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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143001
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】処理液塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/32 20180101AFI20241003BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20241003BHJP
   B05C 9/10 20060101ALI20241003BHJP
   B05C 21/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B05B12/32
B41J2/01 123
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B05C5/00 101
B05C9/10
B05C21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055447
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】高際 豊
【テーマコード(参考)】
2C056
4D073
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB46
2C056EB58
2C056EC12
2C056EC35
2C056EE18
2C056FA10
2C056FB03
2C056HA33
2C056HA42
4D073AA01
4D073BB03
4D073CA20
4D073CB02
4D073DB04
4D073DB19
4D073DB21
4F041AA02
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F042AA02
4F042AB00
4F042DA03
4F042DG08
4F042DG09
(57)【要約】
【課題】プラテンを支持する装置及び当該装置を設置する設置面に処理液が付着して汚すのを抑制する。
【解決手段】印刷装置は、プラテン12を支持するプラテン支持部と、処理液吐出部40と、制御部とを含む。処理液吐出部40は、処理液を吐出するスプレーノズル41と、規制部材50とを含む。規制部材50は、スプレーノズル41とプラテン12との間に配置された筒状部材51及び2組の拡張部材58,59を有しており、スプレーノズル41から吐出された処理液の塗布範囲を規制する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタにより印刷媒体に吐出されるインクの下地層、またはインクの上地層を形成するための処理液を吐出するスプレーノズルと、
前記スプレーノズルからの処理液の吐出方向において、前記スプレーノズルと対向する位置に配置され、印刷媒体を載置するプラテンを支持するプラテン支持部と、
前記スプレーノズルと前記プラテンとの間に配置され、前記スプレーノズルから吐出された処理液の塗布範囲を規制する規制部材とを備えていることを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項2】
前記規制部材は、前記プラテンの幅方向において、前記プラテンの内側に向かって拡張し、且つ前記プラテンの外側に向かって収縮可能な板状部材であることを特徴とする請求項1に記載の処理液塗布装置。
【請求項3】
前記スプレーノズルが前記プラテンの幅方向に沿って複数配置されており、
前記規制部材は、前記幅方向において、最も外側に配置された前記スプレーノズルと前記吐出方向に対向する位置から前記プラテンの内側に向かって拡張することを特徴とする請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項4】
前記プラテン支持部は、第1幅を有する第1プラテンと、前記第1幅とは異なる第2幅を有する第2プラテンとを支持可能であり、
前記規制部材は、前記第1幅及び前記第2幅のそれぞれに対応して拡張可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項5】
前記プラテン支持部は、第1幅を有する第1プラテンと、前記第1幅とは異なる第2幅を有する第2プラテンとを支持可能であり、
前記第1幅に対応する第1拡張位置及び前記第2幅に対応する第2拡張位置に前記規制部材を選択的に移動させる移動機構と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記第1プラテン及び前記第2プラテンのうち、前記プラテン支持部に支持されたプラテンの種類を示すプラテンデータを取得し、取得した前記プラテンデータに基づいて前記規制部材が前記第1拡張位置及び前記第2拡張位置のいずれかに移動するように前記移動機構を制御することを特徴とする請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項6】
前記規制部材を移動させる移動機構と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、印刷媒体に印刷される画像の範囲を示す画像範囲データを取得し、取得した前記画像範囲データに基づいて前記規制部材が移動するように前記移動機構を制御することを特徴とする請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項7】
前記規制部材の拡張位置を決定するために検知を行うセンサを、さらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項8】
前記規制部材の拡張位置を決定するために検知を行うセンサと、
前記規制部材を移動させる移動機構と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記センサからの検知信号に基づいて、前記規制部材が前記拡張位置に移動するように前記移動機構を制御することを特徴とする請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項9】
タンクと、
前記塗布範囲を規制する前記規制部材で受け取った処理液を前記タンクへと流通させて回収する回収流路と、をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項10】
前記規制部材は、前記プラテンの内側から外側に向かうに連れて下方に傾斜している領域を有していることを特徴とする請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項11】
インクジェットプリンタにより印刷媒体に吐出されるインクの下地層、またはインクの上地層を形成するための処理液を吐出するスプレーノズルと、
前記スプレーノズルからの処理液の吐出方向において、前記スプレーノズルと対向する位置に配置され、印刷媒体を載置するプラテンを支持するプラテン支持部と、
前記スプレーノズルから吐出された処理液の塗布範囲を規制する規制部材とを備え、
前記プラテン支持部は、前記吐出方向において、前記スプレーノズルと前記プラテンとの間に前記規制部材が配置されるような位置にあることを特徴とする処理液塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの下地層、またはインクの上地層を形成するための処理液をスプレーノズルから吐出させて印刷媒体に塗布する処理液塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷媒体としての被捺染媒体に、印刷液を固着させるための前処理剤を塗布する前処理剤塗布部を有する捺染装置について記載されている。この捺染装置の前処理剤塗布部は、前処理剤が貯留されたタンクと流路を介して接続されており、当該タンクから前処理剤が供給される。捺染装置は、被捺染媒体に画像の印刷を行う際、搬送装置のトレイ(プラテン)によって搬送されてきた被捺染媒体に前処理剤塗布部より前処理剤を塗布し、その後、前処理剤によって形成された下地層上に印刷液を吐出する。こうして、被捺染媒体に画像が印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-183331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、前処理剤塗布部として印刷媒体に前処理剤としての処理液を吐出することで塗布するスプレーノズルを採用することを考えた。スプレーノズルから吐出される処理液は、スプレーノズルからの吐出方向に向かって扇状に広がる。このため、印刷媒体を支持するプラテンよりも外側やプラテンに支持された印刷媒体よりも外側に処理液がはみ出しやすい。この結果、プラテンを支持する装置及び当該装置を設置する設置面に処理液が付着して汚す問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、プラテンを支持する装置及び当該装置を設置する設置面に処理液が付着して汚すのを抑制することが可能な処理液塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の処理液塗布装置は、インクジェットプリンタにより印刷媒体に吐出されるインクの下地層、またはインクの上地層を形成するための処理液を吐出するスプレーノズルと、前記スプレーノズルからの処理液の吐出方向において、前記スプレーノズルと対向する位置に配置され、印刷媒体を載置するプラテンを支持するプラテン支持部と、前記スプレーノズルと前記プラテンとの間に配置され、前記スプレーノズルから吐出された処理液の塗布範囲を規制する規制部材とを備えている。
