(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143052
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A01C11/02 350G
A01C11/02 350J
A01C11/02 350H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055531
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今泉 大介
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 直人
(72)【発明者】
【氏名】荒井 毅
【テーマコード(参考)】
2B064
【Fターム(参考)】
2B064AA02
2B064AB01
2B064CA05
2B064CA09
2B064CA11
2B064CA22
2B064CA23
2B064CA27
2B064CB07
(57)【要約】
【課題】走行車体の後部に装着した植付装置に苗を供給する予備苗載置台を装備した乗用型田植機がある。然しながら、予備苗載置台が走行車体の後部に設けられているので、該予備苗載置台に苗を補給する作業が重労働で作業性に課題があった。そこで、容易に且つ作業性良く苗供給作業が行なえる苗移植機を提供する。
【解決手段】走行車体の前部から植付装置3の苗載台12上方に亘って苗枠26a,26b,26cが移動するレール22を設け、該苗枠26a,26b,26cの後部側に設けた回動自在の回動体28が苗枠26a,26b,26cが苗載台12に対向する位置に至るまでの間は後部側を閉塞する起立した状態で載置した苗Nの後端面を支持し、苗枠26a,26b,26cが苗載台12に対向する位置に至ると後方回動して苗枠26a,26b,26cに載置した苗Nを苗載台12に供給する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後部に苗載台(12)を装備した植付装置(3)を装着した苗移植機において、走行車体(2)の前部から植付装置(3)の苗載台(12)上方に亘って苗枠(26a,26b,26c)が移動するレール(22)を設け、該苗枠(26a,26b,26c)が苗(N)を載置する底面及び左右側壁と後部側に左右方向の枢支軸(27)にて回動自在に枢支された回動体(28)を装備し、該回動体(28)が、苗枠(26a,26b,26c)が苗載台(12)に対向する位置に至るまでの間は苗枠(26a,26b,26c)の後部側を閉塞する起立した状態で載置した苗(N)の後端面を支持し、苗枠(26a,26b,26c)が苗載台(12)に対向する位置に至ると後方回動して苗枠(26a,26b,26c)に載置した苗(N)を苗載台(12)に供給することを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
レール(22)がアーチ状であり、複数の苗枠(26a,26b,26c)が所定間隔をあけて連結体(25)にて連結された補助苗枠ユニット(21)を構成することを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
苗枠(26a,26b,26c)がレール(22)前方下部に位置する時には水平または水平に近い状態で、後方上方の苗載台(12)に対向する位置では苗載台(12)の傾斜角度と同じまたは近い傾斜角度になり、苗枠(26a,26b,26c)及びレール(22)が苗載台(12)の各苗載せ部12aと同数分左右に並べて構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
レール(22)に沿ってレール(22)の前端から後方の苗載台(12)上方位置まで回動体(28)の後方回動を規制する回動規制レール(23)を設け、苗枠(26a,26b,26c)が苗載台(12)に対向する位置に至ると回動体(28)の後方回動の規制を解除することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の苗移植機。
【請求項5】
苗載台(12)に設けた苗切れセンサ(S1)が苗(N)の減少を検出すると、苗枠(26a,26b,26c)をアクチュエータ(29)の作動にて苗載台(12)上方位置まで移動させ、苗枠(26a,26b,26c)に設けた苗検出センサ(32)が苗(N)の無いことを検出すると、苗枠(26a,26b,26c)をアクチュエータ(29)の作動により機体前方下方へ移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の苗移植機。
