(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014297
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】部品実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H05K13/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117012
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 大地
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353CC03
5E353CC05
5E353EE02
5E353EE04
5E353EE13
5E353GG01
5E353GG22
5E353GG31
5E353HH11
5E353HH51
5E353HH61
5E353JJ21
5E353JJ42
5E353JJ48
5E353KK02
5E353KK03
5E353LL04
5E353LL06
5E353QQ01
5E353QQ11
(57)【要約】
【課題】既実装の部品とバックアップピンの干渉を抑制する。
【解決手段】基板Pに部品Eを実装する部品実装装置1は、基板Pを目標停止位置Aに搬送する搬送部11と、目標停止位置Aにて基板Pを下方から支持するバックアップピン30と、制御部18と、を備え、制御部18は、基板Pの下面55Bに部品Eが既実装である場合、目標停止位置Aに搬送された基板Pごとに、または前記基板の品種ごとに、目標停止位置Aに対する基板停止位置の誤差Gの許容値Tを変更する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装する部品実装装置であって、
前記基板を目標停止位置に搬送する搬送部と、
前記目標停止位置にて前記基板を下方から支持するバックアップピンと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記基板の下面に部品が既実装である場合、
前記目標停止位置に搬送された前記基板ごとに、または前記基板の品種ごとに、前記目標停止位置に対する基板停止位置の誤差の許容値を変更する、部品実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装装置であって、
前記制御部は、前記目標停止位置に対する基板停止位置の誤差の許容値を第1~第3データに基づいて算出し、
前記第1データは、前記基板の下面に既実装の部品に関するデータであり、
前記第2データは、前記バックアップピンに関するデータであり、
前記第3データは、前記目標停止位置に搬送された前記基板の停止状態に関するデータである、部品実装装置。
【請求項3】
請求項2に記載の部品実装装置であって、
前記第1データは、既実装の部品が前記基板の下面に占める領域を示すデータであり、
前記第2データは、前記バックアップピンが前記基板の下面に当接する領域を示すデータである、部品実装装置。
【請求項4】
請求項3に記載の部品実装装置であって、
前記基板に設けられたマークを撮像する撮像部を備え、
前記制御部は、前記撮像部が撮像した前記マークの位置に基づいて、部品実装装置に対する前記基板の変位を認識し、
前記第3データは、部品実装装置に対する前記基板の変位に関するデータである、部品実装装置。
【請求項5】
請求項3に記載の部品実装装置であって、
前記基板に設けられたマークを撮像する撮像部を備え、
前記制御部は、前記撮像部が撮像した前記マークの位置に基づいて、部品実装装置に対する前記基板の変位及び回転を認識し、
前記第3データは、部品実装装置に対する前記基板の変位及び回転に関するデータである、部品実装装置。
【請求項6】
請求項3に記載の部品実装装置であって、
前記基板に設けられたマークを撮像する撮像部を備え、
前記制御部は、前記撮像部が撮像した前記マークの位置に基づいて、部品実装装置に対する前記基板の変位及び伸縮を認識し、
前記第3データは、部品実装装置に対する前記基板の変位及び伸縮に関するデータである、部品実装装置。
【請求項7】
請求項3に記載の部品実装装置であって、
前記基板に設けられたマークを撮像する撮像部を備え、
前記制御部は、前記撮像部が撮像した前記マークの位置に基づいて、部品実装装置に対する前記基板の変位、回転、及び伸縮を認識し、
前記第3データは、部品実装装置に対する前記基板の変位、回転、及び伸縮に関するデータである、部品実装装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の部品実装装置であって、
基板停止位置を検出する位置検出部を備え、
