(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143037
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】非接触受電装置、非接触給電システム、およびそれらの方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20241003BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20241003BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20241003BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/40
H02J50/80
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055505
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 侑生
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】負荷に対する電力供給の制御を高速化する。
【解決手段】送電コイル51と磁界結合可能な位置において受電コイル31が受電した交流電力の少なくとも一部を、電流源として機能する回路331から、負荷45に対して供給する。この際、この回路における電流源としての電気特性を検出し、電流源から負荷に対して、第1電流を供給する第1状態と、第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との切り換えを行ない、検出された電気特性に従って、交流電力の一周期に対する第1状態または第2状態の割合をフィードフォワード制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電コイル(31)を備え、磁界結合により交流電力を受電する受電部(33)と、
前記受電部に接続され、電流源(331,332,333)として、負荷に電力を供給する電力部(40)と、
前記電力部の前記電流源としての電気特性を検出する検出部(70)と、
前記電力部を、前記負荷に対して第1電流を供給する第1状態と前記負荷に対して前記第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との間で切り換える電流切換部(75,75C)と、
前記検出された電気特性に従って、前記交流電力の周期に対する前記第1状態または第2状態の割合を決定し、前記電流切換部を前記割合に従って、フィードフォワード制御する制御部(71,71e)と、
を備えた非接触受電装置(30,30Bから30E,30e,30F)。
【請求項2】
前記電力部は、イミタンス特性を有する回路を前記電流源として備えた、請求項1記載の非接触受電装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記電気特性を、前記イミタンス特性を有する回路の出力電流により検出する電流検出回路である、請求項2に記載の非接触受電装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電気特性と前記割合との対応関係を予め用意し、
前記検出した電気特性に基づき、前記対応関係を用いて決定した前記割合に従い、前記フィードフォワード制御を行なう、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触受電装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記電気特性が、予め定めた値を超えて変化したとき、前記決定された前記割合における前記第1状態または第2状態の割合の変化を予め定めた量だけ増分する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触受電装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記負荷に供給する電流を増加する際には、前記割合の変化を予め定めたレート以下に調整する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触受電装置。
【請求項7】
前記電力部の出力を整流する整流器(44,44C)を備え、前記整流器による整流後の直流により前記負荷への電力供給を行なう、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触受電装置。
【請求項8】
前記電流切換部は、前記電力部からの出力ライン(P1,P2)を短絡することで、前記負荷に対して供給する第2電流を零とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触受電装置。
【請求項9】
前記電力部の出力を整流するブリッジ型の同期整流器(44C)を備え、
前記電流切換部は、前記同期整流器の、前記負荷への電力ラインの一方に接続された2つのスイッチング素子(SW1,SW2)を同時にオンすることで、前記出力ラインの短絡を実現する、請求項8に記載の非接触受電装置。
【請求項10】
前記電力部の前記イミタンス特性を有する回路は、イミタンスフィルタであり、
前記検出部は、前記イミタンスフィルタの入力電圧を、前記電気特性として検出する電圧検出回路(32)である、
請求項2または請求項3に記載の非接触受電装置。
【請求項11】
前記負荷に出力される負荷電流を検出する負荷電流検出部(46)と、
前記フィードフォワード制御によって前記負荷電流に生じる目標電流値からの定常偏差をフィードバック制御するフィードバック制御部と、
を備えた請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触受電装置。
【請求項12】
前記負荷は電力を充電可能なバッテリを含み、更に、
前記電力部の出力電圧を検出する出力電圧検出部(47)と、
前記検出された出力電圧と、前記バッテリを充電するための目標電圧とを用いて、前記割合をフィードバック制御するフィードバック制御部(76,76e,76F)と、