【請求項6】
苗枠(26a)の前端に肥料載置ラック(35)を回動自在に設け、苗枠(26a)が施肥タンク(10)の供給口(10a)に対向する位置に至ると回動体(28)が後方回動して供給口(10a)に連通することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植付ける苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車体の後部に装着した植付装置に苗を供給する予備苗載置台を装備した乗用型田植機がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような乗用型田植機では、予備苗載置台が走行車体の後部に設けられているので、該予備苗載置台に苗を補給する作業が重労働で作業性に課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容易に且つ作業性良く苗供給作業が行なえる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行車体2の後部に苗載台12を装備した植付装置3を装着した苗移植機において、走行車体2の前部から植付装置3の苗載台12上方に亘って苗枠26a,26b,26cが移動するレール22を設け、該苗枠26a,26b,26cが苗Nを載置する底面及び左右側壁と後部側に左右方向の枢支軸27にて回動自在に枢支された回動体28を装備し、該回動体28が苗枠26a,26b,26cが苗載台12に対向する位置に至るまでの間は苗枠26a,26b,26cの後部側を閉塞する起立した状態で載置した苗Nの後端面を支持し、苗枠26a,26b,26cが苗載台12に対向する位置に至ると後方回動して苗枠26a,26b,26cに載置した苗Nを苗載台12に供給する苗移植機である。
【0007】
請求項1記載の発明によると、苗移植機の前端を畦Uや道路に着けて停車して行なう苗補給作業の際に、苗枠26a,26b,26cをレール22に沿って走行車体2の前部に移動しておけば、苗枠26a,26b,26c前端が畦Uや道路近くの上方に位置し、畦Uや道路にいる作業者は畦Uや道路に置いている苗Nを容易に且つ作業性良く苗枠26a,26b,26cに載置することができる。
【0008】
更に、苗Nを載置した苗枠26a,26b,26cをレール22に沿って植付装置3の苗載台12に対向する位置に移動させると苗枠26a,26b,26cに載置した苗Nが苗載台12に供給され、容易に且つ作業性良く苗供給作業が行なえる。
【0009】
請求項2記載の発明は、レール22がアーチ状であり、複数の苗枠26a,26b,26cが所定間隔をあけて連結体25にて連結された補助苗枠ユニット21を構成する請求項1に記載の苗移植機である。
【0010】
請求項3記載の発明は、苗枠26a,26b,26cがレール22前方下部に位置する時には水平または水平に近い状態で、後方上方の苗載台12に対向する位置では苗載台12の傾斜角度と同じまたは近い傾斜角度になり、苗枠26a,26b,26c及びレール22が苗載台12の各苗載せ部12aと同数分左右に並べて構成した請求項1または請求項2に記載の苗移植機である。
【0011】
請求項4記載の発明は、レール22に沿ってレール22の前端から後方の苗載台12上方位置まで回動体28の後方回動を規制する回動規制レール23を設け、苗枠26a,26b,26cが苗載台12に対向する位置に至ると回動体28の後方回動の規制を解除する請求項1または請求項2に記載の苗移植機である。
【0012】
請求項5記載の発明は、苗載台12に設けた苗切れセンサS1が苗Nの減少を検出すると、苗枠26a,26b,26cをアクチュエータ29の作動にて苗載台12上方位置まで移動させ、苗枠26a,26b,26cに設けた苗検出センサ32が苗Nの無いことを検出すると、苗枠26a,26b,26cをアクチュエータ29の作動により機体前方下方へ移動させる請求項1または請求項2に記載の苗移植機である。
【0013】
請求項6記載の発明は、苗枠26aの前端に肥料載置ラック35を回動自在に設け、苗枠26aが施肥タンク10の供給口10aに対向する位置に至ると回動体28が後方回動して供給口10aに連通する請求項1または請求項2に記載の苗移植機である。
【0014】
請求項6記載の発明によると、作業者は、楽な姿勢で容易に且つ作業性良く施肥タンク10への肥料補給作業が行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態にかかる自律走行式田植機の作用説明用側面図である。