前記制御部は、前記目標停止位置に対する基板停止位置の誤差が、前記許容値の範囲内であるか否かを判定する、部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に部品を実装する部品実装装置は、所定の目標停止位置で停止させた基板の下面をバックアップピンで支持して、基板の上面に部品を実装する。基板の両面に部品を実装する両面実装基板の生産では、基板の上面に部品を実装した後で基板を反転させ、反転後に上面となる面に部品を実装する。反転後の下面にはすでに部品が実装されているため、下面の部品とバックアップピンが干渉しないようにバックアップピンを配置する。下記特許文献1には、下面の部品(既実装部品)とバックアップピン(下受けピン)の干渉を回避する部品実装装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品実装装置において、基板が実際に停止する基板停止位置が、目標停止位置に一致するとは限らない。目標停止位置に対する基板停止位置の誤差が大きいと、バックアップピンが上昇したときに既実装部品と干渉するおそれがある。そこで、干渉を防ぐために、誤差の許容値を設定して、基板停止位置が許容値の範囲内である場合に限り、バックアップピンを上昇させる。誤差が許容値の範囲を超えている場合には、バックアップピンを上昇させずに基板の位置決めのリトライを行い、干渉を回避する。
【0005】
従来は、許容値として固定された値を設定しており、誤差が許容値の範囲を超えていれば一律に位置決めのリトライ等を行っていた。バックアップピンと既実装部品の距離が十分に大きくて干渉が生じない場合であっても、誤差の大きさによっては不必要なリトライを行うため、タクトロスとなっていた。また、異なる品種の基板間においては、既実装部品の実装位置が異なる。そのため、ある品種の基板において誤差が許容値の範囲を超えたときに既実装部品とバックアップピンが干渉したとしても、他の品種の基板において同一の誤差の場合に干渉するとは限らない。この場合も、不必要なリトライが行われタクトロスとなっていた。
【0006】
本発明は、既実装部品と、バックアップピンとの干渉を回避することを課題とする。また、不必要なリトライを削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する部品実装装置は、基板に部品を実装する部品実装装置であって、前記基板を目標停止位置に搬送する搬送部と、前記目標停止位置にて前記基板を下方から支持するバックアップピンと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記基板の下面に部品が既実装である場合、前記目標停止位置に搬送された前記基板ごとに、または前記基板の品種ごとに、前記目標停止位置に対する基板停止位置の誤差の許容値を変更する。
【発明の効果】
【0008】
上記の部品実装装置によれば、基板の下面に実装されている部品と、バックアップピンとの干渉を抑制することができる。基板を目標停止位置に位置決めする際のリトライを減らし、タクトの低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】目標停止位置に対する誤差を模式的に示す側面図
【
図10】フィデューシャルマークの位置を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を
図1から
図11を参照して説明する。以降の説明では
図1に示す左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、
図2に示す上下方向をZ軸方向という。また、以降の説明では
図1に示す左側を上流側、右側を下流側という場合がある。また、以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0011】
1.部品実装装置の構成
図1を参照して、部品実装装置1の構成について説明する。部品実装装置1は基板Pに電子部品等の部品Eを実装する装置であり、基台10、搬送コンベア(搬送部の一例)11、バックアップ装置12(
図2、
図3参照)、4つのテープ部品供給装置13、ヘッドユニット14、ヘッド移動部15、部品撮像カメラ16、基板撮像カメラ(撮像部の一例)17、制御部18(
図4参照)、操作部19(
図4参照)等を備えている。
【0012】
基台10は平面視長方形状をなしている。
図1において基台10の中央右寄りを前後方向に延びる一点鎖線のラインAは、目標停止位置Aである。搬送コンベア11は、基板PをX軸方向の上流側から搬入し、
図1に示すように、基板Pの下流側の端部が目標停止位置Aと重なる位置で、基板Pを停止させる。目標停止位置Aにおいて基板Pに部品Eを実装した後、搬送コンベア11は基板Pを下流側に搬出する。
