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特開2024-143046不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料および成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143046
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C08F283/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055523
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】503090980
【氏名又は名称】ジャパンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三牧 博昭
(72)【発明者】
【氏名】小田 敬一
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB051
4J127BB121
4J127BB251
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD131
4J127BE381
4J127BE38Y
4J127BF151
4J127BF15X
4J127BF401
4J127BF40X
4J127CB061
4J127CC031
4J127DA06
4J127DA08
4J127DA11
4J127DA12
4J127DA43
4J127DA62
4J127DA64
4J127DA66
4J127DA68
4J127EA05
4J127FA01
4J127FA02
4J127FA03
(57)【要約】
【課題】表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる不飽和ポリエステル樹脂組成物、その不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料、および、その成形材料の硬化物を含む成形品を提供すること。
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステルと、重合性単量体と、低収縮化剤と、銀含有抗ウイルス剤とを含む。低収縮化剤の含有割合が、不飽和ポリエステル100質量部に対して、1.2質量部以上50.0質量部以下である。銀含有抗ウイルス剤の含有割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、7.0質量部以上60.0質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステルと、
重合性単量体と、
低収縮化剤と、
銀含有抗ウイルス剤とを含み、
前記低収縮化剤の含有割合が、前記不飽和ポリエステル100質量部に対して、1.2質量部以上50.0質量部以下であり、
前記銀含有抗ウイルス剤の含有割合が、前記不飽和ポリエステル100質量部に対して、7.0質量部以上60.0質量部以下である、不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記銀含有抗ウイルス剤が、銀担持リン酸塩または銀担持ケイ酸塩ガラスを含む、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記銀含有抗ウイルス剤において、銀の含有量が、1質量%以上である、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、硬化剤を含み、
前記硬化剤の、10時間半減期温度が、103℃以下である、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物と、強化繊維とを含む成形材料。
【請求項6】
請求項5に記載の成形材料の硬化物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料(とりわけ、シートモールディングコンパウンド(SMC)、バルクモールディングコンパウンド(BMC)、シックモールディングコンパウンド(TMC))からなる成形品は、とりわけ、機械的特性、耐水性、および、耐食性に優れるため、幅広い分野で用いられている。
【0003】
一方、衛生面の観点から、不飽和ポリエステル樹脂組成物に、抗菌剤を配合することが知られている。
【0004】
このような不飽和ポリエステル樹脂組成物として、例えば、不飽和ポリエステル樹脂と、銀-ガラス系無機抗菌剤とを含む熱硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、下記特許文献1の実施例参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-037742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、抗菌剤に代えて、抗ウイルス剤が用いられる場合がある。このような場合において、抗ウイルス性を向上する観点から、抗ウイルス剤の量を多くすることが検討されるが、成形品が凹凸を有する場合には、抗ウイルス剤の配合量に応じた抗ウイルス性が発現しないという不具合があるということを見出した。
【0007】
本発明は、表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる不飽和ポリエステル樹脂組成物、その不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料、および、その成形材料の硬化物を含む成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、不飽和ポリエステルと、重合性単量体と、低収縮化剤と、銀含有抗ウイルス剤とを含み、前記低収縮化剤の含有割合が、前記不飽和ポリエステル100質量部に対して、1.2質量部以上50.0質量部以下であり、前記銀含有抗ウイルス剤の含有割合が、前記不飽和ポリエステル100質量部に対して、7.0質量部以上60.0質量部以下である、不飽和ポリエステル樹脂組成物である。
【0009】
本発明[2]は、前記銀含有抗ウイルス剤が、銀担持リン酸塩または銀担持ケイ酸塩ガラスを含む、上記[1]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記銀含有抗ウイルス剤において、銀の含有量が、1質量%以上である、上記[1]または[2]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、さらに、硬化剤を含み、前記硬化剤の、10時間半減期温度が、103℃以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含んでいる。
【0012】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物と、強化繊維とを含む成形材料を含んでいる。
【0013】
本発明[6]は、上記[5]に記載の成形材料の硬化物を含むことを特徴とする、成形品を含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物において、低収縮化剤の含有割合および銀含有抗ウイルス剤の含有割合が、それぞれ、所定の範囲である。そのため、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品は、表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる。
【0015】
