(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142987
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】布帛
(51)【国際特許分類】
D06M 15/643 20060101AFI20241003BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20241003BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20241003BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20241003BHJP
D03D 15/37 20210101ALI20241003BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20241003BHJP
D06M 15/277 20060101ALI20241003BHJP
A41D 31/102 20190101ALI20241003BHJP
A41D 31/24 20190101ALI20241003BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20241003BHJP
【FI】
D06M15/643
B32B27/12
B32B5/24 101
B32B5/02 C
D03D15/37
D03D15/283
D06M15/277
A41D31/102
A41D31/24 100
A41D31/00 502B
A41D31/00 502Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055421
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】518381846
【氏名又は名称】東洋紡せんい株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 暁
(72)【発明者】
【氏名】甲村 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧上 壱博
【テーマコード(参考)】
4F100
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AK48A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA02B
4F100CA02C
4F100CA13B
4F100CA13C
4F100DG12A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB72
4F100JA06B
4F100JA06C
4F100JB06
4F100JD02
4F100JD05
4F100JK03
4F100JK09
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4L033AB04
4L033AC03
4L033CA22
4L033CA59
4L048AA20
4L048AA24
4L048AA34
4L048AA37
4L048AB07
4L048AB11
4L048BA01
4L048CA01
4L048CA15
4L048DA01
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】衣料および資材に好適に用いられ、軽量かつ薄地でありながら、引き裂き強力が強く、耐摩耗性のよい布帛を提供する。
【解決手段】マルチフィラメントを経糸および緯糸に用いた織物を有する布帛であり、経糸および緯糸の少なくとも一方は、略四角形の繊維横断面を有し、単糸繊度が1dtex以上3.5dtex以下であり、総繊度が5dtex以上23dtex以下であり、該織物の一方の面に樹脂コーティング層が積層されている布帛。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメントを経糸および緯糸に用いた織物を有する布帛であり、
前記経糸および前記緯糸の少なくとも一方は、略四角形の繊維横断面を有し、単糸繊度が1dtex以上3.5dtex以下であり、総繊度が5dtex以上23dtex以下であり、
該織物の一方の面に樹脂コーティング層が積層されている布帛。
【請求項2】
前記樹脂コーティング層の膜厚は、少なくとも1μm以上10μm以下である請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記樹脂コーティング層は、有孔膜である請求項1または2に記載の布帛。
【請求項4】
前記織物のカバーファクターは、1600以上1800以下である請求項1または2に記載の布帛。
【請求項5】
前記布帛の目付は、60g/m2以下である請求項1または2に記載の布帛。
【請求項6】
JIS L1096に準じたA-1ユニバーサル形耐摩耗試験において、50回以上の耐摩耗性がある請求項1または2に記載の布帛。
【請求項7】
JIS L1096に準じたD法引き裂き強力試験において、引き裂き強力が経9.8N以上、緯9.8N以上である請求項1または2に記載の布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダウンウェア、ダウンジャケット、ウインドブレーカー、布団、寝袋、レインウェア等のスポーツ衣料、およびテント等の資材に用いる布帛に関するものである。更に詳しくは、本発明は、アウトドアウェア等の衣料では着用時の擦れ、テントやリュック等の資材では枝葉等の擦れにより、布帛の表面が毛羽立ちにくく、擦れた部分から防水性の低下が起こりにくい布帛を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
衣料、特にウインドブレーカー、ダウンジャケット、ダウンウェア、及びレインウェア等の外衣は、着用時やリュックを背負う時等において脇部や肩部が擦れることで毛羽立ちが生じることや破れやすくなることがある。特に、ダウンウェアは、近年ますます軽量化されており、側地は薄くて軽い生地ではあるものの、登山時等に使用すると草木や岩、リュック等と擦れてしまい、表面の破れや毛羽立ち等の劣化により側地の表面からダウンやフェザーが抜けるという問題があった。レインウェアも同様に、登山時等においてリュックに擦れる等して生地が破れ、表生地から雨滴がしみ込むという問題があった。また、登山やキャンプ等に使用するリュックやテント等の資材も他の物体との摩耗に強い布帛であることが求められている。このように、アウトドアに使われる衣料や資材には、薄地かつ軽量でありながら、耐摩耗性に優れた布帛が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高水蒸気透過性を維持しながら結露しにくく、水に対する寸法安定性が優れ、脱臭性、抗菌、防かび性、帯電防止性、ドライタッチ性、耐摩耗性等の機能を付与し得る複合透湿防水膜およびこれを用いたシートを提供することを目的に、連続気孔を有し、JIS K6768に準拠して求められる濡れ指数が45dyne/cm以下である疎水性膜の少なくとも片面の少なくとも一部に、主として極性溶媒可溶性高分子材料からなり連続気孔を有する有孔膜を積層して複合透湿防水膜とする技術が提案されている。しかしながら、この透湿防水膜はナイロン等の織物に積層して用いるが、この織物については特に言及されておらず、この透湿防水膜の摩擦耐久性は精々一般的な透湿防水織物の性能を超えるものではなく、低レベルにとどまるものと考えられる。
