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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143008
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】足場用吸音パネル
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055458
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸夫
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059EE10
2D059GG25
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】安価で吸音性能を維持しつつ足場内からの交換が安全且つ容易な足場用吸音パネルを提供する。
【解決手段】橋梁の橋桁のメンテナンスや点検を行う足場(恒久足場10)に設置される足場用吸音パネル1において、足場(恒久足場10)となる上面を人が作業可能な強度を有する床板2と、床板2内に設置された吸音材3と、吸音材3を載置して落下するのを防ぐ表面板4と、を備え、表面板4に、橋桁に支持された梁材に載置・固定されるフランジ片41を突設する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の橋桁のメンテナンスや点検を行う足場に設置される足場用吸音パネルであって、
前記足場となる上面を人が作業可能な強度を有する床板と、前記床板内に設置された吸音材と、前記吸音材を載置して落下するのを防ぐ表面板とを備え、
前記表面板には、前記橋桁に支持された梁材に載置・固定されるフランジ片が突設されていること
を特徴とする足場用吸音パネル。
【請求項2】
前記フランジ片は、前記梁材に直接又は間接的に機械的に接合されていること
を特徴とする請求項1に記載の足場用吸音パネル。
【請求項3】
前記表面板は、矩形状の両端が折り返されて前記床板を外側から内包して掛け止める構造となっていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の足場用吸音パネル。
【請求項4】
前記フランジ片は、前記梁材のフランジに載置されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の足場用吸音パネル。
【請求項5】
前記表面板は、一枚の板から折り曲げ成形されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の足場用吸音パネル。
【請求項6】
前記表面板は、前記フランジ片が載置されている前記梁材の少なくとも一方の下フランジの下面を隠蔽していないこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の足場用吸音パネル。
【請求項7】
前記フランジ片は、内折りした後、外折り順に2回以上折曲げ加工されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の足場用吸音パネル。
【請求項8】
前記床板は、前記フランジ片の上まで延設されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の足場用吸音パネル。
【請求項9】
前記表面板は、錆びにくい高耐食性材料から形成されていること
を特徴とする請求項8に記載の足場用吸音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の足場に設置される足場用吸音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、橋梁の鋼桁(橋桁)や支持部材のメンテナンスや点検を行うためにその都度仮設の作業足場を設置するのではなく常時設置される恒久足場を設けることが行われている。このような恒久足場は、橋桁の下側全体を覆うことになるため、鋼桁を飛来塩分から守る効果があり、塗装の塗り替え間隔が大幅に延び、ライフサイクルコストが大幅に削減できることからも注目されている。また、恒久足場は、排水管や設備配管を隠せるため見栄えが良く、床版の裏や橋桁から万が一コンクリート片や部品が落下した場合でも受け止められるフェイルセーフとしても注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、中空部を有する上下面が平坦状のアルミニウム製押出形材の幅方向に延在する連接部同士を固定部材によって連結され、互いに連結された上記押出形材の上面は、同一平面状に形成されている橋梁防護板が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0063]~[0071]、図面の図1図4等参照)。