【
図2】同自律走行式田植機の作用説明用平面図である。
【
図3】同田植機の資材補給装置の作用説明用側面図である。
【
図4】同田植機の資材補給装置の作用説明用斜視図である。
【
図5】同田植機の資材補給装置の作用説明用斜視図である。
【
図7】同田植機の補助苗枠ユニットの他の実施形態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施形態を示す制御作用説明用側面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態を示す制御作用説明用平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の苗移植機の一実施形態である6条植え自律走行式田植機(以下、ロボット田植機と謂う)について図面に基づき説明する。
【0017】
なお、本明細書では、ロボット田植機の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
【0018】
図1及び
図2に示すように、ロボット田植機1は、走行車体2の後部に6条植え植付装置3を昇降リンク装置にて昇降自在に装備している。
【0019】
走行車体2は、メインフレーム4上部にエンジン5を搭載し、前部にミッションケース6及び操向輪である左右駆動前輪7,7を設け、後部に左右駆動後輪8,8と施肥装置9の主体部である施肥タンク10及び肥料繰出し装置11等を設けている。
【0020】
施肥タンク10は、上部が前方に向けて傾斜しており、上面の供給口10aが前方に向けて開口している。
【0021】
また、機体上部前側には、無線通信装置、制御装置、GPS、自動進行中に点灯するパイロットランプを装備する。
【0022】
植付装置3は、走行車体2からのPTO駆動軸にて駆動力が伝達される植付伝動ケース11’、左右移動機構にて左右往復移動する左右方向に6つの苗載せ部12aを設けた苗載台12、該苗載台12の各苗載せ部12aに載置したマット状土付き苗N下端部から1株分づつ苗をかぎ取って圃場に植付ける植付具13、植付具13が苗を植付ける圃場面を整地する整地フロート14等にて構成される。
【0023】
苗載台12には、載置苗の減少を検出する苗切れセンサS1及び1枚のマット状土付き苗Nが載置できる長さの位置に苗補給可能センサS2が6つの苗載せ部12aの各々に設けられている(
図6参照)。
【0024】
なお、施肥装置9及び植付装置3へのPTO駆動軸は、PTOアクチュエータにて作動するPTOクラッチにて駆動の入り切りがされる。
【0025】
また、左右駆動前輪7,7及び左右駆動後輪8,8は、エンジン5からの駆動力をミッションケース6内の変速機構及び前後進切替え機構にて出力された駆動力が伝達されて駆動回転する。なお、変速機構及び前後進切替え機構は、変速アクチュエータにて変速及び前後進切替えが行なわれ、左右駆動前輪7,7は、操向用アクチュエータにて操向される。
【0026】
なお、ミッションケース6の上部には、ステップ15、変速ペダル16及び収納自在の簡易操行ハンドル17が設けられており、自律走行不能またはリモコンでの操作が不能となった場合等に、後述の資材補給装置20の補助苗枠ユニット21をアーチ状レール22の後方上方に移動させてステップ15上方を作業者が搭乗できる空間とし、簡易操行ハンドル17を収納状態から起立させた使用状態にして、作業者がステップ15上に搭乗して簡易操行ハンドル17を持って変速ペダル16を操作して手動走行させることができる。
【0027】
走行車体2の前部から後部に亘って6つの資材補給装置20が設けられている。
【0028】
図1~
図5に示すように、資材補給装置20は、植付装置3の苗載台12の各苗載せ部12a上端部に対向して前側に各々設けられている。
【0029】
資材補給装置20は、走行車体2のメインフレーム4に支持フレームを介して固定された左右アーチ状レール22、左右アーチ状レール22下方に固定された左右回動規制レール23及び左右アーチ状レール22を走行移動する補助苗枠ユニット21にて構成される。
【0030】
左右アーチ状レール22は、走行車体2の前部から後部の植付装置3の苗載台12上方に亘って後方程高くなる側面視で円弧状に設けられ、補助苗枠ユニット21の走行輪24がはまる凹溝22aが外側面に形成されている。
【0031】
左右回動規制レール23は、左右アーチ状レール22下面から所定距離離れて左右アーチ状レール22下面に沿って左右アーチ状レール22の前端から後方の苗載台12上端部位置まで設けられた円弧状の杆体である。
