(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142972
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/567 20210101AFI20241003BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20241003BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20241003BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20241003BHJP
H01G 11/76 20130101ALI20241003BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M50/567
H01M50/54
H01M50/545
H01M50/536
H01M50/566
H01M50/176
H01M50/588
H01M50/593
H01G11/86
H01G11/26
H01G11/76
H01G11/82
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055401
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078HA21
5E078JA01
5E078KA01
5E078KA04
5E078LA07
5H011AA09
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG01
5H011HH02
5H043AA19
5H043BA11
5H043CA04
5H043CA13
5H043DA03
5H043DA09
5H043EA02
5H043EA32
5H043EA35
5H043EA39
5H043EA40
5H043HA06E
5H043HA07E
5H043HA08D
5H043HA08E
5H043HA11D
5H043HA17D
5H043JA01D
(57)【要約】
【課題】正極外部端子及び負極外部端子がそれぞれケースと絶縁された蓄電デバイスに比べて、部品点数を少なくすることができる蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】蓄電デバイス1は、導電性を有するケース10と、ケース10内に収容された電極体50とを備える。電極体50は、第1集電部50cと、第1集電部50cとは異極の第2集電部50dとを有しており、ケース10と電極体50の第1集電部50cとが、これらを加締め接合した加締め接合部61で導通接続されてなる。また蓄電デバイス1は、ケース10と絶縁され、かつケース10に固設され、ケース10内で電極体50の第2集電部50dに接続した電極外部端子70を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するケースと、前記ケース内に収容された電極体と、を備える蓄電デバイスであって、
前記電極体は、
第1集電部と、前記第1集電部とは異極の第2集電部とを有しており、
前記ケースと前記電極体の前記第1集電部とが、これらを加締め接合した加締め接合部で導通接続されてなり、
前記ケースと絶縁され、かつ前記ケースに固設され、前記ケース内で前記電極体の前記第2集電部に接続した電極外部端子を備える
蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスであって、
前記ケースは、金属板からなり、
前記加締め接合部は、前記ケースを板厚方向の内側に凹ませた形態を有する
蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスであって、
前記ケースのうち前記加締め接合部をなすケース接合部と、前記電極体の前記第1集電部のうち前記加締め接合部をなす集電接合部とを溶接してなる
蓄電デバイス。
【請求項4】
導電性を有するケースと、前記ケース内に収容された電極体と、を備え、
前記電極体は、
第1集電部と、前記第1集電部とは異極の第2集電部とを有しており、
前記ケースと前記電極体の前記第1集電部とが、これらを加締め接合した加締め接合部で導通接続されてなり、
前記ケースと絶縁され、かつ前記ケースに固設され、前記ケース内で前記電極体の前記第2集電部に接続した電極外部端子を備える
蓄電デバイスの製造方法であって、
