(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143000
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20241003BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055444
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】安田 渓斗
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】石間 雄也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 瑶平
(72)【発明者】
【氏名】小池 光晴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聖斗
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AB01
5E070BB03
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】外部導体が素体から剥離することを抑制できる電子部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、実装面を有している素体2と、実装面に配置されている端子電極3,4と、を備え、端子電極3,4の少なくとも一部は、素体2に埋設されており、端子電極3,4は、実装面に直交する方向において端子電極3,4を貫通している開口部3H,4Hを有しており、開口部3H,4H内に素体2の一部が配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有している素体と、
前記実装面に配置されている外部導体と、を備え、
前記外部導体の少なくとも一部は、前記素体に埋設されており、
前記外部導体は、前記実装面に直交する方向において当該外部導体を貫通している開口部を有しており、
前記開口部内に前記素体の一部が配置されている、電子部品。
【請求項2】
前記素体は、軟磁性材料の金属磁性粒子を複数含み、
前記外部導体の前記開口部内に前記金属磁性粒子が配置されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記外部導体の前記開口部内には、導電性を有する導電性部材が前記素体上に充填されている、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記外部導体は、めっき導体である、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記外部導体は、格子形状を呈している、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項6】
前記外部導体上に配置されていると共に、前記開口部を跨ぐように配置されているめっき層を備える、請求項1又は2に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、実装面を有している素体と、素体内に配置されているコイルと、素体の実装面に配置されていると共に、コイルに接続されている外部導体と、を備える電子部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、外部導体が素体から剥離することを抑制できる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一側面に係る電子部品は、実装面を有している素体と、実装面に配置されている外部導体と、を備え、外部導体の少なくとも一部は、素体に埋設されており、外部導体は、実装面に直交する方向において当該外部導体を貫通している開口部を有しており、開口部内に素体の一部が配置されている。
【0006】
本発明の一側面に係る電子部品では、外部導体は、実装面に直交する方向において当該外部導体を貫通している開口部を有している。この構成において、電子部品では、開口部内に素体の一部が配置されている。このように、電子部品では、外部導体の開口部に素体の一部が入り込んでいるため、アンカー効果によって、外部導体と素体との密着性を高めることができる。したがって、電子部品では、外部導体が素体から剥離することを抑制できる。
【0007】