【0007】
本発明の処理液塗布装置は、別の観点では、インクジェットプリンタにより印刷媒体に吐出されるインクの下地層、またはインクの上地層を形成するための処理液を吐出するスプレーノズルと、前記スプレーノズルからの処理液の吐出方向において、前記スプレーノズルと対向する位置に配置され、印刷媒体を載置するプラテンを支持するプラテン支持部と、前記スプレーノズルから吐出された処理液の塗布範囲を規制する規制部材とを備え、前記プラテン支持部は、前記吐出方向において、前記スプレーノズルと前記プラテンとの間に前記規制部材が配置されるような位置にある。なお、スプレーノズルから吐出された処理液は扇状に広がる。吐出方向は、スプレーノズルからその扇状に広がったすべての方向のうちの任意の1つである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の処理液塗布装置によると、規制部材により処理液の塗布範囲を規制することができる。このため、プラテンを支持する装置及び当該装置を設置する設置面に処理液が付着して汚すのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る処理液塗布装置を含む印刷装置の概略斜視図である。
図2図1に示す印刷装置の内部構造を示す平面図である。
図3図1に示す処理液吐出部の斜視図である。
図4図1に示す処理液吐出部の模式図である。
図5図3に示す筒状部材の前板を取り外した状態の処理液吐出部の斜視図である。
図6図3に示すVI-VI線に沿った断面図である。
図7図6から2組の拡張部材を取り外した状態の断面図である。
図8図6に示すVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9図3に示すIX-IX線に沿った断面図である。
図10】(a)は図5に示すXA部分の拡大図であり、(b)は図5に示すXB部分の拡大図である。
図11図1に示す印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
図12図1に示す印刷装置に印刷開始指令が入力されたときに実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13】(a)はプラテンがセット位置から処理液吐出領域に到達したときの状況を示す図であり、(b)はプラテンが処理液吐出領域を通過したときの状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の処理液塗布装置を含む印刷装置1を、図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、印刷装置1が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向及び前後方向が定義され、印刷装置1を前方から見て左右方向が定義される。以下の説明では、左右方向を主走査方向、前後方向を副走査方向と称することもある。
【0011】
図1に示す印刷装置1は、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタを含む。印刷装置1は、白、黒、イエロー、シアン、およびマゼンタの5色のインクを用いて、印刷媒体にカラー画像を印刷できる。印刷媒体は、インクを吐出して画像を形成することが可能であれば特に限定するものではなく、例えば、布帛、紙等である。本実施形態においては、印刷媒体として、例えば、ポリエステル繊維を含むTシャツをいう。印刷装置1で印刷媒体(Tシャツ)に印刷を実行する際は、インクが吐出される下地層を形成する処理液が印刷媒体に塗布される。処理液は、下地層上に吐出されたインクと反応することでインクの成分を凝集させ、滲みの発生を防ぐ。処理液の揮発成分には、ギ酸などの有機酸が含まれている。
【0012】
以下では、5色のインクのうち白色のインクを「白インク」という。5色のインクのうち黒、シアン、イエロー、およびマゼンタの4色のインクを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合「カラーインク」という。白インクとカラーインクとを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、単に「インク」という。白インクは画像の白色を表す部分として、またはカラーインクの下地として印刷に用いられる。カラーインクは、白インクによる下地の上に吐出され、カラー画像の印刷に用いられる。
【0013】
図1及び図2を参照し、印刷装置1の外観構成を説明する。印刷装置1は、図1に示すように、筐体8、プラテン12、搬送機構14、操作部15、表示画面16、及び、処理液吐出部40及び制御部80を含む。プラテン12、搬送機構14、操作部15、処理液吐出部40及び制御部80が、本発明の「処理液塗布装置」に該当する。また、印刷装置1の処理液吐出部40を除く部分により、インクジェットプリンタ部分が構成されている。
【0014】
筐体8は、図1に示すように、略直方体形状を有し、前面の左右及び上下方向の略中央に矩形状のプラテン開口13が形成されている。筐体8内には、5色のインクが収容された5つのカートリッジ(不図示)が収納されている。プラテン12は、図2に示すように、略矩形平面形状を有する板状部材からなる。プラテン12の上面は、印刷媒体を支持する支持面12Aである。支持面12Aは、四角形状を有している。
【0015】
操作部15は、プラテン開口13から前方に突出したプラテン支持部37(後述する)の左右両端部にそれぞれ設けられている。操作部15は、ユーザによる操作に応じた情報を後述の制御部80に出力する。ユーザは操作部15を操作することで、印刷装置1による印刷を開始するための印刷開始指令(印刷データ含む)等を制御部80に入力できる。印刷データには、印刷媒体に形成する画像の範囲を示す画像範囲データも含まれる。表示画面16は、筐体8の前面のうち、プラテン開口13よりも右側上部に設けられている。表示画面16は各種情報を表示する。
【0016】
搬送機構14は、印刷媒体が配置されるプラテン12を、プラテン開口13を通して筐体8の内部と外部との間において搬送する。プラテン12が処理液吐出領域P4に配置された際に、処理液吐出部40から処理液が吐出され、印刷媒体に処理液が塗布される。そして、プラテン12が図2に示す筐体8内部の印刷搬送領域P3(図2中二点鎖線で示す位置)に配置された際に、後述するヘッド30からインクが吐出されて印刷が行われる。図2に示すように、搬送機構14は、プラテン支持部37、左右一対のレール38、伝達部材39、及び副走査モータ26(図4参照)を有する。
【0017】
プラテン支持部37は、図1及び図2に示すように、処理液吐出部40と上下方向に沿って対向する位置に配置されている。より詳細には、処理液吐出部40に含まれる後述のスプレーノズル41からの処理液の吐出方向において、当該スプレーノズル41と対向する位置に配置されている。プラテン支持部37は、プラテン12を下方から支持する。
【0018】
また、プラテン支持部37は、プラテン12として、図9に示す第1プラテン12S1と第2プラテン12S2とを支持可能に構成されている。図1及び図2においては、プラテン支持部37が第1プラテン12S1を支持する状態を示しているが、第1プラテン12S1をプラテン支持部37から取り外して第2プラテン12S2をプラテン支持部37に取り付けることが可能である。つまり、第1プラテン12S1と第2プラテン12S2はプラテン支持部37に交換可能に取り付けられる。
【0019】
第1プラテン12S1は、第2プラテン12S2よりも左右方向(本発明の「幅方向」)の幅が大きい。より詳細には、第1プラテン12S1の左右方向の幅(本発明の「第1幅」)が後述の貫通口51Fの左右方向の開口幅程度であって、後述の2組の拡張部材58,59が第1拡張位置に配置されたときの内側端同士の幅程度となっている。つまり、本実施形態における第1拡張位置は第1プラテン12S1の幅に対応する。一方、第2プラテン12S2の左右方向の幅(本発明の「第2幅」)は、2組の拡張部材58,59が第2拡張位置に配置されたときの内側端同士の幅程度となっている。つまり、本実施形態における第2拡張位置は第2プラテン12S2の幅に対応する。なお、第1プラテン12S1と第2プラテン12S2は、サイズ以外はいずれも同様な平板形状を有している。また、第1プラテン12S1及び第2プラテン12S2を総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、「プラテン12」という。