【0004】
特許文献1に記載の橋梁防護板は、橋梁下部を腐食成分から保護すると共に、点検作業者の歩行通路としても使用できるという作用効果を奏する。しかし、特許文献1に記載の橋梁防護板のような恒久足場は、橋梁の下部を覆って平面(裏面パネルの下面)が形成されることとなるため、図12に示すように、橋梁B1の下方に他の道路が存在する場合、恒久足場の裏面パネルが騒音を反射する反射板となって、騒音の反射音が遠くにまで伝播してしまうという問題が発生する。
【0005】
このような問題を解決するべく、特許文献2には、吸音部材と、吸音部材を収容するケーシングを備え、内鉤部52と外鉤部44とが係合するように、正面板部材28と背面板部材30の側面板34A,34B,48A,48B同士が重ね合わせられることで、正面板部材28が背面板部材30によって吊り支持される高架道路の裏面に設置される吸音パネルが開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0063]~[0071]、図面の図1図4等参照)。
【0006】
また、特許文献3には、箱状の筐体と、この筐体の内部空間に設けられた吸音部材とを備え、高架構造物の裏面側に設置される吸音装置が開示されている(特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0033]~[0040]、図面の図1図8等参照)。
【0007】
特許文献2に記載の吸音パネルや特許文献3に記載の吸音装置は、恒久足場の下面での反射音が道路から離れた広範囲の沿線住宅まで騒音として伝播してしまうという問題は解決できるとされている。しかし、橋梁の恒久足場やそこに設置される吸音パネル自体は、直接飛来塩分がかかる状態であり、一定期間ごとに交換する必要があると考えられる。
【0008】
一般に、吸音パネルに使用される吸音材は、ポリエステル等の樹脂繊維であり、恒久的な材料ではない。また、吸音材は、長期間道路近傍に設置されることで、排気ガスによる吸音材の化学的な劣化や正面板パンチングへの目詰まりによって、吸音率が低下する懸念がある。その上、吸音パネルは、自然災害や事故等によるパネルの損傷も考えられるため、吸音パネルを点検・交換できる構造であることが好ましい。
【0009】
そして、一定期間ごとに定期的な交換が必要であることを勘案すると、恒久足場に設置される吸音パネルは、新たな仮設足場の設置が不要な恒久足場内から交換できることが好ましい。しかし、特許文献2に記載の吸音パネルや特許文献3に記載の吸音装置の吸音パネルは、恒久足場内から交換することが考慮されておらず、通常通り、恒久足場の下に仮設足場を設置して交換する必要があり、交換作業に交通規制を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014-205961号公報
【特許文献2】特開2016-69824号公報
【特許文献3】特開2018-24996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、安価で吸音性能を維持しつつ足場内からの交換が安全且つ容易な足場用吸音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る足場用吸音パネルは、橋梁の橋桁のメンテナンスや点検を行う足場に設置される足場用吸音パネルであって、前記足場となる上面を人が作業可能な強度を有する床板と、前記床板内に設置された吸音材と、前記吸音材を載置して落下するのを防ぐ表面板とを備え、前記表面板には、前記橋桁に支持された梁材に載置・固定されるフランジ片が突設されていることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る足場用吸音パネルは、第1発明において、前記フランジ片は、前記梁材に直接又は間接的に機械的に接合されていることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る足場用吸音パネルは、第1発明又は第2発明において、前記表面板は、矩形状の両端が折り返されて前記床板を外側から内包して掛け止める構造となっていることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る足場用吸音パネルは、第1発明又は第2発明において、前記フランジ片は、前記梁材のフランジに載置されていることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る足場用吸音パネルは、第1発明又は第2発明において、前記表面板は、一枚の板から折り曲げ成形されていることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る足場用吸音パネルは、第1発明又は第2発明において、前記表面板は、前記フランジ片が載置されている前記梁材の少なくとも一方の下フランジの下面を隠蔽していないことを特徴とする。