本発明の成形材料は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む。そのため、この成形材料を用いて得られる成形品は、表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる。
【0016】
本発明の成形品は、本発明の成形材料の硬化物を含む。そのため、表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.不飽和ポリエステル樹脂組成物
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステルと、重合性単量体と、低収縮化剤と、銀含有抗ウイルス剤とを含む。
【0018】
<不飽和ポリエステル>
不飽和ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとの反応により得られる。この反応で使用される各原料は、求められる性能により、それぞれ1種又は2種以上使用してもよい。また、ジシクロペンタジエン(DCPD)により変性されていてもよい。
【0019】
なお、以下の説明では、不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステルと重合性単量体(後述)とからなる。
【0020】
多塩基酸は、必須成分としてのエチレン性不飽和二重結合を有する多塩基酸(以下、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸とする。)と、任意成分としてのエチレン性不飽和二重結合を有しない多塩基酸(以下、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸とする。)とを含む。
【0021】
エチレン性不飽和結合含有多塩基酸としては、例えば、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸およびその無水物、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸のハロゲン化物、および、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0022】
エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、および、ジヒドロムコン酸が挙げられる。また、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸には、例えば、上記のエチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸が挙げられる。エチレン性不飽和結合含有多塩基酸としては、好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0023】
エチレン性不飽和結合不含多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族多塩基酸、飽和脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸、これらの酸の無水物、これらの酸のハロゲン化物、および、これらの酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0024】
飽和脂肪族多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族二塩基酸が挙げられる。
【0025】
飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、および、セバシン酸が挙げられる。また、飽和脂肪族多塩基酸には、上記の飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水シュウ酸、および、無水コハク酸が挙げられる。
【0026】
飽和脂環族多塩基酸としては、例えば、飽和脂環族二塩基酸が挙げられる。
【0027】
飽和脂環族二塩基酸としては、例えば、ヘット酸、1,2-ヘキサヒドロフタル酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、および、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(cis-またはtrans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸もしくはその混合物)が挙げられる。飽和脂環族多塩基酸としては、上記の飽和脂環族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。飽和脂環族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水ヘット酸が挙げられる。
【0028】
芳香族多塩基酸としては、例えば、芳香族二塩基酸が挙げられる。
【0029】
芳香族二塩基酸としては、例えば、フタル酸(オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)、トリメリット酸、および、ピロメリット酸が挙げられる。また、芳香族多塩基酸には、上記の芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられる。芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水フタル酸が挙げられる。芳香族二塩基酸として、好ましくは、イソフタル酸が挙げられる。
【0030】
多塩基酸は、単独使用または2種以上併用できる。
【0031】
多塩基酸が、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸およびエチレン性不飽和結合不含多塩基酸を含む場合には、全多塩基酸100モルに対して、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸の含有割合は、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上、より好ましくは、70モル%以上、また、例えば、95モル%以下、好ましくは、90モル%以下である。また、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸の含有割合は、例えば、5モル以上、好ましくは、10モル以上、また、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下、より好ましくは、30モル%以下である。
【0032】
多価アルコールとしては、例えば、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられる。
【0033】
2価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、および、芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、アルカンジオール、および、エーテルジオールが挙げられる。アルカンジオールとしては、炭素数2以上10以下のアルカンジオールが挙げられる。炭素数2以上10以下のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-または1,3-プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2-または1,3-または1,4-ブチレングリコールもしくはその混合物)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、および、3,3-ジメチロールヘプタンが挙げられる。エーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジメタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジエタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジエタノールもしくはその混合物)、および、水素化ビスフェノールAが挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が挙げられる。
