(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143032
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20241003BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241003BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20241003BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
B60W30/10
G08G1/16 D
B60W40/06
B60W50/14
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055499
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】定村 哲志
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA12
3D241BA59
3D241BA60
3D241BB01
3D241BB16
3D241BB30
3D241BB43
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC11
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC33Z
3D241DC34Z
3D241DC37Z
3D241DC50Z
3D241DC59Z
3D241DD02Z
3D241DD13Z
5H181AA01
5H181AA05
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】カーブ路が連続する場合にドライバの操作に応じて車両の挙動を適切に制御すること。
【解決手段】車両用制御装置は、カーブ路を走行中において、カーブ路情報に基づく目標速度に車両の速度を近づけるように車両を減速させる減速制御と、目標速度に車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方である支援制御を行い、支援制御中においてドライバが支援制御を停止する操作を行った場合に、支援制御を停止する。車両用制御装置は、車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において支援制御中に支援制御を停止させる操作がされたときに、第1カーブ路に対する支援制御を実行する第1対象区間と、第2カーブ路に対する支援制御を実行する第2対象区間と、車両の位置とに基づいて、第2カーブ路に対する支援制御の作動を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向に存在するカーブ路に関するカーブ路情報を取得する取得部と、
前記車両が前記カーブ路の入口から前記入口から所定距離前までの区間を走行中または前記車両が前記カーブ路を走行中において、
前記カーブ路情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方である支援制御を行う制御部であって、前記支援制御中においてドライバが前記支援制御を停止する操作を行った場合に、前記支援制御を停止する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされたときに、前記第1カーブ路に対する支援制御を実行する第1対象区間と、前記第2カーブ路に対する支援制御を実行する第2対象区間と、前記車両の位置とに基づいて、前記第2カーブ路に対する支援制御の作動を制御する、
車両用制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1対象区間と前記第2対象区間とが重なる重畳区間が存在する場合において、
前記重畳区間において前記支援制御を停止させる操作がされたときに、前記第2カーブ路に対する支援制御を開始する、
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記車両が前記第2対象区間に重ならない前記第1対象区間に進入した場合に前記第1カーブ路に対する支援制御を開始し、
前記車両が前記重畳区間に進入した場合に前記第1カーブ路に対する支援制御を継続し、
前記重畳区間において前記支援制御を停止させる操作がされたとき、前記第1カーブ路に対する支援制御を停止して前記第2カーブ路に対する支援制御を開始する、
請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記重畳区間は、前記第1カーブ路上に設定される区間である、
請求項3に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2対象区間に重ならない前記第1対象区間において実行されている前記支援制御を停止させる操作がされたとき、前記支援制御を停止して、前記車両が前記第2対象区間に進入した場合に前記第2カーブ路に対する支援制御を開始する、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1対象区間と前記第2対象区間とが重なる重畳区間において前記支援制御を停止させる操作がされた場合に、前記操作がされたときから又は前記支援制御が停止したときから所定時間経過後又は前記車両が所定距離走行後に前記第2カーブ路に対する支援制御を開始させる、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記支援制御を停止させる操作は、ドライバの操作子に対する加速操作であり、
前記制御部は、
前記支援制御が実行されていない場合に、ドライバが前記操作子に対して第1操作度合の加速操作を行った場合に第1加速度合で前記車両を加速させ、
前記車両が他のカーブ路が所定距離以内に存在しない第3カーブ路を走行する予定である場合において、前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされて前記支援制御を停止した後、ドライバが前記操作子に対して前記第1操作度合の加速操作を行った場合に前記第1加速度合よりも小さい第2加速度合で前記車両を加速させ、
前記車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において、前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされて前記支援制御を停止した後、ドライバが前記操作子に対して前記第1操作度合の加速操作を行った場合に前記第2加速度合よりも小さい第3加速度合で前記車両を加速させ、または前記車両を加速させない、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項8】
コンピュータが、
車両の進行方向に存在するカーブ路に関するカーブ路情報を取得する処理と、
前記車両が前記カーブ路の入口から前記入口から所定距離前までの区間を走行中または前記車両が前記カーブ路を走行中において、
前記カーブ路情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方である支援制御を行う制御であって、前記支援制御中においてドライバが前記支援制御を停止する操作を行った場合に、前記支援制御を停止する処理と、
前記車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされたときに、前記第1カーブ路に対する支援制御を実行する第1対象区間と、前記第2カーブ路に対する支援制御を実行する第2対象区間と、前記車両の位置とに基づいて、前記第2カーブ路に対する支援制御の作動を制御する処理と、
を実行する車両制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
車両の進行方向に存在するカーブ路に関するカーブ路情報を取得する処理と、
前記車両が前記カーブ路の入口から前記入口から所定距離前までの区間を走行中または前記車両が前記カーブ路を走行中において、
前記カーブ路情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方である支援制御を行う制御であって、前記支援制御中においてドライバが前記支援制御を停止する操作を行った場合に、前記支援制御を停止する処理と、