【0020】
左右一対のレール38は、図2に示すように、前後方向に延び、プラテン支持部37を前後方向に移動可能に支持する。伝達部材39は、プラテン支持部37と、副走査モータ26とに連結し、副走査モータ26の駆動に応じて、プラテン支持部37を前後方向、すなわち、副走査方向に移動させる。
【0021】
ユーザは、プラテン12が筐体8の前面よりも前側に配置された状態、即ち筐体8の外部で、プラテン12の支持面12Aに印刷媒体を配置する。図2に示すプラテン12の位置は、プラテン12に印刷媒体を支持させるセット位置P1である。処理液吐出領域P4は、プラテン12の搬送経路の途中に存在し、処理液吐出部40のスプレーノズル41から処理液が吐出される領域であり、スプレーノズル41の下方(すなわち、処理液の吐出方向)に存在する。また、プラテン12は、印刷媒体に印刷する前に、セット位置P1から印刷前待機位置P2(図2中二点鎖線で示す位置)に移動する。印刷前待機位置P2は、処理液吐出領域P4及び印刷搬送領域P3よりも後方であってプラテン12の搬送経路の後端部にある。印刷搬送領域P3は、プラテン12の搬送経路において、後述のヘッド30の主走査方向(左右方向)の移動経路と上下方向に重なる領域である。ヘッド30の主走査方向の移動経路は、最も後方のヘッド30(白ヘッド31)の後端と最も前方のヘッド30(カラーヘッド34)の前端との間の経路である。
【0022】
印刷装置1の内部構造を説明する。図2に示すように、印刷装置1は、筐体8の内部に枠体2、ヘッド31~34、及び、移動機構7を含む。枠体2は前後方向、左右方向、または上下方向に延びる複数のシャフトによって格子状に構成される。移動機構7は、枠体2に固定されたガイドシャフト20及びキャリッジ6を含む。ガイドシャフト20は、図2に示すように、前シャフト21、後シャフト22、左シャフト23、及び右シャフト24で構成される。
【0023】
前シャフト21は、図2に示すように、枠体2の前端部に配置され、枠体2の左端部から右端部まで左右方向に延びる。後シャフト22は、枠体2の前後方向の略中央に配置され、枠体2の左端部から右端部まで左右方向に延びる。左シャフト23は、枠体2の左端部に配置され、前シャフト21の左端から後シャフト22の左端までの前後方向に延びる。右シャフト24は、枠体2の右端部に配置され、前シャフト21の右端から後シャフト22の右端まで前後方向に延びる。前シャフト21及び後シャフト22はキャリッジ6を支持する。搬送機構14は枠体2に固定される。
【0024】
図2に示すように、キャリッジ6は主走査方向に移動可能に前シャフト21と後シャフト22とに支持される。キャリッジ6は板状であり、前後左右方向に延びる。キャリッジ6は前シャフト21から後シャフト22まで延びる。キャリッジ6には、図2に示すように、白ヘッド31、32、及び、カラーヘッド33、34が設けられる。
【0025】
白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34はそれぞれ同じ構造を有し、本実施形態では直方体状を有する。以下では、白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34を総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、「ヘッド30」という。白ヘッド31、32は、図2に示すように、キャリッジ6の後部に位置する。白ヘッド31はキャリッジ6の右後部に位置する。白ヘッド32は白ヘッド31よりも左側に位置し、白ヘッド31に対して前側にずれる。白ヘッド32の後部は左右方向において白ヘッド31の前部と重なる。
【0026】
カラーヘッド33、34は、図2に示すように、白ヘッド31、32に対して前側に位置する。カラーヘッド33、34は、それぞれ、左右方向において白ヘッド31、32と同じ位置に位置する。つまり、白ヘッド31,32とカラーヘッド33,34は、副走査方向に沿って並んで配置される。カラーヘッド34はカラーヘッド33よりも左側に位置し、カラーヘッド33に対して前側にずれる。カラーヘッド34の後部は左右方向においてカラーヘッド33の前部と重なる。
【0027】
これらヘッド30の下面には複数のノズル(不図示)が形成されている。白ヘッド31,32の複数のノズルは、白インクを下方に吐出する。各カラーヘッド33,34の複数のノズルは、前後方向に延びるノズル列が左右方向に4列並ぶように配置されている。各カラーヘッド33,34の4列のノズル列にはそれぞれ異なる色のカラーインクが対応する。つまり、各カラーヘッド33,34の複数のノズルはそれぞれのノズル列に対応する色のカラーインクを下方に吐出する。
【0028】
移動機構7は、駆動ベルト7A及び主走査モータ7Mを有する。キャリッジ6の後端部には、駆動ベルト7Aが連結する。駆動ベルト7Aは後シャフト22上に設けられ、左右方向に延びる。駆動ベルト7Aの左端部は主走査モータ7Mに連結する。主走査モータ7Mが駆動することで、駆動ベルト7Aは、キャリッジ6を前シャフト21及び後シャフト22に沿って左右方向に移動させる。つまり、移動機構7は、ヘッド30が搭載されたキャリッジ6を主走査方向に移動させる。図2は、キャリッジ6が移動範囲Rの右端に位置する状態を示す。
【0029】
図2では、ヘッド30の移動範囲Rを、キャリッジ6が主走査方向に移動できる最大の範囲で示す。ヘッド30は、移動機構7により、主に、メンテナンス位置B1、吐出領域B2、及び、ヘッド待機位置B3の何れかに配置される。メンテナンス位置B1は、ヘッド30の移動範囲Rの左端部にあり、ヘッド30が図示しないワイパやキャップなどのメンテナンスユニットによりメンテナンスされる位置である。印刷装置1は、非印刷時にヘッド30をメンテナンス位置B1に移動し、メンテナンスユニットによるメンテナンスを行う。吐出領域B2は、主走査方向において、メンテナンス位置B1とヘッド待機位置B3との間、且つヘッド30の移動経路において、プラテン12の搬送経路(印刷搬送領域P3)と上下方向に重なる領域である。また、吐出領域B2は、ヘッド30がキャリッジ6によって通過する際に、印刷データに従ってヘッド30がインクを吐出し、プラテン12上の印刷媒体に印刷が行われる。ヘッド待機位置B3は、ヘッド30の移動範囲Rの右端にあり、作業者がヘッド30に対する清掃等の操作を行う場合に配置される位置である。印刷装置1は、例えば、ユーザの操作によって操作部15から入力された指示に基づき、ヘッド30をヘッド待機位置B3に移動させ、待機させる。
【0030】
印刷装置1は、印刷搬送領域P3において副走査モータ26の駆動によってプラテン12を副走査方向に移動させ、吐出領域B2において主走査モータ7Mの駆動によってキャリッジ6を主走査方向に移動させることで、印刷媒体がヘッド30に対して副走査方向及び主走査方向に相対的に移動する。
【0031】
ヘッド30を主走査方向へ移動させ、ヘッド30が印刷媒体と対向しているときに印刷媒体にインクを吐出させる動作を「吐出走査」という。印刷装置1は、吐出走査と、副走査方向へのプラテン12の移動を繰り返すことで、印刷媒体への印刷を行う。例えば、印刷装置1は吐出走査において白ヘッド31、32から白インクを吐出して印刷媒体にカラーインクの下地を形成する。印刷装置1は吐出走査において印刷媒体に形成された下地の上に、カラーヘッド33、34からカラーインクを吐出してカラー画像を印刷する。
【0032】
処理液吐出部40は、図3に示すように、左右方向に並んで配置された7つのスプレーノズル41を有する。また、処理液吐出部40は、図4に示すように、処理液を収容するサブタンク49と、スプレーノズル41毎に設けられた、供給配管42、循環配管43、バルブ44、ポンプ45及びフィルタ46とを有している。つまり、処理液吐出部40は、スプレーノズル41と同じ数だけ、供給配管42、循環配管43、バルブ44、ポンプ45及びフィルタ46を有している。なお、図4には、1つのスプレーノズル41に対して設けられた供給配管42、循環配管43、バルブ44、ポンプ45及びフィルタ46が示されている。
【0033】
各スプレーノズル41に対する、供給配管42、循環配管43、バルブ44及びポンプ45の構成は同じであるため、1つのスプレーノズル41に対応する構成を説明する。スプレーノズル41は、供給配管42に接続されており、下面に吐出口41Aを有する。また、スプレーノズル41は、吐出口41Aから下方に向かって処理液を霧状に吐出することが可能に構成されている。
【0034】
供給配管42は、一端がスプレーノズル41に接続され、他端がサブタンク49に接続されている。供給配管42は、サブタンク49内の処理液をスプレーノズル41へ供給する。
【0035】
ポンプ45は、供給配管42の途中部位に設けられ、制御部80により駆動されることでサブタンク49内の処理液をスプレーノズル41側へ供給する。フィルタ46は、処理液から不純物を濾過するものであり、ポンプ45とサブタンク49との間の供給配管42に設けられている。フィルタ46が供給配管42に設けられていることで、サブタンク49からポンプ45へと供給配管42内を流れる処理液から不純物を濾過することができる。
