(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014300
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】インバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240125BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117019
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新谷 祐介
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA05
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA02X
5H770JA02X
5H770LA02X
5H770LA05X
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】短絡異常の種類に応じたスイッチング素子の保護を図ることができる。
【解決手段】保護回路30は、第1抵抗素子R1と、第2抵抗素子R2と、判別部33と、切替部35と、を備える。駆動部21の出力信号は、第1抵抗素子R1を介してスイッチング素子Q1,Q2に伝わる。第2抵抗素子R2は、第1抵抗素子R1に並列接続可能に設けられている。判別部33は、第1短絡異常と第2短絡異常と、を判別する。保護回路30は、判別部33が第2短絡異常と判別すると、切替部35によって、第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2とを並列接続に切り替える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路を構成するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を駆動する駆動部と、
前記駆動部の出力信号を第1抵抗素子を介して前記スイッチング素子に伝える保護回路と、を備えるインバータであって、
前記保護回路は、
前記第1抵抗素子に並列接続可能に設けられた第2抵抗素子と、
前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子とを並列接続に切替える切替部と、
前記インバータの上アームと下アームとのうち、どちらか一方のアームのスイッチング素子が短絡故障した状態で他方のアームのスイッチング素子をターンオンする第1短絡異常と、どちらか一方のアームのスイッチング素子がオンした状態で他方のアームのスイッチング素子が短絡故障する第2短絡異常と、を判別する判別部と、を有し、
前記保護回路は、前記判別部が前記第2短絡異常と判別すると、前記切替部によって、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子とを並列接続に切り替える、インバータ。
【請求項2】
前記判別部は、前記スイッチング素子に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第1閾値以上の場合、前記第1短絡異常と判別し、前記スイッチング素子に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上の場合、前記第2短絡異常と判別し、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きい値である、請求項1に記載のインバータ。
【請求項3】
前記保護回路は、前記スイッチング素子に流れる電流が電流閾値未満の場合、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子との並列接続を解除する、請求項1又は請求項2に記載のインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インバータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のインバータは、上下のアームを構成するスイッチング素子と、ソフト遮断用抵抗体と、ソフト遮断用スイッチング素子と、を備える。スイッチング素子は、制御端子を備える。スイッチング素子は、制御端子に電圧が印加されることでオンする。ソフト遮断用抵抗体は、ソフト遮断用スイッチング素子を介してスイッチング素子の制御端子に接続されている。上下のアームを構成するスイッチング素子のうち一方が短絡故障した場合、上下のアームを構成するスイッチング素子のうち他方を保護する必要がある。短絡故障が生じたスイッチング素子を短絡素子とし、保護する必要があるスイッチング素子を保護素子とする。特許文献1に開示のインバータでは、短絡故障が生じた場合、ソフト遮断用スイッチング素子をオンすることで保護素子の制御端子とソフト遮断用抵抗体とを接続できる。これにより、制御端子に印加された電圧を低下させることで保護素子を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