【0013】
搬送コンベア11はX軸方向に循環駆動する一対のコンベアベルト11A及び11B、それらのコンベアベルトを駆動するコンベア駆動モータ50(
図4参照)等を備えている。後側のコンベアベルト11Aは前後方向に移動可能であり、基板Pの幅に応じて2つのコンベアベルト11Aと11Bとの間隔を調整できる。
【0014】
基板ガイドレール25は、コンベアベルト11Aの後方側に位置する基板ガイドレール25Aと、コンベアベルト11Bの前方側に位置する基板ガイドレール25Bと、を有している。後側の基板ガイドレール25Aは、コンベアベルト11Aとともに前後方向に移動可能である。基板ガイドレール25A、25Bの間隔は、基板Pの前後方向の大きさよりも所定の搬送クリアランスCだけ大きく設定されている(
図6(a)参照)。搬送コンベア11により搬送される基板Pは、基板ガイドレール25A、25Bの間に位置しており、基板Pの前後方向の変位が搬送クリアランスCの範囲内に規制される。
【0015】
バックアップ装置12(
図2、
図3参照)は目標停止位置Aの下方に配置されている。バックアップ装置12の構成については後述する。
【0016】
テープ部品供給装置13は搬送コンベア11のY軸方向の両側においてX軸方向に並んで2箇所ずつ、計4箇所に配されている。これらのテープ部品供給装置13には複数のフィーダ20がX軸方向に横並び状に整列して取り付けられている。各フィーダ20は所謂テープフィーダであり、複数の部品Eが収容された部品テープが巻回されたリール、及び、リールから部品テープを引き出す電動式のテープ送出装置等を備えており、搬送コンベア11側の端部に設けられた部品供給位置から部品Eを一つずつ供給する。
【0017】
なお、本実施形態では部品供給装置としてテープ部品供給装置13を例に挙げて説明しているが、部品供給装置は部品Eが載置されているトレイを供給する所謂トレイフィーダであってもよいし、半導体ウェハを供給するものであってもよい。
【0018】
ヘッドユニット14には複数(ここでは5個)の実装ヘッド21が設けられている。ヘッドユニット14の構成については後述する。
【0019】
ヘッド移動部15はヘッドユニット14を所定の可動範囲内でX軸方向及びY軸方向に移動させる。ヘッド移動部15はヘッドユニット14をX軸方向に往復移動可能に支持しているビーム22、ビーム22をY軸方向に往復移動可能に支持している一対のY軸ガイドレール23、ヘッドユニット14をX軸方向に往復移動させるX軸サーボモータ46、ビーム22をY軸方向に往復移動させるY軸サーボモータ47等を備えている。
【0020】
2つの部品撮像カメラ16はそれぞれX軸方向に並んだ2つのテープ部品供給装置13の間に設けられている。部品撮像カメラ16は実装ヘッド21に吸着されている部品Eを下から撮像して実装ヘッド21に対する部品Eの回転角度や部品形状等を認識するためのものである。
【0021】
基板撮像カメラ17は、ヘッドユニット14に取り付けられている。基板撮像カメラ17は、ヘッドユニット14と一体的に、水平面内において移動可能である。
【0022】
基板撮像カメラ17は、基板Pのフィデューシャルマーク(「マーク」の一例)Fを上方から撮像して、画像を取得する。フィデューシャルマークFは、基板Pの上面55Aの四隅に1つずつ形成されている。
【0023】
フィデューシャルマークFの画像は、基板撮像カメラ17から画像処理部43に送信される。画像処理部43は送信された画像に基づき、基板Pの停止状態を認識する。基板Pの停止状態については後述する。
【0024】
1.1 ヘッドユニット
図2を参照して、ヘッドユニット14の構成について説明する。ヘッドユニット14は所謂インライン型であり、複数の実装ヘッド21がX軸方向に並んで設けられている。ヘッドユニット14にはこれらの実装ヘッド21を個別に昇降させるZ軸サーボモータ48(
図4参照)やこれらの実装ヘッド21を一斉に軸周りに回転させるR軸サーボモータ49(
図4参照)等が設けられている。
【0025】
各実装ヘッド21は部品Eを吸着及び解放するものであり、ノズルシャフト21Aと、ノズルシャフト21Aの下端部に着脱可能に取り付けられている吸着ノズル21Bとを有している。吸着ノズル21Bにはノズルシャフト21Aを介して図示しない空気供給装置から負圧及び正圧が供給される。吸着ノズル21Bは負圧が供給されることによって部品Eを吸着し、正圧が供給されることによってその部品Eを解放する。
【0026】
