(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143051
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】直動案内装置の防塵構造及び直動案内装置
(51)【国際特許分類】
F16C 29/08 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16C29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055528
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】荒井 和美
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA02
3J104AA12
3J104AA22
3J104AA64
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA63
3J104DA15
3J104DA20
(57)【要約】
【課題】直動案内軸受の防塵のために設置する防塵カバーを簡易に固定する直動案内装置の防塵構造及び直動案内装置を提供する。
【解決手段】案内レール1を軸方向に直進移動する直動体5の端面と、前記案内レールの終端側とにわたって防塵カバー7を覆設する直動案内装置の防塵構造であって、防塵カバーは、案内レールの終端側の面部に当接するカバー取付板9を備えるとともに、カバー取付板の表裏面にわたって貫通する挿入孔9-2が形成されており、案内レールに存する取付穴に係止する係止部11-1と、係止部から延設され、カバー取付板の挿入穴を通して折り曲げて固定する固定部11-2と、からなるカバー固定部材11を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールを軸方向に直進移動する直動体の端面と、前記案内レールの終端側とにわたって防塵カバーを覆設する直動案内装置の防塵構造であって、
前記防塵カバーは、前記案内レールの終端側の面部に当接するカバー取付板を備えるとともに、前記カバー取付板の表裏面にわたって貫通する挿入孔が形成されており、
前記案内レールに存する取付穴に係止する係止部と、前記係止部から延設され、前記カバー取付板の挿入穴を通して折り曲げて固定する固定部と、からなるカバー固定部材を備えたことを特徴とする直動案内装置の防塵構造。
【請求項2】
前記カバー取付板の表面側には、第二の面ファスナーを備え、
前記カバー固定部材は、固定部の端部に帯部を備え、
前記帯部の裏面側に、前記第二の面ファスナーに面接着する第一の面ファスナーを備えたことを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置の防塵構造。
【請求項3】
前記第一の面ファスナー及び第二の面ファスナーの幅を前記係止部の幅よりも大きくしてなることを特徴とする請求項2に記載の直動案内装置の防塵構造。
【請求項4】
軸方向に延びる転動体転動溝を有する案内レールと、前記案内レールの前記転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有すると共に前記案内レールに跨設されて軸方向に相対移動可能な直動体と、前記双方の転動体転動溝間に転動自在に組み込まれた転動体と、を含み、
前記請求項1乃至3のいずれか一つの直動案内装置の防塵構造を備えたことを特徴とする直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置の防塵のために設置する防塵カバーを簡易に固定する防塵構造及び直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置は、例えば、軸方向に延びる案内レールと、案内レールに跨設されるとともに、軸方向に相対移動するスライダーと、を含んで構成されている。案内レールの両側面には、それぞれ軸方向に延びる転動体転動溝が形成されており、スライダーのスライダー本体には、その両袖部の内側面に、案内レール側の転動体転動溝に対向する転動体転動溝がそれぞれ形成されている。そして、それらの対向する両転動体転動溝間には、多数のボール(転動体)が転動自在に組み込まれており、これら多数のボールの転動を介してスライダーが案内レール上を軸方向に相対移動する。
【0003】
従来、このような直動案内装置における直動案内軸受の防塵のために防塵カバー(ジャバラ)を設置する提案がされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、伸縮自在な蛇腹状の保護カバーの一端部をリニアガイドレールの終端部に接続したものであるが、レール端への取付用タップ穴を設けなければならないという、問題があった。
【0006】
本発明は従来技術の有するこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、直動案内軸受の防塵のために設置する防塵カバーを簡易に固定する防塵構造及び直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、第1の本発明は、案内レールを軸方向に直進移動する直動体の端面と、前記案内レールの終端側とにわたって防塵カバーを覆設する直動案内装置の防塵構造であって、