短絡素子に短絡故障が生じたタイミングで、保護素子がオフ状態かオン状態かで短絡異常は2つの種類に分類できる。短絡素子に短絡故障が生じたタイミングで、保護素子がオフ状態の場合、短絡故障が生じた状態で保護素子がターンオンすることによって保護素子に流れる電流は徐々に大きくなる。短絡素子に短絡故障が生じたタイミングで、保護素子がオン状態の場合、保護素子に流れる電流は急激に大きくなる。2つの種類の短絡異常に応じて適切にスイッチング素子を保護することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するインバータは、インバータ回路を構成するスイッチング素子と、前記スイッチング素子を駆動する駆動部と、前記駆動部の出力信号を第1抵抗素子を介して前記スイッチング素子に伝える保護回路と、を備えるインバータであって、前記保護回路は、前記第1抵抗素子に並列接続可能に設けられた第2抵抗素子と、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子とを並列接続に切替える切替部と、前記インバータの上アームと下アームとのうち、どちらか一方のアームのスイッチング素子が短絡故障した状態で他方のアームのスイッチング素子をターンオンする第1短絡異常と、どちらか一方のアームのスイッチング素子がオンした状態で他方のアームのスイッチング素子が短絡故障する第2短絡異常と、を判別する判別部と、を有し、前記保護回路は、前記判別部が前記第2短絡異常と判別すると、前記切替部によって、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子とを並列接続に切り替える。
【0006】
判別部が第2短絡異常と判別すると、第1抵抗素子と第2抵抗素子とが並列接続される。第1抵抗素子と第2抵抗素子とを並列接続した合成抵抗の抵抗値は、第1抵抗素子の抵抗値よりも低い。従って、短絡異常の種類に応じたスイッチング素子の保護を図ることができる。
【0007】
上記インバータについて、前記判別部は、前記スイッチング素子に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第1閾値以上の場合、前記第1短絡異常と判別し、前記スイッチング素子に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上の場合、前記第2短絡異常と判別し、前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きい値であってもよい。
【0008】
上記インバータについて、前記保護回路は、前記スイッチング素子に流れる電流が電流閾値未満の場合、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子との並列接続を解除してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短絡異常の種類に応じたスイッチング素子の保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1のインバータ制御装置が備える駆動部及び保護回路の概略構成図である。
【
図3】短絡素子に短絡故障が生じた場合に保護素子に流れる電流と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
インバータの一実施形態について説明する。
図1に示すように、モータ駆動装置10は、モータ11を駆動するための装置である。モータ11は、3つのコイルU,V,Wを備える3相交流モータである。モータ11は、どのような装置に搭載されるものであってもよい。モータ11は、例えば、電動圧縮機、産業車両、又は乗用車に搭載される。
【0012】
<モータ駆動装置>
モータ駆動装置10は、バッテリBAと、平滑コンデンサCと、インバータInvと、を備える。インバータInvは、インバータ回路20と、インバータ制御装置12と、を備える。
【0013】
インバータ回路20は、6つのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6と、6つのダイオードD1,D2,D3,D4,D5,D6と、を備える。スイッチング素子Q1~Q6としては、例えば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)が用いられる。スイッチング素子Q1~Q6は、第1端子T1と、第2端子T2と、制御端子T3と、センス端子T4と、を備える。スイッチング素子Q1~Q6がIGBTであれば、第1端子T1はコレクタ、第2端子T2はエミッタ、制御端子T3はゲートである。スイッチング素子Q1~Q6がMOSFETであれば、第1端子T1はドレイン、第2端子T2はソース、制御端子T3はゲートである。
【0014】
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは互いに直列接続されている。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とは互いに直列接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6とは互いに直列接続されている。2つのスイッチング素子Q1,Q2、2つのスイッチング素子Q3,Q4、及び2つのスイッチング素子Q5,Q6のそれぞれによってレグが構成されている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5は上アームを構成している。スイッチング素子Q2,Q4,Q6は下アームを構成している。スイッチング素子Q1~Q6にはそれぞれダイオードD1~D6が並列接続されている。
【0015】
各スイッチング素子Q1~Q6には、平滑コンデンサCを介してバッテリBAが接続されている。インバータ回路20は、バッテリBAから入力される直流電力を交流電力に変換してモータ11に出力する。これにより、モータ11が駆動する。バッテリBAは、例えば、定格電圧が800[V]である。
【0016】
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点は、コイルUに接続されている。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点は、コイルVに接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との接続点は、コイルWに接続されている。