前記ケースと前記電極体の前記第1集電部とを加締め接合し、前記加締め接合部を形成する加締め工程を備える
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記ケースは、金属板からなり、
前記電極体の前記第1集電部は、第1集電箔が箔厚み方向に積層されてなり、
前記加締め工程は、
凹部を有するダイと、先端部を有するポンチとを用い、
前記ケース及び前記第1集電部を、前記ケースの板厚方向と前記箔厚み方向とが一致する姿勢に重ね、前記ポンチ側に前記ケースを、前記ダイ側に前記第1集電部を位置させて、前記ポンチの前記先端部と前記ダイの前記凹部との間に配置し、
前記ポンチの前記先端部を前記ダイの前記凹部に向けて移動させて、前記ケースと前記第1集電部とを加締め接合する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記ケースのうち前記加締め接合部をなすケース接合部と、前記電極体の前記第1集電部のうち前記加締め接合部をなす集電接合部とを溶接する加締め部溶接工程を更に備える
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記加締め部溶接工程は、
前記ケースの外部から前記ケース接合部に向けてレーザ光を照射して、前記ケース接合部を前記集電接合部にレーザ溶接する
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性のケース内に電極体が収容された蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性のケース内に電極体が収容された電池が知られている。従来の電池では、正極外部端子及び負極外部端子をそれぞれケースと絶縁した状態でケースに固設し、ケース内で電極体の正極集電部及び負極集電部に接続している。関連する従来技術として、例えば特許文献1が挙げられる(特許文献1の
図1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の電池は、正極外部端子及び負極外部端子をそれぞれケースと絶縁しているため、正極外部端子及び負極外部端子のそれぞれに絶縁部材が必要であり、部品点数が多い。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、正極外部端子及び負極外部端子がそれぞれケースと絶縁された蓄電デバイスに比べて、部品点数を少なくすることができる蓄電デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、導電性を有するケースと、前記ケース内に収容された電極体と、を備える蓄電デバイスであって、前記電極体は、第1集電部と、前記第1集電部とは異極の第2集電部とを有しており、前記ケースと前記電極体の前記第1集電部とが、これらを加締め接合した加締め接合部で導通接続されてなり、前記ケースと絶縁され、かつ前記ケースに固設され、前記ケース内で前記電極体の前記第2集電部に接続した電極外部端子を備える蓄電デバイスである。
【0007】
上述の蓄電デバイスでは、ケースが電極体の第1集電部に導通し、ケースが一方の電極外部端子を兼ねているので、絶縁部材が要らない。このため、正極外部端子及び負極外部端子がそれぞれケースと絶縁された蓄電デバイスに比べて、部品点数を少なくすることができる。またケースと電極体の第1集電部とを加締め接合部で導通接続しているので、ケースと電極体の第1集電部とを適切に導通接続できる。
【0008】
なお、「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタなどが挙げられる。
「加締め接合部」としては、例えば、電極体の第1集電部の上に金属部材(金属板や金属リング等)を重ね、第1集電部をケースと金属部材との間に挟んで、ケース、第1集電部及び金属部材を加締めた加締め接合部や、電極体の第1集電部を金属部材(金属板等)に溶接し、この金属部材をケースに重ねて、ケース、金属部材及び第1集電部を加締めた加締め接合部などが挙げられる。
【0009】
(2)更に(1)に記載の蓄電デバイスであって、前記ケースは、金属板からなり、前記加締め接合部は、前記ケースを板厚方向の内側に凹ませた形態を有する蓄電デバイスとすると良い。
【0010】
上述の蓄電デバイスでは、ケースと電極体の第1集電部との加締め接合部を、ケースを内側に凹ませた形態としており、加締め接合部がケースの外側に向けて突出していない。このため、加締め接合部の形成によって蓄電デバイスの配置等の自由度が妨げられることがない。