を備えた請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触受電装置。
【請求項13】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触受電装置と、
前記受電コイルと磁界結合する送電コイル(51)を備えた送電装置(50)と、
を備えた非接触給電システム(100)。
【請求項14】
送電コイルと磁界結合可能な位置において受電コイルが受電した交流電力の少なくとも一部を、電流源として機能する回路から、負荷に対して供給し、
前記回路における前記電流源としての電気特性を検出し、
前記電流源から前記負荷に対して、第1電流を供給する第1状態と、前記第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との切り換えを行ない、前記検出された電気特性に従って、前記交流電力の一周期に対する前記第1状態または前記第2状態の割合をフィードフォワード制御する、
非接触受電方法。
【請求項15】
受電コイルと磁界結合可能な位置に存在する送電コイルに所定周波数の交流電圧を印加し、
送電コイルと磁界結合可能な位置において受電コイルが受電した交流電力の少なくとも一部を、電流源として機能する回路から、負荷に対して供給し、
前記回路における前記電流源としての電気特性を検出し、
前記電流源から前記負荷に対して、第1電流を供給する第1状態と、前記第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との切り換えを行ない、前記検出された電気特性に従って、前記交流電力の一周期に対する前記第1状態または前記第2状態の割合をフィードフォワード制御する、
非接触給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触での受電もしくは給電に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で給電を行なう場合、給電電流を制御する技術が必要になる場合がある。例えば特許文献1は、磁界結合を利用して受電した交流を直流に変換し、この直流電圧が印加される出力側のコンデンサに流れる電流を、負荷に流れる電流に応じて制御することで、給電電流を制御する手法を開示している。この場合、所望の電流量で給電するために、コンデンサに流れる電流を零とする期間を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2020/129178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、こうした電流を零とする期間の制御をフィードバック制御により行なうので、制御の応答性が不十分になる場合があった。例えば送電側からの送電量が急激に増加すると、受電装置側での制御が対応できず、受電電力が過大となったり、過渡時にEMCの悪化などが生じる虞があった。受電電力が過大となると、バッテリなどへの過電流が生じる虞があり、これらを防止するための追加的な構成が必要になるといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[1]本開示の非接触受電装置(30,30Bから30E,30e,30F)は、受電コイル(31)を備え、磁界結合により交流電力を受電する受電部(33)と、 前記受電部に接続され、電流源(331,332,333)として、負荷に電力を供給する電力部(40)と、前記電力部の前記電流源としての電気特性を検出する検出部(70)と、前記電力部を、前記負荷に対して第1電流を供給する第1状態と前記負荷に対して前記第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との間で切り換える電流切換部(75,75C)と、前記検出された電気特性に従って、前記交流電力の周期に対する前記第1状態または第2状態の割合を決定し、前記電流切換部を前記割合に従って、フィードフォワード制御する制御部(71,71e)と、を備える。
【0007】
[2]また、本開示の非接触受電方法は、送電コイルと磁界結合可能な位置において受電コイルが受電した交流電力の少なくとも一部を、電流源として機能する回路から、負荷に対して供給し、前記回路における前記電流源としての電気特性を検出し、前記電流源から前記負荷に対して、第1電流を供給する第1状態と、前記第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との切り換えを行ない、前記検出された電気特性に従って、前記交流電力の一周期に対する前記第1状態または前記第2状態の割合をフィードフォワード制御する。
【0008】
[3]更に、本開示の非接触給電方法は、受電コイルと磁界結合可能な位置に存在する送電コイルに所定周波数の交流電圧を印加し、送電コイルと磁界結合可能な位置において受電コイルが受電した交流電力の少なくとも一部を、電流源として機能する回路から、負荷に対して供給し、前記回路における前記電流源としての電気特性を検出し、前記電流源から前記負荷に対して、第1電流を供給する第1状態と、前記第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との切り換えを行ない、前記検出された電気特性に従って、前記交流電力の一周期に対する前記第1状態または前記第2状態の割合をフィードフォワード制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の非接触給電システムを示す概略構成図。
【
図2】非接触給電システムを構成する送電装置と受電装置の概略構成図。
【
図4】電流切換部の動作状態と負荷電流の状態との関係を示す説明図。
【
図6A】電流切換部のオン・オフによるオン時間の違いを示す説明図。
【
図6B】オン時間と出力電流および負荷電流との関係を模式的に示す模式図。
【
図7】受電電流が増加した場合のフィードフォワード制御による負荷電流の挙動を示す説明図。
【
図8A】第2実施形態で用いる受電装置の実施形態を示す構成図。
【
図8B】受電電流が急増した場合にフィードフォワード制御量を増分する制御例を示す説明図。
【
図9A】第3実施形態で用いる受電装置を示す構成図。