【0034】
3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0035】
多価アルコールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。多価アルコールとして、より好ましくは、脂肪族ジオールが挙げられる。多価アルコールとして、さらに好ましくは、炭素数2以上10以下のアルカンジオールが挙げられる。多価アルコールとして、とりわけ好ましくは、アルカンジオールが挙げられる。多価アルコールとして、最も好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が挙げられる。
【0036】
多価アルコールは、単独使用または2種以上併用できる。
【0037】
そして、不飽和ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとを反応させることにより調製される。
【0038】
多塩基酸に対する多価アルコールの当量比(多価アルコールのヒドロキシル基/多塩基酸のカルボキシル基)は、例えば、0.9以上、好ましくは、0.95以上、また、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下である。
【0039】
反応温度は、例えば、150℃以上、好ましくは、190℃以上、また、例えば、250℃以下、好ましくは、230℃以下である。
【0040】
なお、上記の反応において、必要に応じて、公知の溶剤および公知の反応触媒を配合することもできる。
【0041】
これにより、不飽和ポリエステルを調製できる。
【0042】
不飽和ポリエステルの酸価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、5mgKOH/g以上、好ましくは、10mgKOH/g以上、また、例えば、40mgKOH/g未満、好ましくは、30mgKOH/g以下である。
【0043】
不飽和ポリエステルの重量平均分子量は、例えば、2000以上、好ましくは、4000以上、また、例えば、25000以下、好ましくは、20000以下である。
【0044】
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量は、不飽和ポリエステルをGPC測定することにより求めることができる。
【0045】
不飽和ポリエステルは、単独使用または2種以上併用できる。
【0046】
不飽和ポリエステルの含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、45質量部以上、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、60質量部以下、より好ましくは、55質量部以下、さらに好ましくは、50質量部以下である。
【0047】
<重合性単量体>
重合性単量体としては、例えば、スチレン系モノマー、および、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
【0048】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、および、クロロスチレンが挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリルエステル、環構造含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル、および、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル)、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、および、(メタ)アクリル酸ステアリルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリルが挙げられる。環構造含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、および、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、および、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、および、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、および、これらのクロライド塩が挙げられる。(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、および、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシルが挙げられる。多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
重合性単量体としては、好ましくは、スチレン系モノマー、および、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。重合性単量体としては、より好ましくは、スチレンおよびメタクリル酸メチルが挙げられる。重合性単量体としては、さらに好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0051】
重合性単量体は、単独使用または2種以上併用できる。
【0052】
重合性単量体の含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、40質量部以上、さらに好ましくは、42質量部以上、また、例えば、75質量部以下、好ましくは、60質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
【0053】
<低収縮化剤>
低収縮化剤は、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品を得る場合に、成形品の硬化収縮および熱収縮を抑制し、外観を向上させるために配合される。
【0054】
低収縮化剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレン系熱可塑性エラストマー、架橋ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル-ポリスチレンブロックコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、および、飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。低収縮化剤として、好ましくは、ポリスチレン、および、架橋ポリスチレンが挙げられる。
【0055】