【0011】
(3)更に(1)または(2)に記載の蓄電デバイスであって、前記ケースのうち前記加締め接合部をなすケース接合部と、前記電極体の前記第1集電部のうち前記加締め接合部をなす集電接合部とを溶接してなる蓄電デバイスとすると良い。
【0012】
上述の蓄電デバイスでは、ケースのうち加締め接合部をなすケース接合部と、電極体の第1集電部のうち加締め接合部をなす集電接合部とを、加締め接合するのに加えて溶接をもしているので、ケースと第1集電部とを特に低抵抗で、確実に導通接続できる。
【0013】
(4)また他の態様は、導電性を有するケースと、前記ケース内に収容された電極体と、を備え、前記電極体は、第1集電部と、前記第1集電部とは異極の第2集電部とを有しており、前記ケースと前記電極体の前記第1集電部とが、これらを加締め接合した加締め接合部で導通接続されてなり、前記ケースと絶縁され、かつ前記ケースに固設され、前記ケース内で前記電極体の前記第2集電部に接続した電極外部端子を備える蓄電デバイスの製造方法であって、前記ケースと前記電極体の前記第1集電部とを加締め接合し、前記加締め接合部を形成する加締め工程を備える蓄電デバイスの製造方法である。
【0014】
ケースと電極体の第1集電部とを接合するに当たり、例えば、電極体の第1集電部に向けてレーザ光を照射して、電極体の第1集電部をケースにレーザ溶接した場合、ケース内にスパッタに起因した金属異物が発生する。このような金属異物は、内部短絡を生じ得る。これに対し、上述の蓄電デバイスの製造方法では、加締め工程で加締め接合を行うことにより、ケースと電極体の第1集電部とを導通接続するので、上述のように金属異物が発生して内部短絡が生じることがなく、適切にケースと電極体の第1集電部とを接合できる。
【0015】
(5)更に(4)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記ケースは、金属板からなり、前記電極体の前記第1集電部は、第1集電箔が箔厚み方向に積層されてなり、前記加締め工程は、凹部を有するダイと、先端部を有するポンチとを用い、前記ケース及び前記第1集電部を、前記ケースの板厚方向と前記箔厚み方向とが一致する姿勢に重ね、前記ポンチ側に前記ケースを、前記ダイ側に前記第1集電部を位置させて、前記ポンチの前記先端部と前記ダイの前記凹部との間に配置し、前記ポンチの前記先端部を前記ダイの前記凹部に向けて移動させて、前記ケースと前記第1集電部とを加締め接合する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0016】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、ダイとポンチを用いて上述のように加締め工程を行うことで、ケースと電極体の第1集電部との加締め接合部が、ケースを内側に凹ませた形態となる。このため、加締め接合部の形成によって蓄電デバイスの配置等の自由度が妨げられることがない。
【0017】
(6)更に(4)または(5)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記ケースのうち前記加締め接合部をなすケース接合部と、前記電極体の前記第1集電部のうち前記加締め接合部をなす集電接合部とを溶接する加締め部溶接工程を更に備える蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0018】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、ケースのうち加締め接合部をなすケース接合部と、電極体の第1集電部のうち加締め接合部をなす集電接合部とを、加締め工程で加締め接合するのに加えて、加締め部溶接工程で溶接をもするので、ケースと第1集電部を特に低抵抗で、確実に導通接続できる。
【0019】
(7)更に(6)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記加締め部溶接工程は、前記ケースの外部から前記ケース接合部に向けてレーザ光を照射して、前記ケース接合部を前記集電接合部にレーザ溶接する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0020】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、ケースの外部からケース接合部に向けてレーザ光を照射して、ケース接合部を第1集電部の集電接合部にレーザ溶接するので、ケース内でスパッタに起因した金属異物が発生するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】実施形態に係る電池のケース高さ方向及びケース幅方向に沿う部分破断断面図である。
