(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143012
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】コンクリート養生装置およびコンクリート養生装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04G21/02 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055462
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】今泉 克彦
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172EA11
2E172EA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷却パイプに供給される冷媒の流量を制御して、冷却パイプにかかる圧力を調整しながらコンクリートを冷却すること。
【解決手段】コンクリート養生装置であって、冷却パイプ220,230,240に冷媒を連続供給する冷媒供給部と、冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプ261と、バイパスパイプに流れる冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブ262と、冷却パイプの両端に設けられた制御バルブ221,231,241,223,233,243と、冷却パイプに流れる冷媒の流量を制御する制御部250と、冷媒供給部から供給される冷媒の流れの方向を反転させるための方向反転機構270と、方向反転機構に流れる冷媒の流量を制御するための反転機構バルブ271と、を備え、制御部は、冷却パイプに流れる冷媒の流れの方向を反転させる場合に、反転機構バルブをさらに制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設後のコンクリートを冷却するために、前記コンクリートの内部に設置された少なくとも1つの冷却パイプに冷媒を連続供給する冷媒供給部と、
前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を調整する場合に、前記冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプと、
前記バイパスパイプに流れる前記冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブと、
前記バイパスバルブよりも下流側に設けられ、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御するため、前記少なくとも1つの冷却パイプの両端に設けられた制御バルブと、
前記バイパスバルブと前記制御バルブとの間に設けられた、前記冷媒供給部から供給される前記冷媒の流れの方向を反転させるための方向反転機構と、
前記方向反転機構に設けられ、前記方向反転機構に流れる前記冷媒の流量を制御するための反転機構バルブと、
前記バイパスバルブおよび前記制御バルブを制御して、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流れの方向を反転させる場合に、前記反転機構バルブをさらに制御するコンクリート養生装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記バイパスバルブを開いた後、前記制御バルブを開いた状態を維持しつつ、前記反転機構バルブを制御する請求項1に記載のコンクリート養生装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記制御バルブのうち、前記少なくとも1つの冷却パイプの上流側の端部に設けられた前記制御バルブを開いた状態で、前記冷媒の流量を調整しながら、下流側の端部に設けられた前記制御バルブを開いた状態を維持する、請求項2に記載のコンクリート養生装置。
【請求項4】
打設後のコンクリートを冷却するために、前記コンクリートの内部に設置された少なくとも1つの冷却パイプに冷媒を連続供給する冷媒供給部と、
前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を調整する場合に、前記冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプと、
前記バイパスパイプに流れる前記冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブと、
前記バイパスバルブよりも下流側に設けられ、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御するため、前記少なくとも1つの冷却パイプの両端に設けられた制御バルブと、
前記バイパスバルブと前記制御バルブとの間に設けられた、前記冷媒供給部から供給される前記冷媒の流れの方向を反転させるための方向反転機構と、
前記方向反転機構に設けられ、前記方向反転機構に流れる前記冷媒の流量を制御するための反転機構バルブと、
を備えたコンクリート養生装置の制御方法であって、
