IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スター精密株式会社の特許一覧

特開2024-142986工作機械および工作機械の切粉取出方法
<>
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図1
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図2
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図3
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図4
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図5
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図6
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図7
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図8
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図9
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図10
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図11
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図12
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図13
  • 特開-工作機械および工作機械の切粉取出方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142986
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】工作機械および工作機械の切粉取出方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20241003BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B23Q11/00 Q
B23Q11/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055420
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】黒田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】川原▲崎▼ 徹
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB22
3C011BB25
3C011DD03
(57)【要約】
【課題】工作機械の機外が汚れてしまうことを抑制した工作機械および工作機械の切粉取出方法を提供する。
【解決手段】ワークWを加工するNC旋盤1において、筐体11と、筐体11の内部に置かれ、ワークWの加工によって生じた切粉を受け入れる切粉バケット8と、筐体11に設けられ、切粉バケット8を筐体11の外部に引き出し可能にする開口1121が形成された開口形成部112と、筐体11に着脱自在に取り付けられ、筐体11に取り付けられた取付状態では開口1121を塞ぐ開口カバー15とを備え、開口形成部112は、開口1121に連続して開口1121の幅方向に延在して形成され、筐体11から取り外された開口カバー15を筐体11の内部に挿入可能にするスリット1122を有するものである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する工作機械において、
筐体と、
前記筐体の内部に置かれ、前記被加工物の加工によって生じた切粉を受け入れる切粉バケットと、
前記筐体に設けられ、前記切粉バケットを該筐体の外部に引き出し可能にする開口が形成された開口形成部と、
前記筐体に着脱自在に取り付けられ、該筐体に取り付けられた取付状態では前記開口を塞ぐ開口カバーとを備え、
前記開口形成部は、前記開口に連続して該開口の幅方向に延在して形成され、前記筐体から取り外された前記開口カバーを前記筐体の内部に挿入可能にするスリットを有するものであることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記開口カバーは、前記取付状態における上側部分が前記開口の幅と前記スリットの延在方向の長さとを合わせた合計幅よりも広い幅に形成され、該取付状態における下側部分が該合計幅よりも狭い幅に形成されたものであり、該取付状態では、該上側部分が該スリットと対面して該スリットを塞ぐものであることを特徴とする請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記筐体の内部に固定され、該筐体の内部に挿入された前記開口カバーの前記取付状態における下端部分を受け止めて該下端部分を支持する支持部材を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の工作機械。
【請求項4】
前記支持部材は、前記スリットよりも下方に配置されたものであることを特徴とする請求項3記載の工作機械。
【請求項5】