低収縮化剤は、単独使用または2種以上併用できる。好ましくは、低収縮化剤として、ポリスチレンおよび架橋ポリスチレンを併用する。低収縮化剤として、ポリスチレンおよび架橋ポリスチレンを併用する場合において、ポリスチレンの含有割合は、ポリスチレンおよび架橋ポリスチレンの総量100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上、また、例えば、60質量部以下、好ましくは、48質量部以下である。また、架橋ポリスチレンの含有割合は、ポリスチレンおよび架橋ポリスチレンの総量100質量部に対して、例えば、40質量部以上、好ましくは、52質量部以上、また、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0056】
また、低収縮化剤を上記重合性単量体に溶解させることにより、低収縮化剤の重合性単量体溶液として調製することもできる。
【0057】
低収縮化剤の重合性単量体溶液において、低収縮化剤の固形分濃度は、例えば、20質量%以上、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0058】
低収縮化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0059】
低収縮化剤の含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、1質量部以上、さらに好ましく、3質量部以上、とりわけ好ましくは、5質量部以上、また、例えば、25質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下、さらに好ましくは、10質量部以下である。
【0060】
また、低収縮化剤の含有割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、1.2質量部以上、好ましくは、2.0質量部以上、より好ましくは、5.0質量部以上、さらに好ましくは、10.0質量部以上、とりわけ好ましくは、13.0質量部以上、また、50.0質量部以下、好ましくは、45.0質量部以下、より好ましくは、35.0質量部以下、さらに好ましくは、25.0質量部以下、とりわけ好ましくは、20.0質量部以下、最も好ましくは、15.0質量部以下である。
【0061】
不飽和ポリエステル100質量部に対する低収縮化剤の含有割合が、上記下限以上であれば、外観(具体的には、光沢)を向上させることができる。また、詳しくは後述するが、成形品において、表面の凹凸を低減することができ、これにより、銀含有抗ウイルス剤の含有割合に応じた抗ウイルス性を発現できるようになり、抗ウイルス性が向上することを見出した。
【0062】
一方、不飽和ポリエステル100質量部に対する低収縮化剤の含有割合が、上記下限未満であれば、外観(具体的には、光沢)が低下する。また、詳しくは後述するが、成形品において、表面の凹凸を低減することができない。そのため、銀含有抗ウイルス剤の含有割合に応じた抗ウイルス性を発現できず、抗ウイルス性が低下することを見出した。
【0063】
また、不飽和ポリエステル100質量部に対する低収縮化剤の含有割合が、上記上限以下であれば、外観(具体的には、スカミングの抑制)を向上させることができる。
【0064】
一方、不飽和ポリエステル100質量部に対する低収縮化剤の含有割合が、上記上限を超過すると、外観(具体的には、スカミングの抑制)が低下する。
【0065】
<銀含有抗ウイルス剤>
銀含有抗ウイルス剤は、ウイルスを不活化させる性能を有する。また、銀含有抗ウイルス剤は、細菌の増殖を抑制する性能を有することもできる。すなわち、銀含有抗ウイルス剤は、抗菌剤として機能しても良く、本願内容を制限するものではない。
【0066】
銀含有抗ウイルス剤としては、例えば、銀担持材料が挙げられる。
【0067】
銀担持材料は、銀(例えば、銀イオン)が、担体に担持された材料であって、例えば、銀担持リン酸塩、銀担持ケイ酸塩ガラス、および、銀-亜鉛担持ゼオライトが挙げられる。
【0068】
銀担持リン酸塩は、銀(例えば、銀イオン)が、リン酸塩に担持されており、例えば、銀担持リン酸ジルコニウム、および、銀担持リン酸カルシウムが挙げられる。
【0069】
銀担持ケイ酸塩ガラスは、銀(例えば、銀イオン)が、ケイ酸塩ガラスに担持されており、例えば、銀担持ガラス、銀担持ケイ酸ナトリウム、銀担持ケイ酸カルシウム、および、銀-亜鉛担持ケイ酸カルシウムが挙げられる。
【0070】
銀含有抗ウイルス剤として、耐温水性の向上および黄変を抑制する観点から、好ましくは、銀担持リン酸塩および銀担持ケイ酸塩ガラスが挙げられる。銀含有抗ウイルス剤として、より好ましくは、銀担持リン酸ジルコニウム、銀担持ガラス、および、銀-亜鉛担持ケイ酸カルシウムが挙げられる。銀含有抗ウイルス剤として、さらに好ましくは、銀担持リン酸ジルコニウムおよび銀担持ガラスが挙げられる。銀含有抗ウイルス剤として、とりわけ好ましくは、銀担持リン酸ジルコニウムが挙げられる。
【0071】
銀含有抗ウイルス剤は、例えば、担持体を調製後に、銀化合物(例えば、硝酸銀)と、必要により、亜鉛化合物(例えば、硝酸亜鉛)とを反応、乾燥、焼成して調製される。また、銀含有抗ウイルス剤は、例えば、担持体成分、および、銀化合物と必要により亜鉛化合物とを同時に溶融、粉砕して調製される。銀含有抗ウイルス剤は、公知の様々な方法で調製され、調製方法は、上記調製方法に制限されるものではない。
【0072】
銀含有抗ウイルス剤において、その銀担持体として、例えば、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、ケイ酸塩ガラス、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、および、ゼオライトが挙げられる。上記担持体として、好ましくは、リン酸ジルコニウム、ケイ酸塩ガラス、ケイ酸カルシウムが挙げられる。上記担持体として、より好ましくは、リン酸ジルコニウム、ケイ酸塩ガラスが挙げられる。上記担持体として、さらに好ましくは、リン酸ジルコニウムが挙げられる。
【0073】
上記担持体は、単独使用または2種以上併用できる。
【0074】
また、銀含有抗ウイルス剤において、銀の含有量は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、抗ウイルス性を向上させる観点から、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上、さらに好ましくは、3質量%以上、とりわけ好ましくは、5質量%以上、最も好ましくは、10質量%以上、また、例えば、30質量%以下である。
【0075】
上記銀の含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定できる。
【0076】
また、上記銀含有抗ウイルス剤は、市販の細菌剤として入手することができる場合もある。
【0077】
銀含有抗ウイルス剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0078】
銀含有抗ウイルス剤の含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、2.0質量部を超過、好ましくは、3.0質量部以上、より好ましくは、4.5質量部以上、さらに好ましくは、8.0質量部以上、また、例えば、28.0質量部以下、好ましくは、23.0質量部以下、より好ましくは、20.0質量部以下、さらに好ましくは、15.0質量部以下、とりわけ好ましくは、12.0質量部以下である。
【0079】
また、銀含有抗ウイルス剤の含有割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、7.0質量部以上、好ましくは、9.0質量部以上、より好ましくは、12.0質量部以上、さらに好ましくは、20.0質量部以上、また、60.0質量部以下、好ましくは、48.0質量部以下、より好ましくは、45.0質量部以下、さらに好ましくは、30.0質量部以下、とりわけ好ましくは、22.0質量部以下である。
【0080】