前記バイパスバルブおよび前記制御バルブを制御して、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップにおいて、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流れの方向を反転させる場合に、前記反転機構バルブをさらに制御する、コンクリート養生装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート養生装置およびコンクリート養生装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、水とセメントとの化学反応によって硬化する際に熱を発生する。特に、コンクリート打設後数日は、反応が急速に進み多量の熱が発生するため、熱の影響によりコンクリートのひび割れが生じる場合がある。そのため、コンクリート打設時のひび割れ対策として、パイプクーリングによってコンクリートの温度上昇を抑制して、ひび割れの低減が図られている。パイプクーリングを行う場合、パイプの配置やパイプ径、クーリング水の流量や温度設定等について適切に管理する必要がある。
【0003】
上記技術分野において、特許文献1には、コンクリートを冷却するために、パイプを循環させる流体の温度をコンクリートの外部温度と内部温度との温度差に基づいて、自動制御する技術が開示されている(同文献請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、コンクリートの内部温度と外部温度とに基づいた温度制御を行うものであり、冷却パイプに供給される冷媒の流量を制御して、冷却パイプにかかる圧力を調整しながらコンクリートを冷却することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生装置は、
打設後のコンクリートを冷却するために、前記コンクリートの内部に設置された少なくとも1つの冷却パイプに冷媒を連続供給する冷媒供給部と、
前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を調整する場合に、前記冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプと、
前記バイパスパイプに流れる前記冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブと、
前記バイパスバルブよりも下流側に設けられ、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御するため、前記少なくとも1つの冷却パイプの両端に設けられた制御バルブと、
前記バイパスバルブと前記制御バルブとの間に設けられた、前記冷媒供給部から供給される前記冷媒の流れの方向を反転させるための方向反転機構と、
前記方向反転機構に設けられ、前記方向反転機構に流れる前記冷媒の流量を制御するための反転機構バルブと、
前記バイパスバルブおよび前記制御バルブを制御して、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流れの方向を反転させる場合に、前記反転機構バルブをさらに制御する。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生装置の制御方法は、
打設後のコンクリートを冷却するために、前記コンクリートの内部に設置された少なくとも1つの冷却パイプに冷媒を連続供給する冷媒供給部と、
前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を調整する場合に、前記冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプと、
前記バイパスパイプに流れる前記冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブと、
前記バイパスバルブよりも下流側に設けられ、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御するため、前記少なくとも1つの冷却パイプの両端に設けられた制御バルブと、
前記バイパスバルブと前記制御バルブとの間に設けられた、前記冷媒供給部から供給される前記冷媒の流れの方向を反転させるための方向反転機構と、
前記方向反転機構に設けられ、前記方向反転機構に流れる前記冷媒の流量を制御するための反転機構バルブと、
を備えたコンクリート養生装置の制御方法であって、
前記バイパスバルブおよび前記制御バルブを制御して、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップにおいて、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流れの方向を反転させる場合に、前記反転機構バルブをさらに制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷却パイプに供給される冷媒の流量を制御して、冷却パイプにかかる圧力を調整しながらコンクリートを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置によるコンクリート養生の概要を説明するための図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置の構成を説明するための図である。
