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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143047
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20241003BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055524
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】酒井 潤
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB04
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA08
4C316FY01
4C316FY02
4C316FY05
4C316FY06
4C316FY09
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】高度な光学設計を必要とすることなく、低コスト、且つ、簡素な構成で、より高画質の被検眼の眼底の画像を取得するための新たな技術を提供する。
【解決手段】眼底撮影装置は、2以上の曲面鏡と、照明光学系と、イメージセンサとを含む。照明光学系は、被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成された開口が形成されたスリットを含み、光源からの光をスリットに照射することにより生成されたスリット状の照明光を2以上の曲面鏡を介して眼底に照射する。イメージセンサは、眼底共役位置に配置されるように構成され、被検眼からの戻り光を受光する。開口の長手方向の両端部の少なくとも一方は、開口中心を通る長手方向を基準として開口の短手方向に変位している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の曲面鏡と、
被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成された開口が形成されたスリットを含み、光源からの光を前記スリットに照射することにより生成されたスリット状の照明光を前記2以上の曲面鏡を介して前記眼底に照射する照明光学系と、
前記眼底共役位置に配置されるように構成され前記被検眼からの戻り光を受光するイメージセンサと、
を含み、
前記開口の長手方向の両端部の少なくとも一方は、開口中心を通る前記長手方向を基準として前記開口の短手方向に変位している、眼底撮影装置。
【請求項2】
前記開口は、前記開口中心から前記両端部の少なくとも一方に向かって曲線状に変化する部分を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の眼底撮影装置。
【請求項3】
前記2以上の曲面鏡のそれぞれは、1以上の焦点を有し、2以上の焦点のうち少なくとも1つを共有するように配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の眼底撮影装置。
【請求項4】
前記2以上の曲面鏡は、楕円凹面鏡を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の眼底撮影装置。
【請求項5】
前記2以上の曲面鏡は、第1楕円凹面鏡と第2楕円凹面鏡であり、
前記第1楕円凹面鏡の第1焦点は、前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置され、
前記第1楕円凹面鏡の第2焦点は、前記第2楕円凹面鏡の第3焦点に略一致し、
前記第2楕円凹面鏡の第4焦点は、前記虹彩に配置されるように構成される
ことを特徴とする請求項4に記載の眼底撮影装置。
【請求項6】
前記両端部の少なくとも一方は、前記第1楕円凹面鏡及び前記第2楕円凹面鏡に対する前記照明光の照射範囲内における前記第1楕円凹面鏡に対する前記照明光の入射角と前記第2楕円凹面鏡に対する前記照明光の入射角との差の絶対値の最大値に応じて変位している
ことを特徴とする請求項5に記載の眼底撮影装置。
【請求項7】
前記照明光学系は、前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された光スキャナを含み、前記光スキャナによって前記照明光を偏向することにより前記照明光による前記眼底の照明位置を移動可能に照明する
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の眼底撮影装置。
【請求項8】
前記イメージセンサは、ローリングシャッター方式のイメージセンサである
ことを特徴とする請求項7に記載の眼底撮影装置。
【請求項9】
前記スリットは、前記被検眼の視度に応じて前記照明光学系の光軸方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の眼底撮影装置。
【請求項10】
光軸から偏心した位置に開口が形成され、前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された虹彩絞りと、
前記2以上の曲面鏡と前記イメージセンサとの間に配置され、前記照明光の光路と前記戻り光の光路とを空間的に分割する光路分割部材と、
を含む
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の眼底撮影装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼疾患のスクリーニングや治療などを行うための眼底撮影装置(眼底撮影装置)には、簡便に広い視野で被検眼の眼底などの撮影(観察)が可能なものが求められている。具体的には、一度の撮影で、撮影画角が80度を超える広角で被検眼の眼底を撮影可能なものが求められている。このような眼底撮影装置として、走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)が知られている。SLOは、光で眼底をスキャンし、その戻り光を受光デバイスで検出することにより眼底の画像を形成する装置である。
【0003】
例えば、特許文献1には、多面鏡と平面鏡と用いた2次元の平行光走査を、走査移動手段によって被検眼に移動させて網膜を広角で走査することが可能な走査検眼鏡が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2及び特許文献3には、スリット状の照明光を用いた眼底スキャンとローリングシャッターとを組み合わせて、簡素な構成で、高コントラストの画像を取得することが可能な眼底撮影装置が開示されている。特に、特許文献3には、2つの楕円凹面鏡を介してスリット状の照明光で被検眼の眼底をスキャンすることで、被検眼の広角の眼底画像を取得する手法が開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、投影絞りに形成された開口が、光軸における開口の幅よりも広い幅を有する部分を備え、投影絞りを通過した照明光を用いて眼底スキャンを行う眼科装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009-543585号公報
【特許文献2】米国特許7831106号明細書
【特許文献3】国際公開第2022/124170号
【特許文献4】特表2017-526474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された手法では、ポリゴンミラー等の高速スキャナが必要になるが、広角でスキャンが可能な高速スキャナは非常に高価である。
【0008】
また、広角で眼底の撮影を行う場合、被検眼の瞳孔と共役な位置における分岐点において照明光の光路から戻り光の光路を空間的に分割することが望ましい。特許文献2に開示された手法では、瞳分割が困難な上に、作動距離を維持しつつ、広範囲の眼底を照明する光束と戻り光の光束とを光学有効径内に収めることが非常に困難となる。
【0009】
更に、特許文献3に開示された手法では、低コスト、且つ、簡素な構成で、広角で被検眼の眼底を撮影することが可能であるが、楕円面鏡の収差の影響を受けやすく、高度な光学設計が必要になる。
【0010】
また、特許文献4に開示された手法では、眼底からの戻り光だけでなく不要光を受光してしまい、不要光の受光に起因したコントラストの低下、フレア及び/又はゴーストの発生を招き、眼底の画像の画質が低下する。
【0011】
このような課題は、眼底の広角な画像を取得する場合でなく、眼底の画像を取得する場合にも共通する。
【0012】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、高度な光学設計を必要とすることなく、低コスト、且つ、簡素な構成で、より高画質の被検眼の眼底の画像を取得するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の1つの態様は、2以上の曲面鏡と、被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成された開口が形成されたスリットを含み、光源からの光を前記スリットに照射することにより生成されたスリット状の照明光を前記2以上の曲面鏡を介して前記眼底に照射する照明光学系と、前記眼底共役位置に配置されるように構成され前記被検眼からの戻り光を受光するイメージセンサと、を含み、前記開口の長手方向の両端部の少なくとも一方は、開口中心を通る前記長手方向を基準として前記開口の短手方向に変位している、眼底撮影装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高度な光学設計を必要とすることなく、低コスト、且つ、簡素な構成で、より高画質の被検眼の眼底の画像を取得するための新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図2】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図3】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図4】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図5】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図6】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図7】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図8】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図9A】実施形態の比較例に係る眼底撮影装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図9B】実施形態の比較例に係る眼底撮影装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図9C】実施形態の比較例に係る眼底撮影装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図10A】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図10B】実施形態の比較例に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図10C】実施形態の比較例に係る眼底撮影装置の光学系を説明するための概略図である。
図10D】実施形態の比較例に係る眼底撮影装置の光学系を説明するための概略図である。
図10E】実施形態の比較例に係る眼底撮影装置の光学系を説明するための概略図である。
図11A】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系を説明するための概略図である。
図11B】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系を説明するための概略図である。
図12A】実施形態に係る眼底撮影装置の動作を説明するための概略図である。
図12B】実施形態に係る眼底撮影装置の動作を説明するための概略図である。
図13】実施形態に係る眼底撮影装置の処理系の構成の一例を表す概略図である。
図14】実施形態に係る眼底撮影装置の動作例を表すフロー図である。
図15】実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図16】実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図17】実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置の処理系の構成の一例を表す概略図である。