【
図3】実施形態に係る電池のケース高さ方向及びケース厚み方向に沿う、
図1及び
図2におけるA-A矢視断面図である。
【
図4】実施形態に係る電池のうち、
図3における加締め接合部近傍の部分拡大断面図である。
【
図5】実施形態に係る電池のケース高さ方向及びケース厚み方向に沿う、
図1及び
図2におけるB-B矢視断面図である。
【
図6】実施形態に係る電池の製造方法のフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る電池の製造方法に関し、端子接続工程において、ケース本体部材の固設した負極外部端子に、電極体の負極集電部をレーザ溶接する様子を示す説明図である。
【
図8】実施形態に係る電池の製造方法に関し、電極体をケース本体部材内に収容した様子を示す説明図である。
【
図9】実施形態に係る電池の製造方法に関し、加締め工程において、ポンチ及びダイを配置した様子を示す説明図である。
【
図10】実施形態に係る電池の製造方法に関し、加締め工程において、ポンチ及びダイにより、ケース、電極体の正極集電部及び金属板を加締め接合する様子を示す説明図である。
【
図11】実施形態に係る電池の製造方法に関し、加締め部溶接工程において、加締め接合部をなすケース接合部、集電接合部及び金属板接合部をレーザ溶接する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態に係る電池(蓄電デバイス)1の斜視図を、
図2~
図5に電池1の断面図を示す。なお、以下では、電池1のケース高さ方向AH、ケース幅方向BH、ケース厚み方向CHを、
図1~
図5に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型(直方体状)で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0023】
電池1は、正極電位とされたケース10と、ケース10内に収容された積層型の電極体50と、ケース10に絶縁しつつ支持された負極外部端子(電極外部端子)70等から構成されている。電極体50は、ケース10内で、絶縁フィルムからなる袋状の図示しない絶縁ホルダに覆われている。またケース10内には、電解液3が収容されており、その一部は電極体50内に含浸され、残りはケース10の底壁部である第2側壁部14上に溜まっている。
【0024】
ケース10は、金属板(本実施形態ではアルミニウム板)からなり、導電性を有する。ケース10は、直方体箱状であり、各々矩形状をなす第1主壁部11、第2主壁部12及び4つの側壁部13~16(第1側壁部13、第2側壁部14、第3側壁部15及び第4側壁部16)を有する。第1主壁部11及び第2主壁部12は、側壁部13~16よりも面積が広い。第1主壁部11及び第2主壁部12は互いに対向しており、第1主壁部11がケース厚み方向CHの一方側CH1(
図1中、右手前側、
図3及び
図5中、左側)、第2主壁部12はケース厚み方向CHの他方側CH2(
図1中、左奥側、
図3及び
図5中、右側)に位置する。
【0025】
一方、側壁部13~16は、第1主壁部11と第2主壁部12の間を結んで、ケース厚み方向CHにそれぞれ延びている。第1側壁部13と第2側壁部14は互いに対向しており、第1側壁部13がケース高さ方向AHの上側AH1、第2側壁部14がケース高さ方向AHの下側AH2に位置する。また第3側壁部15と第4側壁部16は互いに対向しており、第3側壁部15がケース幅方向BHの一方側BH1、第4側壁部16がケース幅方向BHの他方側BH2に位置する。
【0026】
このケース10は、矩形状の開口21cを有する有底角筒状で、内部に電極体50を収容するケース本体部材21と、ケース本体部材21の開口21cを塞ぐ矩形板状の蓋部材31とから構成されている。このうちケース本体部材21は、前述の第2主壁部12及び4つの側壁部13~16をなしている。一方、蓋部材31は、前述の第1主壁部11をなしており、蓋部材31の蓋周縁部31fとケース本体部材21の開口21cの開口周縁部21fとが全周にわたり気密に接合(本実施形態では溶接)されている。
【0027】