【
図9B】第3実施形態における同期整流器の制御処理を示すフローチャート。
【
図10】第4実施形態で用いる受電装置を示す構成図。
【
図11】第5実施形態で用いる受電装置を示す構成図。
【
図13】第6実施形態で用いる受電装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
(A1)非接触給電システムの全体構成:
第1実施形態の非接触受電装置30を備えた非接触給電システム100の概略構成を、
図1に示す。図示するように、この非接触給電システム100は、路面SFの下、土中に埋設された複数の送電装置50と、路面SF上を自走する移動体20に搭載された非接触受電装置30とから構成される。移動体20は、負荷装置45に含まれる図示しないモータにより駆動される駆動輪21、駆動輪21と共に移動体20を路面SF上に移動可能に支持する従動輪22、移動体20の床下に配置された受電コイル31等を備える。受電コイル31は、路面SF側に用意された送電装置50の送電コイル51と磁界結合して交流電力の供給を受け、負荷装置45に電力を供給する。なお、送電装置50やこれを含む非接触給電システム100は、移動体20の非接触受電装置30に電力を供給するものに限られず、非接触で送電を行なう装置および給電を行なうシステムであれば、受電装置は、携帯端末など、移動体でないものに送電や給電を行なう装置やシステムであって差し支えない。移動体20は、屋外の道路を走行するものに限られず、工場や病院などの屋内で使用される搬送車などを含む。移動体20の車輪の数は幾つでもよく、車輪以外の手法、例えば磁気浮上などで移動するものでもよい。
【0011】
送電装置50は、路面SFの下に埋設する構成以外に、路面上に設置したり、壁面や天井への設置も可能である。こうした場合には、送電装置50の設置箇所に対応して、非接触受電装置30を移動体20内の所定の位置に配置すればよい。例えば送電装置50が壁面に敷設されていれば、非接触受電装置30は移動体20の側面に配置すればよい。また、送電装置50の敷設位置に合わせて、非接触受電装置30を移動体20内部で移動したり、複数の非接触受電装置30を予め用意し、これを切り換えて使用する様にしてもよい。
【0012】
移動体20の非接触受電装置30に電力を供給する複数の送電装置50は、本実施形態では、それぞれ同一の構成を備え、移動体20の移動経路に沿って配列されている。もとより送電装置50は、移動体20の移動経路に限らず、2次元的に路面SFに配列されていても差し支えない。各送電装置50は、共通の主電力ラインRFPに接続されている。主電力ラインRFPには、主電源装置60から、周波数f1の高周波(例えば85KHz)の交流電力が供給される。本実施形態では、各送電装置50は同一の構成を有するものとしたが、例えば大きさが異なる送電コイル51を交互に配置するなど、送電が可能であれば、構成は同一でなくても差し支えない。もとより、送電装置50は一つであっても差し支えない。
【0013】
主電源装置60は、主電源65から低周波(例えば60Hz)の交流の供給を受けて、これを高周波の交流に変換する。主電源装置60は、主電源65から電力を受け取る側から、交流出力用のノイズフィルタ、PFC回路、インバータ、フィルタを備えた構成などが知られている。主電源65から供給された電力は、インバータにより上記の周波数の交流に変換され、主電力ラインRFPに出力される。
【0014】
送電装置50と非接触受電装置30との概略構成を、
図2に示した。図は、複数の送電装置50のうちの一つが、移動体20の非接触受電装置30に電力を送電している状態を示す。このとき、送電装置50の送電コイル51が非接触受電装置30の受電コイル31と磁界結合しており、送電装置50からの送電が行なわれると、受電コイル31には誘導電流(交流)が流れる。非接触受電装置30は、受電部33と、検出部70と、電力部40と、電流切換部75と、FF制御部71とを備え、負荷装置45に必要な電力を供給する。受電部33は、受電コイル31に生じる誘導電流により電力を送電装置50側から受電する。電力部40は、電流源としての機能する回路構成を備え、更に、受電部33が受電した交流電力を整流する整流器44を備える。整流器44は、ダイオードブリッジを用いた全波整流器や、半波整流器を用いても良いし、ブリッジの一部にスイッチング素子を用い、入力する交流の交番に同期してスイッチング素子をオン・オフすることで、整流を行なう同期整流器を用いてもよい。
【0015】
検出部70は、電力部40の電流源として機能する回路の電気特性を検出するものであり、この実施形態では、電流源としての機能する回路から出力される電流値Iout を検出する。電流源としての機能する回路の構成は後で詳述するが、回路構成上、電流値と等価な電圧値を、電気特性として検出することも差し支えない。電流切換部75は、負荷に対して第1電流を供給する第1状態と、負荷に対して第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態とに切り換える。電流切換部75の具体的な構成についても、後で詳しく説明する。この電流切換部75の第1状態と第2状態との切換を制御するのが、FF制御部71である。FF制御部71は、フィードフォワード制御を行なう制御装置として構成されている。フィードフォワード制御は、制御対象、ここでは負荷装置45に流れる電流値Idを目標値I*に近づける制御を行なう。一般的に、制御量を目標値に近づけるのには、フィードバック制御が行なわれる。フィードバック制御では、目標値と制御量との差分に応じて入力側、ここでは受電部33からの出力電流値Iout を制御する。これに対して、本実施形態のFF制御部71は、出力電流値Iout の値に応じて、負荷装置45に対する負荷電流値Idの変化に先んじて、電流切換部75の制御を行なう。こうした制御の詳細についも後で纏めて説明する。なお、FF制御部71は、ディスクリートな回路構成により実現することもできるが、メモリに記憶したプログラムを実行するコンピュータによる算術論理演算により実現することも容易である。
【0016】
非接触受電装置30を構成する各部の構成例について、順次説明する。