前記開口カバーは、前記取付状態で内側になる内側面が下面になる方向で該開口カバーを該筐体の内部に挿入した状態では前記切粉バケットの引き出し経路に突出して該切粉バケットを該筐体から引き出し不能にする突出部を有するものであることを特徴とする請求項1または2記載の工作機械。
【請求項6】
筐体と、該筐体の内部に置かれて被加工物の加工によって生じた切粉を受け入れる切粉バケットと、該切粉バケットを該筐体の外部に引き出し可能にする開口および該開口に連続して該開口の幅方向に延在したスリットとが形成された開口形成部と、該筐体に着脱自在に取り付けられて該筐体に取り付けられた取付状態では前記開口を塞ぐ開口カバーとを備えた工作機械の切粉取出方法であって、
前記開口カバーを前記筐体から取り外す取外工程と、
前記取外工程によって取り外された前記開口カバーを前記スリットに差し込んで該開口カバーを前記筐体の内部に挿入する挿入工程と、
前記切粉バケットを前記筐体から引き出す引出工程とを有することを特徴とする工作機械の切粉取出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する工作機械および工作機械の切粉取出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物を加工する旋盤やフライス盤などの工作機械では切削油が使用されている。この切削油はクーラント液とも称されるものであり、被加工物を加工する際に生じる加工抵抗を低下させるとともに被加工物と工具の冷却効果を有する。また、工作機械では被加工物を加工することで切粉が生じる。この切粉を工作機械の筐体から取り出すため、工作機械の加工室の下端部分には切粉を受け入れる切粉バケットが配置されている(例えば特許文献1参照)。工作機械の筐体には開口形成部が設けられ、その開口形成部には切粉バケットを筐体の外部に引き出し可能にする開口が形成されている。また、その開口から切粉や切削油が工作機械の外部である機外に飛び出したり流出したりしないように、工作機械の筐体には開口を塞ぐ開口カバーが着脱自在に取り付けられている。この開口カバーは、筐体に取り付けられた取付状態において開口全てを覆うために、開口よりも高さが高く開口の幅よりも広い幅に形成されている。切粉バケットに溜まった切粉を廃棄する場合、工作機械のオペレータは、開口カバーを筐体から取り外してその開口カバーを機外に置いた後、切粉バケットを工作機械の筐体から引き出して切粉バケットに溜まった切粉を機外にある廃棄ボックスなどに廃棄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-30355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械の筐体に開口カバーが取り付けられた取付状態において内側になる開口カバーの内側面には加工によって飛散した切粉や切削油が付着する。特許文献1に記載された工作機械では、開口カバーを筐体から取り外して工作機械の機外に置いた時や、その置いた状態で切粉バケットを引き出したり切粉を廃棄している間に、開口カバーの内側面に付着した切粉や切削油が機外に落下してしまうことがある。そして、その落下した切粉や切削油によって工作機械が設置されている工場の床などの機外が汚れてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、工作機械の機外が汚れてしまうことを抑制した工作機械および工作機械の切粉取出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の工作機械は、
被加工物を加工する工作機械において、
筐体と、
前記筐体の内部に置かれ、前記被加工物の加工によって生じた切粉を受け入れる切粉バケットと、
前記筐体に設けられ、前記切粉バケットを該筐体の外部に引き出し可能にする開口が形成された開口形成部と、
前記筐体に着脱自在に取り付けられ、該筐体に取り付けられた取付状態では前記開口を塞ぐ開口カバーとを備え、
前記開口形成部は、前記開口に連続して該開口の幅方向に延在して形成され、前記筐体から取り外された前記開口カバーを前記筐体の内部に挿入可能にするスリットを有するものであることを特徴とする。
【0007】
この工作機械によれば、前記開口カバーを前記筐体の内部に挿入可能にすることで、該筐体から取り外した該開口カバーをこの工作機械の機外に置く必要がなくなる。これにより、前記開口カバーの内側面に付着した切粉や切削油がこの工作機械の機外に落下してしまうことが抑制される。
【0008】
ここで、前記スリットは、前記開口カバーの前記取付状態における下側部分を前記筐体の内部に挿入可能にするものであってもよい。前記開口形成部は、前記開口カバーの幅方向端部が差し込まれる前記スリットを有するものであってもよい。また、前記開口形成部は、前記開口の幅方向両側それぞれに対になる前記スリットを有するものであってもよい。この場合、対になる幅方向両側の前記スリットは同じ高さ位置に形成されていてもよい。前記開口カバーは板状のものであり、前記スリットは前記開口カバーの板厚よりもスリット幅が広く形成されたものであってもよい。
【0009】
この工作機械において、
前記開口カバーは、前記取付状態における上側部分が前記開口の幅と前記スリットの延在方向の長さとを合わせた合計幅よりも広い幅に形成され、該取付状態における下側部分が該合計幅よりも狭い幅に形成されたものであり、該取付状態では、該上側部分が該スリットと対面して該スリットを塞ぐものであってもよい。
【0010】
前記取付状態において前記開口カバーが前記スリットを塞ぐことで該スリットから切粉や切削油が漏れ出てしまうことを防止できる。また、取り外した該開口カバーの該下側部分を前記スリットを通して前記筐体の内部に挿入することができる。
【0011】