ケース10の上壁部でもある第1側壁部13には、ケース10の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁17が設けられている。また第1側壁部13には、第1側壁部13を貫通する注液孔13kが設けられており、この注液孔13kは、アルミニウムからなる円板状の封止部材18で気密に封止されている。
更に第1側壁部13のうちケース幅方向BHの他方側BH2の端部近傍には、銅からなる負極外部端子70が固設されている。具体的には、第1側壁部13のうちケース幅方向BHの他方側BH2の端部近傍には、第1側壁部13を貫通する挿通孔13hが設けられており、この挿通孔13h内に負極外部端子70が挿通され、負極外部端子70がケース10の内部からケース10の外部まで延びている。負極外部端子70は、ケース10内で、後述する電極体50の負極集電部50dに導通接続している。また負極外部端子70と第1側壁部13は、絶縁部65を介して絶縁されている。この絶縁部65は、各々絶縁性の樹脂からなり、第1側壁部13の外側及び挿通孔13h内に位置する外部樹脂部材66と、第1側壁部13の内側(ケース10内)に位置する内部樹脂部材67とからなる。
【0028】
次に電極体50について説明する。この電極体50は、直方体状で積層型であり、複数の正極板(第1電極板)51と複数の負極板(第2電極板)54を、樹脂製の多孔質膜からなるセパレータ57を介して交互にケース厚み方向CHに積層したものである。正極板51、負極板54及びセパレータ57は、それぞれケース高さ方向AH及びケース幅方向BHに拡がる矩形状をなす。
【0029】
正極板51は、アルミニウム箔からなる正極集電箔(第1集電箔)52と、この正極集電箔52の両主面上にそれぞれ形成された正極活物質層(第1活物質層)53とからなる。正極活物質層53は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質粒子を含んでいる。また正極集電箔52の一部は、ケース幅方向BHの一方側BH1の端部近傍において上側AH1に延出しており、その両面に正極活物質層53が存在せずに露出した正極箔露出部(第1箔露出部)52rとなっている。各々の正極板51の正極箔露出部52rは、その箔厚み方向EHに重なって正極集電部(第1集電部)50cを形成している。この正極集電部50cは、後述するようにケース10に加締め接合により導通接続している。
【0030】
負極板54は、銅箔からなる負極集電箔(第2集電箔)55と、この負極集電箔55の両主面上にそれぞれ形成された負極活物質層(第2活物質層)56とからなる。負極活物質層56は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質粒子を含んでいる。また負極集電箔55の一部は、ケース幅方向BHの他方側BH2の端部近傍において上側AH1に延出しており、その両面に負極活物質層56が存在せずに露出した負極箔露出部(第2箔露出部)54rとなっている。各々の負極板54の負極箔露出部54rは、その箔厚み方向FHに重なって負極集電部(第2集電部)50dを形成している。この負極集電部50dは、負極外部端子70に溶接により導通接続している。
【0031】
電極体50の正極集電部50cとケース10の第2主壁部12とは、これらを加締め接合した2つの加締め接合部61で導通接続している。これらの加締め接合部61は、第2主壁部12のうち、ケース高さ方向AHの上側AH1かつケース幅方向BHの一方側BH1の端部近傍に形成されている。
本実施形態では、加締め接合部61は、正極集電部50cの上に矩形状のアルミニウム板からなる金属板(金属部材)63を重ね、正極集電部50cを第2主壁部12と金属板63との間に挟んで、第2主壁部12、正極集電部50c及び金属板63を加締めてなる。第2主壁部12と正極集電部50cのみを重ねて加締めるのではなく、このように正極集電部50cを第2主壁部12と金属板63との間に挟んで加締めることにより、これらを確実に加締め接合することができる。
【0032】
加締め接合部61は、ケース10を板厚方向DHの内側DH1に凹ませた形態を有する。具体的には、ケース10の第2主壁部12のうち、加締め接合部61をなすケース接合部12gが、平面視円形状で板厚方向DHの内側DH1にケース10の内部に凹んでいる。また電極体50の正極集電部50cのうち、加締め接合部61をなす集電接合部50cgも、平面視円形状で箔厚み方向EHにケース10の内部に凹んでいる。また金属板63のうち、加締め接合部61をなす金属板接合部63gも、平面視円形状でケース10の内部に凹んでいる。更に加締め接合部61は、その中央において、ケース接合部12gと集電接合部50cgと金属板接合部63gとが溶接部61yで互いに溶接されている。