不飽和ポリエステル100質量部に対する銀含有抗ウイルス剤の含有割合が、上記下限以上であれば、抗ウイルス性が向上する。
【0081】
一方、不飽和ポリエステル100質量部に対する銀含有抗ウイルス剤の含有割合が、上記下限未満であれば、抗ウイルス性が低下する。
【0082】
また、不飽和ポリエステル100質量部に対する銀含有抗ウイルス剤の含有割合が、上記上限以下であれば、外観(具体的には、光沢)を向上させることができる。
【0083】
一方、不飽和ポリエステル100質量部に対する銀含有抗ウイルス剤の含有割合が、上記上限を超過すると、外観(具体的には、光沢)が低下する。また、銀含有抗ウイルス剤の粒子によって平滑性が低下する。
【0084】
<添加剤>
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、必要により、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を配合することができる。
【0085】
添加剤としては、例えば、硬化剤、重合禁止剤、離型剤、着色剤、増粘剤、難燃剤、湿潤分散剤、柄材、抗菌剤、親水剤、光触媒、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、分離防止剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、チクソ付与剤、チクソ安定剤、および、重合促進剤が挙げられる。添加剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0086】
[硬化剤]
硬化剤としては、例えば、パーオキサイドが挙げられる。パーオキサイドとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(10時間半減期温度:99℃)、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート(10時間半減期温度:96℃)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、および、t-ヘキシルパーオキシアセテートが挙げられる。硬化剤として、好ましくは、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチル-2-エチルヘキサノエート、t-へキシルパーオキシアセテートが挙げられる。硬化剤として、より好ましくは、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-へキシルパーオキシアセテートが挙げられる。硬化剤として、さらに好ましくは、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-へキシルパーオキシアセテートが挙げられる。
【0087】
硬化剤の10時間半減期温度は、例えば、110℃以下、好ましくは、外観(具体的には、光沢)を向上させる観点から、103℃以下、より好ましくは、100℃以下、さらに好ましくは、97℃以下、また、例えば、80℃以上である。
【0088】
なお、10時間半減期温度は、硬化剤に含まれる過酸化結合濃度を0.1モル/リットルとなる様にベンゼンに溶解させた溶液を熱分解させた際に、当該硬化剤が10時間半減期を迎える温度を測定し求めることができる。
【0089】
硬化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0090】
硬化剤の含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、2質量部以下である。
【0091】
[重合禁止剤]
重合禁止剤は、可使時間、硬化反応を調整するために配合される成分である。
【0092】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン化合物、ベンゾキノン化合物、カテコール化合物、フェノール化合物、および、N-オキシル化合物が挙げられる。
【0093】
重合禁止剤として、好ましくは、ベンゾキノン化合物、ハイドロキノン化合物およびN-オキシル化合物が挙げられる。
【0094】
ベンゾキノン化合物として、例えば、パラベンゾキノンが挙げられる。
【0095】
ハイドロキノン化合物として、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、および、t-ブチルハイドロキノンが挙げられる。ハイドロキノン化合物として、好ましくは、t-ブチルハイドロキノンが挙げられる。
【0096】
重合禁止剤として、より好ましくは、ベンゾキノン化合物およびN-オキシル化合物が挙げられる。
【0097】
重合禁止剤の含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、また、例えば、0.5質量部以下、好ましくは、0.2質量部以下、より好ましくは、0.1質量部以下である。
【0098】
[離型剤]
離型剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、液体ワックス、フッ素ポリマー、および、シリコン系ポリマーが挙げられる。脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、および、ラウリン酸が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛、および、ステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【0099】
離型剤としては、好ましくは、脂肪酸金属塩、より好ましくは、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0100】
離型剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0101】
離型剤の含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、また、例えば、10質量部以下である。
【0102】
[充填材]
充填材としては、例えば、無機充填材が挙げられる。無機充填材としては、例えば、酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン)、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム)、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム)、硫酸塩(例えば、硫酸バリウム)、シリカ(例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、フュームドシリカ、乾式シリカ(アエロジル))、中空フィラー、ケイ酸塩(例えば、珪砂、珪藻土、ガラスパウダー、ガラスバルーン、マイカ、クレー、カオリン、タルク)、フッ化物(例えば、ホタル石)、リン酸塩(例えば、リン酸カルシウム)、金属粉末、セラミック、ミルドファイバー、および、粘土鉱物(例えば、スメクタイト)が挙げられる。
【0103】
充填材として、好ましくは、水酸化物および炭酸塩が挙げられる。充填材として、より好ましくは、水酸化アルミニウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。
【0104】
充填材は、単独使用または2種以上併用できる。
【0105】
充填材の含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上、より好ましくは、150質量部以上、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0106】
[着色剤]