【0004】
また、特許文献2として、軽量であるにも関わらず引き裂き強力に優れた透湿防水性布帛および該透湿防水性布帛を用いてなる繊維製品を提供することを目的として、マルチフィラメントを含む織物Aの片面に透湿防水層を積層し、さらにその上に、総繊度が25dtex以下のマルチフィラメントを含みかつリップストップ組織を有する織物Bを積層することにより、目付けが110g/m2以下である透湿防水性布帛が提案されている。しかし、この布帛は透湿防水層の表裏両面に織物を積層していることから軽量化に限界があった。
【0005】
更には、本出願人が鋭意検討した結果、耐摩耗性に優れた織物として、総繊度が5dtex以上60dtex以下であり、単糸繊度が1.0dtex以上7.5dtex以下の略四角形の繊維横断面を有する異形モノフィラメントを含有する合成マルチフィラメントを含み、前記合成マルチフィラメントに垂直な方向の断面において、隣り合う前記異形モノフィラメント同士の接触長の平均値が8μm以上40μm以下である薄地織物を提案したところ消費者に好評を得ている(特許文献3)。しかし、この織物のみでは透湿防水性能に限界があった。また、更に高性能な耐摩耗性も求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-74855号公報
【特許文献2】特開2013-226750号公報
【特許文献3】国際公開第2016/113833号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題を背景になされたものであり、ダウンウェア、ダウンジャケット、ウインドブレーカー、布団、寝袋、レインウェア、テント、カバン、リュック等のスポーツ衣料および資材に好適に用いられ、軽量かつ薄地でありながら、引き裂き強力が強く、耐摩耗性のよい布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前述したような使用中の擦れにより、織物を構成する繊維が切れて防水性や強度が劣化するのを抑制するために、これまでの布帛よりも単繊度が大きく、フィラメント数の少ない合成マルチフィラメントを用いることを検討した。しかしながら、ただ単に単繊度が大きく、フィラメント数が少ない合成マルチフィラメントを用いると布帛が硬くなることや、布帛にコーティングを施しにくいという問題があった。そこで本発明者らは、総繊度が5dtex以上23dtex以下で略四角形の横断面を有する単糸繊度1dtex以上3.5dtex以下の単繊維からなる織物と該織物の表裏いずれかの面に樹脂コーティング層が積層されていることを特徴とする透湿防水性を有する素材を発明するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る布帛は、以下の点に要旨を有する。
[1]マルチフィラメントを経糸および緯糸に用いた織物を有する布帛であり、
前記経糸および前記緯糸の少なくとも一方は、略四角形の繊維横断面を有し、単糸繊度が1dtex以上3.5dtex以下であり、総繊度が5dtex以上23dtex以下であり、
該織物の一方の面に樹脂コーティング層が積層されている布帛。
[2]前記樹脂コーティング層の膜厚は、少なくとも1μm以上10μm以下である[1]に記載の布帛。
[3]前記樹脂コーティング層は、有孔膜である[1]または[2]に記載の布帛。
[4]前記織物のカバーファクターは、1600以上1800以下である[1]~[3]のいずれかに記載の布帛。
[5]前記布帛の目付は、60g/m2以下である[1]~[4]のいずれかに記載の布帛。
[6]JIS L1096に準じたA-1ユニバーサル形耐摩耗試験において、50回以上の耐摩耗性がある[1]~[5]のいずれかに記載の布帛。
[7]JIS L1096に準じたD法引き裂き強力試験において、引き裂き強力が経9.8N以上、緯9.8N以上である[1]~[6]のいずれかに記載の布帛。
【発明の効果】
【0010】
本発明の布帛は、軽量かつ薄地で透湿性および防水性を有する生地でありながら、従来にない特性として優れた耐摩耗性を有する。これを用いたレインウェア、ダウンウェア、アウトドア製品等は布帛同士や岩、草木等との擦れや引っかき等による損傷を抑制することができ、性能低下を抑えて高い耐久性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明で用いる異形モノフィラメントの繊維横断面の説明図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る織物の断面を示すSEM写真である。
【
図3】
図3は、リップストップタフタ1の織組織を模式的に例示する説明図である。
【
図4】
図4は、リップストップタフタ2の織組織を模式的に例示する説明図である。
【
図5】
図5は、菱形の糸を紡糸するのに用いる口金吐出孔の概略断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1の布帛の断面SEM写真である。
【
図7】
図7は、
図6における有効膜コーティング部分の拡大写真である。
【
図8】
図8は、比較例4の布帛の断面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の布帛は、軽量かつ薄地で透湿防水性を有する高密度織物でありながら、従来の布帛にない特性として、優れた耐摩耗性を有する。この布帛を用いたダウンウェア、レインウェア、アウトドア物品等は、布帛同士や、岩、草木等に擦れることや引っかきによる損傷を抑制し、性能の低下を抑えて高い耐久性を付与することができる。
【0013】
まず、本発明に係る布帛が有する軽量かつ薄地の織物について具体的に説明する。本発明に係る布帛は、マルチフィラメントを経糸および緯糸に用いた織物を有する。布帛が有する織物は、生地を薄地に仕上げるため、細い繊維を高密度に織り上げることにより、厚みを極端に減らし、軽量な薄地織物としている。織物において、高レベルで薄さを追求した場合、織物を構成するマルチフィラメントは、1本のマルチフィラメントを構成するモノフィラメントが1列に並んだ状態で織物中に存在することが望ましい(例えば、
図2を参照)。なお、織物を構成するマルチフィラメントは、合成マルチフィラメントであることが好ましい。
【0014】
織物には、略四角形の繊維横断面を有する異形モノフィラメントを含むマルチフィラメントが用いられる。つまり、織物を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、略四角形の繊維横断面を有している。「略四角形」とは、4本の辺を有する多角形である。
図1に示すように、略四角形(後述する平行四辺形、菱形、長方形を含む)は、理想的には4つの頂点が明確で4つの辺が直線であることが望ましい。しかしながら、異形モノフィラメントを製造する工程において、樹脂の押し出し速度、吐出量、冷却速度のムラ等により、繊維横断面の略四角形は、必ずしも頂点が明確にならないことや、辺の一部が曲線になる場合がある。本発明の略四角形には、このような製造上の問題を包含する略四角形(すなわち、頂点が明確でない略四角形や、辺の一部が曲線の略四角形)も含まれるものとする。
【0015】