【
図3A】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置による冷却水の流れの順方向から逆方向への切り替えについて説明するためのバルブ開閉の遷移図である。
【
図3B】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート養生装置による冷却水の流れの逆方向から順方向への切り替えについて説明するためのバルブ開閉の遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
本発明の好ましい実施形態としてのコンクリート養生装置100について、
図1および
図2を参照して説明する。コンクリート養生装置100は、打設後のコンクリート110を冷却するために、コンクリート110の内部に配置された冷却パイプ122に水などの冷媒を供給する装置である。
【0012】
まず、
図1を参照して、コンクリート養生装置100の動作の概要を説明する。打設されたコンクリート110の内部に設置される冷却パイプ122は、コンクリート110の内部を冷媒が循環するように設置されている。そして、冷却パイプ122に接続された送水用パイプ121を介して冷媒供給装置120から冷媒を供給すると、供給された冷媒は、コンクリート110の内部を通過して、図示した例では、再び冷媒供給装置120へと戻ってくるようになっている。このように、コンクリート養生装置100においては、コンクリート110の内部に冷媒を流すことにより、コンクリート110を冷却している。
【0013】
また、冷媒供給装置120は、冷媒の供給を止めることなく、供給し続ける(連続供給)。そのため、冷却パイプ122に供給される冷媒の流量の調整は、冷却パイプ122のそれぞれに設けられた制御バルブ(不図示)の開閉度合により行われる。
【0014】
上述したように、コンクリート養生装置100においては、冷媒供給装置120から供給された冷媒が、再び、冷媒供給装置120に戻るような、冷媒が循環する循環型の養生装置となっているが、冷媒が循環しないものであってもよい。
【0015】
そして、コンクリート養生装置100は、冷却パイプ122に流す冷媒の流量を制御する際に、バイパスパイプ123に冷媒を流しつつ、冷却パイプ122に流す冷媒の流量を調整する。図示していないが、冷却パイプ122には、後述する制御バルブが取り付けられており、コンクリート養生装置100は、この制御バルブの開閉度を制御することにより、冷却パイプ122に流す冷媒の流量を調整している。
【0016】
冷却パイプ122に冷媒を流している状態では、制御バルブが取り付けられている部分には、高い水圧がかかっている状態となっている。このような状態において、制御バルブの開閉度を制御しようとすると、バルブ部分にかかる高水圧(衝撃圧)により、所望の流量制御が達成できない場合が発生する。そのため、このような高水圧を回避するために、一旦、バイパスパイプ123に冷媒を逃がしてやり、制御バルブにかかる圧力を低減させることにより、制御バルブによる冷媒流量の制御を容易に行えるようにしている。
【0017】
すなわち、冷却パイプ122に流れる冷媒の流量を調整したい場合には、バイパスパイプ123に設けられた後述するバイパスバルブ(不図示)を解放することにより、別の流路(バイパス経路)を形成して、冷却パイプ122にかかる水圧を低減する。このように、コンクリート養生装置100においては、バイパス経路を利用しつつ、冷却パイプ122に流れる冷媒の流量を制御している。
【0018】
また、冷媒供給装置120は、冷媒の供給を止めることなく、供給し続ける(連続供給)。そのため、冷却パイプ122に供給される冷媒の流量の調整は、冷却パイプ122のそれぞれに設けられた制御バルブ(不図示)の開閉度合により行われる。
【0019】
コンクリート養生装置100においては、冷媒供給装置120から供給された冷媒は、冷却パイプ122を通過し、再び、冷媒供給装置120に戻るような、冷媒が循環する循環型の養生装置となっているが、冷媒が循環しないものであってもよい。
【0020】
例えば、山間部などの現場において、付近に河川などの水源があれば、河川から冷媒としての水を取水し、冷却に使用した水を循環させずに、コンクリート110の冷却に使用した冷却水を取水した河川に戻すようにしてもよい。なお、冷媒を循環させる場合には、冷媒供給装置120に戻ってきた冷媒の温度を調節するための温度調整機構を設けるのが好ましい。
【0021】
ここで、冷却パイプ122に供給される冷媒は、水が代表的であるが、供給される冷媒はこれには限定されず、コンクリート110を冷却するのに適した他の液体であってもよい。また、冷却パイプ122に供給される冷媒は、液体には限定されず、例えば、ガスなどの気体であってもよい。
【0022】
次に、
図2を参照して、コンクリート養生装置100の構成の詳細について説明する。コンクリート養生装置100は、冷媒供給部(冷媒供給装置120に相当)としてのポンプ210、冷却パイプ220,230,240および制御部250を備えている。
【0023】
ポンプ210の流出口211から送出された冷媒としての冷却水は、第1送水用パイプ213を通過し、さらに、冷却パイプ220,230,240の流入口部分に設けられた制御バルブ221,231,241を通過して、冷却パイプ220,230,240に流れ込む。
【0024】