【0018】
第7発明に係る足場用吸音パネルは、第1発明又は第2発明において、前記フランジ片は、内折りした後、外折り順に2回以上折曲げ加工されていることを特徴とする。
【0019】
第8発明に係る足場用吸音パネルは、第1発明又は第2発明において、前記床板は、前記フランジ片の上まで延設されていることを特徴とする。
【0020】
第9発明に係る足場用吸音パネルは、第8発明において、前記表面板は、錆びにくい高耐食性材料から形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
第1発明~第9発明によれば、設置コストを抑えつつ足場が騒音の反射面となって騒音が遠くにまで到達してしまうという問題を解消し、騒音を低減することができる。また、第1発明~第9発明によれば、吸音パネルを取り替える際に足場内から仮置きまで行うことができ、足場下方の道路などに吸音パネルを落下させるおそれを低減することができる。また、第1発明~第9発明によれば、人力の一人作業で吸音パネルを取り替えることが容易であり、取替コストを低減することができる。
【0022】
特に、第2発明によれば、載置されているだけでなく、橋桁に支持された梁材に直接又は間接的に機械的に接合されているので、さらに足場下方の道路などに吸音パネルを落下させるおそれを低減することができる。
【0023】
特に、第3発明によれば、表面板が長方形状の長辺がいずれも折り返されて床板を外側から内包して掛け止める構造となっているので、足場内から表面板が目視で掛け止められていることを確認することができる。
【0024】
特に、第4発明によれば、フランジ片が梁材のフランジに載置されているので、さらに足場下方の道路などに吸音パネルを落下させるおそれを低減することができる。
【0025】
特に、第5発明によれば、表面板が一枚の板から折り曲げ成形されているので、前記作用効果を一枚の板で達成しており、安全性が高い上、落下の危険のある表面材の接合部を全て足場内から目視により確認でき、その点でも落下防止の安全性が向上する。また、第5発明によれば、一枚の板からで成形されているため、吸音パネルの組立工数を削減することができ、調達性や経済性にも優れる。
【0026】
特に、第6発明によれば、フランジ片が載置されている梁材の少なくとも一方の下フランジの下面が吸音パネルの表面板で隠蔽されていないので、吸音パネルを梁材間に載置するだけ、又はケンドン式に嵌め込むだけで、吸音パネルの仮置きができ、取替容易であるとともにさらに落下防止の安全性が向上する。
【0027】
特に、第7発明によれば、梁材の下フランジと吸音パネルの高架下側表面の面合わせができ、連続性があり違和感のないデザインを創出することができるだけでなく、梁材の下フランジから下方に露出するボルト等の接合部を隠蔽することも可能となる。
【0028】
特に、第8発明によれば、床板がフランジ片の上まで延設されているので、床材で強度設計を行うことができ、様々な設計条件に柔軟に対応できる。また、第8発明によれば、表面板に剛性が求められていないため、表面板を薄くすることができ、吸音パネルの軽量化を達成して運搬性が向上する。
【0029】
特に、第9発明によれば、表面板が錆びにくい高耐食性材料から形成されているので、足場外からの排気ガスや飛来塩分が直接触れるおそれが高い表面板の耐食性を向上させることができ、他パーツを安価で調達性の良い材料で作ることができる。このため、剛性が求められていない表面板を薄くすることで、単価の高い高耐食性材料の使用量を抑えて吸音パネルを安価に製造することができる。また、第9発明によれば、外部に露出する表面板をメンテナンスフリーとして点検不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本実施形態に係る足場用吸音パネルを高架橋の恒久足場に設置した場合を示す鉛直断面図である。
図2図2は、同上の足場用吸音パネルを示す上面斜視図である。
図3図3は、同上の足場用吸音パネルを示す下面斜視図である。
図4図4は、同上の足場用吸音パネルの構成を示す分解斜視図である。
図5図5は、同上の足場用吸音パネルの床板の構成を示す分解斜視図である。
図6図6は、同上の足場用吸音パネルのフランジ片と梁材との接合部分を示す部分拡大断面図である。
図7図7は、変形例1に係る足場用吸音パネルのフランジ片と梁材との接合部分を示す拡大断面図である。
図8図8は、変形例2に係る足場用吸音パネルのフランジ片と梁材との接合部分を示す拡大断面図である。
図9図9は、図6で示した吸音パネルを梁材の上に仮置きする場合を示す説明図である。
図10図10は、図7で示した吸音パネルを梁材の上に仮置きする場合を示す説明図である。