【0033】
以上で説明したように、電池1は、ケース10が電極体50の正極集電部50cに導通し、ケース10が正極外部端子を兼ねているので、絶縁部材が要らない。このため、正極外部端子及び負極外部端子がそれぞれケースと絶縁された電池に比べて、部品点数を少なくすることができる。またケース10と電極体50の正極集電部50cとを加締め接合部61で導通接続しているので、ケース10と正極集電部50cを適切に導通接続できる。
【0034】
更に本実施形態では、加締め接合部61を、ケース10を内側DH1に凹ませた形態としており、加締め接合部61がケース10の外側DH2に向けて突出していない。このため、加締め接合部61の形成によって電池1の配置等の自由度が妨げられることがない。
また、ケース10のうち加締め接合部61をなすケース接合部12gと、電極体50の正極集電部50cのうち加締め接合部61をなす集電接合部50cgとを、加締め接合するのに加えて溶接をもしているので(加締め接合部61に溶接部61yを形成しているので)、ケース10と正極集電部50cとを特に低抵抗で、確実に導通接続できる。
【0035】
次いで、電池1の製造方法について説明する(
図6~
図11参照)。なお、
図7及び
図8は
図5に対応した断面の説明図であり、
図9は
図3に対応した断面の説明図であり、
図10及び
図11は
図4に対応した断面の説明図である。
まずケース本体部材21を用意し、このケース本体部材21の第1側壁部13に、負極外部端子70を固設する。また正極板51、負極板54及びセパレータ57を積層して、正極集電部50c及び負極集電部50dを有する電極体50を形成し、電極体50を袋状の絶縁ホルダ(不図示)で包んでおく。
【0036】
そして「端子接続工程S1」(
図6参照)において、ケース本体部材21に固設した負極外部端子70に、電極体50の負極集電部50dを接続する(
図7参照)。具体的には、電極体50の負極集電部50dを負極外部端子70に、ケース高さ方向AHの下側AH2から上側AH1に当接させた状態で、レーザ光LCを下側AH2から上側AH1に負極集電部50dに向けて照射し、負極集電部50dを負極外部端子70にレーザ溶接する。その後、電極体50を負極集電部50dにおいて屈曲させて、電極体50をケース本体部材21に収容する(
図8参照)。
【0037】
次に「加締め工程S2」(
図6参照)において、ケース10の第2主壁部12と電極体50の正極集電部50cと金属板63とを加締め接合し、加締め接合部61を形成する(
図9及び
図10参照)。この加締め工程S2は、平面視円状の凹部DEhを有するダイDEと、ダイDEの凹部DEhの内径よりも外径が小さい円柱状の先端部PTsを有するポンチPTとを用いて行う。
まずポンチPTの先端部PTsとダイDEの凹部DEhとの間に、ケース10の第2主壁部12、電極体50の正極集電部50c及び金属板63を配置する(
図9参照)。具体的には、ケース10の第2主壁部12、電極体50の正極集電部50c及び金属板63を、第2主壁部12の板厚方向DHと正極集電部50cの正極集電箔52の箔厚み方向EHとが一致する姿勢に重ねて、ポンチPT側にケース10の第2主壁部12を、ダイDE側に金属板63及び正極集電部50cを配置する。
【0038】
その後、ポンチPTの先端部PTsをダイDEの凹部DEhに向けて移動させて、ポンチPTの先端部PTsとダイDEの凹部DEhにより、ケース10の第2主壁部12、正極集電部50c及び金属板63を加締め接合する(
図10参照)。これにより、第2主壁部12のケース接合部12g、正極集電部50cの集電接合部50cg及び金属板63の金属板接合部63gからなる加締め接合部61が形成される。続いて、ポンチPT及びダイDEの位置をケース幅方向BHにずらして、同様に加締め接合を行い、他方の加締め接合部61を形成する。このようにして、ケース10の第2主壁部12と電極体50の正極集電部50cとを、2つの加締め接合部61で導通接続する。
【0039】
次に「加締め部溶接工程S3」(
図6参照)において、ケース10の第2主壁部12のうち加締め接合部61をなすケース接合部12gと、電極体50の正極集電部50cのうち加締め接合部61をなす集電接合部50cgと、金属板63のうち加締め接合部61をなす金属板接合部63gとを溶接する(