前記の略四角形としては、例えば、2組の対辺がそれぞれ平行である平行四辺形が好ましい。2組の対辺がそれぞれ平行であれば、隣り合う異形モノフィラメントが接触しやすくなる上、織物の厚さ方向において、経糸に用いられる異形モノフィラメントと、緯糸に用いられる異形モノフィラメントも重なりやすくなり、異形モノフィラメントのずれを高いレベルで抑制することが可能となる。前記の平行四辺形には、例えば、2組の対角の大きさがそれぞれ等しい、2組の対辺の長さがそれぞれ等しいといった特徴があり、本発明における平行四角形には、4本の辺の長さが全て等しい菱形、4つの内角が全て等しい長方形、4本の辺の長さおよび4つの内角が全て等しい正方形も含まれる。
【0016】
また、本発明において、異形モノフィラメントの繊維横断面の形状である平行四辺形は、4本の辺の長さが全て等しい菱形であることがより好ましい。例えば、二対の辺の長さが大きく違う(扁平度が高すぎる)平行四辺形や長方形の場合、異形モノフィラメントが長さの違う辺同士で接触する場合にモノフィラメント同士の配列が乱れやすく、異形モノフィラメントが綺麗に一列に並ばない部分が生じやすいが、4本の辺の長さを統一することで、より一列に並びやすくなる。
【0017】
布帛を用いた製品の使用中の擦れや引っかき等により、異形モノフィラメントが切れて通気度や織物の強度が低下しないように、前記の異形モノフィラメントは、比較的太いものであることが好ましい。このような観点から、異形モノフィラメントの単糸繊度は、1.0dtex以上であり、1.5dtex以上であることが好ましく、1.7dtex以上であることがより好ましく、2dtex以上であることが更に好ましい。一方、異形モノフィラメントが太すぎる場合、織物が硬くなることや、高密度の生地とすることが難しくなることから、異形モノフィラメントの単糸繊度は、3.5dtex以下であり、3.3dtex以下であることが好ましく、3.2dtex以下であることがより好ましく、3dtex以下であることが更に好ましい。
【0018】
異形モノフィラメントを含むマルチフィラメントは、総繊度が5dtex以上であり、7dtex以上であることが好ましく、10dtex以上であることがより好ましく、13dtex以上であることが更に好ましく、また、23dtex以下であり、22dtex以下であることが好ましく、21dtex以下であることがより好ましく、20dtex以下であることが更に好ましい。マルチフィラメントの総繊度を前記の範囲に調整することにより、軽量薄地で必要な強度を有する織物が得られる。一方、前記のマルチフィラメントの繊度が下限値を下回ると必要な強度が得られない場合があり、また上限値を上回ると嵩高の織物となるため軽量薄地の織物が得られにくくなる。
【0019】
1本のマルチフィラメントに含まれるモノフィラメントの本数は、2本以上であることが好ましく、より好ましくは3本以上であり、更に好ましくは5本以上であり、また、30本以下であることが好ましく、より好ましくは20本以下であり、更に好ましくは15本以下である。モノフィラメントの本数が多くなると、モノフィラメントの単糸繊度を小さくする必要があり、糸が切れやすくなるため好ましくない。
【0020】
マルチフィラメントを構成する繊維は、樹脂からなる合成繊維であることが望ましい。前記の樹脂は、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612或いはその共重合体等のポリアミド類;ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等の合成ポリマー等が挙げられる。ポリエステル類ではポリエチレンテレフタレート、ポリアミド類ではナイロン6およびナイロン66が好ましく用いられる。中でも、特にポリアミド類は、略四角形断面を有する異形モノフィラメントに使用する場合であっても、織物の風合いを柔らかくでき、また織物の引き裂き強力も高くできるため好ましい。
【0021】
合成マルチフィラメントを構成する樹脂の相対粘度は、例えばナイロンの場合、2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることが更に好ましく、上限は特に限定されないが、通常、4.5以下とすることができる。樹脂の相対粘度が2.0以上であれば、得られる異形モノフィラメントが適当な破断強度を有するため好ましい。また樹脂の相対粘度が2.5以上であれば、得られる異形モノフィラメントが適当な破断強度と破断伸度を有することができる。更に、樹脂の相対粘度が3.0以上であれば、異形モノフィラメントの繊維横断面を略四角形にする場合、4つの角度を明確に形成することが可能となる。一方、樹脂の相対粘度が2.0未満になると、異形断面は丸断面に比べて破断強度が弱いこともあり、破断強度不足による製品の引き裂き強力、破断強度の低下、破断伸度不足により加工操業性の悪化、製品耐久性の悪化という問題が生じる場合がある。
【0022】
合成マルチフィラメントを構成する樹脂としてポリエステルを用いる場合、樹脂の極限粘度は、0.5以上であることが好ましく、0.55以上であることがより好ましく、0.58以上であることが更に好ましく、上限は特に限定されないが、通常、1.5以下とすることができる。樹脂の極限粘度が0.5以上であれば、得られる異形モノフィラメントが適当な破断強度を有するため好ましい。一方、樹脂の極限粘度が0.5未満であると、異形断面は丸断面に比べて破断強度が弱いこともあり、破断強度の不足による製品の引き裂き強力、破断強度の低下、破断伸度の不足により加工操業性の悪化、製品耐久性の悪化という問題が生じる場合がある。
【0023】
異形モノフィラメントには、必要に応じて、吸湿性物質、酸化防止剤、つや消し剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等が、単独または複合して添加されてもよい。また、異形モノフィラメントの沸水収縮率、熱応力、複屈折率、太さ斑等は特に限定されず、適宜設定すればよい。
【0024】
マルチフィラメントの破断強度は、特に限定されないが、3.3cN/dtex以上であることが好ましく、3.5cN/dtex以上であることがより好ましく、4.0cN/dtex以上であることが更に好ましい。マルチフィラメントの強度が3.3cN/dtex以上であれば、高異形度のマルチフィラメントにおいても適当な引き裂き強力の織物が得られる。マルチフィラメントの破断強度の上限は特に限定されるものではないが、通常、10cN/dtex以下とすることができる。
【0025】
マルチフィラメントの破断伸度は、特に限定されないが、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましく、また、55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることが更に好ましい。
【0026】
本発明で用いられるマルチフィラメントについて具体的に説明する。本発明のマルチフィラメントは生糸で用いてもよく、仮撚加工等の捲縮加工が施されてもよく、二種類以上のマルチフィラメントが混用されていてもよいが、好ましくは同一の断面の単繊維のみからなる生糸の合成マルチフィラメントを用いることがよい。また、エアー交絡や撚糸も可能であるが、極力施さないか生産性を向上するために最低限の施用に抑えるのが好ましい。エアー交絡するのであればJIS L1013に準じた8.15 交絡度(フック法)で1~35程度にするのがよい。
【0027】
本発明に使われるマルチフィラメントにおいて、各々の異形モノフィラメントを略四角形(特に、菱形)とするためには、ノズルの口金吐出孔の形を