前記車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされたときに、前記第1カーブ路に対する支援制御を実行する第1対象区間と、前記第2カーブ路に対する支援制御を実行する第2対象区間と、前記車両の位置とに基づいて、前記第2カーブ路に対する支援制御の作動を制御する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の状況に配慮した持続可能な輸送システムを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。例えば、車両の前方のカーブ路が単なるカーブ路であるか、S字カーブ又はクランク路であるかを予告するカーブ予告装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置では、カーブ路が連続する際のドライバの操作と車両の制御との関係については詳細に検討されていないことがあった。このため、カーブ路が連続する場合にドライバの操作に応じて車両の挙動を適切に制御することができないことがあった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、カーブ路が連続する場合にドライバの操作に応じて車両の挙動を適切に制御することができる車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。例えば、カーブ路が連続し、且つ車両の減速と車両のドライバへの報知(または警報)との一方または双方を行う支援制御が実行されているときに、ドライバが支援制御を解除する操作を行ったときに、操作と車両の位置とに応じた適切な制御を実行し、ドライバの運転を支援することができる。延いては乗員を配慮して、持続可能な輸送システムの発展への寄与することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両用制御装置は、車両の進行方向に存在するカーブ路に関するカーブ路情報を取得する取得部と、前記車両が前記カーブ路の入口から前記入口から所定距離前までの区間を走行中または前記車両が前記カーブ路を走行中において、前記カーブ路情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方である支援制御を行う制御部であって、前記支援制御中においてドライバが前記支援制御を停止する操作を行った場合に、前記支援制御を停止する制御部と、を備え、前記制御部は、前記車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされたときに、前記第1カーブ路に対する支援制御を実行する第1対象区間と、前記第2カーブ路に対する支援制御を実行する第2対象区間と、前記車両の位置とに基づいて、前記第2カーブ路に対する支援制御の作動を制御する。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記制御部は、前記第1対象区間と前記第2対象区間とが重なる重畳区間が存在する場合において、前記重畳区間において前記支援制御を停止させる操作がされたときに、前記第2カーブ路に対する支援制御を開始する。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記制御部は、前記車両が前記第2対象区間に重ならない前記第1対象区間に進入した場合に前記第1カーブ路に対する支援制御を開始し、前記車両が前記重畳区間に進入した場合に前記第1カーブ路に対する支援制御を継続し、前記重畳区間において前記支援制御を停止させる操作がされたとき、前記第1カーブ路に対する支援制御を停止して前記第2カーブ路に対する支援制御を開始する。
【0009】
(4):上記(3)の態様において、前記重畳区間は、前記第1カーブ路上に設定される区間である。
【0010】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記制御部は、前記第2対象区間に重ならない前記第1対象区間において実行されている前記支援制御を停止させる操作がされたとき、前記支援制御を停止して、前記車両が前記第2対象区間に進入した場合に前記第2カーブ路に対する支援制御を開始する。
【0011】
(6):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記制御部は、前記第1対象区間と前記第2対象区間とが重なる重畳区間において前記支援制御を停止させる操作がされた場合に、前記操作がされたときから又は前記支援制御が停止したときから所定時間経過後又は前記車両が所定距離走行後に前記第2カーブ路に対する支援制御を開始させる。
【0012】
(7):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記支援制御を停止させる操作は、ドライバの操作子に対する加速操作であり、前記制御部は、前記支援制御が実行されていない場合に、ドライバが前記操作子に対して第1操作度合の加速操作を行った場合に第1加速度合で前記車両を加速させ、前記車両が他のカーブ路が所定距離以内に存在しない第3カーブ路を走行する予定である場合において、前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされて前記支援制御を停止した後、ドライバが前記操作子に対して前記第1操作度合の加速操作を行った場合に前記第1加速度合よりも小さい第2加速度合で前記車両を加速させ、前記車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において、前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされて前記支援制御を停止した後、ドライバが前記操作子に対して前記第1操作度合の加速操作を行った場合に前記第2加速度合よりも小さい第3加速度合で前記車両を加速させ、または前記車両を加速させない。
【0013】
(8):本発明の他の態様に係る車両制御方法は、コンピュータが、車両の進行方向に存在するカーブ路に関するカーブ路情報を取得する処理と、前記車両が前記カーブ路の入口から前記入口から所定距離前までの区間を走行中または前記車両が前記カーブ路を走行中において、前記カーブ路情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方である支援制御を行う制御であって、前記支援制御中においてドライバが前記支援制御を停止する操作を行った場合に、前記支援制御を停止する処理と、前記車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされたときに、前記第1カーブ路に対する支援制御を実行する第1対象区間と、前記第2カーブ路に対する支援制御を実行する第2対象区間と、前記車両の位置とに基づいて、前記第2カーブ路に対する支援制御の作動を制御する処理と、を実行する。
【0014】
(9):本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、車両の進行方向に存在するカーブ路に関するカーブ路情報を取得する処理と、前記車両が前記カーブ路の入口から前記入口から所定距離前までの区間を走行中または前記車両が前記カーブ路を走行中において、前記カーブ路情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方である支援制御を行う制御であって、前記支援制御中においてドライバが前記支援制御を停止する操作を行った場合に、前記支援制御を停止する処理と、前記車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされたときに、前記第1カーブ路に対する支援制御を実行する第1対象区間と、前記第2カーブ路に対する支援制御を実行する第2対象区間と、前記車両の位置とに基づいて、前記第2カーブ路に対する支援制御の作動を制御する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
(1)-(9)の態様によれば、車両用制御装置、車両制御方法、プログラムは、第1カーブ路と第2カーブ路とを走行する予定である場合にドライバの操作に応じて車両の挙動を適切に制御することができる。
【0016】
(2)または(3)の態様によれば、車両用制御装置は、第1カーブ路に対する支援制御の停止と、第2カーブ路に対する支援制御の開始とを、適切に行うことができる。
【0017】
(6)の態様によれば、車両用制御装置は、前記重畳区間において前記支援制御を停止させる操作がされた場合に、前記操作がされたときから又は前記支援制御が停止したときから所定時間経過後又は前記車両が所定距離走行後に前記第2カーブ路に対する支援制御を開始させることにより、ドライバに第1カーブ路に対する支援制御が停止して第2カーブ路に対する支援制御が開始されたことを認識させることができる。
【0018】
(7)の態様によれば、車両用制御装置は、第1カーブ路と第2カーブ路とを車両が走行する場合において支援制御中に加速操作がされた場合に加速度を抑制、または加速をさせないことにより、連続するカーブ路に適した速度に車両を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る車両制御システムを利用した車両システム1の構成図である。