図18】実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置の動作例を表すフロー図である。
図19】実施形態の第2変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図20】実施形態の第3変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る眼底撮影装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0017】
実施形態に係る眼底撮影装置は、2以上の曲面鏡を含み、2以上の曲面鏡を介してスリット状の照明光で被検眼の眼底をスキャンし、イメージセンサで被検眼からの戻り光を受光するように構成される。眼底撮影装置は、被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成された開口が形成されたスリットを含み、光源からの光をスリットに照射することでスリット状の照明光を生成する。このとき、スリットに形成された開口の長手方向の両端部の少なくとも一方は、開口中心を通る長手方向を基準として開口の短手方向に変位している。イメージセンサは、眼底共役位置に配置されるように構成される。
【0018】
ここで、スリットに形成された開口の「長手方向」は、スリットに形成された開口に外接する長方形の長辺がのびる方向(長手方向)を意味する。スリットに形成された開口の「短手方向」は、スリットに形成された開口に外接する長方形の短辺がのびる方向(短手方向)を意味する。
【0019】
いくつかの実施形態では、スリットに形成された開口は、開口中心から両端部の少なくとも一方に向かって曲線状に変化する部分を含む。例えば、スリットに形成された開口は、開口中心から両端部の少なくとも一方に向かって曲線状に変化する。
【0020】
いくつかの実施形態では、スリットに形成された開口は、開口中心から両端部の少なくとも一方に向かって直線状に変化する部分を含む。例えば、スリットに形成された開口は、開口中心から両端部の少なくとも一方に向かって直線状に変化する。いくつかの実施形態では、スリットに形成された開口は、開口中心から両端部の少なくとも一方に向かって曲線状に変化する部分と直線状に変化する部分とを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、2以上の曲面鏡のそれぞれは、1以上の焦点を有し、2以上の焦点のうち少なくとも1つを共有するように配置される。例えば、2以上の曲面鏡が有する2以上の焦点が略同一平面(焦点共有面(common plane of focal points))上に配置されるように、2以上の曲面鏡は配置される。
【0022】
例えば、眼底撮影装置は、眼底に投影され照明光により形成されるスリット像(スリットに形成された開口の像)の長手方向が、2以上の焦点を含む平面と略平行になるように照明光で眼底を照明し、当該長手方向に交差する方向(具体的には、直交する方向)に照明光で眼底をスキャンする。
【0023】
曲面鏡の例として、楕円面鏡、放物面鏡、双曲面鏡、自由曲面鏡、反射面が高次の多項式で表される鏡などがある。曲面鏡が有する反射面は、凹面状の反射面、又は、凸面状の反射面であってよい。すなわち、曲面鏡の例として、楕円凹面鏡、楕円凸面鏡、放物凹面鏡、放物凸面鏡、双曲凹面鏡、双曲凸面鏡、凹面状の反射面を有する自由曲面鏡、凸面状の反射面を有する自由曲面、反射面が高次の多項式で表される凹面鏡、反射面が高次の多項式で表される凸面鏡などがある。
【0024】
本明細書において、焦点は、曲面の形状に一意に決まる定点だけでなく、反射面により反射される光線(光束)の集光度が他の位置よりも高い位置を含む場合がある。
【0025】
焦点共有面は、2以上の曲面鏡が有するすべての焦点が配置される平面であることが望ましい。しかしながら、焦点共有面は、2以上の曲面鏡が有するすべての焦点のうち少なくとも1つを除く2以上の焦点が配置される平面であってもよい。
【0026】
眼底に投影されるスリット像は、例えば、一定のスリット幅を有し、開口中心から端部に向かって長手方向に曲線状又は直線状に変化する開口の像である。しかしながら、スリット幅は、開口中心から端部に向かって一定の幅でなくてもよい。
【0027】
曲面鏡による眼底上のスリット像の収差は、2以上の焦点の配列方向に比べて、2以上の焦点を含む焦点共有面を基準として焦点の配列方向に直交する方向に対して最小にすることができる。これにより、スリット状の照明光をリレーする2以上の曲面鏡の2以上の焦点の配列方向の収差に影響を受けることなく、眼底に投影されるスリット像と、眼底と光学的に略共役な眼底共役位置における戻り光の受光可能領域(受光領域)との分離を最小限に抑えることができるようになる。その結果、受光可能領域(受光領域)を過剰に大きくとり、スリット像とその分離分を含めるようにする必要がなくなる。受光可能領域(受光領域)を小さくとることができるため、不要な光束が撮像されないため、高度な光学設計を必要とすることなく、眼底画像のコントラストを向上させ、且つ、フレア及び/又はゴーストの発生を低減させ、より高画質の被検眼の眼底の画像を取得することが可能になる。
【0028】
実施形態に係る眼底撮影装置の制御方法は、実施形態に係る眼底撮影装置においてプロセッサ(コンピュータ)により実行される処理を実現するための1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、プロセッサに実施形態に係る眼底撮影装置の制御方法の各ステップを実行させる。実施形態に係る記録媒体(記憶媒体)は、実施形態に係るプログラムが記録(記憶)されたコンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体(記憶媒体)である。
【0029】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0030】
以下、実施形態に係る眼底撮影装置が、主に、2つの曲面鏡として2つの楕円凹面鏡を備える場合について説明する。
【0031】
以下、説明の便宜上、被検眼に入射する照明光の光軸方向をZ方向とし、Z方向に直交する水平方向(左右方向)をX方向とし、Z方向に直交する垂直方向(上下方向)をY方向とする。また、以下では、スリット像の「長手方向」は、スリット像に外接する長方形の長辺がのびる方向(長手方向)を意味し、スリット像の「短手方向」は、スリット像に外接する長方形の短辺がのびる方向(短手方向)を意味するものとする。
【0032】
<構成>
図1に、実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す。なお、図1では、被検眼の眼底と光学的に略共役な位置が眼底共役位置Pとして図示され、被検眼の虹彩(瞳孔)と光学的に略共役な位置が虹彩共役位置(瞳孔共役位置)Qとして図示されている。
【0033】
実施形態に係る眼底撮影装置1は、照明光学系10と、撮影光学系20と、光路分割部材としての穴鏡30と、リレーレンズ40と、リレー光学系50とを含む。いくつかの実施形態では、リレー光学系50は、リレーレンズ40を含む。
【0034】
(照明光学系10)
照明光学系10は、スリット投影光学系として、スリット状の照明光(光束断面形状がスリット状の照明光)を生成し、生成された照明光を穴鏡30に投射する。照明光学系10は、照明光源11と、虹彩絞り12と、リレーレンズ13と、スリット14と、リレーレンズ15と、光スキャナ16と、リレーレンズ17とを含む。いくつかの実施形態では、リレーレンズ13、15、17の少なくとも1つは、1以上のレンズを含む。
【0035】
照明光源11は、可視領域の光を発生する可視光源を含む。例えば、照明光源11は、420nm~700nmの波長範囲の中心波長を有する光を発生する。このような照明光源11は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、ハロゲンランプ、又はキセノンランプを含む。いくつかの実施形態では、照明光源11は、白色光源又はRGBの各色成分の光を出力可能な光源を含む。いくつかの実施形態では、照明光源11は、赤外領域の光又は可視領域の光を切り換えて出力することが可能な光源を含む。
【0036】
虹彩絞り12(具体的には、開口)は、被検眼Eの虹彩(瞳孔)と光学的に共役な位置又はその近傍である虹彩共役位置Qに配置可能である。虹彩絞り12には、照明光源11から出力される光の光路の光軸から離れた位置に1以上の開口が形成されている。虹彩絞り12に形成された開口は、被検眼Eの虹彩における照明光の入射位置(入射形状)を規定する。
【0037】
いくつかの実施形態では、照明光源11と虹彩絞り12に形成された開口との間の相対位置を変更可能に構成される。これにより、虹彩絞り12に形成された開口を通過する光の光量分布を変更することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、照明光源11は、虹彩絞り12の機能を有する。この場合、照明光源11において虹彩絞り12の機能を実現する部材が、虹彩共役位置Qに配置される。
【0039】
スリット14(具体的には、開口)は、被検眼Eの眼底Efと光学的に共役な位置又はその近傍である眼底共役位置Pに配置可能である。スリット14に形成された開口は、被検眼Eの眼底Efにおける照明領域の形状(照射パターン形状)を規定する。照明光源11から出射された照明光は、スリット14を通過し、スリット状の照明光として眼底Efに投影される。
【0040】
スリット14は、図示しない移動機構(具体的には、後述の移動機構14D)により照明光学系の光軸方向に移動可能である。これにより、被検眼Eの状態(具体的には、視度(屈折力)又は眼底Efの形状)に応じてスリット14の位置を移動することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、スリット14は、被検眼Eの状態に応じて、光軸方向に移動されることなく開口の位置及び形状の少なくとも1つを変更可能に構成される。このようなスリット14の機能は、例えば液晶シャッターにより実現される。
【0042】
光スキャナ16(具体的には、偏向面)は、被検眼Eの虹彩(瞳孔)と光学的に共役な位置又はその近傍である虹彩共役位置Qに配置可能である。光スキャナ16は、所定の偏向方向に偏向面の向きを変更する一軸の光スキャナである。光スキャナ16は、スリット14を通過することにより形成されたスリット状の照明光を1次元的に偏向する。光スキャナ16は、眼底Efに投影されたスリット状の照明光により形成されるスリット像の長手方向に交差する方向(具体的には、直交する方向)に照明光を偏向する。これにより、スリット像が、スリット像の長手方向に交差する方向(スキャン方向)に移動する。
【0043】
光スキャナ16は、例えば、ガルバノスキャナ、MEMS(Micro Electro Mechanical System)スキャナ、ポリゴンミラー、又は、レゾナントスキャナを含む。例えば、光スキャナ16は、所定の偏向方向を基準に所定の偏向角度範囲で照明光を偏向するガルバノスキャナを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、光スキャナ16は、スリット状の照明光を2次元的に偏向する二軸の光スキャナである。例えば、光スキャナ16は、第1スキャナと、第2スキャナとを含む。第1スキャナは、眼底Efにおける照明領域を照明光学系10の光軸に直交する水平方向に移動するように照明光を偏向する。第2スキャナは、眼底Efにおける照明領域を照明光学系10の光軸に直交する垂直方向に移動するように、第1スキャナにより偏向された照明光を偏向する。
【0045】
虹彩絞り12に形成された開口を通過した照明光源11からの光は、リレーレンズ13を透過し、スリット14に形成された開口を通過し、スリット状の照明光として出力される。スリット14から出射したスリット状の照明光は、リレーレンズ15を透過し、光スキャナ16により1次元的に偏向され、リレーレンズ17を透過し、穴鏡30に導かれる。
【0046】
いくつかの実施形態では、照明光学系10は、光源を備えたプロジェクタを含み、プロジェクタがスリット状の照明光を出力する。この場合、図1の照明光源11、虹彩絞り12、リレーレンズ13、及び、スリット14に代えて、プロジェクタが設けられる。プロジェクタには、透過型液晶パネルを用いたLCD(Liquid Crystal Display)方式のプロジェクタ、反射型液晶パネルを用いたLCOS(Liquid Crystal On Silicon)方式のプロジェクタ、DMD(Digital Mirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式のプロジェクタなどがある。
【0047】
(穴鏡30)
穴鏡30(具体的には、後述の穴部)は、虹彩共役位置Qに配置可能である。穴鏡30は、照明光の光路と、照明光が照射された被検眼Eからの戻り光の光路とを空間的に分割する光路分割部材である。
【0048】