また、本実施形態では、ヘッドユニット14は、基板Pの搬送方向上の位置を検出するレーザセンサ24を有している。レーザセンサ24は、ヘッドユニット14とともに水平面内で移動可能である。レーザセンサ24は、レーザ光により基板Pの位置を検出する光学式のセンサである。具体的には、レーザセンサ24は、下方に向けてレーザ光を照射可能であるとともに、レーザセンサ24から照射されて検出対象物により反射されたレーザ光を検出可能に構成されている。レーザセンサ24は、後述する動作により、搬送された基板Pの位置を検出できる。また、レーザセンサ24は、照射したレーザ光と反射したレーザ光の時間差や位相差に基づいて、基板Pまでの距離を算出することにより、基板Pの反りを測定できる。
【0027】
搬送コンベア11は、基板Pを目標停止位置Aで停止させるように動作するが、正確に目標停止位置Aに一致して停止するとは限らない。
図5に示すように、実際の基板停止位置は目標停止位置Aから搬送方向に誤差Gだけずれた位置になる。また、誤差Gの大きさは一定ではなく、基板Pを目標停止位置Aで停止させる度に変化する。
【0028】
レーザセンサ24は、目標停止位置Aを中心として、搬送方向に許容値Tだけ進んだ位置と、搬送方向の逆方向に許容値Tだけ戻った位置の2か所でレーザ光を照射する。
図5に示すように、2か所のうちの一方のみで反射光を検出した場合には、基板Pが許容値Tの範囲内に位置していることがわかる。許容値Tとは、許容できる誤差Gの大きさ(公差)である。
【0029】
2か所のうちの両方で反射光を検出した場合や、両方で反射光を検出しなかった場合には、許容値Tの範囲内に基板Pの下流側の端部がない。つまりこの場合、誤差Gが許容値Tよりも大きく、基板Pの基板停止位置が許容値Tの範囲外であることが分かる。レーザセンサ24は、このようにして基板Pの基板停止位置が許容値Tの範囲内であるか否かを検出する。レーザセンサ24は、位置検出部の一例である。
【0030】
なお、ここではインライン型のヘッドユニット14を例に説明したが、ヘッドユニット14は例えば複数の実装ヘッド21が円周上に配列された所謂ロータリーヘッドであってもよい。
【0031】
1.2 バックアップ装置
図2から
図3を参照して、バックアップ装置12について説明する。以下に示すバックアップ装置12は一例であり、バックアップ装置12の構成は以下に示す構成に限定されるものではない。
【0032】
図3に示すように、バックアップ装置12は上部プレート31、上部プレート31の下に配されている下部プレート32、4つの支柱33、複数のバックアップピン30、下部プレート32を昇降させる昇降機構34(
図2参照)等を備えている。
【0033】
上部プレート31は平板状に形成された金属製の部材であり、板厚方向に貫通する複数のピン挿入孔31Aがマトリクス状に形成されている。下部プレート32は平板状に形成された金属製の部材であり、四隅から立ち上がる支柱33を介して上部プレート31と連結されている。
【0034】
図2に示すように、昇降機構34は下部プレート32から下方に延びる複数のボールねじ34A、各ボールねじ34Aに螺合しているボールナット34B、昇降モータ34C、ボールナット34Bと昇降モータ34Cとに掛け回されているベルト34D等を備えている。昇降モータ34Cを回転させるとベルト34Dを介してボールナット34Bが回転し、ボールねじ34Aが上下に移動する。これによりバックアップ装置12が昇降する。
【0035】
図2では基板Pがバックアップピン30によって下方から支持されている状態を示している。目標停止位置Aに基板Pが搬入されてくる前の状態では、バックアップピン30は上端が基板Pより下方となる位置まで下降している。目標停止位置Aに基板Pが搬入されるとバックアップピン30が上昇して基板Pが持ち上げられる。これにより基板Pがバックアップピン30によって下方から支持される。
【0036】
2.部品実装装置の電気的構成
図4に示すように、部品実装装置1は制御部18及び操作部19を備えている。制御部18は演算処理部40、モータ制御部41、記憶部42、画像処理部43、外部入出力部44、フィーダ通信部45等を備えている。
【0037】
演算処理部40はCPU、ROM、RAM等を備えており、ROMに記憶されている制御プログラムを実行することによって部品実装装置1の各部を制御する。モータ制御部41は演算処理部40の制御の下でX軸サーボモータ46、Y軸サーボモータ47、Z軸サーボモータ48、R軸サーボモータ49、コンベア駆動モータ50等の各モータの運転、停止、及び回転速度を制御する。
【0038】
記憶部42は電源をオフにしてもデータが消えない書き換え可能な記憶装置(ハードディスク等)である。記憶部42には各種のプログラムや、後述する第1データ、第2データ等の各種データが記憶されている。
【0039】
画像処理部43は部品撮像カメラ16や基板撮像カメラ17から出力される画像信号が取り込まれるように構成されており、出力された画像信号に基づいてデジタル画像を生成する。
【0040】