【0036】
バルブ44は、スプレーノズル41とポンプ45との間の供給配管42に設けられている。本実施形態におけるバルブ44は、制御部80の制御により作動する三方バルブであり、循環配管43の一端も接続されている。これにより、バルブ44は、ポンプ45とスプレーノズル41との連通を遮断する遮断状態を取らせつつ循環配管43と供給配管42とが連通する連通状態を取らせる第1状態と、ポンプ45とスプレーノズル41とが連通する連通状態を取らせつつ循環配管43と供給配管42との連通を遮断する遮断状態を取らせる第2状態とを選択的に取らせることができる。
【0037】
循環配管43も、一端がバルブ44に接続され、他端がサブタンク49に接続されている。これにより、循環配管43は、バルブ44が第1状態を取るときに、供給配管42からの処理液をサブタンク49へと循環させることができる。
【0038】
このような構成において、制御部80がポンプ45を駆動し、バルブ44に第1状態を取らせることで、サブタンク49からの処理液を供給配管42から循環配管43へと流通させてサブタンク49へと循環させることができる。また、制御部80がポンプ45を駆動し、バルブ44に第2状態を取らせることで、サブタンク49からの処理液をスプレーノズル41へと供給することができる。スプレーノズル41へと供給された処理液は、スプレーノズル41から扇状に広がって霧状に吐出される。これにより、印刷媒体に処理液を塗布することができる。
【0039】
また、処理液吐出部40は、図3及び図4に示すように、規制部材50、移動機構70(図11参照)、回収タンク61、メインタンク62、バルブ63、回収配管64、第1補充配管65、第2補充配管66及びポンプ67をさらに含む。回収配管64は、一端が規制部材50の排出口53(後述する)に接続され、他端が回収タンク61に接続されており、規制部材50で受け取った処理液を回収タンク61へと流通させる。また、回収配管64は、排出口53と接続された一端部分が最も上方に配置され、他の部分は一端部分よりも下方にある。回収配管64の内部流路は、本発明の「回収流路」に該当する。回収タンク61(本発明の「タンク」)は、排出口53よりも下方に配置され、回収配管64によって流れてきた処理液を貯留する。
【0040】
メインタンク62は、サブタンク49よりも容積が大きく、多くの処理液を収容する。第1補充配管65は、一端がメインタンク62に接続され、他端がサブタンク49に接続されており、メインタンク62内の処理液をサブタンク49へ流通させる。
【0041】
ポンプ67は、第1補充配管65の途中部位に設けられ、制御部80により駆動されることでメインタンク62又は回収タンク61内の処理液をサブタンク49へ供給する。バルブ63は、メインタンク62とポンプ67との間の第1補充配管65に設けられている。バルブ63は、上述のバルブ44と同様な制御部80の制御により作動する三方バルブであり、第2補充配管66の一端も接続されている。これにより、バルブ63は、ポンプ67とメインタンク62とが連通する連通状態を取らせつつ第2補充配管66と第1補充配管65との連通を遮断する遮断状態を取らせる第1補充状態と、ポンプ67とメインタンク62との連通を遮断する遮断状態を取らせつつ第2補充配管66と第1補充配管65とが連通する連通状態を取らせる第2補充状態とを選択的に取らせることができる。
【0042】
第2補充配管66は、一端がバルブ63に接続され、他端が回収タンク61に接続されている。これにより、第2補充配管66は、バルブ63が第2補充状態を取るときに、回収タンク61からの処理液を第1補充配管65へと流通させることができる。
【0043】
このような構成において、制御部80がポンプ67を駆動し、バルブ63に第1補充状態を取らせることで、メインタンク62からの処理液をサブタンク49へと補充することができる。また、制御部80がポンプ67を駆動し、バルブ63に第2補充状態を取らせることで、回収タンク61からの処理液を第2補充配管66から第1補充配管65へと流通させてサブタンク49に補充することができる。つまり、回収タンク61に回収した処理液を再利用することができる。
【0044】
規制部材50は、図3及び図5に示すように、筒状部材51と、2組の拡張部材58,59とを有する。筒状部材51は、前板51A、後板51B、左板51C、右板51D、及び、底板51Eを有する。本実施形態における筒状部材51は、角筒であるが、例えば、円筒であってもよい。また、筒状部材51の平面形状が楕円や多角形の筒状部材であってもよい。筒状部材51は、上下方向において、スプレーノズル41とプラテン12との間に配置されている(図9参照)。
【0045】
前板51Aは、図3に示すように、上下左右方向に延び、且つ左右方向に長尺に形成されている。後板51Bは、図3及び図5に示すように、前板51Aと前後方向に対向しつつ離隔して配置されている。後板51Bは、上下左右方向に延び、且つ左右方向に長尺に形成されている。
【0046】
左板51Cは、図5に示すように、上下前後方向に延び、且つ上下方向に長尺に形成されている。右板51Dは、左板51Cと左右方向に対向しつつ離隔して配置されている。右板51Dは、上下前後方向に延び、且つ上下方向に長尺に形成されている。底板51Eは、前後左右方向に延び、且つ左右方向に長尺に形成されている。これら4枚の板51A~51Dが前後左右に接続されてなる筒体の下端に後述の貫通口51Fが形成された底板51Eが接続されることで、上下に開口した筒状部材51が構成されている。
【0047】
底板51Eの中央部分には、図5に示すように、上下方向に貫通する貫通口51Fが形成されている。貫通口51Fは、左右方向に長尺に延びており、底板51Eに前方縁部51E1、後方縁部51E2、左端部分51E3及び右端部分51E4が残るように形成されている。また、前方縁部51E1、後方縁部51E2、左端部分51E3及び右端部分51E4のうち、図8に示すように、前方縁部51E1が上下方向において最も高い位置にあり、後方縁部51E2が上下方向において最も低い位置にある。左端部分51E3及び右端部分51E4は、上下方向において同じ高さ位置にあり、前方縁部51E1と後方縁部51E2との間にある。また、底板51Eの貫通口51Fの周縁部分には、上方に突出した環状突起51Gが形成されている。
【0048】
前方縁部51E1は、図6及び図7に示すように、貫通口51Fよりも前方において、左右方向に沿って延びる長い板状部分である。前方縁部51E1には、左右方向に延びる溝52Aが形成されている。溝52Aの底部は、左右方向において、中央から両端に向かうに連れて下方に傾斜している。また、溝52Aの底部の左右の両端と、左端部分51E3及び右端部分51E4との上下方向の高さ位置が同じである。これにより、溝52Aで受け取った処理液は左右方向の両端に向かって流れる。溝52Aから流れてきた処理液は左端部分51E3及び右端部分51E4が受け取る。このように前方縁部51E1は、貫通口51Fの前方において、処理液を左右方向の外側に流す樋を構成する。
【0049】
後方縁部51E2は、図6及び図7に示すように、貫通口51Fよりも後方において、左右方向に沿って延びる長い板状部分である。後方縁部51E2には、左右方向に延びる溝52Bが形成されている。溝52Bの底部は、左右方向において、両端から中央に向かうに連れて下方に傾斜している。また、溝52Bの底部の左右の両端と、左端部分51E3及び右端部分51E4との上下方向の高さ位置が同じである。これにより、左端部分51E3及び右端部分51E4に受け取った処理液は、溝52Bに流入し溝52Bの左右方向の中央に向かって流れる。このように後方縁部51E2は、貫通口51Fの後方において、処理液を左右方向の外側から中央に流す樋を構成する。
【0050】
左端部分51E3は、貫通口51Fよりも左方において、前後左右に延びる板状部分である。右端部分51E4は、貫通口51Fよりも右方において、前後左右に延びる板状部分である。これら左端部分51E3及び右端部分51E4で受け取った処理液は、溝52Bへと流れる。左端部分51E3及び右端部分51E4は、スプレーノズル41からの処理液を直接受け取る。また、左端部分51E3及び右端部分51E4は、拡張部材58,59や溝52Aから流れてきた処理液を受け取る。
【0051】
筒状部材51の後方下端であって左右方向の中央には、図8に示すように、排出口53が形成されている。排出口53は、溝52Bと連通している。これにより、底板51Eで受け取った処理液は、溝52Bを介して排出口53へと流れ、回収配管64を介して回収タンク61に回収される。
【0052】
ここで、図5及び図9を参照して、7つのスプレーノズル41について説明する。本実施形態における7つのスプレーノズル41は、筒状部材51の後板51Bの上部に固定された支持板51Hに支持されている。7つのスプレーノズル41は、左右方向に沿って等間隔に並んで配置されている。また、7つのスプレーノズル41は、吐出口41Aの中心が貫通口51Fの前後方向の中心を通る左右方向に延びる中心線と上下方向に重なる位置に配置されている。
【0053】