図11図11は、図6で示した吸音パネルの一端に梁材の下フランジを覆うカバー材を取り付けて一体化した変形例3に係る吸音パネルを梁材の上に仮置きする場合を示す説明図である。
図12図12は、恒久足場の問題点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る足場用吸音パネルについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
[第1実施形態]
図1図4を用いて、本発明の第1実施形態に係る足場用吸音パネル1について説明する。図1は、本実施形態に係る足場用吸音パネル1を高架橋の恒久足場に設置した場合を示す鉛直断面図である。また、図2は、足場用吸音パネル1を示す上面斜視図であり、図3は、足場用吸音パネル1を示す下面斜視図である。そして、図4は、足場用吸音パネル1の構成を示す分解斜視図であり、図5は、足場用吸音パネル1の床板2の構成を示す分解斜視図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態に係る足場用吸音パネル1(以下、単に吸音パネル1ともいう)は、橋桁G1と床版B2を備える橋梁B1の橋桁G1廻りに設置され、橋桁G1等のメンテナンスや点検を行う人が作業可能な恒久足場10として用いられるとともに、橋梁B1下の道路からの騒音を吸音する機能を有している(図12も参照)。
【0034】
なお、恒久足場10とは、背景技術で述べたように、橋梁B1の橋桁G1や支持部材のメンテナンスや点検を行うためにその都度仮設の作業足場を設置するのではなく常時設置される足場のことを指している。また、図1に示すように、恒久足場10は、橋桁G1に吊下げ支持された吊り材11に梁材12が接合され、この梁材12に後述の恒久足場用吸音パネル1が設置・固定されることで構成されている。
【0035】
また、吸音パネル1は、図2図4に示すように、足場となる床板2と、床板2内に設置されて騒音を吸音する吸音材3と、吸音材3を載置して落下するのを防ぐ表面板4など、から構成されている。
【0036】
(床板)
床板2は、図4,5に示すように、人が歩行したり作業したりすることが可能な強度を有する所定厚さの鋼板からなり、床板本体20と、その床板本体20の長手方向の端部を塞ぐ端部板21と、から主に構成され、底面が開放された直方体状の箱体となっている。勿論、床板2は、一枚の鋼板から一体成形されていても構わない。
【0037】
床板本体20は、一枚の鋼板から両端部が下方に折り曲げ形成された断面コの字状の部材であり、剛性を上げるため、所定距離を離間して設けられた断面台形状の2条の溝20aが形成されている。
【0038】
端部板21も、両端部が折り返された断面コの字状の板であり、前述の2条の溝20aに対応する位置に、後述の取付レール23を挿通する貫通孔21aが形成されている。また、端部板21の下面には、滑り止めのゴム材22が接着されている。
【0039】
また、床板本体20の2条の溝20aの両端には、アルミニウム合金製又は樹脂製の取付レール23が嵌着されている。この取付レール23は、取付レール23に、ボルト頭をスライドで挿入し、吸音パネルにネジ部が形成される。そして、ネジ部に対し、固定板5を差し込み、ナットを用いて固定する。固定板5は梁材へ固定されており、吸音パネルがズレないようにする機能を有している。
【0040】
(吸音材)
本実施形態に係る吸音材3は、表面に撥水処理及び難燃処理を施したポリエステル繊維からなる厚さ50mm程度の吸音材である。勿論、本発明に係る吸音材は、ポリエステル繊維に限られず、グラスファイバーなどの繊維材やポリウレタンフォームなどの発泡樹脂などの他の材質の吸音材もしくは共鳴機構や膜振動による吸音機構、多孔吸音板を用いることができる。
【0041】
(表面板)
表面板4は、錆びにくい高耐食性材料からなる一枚の金属板から折り曲げ成形された板材であり、図3,4に示すように、長方形状の底面部40と、この底面部40の長手方向の端部から折り返されて水平方向に突設された一対のフランジ片41と、底面部40の短手方向の端部から折り返されて立ち上る一対の掛止め部42など、から構成されている。
【0042】
ここで、高耐食性材料とは、アルミニウム合金、ステンレス鋼、高耐食性めっき鋼板、チタン合金、又はラミネート鋼板などの錆びにくい高耐食性の材料を指している。また、高耐食性めっき鋼板とは、アルミニウム、マグネシウム、微量のシリコンを含有した鋼板や、溶融亜鉛、アルミニウム、マグネシウム合金メッキ鋼板などの一般の鋼板より耐食性が極めて高い鋼板を指している。そして、ラミネート鋼板とは、表面がポリエステルフィルムなどの樹脂フィルムで被覆された耐食性が高い鋼板を指している。
【0043】
底面部40は、図3図4に示すように、吸音材3が載置される部位であり、騒音を透過するための多数の貫通孔40aが穿設されている。
【0044】