図3は、受電部33と電力部40との構成例を複数例示する。図示する構成例では、電力部40が電流源として機能すると、イミタンス特性を有する電流源回路331、ここではイミタンスフィルタを組み込んでいる。構成例1では、受電部33は、受電コイル31とその両側に接続された2つの共振コンデンサCt1,Ct2からなる。イミタンスフィルタである電流源回路331はこの受電部33の後段に設けられる。構成例1のイミタンスフィルタは、T-LCL型の構成を備え、1つのイミタンスコンデンサCimとこれを挟んで両側に接続された2組のリアクトルL11,L12およびリアクトルL21,L22とからなる。もとより、T-LCL型以外に、π-CLC型やT-LCLC型のイミタンスフィルタを用いることも可能である。
【0017】
構成例1では、イミタンスフィルタを用いた電流源回路331の後段に、電流切換部75が設けられ、更に電流源回路331の出力側に整流器44が接続されている。構成例1では、整流器44はブリッジ接続された4つのダイオードD1からD4からなる全波整流器として構成されている。電流源回路331から出力される交番電流は、整流器44により直流にされ、負荷装置45に供給されて、例えば負荷装置45に含まれるバッテリを充電する。電流切換部75は、電流源回路331の2つの電力ラインP1,P2を短絡する接点として構成されている。電流切換部75の接点は、FF制御部71により駆動される。
【0018】
電流源回路としての働くイミタンスフィルタは、構成例1のように、回路を構成するリアクトルL11~L22を全て内部に備えても良いが、構成例2に示すように、受電部33に接続されている側のリアクトルL11,L12を備えない構成としてもよい。この電流源回路332も構成例1と同様に機能する。更に、構成例3に示すように、送電コイル51および共振コンデンサCt1,Ct2と受電コイル31および共振コンデンサCi1,Ci2とからなる回路構成を、イミタンス特性を有する電流源回路333として用いてもよい。この電流源回路333も構成例1、2と同様に機能する。
【0019】
電流源回路331等の交流の電流源から供給される電力が、負荷装置45に直流として給電される様子を、
図4に示した。電流切換部75がオフの状態の場合には、電流源回路331による給電によって、電力ラインP1がプラスの場合(正の半周期)には、図示破線Iaのように、負荷装置45に電流が流れる。他方、電流源回路331による給電によって、電力ラインP2がプラスの場合(負の半周期)には、図示破線Icのように、負荷装置45に電流が流れる。また、電流切換部75がオンの状態の場合には、電力ラインP1-P2間は短絡され、電流源回路331により給電され電流は、図示破線Ib,Idのように、電流切換部75を通って流れ、整流器44側には流れない。従って、当然負荷装置45も供給されない。
【0020】
こうした電流切換部75のオン・オフを、電流源回路331の交番電流の半周期のうちに切り換えると、
図4の最下段に示したように、交番電流の一周期のうちに、整流器44を介して負荷装置45に電力が供給される第1状態Pa,Pcと、電力が供給されない第2状態Pb,Pdとが生じる。交番電流の一周期の区間における第1状態の区間の割合により、負荷装置45に供給される電力が増減する。第1状態の区間Pa,Pc,第2状態の区間Pb,Pdは、時間軸上であれば第1状態の時間、第2状態の時間と等価である。交番電流の一周期Ttに対する第1状態の区間の時間Tonの割合を制御することで、負荷装置45に供給する電力量、具体的には、負荷装置45に供給する電流量を制御できる。
【0021】
そこで、
図5に一例を示すように、本実施形態では、電流源回路331の出力電流Iout を検出する検出部70を設け、FF制御部71が、この出力電流Iout に基づいて、電流切換部75のオン・オフをフィードフォワード制御する構成を採用した。FF制御部71は、出力電流Iout を検出部70から受け取ると、オン時間割合マップTmpを参照し、電流切換部75をオンにすべきオン時間Tonの割合を取得する。オン時間割合マップTmpには、予め、出力電流Iout に対して取るべきオン時間Tonの割合が記憶されている。なお、マップに代えて、数式や関数により、オン時間Tonを求めてもよい。
【0022】
オン時間Tonの割合の一例を、
図6Aに示した。図の上段は、交番電流の一周期Ttが一定であり、このうちの電流切換部75をオンとする時間割合が変化することを例示する。この例では、オン時間TonがないものをTon=0として示し、オン時間Tonが短い場合から徐々に長くなる様子を、Ts、Tm、Tlとして示した。また、
図6Bは、出力電流Iout に対するオン時間Tonの割合を右軸と対応付け示すと同時に、このとき負荷装置45に供給される負荷電流Idを左軸に対応付けて示す。出力電流Iout が予め定めた値Inとなるまで、オン時間Tonは0であり、電流切換部75は常時オフに保たれるから、負荷電流Idは、送電装置50からの送電量が増え、出力電流Ioutが増大すれば、これに伴って増大する。
【0023】
出力電流Iout が所定値Inを超えると、FF制御部71が出力電流Iout に基づいてオン時間割合マップTmpの値であるオン時間Tonは徐々に大きくなる。これにより、図示上段に例示したように、電流切換部75がオンとなる時間Tonは、0→Ts→Tm→Tlのように増加する。オン時間Tonの増加に伴い、電流切換部75がオンとなって、
図4の最下欄に示した区間Pb,Pdは増加し、整流器44を介して負荷装置45に出力される電力量は低下する。
【0024】
実際に非接触受電装置30が送電装置50から非接触給電を受ける場合には、送電コイル51と受電コイル31との位置関係の変化などにより、受電部33が出力する出力電流Iout が急変する場合もあり得る。出力電流Iout の急変の例として、ステップ応答する場合を想定し、本実施形態による制御を、
図7に示した。
【0025】
負荷装置45に出力すべき電流値が10Aであると仮定し、電流源回路331から出力する出力電流Iout が時間tにおいて、10Aから20Aに変化した場合、負荷電流Idが目標電流I*、ここでは10Aとなるように、電流切換部75のオン時間Tonを負荷電流Idを用いてフィードバック制御すると、フィードバック制御の特性上、負荷電流Idが目標電流I*になるまでにかなりの時間を要する。応答性を高めようとして、フィードバック制御のゲインを大きくすると、制御が不安定になり、オーバシュートやアンダシュートが生じ易い。