7つのスプレーノズル41は、いずれも同じ構成である。スプレーノズル41は、図9に示すように、吐出口41Aから吐出された処理液が吐出口41Aから下方に向かうに連れて主に左右方向に扇状に広がるように、構成されている。具体的には、各スプレーノズル41は、左右方向において、少なくとも吐出範囲Q全体に処理液が吐出されるように構成されている。各スプレーノズル41における吐出範囲Qは、1のスプレーノズル41に対して左右の両方で隣接する2つのスプレーノズル41の中心を通る中心線間の範囲である。なお、吐出範囲Qは各スプレーノズル41から吐出された処理液が広がる大凡の範囲であり、各スプレーノズル41から吐出された処理液が吐出範囲Qを超えていてもよい。
【0054】
また、7つのスプレーノズル41は、図9に示すように、左右方向において、隣接するスプレーノズル41の吐出範囲Qが互いにオーバーラップするように配置されている。なお、各スプレーノズル41の吐出口41Aから吐出された処理液は、図4に示すように、吐出口41Aから下方に向かうに連れて前後方向にも広がる。
【0055】
また、図9に示すように、7つのスプレーノズル41のうち、左右方向において最も外側に位置する2つのスプレーノズル41は、左端部分51E3及び右端部分51E4と上下方向に対向する位置に配置されている。残りの5つのスプレーノズル41は、貫通口51Fと上下方向に対向する位置に配置されている。
【0056】
2組の拡張部材58,59のうち、一方の拡張部材58は、左端部分51E3と上下方向に対向可能な位置に配置され、そこから右方向に移動することで貫通口51Fの左側部分を覆うことが可能に構成されている。他方の拡張部材59は、右端部分51E4と上下方向に対向可能な位置に配置され、そこから左方向に移動することで貫通口51Fの右側部分を覆うことが可能に構成されている。これら2組の拡張部材58,59は、いずれも同じ構成であり、貫通口51Fの中心点に対して点対称に配置されている。このため、拡張部材58の構成について主に説明し、拡張部材59の詳細の説明については省略する。
【0057】
拡張部材58は、図5図8図10に示すように、前後方向及び左右方向に延びる2枚の板状部材58A,58Bを有している。2枚の板状部材58A,58Bは、前後方向に長尺な矩形平面形状を有しており、貫通口51Fを前後方向に跨ぐことが可能な大きさを有する。また、2枚の板状部材58A,58Bは、上下方向に重ねて配置することが可能なように、上下にずらして配置されている。板状部材58Bが板状部材58Aよりも上方に配置されている。
【0058】
また、2枚の板状部材58A,58Bは、図8に示すように、前後方向の両端部から下方に延びた一対の脚部58A1,58B1を有している。これら脚部58A1,58B1は、底板51Eの前方縁部51E1及び後方縁部51E2上に配置されている。また、2枚の板状部材58A,58Bは、左右方向に沿って移動可能に配置されている。同様に拡張部材59を構成する2枚の板状部材59A,59Bも左右方向に沿って移動可能に配置されている。
【0059】
2枚の板状部材58A,58Bは、図9に示すように、左右方向において、貫通口51F側の一端から上方に延びる突起部58A2,58B2と、貫通口51Fとは反対側の他端から下方に延びる突起部58A3,58B3とを有する。同様に、2枚の板状部材59A,59Bも、図9に示すように、左右方向において、貫通口51F側の一端から上方に延びる突起部59A2,59B2と、貫通口51Fとは反対側の他端から下方に延びる突起部59A3,59B3とを有する。2枚の板状部材58A,58B,59A,59Bが第2拡張位置に配置された状態において、板状部材58B,59Bの突起部58B3,59B3と板状部材58A,59Aの突起部58A2,59A2とが係合し、板状部材58B,59Bの突起部58A3,59A3と環状突起51Gの左右の両端部とが係合する。
【0060】
第1拡張位置は、図5及び図9において拡張部材58が配置される位置である。つまり、2組の拡張部材58,59が、左端部分51E3及び右端部分51E4とその全体が重なる位置であって、貫通口51Fを覆わない位置である。本実施形態における第1拡張位置では2組の拡張部材58,59が貫通口51Fを覆っていないが、貫通口51Fを部分的に覆っていてもよい。つまり、2組の拡張部材58,59は、第2拡張位置に配置された各拡張部材58,59が貫通口51Fを覆う面積よりも小さければ、貫通口51Fを部分的に覆っていてもよい。また、第1拡張位置は、2組の拡張部材58,59が最も外側に位置する2つのスプレーノズル41とその処理液の吐出方向に対向する位置である。ここで吐出方向は、スプレーノズル41の吐出口41Aから吐出範囲Qへと処理液が吐出される方向であり、鉛直下方及び鉛直下方に対して斜めとなる斜め下方を含む。本実施形態における第1拡張位置は、いわゆる2組の拡張部材58,59が収納された状態を示す位置でもある。つまり、拡張部材58,59は、左右方向の外側(プラテン12の外側)に向かって収縮可能な板状部材58A,58B,59A,59Bから構成され、これら板状部材58A,58B,59A,59Bが収納される位置が第1拡張位置である。
【0061】
本実施形態においては、プラテン12として、第1プラテン12S1がプラテン支持部37に支持された状態で印刷媒体に印刷が行われる際に、2組の拡張部材58,59は第1拡張位置に配置される。そして、第1拡張位置に配置された2組の拡張部材58,59によって、スプレーノズル41から吐出された処理液の一部が貫通口51Fから下方に吐出されないように規制する。より詳細には、左右方向の両端に配置された2つのスプレーノズル41からの処理液の一部及びこれら2つのスプレーノズル41に隣接する2つのスプレーノズル41からの処理液の一部を受け取って規制する。
【0062】
第2拡張位置は、図5及び図9において拡張部材59が配置される位置である。つまり、2組の拡張部材58,59が、左端部分51E3及び右端部分51E4とその全体が重ならず、貫通口51Fの左右方向の両端部を覆う位置である。本実施形態における第2拡張位置は、いわゆる2組の拡張部材58,59がプラテン12の幅方向において内側に拡張した状態を示す位置である。つまり、拡張部材58,59は、第1拡張位置から左右方向の内側(プラテン12の内側)に向かって拡張可能な板状部材58A,58B,59A,59Bから構成される。
【0063】
本実施形態においては、プラテン12として、第2プラテン12S2がプラテン支持部37に支持された状態で印刷媒体に印刷が行われる際に、2組の拡張部材58,59は第2拡張位置に配置される。そして、第2拡張位置に配置された2組の拡張部材58,59によって、スプレーノズル41から吐出された処理液の一部が貫通口51Fから下方に吐出されないように規制する。より詳細には、左右方向の中央に配置されたスプレーノズル41以外の6つのスプレーノズル41からの処理液の一部を受け取って規制する。2組の拡張部材58,59が第2拡張位置に配置されるときは、貫通口51Fの左右方向の両端部が覆われるため、貫通口51Fから処理液が吐出される範囲は2組の拡張部材58,59が第1拡張位置に配置されるときよりも狭い。このように2組の拡張部材58,59は、第1拡張位置及び第2拡張位置のいずれかに配置されることで、スプレーノズル41から吐出された処理液が印刷媒体に塗布される塗布範囲を規制する。
【0064】
2組の拡張部材58,59は、図9に示すように、第2拡張位置に配置された状態において、外側(プラテン12の内側から外側)に向かうに連れて下方に傾斜するように、階段状に配置される。このため、板状部材59A,59Bで受け取った処理液が図9中矢印で示すように右端部分51E4へと流れる。なお、板状部材58A,58Bで受け取った処理液は左端部分51E3へと流れる。
【0065】
移動機構70は、2組の拡張部材58,59を第1拡張位置と第2拡張位置との間において移動させる。移動機構70は、図11に示すように、移動モータ70Mを有する。また、移動機構70は、移動モータ70Mの動力を伝達し2組の拡張部材58,59を左右方向に沿って移動させる動力伝達機構(不図示)を有する。動力伝達機構としては、例えば、ラック及びピニオンなどの公知の伝達機構が採用される。
【0066】
図11を参照し、印刷装置1の電気的構成を説明する。制御部80にはCPU81、ROM82、RAM83、およびフラッシュメモリ84が設けられる。CPU81は印刷装置1の制御を司り、ROM82、RAM83、およびフラッシュメモリ84と電気的に接続する。ROM82は、CPU81が印刷装置1の動作を制御するための制御プログラム、各種プログラムの実行時にCPU81が必要な情報等を記憶する。ROM82は、例えば主走査モータ7Mの回転角度に基づいてキャリッジ6(ヘッド30)の各位置を記憶し、副走査モータ26の回転角度に基づいてプラテン12の各位置を記憶する。RAM83は、制御プログラムで用いられる各種データ等を一時的に記憶する。フラッシュメモリ84は、不揮発性であり、印刷を行うための印刷データ等を記憶する。
【0067】