【
図3】ブレーキオーバライドについて説明するための図である。
【
図4】加速操作のオーバライドについて説明するための図である。
【
図5】ドライバの操作によるアクセルペダル開度について説明するための図である。
【
図6】パターン1およびパターン2の加速度の推移について説明するための図である。
【
図7】加速度が抑制されない場合の加速度の変化について説明するための図である。
【
図8】運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】複合カーブ走行時の制御について説明するための図である。
【
図10】曲率ゼロ(直線)とみなす処理について説明するための図である。
【
図11】複合カーブ走行時の制御について説明するための図である。
【
図12】支援制御が停止した場合の加速度合について説明するための図である。
【
図13】第1対象区間と第2対象区間とが重ならないシーンにつて説明するための図である。
【
図14】第1対象区間と第2対象区間とが重なるシーンにつて説明するための図である。
【
図15】第1対象区間と第2対象区間とが重なるシーンにつて説明するための図である。
【
図16】支援制御部150により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0021】
<実施形態>
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御システムを利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0022】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU60と、ドライバモニタカメラ70と、運転操作子80と、運転支援装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。運転支援装置100は「車両用制御装置」の一例である。
【0023】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0024】
レーダ装置12は、車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0025】
LIDAR14は、車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0026】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を運転支援装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま運転支援装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0027】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0028】
HMI30は、車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。HMI30は表示装置を備える。表示装置(表示部)は、例えば、車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられ、車両Mの走行速度を表す速度計(スピードメータ)または車両Mが備える内燃機関の回転数(回転速度)を表す回転速度計(タコメータ)など、車両Mにおける種々の情報を表示させるディスプレイ装置、いわゆるマルチインフォメーションディスプレイである。
【0029】
車両センサ40は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0030】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0031】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0032】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報、或いは車線の境界の情報等を含んでいる。第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。第2地図情報62には、カーブ路の位置や、カーブ路の曲率、カーブ路のカーブ半径、カーブ路の勾配などの情報が含まれている。これらの情報は、第1地図情報54に含まれていてもよい。また、第2地図情報62または第1地図情報54には、後述する第1対象区間と第2対象区間とが重畳するカーブ路であるか否かを示す情報が含まれていてもよい。
【0033】
ドライバモニタカメラ70は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ70は、車両Mの運転席に着座した乗員(以下、ドライバ)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置および向きで、車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。例えば、ドライバモニタカメラ70は、車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置の上部に取り付けられる。ドライバモニタカメラ70は、配置された位置から車両Mのドライバを含む車室内を撮影した画像を、運転支援装置100に出力する。
【0034】
運転操作子80は、例えば、ブレーキペダル82や、アクセルペダル84、ステアリングホイール、方向指示器の操作スイッチ、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量、或いは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、運転支援装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。ステアリングホイールは、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアリングホイールやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ブレーキペダル82には、ブレーキペダルセンサ(BPセンサ)86が取り付けられている。アクセルペダル84には、アクセルペダルセンサ(APセンサ)88が取り付けられている。
【0035】
BPセンサ86は、ドライバのブレーキペダル82に対する操作に応じた操作量を検出する。APペダルセンサ88は、ドライバのアクセルペダル84に対する操作に応じて変化するアクセルペダルの開度を検出する。
【0036】
運転支援装置100は、例えば、認識部110と、ドライバ認識部120と、カーブ判定部130と、操作情報処理部140と、支援制御部150と、記憶部190とを備える。これらの機能部の一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。カーブ判定部130は、取得部の一例であり、支援制御部150は、制御部の一例である。
【0037】
記憶部190は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。
【0038】
認識部110は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、或いは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0039】
認識部110は、例えば、車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部110は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。認識部110は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。認識部110は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0040】
認識部110は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部110は、例えば、車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部110は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0041】