穴鏡30には、基体の中心部に光軸が通過する穴部が形成され、中心部の周辺部に光を反射させる反射面が設けられている。図1では、撮影光学系20の光軸が穴部を通過するように配置された穴鏡30は、周辺部に設けられた反射面で、照明光学系10からの照明光を反射して被検眼Eに導くように構成される。いくつかの実施形態では、照明光学系10の光軸が穴部を通過するように配置された穴鏡30は、周辺部に設けられた反射面で、被検眼Eからの戻り光を撮影光学系20に導くように構成される。いくつかの実施形態では、穴鏡30には、基体の一方の側に光軸が通過する穴部が形成され、基体の他方の側に光を反射させる反射面が設けられている。この場合、穴部を通過した光が撮影光学系20に導かれ、反射面で反射した光が被検眼Eに導かれる。あるいは、逆に、穴部を通過した光が被検眼Eに導かれ、反射面で反射した光が撮影光学系20に導かれる。
【0049】
照明光学系10からの照明光は、穴鏡30に形成された穴部の周辺部の反射面で反射され、リレーレンズ40に導かれる。被検眼Eからの戻り光は、リレーレンズ40を透過し、穴鏡30に形成された穴部を通過し、撮影光学系20に導かれる。
【0050】
いくつかの実施形態では、穴鏡30に代えて、ビームスプリッター、ハーフミラー、多面ミラー、又は、ダイクロイックミラーが配置される。
【0051】
(撮影光学系20)
撮影光学系20は、スリット受光光学系として、穴鏡30に形成された穴部を通過した被検眼Eからの戻り光を受光する。ここで、被検眼Eからの戻り光は、被検眼Eに入射した照明光の散乱光(反射光)である。いくつかの実施形態では、被検眼Eからの戻り光には、被検眼Eに入射した照明光の散乱光(反射光)、及び、被検眼Eに入射した照明光を励起光とする蛍光及びその散乱光が含まれる。
【0052】
撮影光学系20は、イメージセンサ21と、合焦レンズ22とを含む。
【0053】
合焦レンズ22は、図示しない移動機構(具体的には、後述の移動機構22D)により撮影光学系20の光軸方向に移動可能である。これにより、被検眼Eの状態に適合させ、被検眼Eからの戻り光をイメージセンサ21の受光面に結像させることができる。
【0054】
イメージセンサ21は、ピクセル化された受光器としての2次元イメージセンサの機能を実現する。イメージセンサ21の受光面(検出面、撮像面)は、眼底共役位置Pに配置可能である。イメージセンサ21は、眼底共役位置Pにおいて仮想的に移動可能な受光可能領域(受光領域)を設定可能である。
【0055】
例えば、イメージセンサ21による受光結果は、ローリングシャッター方式により取り込まれて読み出される。いくつかの実施形態では、イメージセンサ21による受光結果は、受光可能領域を変更可能又は移動可能なグローバルシャッター方式によって、取り込まれて読み出される。いくつかの実施形態では、後述の制御部は、イメージセンサ21を制御することにより受光結果の読み出し制御を行う。いくつかの実施形態では、イメージセンサ21は、受光位置を示す情報と共に、あらかじめ決められたライン分の受光結果を自動的に出力することが可能である。
【0056】
このようなイメージセンサ21は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含む。この場合、イメージセンサ21は、ロウ方向に配列された複数のピクセル(受光素子)群がカラム方向に配列された複数のピクセルを含む。具体的には、イメージセンサ21は、2次元的に配列された複数のピクセルと、複数の垂直信号線と、水平信号線とを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、イメージセンサ21は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを含む。
【0058】
このようなイメージセンサ21に対してローリングシャッター方式で戻り光の受光結果を取り込む(読み出す)ことにより、ロウ方向に延びる所望の仮想的な開口形状に対応した受光可能領域における像が取得される。このような制御については、例えば、特許文献2又は米国特許第8237835号明細書等に開示されている。
【0059】
照明光学系10からの照明光が照射された被検眼Eからの戻り光は、穴鏡30に形成された穴部を通過し、合焦レンズ22を透過し、イメージセンサ21の受光面に結像する。
【0060】
いくつかの実施形態では、合焦レンズ22とイメージセンサ21との間に、1以上のリレーレンズが配置される。
【0061】
(リレー光学系50)
リレー光学系50は、リレーレンズ40と被検眼Eとの間に配置される。リレー光学系50は、照明光学系10により生成されたスリット状の照明光により形成されるスリット像を被検眼Eの眼底Efにリレーする。リレー光学系50は、画角拡張機能を有する反射光学系を含む。この場合、リレー光学系50は、更に、収差補正レンズ等の屈折光学系を含んでもよい。いくつかの実施形態では、リレー光学系50は、画角拡張機能を有さない。
【0062】
図2及び図3に、図1のリレー光学系50の具体的な構成例を示す。図2は、上から見たときのリレー光学系50の構成例(XZ平面)を模式的に表す。図3は、横から見たときのリレー光学系50の構成例(YZ平面)を模式的に表す。図2及び図3において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0063】
図2及び図3に示すように、リレー光学系50は、第1楕円凹面鏡51と、第2楕円凹面鏡52とを含む。
【0064】
(第1楕円凹面鏡51)
第1楕円凹面鏡51の反射面は、凹面状の楕円面である。第1楕円凹面鏡51は、曲面鏡又は凹面鏡の一例である。
【0065】
第1楕円凹面鏡51は、光学的に共役な2つの焦点(第1焦点F1、第2焦点F2)を有する。リレーレンズ40は、虹彩共役位置(瞳孔共役位置)Qが第1焦点F1と略一致するように配置される。
【0066】
(第2楕円凹面鏡52)
第2楕円凹面鏡52の反射面は、凹面状の楕円面である。第2楕円凹面鏡52は、曲面鏡又は凹面鏡の一例である。
【0067】
第2楕円凹面鏡52は、光学的に共役な2つの焦点(第1焦点F3、第2焦点F4)を有する。第2楕円凹面鏡52は、第1焦点F3が第1楕円凹面鏡51の第2焦点F2と略一致するように配置される。いくつかの実施形態では、第2楕円凹面鏡52は、第1焦点F3が第1楕円凹面鏡51の第2焦点F2と光学的に共役な位置(第2焦点F2の共役位置)又はその近傍に略一致するように配置される。第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4には、被検眼E(虹彩)が配置される。すなわち、第2楕円凹面鏡52は、第2焦点F4が、被検眼Eが配置される被検眼位置に略一致するように配置される。
【0068】
更に、図2に示すように、第1楕円凹面鏡51の2つの焦点(第1焦点F1、第2焦点F2)と第2楕円凹面鏡52の2つの焦点(第1焦点F3、第2焦点F4)とが略同一平面(焦点共有面PL)に配置されるように、第1楕円凹面鏡51と第2楕円凹面鏡52とが配置される。また、スリット14は、眼底Efに投影されるスリット状の照明光により形成されるスリット像の長手方向が焦点共有面PLと略平行になるように配置される。いくつかの実施形態では、スリット14は、位置合わせが行われた状態で、眼底Efに投影されるスリット状の照明光により形成されるスリット像の長手方向が焦点共有面PL上に配置される。
【0069】
図4に、スリット像の長手方向と図3の第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52の焦点との関係を模式的に示す。図4において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0070】
ここで、眼底Efにおけるスリット像の長手方向をベクトルLVと表し、スリット像の長手方向に直交する方向をベクトルSと表す。また、第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4から第1焦点F3に向かうベクトルをベクトルf1と表し、第1楕円凹面鏡51の第2焦点F2から第1焦点F1に向かうベクトルをベクトルf2と表す。焦点共有面PLの法線ベクトルをベクトルnと表すと、ベクトルnは、式(1)のように表される。このとき、スリット像の長手方向と、第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52の焦点とは、式(2)に示すように、上記のベクトルSとベクトルnとは平行になるように配置される。
【0071】
【数1】
【0072】
図5図8に、実施形態に係る第1楕円凹面鏡51の焦点と第2楕円凹面鏡52の焦点と眼底Efに投影されるスリット像との関係を示す。図5図8は、第1楕円凹面鏡51、第2楕円凹面鏡52、及び、被検眼Eの3次元的な位置関係の一例を示すワイヤーフレームを表す。図5図8において、第1楕円凹面鏡51に入射するスリット像の長手方向(Ld)と被検眼Eの眼底Efに投影されるスリット像の長手方向(Ld)とが図示されている。
【0073】
図5は、横方向(X方向)から見たときの第1楕円凹面鏡51と第2楕円凹面鏡52とスリット像の長手方向Ldとの関係を示すワイヤーフレームを表す。図6は、第2楕円凹面鏡52の反射面に対向する側から見たときの第1楕円凹面鏡51と第2楕円凹面鏡52とスリット像の長手方向Ldとの関係を示すワイヤーフレームを表す。図7は、上方向(Y方向)から見たときの第1楕円凹面鏡51と第2楕円凹面鏡52とスリット像の長手方向Ldとの関係を示すワイヤーフレームを表す。図8は、斜め方向から見たときの第1楕円凹面鏡51と第2楕円凹面鏡52とスリット像の長手方向Ldとの関係を示すワイヤーフレームを表す。図5図8において、図2及び図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0074】
例えば、図2に示すように、第1楕円凹面鏡51の第1焦点F1、第2焦点F2と第2楕円凹面鏡52の第1焦点F3、第2焦点F4とは、同一平面(焦点共有面PL)上に配置される。照明光学系10は、上記のように、スリット像の長手方向Ldが上記の焦点共有面に略平行になるようにスリット状の照明光を第1楕円凹面鏡51に入射することで、上記の焦点共有面に長手方向Ldが平行なスリット像を被検眼Eの眼底Efに投影する。より具体的には、照明光学系10は、スリット像の長手方向Ldが上記の焦点共有面上に配置されるスリット状の照明光を第1楕円凹面鏡51に入射することで、上記の焦点共有面に長手方向Ldが平行なスリット像を被検眼Eの眼底Efに投影する。照明光学系10は、光スキャナ16により、このスリット像を長手方向Ldに直交する方向にスキャンすることで眼底Efを照明光でスキャンする。
【0075】
以上のような構成において、照明光学系10からのスリット状の照明光は、第1楕円凹面鏡51の反射面で反射され、第1楕円凹面鏡51の第2焦点F2に導かれる。第2焦点F2(第1焦点F3)に導かれた照明光は、第2楕円凹面鏡52の反射面に導かれ、この反射面で反射され、第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4に配置された被検眼Eに導かれる。
【0076】
被検眼Eに導かれた照明光は、瞳孔を通じて眼内に入射し、眼底Efに照射される。被検眼Eからの戻り光は、瞳孔を通じて被検眼Eの外部に出射され、往路と同じ経路を逆向きに進行して、第1楕円凹面鏡51の第1焦点F1に導かれる。第1焦点F1に導かれた戻り光は、上記のように、穴鏡30に形成された穴部を通過し、撮影光学系20に導かれる。撮影光学系20では、イメージセンサ21の受光面で戻り光が受光され、受光面において設定された受光可能領域における戻り光の受光結果が取り込まれる。
【0077】
このような眼底撮影装置1では、被検眼Eの前眼部からのフレアを軽減するために、被検眼Eの虹彩付近(第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4付近)において照明光束と受光光束(撮影光束)とが分離されることが望ましい。この場合、照明光束が通る照明光学系10の光束通過領域と受光光束が通る撮影光学系20の光束通過領域の少なくとも一方が、第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4と一致しなくなる。
【0078】
図9A図9Cに、実施形態の比較例における照明光束と受光光束の説明図を示す。図9Aは、眼底Efにおける照明光束の照射位置Sp1、Sp2を模式的に表す。図9Bは、眼底Efの照射位置における照明光束ILと受光光束RLとを模式的に表したものである。図9Cは、眼底Efの照射位置Sp2における照明光束ILと受光光束RLとを模式的に表したものである。図9A図9Cにおいて、図1図8と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0079】
