる。また、止水部材15の材質がゴム等の弾性材で励磁手段20により磁化されない材料である場合には吸引力は低下するが密着性を向上させることが可能である。
【0017】
次に漏洩止水方法の工程を説明する。図1(A)に示すように、タンク11が貯留する液体16に、止水部材15及び励磁手段20を投入する。この投入方法については、両者を別々に投入する方法も、両者を予め一体化させてから投入する方法も、どちらも有り得る。そして、図1(B)に示すように、タンク11の漏洩箇所12を内側から止水部材15で塞ぐ。なお、止水部材15による漏洩箇所12の止水は、完全である必要はなく、その後の補修作業が可能な程度に止水できれば良い。
【0018】
次に、図1(C)に示すように、止水部材15を挟む位置に励磁手段20を配置し励磁させタンク11を磁化させる。これにより、止水部材15は、漏洩箇所12を塞ぐ位置において密着される。この状態で、溶接手段21により、漏洩箇所12の周縁及び止水部材15をタンク11の外側から溶接する。このとき、溶接状態を最適化するために、電磁石(励磁手段20)への通電量を動的又は静的に変化させてもよい。
【0019】
次に、図1(D)に示すように漏洩箇所12は、溶接部材22により止水部材15が隙間なく塞ぎ、タンク11に貯留される液体16の外部漏洩が停止する。そして、励磁手段20を消磁してタンク11から分離し回収する。
【0020】
(第1実施形態)
次に図2及び図3を参照して本発明における第1実施形態について説明する。図2(A)(B)は、第1実施形態に係る漏洩止水装置10A(10)の縦断面図である。このように第1実施形態に係る漏洩止水装置10Aでは、タンク11に貯留される液体16へ励磁手段20を投入する手段として、クレーン25及び水平レール26を備えている。なお、図2及び図3において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0021】
クレーン25は、励磁手段20を吊り下げて鉛直方向に変位させるものである。そして水平レール26は、クレーン25を水平方向に変位させるものである。なお水平レール26は、タンク11の上部に配置されており、クレーン25を一軸又は二軸で移動させることができる。また一軸の水平レール26である場合は、両端の固定位置を、タンク11の上縁の任意位置に設定できるものとする。また、励磁手段20が発生する磁束の方向を調整できるように、クレーン25の軸回転角度を任意に調整できるようにしてもよい。これにより、励磁手段20を任意の位置から液体16に投入し、漏洩箇所12に的確に近接させることができる。
【0022】
図3(A)(B)(C)(D)は実施形態において止水部材15を励磁手段20に機械的に支持させる支持手段27の機能説明図である。図3(A)に示すように、励磁手段20の上部には、突起状の支持手段27が立設されている。その一方、図3(B)に示すように、止水部材15には、支持手段27が係入し止水部材15を励磁手段20に対し係止させる係止部材28が設けられている。非励磁状態の励磁手段20が止水部材15を支持して一体化した状態で、タンク11の漏洩箇所12に近接される。
【0023】
そして、図3(C)に示すように、非励磁状態から励磁状態に切り替わった励磁手段20は、タンク11の内側面に密着するとともに、止水部材15を挟持する。さらに図3(D)に示すように、溶接部材22により止水部材15で漏洩箇所12を隙間なく塞いでから、励磁手段20を励磁状態から非励磁状態に切り替える。
【0024】
すると、一体化していた励磁手段20は、止水部材15から分離することが可能になり、単独で回収することが可能になる。なお、図3に基づいて支持手段27を例示したが、これに限定されることはなく、励磁手段20が非励磁の状態で、励磁手段20と止水部材15とを分離自在に一体化させる仕組みを持つものであれば適宜採用される。
【0025】
(第2実施形態)
次に図4を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図4(A)は第2実施形態に係る漏洩止水装置10B(10)のZ-X縦断面図である。図4(B)はそのX-Y水平断面図である。このように第2実施形態に係る漏洩止水装置10Bでは、タンク11に貯留される液体16に励磁手段20を投入する手段として、励磁手段20を鉛直方向に変位させる鉛直レール29を備えている。なお、図4において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0026】