冷却パイプ220,230,240を通過した冷却水は、冷却パイプ220,230,240の流出口部分に設けられた制御バルブ223,233,243を通過する。そして、制御バルブ223,233,243を通過した冷却水は、冷却パイプ220,230,240の流出口部分に制御バルブ223,233,243を介して接続されている第2送水用パイプ214に流れ込む。第2送水用パイプ214に流れ込んだ冷却水は、第2送水用パイプ214を通過し、最終的に、ポンプ210の流入口212に到達し、ポンプ210へと戻される。
【0025】
なお、図示していないが、上述したように、第2送水用パイプ214と流入口212との間に、冷却パイプ220,230,240などを循環してきた冷却水を冷やすための冷却部(温度調節機構)を設けることが好ましい。冷却水を循環させない場合、第2送水用パイプ214を通過してきた冷却水を排水し、河川等の水源から取水した水を、ポンプ210の流入口212に供給するのが好ましい。また、図示したように、冷却パイプ220,230,240には、流量計222,232,242,224,234,244が設けられていることが好ましいが、設けられていなくてもよい。
【0026】
そして、制御部250は、制御バルブ221,231,241,223,233,243を制御して、冷却パイプ220,230,240に流れる冷却水の流量を制御する。制御部250は、例えば、流量計222,232,242で計測された冷却水の流量に応じて、制御バルブ221,231,241の開閉度合を制御し、冷却水の流量を調節する。また、流量計222,232,242が設けられていない場合には、制御バルブ221,231,241の開閉度と流量との関係を事前に計測しておき、制御部250は、これに基づいて、冷却水の流量を制御してもよい。なお、制御バルブ221,231,241は、ポンプ210から見て下流側に設けられており、制御バルブ223,233,243は、ポンプ210から見て上流側に設けられている。なお、上流側および下流側は、冷却水が、時計回りに流れる場合(順方向)を基準としている。つまり、冷却水が反時計回りに流れる場合(逆方向)には、上流側および下流側が入れ替わる。
【0027】
制御部250は、流量計222,232,242で計測された冷却パイプ220,230,240に流れる冷却水の流量に基づいて、それぞれの冷却パイプに220,230,240に流れる冷却水の流量を制御する。例えば、制御部250は、流量計222の計測値から他の冷却パイプ230,240に流す冷却水の流量を、冷却パイプ220に流れている冷却水の流量と同じ流量とする場合には、制御バルブ231,241の開度を、制御バルブ221の開度に所定係数(1.0)を乗じた開度とするようにして、流量を制御する。また、例えば、制御部250は、冷却パイプ230,240に流す冷却水の流量を冷却パイプ220に流れている冷却水の流量よりも小さくしたい場合には、制御バルブ231,241の開度を、制御バルブ221の開度に所定係数(例えば、0.8)を乗じた開度とするようにして、流量を制御する。
【0028】
冷却パイプ220,230,240に流れる冷却水の流量を制御する場合、制御バルブ221,231,241の開閉度を調節する前に、まず、制御部250は、バイパスバルブ262を開放する。そして、バイパスパイプ261に冷却水を流して、制御バルブ221,231,241側にかかる冷却水の水圧を低減させる。
【0029】
この場合、冷却水は、バイパス流路部260を流れ、ポンプ210へ戻ってくる。つまり、バイパスバルブ262を開放した場合、ポンプ210の流出口211から送出された冷却水は、第1送水用パイプ213を通過し、そのうちの一部の冷却水が、バイパスパイプ261側へ流れ込む。バイパスパイプ261へ流れ込んだ冷却水は、第2送水用パイプ214へ流れ込み、その後、ポンプ210の流入口212へ到達し、再度、ポンプ210の流出口211から第1送水用パイプ213へと送り出される。このように、バイパスバルブ262を開放すると、一部の冷却水が、バイパス流路部260を循環するようになり、冷却パイプ220,230,240へ流れ込む冷却水の流量が減少して、制御バルブ221,231,241,223,233,243へかかる圧力も減少する。
【0030】
上述したように、コンクリート養生装置100においては、ポンプ210から送出された冷却水は、3系統の冷却パイプ220,230,240に流れ込むように分岐され、より広い範囲を冷却できるようにしている。なお、ここでは、3系統に分岐された冷却パイプ220,230,240を例に説明したが、冷却パイプの分岐数は、3系統には、限定されず、1~2系統であっても、4系統以上であってもよく、冷却対象範囲の大きさなどに応じて、適宜決定すればよい。
【0031】
3系統の冷却パイプ220,230,240を通過した冷却水は、第2送水用パイプ214において、合流し、最終的には、ポンプ210の流入口212からポンプ210へ戻るような、循環経路を通過するようになっている。
【0032】
また、コンクリート養生装置100は、方向反転機構270をさらに備える。方向反転機構270は、冷却水の流れる方向を順方向(実線矢印)と逆方向(破線矢印)との間で反転させるための機構である。
【0033】