外部入出力部44はいわゆるインターフェースであり、部品実装装置1の本体に設けられている各種センサ類51から出力される検出信号が取り込まれるように構成されている。また、外部入出力部44は演算処理部40から出力される制御信号に基づいて各種アクチュエータ類52(図示しない空気供給装置、バックアップ装置12を含む)に対する動作制御を行うように構成されている。
【0041】
フィーダ通信部45はフィーダ20に接続されており、フィーダ20を統括して制御する。操作部19は液晶ディスプレイ等の表示部と、タッチパネル、キーボード、マウス等で構成される入力部とを備えている。作業者は操作部19を操作して部品実装装置1に対する各種の設定や動作の指示等を行うことができる。
【0042】
3.既実装部品とバックアップピンの干渉について
基板Pは、まず、先に部品を実装する面である先行面を上に向けた状態で部品実装装置に搬入され、先行面にのみ部品Eが実装される。その後、基板Pを上下反転させて先行面を下に向け、先行面の後に部品を実装する面である後行面を上に向けた状態で基板Pは再度部品実装装置に搬入され、後行面に部品Eが実装される。後行面(上面55A)に部品Eを実装する際に、先行面(下面55B)にすでに実装されている部品Eを、既実装部品E1とする。既実装部品E1とバックアップピン30の干渉について、
図6~
図8を参照して説明する。
【0043】
図6(a)は、基板Pの位置が目標停止位置Aと一致しているとき、すなわち、既実装部品E1とバックアップピン30の設計上の位置関係を示している。基板Pが目標停止位置Aにあるときは、既実装部品E1とバックアップピン30とは、X軸方向に間隔を空けて並んでいる。また、基板Pは前方側の基板ガイドレール25Bに当接している。この位置関係では、バックアップピン30を上昇させても、バックアップピン30は既実装部品E1と干渉しない。
【0044】
図6(b)は、基板Pが目標停止位置Aよりも下流側にずれて停止したときの、既実装部品E1とバックアップピン30の位置関係を示している。バックアップピン30の位置は変わらないが、既実装部品E1は下流側に変位している。この位置関係では、バックアップピン30を上昇させると、バックアップピン30が既実装部品E1と干渉する。
【0045】
図7は、既実装部品E1から見てY軸方向にバックアップピン30が配されている場合の例である。
図7(a)は、基板Pの位置が目標停止位置Aと一致している場合の設計上の位置関係を示している。
図7(a)の状態では、既実装部品E1とバックアップピン30とは、Y軸方向に間隔を空けて並んでいる。この位置関係では、バックアップピン30を上昇させても、既実装部品E1に干渉しない。
【0046】
図7(b)は、
図7(a)の状態と比較して、基板Pが搬送クリアランスCだけ後方側に平行に変位し、基板Pの後方の辺が後方の基板ガイドレール25Aに沿った状態で当接して停止した状態を示している。バックアップピン30と既実装部品E1は平面視にて重畳しており、この状態でバックアップピン30を上昇させると既実装部品E1に干渉する。
【0047】
図7(c)は、
図7(a)の状態と比較して、基板Pが基板ガイドレール25A、25Bの間で時計回りに回転した状態を示している。基板Pの下流側前方に位置する頂点が前方の基板ガイドレール25Bに当接し、基板Pの上流側後方に位置する頂点が、後方の基板ガイドレール25Aに当接している。
図7(c)の状態では、バックアップピン30と既実装部品E1は平面視にて重畳しており、この位置関係でバックアップピン30を上昇させると既実装部品E1に干渉する。
【0048】
図8に示すバックアップピン30の位置は、上述した
図6、
図7のどちらとも異なる。
図8(a)は、基板Pが目標停止位置Aと一致している場合の設計上の位置関係である。この位置関係では、既実装部品E1とバックアップピン30とは、斜め方向に間隔を空けて並んでいる。この状態でバックアップピン30を上昇させても、既実装部品E1に干渉しない。また、この状態から、基板PをX軸方向のみ、又はY軸方向のみに変位させたとしても、干渉は起こらない。
【0049】
図8(b)は、
図8(a)の状態と比較して、基板PがX軸方向及びY軸方向の両方に変位したときの状態を示している。この状態では、バックアップピン30と既実装部品E1は平面視にて重畳しており、バックアップピン30を上昇させると既実装部品E1に干渉する。
【0050】
図8(c)は、
図8(a)の状態から、基板PがX軸方向にずれ、さらに時計回りに回転したときの状態を示している。この状態では、バックアップピン30と既実装部品E1は平面視にて重畳しており、バックアップピン30を上昇させると既実装部品E1に干渉する。
【0051】
以上説明したように、既実装部品E1とバックアップピン30は、基板Pが目標停止位置Aで停止している場合に干渉しなくても、基板Pが目標停止位置Aからずれた位置で停止する場合には、干渉するおそれがある。
【0052】