ここで、前記開口カバーは、前記取付状態では前記開口全体を塞ぐものであってもよい。また、前記開口カバーは、前記開口の幅よりも広い幅に形成されたものであってもよい。さらに、前記開口カバーは、前記開口の高さよりも高い高さに形成されたものであってもよい。加えて、前記開口カバーは、前記取付状態では前記開口全体と前記スリットの両方を塞ぐものであってもよい。
【0012】
この工作機械において、
前記筐体の内部に固定され、該筐体の内部に挿入された前記開口カバーの前記取付状態における下端部分を受け止めて該下端部分を支持する支持部材を備えていてもよい。
【0013】
前記支持部材によって前記下端が支持されることで、前記筐体の内部に挿入された前記開口カバーの姿勢を安定させることができる。
【0014】
ここで、前記支持部材は、前記開口の幅方向両側それぞれに配置された一対のものであってもよい。また、前記筐体の内部に挿入された前記開口カバーは、前記取付状態における高さ方向の中間部分が前記開口形成部の前記スリット部分で支持されるものであってもよい。
【0015】
この工作機械において、
前記支持部材は、前記スリットよりも下方に配置されたものであってもよい。
【0016】
前記スリットと前記支持部材によって、前記筐体の内部に挿入された前記開口カバーは前記取付状態における下側が下方になる傾斜姿勢になるので、該開口カバーに付着している切粉や切削油は該開口カバーをつたって該筐体の内部に向かい、この工作機械の機外では落下しにくくなる。
【0017】
また、この工作機械において、
前記開口カバーは、前記取付状態で内側になる内側面が下面になる方向で該開口カバーを該筐体の内部に挿入した状態では前記切粉バケットの引き出し経路に突出して該切粉バケットを該筐体から引き出し不能にする突出部を有する態様であってもよい。
【0018】
この態様によれば、前記内側面が下面になる方向で前記開口カバーを前記筐体の内部に挿入すると前記切粉バケットが前記筐体から引き出せなくなるので、該内側面が上面にして該開口カバーを該筐体の内部に挿入することが促される。そして、前記内側面を上面にして前記開口カバーを該筐体の内部に挿入することで、該開口カバーの挿入時や該開口カバーが筐体11に挿入されている間に該開口カバーに付着している切粉や切削油がこの工作機械の機外に落下してしまうことが抑制される。
【0019】
ここで、前記開口カバーは、前記取付状態で内側になる内側面が上面になる方向で該開口カバーを該筐体の内部に挿入した状態では前記突出部が前記切粉バケットの引き出し経路から離間した位置に配置されるものであってもよい。前記突出部は、前記切粉バケットを前記筐体から引き出そうとすると該切粉バケットに突き当たることで該切粉バケットを該筐体から引き出し不能にするものであってもよい。
【0020】
上記課題を解決する本発明の工作機械の切粉取り出し方法は、
筐体と、該筐体の内部に置かれて被加工物の加工によって生じた切粉を受け入れる切粉バケットと、該切粉バケットを該筐体の外部に引き出し可能にする開口および該開口に連続して該開口の幅方向に延在したスリットとが形成された開口形成部と、該筐体に着脱自在に取り付けられて該筐体に取り付けられた取付状態では前記開口を塞ぐ開口カバーとを備えた工作機械の切粉取出方法であって、
前記開口カバーを前記筐体から取り外す取外工程と、
前記取外工程によって取り外された前記開口カバーを前記スリットに差し込んで該開口カバーを前記筐体の内部に挿入する挿入工程と、
前記切粉バケットを前記筐体から引き出す引出工程とを有することを特徴とする。
【0021】
この工作機械の切粉取出方法によれば、前記挿入工程において開口カバーを前記筐体の内部に挿入するので、該筐体から取り外した該開口カバーをこの工作機械の機外に置くことにより該開口カバーの内側面に付着した切粉や切削油がこの工作機械の機外に落下してしまうことが抑制される。
【0022】
ここで、前記挿入工程は、前記取付状態で内側になる内側面が上面になる方向で前記開口カバーを前記スリットに差し込む工程であってもよい。また、前記挿入工程は、前記開口カバーの幅方向端部に形成された対になる前記スリットに開口カバーの幅方向両端部分を差し込む工程であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、工作機械の機外が汚れてしまうことを抑制した工作機械および工作機械の切粉取出方法を提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態にかかるNC旋盤の正面図である。
図2図1に示したNC旋盤の内部構成を簡易的に示す正面図である。
図3図1に示したNC旋盤の右側面図である。
図4】(a)は、図3に示した開口カバーの正面図であり、(b)は、同図(a)に示した開口カバーの左側面図である。
図5】開口カバーを外したNC旋盤を示す図3と同様の右側面図である。
図6】切粉バケットの斜視図である。
図7図1に示したNC旋盤の切粉取出動作を示すフローチャートである。
図8図3に示した開口カバーを筐体から取り外す動作を示す断面図である。
図9図3に示した開口カバーを筐体に挿入する動作を示す断面図である。
図10図1に示した切粉バケットを筐体から引き出す動作を示す断面図である。
図11】変形例の開口カバーを筐体に挿入した様子を示す図10と同様の断面図である。
図12図1に示したNC旋盤のガイドブッシュと第1刃物台を示す右側面図である。
図13図12に示した第1刃物台におけるバイト用の工具取付部の平面図である。
図14図12に示した第1刃物台におけるバイト用の工具取付部に取り付けられる熱変位センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、本発明をNC(Numerical Control)旋盤に適用した例を用いて説明する。