図11参照)。具体的には、2つの加締め接合部61のそれぞれについて、ケース10の外部から(板厚方向DHの外側DH2から内側DH1に)第2主壁部12のケース接合部12gの中央部に向けてレーザ光LBを照射して、ケース接合部12gの中央部と、正極集電部50cの集電接合部50cgの中央部と、金属板63の金属板接合部63gの中央部とをレーザ溶接する。これにより、各加締め接合部61の中央に溶接部61y(
図4参照)が形成される。
【0040】
次に「ケース形成工程S4」(
図6参照)において、ケース本体部材21に蓋部材31を接合して、ケース10を形成する。具体的には、ケース本体部材21の上に蓋部材31を被せ、蓋部材31の蓋周縁部31fをケース本体部材21の開口周縁部21fに全周にわたり当接させる。その後、蓋周縁部31fと開口周縁部21fを全周にわたり気密にレーザ溶接して、ケース10を形成する。
次に「注液・封止工程S5」において、電解液3を注液孔13kを通じてケース10内に注液し、電解液3を電極体50内に含浸させる。その後、注液孔13kを外部から封止部材18で覆い、封止部材18をケース10に気密にレーザ溶接する。
次に「初充電・エージング工程S6」において、この電池1に充電装置(不図示)を接続して、電池1に初充電を行う。その後、初充電した電池1を所定時間にわたり静置して、電池1をエージングする。かくして、電池1が完成する。
【0041】
ところで、ケース10と電極体50の正極集電部50cとを接合するに当たり、例えば、電極体50の正極集電部50cに向けてレーザ光を照射して、電極体50の正極集電部50cをケース10にレーザ溶接した場合、ケース10内にスパッタに起因した金属異物が発生する。このような金属異物は、内部短絡を生じ得る。これに対し、電池1の製造方法では、加締め工程S2で加締め接合を行うことにより、ケース10と電極体50の正極集電部50cとを導通接続するので、上述のように金属異物が発生して内部短絡が生じることがなく、適切にケース10と電極体50の正極集電部50cとを接合できる。
更に本実施形態では、ポンチPTとダイDEを用いて前述のように加締め工程S2を行うことで、加締め接合部61が、ケース10の第2主壁部12を内側DH1に凹ませた形態となる。このため、加締め接合部61の形成によって電池1の配置等の自由度が妨げられることがない。
【0042】
また本実施形態では、ケース10の第2主壁部12のうち加締め接合部61をなすケース接合部12gと、電極体50の正極集電部50cのうち加締め接合部61をなす集電接合部50cgとを、加締め工程S2で加締め接合するのに加えて、加締め部溶接工程S3で溶接をもするので、ケース10の第2主壁部12と正極集電部50cを特に低抵抗で、確実に導通接続できる。
更に加締め部溶接工程S3では、ケース10の外部からケース接合部12gに向けてレーザ光LBを照射して、ケース接合部12gを正極集電部50cの集電接合部50cgにレーザ溶接するので、この溶接でケース10内でスパッタに起因した金属異物が発生するのを防止できる。
【0043】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば実施形態では、加締め接合部61をケース10のうち第2主壁部12に設けたが、これに限られない。加締め接合部61は、ケース10の他の部位(第1主壁部11や第1側壁部13など)に設けてもよい。
【0044】
また実施形態では、ケース10が正極電位とされた電池1を例示したが、逆にケース10が負極電位とされた電池とすることもできる。即ち、ケース10と電極体の負極集電部とを、これらを加締め接合した加締め接合部で導通接続する。一方、正極外部端子をケース10と絶縁しつつケース10に固設して、ケース10の内部で正極外部端子に電極体の正極集電部を導通接続する。
【符号の説明】
【0045】
1 電池(蓄電デバイス)
10 ケース
12g ケース接合部
50 電極体
50c 正極集電部(第1集電部)
50cg 集電接合部
50d 負極集電部(第2集電部)
51 正極板(第1電極板)
52 正極集電箔(第1集電箔)
52r 正極箔露出部(第1箔露出部)
54 負極板(第2電極板)
55 負極集電箔(第2集電箔)
55r 負極箔露出部(第2箔露出部)
61 加締め接合部
61y 溶接部
65 絶縁部
66 外部樹脂部材
67 内部樹脂部材
70 負極外部端子(電極外部端子)
DH (ケースの)板厚み方向
DH1 (板厚み方向の)内側
DH2 (板厚み方向の)外側
EH (正極集電箔の)箔厚み方向
LB,LC レーザ光
DE ダイ
DEh (ダイの)凹部
PT ポンチ
PTs (ポンチの)先端部
S2 加締め工程
S3 加締め部溶接工程