(2)上記(1)の電子部品において、素体は、軟磁性材料の金属磁性粒子を複数含み、外部導体の開口部内に金属磁性粒子が配置されていてもよい。この構成では、外部導体の開口部に金属磁性粒子が入り込んでいるため、アンカー効果によって、外部導体と素体との密着性を高めることができる。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の電子部品において、外部導体の開口部内には、導電性を有する導電性部材が素体上に充填されていてもよい。この構成では、開口部が導電性部材によって埋められるため、外部導体に開口部を形成した場合であっても、外部導体の直流抵抗(Rdc)が増大することを抑制できる。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つの電子部品において、外部導体は、めっき導体であってもよい。外部導体が焼結金属導体である場合、外部導体は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結することにより形成される。素体に金属磁性粒子が含まれる場合、金属成分が焼結する以前の過程において、導電性ペーストに金属磁性粒子が食い込み、導電性ペーストの表面には、金属磁性粒子の形状に起因した凹凸が形成される。形成された外部導体は、金属磁性粒子が外部導体に食い込むように変形している。したがって、外部導体が焼結金属導体である構成は、外部導体の表面粗さを著しく増加させる。これに対し、外部導体がめっき導体である場合、金属磁性粒子は外部導体に食い込みがたく、外部導体の変形が抑制される。したがって、外部導体がめっき導体である構成は、外部導体の表面粗さの増加を抑制し、表面抵抗の増加を抑制する。
【0010】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一つの電子部品において、外部導体は、格子形状を呈していてもよい。この構成では、外部導体は複数の開口部を有する。したがって、電子部品では、アンカー効果をより一層得ることができるため、外部導体と素体との密着性をより一層高めることができる。したがって、電子部品では、外部導体が素体から剥離することをより一層抑制できる。
【0011】
(6)上記(1)~(5)のいずれか一つの電子部品において、外部導体上に配置されていると共に、開口部を跨ぐように配置されているめっき層を備えていてもよい。この構成では、開口部がめっき層によって覆われるため、外部導体に開口部を形成した場合であっても、外部導体の直流抵抗(Rdc)が増大することを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、外部導体が素体から剥離することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
【
図4】
図4は、コイル部品を実装面側から見た図である。
【
図5】
図5(a)は、コイル部品の断面構成を示す図であり、
図5(b)は、
図5(a)の一部の断面構成を拡大して示す概略的な図である。
【
図6】
図6(a)は、他の実施形態に係るコイル部品の断面構成を示す図であり、
図6(b)は、
図6(a)の一部の断面構成を拡大して示す概略的な図である。
【
図7】
図7(a)は、他の実施形態に係るコイル部品の断面構成を示す図であり、
図7(b)は、
図6(a)の一部の断面構成を拡大して示す概略的な図である。
【
図8】
図8(a)、
図8(b)、
図8(c)及び
図8(d)は、他の実施形態に係るコイル部品を実装面側から見た図である。
【
図9】
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)及び
図9(d)は、他の実施形態に係るコイル部品を実装面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1及び
図2を参照して、コイル部品を説明する。
図1は、一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
図2は、
図1に示すコイル部品の透過斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、コイル部品(電子部品)1は、素体2と、端子電極(外部導体)3及び端子電極(外部導体)4と、コイル5と、第一接続導体6及び第二接続導体7と、を備えている。
図2では、説明の便宜上、素体2を破線で示している。
【0016】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、外面として、一対の端面2a,2bと、一対の主面2c,2dと、一対の側面2e,2fと、を有している。端面2a,2bは、互いに対向している。主面2c,2dは、互いに対向している。側面2e,2fは、互いに対向している。以下では、主面2c,2dの対向方向を第一方向D1、端面2a,2bの対向方向を第二方向D2、及び、側面2e,2fの対向方向を第三方向D3とする。第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は互いに略直交している。
【0017】