フランジ片41は、図1に示すように、橋桁G1に吊り材11を介して支持された梁材12に載置・固定される部位であり、H形鋼からなる梁材12にボルト接合されている。勿論、フランジ片41は、ボルト接合に限られず、リベットなどで機械的に接合されていればよい。
【0045】
このフランジ片41は、長方形状の底面部40の短辺から外側の部分が内折りした後、外折り順に2回以上折曲げ加工されて、梁材12の上フランジに載置した際に、図1に示すように、梁材12の下フランジの下面と、表面板4の底面部40の下面とが面一となるように設定されている。勿論、後述の変形例で示すように、梁材12の下フランジの下面と、表面板4の底面部40の下面とが面一とならないように設定してもよいことは云うまでもない。
【0046】
掛止め部42は、図2図4に示すように、長方形状の底面部40の長辺から外側の部分がいずれも内側に2回折り返されて断面逆Lの字状に折り曲げられ、前述の床板2の床板本体20の上面を外側から内包して抱え込んで掛け止める構造となっている。このため、恒久足場10内から表面板4が床板2に掛け止められており、目視で脱落していないことを確認することができる。
【0047】
次に、図6を用いて、表面板4のフランジ片41と梁材12との接合部分についてさらに詳細に説明する。図6は、吸音パネル1のフランジ片41と梁材12との接合部分を示す拡大断面図である。図6に示すように、表面板4のフランジ片41は、梁材12の上フランジの上に載置された上、フランジ片41が梁材12にボルト接合されている。このため、恒久足場10内から目視で、表面板4がボルト接合されているか否かが目視により簡単に確認することができる。
【0048】
また、図6に示すように、表面板4の掛止め部42が床板本体20の上面を外側から掛け止めた上、リベットで止め付けられている。このため、恒久足場10内から目視で、表面板4が掛止め部42で掛け止められて接合されているか否か、即ち、表面板4が脱落しているか否かが容易に確認することができる。
【0049】
なお、フランジ片41のボルト接合や掛止め部42のリベット接合は、例示であり、機械的に接合されていれば良いことは云うまでもない。
【0050】
また、図6に示すように、床板2の床板本体20がフランジ片41の上に覆い被さり、フランジ片41の端部まで延設されている。このため、床板2で強度設計を行うことができ、様々な設計条件に柔軟に対応できる。また、表面板4に剛性が求められていないため、高価な高耐食性材料からなる表面板4を薄くすることができるとともに、吸音パネル1の軽量化を達成して運搬性が向上する。
【0051】
このように、表面板4のフランジ片41が梁材12の上フランジの上に載置されて機械的に接合されているので、吸音パネル1を取り替える際に恒久足場10内から仮置きまで行うことができ、足場下方の道路などに吸音パネル1を落下させるおそれを低減することができる。また、人力の一人作業で吸音パネル1を取り替えることが容易であり、取替コストを低減することができる。
【0052】
[変形例1]
次に、図7を用いて、本発明の別の実施形態である変形例1に係る吸音パネル1’のフランジ片41’と梁材12’との接合部分について説明する。図7は、変形例1に係る吸音パネル1’のフランジ片41’と梁材12’との接合部分を示す拡大断面図である。なお、同一構成は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0053】
変形例1に係る吸音パネル1’の接合部分が、前述の吸音パネル1と相違する点は、梁材12がH形鋼ではなくハット形の鋼材からなる梁材12’となっており、梁材12’のフランジにフランジ片41’が載置され、固定板5が床版2’の床板本体20’にボルト接合されて、ハット形の梁材12’の上面に当接した固定板5とハット形の梁材12’のフランジとの間に吸音パネル1が挟持されることで吸音パネル1’が固定されている点である。このように構成しても、恒久足場10内から目視で、表面板4’が梁材12’にボルト接合されている否かが目視により簡単に確認することができる。
【0054】
[変形例2]
次に、図8を用いて、本発明の別の実施形態である変形例2に係る吸音パネル1”のフランジ片41’と梁材12’との接合部分について説明する。図8は、変形例2に係る吸音パネル1”のフランジ片41’と梁材12’との接合部分を示す拡大断面図である。なお、同一構成は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0055】
変形例2に係る吸音パネル1”の接合部分が、前述の変形例1に係る吸音パネル1’と相違する点は、ハット形の梁材12’のフランジに、固定板5を介さずにフランジ片41’及び床板本体20’がボルト接合されている点である。このように構成しても、恒久足場10内から目視で、表面板4’が梁材12’にボルト接合されているか否かが目視により簡単に確認することができる。