4.既実装部品とバックアップピンの距離について
記憶部42に記憶されている各種のデータには、生産が予定されている基板Pの品種、各品種を生産する順序、品種ごとのデータ(生産枚数、基板Pの設計上の形状及び大きさ、実装される部品Eの設計上の品種や形状及び大きさ、部品Eの実装順序、部品Eの実装座標、実装角度、バックアップピン30のピン径、立設位置データ等)が含まれる。
【0053】
記憶部42に記憶されている各種のデータから、基板Pの後行面に部品Eを実装する際に、先行面(下面55B)にすでに実装されている既実装部品E1の搭載点の座標と、形状及び大きさが分かる。既実装部品E1の搭載点は、基板Pの基準点を原点とした既実装部品E1の座標で表される。
【0054】
既実装部品E1の座標のデータと、既実装部品E1の形状及び大きさのデータを組み合わせたものが第1データである(
図9(a)参照)。第1データは、基板Pの生産前にあらかじめ作成されている。第1データは、基板Pの下面55Bにおいて既実装部品E1が占める領域を示すデータである。
【0055】
記憶部42に記憶されている各種のデータには、バックアップピン30の立設位置データが含まれる。バックアップピン30の立設位置は、基板P上に設定された基板原点を基準とした座標で表される。
【0056】
バックアップピン30の座標と、ピン径のデータを組み合わせたものが第2データである(
図9(b)参照)。第2データは、基板Pの生産前にあらかじめ作成されている。第2データは、バックアップ装置12が基板Pの下面55Bを下方から支持する際に、個々のバックアップピン30が基板Pの下面55Bに当接する領域を表している。
図9(b)~(d)において破線で示す矩形Qは、理想基板位置Qである。理想基板位置Qは、基板Pの下流側の端部が目標停止位置Aと重なる理想的な位置で停止した場合の基板Pの位置である。
【0057】
第3データは、基板Pの停止状態に関するデータである(
図9(c)、
図10参照)。停止状態とは、基板Pが目標停止位置Aに搬送され、基板停止位置で停止しているときの基板Pの状態であり、基板Pの水平面内における変位、回転、及び伸縮が含まれる。停止状態に関する第3データは、例えば基板撮像カメラ17で認識したフィデューシャルマークFの座標から検出できる。
【0058】
図10は、基板停止位置で停止している基板Pの一例である。基板Pは、4つのフィデューシャルマークF1~F4を有している。各フィデューシャルマークF1~F4の座標から、水平面内において、基板Pが理想基板位置Qからどれだけ変位しているかを検出することができる。基板Pの変位は、基台10上の任意の点を基準とした座標データとして検出される。
【0059】
また、例えばフィデューシャルマークF3、F4を結ぶ直線と、X軸とがなす角度θを求めることで、基板Pの回転を検出できる。フィデューシャルマークF1、F4を結ぶ直線と、Y軸とがなす角度から角度θを求めてもよい。
【0060】
また、フィデューシャルマークF1~F4のうち2つ以上の座標が分かれば、フィデューシャルマークF間の距離を設計値と比較することで、基板Pの伸縮を検出できる。
【0061】
上述した基板Pの第3データ(水平面内における変位、回転、伸縮)の一例を
図9(c)に示す。破線で示す矩形は、目標停止位置Aである。
図9(c)は、基板P及び基板P上に形成されたフィデューシャルマークFが、目標停止位置Aに対して変位、回転している状態を示している。停止状態に関する第3データから、基板Pの水平面内における変位、回転、伸縮の有無や大きさが分かる。
【0062】
図9(d)は、第1データ(
図9(a))に示す基板P及び既実装部品E1を、第3データ(
図9(c))に示す停止状態の基板Pに合わせて回転等させ、さらに、第2データ(
図9(b))に示すバックアップピン30を重ねて表示した図である。基台10に対するバックアップピン30の位置は不変であるのに対し、既実装部品E1の位置は、基板Pの停止状態により変化する。バックアップピン30と既実装部品E1の、搬送方向の距離Dは、生産する基板Pの品種が同一であっても、停止状態が変化するごとに、すなわち基板Pを目標停止位置Aで停止させるごとに、動的に変化する。
【0063】
設計上のデータである第1データ、第2データに加えて、目標停止位置Aに搬送された基板Pの実際の停止状態に関する第3データも考慮することにより、バックアップピン30と既実装部品E1の位置関係を、正確に把握できる。
【0064】
制御部18は、第1データ~第3データに基づき作成したバックアップピン30と既実装部品E1の位置関係(
図9(d))を参照して、既実装部品E1ごとに、既実装部品E1から、搬送方向に最も近いバックアップピン30との距離Dを算出する。
図9(d)では、各既実装部品E1について算出した距離DをそれぞれD1、D2、D3としている。