図9Aに示す眼底Efの照射位置Sp1では、図9Bに示すように、眼内に入射する照明光束ILと眼内から出射する受光光束RLは、眼底Ef上で一致する。これに対して、図9Aに示す眼底Efの照射位置Sp2では、図9Cに示すように、眼内に入射する照明光束ILと眼内から出射する受光光束RLが眼底Ef上で一致しない。その結果、照射位置Sp1における受光光束RLにより形成される像と、照射位置Sp2における受光光束RLにより形成される像とに違いが生じ、イメージセンサ21の受光面において形成されるスリット像の歪みが生じる。これは、被検眼Eの虹彩における照明光束の照射位置が第2焦点F4からから離れるほど、スリット像の歪みが大きく変化することを意味する。この場合、イメージセンサ21における仮想的な開口範囲としてあらかじめ設定される受光可能領域(露光領域)内にスリット像が収まらず、画質の劣化を招く。
【0080】
そこで、本実施形態では、イメージセンサ21に対する読み出し制御を複雑化させることなく、イメージセンサ21においてあらかじめ設定された受光可能領域の形状に合わせて、スリット14に形成された開口の形状が変形される。
【0081】
図10A図10Eに、実施形態に係るスリット14に形成される開口の形状を説明するための概略図を示す。図10Aは、スリット14に形成された開口SLを模式的に表す。図10Bは、被検眼Eの虹彩における照明光束の光束通過領域を模式的に表す。図10C図10Eは、図10Bの照明光束の光束通過領域経路に応じて、眼底Efに投影されるスリット像を模式的に表したものである。
【0082】
図10Aに示す開口SLを通過した照明光源11からの光は、図2のc-c′方向に直交する方向に長手方向が沿うスリット状の照明光として出射される。スリット14に形成された開口SLの長手方向の両端部の一方は、開口中心OPcを通る長手方向(図10AではY方向)を基準として開口SLの短手方向(図10AではX方向)にΔM1だけ変位している。開口SLの長手方向の両端部の他方は、開口中心OPcを通る長手方向を基準として開口SLの短手方向にΔM2だけ変位している。ここで、開口中心OPcは、開口SLの長手方向の中心における開口SLの幅を規定する短手方向の中心位置に相当する。すなわち、スリット14には、開口中心OPcから両端部に向かって長手方向に曲線状に変化するように形成された開口SLが形成されている。図10Aにおいて、開口SLは、開口中心OPcから両端部の少なくとも一方に向かって曲線状に変化する部分を含む。
【0083】
図10B図10Eにおいて、スリット14に形成された開口SLの形状が長手方向にのびる矩形形状であるものとする。
【0084】
照明光束の光束通過領域の位置が第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4にあるとき、図10Cに示すように、長手方向にのびるスリット像(R2)が投影される(スリット像の端部が短手方向に変位しない)。
【0085】
これに対して、照明光束の光束通過領域の位置が第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4から変位しているとき、図10D、及び図10Eに示すように、長手方向にのびるスリット像(R1、R3)が投影される。これらのスリット像の端部は、短手方向に変位する。すなわち、照明光束の光束通過領域が第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4から離れるほど、本来、短手方向に変位しないはずのスリット像の端部が短手方向に変位する。
【0086】
一方、実施形態に係るスリット14に形成された開口SLの両端部の少なくとも一方は、第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52に対する照明光の照射範囲内における第1楕円凹面鏡51に対する照明光の入射角と第2楕円凹面鏡52に対する照明光の入射角との差の絶対値の最大値に応じて変位している。
【0087】
以下、スリット14に形成された開口SLの両端部の変位について説明する。角倍率が大きくなるように楕円凹面鏡を傾けると、楕円凹面鏡の反射面に対する照明光の入射位置によって、照明光の眼内への入射角が大きく変化する。このとき、光軸(図10Bの入射位置Mを通る光束)に対して、スリット像に非対称的な歪みが生ずる。
【0088】
ここで、第1楕円凹面鏡51の反射面における入射位置Lに入射する照明光の入射角をθL1とし、第2楕円凹面鏡52の反射面に入射する照明光の入射角をθL2とする。また、第1楕円凹面鏡51の反射面における入射位置Mに入射する照明光の入射角をθM1とし、第2楕円凹面鏡52の反射面に入射する照明光の入射角をθM2とする。更に、第1楕円凹面鏡51の反射面における入射位置Nに入射する照明光の入射角をθN1とし、第2楕円凹面鏡52の反射面に入射する照明光の入射角をθN2とする。
【0089】
照明光の各光束について、第1楕円凹面鏡51の入射角と第2楕円凹面鏡52の入射角との差Δθは、第1楕円凹面鏡51の反射面に対する照明光の入射位置によって変化する。入射位置Lを通る光束については、入射角の差Δθ=|θL1-θL2|となる。入射位置Mを通る光束については、入射角の差Δθ=|θM1-θM2|となる。入射位置Mを通る光束については、入射角の差Δθ=|θN1-θN2|となる。ここで、Δθ>Δθ>Δθである。
【0090】
図10Bの入射位置Lを通る光束のように、第1楕円凹面鏡51と第2楕円凹面鏡52の入射角の差Δθが大きいほど、図10Bの入射位置Mを通る場合のスリット像からの乖離が大きくなる(曲がりが大きくなる)。これに対して、図10Bの入射位置Nを通る光束のように、第1楕円凹面鏡51と第2楕円凹面鏡52の入射角の差Δθが小さいほど、図10Bの入射位置Mを通る場合のスリット像からの乖離が小さくなる(曲がりが小さくなる)。
【0091】
従って、スリット14に形成された開口SLの端部の少なくとも一方を、第1楕円凹面鏡51に対する照明光の入射角と第2楕円凹面鏡52に対する照明光の入射角との差の絶対値の最大値に応じて変位させることで、眼底Efに投影されたスリット像からの乖離を解消することができる。
【0092】
図11A、及び図11Bに、スリット状の照明光と、イメージセンサ21における受光可能領域とを模式的に示す。図11Aは、イメージセンサ21の受光面SRにおける受光可能領域LAを模式的に表す。図11Bは、眼底Efに投影されるスリット像SL0とイメージセンサ21の受光面における受光可能領域LA0とを模式的に表す。
【0093】
スリット14に形成された開口を通過することにより生成されたスリット状の照明光は、上記のように、光スキャナ16により偏向され、第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52を介して被検眼Eの瞳孔を通じて眼内に入射し、眼底Efにおいて投影される。光スキャナ16は、図11Bに示すように、眼底Efにおけるスリット像SL0の長手方向(図3のd-d′方向)に直交する方向に、スリット像SL0により規定される照明領域が移動するようにスキャンされる。
【0094】
図11Aに示すように、イメージセンサ21は、受光面SRにおける受光可能領域LAを仮想的に移動可能に構成される。これにより、被検眼Eからの不要光の受光に起因したコントラストの低下、フレア及び/又はゴーストの発生を防ぐことができる。イメージセンサ21は、眼底Efにおける照明光の照明領域の移動に同期して、受光面SRにおける受光可能領域LAの位置を変更する。具体的には、図11Bに示すように、眼底Efにおけるスリット像SL0の範囲を含むように、眼底Efにおける受光可能領域LA0に対応してイメージセンサ21の受光可能領域LAが設定される。すなわち、図2のb-b′方向に直交する方向に長手方向が沿う帯状に受光可能領域LAが設定され、眼底Efにおけるスリット像SL0の移動に同期して、イメージセンサ21は、スリット像SL0の範囲を含むように、受光可能領域LA0に対応して受光面SRにおける受光可能領域LAを順次に移動させる。
【0095】
理想的には、眼底Efにおいて、スリット像SL0と受光可能領域LA0は一致することが望ましい。しかしながら、光学系の収差に起因して、受光可能領域LA0をスリット像SL0より広くする必要がある。
【0096】
図12Aに、実施形態の比較例に係る眼底撮影装置の動作説明図を示す。図12Aは、スリット状の照明光によりスキャンされる被検眼EをX方向から見たときの側面図(Side View)と、Y方向から見たときの上面図(Top View)とを模式的に表す。
【0097】
実施形態の比較例では、スリット像の長手方向が上記の焦点共有面に直交し、眼底Efにおいてスリット像の長手方向に直交する方向にスキャンされるものとする(すなわち、上記の焦点共有面がスキャン方向SDに一致又は平行)。
【0098】
本比較例では、眼底Efに投影されたスリット像SIA0がスキャン方向SDに沿って移動される。この場合、光学系の収差に起因して、光軸から離れるほど、照明光束ILによって照明される照明領域IA0(IA1)とイメージセンサ21の受光面における受光領域SA0(SA1)とが分離する。従って、受光領域SA0からの受光光束RLの受光量の低下を抑えるために、図11Bの受光可能領域LA0をスリット像SL0より広くする必要がある。
【0099】
図12Bに、実施形態に係る眼底撮影装置1の動作説明図を示す。図12Bは、図12Aと同様に、スリット状の照明光によりスキャンされる被検眼EをX方向から見たときの側面図(Side View)と、Y方向から見たときの上面図(Top View)とを模式的に表す。
【0100】
実施形態では、上記のように、スリット像の長手方向が上記の焦点共有面に一致又は略平行であり、眼底Efにおいてスリット像の長手方向に直交する方向にスキャンされる。
【0101】
すなわち、実施形態では、眼底Efに投影されたスリット像SIA1がスキャン方向SDに沿って移動される。楕円凹面鏡等の曲面鏡による眼底上のスリット像の収差は、2以上の焦点の配列方向に比べて、2以上の焦点を含む焦点共有面を基準として焦点の配列方向に直交する方向に対して最小にすることができる。従って、光軸から離れても、照明光束ILによって照明される照明領域IA0(IA1)と受光領域SA0(SA1)との分離を最小限に抑えることができる。従って、受光領域SA0からの受光光束RLの受光量が低下を抑える必要がなく、図11Bの受光可能領域LA0とスリット像SL0との分離を最小にすることが可能になり、コントラストを向上させ、フレア及び/又はゴーストの発生を大幅に低減することができる。
【0102】
なお、図12A及び図12Bでは、照明光束ILと受光光束RLのそれぞれが、虹彩上部及び虹彩下部を通過するように図示されているが、これに限定されるものではない。例えば、照明光束ILと受光光束RLが、虹彩において空間的に分離されていればよく、照明光束ILが周辺部を、受光光束RLが中央部を通過していてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52の少なくとも一方は、反射面が凸面状に形成された凸面鏡(例えば、楕円凸面鏡)である。いくつかの実施形態では、第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52の少なくとも一方は、反射面が自由曲面である曲面鏡である。
【0104】
眼底撮影装置1には、図1に示す構成に加え、被検眼Eと光学系との位置合わせを行うためのアライメント光学系が設けられてもよい。
【0105】
また、眼底撮影装置1は、検査に付随する機能を提供するための構成を備えていてよい。例えば、眼底撮影装置1には、被検眼Eを固視させるための視標(固視標)を被検眼Eの眼底Efに投影するための固視光学系が設けられていてよい。更に、眼底撮影装置1には、被検者の顔を支持するための部材(顎受け、額当て等)等の任意の要素やユニットが設けられてもよい。
【0106】
実施形態では、スリット14の移動、及び/又は、合焦レンズ22の移動により被検眼Eの眼底Efに対して合焦可能に構成されているが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、眼底撮影装置は、図示しない移動機構により光学系全体(照明光学系10、撮影光学系20、穴鏡30、及びリレーレンズ40、或いは、照明光学系10、撮影光学系20、穴鏡30、リレーレンズ40、第1楕円凹面鏡51、及び第2楕円凹面鏡52)を移動可能に構成される。
【0107】
穴鏡30は、実施形態に係る「光路分割部材」の一例である。第2楕円凹面鏡52の第1焦点F3は、実施形態に係る「第2楕円凹面鏡の第3焦点」の一例である。第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4は、実施形態に係る「第2楕円凹面鏡の第4焦点」の一例である。
【0108】
図13に、実施形態に係る眼底撮影装置1の処理系の構成例を示す。図13において、図1図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0109】
眼底撮影装置1の処理系は、制御部60を中心に構成される。制御部60は、眼底撮影装置1の各部の制御を行う。
【0110】