【0026】
図1は、本実施形態にかかるNC旋盤1の正面図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のNC旋盤1は、筐体11と操作パネル12とを備えている。このNC旋盤1が、工作機械の一例に相当する。本実施形態のNC旋盤1は、いわゆるスイス型旋盤である。なお、この実施形態における筐体11とは、操作パネル12と後述する開口カバー15(図3参照)を除いたNC旋盤1の外装部分およびNC旋盤1の躯体部分を意味する。筐体11の内部には、切削室13と、主軸室14が形成されている。切削室13は、金属製の棒材であるワークW(図2参照)の先端部分を加工する空間が形成された部屋であり、正面側から見てNC旋盤1の右側に配置されている。このワークWが、被加工物の一例に相当する。主軸室14は、第1主軸台3(図2参照)および第1主軸31(図2参照)が配置された部屋であり、正面側から見てNC旋盤1の左側に配置されている。切削室13の内部であって、その下端部分には、ワークWの加工によって生じた切粉を受け入れる切粉バケット8が置かれている。切粉バケット8については、後に詳述する。
【0028】
操作パネル12は、操作部と表示画面とから構成されたパネルである。操作部は、NC旋盤1のオペレータによる入力操作を受け付ける複数のボタンやキー等からなる。表示画面は、NCプログラム、NC旋盤1の各種設定値およびエラー内容などのNC旋盤1に関する各種情報を表示するディスプレイである。なお、図1では操作部のボタン、キーおよび表示画面を図示省略している。
【0029】
図2は、本実施形態にかかるNC旋盤1の内部構成を簡易的に示す正面図である。この図2には、NC旋盤1に設けられた制御装置2も示されている。また、図2には正面視における切削室13の範囲が細い二点鎖線の矩形で示されている。
【0030】
図2に示すように、NC旋盤1は、第1主軸台3と、ガイドブッシュ4と、第1刃物台5と、第2主軸台6と、第2刃物台7とを内部に備えている。第1主軸台3、ガイドブッシュ4、第1刃物台5、第2主軸台6および第2刃物台7は、土台である不図示の脚の上に配置されている。第1主軸台3、第1刃物台5、第2主軸台6および第2刃物台7は、制御装置2によって動作が制御される。制御装置2は、主にNCプログラムに従って、第1主軸台3、第1刃物台5、第2主軸台6および第2刃物台7を数値制御により動作させるコンピューターである。また、制御装置2には、このNC旋盤に設けられた各種センサーからの検出信号が入力される。そして制御装置2は、それらの検出信号に基づいて各種の計算を実行し、第1主軸台3、第1刃物台5、第2主軸台6または第2刃物台7の移動位置を決定する。また、制御装置2は、NC旋盤1の状態情報などを表示画面に表示させる。
【0031】
第1主軸台3は、第1主軸31を有している。第1主軸台3は、Z1軸方向に移動可能である。Z1軸方向は、水平方向であり、図1においては左右方向である。第1主軸31は、その内部に挿入された長尺棒状のワークWを把持解除可能に把持して第1主軸中心線CL1を中心として回転可能である。第1主軸中心線CL1の方向はZ1軸方向と一致している。
【0032】
ガイドブッシュ4は、第1主軸31が把持したワークWの先端側部分をZ1軸方向へ摺動自在に支持する。このガイドブッシュ4により、加工時のワークWの撓みが抑制されるので、特に細長いワークWを高精度に加工できる。ガイドブッシュ4の、第1主軸31が配置された側とは反対側の端面は、切削室13内に露出している。
【0033】
第1刃物台5は、Z1軸方向と直交しかつ水平方向を向いたY1軸方向と、垂直方向を向いたX1軸方向に移動可能である。図1では、上下方向がX1軸方向であり、紙面に直交する方向がY1軸方向である。第1刃物台5には、ワークWを加工する第1工具T1が取り付けられる複数の工具取付部51(図12参照)がY1軸方向に並んで設けられている。その各工具取付部51に取り付けられた第1工具T1は櫛歯状に配列される。第1刃物台5がY1軸方向に移動することで、これらの複数の第1工具T1から任意の第1工具T1が選択される。そして、第1刃物台5がX1軸方向に移動することで、選択された第1工具T1がワークWの先端部分を加工する。その加工によって生じた切粉および加工に用いた切削油は、ワークWと第1工具T1との接触点である加工点近傍から落下して切削室13の下端部分に置かれた切粉バケット8(図1参照)に集められる。
【0034】
第2主軸台6は、第2主軸61を有している。第2主軸台6は、X2軸方向およびZ2軸方向に移動可能である。X2軸方向は上述したY1軸方向と同一の方向であり、Z2軸方向は上述したZ1軸方向と同一の方向である。図1には、第2主軸61が、ガイドブッシュ4を挟んで第1主軸31に対向した位置にある様子が示されている。この位置では第2主軸の回転中心である第2主軸中心線CL2は、第1主軸中心線CL1と同一線上に配置されている。第2主軸中心線CL2の方向はZ2軸方向と一致している。第2主軸61には、第1主軸31を用いた加工が完了し、突切加工用の第1工具T1によって切断されたワークWの先端部分が受け渡される。以下、切断された後、第2主軸61に受け渡されたワークWの先端部分を切断済ワークと称する。第2主軸61は、第1主軸31から受け渡された切断済ワークを把持解除可能に把持する。
【0035】
第2刃物台7は、Y2軸方向へ移動可能である。Y2軸方向は上述したX1軸方向と同一の方向である。第2刃物台7には、切断済ワークを加工するドリルやエンドミルなどの複数の第2工具T2が取り付けられている。第2刃物台7のY2軸方向の移動によって、これらの複数の第2工具T2から任意の第2工具T2が選択される。そして、第2主軸台6がZ2軸方向に移動することで、第2主軸61に把持された切断済ワークの切断端側部分が加工される。