着色剤は、特に制限されない。着色剤として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、フタロシアニンブルーなどの公知の顔料を混合したポリエステルトナーが挙げられる。
【0107】
着色剤として、好ましくは、ポリエステルトナーが挙げられる。
【0108】
着色剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0109】
着色剤の含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、20質量部以下である。
【0110】
[増粘剤]
増粘剤は、不飽和ポリエステル樹脂組成物を加熱圧縮成形に適した粘度まで増粘させるために配合される。増粘剤は、好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂組成物を強化繊維(後述)に含浸させる前(好ましくは、直前)に配合される。
【0111】
増粘剤としては、例えば、アルカリ土類金属酸化物、および、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが挙げられる。
【0112】
増粘剤として、好ましくは、アルカリ土類金属酸化物が挙げられる。増粘剤として、より好ましくは、酸化マグネシウムが挙げられる。
【0113】
増粘剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0114】
増粘剤の含有割合は、不飽和ポリエステルと重合性単量体と低収縮化剤との総量100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0115】
<不飽和ポリエステル樹脂組成物の調製>
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステルと、重合性単量体と、低収縮化剤と、銀含有抗ウイルス剤と、必要により配合される添加剤とを混合することにより調製される。
【0116】
また、上記調製において、予め、不飽和ポリエステルを、重合性単量体(好ましくは、スチレン)に溶解させ、必要により、上記添加剤を配合することにより、不飽和ポリエステル樹脂を調製することもできる。
【0117】
不飽和ポリエステル樹脂の調製においては、重合性単量体の含有割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0118】
また、不飽和ポリエステル樹脂を調製した後、この不飽和ポリエステル樹脂を、他の成分(低収縮化剤、銀含有抗ウイルス剤および添加剤)と混合する際に、さらに、重合性単量体を配合することもできる。
【0119】
不飽和ポリエステル樹脂組成物において、低収縮化剤の含有割合および銀含有抗ウイルス剤の含有割合が、それぞれ、所定の範囲である。そのため、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品は、表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる。
【0120】
そして、このような不飽和ポリエステル樹脂組成物に、強化繊維を配合させることにより、成形材料を調製できる。そして、このような成形材料から、公知の方法により、成形品を得ることができる。
【0121】
2.成形材料
成形材料は、不飽和ポリエステル樹脂組成物と強化繊維とを含む。
【0122】
<強化繊維>
強化繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維および天然繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、および、セラミック繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、フッ素樹脂系繊維、および、フェノール系繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、麻およびケナフが挙げられる。
【0123】
強化繊維として、好ましくは、無機繊維が挙げられる。強化繊維として、より好ましくは、ガラス繊維が挙げられる。
【0124】
強化繊維の形状は、例えば、クロス状(例えば、ロービングクロス)、マット状(例えば、チョップドストランドマット、プリフォーマブルマット、コンティニュアンスストランドマット、および、サーフェーシングマット)、ストランド状、ロービング状、不織布状、および、ペーパー状が挙げられる。
【0125】
強化繊維の長さは、特に制限されず、例えば、1.5mm以上、強度を向上させる観点から、好ましくは、5mm以上、より好ましくは、20mm以上であり、また、例えば、80mm以下、好ましくは、40mm以下である。
【0126】
<成形材料の調製>
成形材料を調製するには、不飽和ポリエステル樹脂組成物に、強化繊維を配合する。具体的には、強化繊維に不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させる。
【0127】
不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する方法としては、公知の方法が挙げられる。具体的には、SMC(シートモールディングコンパウンド)、TMC(シックモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)が挙げられる。好ましくは、SMC、TMCが挙げられ、より好ましくは、SMCが挙げられる。
【0128】
強化繊維の含有割合は、成形材料に対して、例えば、15質量%以上、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0129】
これにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物と強化繊維とを含む成形材料(好ましくは、シート状の成形材料)が得られる。
【0130】
そして、この成形材料は、上記不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む。そのため、この成形材料を用いて得られる成形品は、表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる。
【0131】
3.成形品
成形品は、上記成形材料の硬化物を含む。
【0132】
成形材料を、硬化させるには、まず、成形材料を、加熱圧縮成形(後述)できるように、増粘させるため、熟成する。
【0133】
熟成において、熟成温度は、例えば、20℃以上、また、例えば、50℃以下である。また、熟成時間は、例えば、8時間以上、また、例えば、120時間以下である。
【0134】
これにより、成形材料が、保形される。
【0135】
次いで、成形材料を、公知の方法により、加熱圧縮成形する。
【0136】
加熱圧縮成形の条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。加熱圧縮成形において、成形温度は、例えば、100℃以上、また、例えば、200℃以下である。また、成形圧力は、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、1MPa以上、より好ましくは、5MPa以上、また、例えば、20MPa以下、好ましくは、15MPa以下である。
【0137】
これにより、成形材料が、賦形および硬化し、成形品が得られる。
【0138】
成形品は、上記成形材料の硬化物を含む。そのため、表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる。
【0139】