端面2a,2bは、主面2c,2dを連結するように第一方向D1に延在している。端面2a,2bは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。主面2c,2dは、端面2a,2bを連結するように第二方向D2に延在している。主面2c,2dは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。側面2e,2fは、主面2c,2dを連結するように第一方向D1に延在している。側面2e,2fは、端面2a,2bを連結するように第二方向D2にも延在している。
【0018】
主面2dは、実装面であり、たとえばコイル部品1を図示しない他の電子機器(たとえば、回路基材、又は積層電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する面である。端面2a,2bは、実装面(すなわち主面2d)から連続する面である。
【0019】
素体2の第二方向D2における長さは、素体2の第一方向D1における長さ及び素体2の第三方向D3における長さよりも長い。素体2の第三方向D3における長さは、素体2の第一方向D1における長さよりも長い。すなわち、本実施形態では、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fは、長方形状を呈している。素体2の第一方向D1における長さは、素体2の第三方向D3における長さと同等であってもよいし、これらの長さよりも短くてもよい。
【0020】
なお、本実施形態で「同等」とは、等しいことに加えて、予め設定した範囲での微差又は製造誤差などを含んだ値を同等としてもよい。たとえば、複数の値が、当該複数の値の平均値の±5%の範囲内に含まれているのであれば、当該複数の値は同等であると規定する。
【0021】
素体2は、複数の素体層(絶縁体層)10a~10g(
図3参照)が第一方向D1において積層されてなる。つまり、素体2の積層方向は、第一方向D1である。具体的な積層構成については後述する。実際の素体2では、複数の素体層10a~10gは、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0022】
素体層10a~10gは、複数の金属磁性粒子P(
図5(b)参照)を含んでいる。金属磁性粒子Pは、軟磁性合金(軟磁性材料)から構成される。軟磁性合金は、たとえば、Fe-Si系合金である。軟磁性合金がFe-Si系合金である場合、軟磁性合金は、Pを含んでいてもよい。軟磁性合金は、たとえば、Fe-Ni-Si-M系合金であってもよい。「M」はCo、Cr、Mn、P、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Al、及び希土類元素から選択される一種以上の元素を含む。
【0023】
素体2では、金属磁性粒子P,P同士が結合している。金属磁性粒子P,P同士の結合は、たとえば金属磁性粒子Pの表面に形成される酸化膜(図示省略)同士の結合によって実現されている。酸化膜の厚さは、たとえば、5nm以上60nm以下である。酸化膜は、一又は複数の層によって構成されていてもよい。
【0024】
端子電極3及び端子電極4のそれぞれは、素体2に設けられている。端子電極3及び端子電極4のそれぞれは、素体2の主面2dに配置されている。端子電極3と端子電極4とは、第二方向D2において互いに離間して素体2に設けられている。具体的には、端子電極3は、素体2の端面2a側に配置されている。端子電極4は、素体2の端面2b側に配置されている。
【0025】
端子電極3及び端子電極4のそれぞれは、たとえば、Cu、Ni、Sn、Auなどの導電性材料によって構成されている。本実施形態では、端子電極3及び端子電極4のそれぞれは、めっき形成(電解めっき又は無電解めっき)により形成されためっき電極(めっき導体)である。端子電極3及び端子電極4のそれぞれは、単層構造でも複数層構造でもよい。
【0026】
コイル5は、素体2内に配置されている。コイル5は、複数のコイル導体層12a~12e(
図3参照)によって構成されている。複数のコイル導体層12a~12eは、互いに電気的に接続されて、素体2内でコイル5を構成している。コイル5のコイル軸は、第一方向D1に沿って設けられている。コイル導体層12a~12eは、第一方向D1から見て、少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。複数のコイル導体層12b~12eは、導電材料(たとえば、Ag又はPd)により構成されている。本実施形態では、複数のコイル導体層12a~12eは、めっき導体である。コイル導体層12a~12eは、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fから離間して配置されている。
【0027】
第一接続導体6は、素体2内に配置されている。第一接続導体6は、端子電極3とコイル5とを接続している。第一接続導体6は、スルーホール導体である。第一接続導体6は、第一方向D1に延在し、端子電極3とコイル5の一端とに接続されている。第一接続導体6は、複数の第一接続導体層14a(