【0065】
全ての既実装部品E1についてそれぞれ算出した距離Dのうち最も小さい距離を、その基板Pにおける最小距離Dminとする。
図9(d)の例では、距離D2が最小距離Dminとなる。
【0066】
以上説明したように、制御部18は、第1データ、第2データ、及び第3データに基づき、既実装部品E1とバックアップピン30の最小距離Dminを算出する。制御部18は、基板Pを搬送して目標停止位置Aで停止させるごとに、その基板Pにおける最小距離Dminを算出する。
【0067】
5.基板ごとに許容値Tを動的に変更
上述したように、基板Pが実際に停止する基板停止位置は、目標停止位置Aに対して搬送方向に誤差Gだけずれた位置になる場合がある(
図5参照)。誤差Gの大きさが、最小距離Dminよりも大きい場合、バックアップピン30が既実装部品E1に干渉するおそれがある。バックアップピン30が先行面の既実装部品E1に干渉すれば、既実装部品E1が破損したり、バックアップされた基板Pが撓んで後行面の実装に失敗したりする。
【0068】
一方、誤差Gが最小距離Dminよりも小さければ、バックアップピン30を上昇させても既実装部品E1と干渉するおそれがない。したがって、誤差Gの許容値Tを、基板Pごとに算出した最小距離Dminの値に基づいて、基板Pごとに動的に変更する。具体的には、許容値Tを、算出した最小距離Dminの値に変更する。そして、レーザセンサ24を用いて基板Pの誤差Gが許容値T(最小距離Dmin)より小さいことを確認した場合に限り、バックアップピン30を上昇させる。これにより、バックアップピン30が既実装部品E1と干渉しない場合のみバックアップピン30が上昇するため、既実装部品E1とバックアップピン30の干渉を抑制できる。
【0069】
6.フローチャートの説明
次に、
図11のフローチャートを参照して、部品実装装置1による許容値Tの変更について説明する。
図11は、既に下面55Bに部品Eが実装されている基板Pに対し、上面55Aに部品Eを実装しようとする場合に適用されるフローチャートである。
【0070】
オペレータが操作部19を操作して生産プログラムを開始すると、制御部18は、搬送コンベア11を動作させて、基板Pを部品実装装置1の内部に搬入する。搬送コンベア11は基板Pを搬送し、目標停止位置Aで位置決めして停止させる(S10)。このとき、基板Pが実際に停止する基板停止位置は、目標停止位置Aから搬送方向に誤差Gだけずれている(
図5参照)。
【0071】
次に、制御部18は、基板撮像カメラ17にフィデューシャルマークFを撮像、認識させる(S20)。撮像した画像に基づき、制御部18は、基板Pの停止状態(変位、回転、伸縮)に関する第3データを算出する(S30)。
【0072】
次に、制御部18は、記憶部42に記憶されている第1データ、第2データと、算出した第3データに基づいて、既実装部品E1とバックアップピン30との位置関係を算出する(S40)。次に、既実装部品E1とバックアップピン30との搬送方向の距離D、及び距離Dの最小値である最小距離Dminを算出する(S50)。
【0073】
次に、制御部18は、許容値Tを、最小距離Dminに基づいて変更し、記憶部42に記憶させる(S60)。本実施形態では、許容値Tの値を、最小距離Dminの値に変更する。
【0074】
次に、制御部18は、レーザセンサ24を動作させ、基板停止位置が、目標停止位置Aを中心とした許容値Tの範囲内にあるか否かを検出する(S70)。基板停止位置が許容値Tの範囲内である場合(S70:YES)、制御部18は、バックアップピン30を上昇させて、基板Pを下方から支持する(S50)。その後、基板Pの後行面(上面55A)上に部品Eが実装される。
【0075】
一方、基板停止位置が許容値Tの範囲内を超えている場合(S70:NO)、制御部18は、生産中の基板Pについて位置決めのリトライ回数nが所定の上限値に達しているか否かを判断する(S90)。リトライ回数nは新たに基板Pを搬入したときに0からスタートし、基板Pの位置決めのリトライを行うたびに1ずつカウントアップされる。
【0076】
リトライ回数が上限値に達していない場合は(S90:NO)、搬送コンベア11により基板Pを移動させて、位置決めのリトライを行う(S100)。位置決めのリトライを行うと同時に、リトライ回数をカウントアップし、S20に戻る。
【0077】
リトライ回数が上限値に達している場合は(S90:YES)、制御部18は部品実装装置1をエラー停止させる(S110)。エラー停止後はオペレータにエラー停止を報知する等して、オペレータによって停止が解除されるまで待機する。
【0078】
7.効果説明