ドライバ認識部120は、ドライバモニタカメラ70により撮像された画像に基づいて、ドライバが所定の状態であるか否かを検知する。所定の状態とは、後述するハンズオフ車線維持制御を実行可能な状態である。ハンズオフとはドライバがステアリングホイールを把持していない状態であり、ハンズオンとはドライバがステアリングホイールを把持している状態である。ハンズオフ車線維持制御が実行可能な状態とは、ドライバが前方(または車両Mの周辺)を監視している状態である。前方を監視とは、例えば、車両システム1による車両Mの制御からドライバによる車両Mの操作にドライバが迅速に引き継ぐことができるようにドライバが前方を監視していることである。前方を監視とは、例えば、ドライバの視線が前方を向いていることである。ドライバがハンズオンまたはハンズオフである否かは、不図示のステアリングホイールの把持状態を検出する把持センサの検出結果に基づいて判定される。
【0042】
カーブ判定部130は、車両Mの進行方向に存在するカーブ路に関するカーブ路情報を取得する。カーブ路情報とは、例えば、カーブ路の位置や、カーブ路の形状(例えば曲率、半径、勾配を含む)等に関する情報である。カーブ判定部130は、例えば、車両Mの位置と第2地図情報62から得られたカーブ路情報とに基づいて、車両Mに対するカーブ路の位置を特定する。カーブ判定部130は、カーブ路が複合カーブであるか否かを判定する。カーブ判定部130は、上記に代えて(または加えて)、認識部110の認識結果に基づいてカーブ路の位置や、形状、複合カーブなどを判定してもよい。複合カーブとは、第1カーブ路と第2カーブ路とが所定距離以内に位置するカーブ路である。詳細については後述する。
【0043】
操作情報処理部140は、車両Mのドライバの加速操作に関する操作情報を取得する。操作情報は、例えばAPペダルセンサ88から出力されたアクセルペダル開度を示す情報である。操作情報処理部140は、車両Mのドライバの減速操作に関する操作情報を取得する。例えば、操作情報処理部140は、BPセンサ86から出力されたブレーキペダルの操作量を示す情報を取得する。操作情報処理部140は、例えば、車両Mに搭載された機器に対するドライバの操作状態を取得する。操作情報処理部140は、例えば、ドライバが方向指示器72を点滅させる操作を行った場合、この操作がされたことを示す情報を取得する。
【0044】
支援制御部150は、車両Mの制御に関してドライバを支援する。支援制御部150は、例えば、ドライバの操作に依らずに自動で走行駆動力出力装置200およびブレーキ装置210を制御して、車両Mの速度を自動で制御する。支援制御部150は、いわゆるACC(Adaptive Cruise Control)を実行する。
【0045】
支援制御部150は、例えば、車両Mの前方であって車両Mから所定距離以内に他車両が存在しない場合、ドライバによって設定された速度や法定速度、道路に応じて予め設定された速度で車両Mが走行するように、ドライバの操作に依らずに自動で走行駆動力出力装置200およびブレーキ装置210を制御する。
【0046】
支援制御部150は、例えば、車両Mの前方であって車両Mから所定距離以内に他車両が存在する場合、他車両に追従するように、ドライバの操作に依らずに自動で走行駆動力出力装置200およびブレーキ装置210を制御する。追従とは、車両Mが、他車両の後方であって他車両から所定距離の位置を維持しながら走行することである。
【0047】
支援制御部150は、車両Mが走行車線から逸脱しないようにステアリング装置220を制御する。例えば、支援制御部150は、認識部110が認識した走行車線の中央または中央付近を車両Mが走行するようにステアリング装置220を制御する。支援制御部150は、例えば、ドライバがステアリングホイールを把持していない状態で車両Mの操舵を制御可能なハンズオフ車線維持制御、またはドライバがステアリングホイールを把持している状態で車両Mの操舵を制御可能なハンズオン車線維持制御を実行する。
【0048】
支援制御部150は、車両Mを自動で車線変更させる。支援制御部150は、例えば、車線変更のための軌道を生成し、生成した軌道に沿って車両Mが走行するように車両Mを車線変更させる。支援制御部150は、乗員に設定された目的地や、MPU60に出力された推奨車線に基づいて、車両Mを車線変更(ALC;オートレーンチェンジ)させる。
【0049】
支援制御部150は、ドライバによって車線変更の指示がされた場合、自動で車両Mを車線変更させてもよい。車線変更の指示とは、方向指示器の操作スイッチのレバー部の操作である。例えば、ドライバが、車両Mを車線変更させたい方向にレバー部が操作すると、操作に応じた方向に車両Mが車線変更する。車線変更の指示は、方向指示器の操作スイッチのレバー部の操作とは異なる操作であってもよい。例えば、所定の操作ボタンが押された場合、車線変更が行われてもよい。上記の支援制御部150の制御の一部または全部は省略されてもよい。
【0050】
更に、支援制御部150は、カーブ路に進入する場合またはカーブ路を走行中において、車両Mを、カーブ路に応じた速度に減速させたり、ドライバに減速に関する通知を行ったりして、カーブ路を滑らかに車両Mが走行できるようにドライバを支援する。以下、この制御を支援制御と称することがある。
【0051】
走行駆動力出力装置200は、車両Mが走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECUとを備える。ECUは、支援制御部150から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0052】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、支援制御部150から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。
【0053】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、支援制御部150から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0054】
[支援制御]
支援制御部150は、車両Mがカーブ路の入口から入口から所定距離前までの区間を走行中または車両Mがカーブ路を走行中において、カーブ路情報に基づく目標速度に車両Mの速度を近づけるように車両Mを減速させる減速制御と、目標速度に車両Mの速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方である支援制御を行う。支援制御部150は、支援制御中においてドライバが支援制御を停止する操作を行った場合に、支援制御を停止する。支援制御は、例えば、運転支援装置100が車両Mの速度を自動で制御していなく(例えばACCが作動していなく)ドライバが車両Mの速度を制御している場合に実行される処理である。目標速度は、カーブ路の形状やカーブ路の道路の法定速度などによって決定される速度である。
【0055】
支援制御の対象は、条件を満たすカーブ路であってもよい。条件とは、例えば、カーブ半径が所定の範囲内であることである。所定の範囲とは、車両Mが走行する際に減速が必要なカーブ半径である。
【0056】
支援制御は、車両Mの速度が所定の速度以下であることを条件に行われてもよい。所定の速度とは、カーブ路またはカーブ路の前後の道路の制限速度や推奨速度から所定速度以上乖離していない速度である。所定の速度は、例えば上記の制限速度や推奨速度に対して設定速度(例えば30km/h)が加算された速度である。
【0057】
支援制御は、路面の状態が基準を満たしている場合に行われてもよい。基準を満たすとは、例えば、路面が凍結していないなど制動動作に影響する事象が発生していないことである。例えば、認識部110が、物体認識装置16の検出結果に基づいて路面の状況を認識してもよいし、運転支援装置100が他の装置から提供された情報に基づいて路面の状況を認識してもよい。支援制御は、カーブ路の勾配が閾値未満である場合に行われてもよい。
【0058】
図2は、支援制御について説明するための図である。支援制御部150は、上記の区間の始点に到達した場合、第1減速度合で車両Mを減速させ、車両Mが更にカーブ路の入口に近づいた場合に第1減速度合より大きい第2減速度合で車両Mを減速させる。支援制御部150は、第1減速度合で車両Mを減速させた後、且つ第2減速度合で車両Mを減速させる前に、車両Mのドライバにカーブ路が近づいていることを示す報知(例えば第1警報)を開始する。以下、
図2を参照して具体的に説明する。
【0059】
時刻Tは、車両Mがカーブ路の入口から所定距離手前の位置Pに到達したタイミングである。所定距離手前は、目標速度に応じて予め設定された位置である。所定距離手前は、例えば車両Mの速度と目標速度との乖離が大きいほど、カーブ路の入口から遠い位置に設定される。所定距離手前は、後述するようにブレーキオーバライドまたはアクセルオーバライドが行われなかった場合に、予め設定された通知が行われる時間、予め設定された第1警報が行われる時間、および予め設定された第2警報が行われる時間が確保できる位置に設定される。