制御部80には、図11に示すように、主走査モータ7M、副走査モータ26、4つのヘッド駆動部301~304、操作部15、7つのバルブ44、7つのポンプ45、補充用のバルブ63及びポンプ67が電気的に接続される。主走査モータ7M、副走査モータ26、ヘッド駆動部301~304、7つのバルブ44、7つのポンプ45、補充用のバルブ63及びポンプ67は、制御部80による制御によって駆動する。なお、バルブ44及びポンプ45はそれぞれ7つ設けられているが、図4には便宜上1つのバルブ44及びポンプ45を示している。
【0068】
主走査モータ7Mと副走査モータ26には、それぞれエンコーダ7M1、261が設けられる。エンコーダ7M1は、主走査モータ7Mの回転角度を検出し、検出結果を制御部80に出力する。エンコーダ261は、副走査モータ26の回転角度を検出し、検出結果を制御部80に出力する。
【0069】
4つのヘッド駆動部301~304は、白ヘッド31、32及びカラーヘッド33、34に順に対応し、これらヘッド31~34に含まれている。各ヘッド駆動部301~304は、ヘッド30の複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別流路内のインクにエネルギーを選択的に付与可能な複数の駆動素子(圧電素子または発熱素子)によって構成される。これらヘッド駆動部301~304は、それぞれ、駆動することで白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34内のインクにエネルギーを付与し、対応するノズル313、323、333、343から選択的にインクを吐出させる。
【0070】
<印刷時の制御>
図12を参照し、印刷媒体に画像を印刷する際の制御部80による制御について説明する。ユーザによって操作部15が操作され、印刷時に使用するプラテンの種類及び印刷開始指令が印刷装置1に入力されると、制御部80がROM82から制御プログラムを読み出して動作することで、図12のフローを実行する。なお、本実施形態におけるプラテンの種類は、第1プラテン12S1及び第2プラテン12S2のいずれかであり、今回の印刷で使用されるプラテンの種類が入力されることで、制御部80はプラテンデータを取得する。以下、図12のフローについて説明する。
【0071】
制御部80は、まず、印刷開始指令が入力されたか否かを判定する(S1)。ユーザは、操作部15を操作し印刷開始指示を入力する前に、処理液が塗布されていない印刷媒体(Tシャツ)をプラテン12の支持面12Aに配置する。なお、プラテン12は、非印刷時においてはセット位置P1に配置されている。印刷装置1は、非印刷時においては、通常、ヘッド30がメンテナンス位置B1に配置され、図示しないメンテナンスユニットのキャップによりヘッド30の複数のノズルが覆われるキャッピングが行われている。また、すべてのポンプ45,67は駆動が停止されており、すべてのバルブ44は第1状態を取る。
【0072】
印刷開始指示が入力されていない場合(S1:NO)、印刷開始指示が入力されるまでS1が繰り返される。一方、印刷開始指示が入力された場合(S1:YES)、制御部80はプラテンデータに基づいてプラテン支持部37が支持するプラテンが第1プラテン12S1であるか否かを判定する(S2)。
【0073】
プラテン支持部37が支持するプラテンが第1プラテン12S1である場合(S2:YES)、制御部80は2組の拡張部材58,59が第1拡張位置に配置されるように、移動モータ70Mを制御する(S3)。一方、プラテン支持部37が支持するプラテンが第1プラテン12S1でない場合(S2:NO)、制御部80は第2プラテン12S2が支持されていると判定し、2組の拡張部材58,59が第2拡張位置に配置されるように、移動モータ70Mを制御する(S4)。
【0074】
S3により、2組の拡張部材58,59が第1拡張位置に配置されることで、スプレーノズル41から吐出される処理液の塗布範囲が塗布範囲K1に規制される。一方、S4により、2組の拡張部材58,59が第2拡張位置に配置されることで、スプレーノズル41から吐出される処理液の塗布範囲が塗布範囲K2に規制される。仮に規制部材50が設けられていない場合では、スプレーノズル41から吐出された処理液の塗布範囲が規制されないため、プラテン支持部37のプラテン12よりも外側部分や印刷装置1の設置面(主に印刷装置の前方側)などを汚す恐れがあるが、本実施形態においては2組の拡張部材58,59により処理液の塗布範囲が塗布範囲K1,K2のいずれかに規制されるため、上記の処理液による汚れを抑制することができる。
【0075】
次に、制御部80は、図13(a)に示すように、副走査モータ26を制御し、プラテン12をセット位置P1から処理液吐出領域P4に向けた搬送を開始する(S5)。
【0076】
次に、制御部80は、すべてのポンプ45の駆動を開始する(S6)。このとき、バルブ44は、第1状態を取るため、ポンプ45の駆動により、サブタンク49の処理液が各スプレーノズル41に対応する供給配管42から循環配管43を流通してサブタンク49へ循環する。これにより、各ポンプ45により供給配管42を流通する処理液の供給圧力を高めることができる。
【0077】
本実施形態においては、S6において、7つのポンプ45をすべて駆動しているが、2組の拡張部材58,59を第2拡張位置に配置する場合は、7つのスプレーノズル41のうち、左右方向において、最も外側に配置された2つのスプレーノズル41から処理液を吐出させるための2つのポンプ45以外の5つのポンプ45を駆動してもよい。こうすることで、最も外側に配置された2つのスプレーノズル41からの無駄な処理液の吐出を抑制することができる。なお、2組の拡張部材58,59を第1拡張位置に配置する場合は、7つのスプレーノズル41から処理液を吐出させるための7つのポンプ45を駆動すればよい。
【0078】
次に、制御部80は、プラテン12が処理液吐出領域P4に到達するタイミングでバルブ44が第1状態から第2状態へと切り替えられるように、すべてのバルブ44を制御する(S7)。これにより、循環配管43と供給配管42との連通がそれぞれ遮断され、ポンプ45とスプレーノズル41とがそれぞれ連通し、供給配管42から所定圧力以上で各スプレーノズル41に処理液が供給される。このため、バルブ44の切り替えタイミングとほぼ同時に、各スプレーノズル41から霧状に処理液が吐出される。したがって、処理液吐出領域P4を通過するプラテン12に支持された印刷媒体に霧状に吐出された処理液が塗布される。この結果、印刷媒体にはほぼ均一に処理液が塗布された下地層が形成される。
【0079】
また、2組の拡張部材58,59が第1拡張位置に配置されている場合、処理液による塗布範囲が塗布範囲K1となるように処理液が貫通口51Fから吐出される。2組の拡張部材58,59が第2拡張位置に配置されている場合、処理液による塗布範囲が塗布範囲K2となるように処理液が貫通口51Fから吐出される。
【0080】
2組の拡張部材58,59が第1拡張位置に配置された状態では、左右方向において、貫通口51Fよりも外側に吐出される処理液を板状部材58B,59Bで受け取り、スプレーノズル41から吐出された処理液の塗布範囲を塗布範囲K1に規制することができる。このため、貫通口51F全体から処理液が吐出され、第1プラテン12S1全体に処理液を吐出することができる。また、板状部材58B,59Bで受け取った処理液は、左端部分51E3及び右端部分51E4へと流れ、溝52B、排出口53及び回収配管64を介して回収タンク61に回収される。なお、溝52Aで受け取った処理液も同様にして回収タンク61に回収される。
【0081】
また、2組の拡張部材58,59が第2拡張位置に配置された状態では、左右方向において、拡張部材58,59で覆われていない貫通口51Fよりも外側に吐出される処理液を板状部材58A,58B,59A,59B及び左端部分51E3及び右端部分51E4で受け取り、スプレーノズル41から吐出された処理液の塗布範囲を塗布範囲K2に規制することができる。このため、貫通口51Fの拡張部材58,59で覆われていない部分から処理液が吐出され、第2プラテン12S2全体に処理液を吐出することができる。また、2組の拡張部材58,59、左端部分51E3及び右端部分51E4で受け取った処理液は、左端部分51E3及び右端部分51E4から、溝52B、排出口53及び回収配管64を介して回収タンク61に回収される。なお、溝52Aで受け取った処理液も同様にして回収タンク61に回収される。
【0082】
次に、制御部80は、プラテン12が処理液吐出領域P4を通過するタイミングでバルブ44が第2状態から第1状態へと切り替えられるように、すべてのバルブ44を制御する(S8)。これにより、ポンプ45とスプレーノズル41との連通がそれぞれ遮断され、循環配管43と供給配管42とがそれぞれ連通し、処理液が供給配管42から循環配管43を流通しサブタンク49へと循環する。このため、バルブ44の切り替えタイミングとほぼ同時に、各スプレーノズル41への処理液の供給が遮断され、各スプレーノズル41からの処理液の吐出が止まる。本実施形態においては、プラテン12の支持面12A全体に処理液が吐出されるように制御することで、印刷媒体の表面全体に処理液を塗布するように制御しているが、S7,S8のバルブ44の切り替えタイミングを適宜変更することで、印刷媒体の前後方向における一部分にだけ処理液を塗布してもよい。また、印刷媒体の一部にだけ処理液を塗布する場合、印刷媒体にインクを吐出して形成する画像範囲に対応する領域だけに処理液を塗布してもよい。