【0017】
インバータ制御装置12は、コントローラ13と、駆動部21と、保護回路30と、を備える。
コントローラ13は、駆動部21に制御信号を出力する。コントローラ13は、プロセッサと、記憶部と、を備える。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。コントローラ13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路であるコントローラ13は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0018】
駆動部21は、スイッチング素子Q1~Q6毎に個別に設けられている。駆動部21は、コントローラ13からの制御信号に応じてスイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作を行う。
【0019】
図2に示すように、駆動部21は、短絡検出端子22と、保護端子23と、を備える。
<保護回路>
保護回路30は、スイッチング素子Q1~Q6毎に個別に設けられている。保護回路30は、当該保護回路30が設けられたスイッチング素子Q1~Q6の保護を行う。保護回路30は、駆動部21とスイッチング素子Q1~Q6との間に設けられている。保護回路30は、第1抵抗素子R1と、第2抵抗素子R2と、切替回路31と、を備える。切替回路31は、シャント抵抗32と、判別部33と、ラッチ回路34と、切替部35と、閾値検出回路36と、を備える。
【0020】
第1抵抗素子R1は、制御端子T3と保護端子23とを接続している。第1抵抗素子R1は、制御端子T3と保護端子23との間に直列接続されている。駆動部21は、出力信号を第1抵抗素子R1を介してスイッチング素子Q1~Q6に伝える。
【0021】
第2抵抗素子R2は、第1抵抗素子R1に並列接続可能に設けられている。第2抵抗素子R2の抵抗値[Ω]は、第1抵抗素子R1の抵抗値と同一値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0022】
シャント抵抗32は、センス端子T4に接続されている。センス端子T4には、第1端子T1と第2端子T2との間に流れる電流に比例した微小な電流が流れる。シャント抵抗32では、第1端子T1と第2端子T2との間に流れる電流に応じた電圧降下が生じる。シャント抵抗32とセンス端子T4との接続点には、駆動部21の短絡検出端子22が接続されている。
【0023】
駆動部21は、シャント抵抗32での電圧降下量に基づきスイッチング素子Q1~Q6に流れる電流が短絡検出閾値以上か否かを判定する。短絡検出閾値は、予め定められている。短絡検出閾値は、通常使用電流領域よりも高い値に設定されている。スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流とは、スイッチング素子Q1~Q6の第1端子T1と第2端子T2との間を流れる電流である。駆動部21は、スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流が短絡検出閾値以上の場合、当該スイッチング素子Q1~Q6に直列接続されたスイッチング素子Q1~Q6に短絡異常が生じたと判定する。例えば、スイッチング素子Q2に設けられた駆動部21が、スイッチング素子Q2に流れる電流が短絡検出閾値以上になったことを検出すると、スイッチング素子Q1に短絡故障が生じたと判定できる。
【0024】
判別部33は、短絡異常の種類を判別するための回路である。上下のアームを構成するスイッチング素子Q1~Q6のうち短絡故障が生じたスイッチング素子Q1~Q6を短絡素子とし、短絡素子に直列接続されたスイッチング素子Q1~Q6を保護素子とする。短絡素子が短絡故障した状態で保護素子をターンオンすることを第1短絡異常とする。保護素子がオンした状態で短絡素子が短絡故障することを第2短絡異常とする。第1短絡異常は、上アームと下アームとのうち、どちらか一方のアームのスイッチング素子Q1~Q6が短絡故障した状態で他方のアームのスイッチング素子Q1~Q6をターンオンする短絡異常である。第2短絡異常は、上アームと下アームとのうち、どちらか一方のアームのスイッチング素子Q1~Q6がオンした状態で他方のアームのスイッチング素子Q1~Q6が短絡故障する短絡異常である。
【0025】
図3に示すように、時刻T11で短絡素子に短絡故障が生じたとする。線L1で示すように、第1短絡異常では、短絡素子に短絡故障が生じた状態で保護素子がターンオンすることによって保護素子に流れる電流は徐々に大きくなる。線L2で示すように、第2短絡異常では、短絡素子に短絡故障が生じることによって上アームを構成するスイッチング素子Q1,Q3,Q5と下アームを構成するスイッチング素子Q2,Q4,Q6とが短絡する。これによって、保護素子に流れる電流は急激に大きくなる。
【0026】
図2に示すように、判別部33は、センス端子T4とシャント抵抗32との接続点に接続されている。判別部33は、シャント抵抗32での電圧降下量に基づきスイッチング素子Q1~Q6に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第1閾値以上か否かを判定する。判別部33は、シャント抵抗32での電圧降下量に基づきスイッチング素子Q1~Q6に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上か否かを判定する。スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流の単位時間当たりの増加量は、電流を縦軸、時間を横軸とした場合の電流の傾きである。
【0027】