【0060】
車両Mは、位置Pを通過した後、位置P1、P2、P3を、この順で通過する。車両Mが位置Pに到達する時刻は時刻Tであり、車両Mが位置P1に到達する時刻は時刻T+1であり、車両Mが位置P2に到達する時刻は時刻T+2であり、車両Mが位置P3に到達する時刻は時刻T+3である。位置P2と位置P3との間に、カーブ路の入口が設けられている。カーブ路の入口とは、例えば、道路(車線)が曲がり始めた位置(Pc1)や、道路が閾値以上曲がった位置である。
【0061】
上記のT+3に対応する位置P3は、カーブ路ごとに予め設定された位置であってもよいし、カーブ路の曲率に基づいて、カーブ判定部130が求めた位置であってもよい。位置P3は、カーブ路において曲率が増加する傾向が終了する位置またはその付近に設定される。例えば、位置Pc1から位置P3までの区間S1は曲率が増加する傾向であり、位置P3を過ぎる区間では曲率が一定となる。上記のように曲率の変化に基づいて位置P3が設定される。なお、上記に代えて、位置P3は、曲率が増加する傾向が終了する地点に代えて、この地点から数メートル手前や数メートル後などに設定されてもよい。
【0062】
時刻Tにおいて、車両Mの速度が目標速度よりも大きい場合、支援制御部150は、通知をドライバに対して行い、車両Mを第1減速度合で減速させる。通知は、カーブ路をドライバに認識させる通知である。通知とは、例えば車両Mの速度が目標速度よりも大きい状態で車両Mがカーブ路に近づいたことの通知や、車両Mの速度を目標速度に近づけるように車両Mを減速させる支援制御を開始する通知などである。通知は、例えば、HMI30を介して行われる。通知は、画像による通知であってもよいし、音声または振動(例えばシートベルトを振動させること)による通知であってもよい。また、支援制御部150は、支援制御において、カーブ路の形状や車両Mが進行する方向を示す情報をHMIに表示させてもよい。
【0063】
時刻T+1において、支援制御部150は、第1警報をドライバに対して行う。第1警報は、ドライバにカーブ路を認識させる警報である。第1警報は、例えば、ドライバに対する警報であって車両Mの速度を目標速度に近づけるように車両Mを減速させる警報である。
【0064】
時刻T+2において、支援制御部150は、第2警報をドライバに対して行い、車両Mを第2減速度合で減速させて、時刻T+3において車両Mの速度を目標速度に合致させる。第2減速度合は、第1減速度合よりも大きい減速度合である。第2警報は、ドライバにカーブ路を認識させる警報である。第2警報は、ドライバに対する警報であって車両Mの速度を目標速度に近づけるように車両Mを減速させる警報である。第2警報は、第1警報よりも強度の強い警報である。強度が強い警報とは、ドライバが減速の必要性をより感じる態様の警報である。強度が強い警報は、例えば、支援制御部150が、ドライバにより減速を促す画像を提供したり、より大きい音声を出力したり、より大きい振動をドライバに与えたりすることである。
【0065】
上記のように、支援制御部150は、車両Mがカーブ路を走行するための支援を行う。これにより、車両Mが目標速度で滑らかにカーブ路を走行するように、ドライバの操作を支援することができる。
【0066】
[減速操作のオーバライド]
支援制御部150は、支援制御が行われているときにドライバがブレーキペダル82を所定の操作度合以上操作した場合、支援制御を停止してドライバの操作に応じてブレーキ装置210を制御して車両Mを減速させる。以下、この制御をブレーキオーバライドと称することがある。
【0067】
図3は、ブレーキオーバライドについて説明するための図である。車両Mは、カーブ路に接続する第1車線L1を走行している。第1車線L1は、カーブ路に接続しない第2車線L2に隣接する車線である。時刻Tから時刻T+2の間において、支援制御部150は、車両Mを第1減速度合で減速させ、HMI30を介して通知または第1警報を行う。ドライバは、車両Mが減速することにより車両Mの進行方向に関する重力(縦G)の変化を感じ、更にHMIを介した通知または第1警報により、カーブ路を近づいていることを認識する。ドライバが、上記の認識により、所定の操作度合以上且つ所定時間PT(例えば2秒や3秒など)、ブレーキペダル82を操作すると、時刻T+2#において支援制御が停止する。支援制御部150は、上記のようにブレーキペダル82が操作された場合、ドライバがカーブ路を認識し、且つカーブ路に応じた速度に車両Mを減速させようとしているとみなし、支援制御を停止する。これにより、通知や警報が停止し、更に支援制御部150による減速の制御が停止する。
【0068】
例えば、カーブ路を認識していなくても、通知や警報によって、ドライバは反射的にブレーキペダル82を操作することがある。この場合に、ブレーキオーバライドすることは適切でない。本実施形態では、上記のように、所定の操作度合以上且つ所定時間PT、ドライバがブレーキペダル82を操作した場合に、支援制御が停止することで、ドライバにカーブ路を認識させてからブレーキオーバライドを成立させることができる。このように、支援制御部150は、適切なタイミングで支援制御を停止することができる。
【0069】
[加速操作のオーバライド]
支援制御部150は、支援制御が作動していないときにドライバが加速操作を行ったことを示す情報を取得した場合、車両Mを第1加速度で加速させ、支援制御を行っているときに、上記の加速操作を行ったことを示す情報を取得した場合、第1加速度よりも加速度を抑制した第2加速度で車両Mを加速させる。このようにアクセルオーバライドがされる。
【0070】
図4は、加速操作のオーバライドについて説明するための図である。時刻Tx1において、支援制御部150は、支援制御を開始させ、車両Mを減速させることを開始する。時刻Tx2において、ドライバが車両Mを加速させるために、アクセルペダル84の操作を開始した。時刻Tx3において、アクセルペダル84の操作がアクセルオーバライドの条件を満たすと(AP O/R状態)、支援制御部150は、車両Mの加速度が所定の加速度に到達するまで、第2加速度で車両Mを加速させる。
図4の例では、時刻Tx3から時刻Tx4までの期間において、支援制御部150は、第2加速度で車両Mを加速させる。アクセルオーバライドの条件は、後述する条件を満たしたことであってもよいし、アクセルペダル開度が閾値に到達したことであってもよい。
【0071】
所定の加速度とは、例えば、上記のように加速度を抑制しない場合において、アクセルペダル開度に応じた加速度である。換言するとアクセルペダル開度(アクセルペダルの操作量)に応じた車両Mの本来の加速度である。ドライバのアクセルペダルの操作量が大きいほど、所定の加速度は大きく、ドライバのアクセルペダルの操作量が小さいほど、所定の加速度は小さい。このように、支援制御部150は、アクセルペダルに対する操作量に応じた加速度に到達するまで車両Mを加速させる。
【0072】
図5および
図6を参照して、第1加速度および第2加速度について説明する。
図5は、ドライバの操作によるアクセルペダル開度について説明するための図である。縦軸はアクセルペダル開度であり、横軸は時間である。例えば、支援制御が実行されていたと想定した場合(パターン1の場合)、および支援制御が実行されていないと想定した場合(パターン2の場合)において、ドライバがアクセルペダルを操作して(第1操作度合の加速操作を行い)、
図5に示すようにアクセルペダル開度が推移したものとする。時刻Tx3から時刻Tx4におけるアクセルペダル開度の推移を示している。この場合、
図6に示すように加速度が変化する。
【0073】
図6は、パターン1およびパターン2の加速度の推移について説明するための図である。縦軸は加速度であり、横軸は時間である。パターン1の加速度(第2加速度)は、パターン2の加速度(第1加速度)よりも抑制される。アクセルペダル開度がパターン1およびパターン2で同様に変化しても、パターン1では、パターン2よりも加速度の上昇が抑制され、パターン2の場合よりも時間をかけて、車両Mの速度が所定の加速度に到達するように制御される。
【0074】
上記のパターン1の加速度は、例えば、ドライバが意図しない加速がされた場合であっても、ドライバが所定時間以内に加速を抑制できる加速度である。例えば、意図しない加速がされた場合に、ドライバがアクセルペダルに置いていた足をアクセルペダルから離して、ブレーキペダル82に足を移動させるまでの移動時間が考慮される。パターン1の加速度は、例えば、上記のように移動時間後にブレーキ操作がされた場合に、所定時間以内に加速が抑制可能な(車両Mを減速させることが可能な)加速度以下に設定される。
【0075】