【0036】
図3は、図1に示したNC旋盤1の右側面図である。
【0037】
図3に示すように、NC旋盤1の筐体11の右側面には開口カバー15が着脱自在に取り付けられている。開口カバー15の上部には、だるま形状をしただるま孔1511が開口カバー15の幅方向に間隔をあけて2つ形成されている。ここでいう開口カバー15の幅方向とは、開口カバー15が筐体11に取り付けられた取付状態ではNC旋盤1の前後方向と一致し、図3では左右方向になる。以下、NC旋盤1を右側から見た右側面図における左右方向を幅方向と称する。また、開口カバー15が筐体11に取り付けられた取付状態を、単に取付状態と称することがある。なお、この開口カバー15の幅方向は、後述する開口1121(図5参照)の幅方向でもある。
【0038】
筐体11の右側面には、2つのだるま孔1511の間隔と同一の間隔をあけて2本のカバー取付ネジ111が固定されている。だるま孔1511は、カバー取付ネジ111の頭部よりも幅が狭い長円状の上側部分と、カバー取付ネジ111の頭部よりも大径の丸孔の下側部分とが連続した孔である。開口カバー15の2つのだるま孔1511の上側部分が、各カバー取付ネジ111に引っ掛けられることで、取付状態における開口カバー15の上端部分は筐体11に保持されている。
【0039】
図4(a)は、図3に示した開口カバー15の正面図であり、図4(b)は、同図(a)に示した開口カバー15の左側面図である。図4(b)は、取付状態においてNC旋盤1の内側から見た開口カバー15の図ともいえる。
【0040】
図4(a)および図4(b)に示すように、開口カバー15は板状をしている。詳細には、開口カバー15は、金属板を折り曲げて形成されたカバー本体151と、そのカバー本体151に溶接された金属製の跳ね返り防止板152とから構成されている。2つのだるま孔1511は、カバー本体151の上端部近傍に形成されている。カバー本体151は、取付状態における上側部分が、取付状態における下側部分よりも広い幅に形成されている。跳ね返り防止板152は、開口カバー15の取付状態において内側になる内側面に配置されている。以下、取付状態において内側になる開口カバー15の面を内側面と称する。この跳ね返り防止板152は、上端部分がカバー本体151に溶接されている。跳ね返り防止板152の下側部分は下端に向かうに従ってカバー本体151から離間するように正面視で逆くの字状に折り曲げられている。取付状態でカバー本体151の内側面をつたって落ちてくる切削油は、跳ね返り防止板152に到達すると跳ね返り防止板152によって筐体11(図1参照)の内側に導かれるので、NC旋盤1の機外に漏れ出ることが抑制される。跳ね返り防止板152は、カバー本体151の取付状態における下側部分の幅よりも狭い幅に形成されている。
【0041】
図5は、開口カバー15を外したNC旋盤1を示す図3と同様の右側面図である。
【0042】
図5に示すように、開口カバー15(図3参照)を筐体11から取り外すと、切粉バケット8を筐体11の外部に引き出し可能にする開口1121と対になる2つのスリット1122が露出する。逆に言えば、開口カバー15は、取付状態では開口1121およびスリット1122を塞いでいる。開口1121およびスリット1122は、筐体11の右端部分に設けられた開口形成部112に形成されている。開口形成部112は、取付状態におけるカバー本体151内側面周縁部分に対面する板状の部材である。取付状態におけるカバー本体151内側面周縁部分と開口形成部112の外側面とは接触している。これにより、切削油がNC旋盤1の機外に漏れ出にくくなっている。ただし、各面のうねりなどで離間している部分もある。開口形成部112は、開口カバー15を取り外したNC旋盤1を右側から見たときには該して門型をしている。
【0043】
切粉バケット8は、上方が開放された箱状をしている。開口1121は、切粉バケット8よりも幅広で、切粉バケット8の略1.5倍の高さを有する矩形状をしている。従って、切粉バケット8は、この開口1121を通して筐体11の外部に引き出すことができる。開口1121の幅は、跳ね返り防止板152の幅よりも広く、カバー本体151(図4参照)の取付状態における下側部分の幅よりも狭い幅である。また、開口1121の高さは、カバー本体151の高さよりも低い。2つのスリット1122は、それぞれ開口1121に連続して開口1121の幅方向に水平に延在していいる。2つのスリット1122は同じ高さ位置に形成されている。スリット1122のスリット幅(高さ)は、カバー本体151の板厚の略3倍である。スリット1122のスリット幅は、開口カバー15の挿入しやすさや開口カバー15の姿勢の自由度などから、カバー本体151の板厚の倍以上であることが好ましい。開口1121の幅と2つのスリット1122の延在方向(水平方向)の長さとを合わせた合計幅Lは、カバー本体151の取付状態における下側部分よりも広い幅である。従って、筐体11から取り外された開口カバー15(図3参照)の下側部分は、その幅方向両端部分をスリット1122に差し込むことで筐体11の内部に挿入可能である。なお、開口カバー15を筐体11の内部に挿入する動作については後に説明する。開口1121よりも筐体11の内部側には、筐体11の内部に挿入された開口カバー15の下端部分を受け止めてその下端部分を支持する一対の支持部材113が切削室13の側壁に固定されている。一対の支持部材113は、正面視では同一位置に配置されている。一対の支持部材113が配置されている高さ位置は、スリット1122よりも下方である。一対の支持部材113それぞれは、金属板を90度に折り曲げることで形成された正面視でL字状をした板であり切削室13の側壁から幅方向内側に突出している。