マスコンクリートのような、大規模なコンクリート建造物の場合、コンクリート110の内部に設置する冷却パイプ220,230,240の全長は長くなる傾向にある。このように、冷却パイプ220,230,240の全長が長くなると、各冷却パイプの入口付近の冷却水の温度と、出口付近の冷却水の温度とに差が生じる。そのため、入口付近のコンクリート110の冷却は、促進されるのに対して、出口付近においては、コンクリート110の冷却は、鈍化するようになる。
【0034】
すなわち、冷却パイプ220,230,240の全長が長くなると、内部を通過する冷却水は、入口付近では、より多くの熱を吸収して、コンクリート110をよく冷やすことができる。これに対して、出口付近では、冷却水は、そこに到達するまでの過程において、多くの熱を吸収してきているため、熱の吸収量が減り、コンクリート110の冷却能力が弱くなる。
【0035】
そのため、コンクリート養生装置100においては、方向反転機構270を設けて、冷却水の流れの方向を入れ替えることにより、冷却パイプ220,230,240の入口付近と出口付近とにおける温度差を解消できるようにしている。これにより、冷却パイプ220,230,240の入口付近と出口付近とにおける冷却効率やコンクリート温度の不均衡を是正できるようにしている。
【0036】
ここで、冷却水を順方向(実線矢印)に流す場合の流路について説明する。冷却水を順方向に流す場合、方向反転機構270における各バルブの開閉状況は、反転機構バルブ271,272が開(オープン)となり、反転機構バルブ273,274が閉(クローズ)となっている。
【0037】
そして、ポンプ210から送出された冷却水は、第1送水用パイプ213を流れ、反転機構バルブ272を直進し、分岐部235,245へ向けて流れていく。そして、冷却パイプ220,230,240を流れてきた冷却水は、第2送水用パイプ214で合流し、第2送水用パイプ214を流れ、反転機構バルブ271を直進し、ポンプ210の流入口212へと到達する。以上が、冷却水が順方向に流れる場合の流路となる。
【0038】
次に、冷却水を逆方向(破線矢印)に流す場合の流路について説明する。冷却水を逆方向に流す場合、方向反転機構270における各バルブの開閉状況は、反転機構バルブ271,272が閉(クローズ)となり、反転機構バルブ273,274が開(オープン)となっている。なお、方向反転機構270は、順方向において、ポンプ210から見て下流側で、ポンプ210と制御バルブ221,231,241との間に設けられている。
【0039】
そして、ポンプ210から送出された冷却水は、第1送水用パイプ213を流れていくが、反転機構バルブ272が閉じられているので、順方向の場合とは、異なる経路へ侵入する。冷却水は、反転機構バルブ274の方向、つまり、第1反転用パイプ275を進み、その後、第2送水用パイプ214における各分岐部から冷却パイプ220,230,240へ向けて進んで行く。
【0040】
冷却パイプ220,230,240を進んだ冷却水は、第1送水用パイプ213において、合流し、ポンプ210へ向けて第1送水用パイプ213を下って行く。その後、冷却水は、第2反転用パイプ516へ侵入し、反転機構バルブ273を通過し、第2送水用パイプ214へと戻る。その後は、第2送水用パイプ214を進んで、ポンプ210の流入口212へと到達する。以上が、冷却水が逆方向に流れる場合の流路となる。
【0041】
次に、
図3Aおよび
図3Bを参照して、制御部250による冷却水の流量制御および水流反転制御について説明する。制御部250は、制御バルブ221,231,241,223,233,243、バイパスバルブ262および反転機構バルブ271,272,273,274の開閉度や開閉を制御する。
【0042】
また、制御バルブ221,223は、冷却パイプ220両端に設けられ、制御バルブ231,233は、冷却パイプ230の両端に設けられ、制御バルブ241,243は、冷却パイプ240の両端に設けられている。なお、順方向上流側の制御バルブ221,231,241の3つの制御バルブは、まとめてVlと表し、順方向下流側の制御バルブ223,233,243の3つの制御バルブは、Vrと表す。
【0043】
<1.順方向→逆方向(
図3A)>
(1)まず、冷却水が順方向に流れている場合、バイパス回路のバイパスバルブ262は閉じられた状態となっており、反転機構のバルブのうち、反転機構バルブ271,272が開かれている。また、反転機構バルブ273,274は閉じられた状態となっている。冷却パイプ220,230,240の順方向における上流側の端部に設けられた制御バルブVlは、開かれているが、冷却パイプ220,230,240に流れる冷却水の流量は、調整された状態となっている。また、冷却パイプ220,230,240の順方向における下流側の端部に設けられた制御バルブVrは、開かれた状態が維持されている。
【0044】
(2)その後、冷却水の流れの方向を順方向から逆方向へと反転させる反転準備段階に入る。反転準備段階に入ると、バイパス回路(バイパス流路部260)に水流を導くため、バイパスバルブ262が開かれる。反転機構バルブ271,272は、開かれた状態となっており、反転機構バルブ273,274は、閉じられた状態となっている。冷却水の流れが順方向の場合における上流側に存在する制御バルブVlは、開かれているが、冷却パイプ220,230,240に流れる冷却水の流量は、調整された状態となっている。これに対して、下流側に存在する制御バルブVrは、開かれた状態となっている。反転準備段階においては、上述のようなバルブの開閉状態となっている。
【0045】