前記防塵カバーは、前記案内レールの終端側の面部に当接するカバー取付板を備えるとともに、前記カバー取付板の表裏面にわたって貫通する挿入孔が形成されており、
前記案内レールに存する取付穴に係止する係止部と、前記係止部から延設され、前記カバー取付板の挿入穴を通して折り曲げて固定する固定部と、からなるカバー固定部材を備えたことを特徴とする直動案内装置の防塵構造としたことである。
【0008】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記カバー取付板の表面側には、第二の面ファスナーを備え、
前記カバー固定部材は、固定部の端部に帯部を備え、
前記帯部の裏面側に、前記第二の面ファスナーに面接着する第一の面ファスナーを備えたことを特徴とする直動案内装置の防塵構造としたことである。
【0009】
第3の本発明は、第2の本発明において、前記第一の面ファスナー及び第二の面ファスナーの幅を前記係止部の幅よりも大きくしてなることを特徴とする直動案内装置の防塵構造としたことである。
【0010】
第4の本発明は、軸方向に延びる転動体転動溝を有する案内レールと、前記案内レールの前記転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有すると共に前記案内レールに跨設されて軸方向に相対移動可能な直動体と、前記双方の転動体転動溝間に転動自在に組み込まれた転動体と、を含み、
第1の本発明乃至第3の本発明のいずれか一つの直動案内装置の防塵構造を備えたことを特徴とする直動案内装置としたことである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、直動案内軸受の防塵のために設置する防塵カバーを簡易に固定する直動案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の防塵カバーを備えた直動案内装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の防塵カバーを備えた直動案内装置の第一実施形態を示す正面図である。
【
図3】本発明の防塵カバーを備えた直動案内装置の第一実施形態を一部断面して示す平面図である。
【
図5】本発明の防塵カバーを備えた直動案内装置の第二実施形態を示す正面図である。
【
図6】第二実施形態を示す直動案内装置の断面図である。
【
図7】本発明の防塵カバーを備えた直動案内装置の第三実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
なお、本実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず、何等限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
「第一実施形態」
【0014】
本実施形態では、例えば、
図1に示す直動案内装置を想定している。
図2は、防塵カバーを備えた直動案内装置の正面図である。
図3は、防塵カバーを備えた直動案内装置の平面図である。
図4は、
図3のIII-III線断面図である。
図1に示すように、直動案内装置は、軸方向に延びる第一の転動体転動溝3を有する案内レール1と、案内レール1の第一の転動体転動溝3に対向する第二の転動体転動溝(不図示)を有すると共に案内レール1に跨設されて軸方向(図中L1の方向)に相対移動可能な断面視で略コの字状のスライダー(直動体)5と、第一の転動体転動溝3と第二の転動体溝との間に転動自在に組み込まれた転動体(不図示)と、案内レール11の上面部や側面部に異物が付着したり塵埃が堆積したりすることを防止する防塵カバー(ジャバラ)7と、案内レール1の終端側の防塵カバー7に設けられ、防塵カバー7を支えるカバー取付板9と、カバー取付板9を固定するカバー固定部材11とを備えている。
本発明は、カバー固定部材11に特徴的な構成を有しており、案内レール1、スライダー5は周知の構成が本発明の範囲内で採用可能であるため、ここでの詳細な説明は省略し、以下では本発明の特徴的構成要素であるカバー固定部材11について詳細に説明する。
【0015】
カバー固定部材11は、案内レール1に存するレール固定用のレール取付穴1-1の上端縁に係止される係止部11-1と、この係止部11-1から案内レール1の上面に沿って延設される固定部11-2と、固定部11-2の端部に設けられた帯部11-3とから構成されている。
【0016】
カバー固定部材11は、先端の係止部11-1をレール取付穴1-1に引っ掛け、挿入穴9-2を通してカバー取付板9-1の外側に突き出し、カバー固定部材11の固定部11-2を、レール終端側で下方に略90度折り曲げて固定する。
【0017】
係止部11-1は、レール取付穴1-1の内周面のR形状に沿った所定長さの湾曲板状に形成されている。固定部11-2は、係止部11-1の一端から、係止部11-1と同一幅の長尺矩形板状に連続して延設され、先端領域にて所定長さをもって略直角に折り曲げ形成されている。
【0018】
帯部11-3は、固定部11-2の折り曲げ形成された先端領域に、略矩形状をもって一体に固着されている。