また、上記した成形材料はそのまま賦形のために単一でプレス工程に付されてもよいが、裏面に銀含有抗ウイルス剤を含まない成形材料を積層して二層構造とした後に同時に一体プレス成形(二層成形)を実施することもできる。このような場合には、成形品は、銀含有抗ウイルス剤を含む成形材料から成形される第1層と、銀含有抗ウイルス剤を含まない成形材料から成形される第2層とを順に備える。銀含有抗ウイルス剤として価格の高いものを使用すると原料費が上昇するが、二層成形の実施により原料費の上昇を抑制することができる。
【0140】
二層成形の裏面に使用する成形材料(銀含有抗ウイルス剤を含まない成形材料)は、特に限定されるものではない。これにより二層成形で得られた成形材料は表面の抗ウイルス性能を毀損することなく、単一材料よりも原料費が抑制された成形品を得ることができる。
【0141】
また、銀含有抗ウイルス剤を含む成形材料(第1層の材料)に対する銀含有抗ウイルス剤を含まない成形材料(第2層の材料の重量比は、例えば、0.6以上、好ましくは、0.9以上、また、例えば、1.4以下、好ましくは、1.1以下である。
【0142】
4.作用効果
不飽和ポリエステルを使用した成形材料の成形品では、成形品表面において部分的に光沢低下を伴う外観不良が発生する事がありスカミング現象と呼ばれている。スカミングの原因は不飽和ポリエステルと相溶性の低い低収縮剤成分が成形時に分離、析出し表面を汚染するものであったり、重合性単量体が加熱圧縮成型中に気化し、成形品表面でゲル化して荒れたり、と複合要因がある
【0143】
抗ウイルス性の発現と成形品表面の凹凸について相関している事は、過去知見として得られていない。しかし鋭意検討により、不飽和ポリエステル樹脂組成物において、低収縮化剤の含有割合および銀含有抗ウイルス剤の含有割合が、それぞれ、所定の範囲とすることにより、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品は、抗ウイルス性および外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)に優れることを見出した。
【0144】
詳しくは、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品において、抗ウイルス性を向上する観点から、銀含有抗ウイルス剤の量を多くすることが検討されるが、成形品が凹凸を有する場合には、銀含有抗ウイルス剤の配合量に応じた抗ウイルス性が想定通りに発現しないという不具合があることが判った。
【0145】
一方、この不飽和ポリエステル樹脂組成物では、低収縮化剤の含有割合が所定の範囲であるため、表面の凹凸を低減することができる。そのため、銀含有抗ウイルス剤の含有割合に応じた抗ウイルス性を発現することができ、抗ウイルス性を向上させることができる。さらには、低収縮化剤の含有割合が所定の範囲であるため、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる。
【0146】
成形材料は、上記不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む。そのため、この成形材料を用いて得られる成形品は、表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる。
【0147】
成形品は、上記成形材料の硬化物を含む。そのため、表面の凹凸を低減して優れたウイルス性を発現することができるとともに、外観(光沢およびスカミングの発生の抑制)を向上させることができる。
【実施例0148】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明を一実施形態であり、本発明はこれらの記載に制限されるものではない。
【0149】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替できる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0150】
<不飽和ポリエステル樹脂の調製>
製造例1
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および攪拌機を備えたフラスコを反応器とした。この反応器に、イソフタル酸2.0mol、プロピレングリコール5.5mol、ネオペンチルグリコール5.0molを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200~210℃の温度で重縮合反応させた。酸価が10mgKOH/gになった時点で150℃まで冷却し、無水マレイン酸8.0molを仕込み、再び、210~220℃で8時間反応させて、酸価が29.0mgKOH/gの不飽和ポリエステルを得た。
【0151】
次いで、得られた不飽和ポリエステル60質量部にスチレン40質量部を混合した。これにより、不飽和ポリエステル樹脂(固形分濃度60質量%)を得た。
【0152】
<銀含有抗ウイルス剤の調製>
調製例1(銀担持リン酸ジルコニウムの調製)
オキシ硝酸ジルコニウムの水溶液を攪拌しながら、この中にリン酸を加えジルコニウムとリンの比が2:3となるよう調製した。水酸化ナトリウム水溶液にて反応液のpHを3に調整し、80時間加熱還流後、沈澱物を濾過、水洗、乾燥し、結晶性リン酸ジルコニウムを得た。次いで、得られたリン酸ジルコニウム100gを0.5wt%硝酸銀水溶液1L中に入れ60℃3時間撹拌後、得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥させ、900℃で4時間焼成後、銀担持リン酸ジルコニウム(平均粒径1μm)を得た。
【0153】
調製例2(銀担持ガラスの調製)
ガラス原料として、Pを60重量%、CaOを30重量%、Bを7重量%、AgOを3重量%の割合で万能混合機にて均一撹拌後、溶融炉を用いて、1300℃、3時間の条件で加熱し、ガラス融液を得た。次いで、得られたガラス融液を30℃の流水中に流し込みガラス体にし同時に水砕し、体積平均粒径が約10mmの粗粉砕ガラスとし、次いでボールミルにて一次中粉砕、回転ロールにて二次中粉砕、次いで祖粉砕ガラス100質量部に対し凝集シリカ粒子を7質量部添加し、縦型ミルにて微粉砕処理を実施し、体積平均一次粒子径(D50)が1μm、比表面積が88,000cm/cmである銀担持ガラスを得た。
【0154】
調製例3(銀-亜鉛担持ケイ酸カルシウムの調製)
生石灰44重量部と、SiO含有量が99%以上で平均粒径が12ミクロンの珪石52重量部、水酸化アルミニウム4重量部と水酸化カリウム2重量部、水150重量部から成る混合物を高温高圧(180℃、10Kg/cm)オートクレーブにて3時間反応させた。反応後のスラリーを蒸留水で洗浄し、上澄液がpH8以下になってから固形分を取り出し110℃で乾燥後、200~400メッシュになる様粉砕しトバモライト(ケイ酸カルシウム)を得た。次いで、得られたケイ酸カルシウム粉末3gを硝酸銀水溶液(20.0mM)500ml、硝酸亜鉛水溶液(100mM)500mlに混合し25℃で24時間反応後、固体を分離し蒸留水で洗浄後、真空乾燥させて銀-亜鉛担持ケイ酸カルシウムナトリウムを得た。
【0155】
調製例4(銀-亜鉛担持ゼオライトの調製)
市販のA型ゼオライト粉末0.5kgに水を加え撹拌、脱気後、適量の0.5N硝酸溶液を添加しpHを5~7に調整し1.0kgのスラリーとした。さらに、硝酸銀(0.09M/L)と硝酸亜鉛(0.40M/L)の混合水溶液を加えて全容を3kgとし、60℃24時間撹拌した。その後ゼオライト粉末を濾過し、水洗、加熱乾燥して銀-亜鉛担持ゼオライトを得た。
【0156】
調製例5(アクリル酸系重合ポリマー抗ウイルス剤の調製)