図3参照)によって構成されている。本実施形態では、第一接続導体6は、延在方向(第一方向D1)に直交する断面(第二方向D2及び第三方向D3に沿った断面)が矩形形状を呈している。すなわち、第一接続導体6は、角柱状を呈している。
【0028】
第二接続導体7は、素体2内に配置されている。第二接続導体7は、端子電極4とコイル5とを接続している。第二接続導体7は、スルーホール導体である。第二接続導体7は、第一方向D1に延在し、端子電極4とコイル5の他端とに接続されている。第二接続導体7は、複数の第二接続導体層16a,16b,16c,16d,16e(
図3参照)によって構成されている。本実施形態では、第二接続導体7は、延在方向(第一方向D1)に直交する断面(第二方向D2及び第三方向D3に沿った断面)が矩形形状を呈している。すなわち、第二接続導体7は、角柱状を呈している。
【0029】
図3は、
図1に示すコイル部品の分解斜視図である。
図3に示されるように、コイル部品1は、複数の層La,Lb,Lc,Ld,Le,Lf,Lgを備えている。コイル部品1は、たとえば、主面2c側から順に、層La~Lgが積層されることにより構成されている。本実施形態に係るコイル部品1では、層Lc及び層Lgのそれぞれを複数備えている。
【0030】
層Laは、素体層10aにより構成されている。層Laは、素体2の主面2cを構成している。
【0031】
層Lbは、素体層10bと、コイル導体層12aと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10bには、コイル導体層12aに対応する形状を有し、コイル導体層12aが嵌め込まれる欠損部(図示省略)が設けられている。素体層10bと、コイル導体層12aとは、互いに相補的な関係を有している。
【0032】
層Lcは、素体層10cと、コイル導体層12bと、第二接続導体層16aと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10cには、コイル導体層12b及び第二接続導体層16aに対応する形状を有し、コイル導体層12b及び第二接続導体層16aが嵌め込まれる欠損部(図示省略)が設けられている。素体層10cと、コイル導体層12b及び第二接続導体層16aの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0033】
層Ldは、素体層10dと、コイル導体層12cと、第二接続導体層16bと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10dには、コイル導体層12c及び第二接続導体層16bに対応する形状を有し、コイル導体層12c及び第二接続導体層16bが嵌め込まれる欠損部(図示省略)が設けられている。素体層10dと、コイル導体層12c及び第二接続導体層16bの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0034】
層Leは、素体層10eと、コイル導体層12dと、第二接続導体層16cと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10eには、コイル導体層12d及び第二接続導体層16cに対応する形状を有し、コイル導体層12d及び第二接続導体層16cが嵌め込まれる欠損部(図示省略)が設けられている。素体層10eと、コイル導体層12d及び第二接続導体層16cの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0035】
層Lfは、素体層10fと、コイル導体層12eと、第二接続導体層16dと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10fには、コイル導体層12e及び第二接続導体層16dに対応する形状を有し、コイル導体層12e及び第二接続導体層16dが嵌め込まれる欠損部(図示省略)が設けられている。素体層10fと、コイル導体層12e及び第二接続導体層16dの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0036】
層Lgは、素体層10gと、第一接続導体層14aと、第二接続導体層16eと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10gには、第一接続導体層14a及び第二接続導体層16eに対応する形状を有し、第一接続導体層14a及び第二接続導体層16eが嵌め込まれる欠損部(図示省略)が設けられている。素体層10gと、第一接続導体層14a及び第二接続導体層16eの全体とは、互いに相補的な関係を有している。層Lgは、素体2の主面2dを構成している。
【0037】
続いて、端子電極3及び端子電極4について詳細に説明する。
【0038】
図4は、コイル部品1を実装面(主面2d)側から見た図である。