図5に示すような星型に設計することが好ましい。すなわち、略四角形の異形モノフィラメントを形成し得る星型の口金吐出孔は、4つの凸部(例えば、
図5ではP~S)と4つの凹部(例えば、
図5ではT~W)を有しており、凸部の2組の対角はそれぞれ等しく、凸部の対角線は直交していることが望ましい。このような星型の口金吐出孔を通じて原料樹脂を紡糸すると、溶融した樹脂が4つの凹部内を広がるように膨らみ、その結果、4つの凸部を結ぶ略四角形の繊維横断面を有する異形モノフィラメントが得られる。すなわち、略四角形の辺の長さは、隣り合う2つの凸部の頂点間の距離に大凡等しくなる(
図5中、略四角形の辺の長さL1およびL2は、それぞれ凸部の頂点R-S、S-P間の距離に大凡等しくなる)。そのため、吐出孔の3つの凸部を結んで形成される角度を調整することにより、略四角形の内角を設計することができる(すなわち、略四角形におけるQの内角は、凸部の3つの頂点P、Q、Rを結んで形成される角度とほぼ等しくなる)。
【0028】
また、この星型の口金吐出孔において、4つの凸部の先端は鋭角にせず丸めることが好ましい。先端を丸めておくことにより、略四角形の頂点が歪むことなく明確な頂点を形成しやすくなる。
【0029】
更に、略四角形を平行四辺形にするための条件としては、凹部の深さ(
図5中のL3)を、4つの凹部で全て等しくすることが好ましい。凹部の深さとしては、例えば、0.02mm~0.14mmが好ましく、より好ましくは0.04mm~0.12mmである。0.02mm未満であれば、フィラメントが紡出されたときに、ポリマーが外側に膨らみ、綺麗な平行四辺形が形成できない場合があり、また0.14mmよりも深くなると、紡出したポリマーが膨らんでも、膨らみが足りず、星型の繊維横断面となってしまうおそれがある。
【0030】
更に、紡出したポリマーを冷却する際には、
図5のP、Q、R、Sの各凸部に冷却風が当たるように、ノズルの孔の位置を設定するのが好ましい。逆に、
図5のT、U、V、Wの凹部に冷却風が直接当たらないように、ノズルの孔の位置を設定するのが好ましい。このような凹凸に積極的に冷却風を当てる箇所と、冷却風を当てない箇所を設けることにより、均等な平行四辺形を形成しやすくなる。特に、略四角形を菱形にするための条件としては、前記の条件を満たしながら、更に4辺の長さを等しくする必要があるため、ポリマーの粘度をポリエステルであれば、極限粘度を0.5以上のものにすることが好ましく、ポリアミドであれば、相対粘度を2.5以上のものにすることが好ましい。粘度を調整することで、4辺とも等しい菱形断面を形成しやすくなる。
【0031】
前記の断面のマルチフィラメントの製造方法については、特に限定されないが、例えば、ポリアミド系合成マルチフィラメントやポリエステル系合成マルチフィラメントでは、スピンドロー方式による紡糸延伸連続装置、または紡糸装置と延伸装置を用いて2工程で行うことによって製造可能であり、スピンドロー方式の場合紡糸引取りゴデットローラーの速度を1500m/分~4000m/分に設定することが好ましく、2000m/分~3000m/分にすることがより好ましい。
【0032】
以下、本発明の織物について具体的に説明する。擦れや引っかきに強い薄地織物を得るため、織物には、異形モノフィラメントを含むマルチフィラメントが、織物100質量%中、45質量%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは55質量%以上であり、更に好ましくは75質量%以上であり、上限は特に限定されないが、100質量%が好ましく、95質量%以下であってもよい。異形モノフィラメントを含むマルチフィラメントの含有比率を45質量%以上にすることで、通気度の低い薄地織物を得ることができる。
【0033】
織物において、高レベルで薄さを追求した場合、織物を構成するマルチフィラメントは、1本のマルチフィラメントを構成する異形モノフィラメントができるだけ一列に並んだ状態で織物中に存在することが望ましい(例えば、
図2を参照)。このように異形モノフィラメントが一列に並ぶと生地は極めて薄いものとなる。織物は、マルチフィラメントに垂直な方向の断面において、1本の合成マルチフィラメントの中で異形モノフィラメントが、1層配列および/または2層配列の状態で存在していることが好ましい。これは、含まれるモノフィラメント数が少ない上、細いマルチフィラメントを用いる本発明の薄地織物に特有の特徴である。
【0034】
織物のカバーファクター(CF)は、例えば、1300以上であることが好ましく、より好ましくは1450以上であり、更に好ましくは1500以上であり、特に好ましくは1600以上であり、上限は特に限定されないが、例えば、2000以下が好ましく、より好ましくは1900以下であり、更に好ましくは1800以下である。織物のカバーファクターを前記の範囲に調整することにより、軽量かつ薄地である織物が得られる。一方、織物のカバーファクターが前記範囲の下限値を下回ると、薄くて軽い織物が得られるが、高い引き裂き強力が得られにくい。また、織物のカバーファクターが前記範囲の上限値を超えると、織物が重くなってしまうため好ましくない。ここで織物のカバーファクター(CF)は、下記式により計算される。
CF=(T×(DT))1/2+(W×(DW))1/2
[式中、TおよびWは織物の経密度および緯密度(本/2.54cm)を示し、DTおよびDWは織物を構成する経および緯糸の太さ(dtex)を示す。]
【0035】
織物の織組織は特に限定されるものではなく、平組織、綾組織、朱子組織等、任意の組織を用いることができ、中でも通気度を抑えるために平組織が好ましく用いられる。さらに、織物の引き裂き強力を高めるために、例えば、
図3および
図4に示されるようなリップストップタフタの組織が特に好ましく用いられる。
【0036】
また、織物の製造に使用する織機も特に限定されず、ウオータージェットルーム織機やエアージェット織機、レピア織機等を使用することができる。特に、ウオータージェットルームやエアージェット織機が好ましく用いられる。
【0037】
織物の製造にあたっては、低張力サイジング機が好適に用いられる。また、織機に使うヘルドは、糸との摩擦を軽減するために、セラミックの材質を使うことが好ましい。接する面積が丸断面より大きい略四角形、平行四辺形、菱形では毛羽立ちを誘発させやすく、セラミックの材質を使うことで、前記のとおり低摩擦で製織することができ、毛羽立ちを抑えることができる傾向にある。
【0038】
織物の経密度は、例えば、50本/2.54cm以上であることが好ましく、80本/2.54cm以上であることがより好ましく、100本/2.54cm以上であることが更に好ましく、また、400本/2.54cm以下であることが好ましく、350本/2.54cm以下であることがより好ましく、250本/2.54cm以下であることが更に好ましい。経密度を前記の範囲内に調整することにより、異形モノフィラメントが1列配列および/または2列配列の状態になりやすいため好ましい。織物の緯密度は、例えば、50本/2.54cm以上であることが好ましく、80本/2.54cm以上であることがより好ましく、100本/2.54cm以上であることが更に好ましく、また、400本/2.54cm以下であることが好ましく、350本/2.54cm以下であることがより好ましく、250本/2.54cm以下であることが更に好ましい。なお、織物の生機密度と仕上密度は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0039】