【0026】
これに対して、本実施形態では、
図7に示したように、出力電流Iout が、10Aから急増すると、これに応じて、オン時間Tonを、オン時間割合マップTmpを参照して規定のオン時間Tmに増加させる。このため、負荷電流Idは、短時間のうちに目標電流I*、ここでは10Aに戻っている。この例では、出力電流Iout とオン時間Tonとを単純な比例関係にしているので、出力電流Iout が変化した直後の時間t1からt2の間の出力電流Iout にオーバシュートが現われるものの、こうしたオーバシュートは短時間のうちに解消し、時間t2以降は、出力電流Iout は目標電流I*に収束する。FF制御部71は、オン時間割合マップTmpを参照してオン時間Tonを得ているので、フィードバック制御のように、差分を演算する必要もなく、高速に制御量、ここではオン時間Tonを切り換えることができる。
【0027】
B.第2実施形態:
第2実施形態の非接触給電システムで用いる非接触受電装置30Bの概略構成を、
図8Aに示した。第2実施形態の非接触受電装置30Bは、第1実施形態の非接触受電装置30と較べて、レートリミッタ73を備えること、および出力電流Iout が急増した際のFF制御部71が用いるオン時間Tonが相違する点で、異なる。他は、第1実施形態と同様である。
【0028】
第2実施形態の非接触受電装置30Bでは、FF制御部71はオン時間Tonを、オン時間割合マップTmpから求める際、出力電流Ioutが予め定めた閾値を超えて変化した場合には、
図8Bに示すように、オン時間Tonを出力電流Iout に単純に比例する値とせず、更に増分している。図示の例では、出力電流Iout が急変した直後の時間t1からt2の間、オン時間Tonをオン時間Tlまで一旦増加している。更に、その後、オン時間Tonをオン時間Tmまで低下させるが、このとき、レートリミッタ73により、オン時間Tonは、一定のレートで漸減させる。レートリミッタ73は、オン時間Tonが増加する場合には何ら機能せず、オン時間Tonが低減する場合に、その低減の割合が、予め定めたレート以下にならないように調整する。
【0029】
こうすることで、出力電流Iout が急変した場合でも、負荷電流Idのオーバシュートを抑制できる。図示の例では、負荷電流Idが、破線で示したように、一時的に急増する挙動をとることを回避しやすい。更に、一旦増分したオン時間Tlを低減する際には、低減の割合が過大なものとならないようにしているので、オーバシュートの発生を十分に抑制できる。オーバシュートが生じないと、バッテリなどの負荷装置45に対して過電流が流れないので、過電流によってバッテリなどの寿命を短くするといったことも回避しやすい。
【0030】
C.第3実施形態:
図9Aに第3実施形態の非接触給電システムを構成する非接触受電装置30Cの構成を示す。この実施形態の非接触受電装置30Cは、第1実施形態の非接触受電装置30とは整流器の構成が異なる。第3実施形態では、整流器が同期整流器44Cとして構成されており、その一部が電流切換部75Cとして用いられる点を除いて、他は、第1実施形態と同様である。図示するように、同期整流器44Cは、上側アームの2つのダイオードD1,D2と、下側アームの2つのスイッチング素子SW1,SW2とによりブリッジを形成している。整流器は同期整流器44Cであり、整流動作を行なう場合には、電力部40が受電した交番電流の極性が交番する度にそれに合わせて、スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2とを、排他的にオン・オフする。この結果、
図4最上段に示したように、同期整流器44Cは全波整流器として機能し、負荷装置45に直流により電力を供給する。
【0031】
更に、FF制御部71が、電力ラインP2に接続された下側アームを構成する2つのスイッチング素子SW1,SW2を同時にオン(導通状態)にすると、電力ラインP1,P2間はこれらのスイッチング素子SW1,SW2により導通状態となる。この場合、2つのスイッチング素子SW1,SW2は、電流切換部として機能する。この結果、
図4中段に示したように、同期整流器44Cのスイッチング素子SW1,SW2は電流切換部として機能し、負荷装置45への電力供給は行なわれない。従って、FF制御部71により、同期整流器44Cの2つのスイッチング素子SW1,SW2を交番電流の正の半周期・負の半周期のいずれでも同時にオンにすれば、その期間(
図4中段・区間Pb,Pd)、電流は負荷装置45側には流れない。
【0032】
FF制御部71が繰り返し実行する同期整流器44Cの制御処理ルーチンを
図9Bに示した。FF制御部71は、図示するように、所定のインターバルで実施するこの処理において、まず電力部40が出力する交番電流の挙動から、その区間が、
図4最下段に示した区間PaからPdのいずれに属するかを判定する(ステップS311)。区間Paに属していれば、スイッチング素子SW1をオフにしスイッチング素子SW2をオンにする(ステップS321)。こうすることで、正の半周期の電流Iaは、ダイオードD1から負荷装置45に流れ込み、スイッチング素子SW2を経由して電力部40に戻る。
【0033】
他方、電力部40が出力する交番電流の挙動から、その区間が、
図4最下段に示した区間Pcであれば、スイッチング素子SW1をオンにしスイッチング素子SW2をオフにする(ステップS322)。こうすることで、負の半周期の電流Icは、スイッチング素子SW2から負荷装置45に流れ込み、ダイオードD2を経由して電力部40に戻る。
【0034】
また、電力部40が出力する交番電流の挙動から、その区間が、
図4最下段に示した区間Pbまたは区間Pdであれば、電流切換部75Cを構成するスイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2とを共にオンにする(ステップS323)。こうすることで、電力部40の出力電流は、スイッチング素子SW1およびSW2を通って電力部40に戻り、負荷装置45には供給されない。
【0035】