帯部11-3の裏面11-4には、第一の面ファスナー(不図示)が設けてある。
【0019】
カバー固定部材11を構成する係止部11-1と固定部11-2については、例えば、金属材などで一体成形されているものを想定している。また、帯部11-3は、例えば、強度を有する合成樹脂繊維材などからなるものを想定している。係止部11-1、固定部11-2及び帯部11-3の材質は、特に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。また、係止部11-1、固定部11-2及び帯部11-3までを金属材などの同一材で一体成形することも可能である。
【0020】
カバー取付板9-1には、レール1に防塵カバー(ジャバラ)7を取り付けるため、表裏面にわたって貫通した略矩形状の挿入穴9-2が設けてある。
図1、
図2及び
図4に示すように、カバー取付板9-1側には、第二の面ファスナー9-3が設けられており、帯部11-3の裏面11-4に設けた第一の面ファスナー(不図示)と接着固定できるようにしている。
【0021】
ここで、面ファスナーは、フック状に起毛された側(フック面)とループ状に密集して起毛された側(ループ面)と、を押し付けるとそれだけで貼り付き接着できるようになっており、貼り付けたり剥がしたりすることが自在にできるものを想定する。
なお、フック面とループ面との区別のないタイプからなる形態であってもよく本発明の範囲内である。
【0022】
このように、固定部11-2は、例えば金属製で折り曲げ可能となっており、折り曲げた固定部11-2と、レール1の取付穴1-1に係止した係止部11-1とで防塵カバー(ジャバラ)7のカバー取付板9-1を固定することができる。次いで、固定部11-2につなげた帯部の裏面11-4側に設けた第一の面ファスナー(不図示)と第二の面ファスナーと9-3とで、面接合することで、カバー取付板9-1を確実に固定し、脱落防止するようにしている。なお、防塵カバー7の一方側は直動体5の端面側に固定されている。
【0023】
本実施形態によれば、直動案内軸受の防塵のために設置する防塵カバー7を簡易に固定することができる。また、本実施形態によれば、案内レール1に当初から存しているレール取付穴1-1を加工することなくそのまま利用できるため、従来のように、部品や加工を必要とすることが不要となり、防塵カバーの固定を簡易となる。
【0024】
以上、本実施形態によれば、案内レール1に当初から存している取付穴1-1に係止部11-1を係止し、係止部11-1から延設する固定部11-2をカバー取付板9-1の挿入穴9-2を通して端部を折り曲げて固定する。さらに、脱落防止に固定部11-2につなげた帯部11-3の第一の面ファスナーで、カバー取付板9-1に備えた第二の面ファスナー9-3に面接着して固定するようにしている。このような構成は、レール1の形状を問わず、従来のようなタップ穴を形成する準備が不要で、レールにタップ加工を設けることなく防塵カバー(ジャバラ)7を固定することができる、という効果を有する。
「第二実施形態」
【0025】
図5は本発明の防塵カバーを備えた直動案内装置の第二実施形態を示す正面図である。本実施形態では、係止部11-1が係止される取付穴1-1とレール端部との距離を変更した場合であっても、固定部11-2の折り曲げ位置を変更することで調整するものである。
【0026】
図6に示すように、取付穴1-1とレール端部1-2との距離L
2が、
図4に示す第一実施形態の場合の距離L
1より短い場合、固定部11-2を折り曲げ可能としているので、折り曲げ部を短く調整することで、第一の面ファスナー(不図示)と第二の面ファスナー9-3との接着を確実としている。
なお、その他の構成及び作用効果にあっては第一実施形態と同じであるため、第一実施形態の説明を援用し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0027】
本実施形態によれば、レール1の端部とレール取付穴1-1との距離(L)に変更があっても、固定部11-2の折り曲げ位置を変更することで調整ができ、面ファスナー同士の接着を確実として、防塵カバー7の脱落を防止することができる。
「第三実施形態」
【0028】
図7は本発明の防塵カバーを備えた直動案内装置の第三実施形態を示す正面図である。本実施形態では、カバー固定部材11の接着力を向上させる応用例を示す。
本実施形態では、
図7に示すように、第二の面ファスナー9-3の幅を係止部11-1の幅よりも大きくして面積を増大させると共に、帯部11-3の面積を幅広として、その裏面に幅を係止部11-1の幅よりも大きくした第一の面ファスナー(不図示)を拡大して設けることで、相互の接着力を向上させて、脱落防止をさらに防止するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、直動案内装置全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 案内レール
1-1取付穴
3 転動体転動溝(潤滑部位)
5 スライダー(直動体)
7 防塵カバー(ジャバラ)
9-1 カバー取付板
9-2 挿入穴
9-3 第2の面ファスナー
11 カバー固定部材
11-1 係止部
11-2 固定部
11-3 帯部
11-4 裏面