製織した織物は、一般的な薄地織物の加工機械を使って、精錬、リラックス、プリセット染色、仕上げ加工等をすることが好ましい。また、織物には、風合いや織物の強力を調整するために柔軟加工、樹脂加工、シリコーン加工等を行うことも可能である。柔軟加工においては、例えば、柔軟剤として、アミノ変性シリコーンやポリエチレン系、ポリエステル系、パラフィン系柔軟剤等を使用するとよい。樹脂加工においては、例えば、樹脂加工剤として、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の各種樹脂を使用するとよい。
【0040】
本発明では、織物の一方の面に樹脂コーティング層が積層されている。織物の一方の面は、織物の表側の面または裏側の面を指す。織物に透湿防水膜となる樹脂をコーティングする場合には、樹脂コーティング層を積層する前に織物へ撥水剤処理を施すことが好ましい。これは、透湿防水性布帛の製造時に樹脂溶液が布帛の内部へ浸透することを防ぐための一手段である。この場合の撥水剤としては、パラフィン系撥水剤やポリシロキサン系撥水剤、フッ素系撥水剤等の公知のものを使用すればよく、その処理も、一般に行われているパディング法、スプレー法等の公知の方法でよい。特に良好な撥水性を必要とする場合にはフッ素系撥水剤を使用し、例えばアサヒガードE061(AGC株式会社製、フッ素系撥水剤エマルジョン)を繊維重量に対して1~3%の濃度でパディング法にて付着させた後、160℃で1分の熱処理を行う方法等によって行えばよい。
【0041】
本発明では、製織した織物の一方の面(衣料として使用する場合の肌側の面)を極薄い樹脂コーティング層を積層させることで、防水性だけでなく、軽量薄地織物の本来の風合い、厚み、軽量感を極力を損なわずに、織物の表面の摩耗耐久性を大幅に引き上げることを可能にしている。織物の一方の面に樹脂を極薄く接着することで、織物の表面の耐摩耗性が大きく高まる原因は明確になっていないが、織物の裏面および表面において繊維同士が樹脂によって接着されるアンカー効果によって、表面の摩擦で繊維が引っ張られても織物内で繊維が動きにくくなっていることによる効果であることが考えられる。
【0042】
本発明では、織物や編物等の生地を1層、樹脂コーティング膜を1層と数えることとする。具体的には、2層とは生地に樹脂コーティングしたものをいう。樹脂コーティング層の外層に、樹脂がプリントされているパターン層が施されていてもよい。本発明ではこのパターン層を0.5層と数え、そして、織物/樹脂コーティング層/パターン層の層形態を本発明では2.5層と呼ぶ。また、3層とは上記2層の膜下面に経編や丸編等の編物等を張り付けたものを3層と呼ぶ。
【0043】
図6および
図7に本発明の布帛の一例のSEM断面写真を示す。
【0044】
本発明で0.5層を追加する狙いは、樹脂コーティング層の上にパターン層を積層することで、意匠性を持たせたり、塗工筋等の加工における欠点を隠したり、滑り感をよくしてタック性や着心地を改善したり、ウレタン樹脂層の摩耗耐久性を向上させること等がある。このパターン層は、主に合成樹脂からなり、グラビアコーティングやロータリー捺染、フラットスクリーン捺染等で非全面に均一に塗布することにより形成する。かかる合成樹脂としてはポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が使用でき、これらを単独でまたは混合して用いてもよい。また、パターン層に滑り感を付与する場合は滑剤を含有させることが好ましい。滑剤としては特に限定されるものでなく、例えば、有機系滑剤として、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物、各種耐熱性有機フィラー微粉末等が挙げられる。無機系滑剤としては、湿式法(沈降法、ゲル法)により得られた二酸化ケイ素の微粉末、各種無機フィラー微粉末等が挙げられる。さらに、必要に応じて、パターン層に染料、顔料、充填剤、パール顔料等の化粧剤や蓄熱剤、抗菌剤、消臭剤等の機能剤を含有させてもよい。なお、本発明では2層透湿防水性布帛の樹脂部の外側に別の織編物を積層してもよい(生地サンドイッチ3層)。
【0045】
樹脂コーティング層は、多孔質膜(以下、「有孔膜」と称することがある)であることが好ましい。樹脂コーティング層が、孔を通して水蒸気が通過できる有孔膜であることにより、樹脂コーティング層を有する布帛に透湿性を付与することができる。有孔膜を形成する方法には、湿式法と乾式法がある。本発明では、湿式法と乾式法のいずれの方法を用いてもよいが、軽量かつ薄地の布帛を作るためには乾式法が有利であるため、乾式法が好ましく用いられる。
【0046】
布帛は、撥水処理された織物上にポリウレタン樹脂からなる乾燥樹脂膜の質量が15g/m2未満、好ましくは1g/m2以上10g/m2以下の有孔膜が形成されることが好ましい。この有孔膜の形成は、ポリウレタン処方溶液を乾燥樹脂膜の質量が1~10g/m2となるように塗布して製膜を行うことが好ましい。乾燥樹脂膜の質量が10g/m2を超えると、樹脂量が多くなって樹脂コーティング層の膜厚が大きくなることで、布帛が重くなりやすくなるとともに、布帛が硬くなりやすくなる。
【0047】
樹脂コーティング層を形成する有孔膜の厚みは、1μm~30μm程度とすることができる。中でも、有孔膜の厚みは、1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましく、また、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。有孔膜の厚みが1μm未満であると、布帛の防水性が低下する。有孔膜の厚みが30μmを超えると、得られる布帛が重くなり、風合も硬くなる。有孔膜の樹脂コーティング層を形成する方法として、湿式法と乾式法のいずれを用いても構わないが、樹脂コーティング層の膜の厚みを低く抑えるためには、湿式法よりも乾式法が有利である。
【0048】
次に、湿式法を用いた場合の多孔質ウレタン膜を形成する方法を例示する。湿式法を用いた多孔質ウレタン膜を形成する方法として、ポリウレタン樹脂を主体とする合成重合体溶液を乾燥樹脂膜の質量が1~10g/m2となるように塗布した後、5~30℃の水で樹脂凝固し、30~80℃の温水で湯洗、乾燥を行い、有孔膜を形成することが挙げられる。乾燥樹脂膜の質量が1g/m2未満では500mm以上の耐水圧を得ることが困難であり、10g/m2を超えると得られる布帛の厚みが大きくなり、布帛の重量が重くなりやすい。樹脂溶液の塗布に際しては、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター等を用いてコーティングを行えばよいが、フローティングナイフ方式、ナイフオンロール方式、ナイフオンベッド方式といったダイレクトコート方式が高速で低コストであり、生産性の観点から好ましい。ダイレクトコート方式の中でも、特にフローティングナイフ方式を用いることにより、0.1g/m2以上10g/m2以下の塗布量でコーティングすることが比較的容易となる。
【0049】
樹脂コーティング層を形成するために用いるポリウレタン樹脂を主体とする合成重合体は、ポリイソシアネートとポリオールを反応せしめて得られる共重合体であってもよいが、重合体の溶媒としては、湿式製膜に適したN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等の極性有機溶媒を主体とした樹脂溶液とし、樹脂溶液の粘性としてはニュートン粘性に近いものが、樹脂液の流動性、得られるコーティング品位、透湿防水性能からみて、好適に用いられる。