鉛直レール29は、ホルダに固定された励磁手段20を、鉛直方向に変位させるものである。なお水平レール26は、タンク11の側面内側の漏洩箇所12の近傍に配置されており、クレーン25を一軸で移動させることができる。また一軸の鉛直レール29は、両端の固定位置を、タンク11の側面に近い任意位置に設定できるものとする。これにより、励磁手段20を漏洩箇所12の直上から液体16に投入し、漏洩箇所12に的確に近接させることができる。
【0027】
図5(A)(B)(C)は実施形態に係る封止部材18の機能説明図である。図5(A)に示すように、タンク11に接する止水部材15の接触面には、漏洩箇所12を取り囲むように封止部材18が設けられている。封止部材18は、ゴム等の弾性部材である。このように封止部材18が設けられた止水部材15及び非励磁状態の励磁手段20が、タンク11の漏洩箇所12に近接される。
【0028】
そして、図5(B)に示すように、非励磁状態から励磁状態に切り替わった励磁手段20は、タンク11の内側面に密着するとともに、止水部材15を挟持する。このとき封止部材18は、弾性変形してタンク11の内側面における漏洩箇所12の周囲を密閉する。さらに図5(C)に示すように、溶接部材22により止水部材15で漏洩箇所12を隙間なく塞いでから、励磁手段20を励磁状態から非励磁状態に切り替え、励磁手段20を止水部材15から分離し単独回収する。これにより、貯留される液体の静水圧は、封止部材18にかかるが溶接部材22にはかからない。これにより、補修後の漏洩箇所12は、貯留液体の外部漏洩に対する健全性が向上する。
【0029】
(第3実施形態)
次に図6を参照して本発明における第1実施形態について説明する。図6(A)(B)(C)(D)は第3実施形態に係る漏洩止水方法の工程の説明図である。なお、図6において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0030】
図6(A)に示すように、タンク11が貯留する液体16に、止水部材15及び励磁手段20を投入する。この投入方法については、両者を別々に投入する方法も、両者を予め一体化させてから投入する方法も、どちらも有り得る。なお第3実施形態では、最終的に止水部材15も回収することを想定しているため、止水部材15及び励磁手段20が分離しないよう一体化した構成となる場合もある。
【0031】
そして、図6(B)に示すように、タンク11の漏洩箇所12を内側から止水部材15で塞ぐ。なお、止水部材15による漏洩箇所12の止水は、完全である必要はなく、その後の補修部材23の溶接が可能な程度に止水できれば良い。
【0032】
次に、図6(C)に示すように、止水部材15を挟む位置に励磁手段20を配置し励磁させタンク11を磁化させる。これにより、止水部材15は、漏洩箇所12を塞ぐ位置において密着される。この状態で、タンク11の外側から漏洩箇所12を塞ぐ位置に補修部材23を配置する。そして、補修部材23の外周を溶接手段21により溶接する。
【0033】
次に、図6(D)に示すように漏洩箇所12は、溶接部材22により補修部材23が隙間なく塞がれ、タンク11に貯留される液体16の外部漏洩が停止する。そして、励磁手段20を消磁して止水部材15とともにタンク11から分離し回収する。
【0034】
なお、図示を省略するが、溶接手段21は、タンク11の内側から漏洩箇所12に密着させた止水部材15を溶接してから、タンク11の外側から漏洩箇所12に配置した補修部材23を溶接してもよい。さらに、図示を省略するが、補修部材23の接触面にも、漏洩箇所12を取り囲むように封止部材18(図5参照)が設けられる場合もある。
【0035】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の漏洩止水装置によれば、漏洩箇所12に対し内側から止水部材15を塞ぐ位置において止水部材を挟んで励磁手段20を配置することにより、液体を貯留させたままタンク11の補修が可能となる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
10(10A,10B)…漏洩止水装置、11…タンク、12…漏洩箇所、15…止水部材、16…液体、18…封止部材、20…励磁手段、21…溶接手段、22…溶接部材、23…補修部材、25…クレーン、26…水平レール、27…支持手段、28…係止部材、29…鉛直レール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6