図4に示されるように、端子電極3,4は、格子形状(メッシュ状)を呈している。端子電極3,4は、複数の開口部3H,4Hを有している。本実施形態では、開口部3H,4Hは、第一方向D1から見て、矩形状を呈している。開口部3H,4Hは、端子電極3,4を第一方向D1(主面2dに直交する方向、厚み方向)に貫通して形成されている。開口部3H,4Hは、端子電極3,4の第一面3A,4A(
図5(a)参照)と第二面3B,4B(
図5(a)参照)とを貫通して形成されている。
【0039】
図5(a)は、コイル部品1の断面構成を示す図であり、
図5(b)は、
図5(a)の一部の断面構成を拡大して示す概略的な図である。
図5(a)では、コイル5の図示を省略している。
【0040】
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、端子電極3,4の一部は、素体2に埋設されている。具体的には、端子電極3,4の主面2c側の一部が素体2に埋設されている。端子電極3,4の第二面3B,4Bは、主面2dよりも主面2c側に位置している。端子電極3,4の開口部3H,4Hには、素体2の一部が配置されている。すなわち、開口部3H,4Hによって形成される空間内に素体2が存在している。本実施形態では、第一方向D1から見たときに、端子電極3,4の開口部3H,4Hにおいて素体2が露出している。
図5(a)及び
図5(b)に示す例では、開口部3H,4H内において、素体2の上部(開口部3H,4Hにおいて露出している表面)は、端子電極3,4の第一面3A,4Aよりも主面2c側に位置している。
【0041】
図5(b)に示されるように、端子電極3,4の開口部3H,4Hには、複数の金属磁性粒子Pが配置(充填)されている。開口部3H,4H内に配置されている金属磁性粒子Pの平均粒子径は、素体2の金属磁性粒子P(開口部3H,4H内に配置されていない金属磁性粒子P)の平均粒子径よりも小さくてもよい。
【0042】
平均粒子径は、たとえば、以下のようにして得られる。コイル部品1の断面写真を取得する。断面写真は、たとえば、一対の端面2a,2bに平行であり、かつ、一対の端面2a,2bから所定距離だけ離れている平面でコイル部品1を切断したときの断面を撮影することにより得られる。この場合、上記平面は、一対の端面2a,2bから等距離に位置していてもよい。取得した断面写真をソフトウェアにより画像処理する。画像処理により、金属磁性粒子Pの境界を判別し、金属磁性粒子Pの面積を求める。求めた金属磁性粒子Pの面積から、円相当径に換算した粒子径をそれぞれ求める。ここでは、100個以上の金属磁性粒子Pの粒子径を算出し、これらの金属磁性粒子Pの粒度分布を求める。求めた粒度分布における積算値50%での粒子径(d50)を「平均粒子径」とする。金属磁性粒子Pの粒子形状は、特に制限されない。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るコイル部品1では、端子電極3,4は、主面2dに直交する方向において端子電極3,4を貫通している開口部3H,4Hを有している。この構成において、コイル部品1では、開口部3H,4H内に素体2の一部が配置されている。このように、コイル部品1では、端子電極3,4,の開口部3H,4Hに素体2の一部が入り込んでいるため、アンカー効果によって、端子電極3,4と素体2との密着性を高めることができる。したがって、コイル部品1では、端子電極3,4が素体2から剥離することを抑制できる。
【0044】
コイル部品1において、端子電極3,4が開口部3H,4Hを有していない構成の場合(特許文献1に開示されている構成の場合)、素体2と端子電極3,4との接触面積が小さいため、端子電極3,4に応力(外力)が加わると、端子電極3,4が素体2から剥離するおそれがある。本実施形態に係るコイル部品1では、端子電極3,4と素体2との密着性を高めることができているため、端子電極3,4が素体2から剥離することを抑制できる。
【0045】
本実施形態に係るコイル部品1では、素体2は、軟磁性材料の金属磁性粒子Pを複数含んでいる。コイル部品1では、端子電極3,4の開口部3H,4H内に金属磁性粒子Pが配置されている。この構成では、端子電極3,4の開口部3H,4Hに金属磁性粒子Pが入り込んでいるため、アンカー効果によって、端子電極3,4と素体2との密着性を高めることができる。
【0046】
本実施形態に係るコイル部品1では、端子電極3,4は、めっき電極である。端子電極3,4が焼結金属導体である場合、端子電極3,4は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結することにより形成される。素体2に金属磁性粒子Pが含まれる場合、金属成分が焼結する以前の過程において、導電性ペーストに金属磁性粒子Pが食い込み、導電性ペーストの表面には、金属磁性粒子Pの形状に起因した凹凸が形成される。形成された端子電極3,4は、金属磁性粒子Pが端子電極3,4に食い込むように変形している。したがって、端子電極3,4が焼結金属導体である構成は、端子電極3,4の表面粗さを著しく増加させる。これに対し、端子電極3,4がめっき電極である場合、金属磁性粒子Pは端子電極3,4に食い込みがたく、端子電極3,4の変形が抑制される。したがって、端子電極3,4がめっき電極である構成は、端子電極3,4の表面粗さの増加を抑制し、表面抵抗の増加を抑制する。