以上説明した第3実施形態の非接触受電装置30Cでは、第1実施形態と同様の作用効果を奏する上、整流器44と電流切換部75Cとを兼用できるので、装置構成を簡略化できる。なお、スイッチング素子SW1,SW2は、下アームではなく上アームに設けてもよい。同期整流器44Cは、ブリッジを構成する要素のうち、1津以上をスイッチング素子により構成可能である。この場合、同期整流器44Cを電流切換部75Cとしても機能させるには、下アームか上アームのいずれかに接続する2つの要素をともにスイッチング素子とすればよい。もとより、半波のみ電流を低減するのでよければ、電流切換部として用いるスイッチング素子は1つであってもよい。
【0036】
D.第4実施形態:
第4実施形態の非接触受電装置30Dの構成の要部を、
図10に示す。他の実施形態では、電力部40が出力する交番電流の大きさを、検出部70により計測しているのに対して、第4実施形態では、電力部40の入力側電圧Vを電圧計32により計測し、これを用いて、電力部40から負荷装置45への電流出力を調整している点で、相違する。電力部40の出力電流Iout と入力側の電圧Vとは、図示したように、イミタンスフィルタである電流源回路331のリアクタンスLとキャパシタンスCとを用いて相互に演算可能である。すなわち、出力電流Iout と入力電圧Vとは、次式(1)の関係にあり、
Iout =V/Z0 … (1)
インピーダンスZ0は、電流源回路331を構成する4つのリアクトルのリアクタンスL11~L14、およびイミタンスコンデンサCimのキャパシタンスCimから、次式(2)により求められる。
Z0=√(L/Cim) … (2)
但し、L=L11+L12=L21+L22
【0037】
従って、電力部40の入力電圧を計測すれば、出力電流Iout を求めることは容易であり、FF制御部71が電流切換部75Cをオン状態とする割合をフィードフォワード制御して、出力電流Iout を所定の範囲に制御することは容易である。なお、上記式を用いて入力電圧Vから出力電流Iout を求めて制御してもよいが、オン時間割合マップTmpを、入力電圧に対するオン時間Tonの割合を求めるテーブルとして用意すれば、いちいち換算することなく、負荷装置45に供給する交流電力を制御可能である。この実施形態でも、上述した他の実施形態と同様の作用効果を奏することは言うまでない。
【0038】
E.第5実施形態:
次に、第5実施形態の非接触給電システムにおける非接触受電装置30Eについて説明する。この実施形態の非接触受電装置30Eは、
図11に示すように、第3実施形態の非接触受電装置30C(
図9参照)の装置構成に、負荷装置45に流れる負荷電流Idを検出する電流計46とフィードバック制御を行なうFB制御部76とを備える。この実施形態の非接触受電装置30Eは、第3実施形態と同様の制御を行なうが、更に、FF制御部71によるフィードフォワード制御によって負荷に流れる電流に生じる目標電流値からの定常偏差を、FB制御部76により、フィードバック制御によって小さくする。
【0039】
具体的には、図示するように、負荷装置45に流れる負荷電流Idを電流計46により検出し、これと目標電流Id*との偏差を、FB制御部76に入力し、この偏差に応じた調整オン時間ΔTonをFF制御部71の出力に加える。負荷電流Idが増加して目標電流Id*より大きくなると、FB制御部76の出力である調整オン時間ΔTonは大きくなり、結果的に電流切換部75Cのオン時間Tonを大きくする。この結果、出力電流Iout が変化すると、まずFF制御部71によるフィードフォワード制御により、オン時間Tonの割合が調整される。このフィードフォワード制御の結果、負荷電流Idに目標電流Id*からのずれが生じると、これに応じて調整オン時間ΔTonがFB制御部76によるフィードバック制御により付加され、負荷電流Idは、目標電流Id*に向けて調整される。
【0040】
以上説明した第5実施形態によれば、フィードフォワード制御による高速な制御とフィードバック制御による目標電流への精度の高い調整とを両立できる。なお、この実施形態では、オン時間Tonを調整することで、負荷電流Idフィードバック制御したが、
図12の変形例として示すように、電流切換部のオフ時間Toff (一周期Ttからオン時間Tonを減算した時間)を調整するようにしてもよい。この非接触受電装置30eでは、負荷電流Idと目標電流Id*との偏差に応じた調整オフ時間ΔToff をFF制御部71eの出力に加える。負荷電流Idが増加して目標電流Id*より大きくなると、FB制御部76eの出力である調整オフ時間ΔToff は小さくなるように差分が演算される。この結果、出力電流Iout が変化すると、まず、オフ時間割合マップTmoを参照してFF制御部71eがフィードフォワード制御を行ない、これにより、オフ時間Toff の割合が調整される。このフィードフォワード制御の結果、負荷電流Idに目標電流Id*からのずれが生じると、これに応じて調整オフ時間ΔToff がFB制御部76eによるフィードバック制御により付加され、負荷電流Idは、目標電流Id*に向けて調整される。
【0041】
F.第6実施形態:
第6実施形態における非接触受電装置30Fは、
図13に示すように、第5実施形態と同様に、FF制御部71によるフィードフォワード制御に加えて、FB制御部76Fによるフィードバック制御を行なうが、FB制御部76Fによるフィードバック制御は、負荷装置45に印加される電圧Vdが目標電圧Vd*となるように、オン時間Tonを調整するように行なわれる。負荷装置45に印加される電圧Vdは、電圧計47により検出される。このように、負荷装置45に出力される電流をフィードフォワード制御すると共に、電圧Vdをフィードバック制御することで、2つの制御の干渉を回避して制御系を構築できる。もとより、第5実施形態と同様の作用効果も奏する。
【0042】
G.その他の実施形態:
(1)本開示の他の実施形態として、以下に記載する非接触受電装置の構成を採用可能である。この非接触受電装置は、受電コイルを備え、磁界結合により交流電力を受電する受電部と、前記受電部に接続され、電流源として、負荷に電力を供給する電力部と、前記電力部の前記電流源としての電気特性を検出する検出部と、前記電力部を、前記負荷に対して第1電流を供給する第1状態と前記負荷に対して前記第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との間で切り換える電流切換部と、前記検出された電気特性に従って、前記交流電力の周期に対する前記第1状態または第2状態の割合を決定し、前記電流切換部を前記割合に従って、フィードフォワード制御する制御部とを備える。こうすれば、検出された電気特性に従って、交流周期に対する第1状態または第2状態の割合をフィードフォワード制御により制御できるので、負荷に対する電力供給の制御を高速に実現できる。この非接触受電装置では、電力部が、電流源とされているので、電流切換部が電流の供給を、第1電流と第2電流との間で容易に切り換えられる。なお、交流周期における第1状態または第2状態の割合のフィードフォワード制御は、交流周期の全波のうち、正の半波と負の半波の両方で行なってもよいし、いずれか一方だけで行なってもよい。
【0043】
第2電流は第1電流より小さければよく、電流0であってもよい。第2電流を値0より大きな電流にするには、次のようにすればよい。第1実施形態では、電流切換部75Cの接点がオンになったときに、電力ラインP1-P2間を短絡したが、短絡する代わりに、所定のインピーダンスを介して電力ラインP1-P2間に短絡電流より小さな電流が流れるようにすれば、その差分の電流を負荷に供給できる。いずれにせよ、負荷に供給される電流の範囲は第2電流から第1電流の範囲になるので、負荷に対して必要となる制御範囲を応じて、第1電流や第2電流の大きさを決めればよい。上述した第1から第6の実施形態では、いずれもこの割合として、交流電力の周期に対する第2状態の割合をオン時間Tonとしてフィードフォワード制御の対象としたが、例えば電流源としての電気特性により、負荷に対して供給する電流を増加または減少する場合には、第1状態の割合を減少または増加する制御か、第2状態の割合を増加または減少する制御か、のいずれかを行なえばよい。両者は等価である。なお、電力部の状態としては、第1,第2状態以外の他の状態を持つことも差し支えない。例えば。第2状態の第2電流が値0ではなく、これとは別に電流が値0である第3状態を備えるものとし、電流切換部は、これら3つの状態の間で切換を行なうものとしてもよい。電流切換部は、少なくとも負荷に対して第1電流を供給する第1状態と、負荷に対して第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との間で切り換えが行なえればよく、第3状態への切り換えを併せて行なうことも差し支えない。
【0044】
(2)上記の(1)の構成において、前記電力部は、イミタンス特性を有する回路を前記電流源として備えたものとしてよい。こうすれば、電流源を容易に構成できる。イミタンス特性を有する回路としては、第1から第6実施形態で例示した4つのリアクトルL11からL22とコンデンサCimとからなるT-LCL型以外に、π-CLC型やT-LCLC型のイミタンスフィルタを用いることも可能である。また、イミタンス特性を有する回路の他、インバータを用いた構成などを採用することも差し支えない。
【0045】
(3)上記の(1)または(2)の構成において、前記検出部は、前記電気特性を、前記イミタンス特性を有する回路の出力電流により検出する電流検出回路としてよい。こうすれば、電流切換部の切換を容易に行なうことができる。出力電流は実効値でもよく、あるいはピーク値などでもよい。もとより、検出するのは、電力部の電流源としての電気特性であれば、出力電流以外でもよく、負荷に流れる電流を制御するために利用できるものであれば、何でもよい。例えば電流源としてイミタンス特性を有する回路を用いていれば、出力電流と等価な電力部の入力電圧でもよい。
【0046】
(4)上記の(1)から(3)の構成において、前記制御部は、前記電気特性と前記割合との対応関係を予め用意し、前記検出した電気特性に基づき、前記対応関係を用いて決定した前記割合に従い、前記フィードフォワード制御を行なうものとしてよい。こうすれば、予め用意した対応関係に従って、検出した電気特性により、交流電力の周期に対する第1状態の割合を制御できるので、制御対象に応じた制御を実現しやすい。フィードバック制御のように、制御対象と目標値との差分に応じてこの割合を制御するものに限られない。制御対象の状態により、この割合を大きく変換させたり、また徐々に小さくしたりなど、種々の制御を実現できる。
【0047】
(5)上記の(1)から(4)の構成において、前記制御部は、前記電気特性が、予め定めた値を超えて変化したとき、前記決定された前記割合における前記第1状態または第2状態の割合の変化を予め定めた量だけ増分するものとしてよい。こうすれば、電気特性の変化が大きいときには、割合の変化を増分するので、一層高速な応答を期待できる。増分の量は、予め実験的に定めてもよいし、フィードフォワード制御の結果を用いて学習してもよい。なお、こうした電気特性の大きな変化は、例えば非接触受電装置の受電コイルが1つ送電装置の送電コイルと磁界結合している状態から、複数個の送電コイルと磁界結合する状態になった場合、あるいはその逆の場合などに生じることがある。あるいは受電コイルと送電コイルとの距離が、段差の存在などにより急変した場合などに生じることがある。
【0048】
(6)上記の(1)から(5)の構成において、前記制御部は、前記負荷に供給する電流を増加する際には、前記割合の変化を予め定めたレート以下に調整するものとしてよい。こうすれば、電流を増加を予め定めたレート以下にできるので、負荷がバッテリなどである場合の過充電を抑制または防止でき、あるいはEMCの悪化を抑制できる。
【0049】
(7)上記の(1)から(6)の構成において、前記電力部の出力を整流する整流器を備え、前記整流器による整流後の直流により前記負荷への電力供給を行なうものとしてよい。こうすれば、負荷が直流により動作するものである場合に対応しやすい。もとより負荷が交流で動作する装置である場合には、整流器のない構成とすることも差し支えない。整流器は、半波整流を行なうものでも、全波整流を行なうものでもよい。またダイオードブリッジにより実現してもよく、同期整流器の構成を採用してもよい。
【0050】
(8)上記の(1)から(7)の構成において、前記電流切換部は、前記電力部からの出力ラインを短絡することで、前記負荷に対して供給する第2電流を零とするものとしてよい。こうすれば、負荷に供給する電流の範囲であるダイナミックレンジを最も広くできる。また回路構成を簡略にできる。
【0051】