制御部60は、主制御部61と、記憶部62とを含む。主制御部61の機能は、例えばプロセッサにより実現される。記憶部62には、眼底撮影装置1を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このコンピュータプログラムには、照明光源制御用プログラム、イメージセンサ制御用プログラム、光スキャナ制御用プログラム、画像形成用プログラム、画像歪み補正用プログラム、及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部61が動作することにより、制御部60は制御処理を実行する。
【0111】
(主制御部61)
主制御部61は、照明光学系10、撮影光学系20、画像形成部70、画像歪み補正部71、及びユーザインターフェイス(User Interface:UI)部80の各部を制御する
【0112】
照明光学系10に対する制御には、照明光源11に対する制御、移動機構14Dに対する制御、光スキャナ16に対する制御などがある。
【0113】
照明光源11に対する制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。
【0114】
移動機構14Dは、スリット14を照明光学系10の光軸方向に移動する。主制御部61は、移動機構14Dに対して制御信号を出力することにより、制御信号に対応した移動量及び移動方向にスリット14を移動する。例えば、眼底撮影装置1には、移動機構14Dを移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。移動機構14Dは、主制御部61からの制御を受けたアクチュエータにより発生した駆動力を伝達機構から受けて、スリット14を光軸方向に移動する。
【0115】
光スキャナ16に対する制御には、照明光を偏向する偏向面の角度の制御が含まれる。偏向面の角度を制御することで、照明光の偏向方向(スキャン方向)を制御することが可能である。偏向面の角度範囲を制御することで、スキャン範囲(スキャン開始位置及びスキャン終了位置)を制御することが可能である。偏向面の角度の変更速度を制御することで、スキャン速度を制御することが可能である。
【0116】
いくつかの実施形態では、焦点共有面の向きが変更可能な場合、光スキャナ16は、偏向された焦点共有面の向きの変更に連動して、照明光の偏向方向を変更可能に構成される。
【0117】
撮影光学系20に対する制御には、イメージセンサ21に対する制御、移動機構22Dに対する制御などがある。
【0118】
イメージセンサ21に対する制御には、受光面における受光可能領域の設定制御、ローリングシャッター方式で受光結果を読み出すための制御(例えば、照明パターンのサイズに対応した受光サイズの設定等)が含まれる。また、イメージセンサ21の制御には、リセット制御、露光制御、電荷転送制御、出力制御などが含まれる。
【0119】
移動機構22Dは、合焦レンズ22を撮影光学系20の光軸方向に移動する。主制御部61は、移動機構22Dに対して制御信号を出力することにより、制御信号に対応した移動量及び移動方向に合焦レンズ22を移動する。例えば、眼底撮影装置1には、移動機構22Dを移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。移動機構22Dは、主制御部61からの制御を受けたアクチュエータにより発生した駆動力を受けて、合焦レンズ22を光軸方向に移動する。
【0120】
画像形成部70に対する制御には、イメージセンサ21により得られた受光結果から被検眼Eの画像を形成する画像形成制御などがある。
【0121】
画像歪み補正部71に対する制御には、画像形成部70により形成された画像の歪みを補正する画像歪み補正制御などがある。
【0122】
いくつかの実施形態では、記憶部62には、事前に取得された画像の歪みを補正するための歪み補正パラメータがあらかじめ記憶されている。主制御部61は、記憶部62に記憶された歪み補正パラメータに基づいて画像歪み補正部71を制御することで、画像形成部70により形成された画像の歪みを補正させる。
【0123】
いくつかの実施形態では、主制御部61は、画像歪み補正部71を制御し、画像形成部70により形成された画像の歪みを特定させ、特定された画像の歪みに基づいて歪み補正パラメータを算出させる。算出された歪み補正パラメータは、記憶部62に保存される。主制御部61は、算出された歪み補正パラメータに基づいて画像歪み補正部71を制御することで、画像形成部70により形成された画像の歪みを補正させる。
【0124】
UI部80に対する制御には、表示デバイスに対する制御、操作デバイス(入力デバイス)に対する制御などがある。
【0125】
(記憶部62)
記憶部62は、各種のデータを記憶する。記憶部62に記憶されるデータとしては、例えば、イメージセンサ21により得られた受光結果、画像形成部70により形成された画像の画像データ、画像歪み補正部71による画像歪み補正制御に用いられる歪み補正パラメータ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。
【0126】
また、記憶部62には、眼底撮影装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0127】
(画像形成部70)
画像形成部70は、ローリングシャッター方式によりイメージセンサ21から読み出された受光結果に基づいて、任意の受光可能領域に対応した受光像(眼底像)を形成することが可能である。画像形成部70は、受光可能領域に対応した受光像を順次に形成し、形成された複数の受光像から被検眼Eの画像を形成することが可能である。画像形成部70により形成された各種の画像(画像データ)は、例えば記憶部62に保存される。
【0128】
例えば、画像形成部70は、プロセッサを含み、記憶部等に記憶されたプログラムに従って処理を行うことで、上記の機能を実現する。
【0129】
(画像歪み補正部71)
画像歪み補正部71は、画像形成部70により形成された画像の歪みを補正する。画像歪み補正部71は、あらかじめ決められた歪み補正パラメータ、又は、画像の歪み度合いに対応した歪み補正パラメータに基づいた画像の歪みを補正する。
【0130】
例えば、画像歪み補正部71は、オリジナル画像内の多角形状の1以上の領域のそれぞれが所定形状の領域となるように各領域内の画素位置を補正することで画像の歪み補正を行う。いくつかの実施形態では、画像歪み補正部71は、あらかじめ決められた補正領域にだけ画像の歪み補正を行う。
【0131】
いくつかの実施形態では、記憶部62には、歪み補正パラメータが画像の所定の分割領域毎にあらかじめ記憶されており、画像歪み補正部71は、画像の分割領域毎に記憶部62から読み出された、当該分割領域に対応した歪み補正パラメータに基づいて画像の歪み補正を行う。
【0132】
いくつかの実施形態では、画像歪み補正部71は、図10Aに示すスリット14に形成された開口の形状に基づいて眼底Efにスリット像を投影することにより得られた画像に対し、更に、画像歪み補正を補完的に実行する。
【0133】
(UI部80)
UI部80は、ユーザと眼底撮影装置1との間で情報のやりとりを行うための機能を備える。UI部80は、表示デバイスと操作デバイスとを含む。表示デバイスは、表示部を含んでよく、それ以外の表示デバイスを含んでもよい。表示デバイスは、各種の情報を表示させる。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイを含み、主制御部61からの制御を受け、上記の情報を表示する。表示デバイスに表示される情報には、制御部60による制御結果に対応した情報、画像形成部70による演算結果に対応した情報(画像)などがある。操作デバイスは、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含む。主制御部61は、操作デバイスに対する操作内容を受け、操作内容に対応した制御信号を各部に出力することが可能である。操作デバイスの少なくとも一部と表示デバイスの少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
【0134】
<動作>
次に、実施形態に係る眼底撮影装置1の動作例について説明する。
【0135】
図14に、実施形態に係る眼底撮影装置1の動作例を示す。図14は、実施形態に係る眼底撮影装置1の動作例のフローチャートを表す。記憶部62には、図14に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部61は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図14に示す処理を実行する。
【0136】
図14では、被検眼Eが所定の被検眼位置(第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4)にあらかじめ配置され、眼底Efにおける照明光の照明範囲(スキャン範囲)があらかじめ決められているものとする。
【0137】
(S1:合焦)
まず、主制御部61は、移動機構14D及び移動機構22Dの少なくとも一方を制御して、被検眼Eの眼底Efに対して、照明光学系10の焦点位置及び撮影光学系20の焦点位置を調整する。
【0138】
(S2:照明光源を点灯)
次に、主制御部61は、照明光源11を制御して、照明光源11を点灯させる。
【0139】
照明光源11から出力された光は、虹彩絞り12に形成された開口を通過し、リレーレンズ13を透過し、スリット14に形成された開口を通過し、リレーレンズ15を透過し、光スキャナ16及びリレーレンズ17を介して、スリット状の照明光として穴鏡30に導かれる。
【0140】
(S3:照明光の偏向制御、受光面の受光可能領域を設定)
続いて、主制御部61は、光スキャナ16を制御することにより、眼底Efにおける所定の照明範囲(スキャン範囲)を照明するために所定の偏向方向に偏向面の向きを設定し、所定の偏向角度範囲で偏向面の向きを順次に変更する照明光の偏向制御を開始する。すなわち、主制御部61は、眼底Efに対して照明光のスキャンを開始する。
【0141】
いくつかの実施形態では、主制御部61は、イメージセンサ21において任意に設定可能な受光可能領域の移動に同期して、光スキャナ16を制御して照明光の偏向制御を行う。
【0142】
いくつかの実施形態では、主制御部61は、イメージセンサ21を制御し、眼底Efにおける照明光の照明領域に対応する受光面における戻り光の受光可能範囲を設定する。例えば、眼底Efにおける照明光の照明範囲は、光スキャナ16の偏向面の偏向角度に基づいて特定することが可能である。主制御部61は、順次に変更される光スキャナ16の偏向面の偏向方向に対応して、イメージセンサ21の受光面における受光可能領域を設定することが可能である。
【0143】
穴鏡30に導かれてきた照明光は、穴部の周辺部の反射面で反射されて、リレーレンズ40を通過し、第1楕円凹面鏡51の第1焦点F1に集光し、第1楕円凹面鏡51の反射面に導かれ、この反射面で反射される。第1楕円凹面鏡51の反射面で反射された照明光は、第1楕円凹面鏡51の第2焦点F2(第1焦点F3)を経由して、第2楕円凹面鏡52の反射面に導かれる。第2楕円凹面鏡52の反射面に導かれた照明光は、この反射面で反射され、第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4に配置された被検眼Eの眼内に入射し、眼底Efに照射される。
【0144】
眼底Efからの戻り光を含む被検眼Eからの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行し、穴鏡30に形成された穴部を通過し、合焦レンズ22を通過し、イメージセンサ21の受光面で受光される。イメージセンサ21の受光面では、眼底Efにおける照明光の照明領域に対応した戻り光の受光可能領域が設定されているため、不要な散乱光の影響を抑えつつ、眼底Efからの戻り光のみが受光される。
【0145】
(S4:終了?)
続いて、主制御部61は、眼底Efに対する照明光のスキャンを終了するか否かを判定する。例えば、主制御部61は、順次に変更される穴鏡30の偏向面の偏向角度が所定の偏向角度範囲以内であるか否かを判定することにより、眼底Efに対する照明光のスキャンを終了するか否かを判定することができる。
【0146】
眼底Efに対する照明光のスキャンを終了すると判定されたとき(S4:Y)、眼底撮影装置1の動作はステップS5に移行する。眼底Efに対する照明光のスキャンを終了しないと判定されたとき(S4:N)、眼底撮影装置1の動作はステップS3に移行する。
【0147】
(S5:画像を取得)
ステップS4において、眼底Efに対する照明光のスキャンを終了すると判定されたとき(S4:Y)、主制御部61は、画像形成部70を制御することにより、イメージセンサ21から読み出された受光結果に基づいて被検眼Eの画像を形成させる。いくつかの実施形態では、画像形成部70は、ステップS3においてイメージセンサ21から読み出された受光結果に基づいて受光像を順次に形成し、形成された複数の受光像から被検眼Eの画像を形成する。
【0148】
(S6:画像歪み補正?)