(3)次に、反転準備段階から反転段階へ入ると、バイパスバルブ262は、開かれた状態が維持される。バイパスバルブ262が開かれていることにより、制御バルブVlにかかる圧力が低減される。そして、反転機構バルブ271,272,273,274の全てが、閉じられた状態となる。制御バルブVl,Vrは、共に開かれた状態となる。この状態では、冷却水は、バイパス流路部260を循環していることとなる。
【0046】
(4)そして、反転段階から回復準備段階へと入る。回復準備段階では、バイパス回路に迂回させていた水流を元に戻す準備を行う。ここでは、バイパスバルブ262は、開かれた状態が維持される。反転段階において、全ての反転機構バルブ271,272,273,274が閉じられていたが、このうち、反転機構バルブ273,274が開かれ、反転機構バルブ271,272は閉じられた状態が維持される。すなわち、方向反転機構270のバルブのうち、水流を逆方向に導く反転機構バルブ273,274が開かれた状態となっている。これに伴い、制御バルブVrは、開かれた状態となっているが、冷却パイプ220,230,240へ流れる冷却水の流量は、調整された状態となっており、制御バルブVlは、開かれた状態となっている。
【0047】
(5)最後に、バイパスバルブ262が閉じられる。これにより、冷却水の方向が逆方向となる。冷却水が逆方向に流れている状態では、冷却水の流れが順方向の場合に開かれていた反転機構バルブ271,272は、閉じられ、反転機構バルブ273,274は、開かれた状態となる。そして、制御バルブVrは、開かれた状態となるが、冷却パイプ220,230,240に流れる冷却水の流量は、調整された状態となっている。また、制御バルブVlは、開かれた状態となっている。
【0048】
以上の手順を経て、冷却水の流れの方向が、順方向から逆方向へと切り替えられる。次に、冷却水の流れを逆方向から順方向へと戻す手順について説明する。基本的は、上述の手順とは逆の手順を経ることで、逆方向から順方向へと冷却水の流れの方向を戻すことができる。
【0049】
<2.逆方向→順方向(
図3B)>
(1)冷却水が逆方向に流れている場合、バイパス回路のバイパスバルブ262は閉じられた状態となっており、反転機構のバルブのうち、反転機構バルブ273,274が開かれており、反転機構バルブ271,272が閉じられた状態となっている。冷却パイプ220,230,240の逆方向における上流側の端部に設けられた制御バルブVrは、開かれているが、冷却パイプ220,230,240に流れる冷却水の流量は、調整された状態となっている。また、冷却パイプ220,230,240の逆方向における下流側の端部に設けられた制御バルブVlは、開かれた状態が維持されている。
【0050】
(2)次に、冷却水の流れの方向を逆方向から順方向から反転させる反転準備段階に入る。反転準備段階に入ると、バイパス回路(バイパス流路部260)に水流を導くため、バイパスバルブ262が開かれる。反転機構バルブ273,274は、開かれた状態となっており、反転機構バルブ271,272は、閉じられた状態となっている。冷却水の流れが逆方向の場合における上流側に存在する制御バルブVrは、開かれているが、冷却パイプ220,230,240に流れる冷却水の流量は、調整された状態となっている。これに対して、下流側に存在する制御バルブVlは、開かれた状態となっている。反転準備段階においては、上述のようなバルブの開閉状態となっている。
【0051】
(3)そして、反転準備段階から反転段階へ入ると、バイパスバルブ262は、開かれた状態が維持される。バイパスバルブ262が開かれていることにより、制御バルブVrにかかる圧力が低減される。そして、反転機構バルブは271,272,273,274の全てが閉じられた状態となる。制御バルブVl,Vrは、共に開かれた状態となる。この状態では、冷却水は、バイパス流路部260を循環していることとなる。
【0052】
(4)反転段階から回復準備段階へと入る。回復準備段階では、バイパス回路に迂回させていた水流を元に戻す準備を行う。ここでは、バイパスバルブ262は、開かれた状態が維持される。反転段階において、全ての反転機構バルブ271,272,273,274が閉じられていたが、このうち、反転機構バルブ271,272が開かれ、反転機構バルブ273,274は閉じられた状態が維持される。制御バルブVrは、開かれた状態となっており、制御バルブVlは、開かれた状態となっているが、冷却パイプ220,230,240へ流れる冷却水の流量は、調整された状態となっている。
【0053】
(5)最後に、バイパスバルブ262が閉じられ、冷却水の流れが逆方向の場合に開かれていた反転機構バルブ273,274は、閉じられ、反転機構バルブ271,272は、開かれた状態となる。そして、制御バルブVlは、開かれた状態となるが、冷却パイプ220,230,240へ流れる冷却水の流量は、調整された状態となっている。また、制御バルブVrは、開かれた状態となっている。
【0054】
以上の手順を経て、冷却水の流れの方向が、逆方向から順方向へと切り替えられる。このようにして、必要に応じて、冷却水の流れの方向を切り替えることができる。また、冷却パイプに係る圧力を低減しつつ、冷却水の流れの方向を切り替えることができる。
【0055】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0056】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。