上記のパターン1の加速度は、ACCが実行されているときにオーバライドが成立した場合の加速度よりも抑制された加速であってもよい。例えば、ACCが実行されているとき、アクセルペダル84に対する操作が条件を満たした場合、支援制御部150は、ACCを停止して、ドライバのアクセルペダル84に対する操作に応じて車両Mを加速させる。この時の加速度は、パターン1の加速度(第2加速度)よりも大きい加速度であってもよい。
【0076】
支援制御部150は、設定期間におけるドライバのアクセルペダルの操作態様に応じて、上記のパターン1の加速度を調整してもよい。支援制御部150は、設定期間におけるドライバのアクセルペダルの操作量または操作速度に応じて、パターン1の加速度を調整する。設定期間とは、アクセルオーバライドが成立する前、アクセルオーバライドが成立したとき、またはアクセルオーバライドが成立した後のうちいずれか、これらの期間の組み合わせ、これらの期間を含む所定期間である。
【0077】
例えば、操作速度が速いほど、パターン1の加速度はパターン2の加速度に近づくように調整される。例えば、操作量が大きいほどパターン1の加速度はパターン2の加速度に近づけくように調整される。支援制御部150は、操作速度または操作量に応じたゲインをパターン1の加速度に加えて加速度を調整する。これにより、支援制御部150は、ドライバの意図を反映した車両Mの制御を実現することができる。
【0078】
支援制御部150は、例えば、支援制御が作動していないときに、目標速度に車両Mを近づける第1加速操作が行われたことを示す第2情報を取得した場合、第1加速度で車両Mを加速させて第1時刻に車両Mの加速度を目標加速度に到達させる。支援制御部150は、支援制御を行っているときに第1加速操作が行われたことを示す第2情報が取得された場合、第1加速度よりも加速度を抑制した第2加速度で車両Mを加速させて第1時刻よりも後の第2時刻に車両Mの加速度を目標加速度に到達させる。このように、支援制御部150は、アクセルオーバライドを行っても、より加速度を抑制して、なだらかに(長い時間を掛けて)ドライバが意図する加速度に近づくように車両Mの加速度を制御する。これにより、支援制御部150は、車両Mの加速度が目標加速度から乖離することを抑制し、より確実に車両Mの加速度をドライバの意図する加速度に近づけることができる。
【0079】
[比較例]
図7は、加速度が抑制されない場合の加速度の変化について説明するための図である。
図7に示すように、加速度が抑制されない場合、ドライバが意図した加速度よりも大きい加速度で車両Mが加速することがある。時刻Tx2から時刻Tx3の間で支援制御が継続中に、ドライバは、アクセルペダルを踏んでいるが支援制御により加速が抑制されているため、更に強くアクセルペダルを踏むことがある。この結果、アクセルペダルオーバライドが成立し、ドライバが意図した加速度を超える加速度(
図7のAC)で車両Mが加速することがある。
【0080】
これに対して、本実施形態では、
図4-
図6で説明したように、支援制御部150が、支援制御のアクセルオーバライドにおいて、加速度を抑制するため、ドライバが意図した加速度で車両Mを加速させることができる。この結果、支援制御部150は、ドライバの意図に応じた車両Mの制御を実現することができる。
【0081】
[アクセルオーバライドの条件]
支援制御部150は、支援制御中において、ドライバのアクセルペダルに対する操作量とアクセルペダルの操作速度とのうち一方または双方を示す操作情報が条件を満たす場合に支援制御を停止して車両Mを加速させる。条件は、例えば、(1)から(3)のうちいずれかである。
(1)所定期間の操作量が第1閾値に到達したことである。
(2)第2閾値以上の操作速度でアクセルペダルが操作され且つ操作量が第3閾値に到達したことである。例えば、ドライバがアクセルペダルをキックダウンした場合に(2)が成立する。第3閾値は、例えば、第1閾値よりも大きい閾値である。
(3)第4閾値以上の操作量の操作が複数回されたことである。第4閾値は、例えば、第1閾値よりも大きい閾値である。
【0082】
上記の(1)は、アクセルペダルに対する操作量の累計値に基づいて判定されてもよい。支援制御部150は、所定期間におけるアクセルペダル開度の累計変化量(操作量)が閾値に到達した場合に、アクセルオーバライドを成立させる。累計変化量とは、例えば、車両Mを加速させるようにアクセルペダル84が操作されたことに応じたアクセルペダル開度の変化量(操作量)である。累計変化量は、例えば、ドライバがアクセルペダル84を踏み込んだ踏込量の累積値である。上記のように、支援制御部150は、所定度合以上の操作量でアクセルペダル84が操作され、その踏込量の累計が所定期間以内で閾値に到達した場合、アクセルオーバライドを成立させる。
【0083】
上記のように、支援制御部150は、加速度を抑制することで車両Mを安定させ、ドライバの意図した加速度に車両Mを制御することができる。
【0084】
[支援制御に関するフローチャート]
図8は、運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理の順序は入れ替えられてもよいし、処理の一部は省略されてもよい。
【0085】
まず、運転支援装置100は、車両Mの位置から所定距離前方にカーブ路が存在するか否かを判定する(ステップS100)。カーブ路が存在する場合、運転支援装置100は、カーブ路が条件を満たすカーブ路であるか否かを判定する(ステップS102)。カーブ路が条件を満たすカーブ路である場合、運転支援装置100は、車両Mの速度が条件を満たすか否かを判定する(ステップS104)。ステップS100、S102、またはS104の判定が否定的であった場合、本フローチャートの1ルーチンの処理が終了する。
【0086】
車両の速度が条件を満たす場合、運転支援装置100は、車両Mが第1位置(例えば
図2の位置P)に到達したか否かを判定する(ステップS106)。車両Mが第1位置に到達した場合、運転支援装置100は、通知を行い(ステップS108)、第1減速度合で車両Mを減速させる(ステップS110)。
【0087】
次に、運転支援装置100は、車両Mが第2位置(例えば
図2の位置P1)に到達したか否かを判定する(ステップS112)。車両Mが第2位置に到達した場合、運転支援装置100は、第1警報を行う(ステップS114)。次に、運転支援装置100は、車両Mが第3位置(例えば
図2の位置P2)に到達したかを判定する(ステップS116)。
【0088】
車両Mが第3位置に到達した場合、運転支援装置100は、第2警報を行い(ステップS118)、第2減速度合で車両Mを減速させる(ステップS122)。次に、車両Mの速度が目標速度に到達したか否かを判定する(ステップS122)。車両Mの速度が目標速度に到達していない場合、ステップS118の処理に戻る。車両Mの速度が目標速度に到達した場合、運転支援装置100は、車両Mの減速を停止する(ステップS124)。これにより、本フローチャートの1ルーチンの処理が終了する。
【0089】
上記のように、運転支援装置100は、車両Mおよびカーブ路が条件を満たす場合に、支援制御(ステップS106-S124)を実行することにより、車両Mがカーブ路をより滑らに走行することができるようにドライバを支援することができる。
【0090】
上記のフローチャートの処理において、ブレーキオーバライドまたはアクセルオーバライドが成立した場合、支援制御は停止する。
【0091】
[複合カーブ路が存在する場合における制御]
支援制御部150は、車両Mが第1カーブ路と第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路を走行する予定である場合において支援制御中に支援制御を停止させる操作がされたときに、第1カーブ路に対する支援制御(第1支援制御)を実行する第1対象区間と、第2カーブ路に対する支援制御(第2支援制御)を実行する第2対象区間と、車両Mの位置とに基づいて、第2支援制御の作動を制御する。所定距離以内に存在とは、例えば、第1対象区間と第2対象区間とが重畳するように第1カーブ路と第2カーブ路とが存在することである。例えば、支援制御部150は、第1対象区間と第2対象区間とが重なる重畳区間が存在する場合において、重畳区間において支援制御を停止させる操作がされたときに、第2支援制御を開始する。
【0092】
第1カーブ路と第2カーブ路とが所定距離以内か否かを示す情報(複合カーブであるか否かを示す情報)や、第1カーブ路と第2カーブ路とに対応する領域などは、第1地図情報54または第2地図情報62に記憶されていてもよいし、カーブ判定部130が、第1地図情報54または第2地図情報62に記憶されているカーブ路の曲率や形状に基づいて、複合カーブおよび複合カーブに含まれるカーブ路の領域を判定してもよい。例えば、カーブ判定部130は、曲率が予め規定された規則に一致または合致するように変化する形状の道路を1つのカーブ路と判定する。カーブ判定部130は、例えば、第1曲率、第2曲率、第3曲率の順(曲率が大、小、大の順)で変化するような道路を複合カーブと判定する。第2曲率は、第1曲率および第3曲率よりも小さい曲率である。