次に、主制御部61は、ステップS5において取得された画像に対して画像歪み補正を行うか否かを判定する。
【0149】
いくつかの実施形態では、図14に示すフローを実行する前に画像歪み補正を行うか否かについてあらかじめ決められている。いくつかの実施形態では、UI部80に対してユーザが操作し、主制御部61は、UI部80に対する操作内容に基づいて、画像歪み補正を行うか否かを判定する。
【0150】
画像歪み補正を行うと判定されたとき(S6:Y)、眼底撮影装置1の動作はステップS7に移行する。画像歪み補正を行わないと判定されたとき(S6:N)、眼底撮影装置1の動作は終了である(エンド)。
【0151】
(S7:画像歪み補正)
ステップS6において画像歪み補正を行うと判定されたとき(S6:Y)、主制御部61は、画像歪み補正部71を制御して、ステップS5において取得された画像に対して画像歪み補正を行わせる。
【0152】
画像歪み補正部71は、上記のように、ステップS5において取得された画像に対して画像歪み補正を補完的に行う。
【0153】
ステップS7に続いて、又は、ステップS6において画像歪み補正を行わないと判定されたとき(S6:N)、眼底撮影装置1の動作は終了である(エンド)。
【0154】
以上説明したように、実施形態によれば、2つの楕円凹面鏡の4つの焦点を含む焦点共有面が、眼底Efに投影されるスリット像の長手方向と略平行になるようにスリット14を配置し、スリット像の長手方向に直交する方向にスリット像を移動するようにスキャンするようにしたので、追加の補正光学系を設けることなく、低コスト、且つ、コンパクトな構成で、広角の撮影画角を確保しつつ、コントラストを向上させ、フレア及び/又はゴーストの発生を抑制することが可能になる。また、高度な光学設計も必要とされない。
【0155】
また、スリット14に形成される開口の長手方向の両端部の少なくとも一方を、開口中心を通る長手方向を基準として開口の短手方向に変位させるようにしたので、光学素子を追加することなく、簡素な構成で、スリット像の歪みに起因したコントラストの低下を抑制することが可能になる。
【0156】
更に、スキャン長を可変にすることで、照明光のスキャン範囲を任意に設定することができるようになる。
【0157】
<第1変形例>
実施形態に係る眼底撮影装置の構成は、眼底撮影装置1の構成に限定されるものではない。例えば、実施形態に係る眼底撮影装置1は、更に、OCT光学系を備えていてもよい。
【0158】
以下、実施形態では、OCTを用いた計測又は撮影においてスウェプトソースタイプのOCTの手法を用いる場合について特に説明する。しかしながら、他のタイプ(例えば、スペクトラルドメインタイプ)のOCTを用いる眼底撮影装置に対して、実施形態に係る構成を適用することも可能である。
【0159】
以下、実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置について、実施形態に係る眼底撮影装置1との相違点を中心に説明する。
【0160】
<構成>
図15に、実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す。図15において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0161】
実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置1aの光学系の構成が実施形態に係る眼底撮影装置1の光学系の構成と異なる点は、眼底撮影装置1の光学系の構成に対してOCT光学系100と、ダイクロイックミラー90とが追加された点である。ダイクロイックミラー90は、光路結合分離部材(光路分割部材)として、リレーレンズ40とリレー光学系50との間に配置される。いくつかの実施形態では、ダイクロイックミラー90は、穴鏡30とリレーレンズ40との間に配置される。
【0162】
ダイクロイックミラー90は、照明光の光路とOCT光学系100の光路とを空間的に分割する(照明光の光路とOCT光学系100の光路とを結合する)光路結合分離部材である。ダイクロイックミラー90は、OCT光学系100からの測定光を反射してリレーレンズ40に導くと共に、被検眼Eからの測定光の戻り光を反射してOCT光学系100に導く。また、ダイクロイックミラー90は、リレーレンズ40を介して導かれてきた照明光を透過させると共に、被検眼Eからの戻り光を透過させてリレーレンズ40に導く。
【0163】
(OCT光学系100)
図16に、図13のOCT光学系100の構成例を示す。図16において、図15と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0164】
OCT光学系100には、被検眼Eに対してOCT計測(又はOCT撮影)を行うための光学系が設けられている。この光学系は、波長掃引型(波長走査型)光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系である。干渉光学系による干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す干渉信号であり、後述の画像形成部70a、及びデータ処理部75a等に送られる。
【0165】
OCT光源101は、一般的なスウェプトソースタイプの眼底撮影装置と同様に、出射光の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源を含んで構成される。波長掃引型光源は、例えば、共振器を含み、中心波長が1050nmの光を発するレーザー光源を含んで構成される。OCT光源101は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
【0166】
OCT光源101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏波状態が調整される。偏波コントローラ103は、例えばループ状にされた光ファイバ102に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ102内を導かれる光L0の偏波状態を調整する。
【0167】
偏波コントローラ103により偏波状態が調整された光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0168】
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、光路長変更部114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。
【0169】
光路長変更部114は、図16に示す矢印の方向に移動可能とされ、参照光LRの光路長を変更する。この移動により参照光LRの光路の長さが変更される。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部114は、例えばコーナーキューブと、これを移動する移動機構とを含んで構成される。この場合、光路長変更部114のコーナーキューブは、コリメータ111により平行光束とされた参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブに入射する参照光LRの光路と、コーナーキューブから出射する参照光LRの光路とは平行である。
【0170】
光路長変更部114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏波状態が調整され、光ファイバ119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバ121によりファイバカプラ122に導かれる。
【0171】
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127によりに導かれ、コリメータレンズユニット140により平行光束とされる。平行光束にされた測定光LSは、光スキャナ(OCT用光スキャナ)150により1次元的又は2次元的に偏向される。
【0172】
コリメータレンズユニット140は、OCT光学系100に含まれる干渉光学系の光軸に配置されたコリメータレンズを含む。コリメータレンズは、OCT光学系100に接続され測定光LSを導光する光ファイバの端部から出射した測定光の光束を平行光束にする。当該光ファイバの端部は、例えば眼底共役位置Pに配置される。
【0173】
光スキャナ150(偏向面)は、虹彩共役位置Qに配置可能である。1次元的に照明光を偏向する場合、光スキャナ150は、所定の偏向方向を基準に所定の偏向角度範囲で測定光LSを偏向するガルバノスキャナを含む。2次元的に照明光を偏向する場合、光スキャナ150は、第1ガルバノスキャナと、第2ガルバノスキャナとを含む。第1ガルバノスキャナは、OCT光学系100の光軸に直交する水平方向(例えば、X方向)に照射位置を移動するように測定光LSを偏向する。第2ガルバノスキャナは、OCT光学系100の光軸に直交する垂直方向(例えば、Y方向)に照射位置を移動するように、第1ガルバノスキャナにより偏向された測定光LSを偏向する。光スキャナ150による測定光LSの照射位置を移動するスキャン態様としては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャン、リサージュスキャンなどがある。
【0174】
光スキャナ150により偏向された測定光LSは、合焦レンズ151を通過し、ダイクロイックミラー90により反射され、第1楕円凹面鏡51の反射面に導かれ、照明光学系10からの照明光と同様の経路で被検眼Eに導かれる。合焦レンズ151は、測定光LSの光路(OCT光学系100の光軸)に沿って移動可能である。合焦レンズ151は、後述の制御部(制御部60a)からの制御を受け、図示しない移動機構により測定光LSの光路に沿って移動される。
【0175】
第2楕円凹面鏡52の反射面により反射された測定光LSは、第2焦点F4(被検眼位置)における被検眼Eの瞳孔を通じて眼内に入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。このような後方散乱光を含む測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
【0176】
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、所定の分岐比(例えば1:1)で、測定光LSと参照光LRとの干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバカプラ122から出射した一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123、124により検出器125に導かれる。
【0177】
検出器125は、例えば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。検出器125は、その検出結果(干渉信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。DAQ130には、OCT光源101からクロックKCが供給される。クロックKCは、OCT光源101において、波長掃引型光源により所定の波長範囲内で掃引(走査)される各波長の出力タイミングに同期して生成される。OCT光源101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、クロックKCに基づき、検出器125の検出結果をサンプリングする。DAQ130は、サンプリングされた検出器125の検出結果を画像形成部70a、及びデータ処理部75a等に送る。画像形成部70a(又は、データ処理部75a)は、例えば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器125により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、画像形成部70aは、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。
【0178】
なお、図16では、参照光の光路長を変更することにより測定光と参照光との光路長差を変更するが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。例えば、測定光の光路長を変更することにより測定光と参照光との光路長差を変更するように構成されていてもよい。
【0179】
図17に、実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置1aの処理系の構成例を示す。図17において、図13図15、又は図16と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0180】
第1変形例に係る眼底撮影装置1aの処理系の構成が実施形態に係る眼底撮影装置1の処理系の構成と異なる点は、制御部60に代えて制御部60aが設けられた点と、画像形成部70に代えて画像形成部70aが設けられた点と、画像歪み補正部71に代えて画像歪み補正部71aが設けられた点と、データ処理部75a及びOCT光学系100が追加された点である。
【0181】
制御部60aは、主制御部61aと、記憶部62aとを含み、制御部60が実行可能な制御に加えて、画像形成部70a、画像歪み補正部71a、データ処理部75a、及びOCT光学系100に対する制御を実行する。主制御部61aの機能は、主制御部61と同様に、例えばプロセッサにより実現される。記憶部62aには、記憶部62と同様に、眼底撮影装置1aを制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このコンピュータプログラムには、照明光源制御用プログラム、イメージセンサ制御用プログラム、光スキャナ制御用プログラム、画像形成用プログラム、画像歪み補正用プログラム、データ処理用プログラム、OCT光学系制御用プログラム、及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部61aが動作することにより、制御部60aは制御処理を実行する。