【0050】
湿式法を用いて樹脂コーティング層を形成するための樹脂液として、例えば、前記ポリウレタン樹脂を極性有機溶剤に溶かして形成した溶液を使用することができる。用い得る極性有機溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、ミメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、N-メチルピロリドン、ヘキサメチレンホスホンアミド等が挙げられる。
【0051】
ここでいうポリウレタン樹脂を主体とする合成重合体とは、ポリウレタン樹脂のみからなるものやポリウレタン成分を50%以上含むものを言い、ポリウレタン樹脂以外の合成重合体を含む場合の合成重合体としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアミノ酸等やこれらの共重合体等が挙げられ、勿論、フッ素やシリコーン等で変性した化合物も使用することができる。
【0052】
乾式法を用いた有孔膜を作る代表的な方法の例を以下に説明する。一つの方法として、W/O型エマルジョンのポリウレタン乳濁液を用いて織物に塗布した後、熱処理することにより、W/O型エマルジョンに含まれるトルエンやメチルエチルケトン等の水よりも低沸点の有機溶剤を揮発させ、残留する水によりポリウレタンを凝固させ、その後、水も蒸発させることによってコーティング膜に多孔質の樹脂コーティング層を成膜する方法が挙げられる。また、別の方法としては発泡法が挙げられる。発泡法の例として、ポリウレタン溶液の中に熱膨張性のマイクロカプセルを添加しておき、ポリウレタン溶液を織物に塗布して積層した後、熱処理を行うことでマイクロカプセルを膨張(発泡)させて多孔質の樹脂コーティング層を形成する方法や、発泡剤として水や水蒸気を用いて、水とイソシアネートとの反応により炭酸ガスを発生させることにより織物に多孔質の樹脂コーティング層を成膜する方法(ケミカル発泡法)も挙げられる。本発明では、上記のいずれの方法も用いることができるが、特にW/O型エマルジョンのポリウレタン乳濁液を用いる方法が好ましい。W/O型エマルジョンのポリウレタン乳濁液を用いて有孔膜を形成することにより、有孔膜の膜厚を薄くすることができ、透湿性能を向上させることができる。
【0053】
乾式法を用いた有孔膜の形成において、W/O型エマルジョンのポリウレタン乳濁液を用いる方法の場合、揮発性溶剤にはケトン類の溶剤や芳香族炭化水素系溶剤等があり、ケトン類の溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等を、また、芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン等をそれぞれ挙げることができる。ポリウレタン乳濁液中のポリウレタン微粒子の粒子径としては、0.05μm以上5μm以下程度であることが好ましい。
【0054】
多孔質の樹脂コーティング層を形成するための熱処理温度は、ポリウレタンの種類や発泡法により異なるが、例えば、60℃~200℃程度で1秒~1時間程度の熱処理を行えばよい。特に、W/O型エマルジョンのポリウレタン乳濁液を用いる場合には、熱処理を2段階で行うことも好ましい。例えば、低沸点の有機溶剤を先に揮発させておくために、40℃~110℃、より好ましくは50℃~90℃にて、10秒~10分程度にて予め熱処理し、その後、多孔質の樹脂コーティング層を形成(成膜)するために、100℃~200℃にて15秒~10分程度の熱処理を行うことができる。
【0055】
乾式を用いて形成した有孔膜の膜強度を向上させるために、有孔膜を形成する樹脂溶液の固形分中にイソシアネート系架橋剤を1質量%以上12質量%以下含有させることも好ましい。より好ましくは2質量%以上10質量%以下含有させるのがよい。有孔膜を形成する樹脂溶液中のイソシアネート系架橋剤の含有量が1質量%未満であると、有孔膜の強度や布帛本体との接着力の向上が期待できない場合がある。一方、有孔膜を形成する樹脂溶液中のイソシアネート系架橋剤の含有量が12質量%を超えると、有孔膜の風合いが硬くなる場合がある。
【0056】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレン2,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらのジイソシアネートと、活性水素を含有する化合物との付加反応によって得られるトリイソシアネート類も用いられる。活性水素を含有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
【0057】
樹脂コーティング層の膜厚は、少なくとも1μm以上10μm以下であることが好ましい。つまり、樹脂コーティング層は、膜厚が1μm以上10μm以下の部分を含んでいることが好ましい。樹脂コーティング層の膜厚が少なくとも1μm以上10μm以下であることにより、十分な防水性および耐摩耗性を発揮しつつ、布帛を軽量なものとすることができる。
【0058】
樹脂コーティング層の膜厚を少なくとも1μm以上10μm以下とするには、乾式法にて樹脂コーティング層を形成することが好ましい。従来、布帛に樹脂コーティング層を形成するにあたり、樹脂コーティング層を形成する樹脂を布帛に塗布し、樹脂を凝固させる凝固液に布帛を浸漬することによって成膜する前述の湿式法を用いることが一般的であった。湿式法による成膜では、樹脂コーティング層の膜厚を大きくすることができ、布帛の耐水圧を向上させることが可能ではあるが、布帛の重量が重くなってしまう。一方、布帛の樹脂コーティング層の形成において、樹脂コーティング層を形成する樹脂を布帛に塗布し、乾燥させることによって成膜する乾式法を用いることにより、湿式法よりも膜厚が小さい樹脂コーティング層を形成することができ、透水を防ぎながらも軽量な布帛とすることが可能である。
【0059】
本発明のように、織物への樹脂の塗布量を少なくしてコーティング加工を施すにあたっては樹脂の粘性を下げる必要があるが、この場合に織物が低密度であると織物に樹脂の一部が含浸し、加工中に樹脂が裏抜けするおそれがある。そこで、本発明の織物では高密度織物を用いている。樹脂コーティング加工を施す前に布帛にカレンダー加工を施し、織物の凹凸を小さくすることで、樹脂を薄い膜厚で均一に塗布しやすくなる。そのため、カレンダー加工を施した側の織物の面にコーティング加工を施すことが好ましい。つまり、樹脂コーティング層は、織物のカレンダー加工を施した側の面に積層されていることが好ましい。
【0060】
前述の通り、樹脂コーティング層の形成において、ナイフ等を用いて織物に樹脂コーティングを行うため、樹脂コーティング時に織物へ圧力が加わる。そのため、樹脂コーティング層を構成する樹脂が織物を構成する繊維間や繊維内に入り込むことがある。つまり、布帛は、布帛が有している織物の内部に樹脂コーティング層を構成する樹脂が入り込んでいる部分を有することがある。
【0061】
また、本発明では、防水性をさらに向上させる等の目的で、織物に透湿防水層を形成した後、更に撥水処理を施すことも好適である。用いる撥水剤は前記の前処理と同様に、パラフィン系撥水剤やポリシロキサン系撥水剤、フッ素系撥水剤等の公知のものでよく、適宜パディング法、スプレー法、コーティング法等により撥水処理を行えばよい。なお、この処理は前述の層数に含まれないものとする。
【0062】