【0083】
次に、制御部80は、すべてのポンプ45の駆動を停止する(S9)。本実施形態においては、S8の直後にS9を実行するが、S8とS9が同時であってもよい。いずれにおいても、スプレーノズル41からの処理液の液垂れを抑制できる。また、S8のバルブ44の切り替えタイミングからポンプ45の駆動を停止するまでの時間が短いほど、ポンプ45の無駄な駆動時間を減らすことが可能となるため、ポンプ45の寿命を延ばすことが可能となる。
【0084】
次に、制御部80は、エンコーダ261からの検出結果に基づいてプラテン12が印刷前待機位置P2に到達すると副走査モータ26を制御し、プラテン搬送を停止させる(S10)。
【0085】
次に、制御部80は、印刷媒体に画像を印刷する印刷処理を実行する(S11)。制御部80は、エンコーダ261からの検出結果に基づいて副走査モータ26を制御し、プラテン12を印刷前待機位置P2から印刷搬送領域P3に移動させる。
【0086】
そして、制御部80は、エンコーダ991からの検出結果に基づいて主走査モータ7Mを制御し、キャリッジ6をメンテナンス位置B1から吐出領域B2へと移動させて、ヘッド30をプラテン12に配置された印刷媒体と対向させる。
【0087】
制御部80は、プラテン12の少なくとも一部が印刷搬送領域P3に位置する状態で、且つキャリッジ6が吐出領域B2に位置する状態で、ヘッド駆動部301~304と主走査モータ7Mと副走査モータ26を制御し、吐出走査と、前方へのプラテン12の移動を交互に繰り返すことで、印刷媒体への印刷を行う。つまり、印刷媒体への印刷時においては、プラテン12が印刷前待機位置P2から印刷搬送領域P3へと前方に搬送されてくるため、まず、処理液が塗布されることで形成された印刷媒体の下地層上に白ヘッド31、32のノズルから白インクが吐出され、下地(主にカラーインク用)が形成される。そして、白ヘッド31、32を通過し印刷媒体に形成された下地上にカラーヘッド33、34のノズルからインクが吐出され、画像が形成される。なお、画像の白色を表す部分については、白インクで形成された下地部分とする。このため、当該下地部分の上にはカラーインクが吐出されない。
【0088】
次に、印刷データに基づく印刷媒体への印刷が終了(印刷処理の終了)すると、制御部80が、エンコーダ261からの検出結果に基づいて副走査モータ26を制御し、プラテン12をセット位置P1で停止させる。ユーザはセット位置P1に配置されたプラテン12から画像の形成された印刷媒体を取り外す。また、このとき、制御部80は、エンコーダ991からの検出結果に基づいて主走査モータ7Mを制御し、キャリッジ6を吐出領域B2から左方に移動させ、メンテナンス位置B1で停止させる。こうして、図12のフローが終了する。
【0089】
また、制御部80は、適宜のタイミングでポンプ67を駆動し、回収タンク61又はメインタンク62から処理液をサブタンク49に補充してもよい。メインタンク62の処理液をサブタンク49に補充する場合、制御部80はバルブ63が第1補充状態を取るように制御する。回収タンク61に回収された処理液をサブタンク49に補充する場合、制御部80はバルブ63が第2補充状態を取るように制御する。上記の適宜のタイミングとしては、サブタンク49内の処理液が少なくなったことを示すタイミングであり、例えば、サブタンク49の液量の下限を検出するフロートセンサをサブタンク49に設け、当該フロートセンサからの検知信号に基づいたタイミングや、スプレーノズル41からの処理液を吐出させるためのポンプ45の駆動時間より導出した処理液の消費量が所定量以上になったタイミングなどで行えばよい。また、別のタイミングとしては、回収タンク61の液量の上限を検出するフロートセンサを回収タンク61に設け、当該フロートセンサからの検知信号に基づいたタイミングなどで行ってもよい。
【0090】
なお、回収タンク61に回収された処理液を再利用しなくてもよい。この場合、回収タンク61を廃液タンクとして利用することが可能となる。
【0091】
以上に述べたように、本実施形態の印刷装置1によると、2組の拡張部材58,59(規制部材50)を、第1拡張位置及び第2拡張位置のいずれかに配置させることで、プラテン12のサイズに応じて処理液の塗布範囲を塗布範囲K1,K2に規制することができる。このため、プラテン12や印刷媒体よりも左右方向の外側にはみ出すのを抑制することが可能となる。このため、プラテン12を支持する装置(プラテン支持部37を含む印刷装置1)及び当該装置を設置する設置面に処理液が付着して汚すのを抑制することが可能となる。
【0092】
規制部材50が板状部材58A,58B,59A,59Bからなる2組の拡張部材58,59を有している。これにより、処理液の塗布範囲をプラテン12の幅方向に沿って規制することができる。
【0093】
2組の拡張部材58,59は、左右方向において第1拡張位置からプラテン12の内側に向かって拡張可能に構成されている。最も外側に配置されたスプレーノズル41から吐出される処理液は、プラテン12よりも外側にはみ出す可能性が高い。しかしながら、2組の拡張部材58,59が、左右方向において、最も外側に配置されたスプレーノズル41と吐出方向に対向する位置(第1拡張位置)からプラテン12の内側に向かって拡張する。このため、プラテン12を支持する装置(プラテン支持部37を含む印刷装置1)及び当該装置を設置する設置面に処理液が付着して汚すのをより抑制することが可能となる。
【0094】
プラテン支持部37は、第1プラテン12S1と、第2プラテン12S2とを支持可能であり、2組の拡張部材58,59がプラテン12の幅にそれぞれ対応して拡張可能に構成されている。これにより、第1プラテン12S1及び第2プラテン12S2のうち、プラテン支持部37で支持されるプラテン12の幅に応じて拡張部材58,59を拡張及び収縮することが可能となる。このため、塗布範囲をプラテン12の幅に応じて規制することが可能となる。
【0095】
制御部80が、プラテンデータに基づいて2組の拡張部材58,59を第1拡張位置又は第2拡張位置に移動するように移動モータ70Mを制御する。これにより、プラテンデータに基づいて2組の拡張部材58,59を移動させることが可能となり、ユーザが2組の拡張部材58,59を移動させる手間を低減できる。
【0096】
処理液吐出部40が、回収タンク61と、回収配管64とを有している。これにより、2組の拡張部材58,59で塗布範囲K1,K2に規制したときに当該拡張部材58,59で受け取った処理液を回収タンク61に回収することが可能となる。
【0097】
2組の拡張部材58,59が、左右方向において、プラテン12の内側から外側に向かうに連れて下方に傾斜している。これにより、拡張部材58,59で受け取った処理液をプラテン12の内側から外側に向けて案内することが可能となるため、プラテン12、またはプラテン12に載置された印刷媒体に拡張部材58,59で受け取った処理液が垂れ落ちるのを低減することができる。
【0098】
第1変形例として、制御部80は、S2において、印刷データに含まれる画像範囲データに基づいて今回の印刷における画像の左右方向の幅が第2プラテン12S2の左右方向の幅よりも大きいか否かを判定し、2組の拡張部材58,59の拡張位置を判定してもよい。つまり、画像の左右方向の幅が第2プラテン12S2の幅よりも大きい場合(S2:YES)、制御部80は上述のS3に進む。一方、画像の左右方向の幅が第2プラテン12S2の幅以下の場合(S2:NO)、制御部80は上述のS4に進む。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0099】
上述の実施形態及び第1変形例においては、制御部80がプラテンデータや画像範囲データに基づいて2組の拡張部材58,59の拡張位置を判定し移動機構70を制御することで2組の拡張部材58,59を移動させていたが、プラテン12として使用する第1プラテン12S1又は第2プラテン12S2のサイズに応じて、ユーザが手動で2組の拡張部材58,59を移動させてもよい。この場合、移動機構70を設けなくてもよい。また、制御部80の制御が簡単になる。
【0100】
第2変形例として、処理液吐出部40は、プラテン支持部37に支持されたプラテン12が第1プラテン12S1及び第2プラテン12S2のいずれであるかを検出するセンサ89(図11参照)を有していてもよい。本変形例におけるセンサ89としては、近接センサやリミットスイッチなど公知のセンサを採用できる。またセンサ89はプラテン支持部37に設けられておればよい。この場合、センサ89の検知信号に基づいてユーザが手動で第1拡張位置又は第2拡張位置に2組の拡張部材58,59を移動させてもよい。また、制御部80が、上述のS2において、センサ89の検知信号に基づいて2組の拡張部材58,59を拡張させる位置が第1拡張位置及び第2拡張位置のいずれであるかを決定してもよい。そして、第1拡張位置であると決定した場合(S2:YES)、制御部80は上述のS3に進む。一方、第2拡張位置であると決定した場合(S2:NO)、制御部80は上述のS4に進む。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0101】