【0044】
図3および図5から分かるように、開口カバー15は、取付状態における上側部分が合計幅Lよりも広い幅に形成されている。従って、取付状態では、開口カバー15の上側部分の幅方向中央部分が開口1121と対面し開口カバー15の上側部分の幅方向両端部分がスリット1122と対面する。そして、取付状態では、開口カバー15の上側部分によって開口1121の上側部分とスリット1122が塞がれている。また、取付状態では、開口カバー15の下側部分が開口1121と対面して開口1121の下側部分を塞いでいる。すなわち、開口カバー15は、取付状態では開口1121全体とスリット1122の両方を塞いでいる。
【0045】
図6は、切粉バケット8の斜視図である。
【0046】
図6に示すように、切粉バケット8は、バケット本体81と切粉バケット8の右側面に相当する仕切板82とから構成されている。バケット本体81の下面のうち図6においてクロスハッチングを付した部分には多数の小孔が形成されている。これらの小孔は、切粉を通さないで切削油を通すことができる程度の大きさに形成されている。切削油はこの小孔を通って切削室13(図1参照)の下端に向かって流れていく。そして、バケット本体81には切粉が残り貯留される。バケット本体81には、取手811が2つ設けられている。この取手811は、切粉バケット8を筐体11(図1参照)から引き出しやすくするためのものである。仕切板82は、バケット本体81に着脱自在に取り付けられている。切粉バケット8を筐体11から引き出した後、その仕切板82を取り外すことでバケット本体81に貯留された切粉をバケット本体81から容易に排出することができる。なお、仕切板82は、開口1121(図5参照)よりも幅が狭く高さも低いものである。従って、仕切板82をバケット本体81から取り外した後は開口1121を通して筐体11の内部に仕切板82を置くことができる。
【0047】
続いて、筐体11の内部に置かれた切粉バケット8に溜まった切粉を取り出す切粉取出方法について説明する。
【0048】
図7は、図1に示したNC旋盤1の切粉取出動作を示すフローチャートである。図8は、図3に示した開口カバー15を筐体11から取り外す動作を示す断面図である。図9は、図3に示した開口カバー15を筐体11に挿入する動作を示す断面図である。また、図10は、図1に示した切粉バケット8を筐体11から引き出す動作を示す断面図である。
【0049】
図7に示すように、まず開口カバー15を筐体11から取り外す(ステップS11)。このステップS11が、取外工程の一例に相当する。このステップS11では、図8(a)に示すように、開口カバー15を少し持ち上げ、だるま孔1511(図4(b)参照)下側の大径の丸孔をカバー取付ネジ111の頭部の高さに一致させる。そして、図8(b)に示すように、開口カバー15を筐体11から離間させる。
【0050】
次に、開口カバー15の下側部分を筐体11の内部に挿入する(ステップS12)。このステップS12が、挿入工程の一例に相当する。このステップS12では、図9(a)に示すように、開口カバー15の内側面が上面になるような姿勢で取付状態におけるカバー本体151の下端幅方向両端部分を開口形成部112に形成された2のスリット1122(図5参照)それぞれに一致させる。その後、図9(b)に示すように、カバー本体151の下端幅方向両端部分をスリット1122に差し込んで、開口カバー15の取付状態における下側部分を開口1121(図5参照)およびスリット1122を通して筐体11の内部に挿入する。そして、図10に示すように、取付状態におけるカバー本体151の下端が支持部材113に突き当たったらステップS12の挿入が完了する。上述したように支持部材113はスリット1122よりも下方に配置されているため、下端が支持部材113に突き当てられているカバー本体151は、筐体11の内部に向かうに従って下方に位置する傾斜姿勢になる。これにより、開口カバー15に付着している切粉や切削油は開口カバー15の表面をつたって筐体11の内部に向かうので、NC旋盤1の機外に落下しにくくなる。
【0051】
次いで、取手811を掴んで切粉バケット8を開口1121(図5参照)付近まで引き出して切粉バケット8に貯留された切粉を取り出す(ステップS13)。このステップS13が、引出工程の一例に相当する。図10には、引き出す前の切粉バケット8が実線で、引き出し途中の切粉バケット8が二点鎖線で示されている。ここで、上述のステップS12において開口カバー15を筐体11に挿入する際に、開口カバー15の内側面が下面になる方向で開口カバー15を挿入すると、図10に二点鎖線で示すように跳ね返り防止板152が下方に向かって出っ張り切粉バケット8の引き出し経路に突出することになる。ステップS13において、跳ね返り防止板152が下側に突出した状態で切粉バケット8を引き出そうとすると、切粉バケット8の引き出し経路に突出した跳ね返り防止板152が邪魔をして切粉バケット8の引き出し動作が阻害される。こうすることで、開口カバー15の内側面を上面にして開口カバー15を筐体11の内部に挿入することが促される。すなわち、この跳ね返り防止板152が、突出部の一例に相当する。開口カバー15の内側面を上面にして開口カバー15を筐体11の内部に挿入することで、開口カバー15の挿入時や開口カバー15が筐体11に挿入されている時に開口カバー15の内側面に付着している切粉や切削油がNC旋盤1の機外に落下してしまうことが抑制される。
【0052】