本発明に係る布帛の厚みは、40μm以上85μm以下であることがこのましい。より好ましくは、70μm以下であることが望ましい。一方、布帛の厚みが40μm未満であると十分な耐摩耗性が得られず、十分な引き裂き強度が得られない。また、布帛の厚みが85μmを超えると風合いが硬く、本発明を用いた製品を折り畳んで携帯するときに嵩張りやすくなる。
【0063】
また、布帛の目付は70g/m2以下であることが好ましく、60g/m2以下であることがより好ましく、50g/m2以下であることが更に好ましく、また、20g/m2以上であることが好ましく、25g/m2以上であることがより好ましく、30g/m2以上であることが更に好ましい。布帛の目付が20g/m2未満であると、布帛の軽量性は得られるが十分な引き裂き強度が得られず耐水圧も得られない。
【0064】
<透湿性>
布帛は、透湿性も有する透湿性防水布帛であると好ましく、JIS L 1099:2012 3.7.1.1 A-1法(塩化カルシウム法)による透湿度が4000g/m2・24hrs以上であることが好ましい。布帛の透湿度が4000g/m2・24hrs以上であると、布帛を衣服として用いた場合にムレを抑制できる。布帛の透湿度は、より好ましくは7000g/m2・24hrs以上である。
【0065】
<防水性>
また、布帛は、防水性の指標となる耐水圧が、JIS L1092:2009 7.1.2 B法(高水圧法)で5kPa以上であることが好ましい。また、布帛の耐水圧の上限は、布帛を構成する繊維の種類、樹脂層の構成等によって異なるが、10kPa程度が目安である。
【0066】
<引き裂き強力>
JIS L1096:2010 8.15.5 D法(ペンジュラム法)による布帛の引き裂き強力は特に限定されないが、経方向および緯方向のいずれも9.8N以上であることが好ましく、12N以上であることがより好ましく、20N以上であることが更に好ましく、50N以下であることが好ましく、40N以下であることがより好ましく、30N以下であることがさらに好ましい。布帛の引き裂き強力を前記の範囲にすることにより、軽量かつ薄地で必要な引き裂き強力を有する布帛が得られる。一方、引き裂き強力が9.8Nより小さいと、用途によっては布帛の引き裂き強力が不足する場合がある。また、引き裂き強力が50Nを超えると、布帛を構成する織物の繊度を大きくする必要があり、それに伴って、生地が分厚く硬いものになりやすいため、好ましくない。
【0067】
<摩耗性>
布帛は、JIS L1096:2010 8.19 A-1法(平面法)による摩耗試験で破れるまでの回数が50回以上であることが好ましい。摩耗試験で破れるまでの回数がより好ましい態様では60回以上、さらに好ましい態様では100回以上、特に好ましい態様では120回以上の性能である。
【0068】
<用途>
このようにして得られる本発明に係る布帛は、軽量かつ薄地であって透湿防水特性を有し高密度織物でありながら、従来にない摩耗性に優れた特性を有している。そのため、本発明に係る布帛は、ダウンウェア、ダウンジャケット、ウインドブレーカー、布団、寝袋、レインウェア、テント、カバン、リュック等の側地に好ましく用いることができる。
【実施例0069】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、本発明の実施例および比較例の各性能評価は次の方法により行った。
【0070】
<相対粘度>
96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸中にポリマー濃度が10mg/mlになるように試料を溶解させてサンプル溶液を調製した。20℃±0.05℃の温度で水落下秒数が6秒から7秒のオストワルド粘度計を用い、20℃±0.05℃の温度で、調製したサンプル溶液20mlの落下時間T1(秒)および試料を溶解するに用いた96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸20mlの落下時間T0(秒)をそれぞれ測定した。使用する樹脂の相対粘度(RV)は下記の式により算出された。
RV=T1/T0
【0071】
<単繊維断面の測定>
(1)辺の長さの測定
VH-Z450型顕微鏡およびVH-6300型測定器(株式会社キーエンス製)を用い、1500倍の倍率で異形モノフィラメントの断面の各辺の長さを測定し、3本の測定値の平均値を辺の長さとした。
【0072】
(2)内角の測定
VH-Z450型顕微鏡およびVH-6300型測定器(株式会社キーエンス製)を用い、1500倍の倍率で異形モノフィラメントの断面を撮影し、市販の分度器(コクヨ株式会社製)で鋭角と鈍角を測定し、それぞれ3本の測定値の平均値を角度とした。
【0073】
<単糸繊度(モノフィラメントの繊度)>
マルチフィラメントの総繊度からフィラメント数を除して単糸繊度を求めた。
単糸繊度=総繊度/フィラメント本数
【0074】
<総繊度(マルチフィラメントの繊度)>
100m長のマルチフィラメントのカセを3つ作製し、各々の質量(g)を測定し、平均値を求め、100倍して総繊度を求めた。
【0075】
<カバーファクター>
布帛のカバーファクター(CF)は、下記の式により計算した。
CF=(T×(DT))1/2+(W×(DW))1/2
[式中、TおよびWは織物の経密度および緯密度(本/2.54cm)を示し、DTおよびDWは織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す。]
【0076】
<撥水性>
布帛の撥水性は、JIS L1092:2009 7.2 はっ水度試験(スプレー試験)に基づいて測定した。洗濯0回の撥水性は、洗濯に供する前の布帛を試料としたときに測定される撥水性であり、洗濯20回後の撥水性は、後述する洗濯方法にて20回洗濯を行った後の布帛を試料として測定される撥水性である。
【0077】
<洗濯方法>
布帛の洗濯は、JIS L1930:2014 付属書Fに記載のC4N法に準拠して実施した。「洗濯20回後」とは、洗濯-脱水-乾燥を20回繰り返した後の測定結果である。なお、乾燥は吊干し乾燥で行った。洗濯20回後の撥水性は、前記の方法により測定した。
【0078】
<摩耗試験>
摩耗試験は、JIS L1096:2010 8.19 A-1法(平面法)に準拠して測定を行った。試験片をユニバーサル型試験機のゴム膜上に表面を上にして置き、クランプで固定し、JIS R6253に規定された研磨紙から、試料の質量(g/m2)に合った粗さのものを選んで試験機のクランクに固定し、押圧荷重をかけて試験片を多方向に摩擦する。試験片が摩耗して8mm±1mmの孔が開いたときを終点とし、その時の摩擦回数を求め、5回の摩耗試験の平均値を算出した。なお、本発明では、布帛の高密度織物の面を測定面として用いて、織物表面の摩擦耐久性を測定している。
【0079】
<引き裂き強力>
布帛の引き裂き強力は、JIS L1096:2010 8.15.5 引裂強さD法(ペンジュラム法)に準拠して、経緯の両方向において測定した。
【0080】
<布帛の透湿性>
布帛の透湿性は、JIS L1099:2012 3.7.1.1 A-1法(塩化カルシウム法)に準じて行った。温度は40℃、湿度90%RHの環境で測定し、n=3の平均値とした。また、JIS L1099:2012 3.7.2.1 B-1法(酢酸カリウム法)に準じて、同様に布帛の透湿性の測定を行った。
【0081】
<布帛の耐水圧>
布帛の耐水圧は、JIS L1092:2009 7.1.2 B法(高水圧法)に準じて測定した。
【0082】
実施例1
相対粘度3.5のナイロン6ポリマーチップを紡糸温度282℃で、7個の吐出孔(