上述の第2変形例におけるセンサ89は、印刷媒体の左右方向の幅を検知してもよい。センサ89の検知信号に基づいた印刷媒体の幅に応じて、2組の拡張部材58,59を拡張させる位置が第1拡張位置及び第2拡張位置のいずれであるかを決定してもよい。この場合においても、センサ89の検知信号に基づいてユーザが手動で第1拡張位置又は第2拡張位置に2組の拡張部材58,59を移動させてもよい。また、制御部80が、上述のS2において、センサ89の検知信号に基づいて2組の拡張部材58,59を拡張させる位置が第1拡張位置及び第2拡張位置のいずれであるかを決定してもよい。そして上述と同様の制御をしてもよい。これにおいても、第2変形例と同様の効果を得ることができる。
【0102】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0103】
上述の実施形態においては、規制部材50が筒状部材51と2組の拡張部材58,59を有していたが、筒状部材51だけから構成されていてもよい。この場合、スプレーノズル41から吐出された処理液は貫通口51Fの範囲からしか吐出されない。つまり、処理液の塗布範囲が塗布範囲K1に規制される。これにおいても、プラテン12として、第1プラテン12S1が用いられる場合、上述と同様の効果を得ることができる。また、このときの筒状部材51が底板51Eを有していなくてもよい。これにおいても、左板51Cや右板51Dにより、処理液の塗布範囲が規制され、上述と同様な効果を得ることができる。
【0104】
また、規制部材50が2組の拡張部材58,59とこれらを左右方向に移動可能に支持する支持部(例えば、底板51E)だけから構成されていてもよい。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。また、2組の拡張部材58,59が、1枚の板状部材から構成されていてもよい。これにおいても、スプレーノズル41から吐出された処理液の塗布範囲を板状部材で規制することが可能となり、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、板状部材自体が、左右方向において、プラテン12の内側から外側に近づくに連れて下方に傾いていてもよい。
【0105】
上述の実施形態においては、2組の拡張部材58,59が第1拡張位置と第2拡張位置とのいずれかに配置されるが、プラテン12の幅サイズ(プラテン12の幅が3種類以上の場合)や印刷媒体の幅サイズに応じて、第1拡張位置と第2拡張位置との中間位置に2組の拡張部材58,59を配置させてもよい。この場合、板状部材58A,59Aを第1拡張位置に配置させたまま板状部材58B,59Bを貫通口51Fの左右の両端部を覆う位置に配置させればよい。これにおいても上述と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
【0106】
上述の塗布範囲K1,K2は、規制部材により適宜のサイズに規制されればよく、プラテンサイズに対応していなくてもよい。要するに、スプレーノズル41から吐出された処理液が広がり過ぎて周囲を汚すのを抑制するために、処理液の塗布範囲を所望の塗布範囲に規制することが可能であればよい。
【0107】
また、処理液吐出部40は、回収タンク61、メインタンク62、バルブ63、回収配管64、第1補充配管65、第2補充配管66及びポンプ67などが設けられていなくてもよい。この場合、サブタンク49の処理液が少なくなったタイミングで処理液を別の供給装置により補充すればよい。
【0108】
また、処理液吐出部40は、スプレーノズル41に処理液を供給する構成として、サブタンク49、供給配管42及びポンプ45だけを有していてもよい。つまり、循環配管43やバルブ44やフィルタ46は有していなくてもよい。
【0109】
また、上述の実施形態における処理液吐出部40は、7つのスプレーノズル41を有していたが、1~6、8以上のスプレーノズル41を有していてもよい。この場合、各スプレーノズル41に対応して、供給配管42、循環配管43、バルブ44、ポンプ45が設けられておればよい。また、バルブ44とスプレーノズル41とを繋ぐ供給配管42が複数のスプレーノズル41に分岐して接続されていてもよい。こうすればバルブ44、ポンプ45の設置数を減らすことが可能となる。
【0110】
また、処理液吐出部40は、下地層を形成する処理液をスプレーノズル41から吐出させるものであったが、印刷媒体の画像をオーバーコーティングする処理液をスプレーノズル41から吐出させるものであってもよい。つまり、処理液は印刷媒体にインクが吐出されて画像が形成された後に、印刷媒体に吐出されてもよい。この場合、S11の印刷処理後、すなわち、プラテン12が印刷搬送領域P3を通過してから処理液吐出領域P4に到達するまでに、S6と同様の処理を実行し、その後、プラテン12が処理液吐出領域P4に到達したときに、S7と同様の処理を実行すればよい。こうして、印刷媒体の画像をオーバーコーティング(インクの上地層を形成)することが可能となる。また、このときのスプレーノズル41から吐出された処理液の塗布範囲が2組の拡張部材58,59により塗布範囲K1,K2に規制される。このため、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0111】
また、搬送機構14は、副走査モータ26を有していなくてもよい。この場合、手動でプラテン12を移動させればよい。つまり、搬送機構は、プラテン12を、セット位置P1と処理液吐出領域P4を通過する通過位置との間において、移動させることが可能な構成を有しておればよい。
【0112】
また、上述の実施形態及び各変形例におけるヘッド30は、移動機構7によって主走査方向(左右方向)に沿って移動しながら複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えた印刷装置に本発明を適用した例について説明したが、これに限られない。例えば、主走査方向に印刷媒体(プラテン12)の全長にわたって延び、吐出領域B2に移動不可能に配置されたラインヘッドを備えた印刷装置に本発明を適用することも可能である。
【0113】
また、上述のプラテン支持部37は、第1プラテン12S1と第2プラテン12S2との両方を前後方向に並べて同時に支持していてもよい。これにおいても、今回の印刷で使用する第1プラテン12S1又は第2プラテン12S2に対応した第1拡張位置又は第2拡張位置に2組の拡張部材58,59を配置すればよい。これにおいても上述と同様な効果を得ることができる。
【0114】
また、上述の実施形態及び各変形例における制御部80は、CPU81の代わりに、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が、プロセッサとして用いられてもよい。この場合、メイン処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。ROM82、フラッシュメモリ84等の非一時的な記憶媒体は、情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は、一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。制御プログラムは、例えば、図示外のネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(すなわち、伝送信号として送信され)、ROM82またはフラッシュメモリ84に記憶されてもよい。この場合、制御プログラムは、サーバに備えられたHDD等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【0115】
上述の実施形態及び各変形例における印刷装置1は、印刷媒体に画像を形成するためのヘッド30や移動機構7などを有しているが、処理液吐出部40と、プラテン12、搬送機構14、操作部15、及び、制御部80を有する処理液塗布装置であってもよい。つまり、処理液塗布装置は、特に印刷装置に限定されるものではない。
【0116】
上述の実施形態及び各変形例においては、処理液の揮発成分には有機酸が含まれているがこれに限られない。すなわち、処理液の揮発成分が、有機酸以外の成分であって、ノズル内のインクと反応して、凝集や変色を起こす成分を含んでいてもよい。また、処理液には、有機酸などの揮発成分が含まれていなくてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 印刷装置
12 プラテン
12A 第1プラテン
12B 第2プラテン
37 プラテン支持部
41 スプレーノズル
50 規制部材
58A,58B,59A,59B 板状部材
61 回収タンク(タンク)
64 回収配管(回収流路)
70 移動機構
80 制御部
89 センサ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13