(9)上記の(1)から(8)の構成において、前記電力部の出力を整流するブリッジ型の同期整流器を備え、前記電流切換部は、前記同期整流器の、前記負荷への電力ラインの一方に接続された2つのスイッチング素子を同時にオンすることで、前記出力ラインの短絡を実現するものとしてよい。こうすれば、整流器の構成と、電流切換器の構成との一部を兼用でき、回路構成を簡略化できる。なお、ブリッジ型の整流器において、1つだけスイッチング素子とし他はダイオードで構成して、全波を構成する一方の半波の周期においてのみスイッチング素子をオンにして出力ラインを短絡するようにしてもよい。
【0052】
(10)上記の(1)から(9)の構成において、前記電力部の前記イミタンス特性を有する回路は、イミタンスフィルタであり、前記検出部は、前記イミタンスフィルタの入力電圧を、前記電気特性として検出する電圧検出回路であるものとしてよい。こうすれば、検出対象が電圧であることから、検出部の構成を簡略化できる。イミタンスフィルタでは、出力電流と入力電圧とは、互換性があり、入力電圧から出力電流を容易に求めることができる。もとより、制御部は、電力部のイミタンスフィルタの入力電圧を用いて、直接、上述したフィードフォワード制御を行なってよい。
【0053】
(11)上記の(1)から(10)の構成において、前記負荷に出力される負荷電流を検出する負荷電流検出部と、前記フィードフォワード制御によって前記負荷電流に生じる目標電流値からの定常偏差をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備えるものとしてもよい。こうすれば、フィードフォワード制御によって負荷電流に生じる目標電流値からの定常偏差をフィードバック制御により低減できる。なお、こうしたフィードバック制御は、フィードフォワード制御において制御対象としている第1状態または第2状態の割合に対して行なってもよいし、フィードフォワード制御の対象とは逆の第2状態または第1状態に対して行なってもよい。
【0054】
(12)上記の(1)から(11)の構成において、前記負荷は電力を充電可能なバッテリを含み、更に、前記電力部の出力電圧を検出する出力電圧検出部と、前記検出された出力電圧と、前記バッテリを充電するための目標電圧とを用いて、前記割合をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備えるものとしてよい。こうすればフィードフォワード制御では負荷に供給される電流を制御し、フィードバック制御では負荷であるバッテリを充電する際の出力電圧を制御するので、フィードフォワード制御とフィードバック制御との干渉を生じにくくできる。
【0055】
(13)本開示は非接触給電システムとしての構成を含む。この非接触給電システムは、上記の(1)から(12)のいずれかの非接触受電装置と、前記受電コイルと磁界結合する送電コイルを備えた送電装置とを備える。こうすれば、非接触受電装置における負荷に対する電力供給の制御を高速に実現でき、非接触給電システムとしての制御性を高めることができる。この場合、送電装置は1つでもよいが、複数設け、受電装置を搭載した機器の移動に伴い、受電装置の受電コイルが磁界結合する送電装置の送電コイルが切り換わっていくようにしてもよい。送電コイルは、受電コイルと磁界結合できる位置に配置すればよく、例えば受電装置が移動体に搭載される場合には、路面や床面などに配置してもよいし、壁面などに配置してもよい。
【0056】
(14)本開示は、上記の(1)から(12)の構成に対応した非接触受電方法としての構成を含む。この非接触受電方法は、送電コイルと磁界結合可能な位置において受電コイルが受電した交流電力の少なくとも一部を、電流源として機能する回路から、負荷に対して供給し、前記回路における前記電流源としての電気特性を検出し、前記電流源から前記負荷に対して、第1電流を供給する第1状態と、前記第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との切り換えを行ない、前記検出された電気特性に従って、前記交流電力の一周期に対する前記第1状態または第2状態の割合をフィードフォワード制御する。こうすれば、検出された電気特性に従って、交流周期に対する第1状態または第2状態の割合をフィードフォワード制御により制御できるので、負荷に対する電力供給の制御を高速に実現できる。
【0057】
(15)本開示は非接触給電方法としての構成を含む。この非接触給電方法は、受電コイルと磁界結合可能な位置に存在する送電コイルに所定周波数の交流電圧を印加し、送電コイルと磁界結合可能な位置において受電コイルが受電した交流電力の少なくとも一部を、電流源として機能する回路から、負荷に対して供給し、前記回路における前記電流源としての電気特性を検出し、前記電流源から前記負荷に対して、第1電流を供給する第1状態と、前記第1電流より小さな第2電流を供給する第2状態との切り換えを行ない、前記検出された電気特性に従って、前記交流電力の一周期に対する前記第1状態または第2状態の割合をフィードフォワード制御するものとしてよい。こうすれば、非接触で受電した側における負荷に対する電力供給の制御を高速に実現でき、高い制御性を実現した非接触給電方法を実現できる。
【0058】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。「コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0059】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
20…移動体、21…駆動輪、22…従動輪、30,30B,30C,30D,30E,30F,30e…非接触受電装置、31…受電コイル、32…電圧計、33…受電部、40…電力部、44…整流器、44C…同期整流器、45…負荷装置、46…電流計、47…電圧計、50…送電装置、51…送電コイル、60…主電源装置、65…主電源、70…検出部、71,71e…FF制御部、73…レートリミッタ、75,75C…電流切換部、76,76F,76e…FB制御部、100…非接触給電システム、331,332,333…電流源回路、SW1,SW2…スイッチング素子、Tmo…オフ時間割合マップ、Tmp…オン時間割合マップ