既実装部品E1とバックアップピン30の距離Dの最小値である最小距離Dminは、基板Pの停止状態(変位、回転、伸縮)によって変化する。許容値Tが固定値である場合は、基板停止位置の誤差Gが許容値Tの範囲を超えていたとしても、基板Pの停止状態によっては、バックアップピン30が既実装部品E1に干渉しないことがあり得る。しかし、誤差Gが許容値Tの範囲を超えている場合には、干渉するかしないかにかかわらず、位置決めのリトライを行っていたため、タクトロスとなっていた。
【0079】
本実施形態の構成では、目標停止位置Aに搬送された基板Pごとに、誤差Gの許容値Tを動的に変更し、搬送された基板Pに適した許容値Tを用いて、干渉の有無について判断する。これにより、干渉が生じると判断した場合にはリトライを行い、干渉を抑制できる。また、搬送された基板Pに適した許容値Tを用い、干渉が生じないと判断した場合には、不必要なリトライを削減してタクトロスを解消できる。
【0080】
また、本実施形態の構成では、既実装部品E1に関する第1データ、バックアップピン30に関する第2データ、及び目標停止位置Aに搬送された基板Pの停止状態に関する第3データ、に基づいて誤差Gの許容値Tを変更する。実際の停止状態を考慮して算出した位置関係に基づいて、許容値Tを変更することができるため、干渉を抑制できるとともに、不必要なリトライを抑制できる。
【0081】
また、本実施形態の構成では、基板撮像カメラ17で基板PのフィデューシャルマークFを撮像して、基板Pの停止状態(変位、回転、伸縮)を認識する。制御部18は、基板Pの停止状態を認識することにより、既実装部品E1とバックアップピン30の位置関係をより正確に見積もることができる。これにより、干渉を抑制できるとともに、不必要なリトライを抑制できる。
【0082】
また、本実施形態の部品実装装置1は、レーザセンサ24を用いて基板停止位置の誤差Gが許容値Tの範囲内であるか否かを判定する。誤差Gが許容値Tの範囲内であれば、バックアップピン30を上昇させる。誤差Gが許容値Tの範囲を超えている場合には、バックアップピン30を上昇させずに位置決めのリトライを行う。このように、誤差Gが許容値Tの範囲を超えていて、干渉が起こる可能性が高いときのみリトライを行うため、干渉を抑制するとともに、不必要なリトライを減らしてタクトの低下を防ぐことができる。
【0083】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、許容値Tの値を最小距離Dminに変更する場合を例示したが、変更後の許容値Tは最小距離Dminと一致していなくてもよい。例えば、許容値Tを、最小距離Dminに所定の係数を乗じた値に変更してもよいし、最小距離Dminに所定のマージンを加算したり、減算したりした値に変更してもよい。
【0084】
(2)上記実施形態では、第1データとして既実装部品E1の、設計上の位置及び形状のデータを用いたが、第1データは設計上のデータではなく、実績に基づく測定データであってもよい。例えば、先行面に部品Eを実装した後に検査機を用いて既実装部品E1の位置及び形状の情報を取得し、後行面に実装する際にこの情報を第1データとして利用してもよい。
【0085】
(3)上記実施形態では、フィデューシャルマークFの測定座標に基づいて基板Pの停止状態に関する第3データを取得したが、フィデューシャルマークFを用いずに第3データを取得してもよい。例えば、レーザセンサ24を用いて基板Pの外縁の位置を検出することにより第3データを取得してもよいし、フィデューシャルマークF以外の基板P上のマークやパターン(配線、ランド、スルーホール等)をカメラで検出して第3データを取得してもよい。
【0086】
(4)上記実施形態では、第3データは基板Pの停止状態に関するデータであり、基板Pの変位、回転、伸縮の3つのパラメータを含んでいる。第3データは、これら3つのパラメータをすべて含んでいる必要はなく、3つのうち少なくとも一つを含んでいればよい。
【0087】
(5)基板PにフィデューシャルマークFが4個形成されている場合を例示したが、フィデューシャルマークFは2~3個でもよいし、5個以上でもよい。
【0088】
(6)上記実施形態では、基板PごとにフィデューシャルマークFを認識して誤差Gの許容値Tを変更した。誤差Gの許容値Tの変更は、フィデューシャルマークFを認識せず、基板Pの品種ごとに行ってもよい。
【0089】
例えば、生産開始前にオペレータが基板Pの品種を入力したり、基板Pの表面に記載された基板IDを基板認識カメラ17で読み取ったりすることにより、制御部18は基板Pの品種情報を取得する。品種と1対1で対応するようにあらかじめ設定された誤差Gの許容値Tを、同一品種の基板Pに対して適用することで、基板Pの品種ごとに誤差Gの許容値Tを変更することができる。
【符号の説明】
【0090】
1:部品実装装置
11:搬送部
18:制御部
30:バックアップピン
55B:下面
P:基板
E:部品
E1:既実装部品
A:目標停止位置
G:誤差
T:許容値