筐体11の内部から切粉バケット8を引き出したら、仕切板82をバケット本体81から取り外し、不図示の切粉掻き出し棒等を使用して切粉バケット8に溜まった切粉をNC旋盤1の機外にある廃棄ボックスなどに掻き出す(ステップS14)。そして、ステップS11からステップS13までとは逆の手順で切粉バケットと開口カバー15をもとの状態に戻す。具体的には、切粉が取り除かれたバケット本体81に仕切板82を取り付けた後、切粉バケット8を筐体11の内部に戻す(ステップS15)。切粉バケット8を所定位置に置いたら、筐体11の内部に挿入されている開口カバー15の下側部分を筐体11から引き抜く(ステップS16)。その後、引き抜いた開口カバー15の跳ね返り防止板152下端が開口形成部112の外側面よりも内側になるようにしつつ、だるま孔1511下側の大径の丸孔をカバー取付ネジ111の頭部の高さに一致させる。そして、開口カバー15内側面の周縁部分が開口形成部112の外側面と接触するように開口カバー15を筐体11の内側方向に移動させる。次いで、開口カバー15を少し下げて2つのだるま孔1511の上側部分を各カバー取付ネジ111に引っ掛けることで開口カバー15を筐体11に取り付ける(ステップS17)。
【0053】
以上説明したNC旋盤1およびNC旋盤1の切粉取出方法によれば、開口カバー15を開口1121とスリット1122を通して筐体11の内部に挿入可能にすることで、筐体11から取り外した開口カバー15をNC旋盤1の機外に置く必要がなくなる。これにより、開口カバー15の内側面に付着した切粉や切削油がNC旋盤1の機外に落下してしまうことが抑制されるので、NC旋盤1の機外が切粉や切削油によって汚れてしまうことを抑制できる。また、スリット1122が形成されている部分に対面する開口カバー15の上側部分は、開口1121とスリット1122の合計幅よりも広い幅に形成されているので、取付状態では開口カバー15によって開口1121とスリット1122が塞がれる。従って、開口カバー15の取付状態において開口1121またはスリット1122から切粉や切削油が漏れ出てしまうことを防止できる。また、開口カバー15の取付状態における下側部分が開口1121とスリット1122の合計幅よりも狭い幅に形成されているので、開口1121とスリット1122を通して開口カバー15の下側部分を筐体11の内部に挿入することができる。
【0054】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して重複する説明は省略することがある。
【0055】
図11は、変形例の開口カバー15を筐体11に挿入した様子を示す図10と同様の断面図である。
【0056】
図11に示すように、この変形例のNC旋盤1は、支持部材113(図10参照)が設けられておらず、代わりにカバーストッパ153が設けられている点が、先に説明したNC旋盤1と異なる。開口カバー15は、カバー本体151と跳ね返り防止板152とカバーストッパ153とから構成されている。カバーストッパ153は、開口カバー15の取付状態において外側になる開口カバー15の外側面に固定されている。カバーストッパ153は、上端部分がカバー本体151に溶接されている。カバーストッパ153の下側部分は下端に向かうに従ってカバー本体151から離間するように正面視でくの字状に折り曲げられている。カバーストッパ153は、開口1121(図5参照)よりも幅方向の長さが長く、図11に示した状態では両端部が開口形成部112に接触して開口カバー15がそれ以上挿入できないようになっている。なお、図11に示した状態では、開口カバー15の、開口1121よりも外側に突出した部分が開口1121よりも内側にある部分よりも重いため、開口カバー15は、スリット1122(図5参照)を中心に図11における時計回りに回転しようとするが、カバーストッパ153によって回転が阻止されて図11に示した姿勢が維持されている。また、開口カバー15の内側面が下面になる方向で開口カバー15を挿入すると、図11に二点鎖線で示すように跳ね返り防止板152が下方に向かって出っ張り切粉バケット8の引き出し経路に突出することになる点は先の実施形態で説明したとおりである。
【0057】
ところで、NC旋盤1(図1参照)には、熱によるNC旋盤1の構造物の変位に対して一定の加工精度を維持するために、熱変位量を測定して熱変位量に対応する補正を加えて第1刃物台などの移動を制御する技術が用いられている。例えば第1刃物台5(図2参照)を移動させるためのボールネジ等の構造体は熱によって伸縮(熱変位)するため、構造体の温度はX1軸方向の第1刃物台5の移動位置に影響を与える。このため、加工初期から一貫して熱変位補正をしないで同一の移動制御を継続していると加工によって生じる熱によって加工精度が低下してしまう。この対応としてNC旋盤1では、例えば加工前と加工後の適宜なタイミングで熱変位量を測定して制御装置2(図2参照)に測定結果を送信している。制御装置2は、測定結果から補正量を決定し、その補正量を加味した移動量を用いて第1刃物台5の移動を制御する。
【0058】
図12は、図1に示したNC旋盤1のガイドブッシュ4と第1刃物台5を示す右側面図である。
【0059】
熱変位量の測定は、第1刃物台5をX1軸方向に移動させて第1刃物台5に取り付けられた接触式の熱変位センサ52の接触子5221がワークWと接触する位置を検出することで行われる。熱変位センサ52は、例えば、作動トランス式変位センサ、光学スケール式変位センサ、マグネットスケール式変位センサ等である。図12に示すように、本実施形態の熱変位センサ52は、第1工具T1が取り付けられる複数の工具取付部51のうちの一つに取り付けられている。ここでは、複数のバイト用の工具取付部51のうち最下段にある工具取付部51に熱変位センサ52を取り付けた例を示している。ただし、この熱変位センサ52は、バイト用の工具取付部51の何れであっても取り付けることができる。熱変位センサ52および第1工具T1であるバイトは、それぞれバイト固定具511とボルトBによって第1刃物台5に保持されている。熱変位センサ52は、センサケーブル524とセンサケーブル524の端部に設けられたセンサコネクタ525を有している。このセンサコネクタ525は、制御装置2(図2参照)に繋がった接続コネクタ21に連結されている。これにより熱変位センサ52がワークWと接触したときに検出信号が制御装置2に送信される。なお、この実施形態のNC旋盤1の第1刃物台5には、バイト用の工具取付部51の下方にドリルやエンドミルなどの回転工具用の工具取付部51が複数設けられている。