【0047】
本実施形態に係るコイル部品1では、端子電極3,4は、格子形状を呈している。この構成では、端子電極3,4は複数の開口部3H,4Hを有する。したがって、コイル部品1では、アンカー効果をより一層得ることができるため、端子電極3,4と素体2との密着性をより一層高めることができる。したがって、コイル部品1では、端子電極3,4が素体2から剥離することをより一層抑制できる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0049】
上記実施形態では、電子部品としてコイル部品1を一例に説明した。しかし、電子部品は、コイル部品に限られず、他の電子部品であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、コイル5が、複数のコイル導体層12a~12eを含んで構成されている形態を一例に説明した。しかし、コイルを構成するコイル導体の数及び形状は限定されない。
【0051】
上記実施形態に加えて、
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、端子電極3,4の開口部3H,4Hには、導電性部材8が充填されていてもよい。導電性部材8は、導電性を有する部材であり、導電材料(たとえば、Ag、Cu)により構成されている。導電性部材8の表面は、開口部3H,4Hの第一面3A,4Aと面一であってもよいし、第一面3A,4Aよりも主面2c側に位置していてもよい。導電性部材8は、開口部3H,4Hにおいて、素体2(金属磁性粒子P)の表面を覆っている。この構成では、開口部3H,4Hが導電性部材8によって埋められるため、端子電極3,4に開口部3H,4Hを形成した場合であっても、端子電極3,4の直流抵抗(Rdc)が増大することを抑制できる。
【0052】
上記実施形態に加えて、
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、端子電極3,4上にめっき層9が配置されていてもよい。めっき層9は、開口部3H,4Hを跨いで配置されている。めっき層9は、電解めっき又は無電解めっきが施されることにより形成される。めっき層9は、たとえばNi、Sn、Auなどを含む。めっき層は、単層構造でも複数層構造でもよい。めっき層9は、開口部3H,4Hにおいて、素体2上に配置されている(素体2を覆っている)。この構成では、開口部3H,4Hがめっき層9によって覆われるため、端子電極3,4に開口部3H,4Hを形成した場合であっても、端子電極3,4の直流抵抗(Rdc)が増大することを抑制できる。
【0053】
図7(a)及び
図7(b)に示す例では、開口部3H,4Hにおいて、めっき層9が素体2上に配置されているが、めっき層9と素体2との間に導電性部材が配置されていてもよい。
【0054】
上記実施形態では、端子電極3,4の開口部3H,4Hが、矩形状を呈している形態を一例に説明した。しかし、開口部3H,4Hの形状はこれに限定されない。開口部3H,4Hは、開口領域(空間)を形成する部分であり、閉じた領域を形成していてもよし、閉じた領域を形成していなくてもよい。すわなち、開口部3H,4Hにおいて、開口を形成する側面は連続していてもよいし、連続していなくてもよい(断続的であってもよい)。開口部3H,4Hは、端子電極3,4に対して第二方向D2及び/又は第三方向D3に力が加わった場合に、開口部3H,4H内の素体2に端子電極3,4が引っ掛かる形状であることが好ましい。すなわち、開口部3H,4Hの形状は、開口部3H,4H内の素体2によって、端子電極3,4の移動(ずれ)が規制されるような形状であることが好ましい。
【0055】
端子電極3,4の開口部3H,4Hは、
図8(a)、
図8(b)、
図8(c)、
図8(d)、
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)、
図9(d)、
図10(a)、
図10(b)、
図10(c)、
図10(d)、
図11(a)、
図11(b)及び
図11(c)に示される構成を採用することができる。各図に示されるように、開口部3H,4Hは、一つであってもよいし、複数であってもよい。開口部3H,4Hの形状は、様々な形状を採用することができ、円形状、三角形状、多角形状などであってもよい。端子電極3,4に設けられる複数の開口部3H,4Hは、同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。開口部3H,4Hの位置は、適宜設定されればよい。
【符号の説明】
【0056】
1…コイル部品(電子部品)、2…素体(金属磁性粒子P)、3,4…端子電極(外部導体)、3H,4H…開口部、8…導電性部材、9…めっき層、P…金属磁性粒子。