第1閾値としては、第1短絡異常を判別できるように設定されている。第1短絡異常が生じた場合、短絡異常が生じていない場合よりも単位時間当たりの電流の増加量が多い。従って、短絡異常が生じていない場合の単位時間当たりの電流の増加量よりも高い値を第1閾値として設定することで、判別部33は第1短絡異常が生じたことを判別できる。詳細にいえば、判別部33は、スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第1閾値以上であり、かつ、第2閾値未満の場合、第1短絡異常が生じたと判別する。
【0028】
第2閾値は、第1閾値よりも大きい値である。第2閾値としては、第2短絡異常を判別できるように設定されている。第2短絡異常が生じた場合、第1短絡異常が生じた場合よりも単位時間当たりの電流の増加量が多い。従って、第1短絡異常が生じた場合の単位時間当たりの電流の増加量よりも高い値を第2閾値として設定することで、判別部33は第2短絡異常が生じたことを判別できる。判別部33は、スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上の場合、第2短絡異常が生じたと判別する。判別部33は、第2短絡異常が生じた場合、切替部35をオンする。例えば、判別部33は、第2短絡異常が生じた場合、ラッチ回路34にハイレベルの信号を出力することによって切替部35をオンする。
【0029】
ラッチ回路34は、判別部33によって切替部35がオンされると、オン状態を維持する。
切替部35は、第2抵抗素子R2に直列接続されている。切替部35と第2抵抗素子R2とは、第1抵抗素子R1に並列接続されている。切替部35がオン状態の場合、第2抵抗素子R2と第1抵抗素子R1とは並列接続される。切替部35がオフ状態の場合、第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2との並列接続は解除される。切替部35としては、トランジスタ等の任意のスイッチング素子を用いることができる。
【0030】
閾値検出回路36は、センス端子T4とシャント抵抗32との接続点に接続されている。閾値検出回路36は、センス端子T4とシャント抵抗32との間に接続されている。閾値検出回路36は、シャント抵抗32での電圧降下量に基づきスイッチング素子Q1~Q6に流れる電流が電流閾値未満になったか否かを判定する。閾値検出回路36は、スイッチング素子Q1~Q6を流れる電流が電流閾値未満になると、ラッチ回路34を制御することによって切替部35をオフする。電流閾値は、予め定められている。
【0031】
[本実施形態の作用]
一例として上下のアームを構成するスイッチング素子Q1,Q2のうち上アームを構成するスイッチング素子Q1に短絡故障が生じた場合を例に挙げて保護回路30の作用について説明を行う。下アームを構成するスイッチング素子Q2に短絡故障が生じた場合であっても保護回路30の作用は同様である。また、スイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6に設けられた保護回路30についても同様に機能する。
【0032】
短絡異常が第1短絡異常の場合、判別部33が切替部35をオンしない。このため、第1抵抗素子R1及び第2抵抗素子R2のうち第1抵抗素子R1のみがスイッチング素子Q2の制御端子T3に接続される。
【0033】
駆動部21は、スイッチング素子Q2に流れる電流が短絡検出閾値以上の場合、制御端子T3に印加された電圧を低下させることによってスイッチング素子Q2をオフする。短絡異常が第1短絡異常の場合、第1抵抗素子R1を介して保護端子23に向けて電流が流れる。
図3に示すように、時刻T12で制御端子T3に印加された電圧の低下が開始されたとすると、スイッチング素子Q2がオフしていくことによってスイッチング素子Q2に流れる電流が減少していく。スイッチング素子Q2がオフすることで、スイッチング素子Q2を過電流から保護することができる。
【0034】
短絡異常が第2短絡異常の場合、判別部33が切替部35をオンする。このため、第1抵抗素子R1及び第2抵抗素子R2がスイッチング素子Q2の制御端子T3に接続される。
【0035】
駆動部21は、スイッチング素子Q2に流れる電流が短絡検出閾値以上の場合、制御端子T3に印加された電圧を低下させることによってスイッチング素子Q2をオフする。短絡異常が第2短絡異常の場合、第1抵抗素子R1及び第2抵抗素子R2を介して保護端子23に向けて電流が流れる。第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2との合成抵抗の抵抗値は、第1抵抗素子R1の抵抗値に比べて小さい。このため、第1抵抗素子R1のみが制御端子T3に接続されている場合に比べて、制御端子T3に印加された電圧を低下させやすい。
【0036】
短絡異常が第2短絡異常の場合、時刻T12で制御端子T3に印加された電圧の低下が開始されたとすると、制御端子T3に印加された電圧が短時間で低下することによってスイッチング素子Q2が急峻にオフしようとする。スイッチング素子Q2が急峻にオフすると、サージによりスイッチング素子Q2が破損するおそれがある。このため、スイッチング素子Q2に流れる電流が電流閾値未満になると、閾値検出回路36によって切替部35がオフされる。制御端子T3に第1抵抗素子R1のみが接続されるようになることで、制御端子T3に印加された電圧が低下しにくくなる。これにより、スイッチング素子Q2が急峻にオフされることを抑制している。電流閾値は、サージによってスイッチング素子Q2が破損しないように設定されている。
【0037】
[本実施形態の効果]
(1)保護回路30は、短絡異常が生じた場合、制御端子T3に印加された電圧を低下させることによってスイッチング素子Q1~Q6をオフする。これにより、保護回路30は、スイッチング素子Q1~Q6を保護する。第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2を並列接続した合成抵抗の抵抗値は、第1抵抗素子R1の抵抗値よりも低い。制御端子T3に接続されている抵抗素子の抵抗値が低いほど、制御端子T3に印加された電圧を低下させやすい。短絡異常の種類に応じて第2抵抗素子R2を第1抵抗素子R1に並列接続するか否かを切り替えることで、短絡異常の種類に応じたスイッチング素子Q1~Q6の保護を図ることができる。