【0093】
[複合カーブ走行時の制御(その1)]
支援制御部150は、車両Mが第2対象区間に重ならない第1対象区間に進入した場合に第1カーブ路C1に対する支援制御を開始し、車両Mが重畳区間に進入した場合に第1カーブ路C1に対する支援制御を継続し、重畳区間において第1カーブ路C1に対する支援制御を停止させる操作がされたとき、第1カーブ路C1に対する支援制御を停止して第2カーブ路C2に対する支援制御を開始する。上記の重畳区間は、第1カーブ路C1上に設定される区間である。
【0094】
図9は、複合カーブ走行時の制御について説明するための図である。時刻Tにおいて、車両Mが第1カーブ路C1に近づいたため、支援制御部150が、第1カーブ路C1に対する支援制御を開始する。その後、ドライバが、アクセルオーバライドを行って支援制御を停止した。支援制御の停止は、ブレーキオーバライドであってもよいし、所定の操作ボタンの操作であってもよい。
【0095】
時刻T+1において、支援制御部150は、
図10に示すように支援制御の停止の操作がされた位置(または支援制御が停止した位置)からカーブ路C1の末尾(例えば曲率が閾値以下となる地点)までの区間Sを曲率ゼロ(直線)とみなす。
図9に示すように、時刻T+2において、車両Mが第2カーブ路C2に対する支援制御の開始位置に到達していれば、支援制御部150は、第1カーブ路C1に車両Mが存在していても、第2カーブ路C2に対する支援制御を実行する。
【0096】
例えば、第1カーブ路C1に対する支援制御が実行中のとき、支援制御がドライバの操作によって停止しても、ドライバは、第2カーブ路C2を認識していないことがある。このため、支援制御部150は、第1支援制御を停止しても、第2支援制御を作動させる。例えば、第1カーブ路C1を退出した後に第2支援制御を開始すると、第1カーブ路C1と第2カーブ路C2とが近い場合、第2支援制御を適切に行えないことがある。例えば、段階的な警報や減速を行えないことがある。
【0097】
これに対して、本実施形態では、支援制御部150は、ドライバが支援制御を停止しても、第2支援制御を実行するため、ドライバに確実に第2カーブ路C2を認識させつつ、適切に第2支援制御を行うことができる。
【0098】
[複合カーブ走行時の制御(その2)]
支援制御部150は、重畳区間において支援制御を停止させる操作がされたときに、上記の操作がされてから設定時間後に第2カーブ路C2に対する支援制御を開始させてもよい。
【0099】
図11は、複合カーブ走行時の制御について説明するための図である。時刻Tにおいて、車両Mが第1カーブ路C1に近づいたため、支援制御部150が、第1支援制御を開始する。その後、ドライバが、アクセルオーバライドを行って支援制御を停止した
【0100】
時刻T+1において、支援制御部150は、第1支援制御の停止した位置P11(または停止の操作がされた位置)が、第2支援制御を開始する位置P10を通過している。この場合、位置P11から所定時間経過後または車両Mが所定距離走行した後に、支援制御部150は、第2支援制御を開始する。所定時間は、例えば0.5秒や、1秒など所定の短い時間である。
【0101】
例えば、第1支援制御が停止しても第2支援制御が継続すると、ドライバは第1カーブ路C1のオーバライドが完了していないと勘違いして、再度、オーバライドを行おうとすることがある。この再度のオーバライドは、第2支援制御のオーバライドとなり、第2支援制御を適切に行えないことがある。
【0102】
これに対して、本実施形態では、支援制御部150は、停止の操作がされたときから又はドライバが支援制御を停止してから、所定時間後または車両Mが所定距離走行した後に第2支援制御を開始するため、ドライバに第2支援制御の開始を適切に伝えることができ、第2支援制御を適切に行うことができる。
【0103】
上記の処理において、支援制御部150は、第2支援制御を開始する場合、HMI30を介して第2支援制御を開始することを通知してもよい。更に、この通知がされる場合は、上記のように上記の所定時間を短くしたり、所定時間を省略して、第1支援制御が停止した後に第2支援制御が開始されたりしてもよい。
【0104】
[加速の抑制について]
上記の処理において、支援制御部150は、車両Mが他のカーブ路が所定距離以内に存在しないカーブ路(第3カーブ路)を走行する予定である場合において、支援制御中に支援制御を停止させる操作がされて支援制御を停止した後、ドライバが操作子に対して第1操作度合の加速操作を行った場合に第1加速度合よりも小さい第2加速度合で車両を加速させる。支援制御部150が、車両Mが第1カーブ路と第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において、支援制御中に支援制御を停止させる操作がされて支援制御を停止した後、ドライバが操作子に対して第1操作度合の加速操作を行った場合に第2加速度合よりも小さい第3加速度合で車両Mを加速させ、または車両Mを加速させない。
【0105】
上記の第3加速度合は、
図12に示すようなパターン1の加速度合よりも小さいパターン3の加速度合である。
図12は、第3加速度合(パターン3の加速度合)について説明するための図である。
図6との相違点を中心に説明する。
図12に示すようにパターン3の加速度合は、パターン1の加速度合およびパターン2の加速度合よりも小さい。支援制御が実行されていない場合において第1操作度合の加速操作がされた場合は、パターン2の加速度合の推移のように加速度が上昇する。カーブ路が連続しないカーブ路を車両Mが走行する場合において支援制御が実行されているときにアクセルオーバライドが成立して第1操作度合の加速操作がされた場合は、パターン1の加速度合の推移のように加速度が上昇する。複合カーブを車両Mが走行する場合において支援制御が実行されているときにアクセルオーバライドが成立して第1操作度合の加速操作がされた場合は、パターン3の加速度合の推移のように加速度が上昇する。
【0106】
上記のように支援制御部150は、車両Mが走行する道路に応じて操作に応じた加速度の変化量を決定してもよい。例えば、第1カーブ路C1を走行した後に、第2カーブ路C2を走行する場合は、支援制御部150は、他の場合よりもドライバの操作に応じた加速度の変化を抑制する。これにより車両Mが第2カーブ路C2を走行するときに適した速度から車両Mの速度が乖離することが抑制される。
【0107】
[具体的なシーン(1)]
支援制御部150は、第2対象区間に重ならない第1対象区間において実行されている支援制御を停止させる操作がされたとき、支援制御を停止して、車両Mが第2対象区間に進入した場合に第2カーブ路に対する支援制御を開始する。
【0108】
図13は、第1対象区間と第2対象区間とが重ならないシーンにつて説明するための図である。
図13では、第1カーブ路C1において第2対象区間が含まれるが、第1対象区間と第2対象区間とが重畳しない。
(1-1)第1対象区間において第1支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、第1支援制御を停止する。
(1-2)第1支援制御が停止または終了した後、車両Mが第2対象区間に進入した場合、支援制御部150は、第2支援制御を開始する。
(1-3)第2対象区間において第2支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、第2支援制御を停止する。
【0109】
上記のように第1対象区間と第2対象区間とが重畳しない場合、支援制御部150は、それぞれの区間における支援制御の作動または停止を制御する。
【0110】
[具体的なシーン(2)]
図14は、第1対象区間と第2対象区間とが重なるシーンにつて説明するための図である。
図14では、第2支援制御の第1減速、警報、第2減速が行われる区間が第1対象区間と重なる。支援制御を停止する操作がされない場合は、支援制御部150は、第1対象区間において第1支援制御を実行し、重畳区間を退出した後に第2対象区間において第2支援制御を開始する。上記において支援制御を停止する操作がされた場合は、以下のように制御される。
【0111】
(2-1)第1対象区間において第1支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、第1支援制御を停止する。
(2-2)第1対象区間と重ならない第2対象区間において第2支援制御を停止する操作がされた場合、車両Mが第1カーブ路C1を走行中であっても、支援制御部150は、第2支援制御を停止する。
【0112】