図5に示す形状で、L1:0.481mm、L2:0.481mm、L3:0.07mm、角a:54°)を備える紡糸口金から溶融紡糸した。2つのゴデットローラーのうち、第1ゴデットローラー速度を2800m/分、第2ゴデットローラーの速度を4000m/分に設定し、第2ゴデットのロールの温度を160℃にて延伸し、
図1に示す略四角形の形状において、角度a:54°、辺AおよびA’:18.7μm、辺BおよびB’:18.7μmの菱形断面のモノフィラメント7本からなる繊度17dtexの合成マルチフィラメントを得た。該合成マルチフィラメントを経糸および緯糸に用い、織経密度213本/2.54cm、織緯密度181本/2.54cmに設定し、リップストップ組織で製織した。
【0083】
通常の方法で精練および染色(三菱化成株式会社製、酸性染料DiacidFast Red 3B:2%owf)を行った。その後、アサヒガードE061(AGC株式会社製、フッ素系撥水剤エマルジョン)の5質量%の水分散液でパディングして(絞り率35%)、乾燥後、160℃で1分間の熱処理を行ってコーティング用の織物を得た。得られた織物は経密度226本/2.54cm、緯密度197本/2.54cmであった。
【0084】
続いて、この後、鏡面ロールを持つカレンダー加工機を用いて、温度160℃、圧力30kg/cm、速度20m/分の条件にてカレンダー加工を行い、下記の処方1に示す樹脂溶液を、フローティングナイフコーターを使用して塗布量8g/m2にてカレンダー加工を施した側の織物の面に塗布した後、80℃、2分間の条件で乾燥を行い、150℃、1分間の条件で乾熱処理を行い、有孔膜の厚みが平均5μmの布帛を得た。
【0085】
(処方1)
ハイムレンX-3040(大日精化工業株式会社製、エーテル系ポリウレタン樹脂 固形分30%、溶剤:MEK:水=94:6)・・・100質量部
レザミンX(大日精化工業株式会社製、イソシアネート化合物)・・・2質量部
メチルエチルケトン・・・15質量部
トルエン・・・15質量部
白色顔料・・・5質量部
水・・・40質量部
【0086】
得られた布帛の経密度、緯密度、引き裂き強力、摩耗評価、耐水性、撥水性、透湿性等の評価結果、および布帛を使った製品を評価した結果を表1に示す。
【0087】
実施例2
1層目の織物に22dtex、7フィラメントの菱形ナイロン6繊維を用いて、織経密度182本/2.54cm、織緯密度177本/2.54cmに設定し、リップストップ組織で製織した以外は実施例1と同様の方法で布帛を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0088】
実施例3
1層目の織物に11dtex、5フィラメントの菱形ナイロン6繊維を用いて、織経密度256本/2.54cm、織緯密度230本/2.54cmに設定し、リップストップ組織で製織した以外は実施例1と同様の方法で布帛を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
実施例4
1層目の織物に17dtex、7フィラメントの菱形ポリエステル繊維を用いて、織経密度213本/2.54cm、織緯密度181本/2.54cmに設定し、リップストップ組織で製織した以外は実施例1と同様の方法で布帛を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0090】
実施例5
1層目の織物の緯糸に17dtex、7フィラメントの丸断面ナイロン繊維を用いて、織経密度213本/2.54cm、織緯密度181本/2.54cmに設定し、リップストップ組織で製織した以外は実施例1と同様の方法で布帛を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0091】
実施例6
1層目の織物の経糸に17dtex、7フィラメントの丸断面ナイロン繊維を用いて、織経密度213本/2.54cm、織緯密度181本/2.54cmに設定し、リップストップ組織で製織した以外は実施例1と同様の方法で布帛を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0092】
実施例7
下記の処方2のポリウレタン有孔膜形成用樹脂溶液(固形分21%、粘度15000mPa・s/25℃)を、塗布量60g/m2で塗布した。その後、20℃の水で1分間凝固し、続いて40℃のオーバーフロー温水で5分間湯洗を行い、120℃×2分で乾燥後、170℃×1分のキュアーにより、有孔膜の厚みが平均30μmの布帛を得た。
【0093】
(処方2)
ラックスキンUJ8517(セイコー化成株式会社製、湿式製膜用ポリウレタン樹脂、固形分27%)・・・100質量部
ラックスキンUJ8518M(セイコー化成株式会社製、透湿向上用シリカ含有ポリウレタン樹脂、固形分21%)・・・30質量部
レザミンX(大日精化工業株式会社製、イソシアネート化合物)・・・1質量部
N,N-ジメチルホルムアミド・・・25質量部
【0094】
比較例1
1層目の織物に44dtex、12フィラメントの菱形ナイロン6繊維を用いて、織経密度145本/2.54cm、織緯密度135本/2.54cmに設定し、リップストップ組織で製織した以外は実施例1と同様の方法で布帛を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0095】
比較例2
1層目の織物に17dtex、12フィラメントの丸断面ナイロン6繊維を用いて、織経密度214/2.54cm、織緯密度170本/2.54cmに設定し、リップストップ組織で製織した以外は実施例1と同様の方法で布帛を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0096】
比較例3
1層目の織物に22dtex、20フィラメントの丸断面ナイロン6繊維を用いて、織経密度178/2.54cm、織緯密度161本/2.54cmに設定し、リップストップ組織で製織した以外は実施例1と同様の方法で布帛を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0097】
比較例4
実施例1と同様の方法で織物を製織した。常法により染色し、公知の方法で染色仕上げ加工を施した。その後、カレンダー加工を1回施した。その後、アサヒガードE061の5%溶液を織物に含浸させ、マングルで絞り、乾燥した後、160℃で30秒間熱処理した。離型紙上に下記の処方3に示す樹脂をナイフコーターにて塗布し、エアオーブンを用いて100℃で乾燥し、樹脂無孔膜を得た。接着性樹脂を用い、ラミネート法にて織物のカレンダー加工を施した側の面に樹脂無孔膜を付与し、評価を行った。得られた結果を表1に示す。また、得られたラミネーション加工された布帛の断面SEM写真を
図8に示す。
【0098】
(処方3)
水膨潤性エステル系ポリウレタン樹脂・・・75部
水膨潤性エーテル系ポリウレタン樹脂・・・35部
N,N’-ジメチルホルムアミド・・・80部
HU-720P(吸放湿性微粒子:日本エクスラン工業(株)製)・・・10部
コロネートHL・・・3部
【0099】
比較例5
実施例1と同様の方法で1層目の織物を作製し、染色、撥水工程、カレンダー加工まで行って布帛を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0100】
本発明により、軽量かつ薄地で透湿性および防水性を有する布帛が得られ、より耐摩耗性が高い生地とすることが可能となり、耐久性も非常に高いことからも高性能なウエアを提供可能となり、産業界に大きく寄与することが期待される。