【0182】
主制御部61aは、照明光学系10、撮影光学系20、画像形成部70a、画像歪み補正部71a、データ処理部75a、OCT光学系100、及びUI部80の各部を制御する。
【0183】
OCT光学系100に対する制御には、OCT光源101に対する制御、偏波コントローラ103、118の動作制御、光路長変更部114の移動制御、アッテネータ120の動作制御、検出器125に対する制御、DAQ130に対する制御、光スキャナ150に対する制御、移動機構151Dに対する制御などがある。
【0184】
OCT光源101に対する制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。検出器125に対する制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。光スキャナ150に対する制御には、光スキャナ150によるスキャン方向、スキャン位置、スキャン範囲、及び、スキャン速度の制御などがある。
【0185】
移動機構151Dは、合焦レンズ151をOCT光学系100の光軸方向に移動する。主制御部61aは、移動機構151Dに対して制御信号を出力することにより、制御信号に対応した移動量及び移動方向に合焦レンズ151を移動する。例えば、眼底撮影装置1には、移動機構151Dを移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。移動機構151Dは、主制御部61aからの制御を受けたアクチュエータにより発生した駆動力を受けて、合焦レンズ151を光軸方向に移動する。これにより、測定光の合焦位置を変更することが可能である。測定光LSの合焦位置は、測定光LSのビームウェストの深さ位置(z位置)に相当する。
【0186】
画像形成部70aに対する制御には、イメージセンサ21により得られた受光結果から被検眼Eの画像を形成する画像形成制御に加えて、OCT光学系100により得られた干渉光の検出結果に基づくOCT画像の形成制御などがある。
【0187】
画像歪み補正部71aに対する制御には、画像形成部70aにより形成された画像の歪みを補正する画像歪み補正制御などがある。
【0188】
データ処理部75aに対する制御には、画像形成部70aにより形成された画像に対する画像処理の制御、画像の解析処理の制御などがある。データ処理部75aは、画像歪み補正部71aを含み、画像歪み補正部71aの機能を実現するように構成されていてもよい。
【0189】
画像形成部70aは、画像形成部70と同様に、イメージセンサ21から読み出された受光結果に基づいて、任意の受光可能領域に対応した受光像(眼底像)を形成することが可能である。画像形成部70aは、受光可能領域に対応した受光像を順次に形成し、形成された複数の受光像から被検眼Eの画像を形成することが可能である。
【0190】
また、画像形成部70aは、DAQ130(検出器125)から入力される検出信号と、制御部60aから入力される画素位置信号とに基づいて、OCT画像(断層像)の画像データを形成する。画像形成部70aにより形成されるOCT画像には、Aスキャン画像、Bスキャン画像などがある。Bスキャン画像は、例えば、Aスキャン画像をBスキャン方向に配列することにより形成される。この処理には、従来のスウェプトソースタイプのOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、分散補償、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部70aは、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。画像形成部70aにより形成された各種の画像(画像データ)は、例えば記憶部62aに保存される。
【0191】
画像歪み補正部71aは、画像歪み補正部71と同様に、画像形成部70aにより形成された画像の歪みを補正する。
【0192】
いくつかの実施形態では、画像歪み補正部71aは、画像形成部70aにより形成されたOCT画像の歪みを補正する。この場合、記憶部62aには、事前に取得された画像の歪みを補正するための歪み補正パラメータがあらかじめ記憶されている。画像歪み補正部71aは、記憶部62aに記憶された歪み補正パラメータに基づいて、画像形成部70aにより形成されたOCT画像の歪みを補正することが可能である。
【0193】
データ処理部75aは、撮影光学系20により得られた受光結果に基づいて形成された画像、又は被検眼Eに対するOCT計測により取得されたデータを処理する。データ処理部75aは、画像形成部70aにより形成された画像又は画像歪み補正部71aにより歪み補正が施された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施すことが可能である。例えば、データ処理部75aは、画像の輝度補正等の各種補正処理を実行する。
【0194】
データ処理部75aは、OCT画像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部75aは、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。UI部80に含まれる表示デバイスには、この擬似的な3次元画像が表示される。
【0195】
また、3次元画像の画像データとして、複数の断層像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数のスキャンラインに沿って得られた複数の断層像を、スキャンラインの位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
【0196】
データ処理部75aは、取得された3次元データセット(ボリュームデータ、スタックデータ等)に各種のレンダリングを施すことで、任意断面におけるBモード画像(縦断面像、軸方向断面像)、任意断面におけるCモード画像(横断面像、水平断面像)、プロジェクション画像、シャドウグラムなどを形成することができる。Bモード画像やCモード画像のような任意断面の画像は、指定された断面上の画素(ピクセル、ボクセル)を3次元データセットから選択することにより形成される。プロジェクション画像は、3次元データセットを所定方向(Z方向、深さ方向、軸方向)に投影することによって形成される。シャドウグラムは、3次元データセットの一部(例えば、特定層に相当する部分データ)を所定方向に投影することによって形成される。Cモード画像、プロジェクション画像、シャドウグラムのような、被検眼の正面側を視点とする画像を正面画像(en-face画像)と呼ぶ。
【0197】
データ処理部75aは、OCTにより時系列に収集されたデータ(例えば、Bスキャン画像データ)に基づいて、網膜血管や脈絡膜血管が強調されたBモード画像や正面画像(血管強調画像、アンギオグラム)を構築することができる。例えば、被検眼Eの略同一部位を反復的にスキャンすることにより、時系列のOCTデータを収集することができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、データ処理部75aは、略同一部位に対するBスキャンにより得られた時系列のBスキャン画像を比較し、信号強度の変化部分の画素値を変化分に対応した画素値に変換することにより当該変化部分が強調された強調画像を構築する。更に、データ処理部75aは、構築された複数の強調画像から所望の部位における所定の厚さ分の情報を抽出してen-face画像として構築することでOCTA像を形成する。
【0199】
データ処理部75aにより生成された画像(例えば、3次元画像、Bモード画像、Cモード画像、プロジェクション画像、シャドウグラム、OCTA像)もまたOCT画像に含まれる。
【0200】
更に、データ処理部75aは、撮影光学系20により得られた受光結果に基づいて形成された画像、OCT計測により得られた干渉光の検出結果、又は当該検出結果に基づいて形成されたOCT画像に対して所定の解析処理を行う。所定の解析処理には、被検眼Eにおける所定の部位(組織、病変部)の特定;指定された部位間の距離(層間距離)、面積、角度、比率、密度の算出;指定された計算式による演算;所定の部位の形状の特定;これらの統計値の算出;計測値、統計値の分布の算出;これら解析処理結果に基づく画像処理などがある。所定の組織には、血管、視神経乳頭、中心窩、黄斑などがある。所定の病変部には、白斑、出血などがある。
【0201】
眼底撮影装置1aは、OCT光学系100をOCT光学系100の光軸に交差する1次元方向又は2次元方向に移動させる移動機構を含んでもよい。この場合、主制御部61aは、この移動機構を制御することにより、ダイクロイックミラー90に対してOCT光学系100をOCT光学系100の光軸に交差する1次元方向又は2次元方向に移動させる。それにより、OCT光学系100の光スキャナ150を用いたスキャン範囲を移動させて、眼底Efにおける広角のスキャン範囲に対してOCTスキャンすることが可能になる。
【0202】
ダイクロイックミラー90は、実施形態に係る「光路結合分離部材」の一例である。
【0203】
<動作>
次に、実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置1aの動作例について説明する。
【0204】
眼底撮影装置1aは、照明光学系10からのスリット状の照明光による眼底Efに対するスキャン制御と並行に、OCT光学系100を用いたOCT計測を実行することが可能である。いくつかの実施形態では、眼底撮影装置1aは、照明光学系10からのスリット状の照明光による眼底Efに対するスキャン制御を停止させた状態で、OCT光学系100を用いたOCT計測を実行する。以下、スリット状の照明光による眼底Efに対するスキャン制御と並行に実行可能なOCT計測の制御について説明する。
【0205】
図18に、実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置1aの動作例を示す。図18は、第1変形例に係る眼底撮影装置1aの動作例のフローチャートを表す。記憶部62aには、図18に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部61aは、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図18に示す処理を実行する。
【0206】
図18では、被検眼Eが所定の被検眼位置(第2楕円凹面鏡52の第2焦点F4)にあらかじめ配置されているものとする。
【0207】
(S11:スキャン範囲を設定)
まず、主制御部61aは、光スキャナ150のスキャン範囲を設定する。主制御部61aは、スキャン範囲と共に、光スキャナ150によるスキャン開始位置、スキャン終了位置、スキャン速度(スキャン周波数)等を設定することが可能である。
【0208】
いくつかの実施形態では、ユーザは、UI部80における操作デバイスに対する操作によりスキャンモード又は動作モードを指定することが可能である。ユーザによって操作デバイスに対する操作によりスキャンモード(例えば、水平スキャン、垂直スキャン)が指定されたとき、主制御部61aは、操作デバイスからの操作情報を解析して、指定されたスキャンモードを特定する。ユーザによって操作デバイスに対する操作により動作モードが指定されたとき、主制御部61aは、操作情報を解析して、指定された動作モード(OCT計測モード)においてあらかじめ指定されたスキャンモード(例えば、水平スキャン、垂直スキャン)を特定する。
【0209】
(S12:OCT光源を点灯)
続いて、主制御部61aは、OCT光源101を制御して、OCT光源101を点灯させる。いくつかの実施形態では、主制御部61aは、図14に示すステップS2における照明光源11の点灯制御に同期して、ステップS12を実行する。
【0210】
いくつかの実施形態では、主制御部61aは、フォーカス調整制御及び偏波調整制御を実行する。例えば、主制御部61aは、移動機構151Dを制御して合焦レンズを所定の距離だけ移動させた後、OCT光学系100を制御してOCT計測を実行させる。主制御部61aは、OCT計測により得られた干渉光の検出結果に基づいて測定光LSのフォーカス状態をデータ処理部75aに判定させる。例えば、データ処理部75aは、OCT計測により取得された干渉光の検出結果を解析することで、OCT画像の画質に関する所定の評価値を算出し、算出された評価値に基づいてフォーカス状態を判定する。データ処理部75aによる判定結果に基づいて測定光LSのフォーカス状態が適正ではないと判断されたとき、主制御部61aは、再び移動機構151Dの制御を行い、フォーカス状態が適正であると判断されるまで繰り返す。
【0211】
また、例えば、主制御部61aは、偏波コントローラ103、118の少なくとも一方を制御して光L0及び測定光LSの少なくとも一方の偏波状態を所定の量だけ変更した後、OCT光学系100を制御してOCT計測を実行させ、取得された干渉光の検出結果に基づくOCT画像を画像形成部70aに形成させる。主制御部61aは、OCT計測により得られたOCT画像の画質をデータ処理部75aに判定させる。データ処理部75aによる判定結果に基づいて測定光LSの偏波状態が適正ではないと判断されたとき、主制御部61aは、再び偏波コントローラ103、118の制御を行い、偏波状態が適正であると判断されるまで繰り返す。
【0212】
(S13:OCTスキャンを実行)
続いて、主制御部61aは、光スキャナ150を制御することによりOCT光源101から出射された光L0に基づいて生成された測定光LSを偏向し、偏向された測定光LSで被検眼Eの眼底Efの所定部位をスキャンさせる。当該OCT計測により取得された干渉光の検出結果は、DAQ130においてサンプリングされ、干渉信号として記憶部62a等に保存される。
【0213】
(S14:終了?)