【0060】
図12では、6つのバイト用の工具取付部51と、5つの回転工具用の工具取付部51が設けられた第1刃物台5が示されている。これらの工具取付部51の数はNC旋盤ごとに設定されている。なお、図12には、回転工具用の工具取付部51の最下段の工具取付部51にZ軸方向に向いたドリル等を取り付ける拡張取付部53が取り付けられた様子が示されている。また、第1刃物台5には、ワークWを突切加工した後、そのワークWが突切加工により切断されたか否かを確認することで、第1工具T1の一つである突切工具が破損していないかを確認するための、突切工具破損センサ54が設けられている。
【0061】
図13は、図12に示した第1刃物台5におけるバイト用の工具取付部51の平面図である。この図13では、第1刃物台5のうちバイト用の工具取付部51とその周辺部分のみが示されている。
【0062】
図13に示すように、熱変位センサ52は、バイト用の工具取付部51に取り付けられる取付部分の形状が第1工具T1であるバイトと同一の4角柱形状をしている。この実施形態のバイト用の工具取付部51は、取付部分の高さが11.8mm以上12.2mm以下のバイトが取り付け可能なものである。熱変位センサ52の取付部分は、本実施形態の第1刃物台5で用いられるバイトの取付部分と同一の12mm角の角柱状をしているので、バイト用の工具取付部51に取り付けることができる。なお、11.8mm以上12.2mm以下であれば、熱変位センサ52の取付部分の寸法をバイトと異なる寸法にしてもよい。また、バイト用の工具取付部51は、NC旋盤1の機種によっては本実施形態と異なる太さのバイトが取り付け可能な寸法に形成されている場合がある。その場合、その寸法に合わせた取付部を有する熱変位センサ52を用いることでそれらの機種においても同様に熱変位センサ52をバイト用の工具取付部51に取り付けることができる。
【0063】
ボルトBを締め込んでいくと、バイト固定具511は、傾斜面511Sによって上側に移動する。これにより、工具取付部51に配置された第1工具T1の取付部分または熱変位センサ52の取付部分がバイト固定具511の上面と工具取付部51の内面に挟み込まれる。工具取付部51の内面とバイト固定具511の間に挟み込まれることで第1工具T1および熱変位センサ52が工具取付部51に保持されている。
【0064】
図14は、図12に示した第1刃物台5におけるバイト用の工具取付部51に取り付けられる熱変位センサ52の断面図である。
【0065】
図14に示すように、熱変位センサ52は、取付部分になる角柱状の角型シャンク521と、接触子5221が設けられたセンサ本体522と、センサ本体522を角型シャンク521に固定するためのセンサ固定ナット523と、センサケーブル524と、上述したセンサコネクタ525(図12参照)とから構成されている。なお、図14では、センサ本体522およびセンサケーブル524には断面を示すハッチングを施していない。角型シャンク521は内側にその延在方向に貫通した貫通孔521aが形成されている、その貫通孔521aの一端(図14における下端)部分には、雌ネジが形成されている。センサ本体522は概して円柱状をしており、接触子5221がある一端側とは反対の他端側の外径部分に雄ネジが形成されている。そして、センサ本体522の雄ネジを角型シャンク521の雌ネジにねじ込み、センサ固定ナット523をしめ込むことで、角型シャンク521とセンサ本体522とセンサ固定ナット523が組み合わされて互いに固定されている。センサケーブル524は、センサ本体522の他端から延び出てセンサコネクタ525に接続されている。
【0066】
本実施形態では、熱変位センサ52の取付部を第1工具T1であるバイトの取付部と同様の形状にすることで、熱変位センサ52を工具取付部51に取り付けられるようにしている。これにより、複数の工具取付部51のうち任意の工具取付部51に熱変位センサ52を配置できるので熱変位センサ52の配置自由度が高い。また、熱変位センサ52を修理する時や熱変位センサ52を交換する時に熱変位センサ52を第1刃物台5から容易に取り外すことができるのでメンテナンス性がよい。
【0067】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことができる。例えば、本実施形態では、NC旋盤1に本発明を適用する例を示したが、マシニングセンタやフライス盤等の他の工作機械に本発明を適用してもよい。また、開口形成部112は、一対のスリット1122を有するものであったが、スリット1122を幅方向の何れか1つのみを有するものにしてもよい。加えて、支持部材113も、1つのみにしてもよい。
【0068】
なお、以上説明した各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 NC旋盤(工作機械)
8 切粉バケット
11 筐体
15 開口カバー
112 開口形成部
1121 開口
1122 スリット
W ワーク(被加工物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14