【0038】
(2)判別部33は、スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上の場合、短絡異常が第2短絡異常と判別する。従って、第2短絡異常が発生した場合に、第2抵抗素子R2を第1抵抗素子R1に並列接続することができる。
【0039】
(3)閾値検出回路36は、スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流が電流閾値未満の場合、第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2との並列接続を解除する。短絡異常が第2短絡異常の場合に、スイッチング素子Q2が急峻にオフされることを抑制することができる。サージによりスイッチング素子Q2が破損することを抑制できる。
【0040】
(4)短絡異常が第1短絡異常か第2短絡異常かを判別することによって、短絡異常の種類に応じて異なる手法でスイッチング素子Q1~Q6を保護している。詳細にいえば、短絡異常が第1短絡異常であれば第1抵抗素子R1のみを用いて制御端子T3に印加された電圧を低下させている。短絡異常が第2短絡異常であれば第1抵抗素子R1及び第2抵抗素子R2を用いて制御端子T3に印加された電圧を低下させている。短絡異常が第1短絡異常であっても第2短絡異常であっても、同様の手法でスイッチング素子Q1~Q6を保護することも考えられる。例えば、短絡異常が第1短絡異常であっても第2短絡異常であっても第1抵抗素子R1のみを用いてスイッチング素子Q1~Q6をオフすることも考えられる。この場合、第2短絡異常からスイッチング素子Q1~Q6を保護するために、短絡検出閾値を小さくする必要がある。すると、通常使用電流領域であっても短絡異常が検出される場合があり、短絡異常が生じていないにも関わらず短絡異常が生じていると判定されるおそれがある。また、第2短絡異常に適した手法を採用して、当該手法によって第1短絡異常からもスイッチング素子Q1~Q6を保護しようとすると、第1短絡異常でスイッチング素子Q1~Q6が破損してしまう場合がある。このように、短絡異常が第1短絡異常であっても第2短絡異常であっても、同様の手法でスイッチング素子Q1~Q6を保護することは困難である。本実施形態のように、短絡異常の種類に応じて異なる手法によってスイッチング素子Q1~Q6を保護することによって、短絡異常の種類に応じてスイッチング素子Q1~Q6の適切な保護を図ることができる。
【0041】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
○切替回路31は、閾値検出回路36を備えていなくてもよい。この場合、短絡異常が第2短絡異常の場合、スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流によって第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2との並列接続を解除しなくてもよい。
【0043】
○切替回路31は、駆動部21に内蔵されていてもよい。
○第1抵抗素子R1、及び第2抵抗素子R2は、それぞれ、複数の抵抗素子によって構成されていてもよい。
【0044】
○判別部33は、短絡異常が第2短絡異常か否かを判別できればよく、短絡異常が第1短絡異常か第2短絡異常かを判別できなくてもよい。例えば、判別部33は、スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上の場合、短絡異常が第2短絡異常と判別する。判別部33は、スイッチング素子Q1~Q6に流れる電流の単位時間当たりの増加量が第1閾値以上か否かを判別しなくてもよい。判別部33は、第2短絡異常が生じた場合、切替部35をオンする。判別部33は、短絡異常が第2短絡異常の場合に切替部35をオンするため、第1短絡異常を判別しない場合であっても、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
[付記]
実施形態、及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
インバータ回路を構成するスイッチング素子と、前記スイッチング素子を駆動する駆動部と、前記駆動部の出力信号を第1抵抗素子を介して前記スイッチング素子に伝える保護回路と、を備えるインバータであって、前記保護回路は、前記第1抵抗素子に並列接続可能に設けられた第2抵抗素子と、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子とを並列接続に切替える切替部と、前記インバータの上アームと下アームとのうち、どちらか一方のアームのスイッチング素子が短絡故障した状態で他方のアームのスイッチング素子をターンオンすることを第1短絡異常とし、どちらか一方のアームのスイッチング素子がオンした状態で他方のアームのスイッチング素子が短絡故障することを第2短絡異常とした場合、前記第2短絡異常が発生したか否かを判別する判別部と、を有し、前記保護回路は、前記判別部によって前記第2短絡異常が発生したと判別されると、前記切替部によって、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子とを並列接続に切り替える、インバータ。
【符号の説明】
【0046】
Inv…インバータ、Q1~Q6…スイッチング素子、R1…第1抵抗素子、R2…第2抵抗素子、20…インバータ回路、30…保護回路、33…判別部、35…切替部。