続いて、主制御部61aは、眼底Efに対するOCTスキャンを終了するか否かを判定する。例えば、主制御部61aは、順次に変更される光スキャナ150の偏向面の偏向角度が所定の偏向角度範囲以内であるか否かを判定することにより、眼底Efに対するOCTスキャンを終了するか否かを判定することができる。
【0214】
眼底Efに対するOCTスキャンを終了すると判定されたとき(S14:Y)、眼底撮影装置1aの動作はステップS15に移行する。眼底Efに対するOCTスキャンを終了しないと判定されたとき(S14:N)、眼底撮影装置1aの動作はステップS13に移行する。
【0215】
(S15:OCT画像を形成)
ステップS14において、眼底Efに対するOCTスキャンを終了すると判定されたとき(S14:Y)、主制御部61aは、ステップS13においてOCTスキャンを実行することにより取得された干渉信号に基づいてBスキャン方向に沿って眼底Efの複数のAスキャン画像を画像形成部70aに形成させる。いくつかの実施形態では、主制御部61aは、データ処理部75aを制御して、3次元のOCT画像、Bモード画像、Cモード画像、プロジェクション画像、シャドウグラム、OCTA像などのOCT画像を形成させる。
【0216】
以上で、眼底撮影装置1aの動作は終了である(エンド)。
【0217】
以上説明したように、実施形態の第1変形例によれば、実施形態により得られる効果に加えて、OCTスキャン用の光スキャナと照明光の偏向用の光スキャナとを共有させることなく、大広角で観察している眼底の任意の位置に対してOCT計測(OCT撮影)を行うことが可能になる。
【0218】
<第2変形例>
実施形態に係る眼底撮影装置の構成は、上記の実施形態又はその第1変形例に係る構成に限定されるものではない。例えば、図2及び図3に示す構成において、第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52に代えて、3以上の曲面鏡(非球面鏡)が設けられていてもよい。
【0219】
第2変形例では、第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52に代えて、2つの凹面鏡と1つの凸面鏡とが設けられている。
【0220】
以下、実施形態の第2変形例に係る眼底撮影装置について、実施形態に係る眼底撮影装置1との相違点を中心に説明する。
【0221】
図19に、実施形態の第2変形例に係る眼底撮影装置1bの光学系の構成例を示す。図19において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0222】
第2変形例に係る眼底撮影装置1bの構成が実施形態に係る眼底撮影装置1の構成と異なる点は、第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52に代えて、平面ミラーとしての反射ミラー53と、凹面鏡としての双曲凹面鏡54と、凸面鏡としての双曲凸面鏡55と、凹面鏡としての楕円凹面鏡56とが設けられている点である。
【0223】
反射ミラー53は、照明光学系10からのスリット状の照明光を反射して、双曲凹面鏡54に導く。また、反射ミラー53は、双曲凹面鏡54により反射された被検眼Eからの戻り光をリレーレンズ40に導く。いくつかの実施形態では、眼底撮影装置1bは、反射ミラー53が省略された構成を有する。
【0224】
反射ミラー53により光軸を偏向することで、眼底撮影装置1bの光学系の奥行方向(z方向)のサイズを小さくすることができる。
【0225】
(双曲凹面鏡54)
双曲凹面鏡54は、凹面状の反射面を有する。双曲凹面鏡54の反射面は、双曲面である。双曲凹面鏡54は、凹面鏡の一例である。双曲凹面鏡54の焦点の1つは、第1焦点F1である。
【0226】
(双曲凸面鏡55)
双曲凸面鏡55は、凸面状の反射面を有する。双曲凸面鏡55の反射面は、双曲面である。双曲凸面鏡55は、凸面鏡の一例である。双曲凸面鏡55の焦点の1つは、第2焦点F2である。
【0227】
(楕円凹面鏡56)
楕円凹面鏡56の反射面は、凹面状の楕円面である。楕円凹面鏡56は、凹面鏡の一例である。
【0228】
楕円凹面鏡56は、光学的に共役な2つの焦点(第1焦点F3、第2焦点F4)を有する。楕円凹面鏡56は、第1焦点F3が双曲凸面鏡55の第2焦点F2と略一致するように配置される。いくつかの実施形態では、楕円凹面鏡56は、第1焦点F3が双曲凸面鏡55の第2焦点F2と光学的に共役な位置(第2焦点F2の共役位置)又はその近傍に略一致するように配置される。楕円凹面鏡56の第2焦点F4には、被検眼Eが配置される。すなわち、楕円凹面鏡56は、第2焦点F4が、被検眼Eが配置される被検眼位置に略一致するように配置される。
【0229】
このような構成において、リレーレンズ40を透過したスリット状の照明光は、第1焦点F1に集光し、反射ミラー53の反射面で反射され、双曲凹面鏡54の凹面状の反射面で反射され、双曲凸面鏡55の凸面状の反射面で反射され、楕円凹面鏡56の反射面で反射され、楕円凹面鏡56の第2焦点F4に配置された被検眼Eに導かれる。
【0230】
被検眼Eに導かれてきた照明光は、瞳孔を通じて眼内に入射し、眼底Efに照射される。眼底Ef(被検眼E)からの戻り光は、瞳孔を通じて被検眼Eの外部に出射され、往路と同じ経路を逆向きに進行して、双曲凹面鏡54の第1焦点F1に導かれる。第1焦点F1に導かれてきた戻り光は、上記のように、リレーレンズ40を透過し、穴鏡30に形成された穴部を通過し、撮影光学系20に導かれる。
【0231】
いくつかの実施形態では、双曲凹面鏡54及び双曲凸面鏡55の少なくとも一方は、放物面鏡である。いくつかの実施形態では、双曲凹面鏡54、双曲凸面鏡55、及び楕円凹面鏡56の少なくとも1つは、反射面が自由曲面になるように形成される。
【0232】
<第3変形例>
実施形態に係る眼底撮影装置の構成は、上記の実施形態又はその変形例に係る構成に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態又はその変形例において、リレーレンズ40を設けることなく、穴鏡30が第1楕円凹面鏡51又は双曲凹面鏡54の第1焦点F1に配置されていてもよい。
【0233】
以下、実施形態の第3変形例に係る眼底撮影装置について、実施形態に係る眼底撮影装置1との相違点を中心に説明する。
【0234】
図20に、実施形態の第3変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す。図20において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0235】
第3変形例に係る眼底撮影装置1cの構成が実施形態に係る眼底撮影装置1の構成と異なる点は、実施形態に係る眼底撮影装置1の構成からリレーレンズ40が取り除かれた点と、穴鏡30に形成された穴部が第1楕円凹面鏡51(図20では不図示)の第1焦点F1に配置された点である。
【0236】
第3変形例に係る眼底撮影装置1cの動作は実施形態に係る眼底撮影装置1の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0237】
第3変形例によれば、実施形態と同様の効果を得つつ、実施形態より光学系の構成を小型化することが可能になる。
【0238】
<その他>
上記の実施形態又はその変形例では、ローリングシャッター方式により戻り光の受光結果を取得するように構成されていたが、実施形態に係る眼底撮影装置の構成はこれに限定されるものではない。
【0239】
例えば、眼底撮影装置には、イメージセンサ21の受光面の近傍、又はこの受光面と光学的に略共役な位置に配置された、フォーカルプレーンシャッター等のハードウェアで構成された可動スリットを含んでいてもよい。この場合、スリット14に形成された開口は矩形形状であり、可動スリットには図10Aに示すような曲線形状の開口が形成される。この場合、イメージセンサ21により取得された受光結果の読み出し制御を簡素化することが可能になる。
【0240】
[作用]
実施形態又はその変形例に係る眼底撮影装置について説明する。
【0241】
実施形態の第1態様は、2以上の曲面鏡(第1楕円凹面鏡51及び第2楕円凹面鏡52、或いは、反射ミラー53と双曲凹面鏡54と双曲凸面鏡55と楕円凹面鏡56)と、照明光学系(10)と、イメージセンサ(21)とを含む。照明光学系は、被検眼(E)の眼底(Ef)と光学的に略共役な眼底共役位置(P)に配置されるように構成された開口(SL)が形成されたスリット(14)を含み、光源からの光をスリットに照射することにより生成されたスリット状の照明光を2以上の曲面鏡を介して眼底に照射する。イメージセンサは、眼底共役位置に配置されるように構成され、被検眼からの戻り光を受光する。スリットに形成された開口の長手方向の両端部の少なくとも一方は、開口中心(OPc)を通る長手方向を基準として開口の短手方向に変位している。
【0242】
このような態様によれば、眼底に投影されるスリットの開口の像の歪みをなくしたり、当該歪みを低減したりすることができ、イメージセンサにより取得される画像のコントラストを向上させることが可能になる。
【0243】
実施形態の第2態様では、第1態様において、開口は、開口中心から両端部の少なくとも一方に向かって曲線状に変化する部分を含む。
【0244】
このような態様によれば、イメージセンサにより取得される画像のコントラストをより一層向上させることが可能になる。
【0245】
実施形態の第3態様では、第2態様において、2以上の曲面鏡のそれぞれは、1以上の焦点を有し、2以上の焦点のうち少なくとも1つを共有するように配置される。
【0246】
このような態様によれば、簡素な構成で、照明光により形成される像を高精度にリレーすることができ、より高画質の眼底の画像を取得することが可能になる。
【0247】
実施形態の第4態様では、第3態様において、2以上の曲面鏡は、楕円凹面鏡(第1楕円凹面鏡51又は第2楕円凹面鏡52)を含む。
【0248】
このような態様によれば、楕円凹面鏡を用いて、照明光により形成される像を高精度にリレーすることができ、より高画質の眼底の画像を取得することが可能になる。
【0249】
実施形態の第5態様では、第4態様において、2以上の曲面鏡は、第1楕円凹面鏡(51)と第2楕円凹面鏡(52)である。第1楕円凹面鏡の第1焦点(F1)は、被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置(Q)に配置され、第1楕円凹面鏡の第2焦点(F2)は、第2楕円凹面鏡の第3焦点(第1焦点F3)に略一致し、第2楕円凹面鏡の第4焦点(第2焦点F4)は、虹彩に配置されるように構成される。
【0250】
このような態様によれば、2つの楕円凹面鏡を用いて、より高画質で、眼底の広角画像を取得することが可能になる。
【0251】
実施形態の第6態様では、第5態様において、両端部の少なくとも一方は、第1楕円凹面鏡及び第2楕円凹面鏡に対する照明光の照射範囲内における第1楕円凹面鏡に対する照明光の入射角と第2楕円凹面鏡に対する照明光の入射角との差の絶対値の最大値に応じて変位している。
【0252】
このような態様によれば、スリットには、第1楕円凹面鏡に入射する照明光の入射角に応じた形状を有する開口が形成されるため、眼底に投影されるスリットの開口の像の歪みを高精度になくしたり、当該歪みを高精度に低減したりすることができるようになる。
【0253】
実施形態の第7態様では、第1態様~第6態様のいずれかにおいて、照明光学系は、被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された光スキャナ(16)を含み、光スキャナによって照明光を偏向することにより照明光による眼底の照明位置を移動可能に照明する。
【0254】
このような態様によれば、光スキャナによる照明光の偏向制御により、簡素な構成で、高画質の被検眼の眼底を取得することができるようになる。
【0255】
実施形態の第8態様では、第7態様において、イメージセンサは、ローリングシャッター方式のイメージセンサである。
【0256】
このような態様によれば、簡素な構成で、より高画質の眼底の画像を取得することが可能になる。
【0257】
実施形態の第9態様では、第1態様~第6態様のいずれかにおいて、スリットは、被検眼の視度に応じて照明光学系の光軸方向に移動可能である。
【0258】
このような態様によれば、被検眼の視度にかかわらず、高輝度の照明光で眼底を照明することが可能になる。
【0259】
実施形態の第10態様は、第1態様~第6態様のいずれかにおいて、光軸から偏心した位置に開口が形成され、被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された虹彩絞り(12)と、2以上の曲面鏡とイメージセンサとの間に配置され、照明光の光路と戻り光の光路とを空間的に分割する光路分割部材(穴鏡30)と、を含む。
【0260】
このような態様によれば、簡素な構成で、眼内に入射する照明光と、眼内から外部に出射する戻り光とを瞳分割することが可能になり、より高画質の眼底の画像を取得することが可能になる。
【0261】
<その他>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0262】
いくつかの実施形態では、上記の眼底撮影装置の制御方法の各ステップをプロセッサ(コンピュータ)に実行させるためのプログラムが提供される。このようなプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の非一時的な記録媒体(記憶媒体)に記憶させることができる。この記録媒体としては、例えば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD-ROM/DVD-RAM/DVD-ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
【符号の説明】
【0263】
1、1a、1b、1c 眼底撮影装置
10 照明光学系
11 照明光源
12 虹彩絞り
14 スリット
16 光スキャナ
20 撮影光学系
21 イメージセンサ
30 穴鏡
50 リレー光学系
51 第1楕円凹面鏡
52 第2楕円凹面鏡
60、60a 制御部
61、61a 主制御部
62、62a 記憶部
70、70a 画像形成部
71、71a 画像歪み補正部
75a データ処理部
80 UI部
90 ダイクロイックミラー
100 OCT光学系
E 被検眼
Ef 眼底
F1、F3 第1焦点
F2、F4 第2焦点
P 眼底共役位置
Q 虹彩共役位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20