(2-3)第1対象区間と第2対象区間とが重なる重畳区間において支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、第1支援制御を停止する操作とみなして、第1支援制御を停止して、停止から所定時間後に第2支援制御を開始する。例えば、停止から所定時間後に第2支援制御のうち実行される対象の制御が行われる。例えば、第2支援制御の第1減速、警報、および第2減速が行われる予定のタイミングが、所定時間後であった場合は、第2支援制御の第1減速、警報、および第2減速が行われる。例えば、第2支援制御の第1減速および警報が行われる予定のタイミングが、所定時間後であった場合は、第2支援制御の第1減速および警報が行われる。
【0113】
例えば支援制御においてHMI30にはカーブの形状が表示される。S字カーブの場合は、上記のカーブの方向が反対方向になり、次にカーブが存在することをドライバは容易に認識することができる。しかし、同じ方向のカーブ路が連続する場合は、表示は切り替わらないため、上記のように所定時間後に第2支援制御が開始されることで、ドライバは、次のカーブ路に対する第2支援制御であることを容易に認識することができる。
【0114】
上記の(2-3)において、支援制御を停止する操作がされた場合、所定時間、開始が停止する対象は警報とされ、第2減速は、所定時間開始を遅延させる対象とされなくてもよい。例えば、重畳区間において、第2支援制御の第2減速が行われる区間において第1支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、第2減速を継続した状態で所定時間警報音を停止した後、第2支援制御の警報を開始してもよい。例えば、減速度の変化がない場合であっても、警報音を停止することで、ドライバに第2支援制御の開始を認識させつつ、車両Mの速度を適切に制御することができる。
【0115】
重畳区間における第2支援制御の第2減速が行われる区間を除いた第2支援制御の警報がされる区間(
図14のX)において第1支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、所定時間警報音を停止し、所定時間が経過する前に、第2支援制御の第2減速を開始するタイミングが到来した場合は、第2減速を開始してもよい。これにより、警報音の停止でドライバに第2支援制御の開始を認識させつつ、車両Mの速度を適切に制御することができる。
【0116】
なお、重畳区間における第1支援制御の第1減速の区間と第2対象区間の第1減速の区間とが重畳する区間で支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、第1減速を所定時間停止した後に第2支援制御を開始する。
【0117】
上記のように第1対象区間と第2対象区間とが重畳する場合において、支援制御部150は、ドライバに第2支援制御の開始を認識させつつ、第2支援制御を実行することで、カーブ路が連続する場合にドライバの操作に応じて車両の挙動を適切に制御することができる。
【0118】
[具体的なシーン(3)]
図15は、第1対象区間と第2対象区間とが重なるシーンにつて説明するための図である。
図15では、第2支援制御の第1減速が行われる区間が第1支援制御の警報または第2減速が行われる区間と重なる。支援制御を停止する操作がされない場合は、支援制御部150は、第1対象区間において第1支援制御を実行し、重畳区間を退出した後に第2対象区間において第2支援制御を開始する。上記において支援制御を停止する操作がされた場合は、以下のように制御される。
【0119】
(3-1)第2対象区間と重ならない第1対象区間において第1支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、第1支援制御を停止する。
(2-2)車両Mが第1カーブ路C1を走行中であり、第1対象区間と重ならない第2対象区間において第2支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、第2支援制御を停止する。
【0120】
(3-3)第1対象区間と第2対象区間とが重なる重畳区間である第2支援制御の第1減速に対応する区間において支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、第1支援制御を停止する操作とみなして、第1支援制御を停止して、停止から所定時間後に第2支援制御を開始する。
図15に示すように重畳区間における第2支援制御の対象は第1減速である。この重畳区間で第1支援制御が停止した場合、支援制御部150は、所定時間、第2支援制御の第1減速を行わずに、所定時間後に第2支援制御の第1減速、あるいは第1減速および警報を開始する。
【0121】
上記の(3-3)において、重畳区間である第2支援制御の第1減速に対応する区間において第1支援制御を停止する操作がされた場合、支援制御部150は、上記のように所定時間後に第2支援制御の第1減速を開始することに代えて、即時または所定時間が経過する前に第2支援制御の第1減速を開始してもよい。この場合、第1支援制御の第2減速から、第2支援制御の第1減速に切り替わるため、速度の変化でドライバは第2支援制御に移行したことを認識することができる。具体的には、比較的大きい減速度から比較的小さい減速度に移行するため、ドライバは支援制御の切り替わりを認識することができる。
【0122】
上記のように第1対象区間と第2対象区間とが重畳する場合において、支援制御部150は、ドライバに第2支援制御の開始を認識させつつ、第2支援制御を実行することで、カーブ路が連続する場合にドライバの操作に応じて車両の挙動を適切に制御することができる。
【0123】
[フローチャート]
図16は、支援制御部150により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理の一部は省略されてもよいし、処理の順序は適宜変更されてもよい。
【0124】
まず、支援制御部150は、複合カーブを車両Mが通過予定であるか否かを判定する(ステップS200)。複合カーブが存在する場合、支援制御部150は、第1支援制御を実行中であるか否かを判定する(ステップS202)。ステップS200またはステップS202の判定が否定的である場合、本フローチャートの1ルーチンが終了する。
【0125】
第1支援制御を実行中である場合、支援制御部150は、オーバライドが成立したか否かを判定する(ステップS204)。オーバライドが成立した場合、支援制御部150は、第1支援制御を停止する(ステップS206)。次に、支援制御部150は、車両Mの位置から第1カーブ路の末尾までを直線と仮定して、第2支援制御を開始する位置を特定する(ステップS208)。
【0126】
次に、支援制御部150は、車両Mが第2支援制御の開始位置に到達しているか否かを判定する(ステップS210)。車両Mが第2支援制御の開始位置に到達していない場合、本フローチャートの1ルーチンが終了する。車両Mが第2支援制御の開始位置に到達している場合、支援制御部150は、オーバライド(または第1支援制御を停止して)から所定時間後に第2支援制御を開始する。
【0127】
上記のように、支援制御部150は、複合カーブを車両Mが走行する際に、ドライバの操作に応じて車両の挙動を適切に制御することができる。
【0128】
以上説明した実施形態によれば、支援制御部150は、支援制御中に支援制御を停止させる操作がされたときに、第1カーブ路に対する支援制御を実行する第1対象区間と、第2カーブ路に対する支援制御を実行する第2対象区間と、車両の位置とに基づいて、第2カーブ路に対する支援制御の作動を制御することにより、カーブ路が連続する場合にドライバの操作に応じて車両Mの挙動を適切に制御することができる。
【0129】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
車両の進行方向に存在するカーブ路に関するカーブ路情報を取得する処理と、
前記車両が前記カーブ路の入口から前記入口から所定距離前までの区間を走行中または前記車両が前記カーブ路を走行中において、
前記カーブ路情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方である支援制御を行う制御部であって、前記支援制御中においてドライバが前記支援制御を停止する操作を行った場合に、前記支援制御を停止する処理と、
前記車両が第1カーブ路と前記第1カーブ路から所定距離以内に存在する第2カーブ路とを走行する予定である場合において前記支援制御中に前記支援制御を停止させる操作がされたときに、前記第1カーブ路に対する支援制御を実行する第1対象区間と、前記第2カーブ路に対する支援制御を実行する第2対象区間と、前記車両の位置とに基づいて、前記第2カーブ路に対する支援制御の作動を制御する処理と、を実行させる、
ように構成されている、制御装置。
【0130】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0131】
1 車両システム
100 運転支援装置
110 認識部
130 カーブ判定部
140 操作情報処理部
150 支援制御部