【0056】
次に、図9図11を用いて、吸音パネルを取り替える際の仮置きの仕方について説明する。図9は、前述の図6で示した吸音パネル1を梁材12の上に仮置きする場合を示す説明図であり、図10は、前述の図7で示した吸音パネル1’を梁材12’の上に仮置きする場合を示す説明図である。また、図11は、前述の図6で示した吸音パネル1の一端に梁材12の下フランジを覆うカバー材6を取り付けて一体化した変形例3に係る吸音パネル1#を梁材12の上に仮置きする場合を示す説明図である。
【0057】
図9図10に示すように、表面板4,4’の形状、又は吸音パネル1,1’の形状が載置する両側の梁材12,12’の下フランジのいずれも隠蔽しない場合、吸音パネル1,1’は、そのまま置くだけでフランジ片41,41’が梁材12,12’のフランジに引っ掛かり容易に仮置きすることができる。
【0058】
また、図11に示すように、一端に梁材12の下フランジを覆うカバー材6を取り付けて一体化した変形例3に係る吸音パネル1#を梁材12に仮置きする場合、即ち、表面板4の形状、又は吸音パネル1#の形状が載置する両側の梁材12の下フランジの一方を隠蔽する場合は、カバー材6を取り付けた端部を下方にして先に挿し入れ、回転させてテンドン式に嵌め込むとフランジ片41が梁材12の上フランジに引っ掛かり容易に仮置きすることができる。
【0059】
つまり、本発明に係る表面板が梁材の少なくとも一方の下フランジの下面を隠蔽していない状態であれば、恒久足場10の内側から容易に吸音パネルを取り替えることができる。
【0060】
以上説明した本実施形態に係る足場用吸音パネル1,1’,1”,1#によれば、高架な吸音材を使用せずに、設置コストを抑えつつ恒久足場10が騒音の反射面となって騒音が遠くにまで到達してしまうという問題を解消し、騒音を低減することができる。また、吸音パネル1,1’,1”,1#によれば、取り替える際に足場内から仮置きまで行うことができ、足場下方の道路などに吸音パネルを落下させるおそれを低減することができる。その上、吸音パネル1,1’,1”,1#によれば、仮置きが容易なため人力の一人作業で吸音パネルを取り替えることが容易であり、取替コストを低減することができる。
【0061】
また、吸音パネル1,1’,1”,1#によれば、表面板4,4’が長方形状の長辺がいずれも折り返されて床板2を外側から内包して掛け止める構造となっているので、足場内から表面板4,4’が目視で掛け止められていることを確認することができる。
【0062】
それに加え、吸音パネル1,1’,1”,1#によれば、表面板4,4’が一枚の金属板から折り曲げ成形されているので、一枚の鋼板で前述の作用効果を達成しており、安全性が高い上、落下の危険のある表面板4,4’の接合部を全て足場内から目視により確認でき、その点でも落下防止の安全性が向上する。
【0063】
また、吸音パネル1,1’,1”,1#によれば、梁材12,12’の少なくとも一方の下フランジの下面が表面板4,4’で隠蔽されていないので、吸音パネル1,1’,1”,1#を梁材間に載置するだけ、又はケンドン式に嵌め込むだけで、仮置きができ、取替容易であるとともにさらに落下防止の安全性が向上する。
【0064】
さらに、吸音パネル1,1’,1”,1#によれば、表面板4,4’が錆びにくい高耐食性材料から形成されているので、足場外からの排気ガスや飛来塩分が直接触れるおそれが高い表面板の耐食性を向上させることができ、他パーツを安価で調達性の良い材料で作ることができる。このため、剛性が求められていない表面板4,4’を薄くすることで、単価の高い高耐食性材料の使用量を抑えて吸音パネル1,1’,1”,1#を安価に製造することができる。また、外部に露出する表面板4,4’をメンテナンスフリーとして点検不要とすることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態に係る足場用吸音パネルについて詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、梁材としてH形鋼とハット形の鋼材を例示して説明したが、足場を支えるだけの強度を有した山形鋼や溝形鋼など他の形状の鋼材でもよいことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1,1’,1”,1#:(足場用)吸音パネル
2,2’:床板
20,20’:床板本体
20a:溝
21:端部板
21a:貫通孔
22:ゴム材
23:取付レール
3:吸音材
4,4’:表面板
40:底面部
40a:貫通孔
41,41’:フランジ片
42:掛止め部
5:固定板
6:カバー材
10:恒久足場
11:吊り材
12,12’:梁材
B1:橋梁
B2:床版
G1:橋桁
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