メタクリル酸/p-スチレンスルホン酸ソーダ=70/30の水溶性重合体300部および硫酸ナトリウム30部を6595部の水に溶解し、攪拌機付き重合槽に仕込んだ。次に、アクリロニトリル2700部及びアクリル酸メチル300部に、2、2’アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)15部を溶解して重合槽に仕込み60℃、3時間重合を行うことにより、平均粒子径78μmのニトリル基を含有する重合体粒子Aを得た。次いで、重合体粒子A10部を、該粒子30倍量のN-メチル-3,3’-イミノビス(プロピルアミン)を含む水溶液200部に浸漬し、処理温度85℃、処理時間3時間で処理、水洗、乾燥し、アクリル酸系重合ポリマー抗ウイルス剤を得た。
【0157】
<不飽和ポリエステル樹脂組成物および成形材料の調製>
実施例1
下記の成分を、順に添加しながら混合した。これにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製した。
不飽和ポリエステル樹脂:製造例1の不飽和ポリエステル樹脂78質量部(固形分濃度60質量%、不飽和ポリエステル46.8質量部、スチレン31.2質量部)
重合性単量体:スチレン10質量部
低収縮化剤:ポリスチレン溶液8質量部(固形分濃度36質量%、ポリスチレン2.8質量部、スチレン5.2質量部)、架橋ポリスチレン4質量部(固形分濃度100質量%)
銀含有抗ウイルス剤:調製例1の銀担持リン酸ジルコニウム10質量部
充填材:水酸化アルミニウム80質量部、炭酸カルシウム80質量部
重合禁止剤:パラベンゾキノン0.07質量部
硬化剤:t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート1質量部
離型剤:ステアリン酸亜鉛5質量部
着色剤:ポリエステルトナー10質量部
【0158】
次いで、不飽和ポリエステル樹脂組成物に、増粘剤として、酸化マグネシウム1.0部を添加後、強化繊維のロービングを連続的に1インチに切断した強化繊維の含有率が25質量%となるような割合で添加して、公知のSMC含浸機により、厚さ2mmのプレス用成形材料(SMC)を調製した。
【0159】
実施例2~実施例5、実施例7~実施例11、および、比較例1~比較例6
実施例1と同様の手順で、不飽和ポリエステル樹脂組成物および成形材料を調製した。但し、表1および表2の記載に基づいて、各成分の処方を変更した。
【0160】
実施例6
実施例1と同様の手順で表1記載の成分の処方にて、不飽和ポリエステル樹脂組成物および成形材料を調製し表面層成形材料(銀含有抗ウイルス剤を含む成形材料)とした。
【0161】
同様に、下記の成分を順に添加しながら混合した。これにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物および成形材料を調製し裏面層成形材料(銀含有抗ウイルス剤を含まない成形材料)とした。
不飽和ポリエステル樹脂:製造例1の不飽和ポリエステル樹脂78質量部(固形分濃度60質量%、不飽和ポリエステル46.8質量部、スチレン31.2質量部)
重合性単量体:スチレン3質量部
低収縮化剤:ポリスチレン溶液19質量部(固形分濃度36質量%、ポリスチレン6.8質量部、スチレン12.2質量部)
充填材:炭酸カルシウム160質量部
重合禁止剤:パラベンゾキノン0.04質量部
硬化剤:t-ブチルパーオキシベンゾエート1質量部
離型剤:ステアリン酸亜鉛5質量部
着色剤:ポリエステルトナー10質量部
【0162】
<評価>
[銀含有抗ウイルス剤の銀の含有量]
各銀含有抗ウイルス剤について、銀の含有量を測定した。具体的には、蛍光X線分析装置(Rigaku社製 商品名 ZSX Primus2、ロジウム管球、真空雰囲気化条件))を用いて測定した。
【0163】
各銀含有抗ウイルス剤について、銀の含有量は以下の通りであった。
調製例1の銀担持リン酸ジルコニウム:銀の含有量17質量%
調製例2の銀担持ガラス:銀の含有量3.69質量%
調製例3の銀-亜鉛担持ケイ酸カルシウム:銀の含有量1.65質量%
調製例4の銀-亜鉛担持ゼオライト:銀の含有量3.45質量%
【0164】
[試験片の製造]
実施例1~実施例5、実施例7~実施例11および、比較例1~比較例6の成形材料を、平板金板を用いて、加熱圧縮成形(成形圧:10MPa、成形温度:145℃/130℃、保圧時間:5分)して、300mm×300mm×4mmの平板状の試験片を得た。成形温度145℃側の面を表面とし性能評価は表面側について実施した。
【0165】
実施例6(二層成形の実施)
表面層成形材料と裏面層成形材料を50:50の重量比で積層して平板金型にチャージし、加熱圧縮成形(成形圧:10MPa、成形温度:145℃/130℃、保圧時間:5分)して、300mm×300mm×4mmの平板状の試験片を得た。成形温度145℃側の面を表面とし性能評価は表面側について実施した。
【0166】
[色調]
各実施例および各比較例の試験片の外観を目視で観察した。色調について以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1および表2に示す。
{基準}
良好:ポリエステルトナー(ホワイト)の色目と同じ色調であった。
黄変あり:試験片全体或いは、一部が黄着色していた。
【0167】
[外観]
(平滑性)
各実施例および各比較例の試験片について、平滑性を評価した。具体的には、試験片の表面に映った窓枠、蛍光灯などの写像の鮮映性で目視評価した。平滑性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1および表2に示す。
{基準}
○:写像に波うちがなく、光沢が良好であった。
△:写像の一部に波うちがみられ、光沢が若干不良であった。
×:写像の全体に波うちがみられ、光沢が不良であった。
【0168】
(光沢)
各実施例および各比較例の試験片(145℃成形面)について、JIS Z8741(1997年)に準拠し、入射角60°、受光角60°の条件で、光沢を測定した。測定位置は試験片四隅と中央のそれぞれとし、5つの測定値の平均を算出した。その結果を表1および表2に示す。
【0169】
(スカミング)
各実施例および各比較例の試験片表面について、目視にてスカミング発生の有無を確認した。スカミングについて、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1および表2に示す。
{基準}
○:目視によりスカミングが観測されなかった。
△:目視によりスカミングが僅かに観測された。
×:目視によりスカミングが多数観測された。
【0170】
[耐温水性]
各実施例および各比較例の試験片を、93℃温水500時間の条件下で、145℃成形面にて片面煮沸試験を実施した。色差計にて煮沸試験前後の試験片間のΔEを測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0171】
[抗ウイルス性(抗ウイルス性試験活性値)]
各実施例および各比較例の試験片について、耐久試験を実施し、抗ウイルス性を評価した。具体的には、以下の試験片に対して、抗ウイルス試験方法(ISO21702)に準拠した方法で、抗ウイルス性能試験を実施し、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値を評価した。その結果を表1および表2に示す。
【0172】
(耐久試験前の試験片)
初期の状態の試験片を評価した。
【0173】
(耐水性試験後の試験片)
SIAA(抗菌製品技術協議会)で決められている持続性試験区分の耐水区分2に準拠した。試験片を50℃の温水に16時間浸漬させた後の試験片について評価した。
【0174】
(耐光性試験後の試験片)
SIAA(抗菌製品技術協議会)で決められている持続性試験区分の耐光区分1に準拠した。試験片をサンシャインウェザオメーターにて8時間照射(サイクル120分中18分水噴霧)後の試験片について評価した。
【0175】
【表1】
【0176】
【表2】