【0032】
補助苗枠ユニット21は、平面視で四角の連結体としての枠体25にマット状土付き苗Nを載置する3つの下段苗枠26a、中段苗枠26b及び上段苗枠26cが所定間隔をあけて連結されている。
【0033】
下段苗枠26a、中段苗枠26b及び上段苗枠26cは、マット状土付き苗Nを載置する底面及び左右側壁を有し、後端側に左右方向の枢支軸27にて回動自在に枢支された回動体28を装備する。
【0034】
回動体28は、マット状土付き苗Nを載置する底面及び左右側壁を有し、左右回動規制レール23上面に接当している間は下段苗枠26a、中段苗枠26bまたは上段苗枠26cの底面に対して起立した状態で、下段苗枠26a、中段苗枠26bまたは上段苗枠26cに載置したマット状土付き苗Nの後端面を支持して下段苗枠26a、中段苗枠26bまたは上段苗枠26c内に載置したマット状土付き苗Nを保持する。
【0035】
そして、
図3に示すように、補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22に沿って後方上方に移動して下段苗枠26a、中段苗枠26bまたは上段苗枠26cが植付装置3を最上昇位置に上昇させた苗載台12の苗載せ部12a上端部と対向する位置に達した時、回動体28は、左右回動規制レール23上面との接当が開放されて後方下方に向いて回動して苗載せ部12a上端部の上面に接当して、下段苗枠26a、中段苗枠26bまたは上段苗枠26cが苗載せ部12aと連通状態となって、下段苗枠26a、中段苗枠26bまたは上段苗枠26cに載置したマット状土付き苗Nが苗載せ部12a上にスライドして供給される。
【0036】
また、下段苗枠26a、中段苗枠26b及び上段苗枠26cの後部側には、左右走行輪24が各々設けられており、該左右走行輪24が左右アーチ状レール22の凹溝22a内にはまっている。
【0037】
そして、下段苗枠26aの左右走行輪24は、下段苗枠26a底面に設けたアクチュエータである電動モータ29の駆動にて駆動回転する駆動輪となっている。
【0038】
従って、電動モータ29を正転させて左右走行輪24を正転させると、補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22に沿って後方上方に移動し、苗供給位置停止センサ30が上段苗枠26cを検出すると電動モータ29が停止し、上段苗枠26cに載置されたマット状土付き苗Nが苗載せ部12a上にスライドして供給される。
【0039】
更に、電動モータ29を正転させて左右走行輪24を正転させると、補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22に沿って後方上方に移動し、苗供給位置停止センサ30が中段苗枠26bを検出すると電動モータ29が停止し、中段苗枠26bに載置されたマット状土付き苗Nが苗載せ部12a上にスライドして供給される。
【0040】
更に、電動モータ29を正転させて左右走行輪24を正転させると、補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22に沿って後方上方に移動し、苗供給位置停止センサ30が下段苗枠26aを検出すると電動モータ29が停止し、下段苗枠26aに載置されたマット状土付き苗Nが苗載せ部12a上にスライドして供給される。
【0041】
そして、電動モータ29を逆転させて左右走行輪24を逆転させると、補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22に沿って前方下方に移動し、待機位置停止センサ31が下段苗枠26aを検出すると電動モータ29が停止し、補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22の前方下端位置で停止する。
【0042】
また、
図1及び
図2に示すように、6つの資材補給装置20のうち左から2つ目の資材補給装置20の下段苗枠26a前端部には、側面視でL字状の肥料載置ラック35が設けられている。
【0043】
肥料載置ラック35は、上端部がフック35aになっており、該フック35aを下段苗枠26a前端部の係合孔に引っ掛けることにより、肥料載置ラック35が下段苗枠26a前端部に回動自在に吊り下げられた状態となっている。
【0044】
ここで、ロボット田植機1の前端を畦Uや道路等(以下、畦Uという。)に着けて停車して行なう機体への苗補給作業や肥料補給作業について説明する。
【0045】
苗補給作業や肥料補給作業時には、苗載台12が左右往復移動の左右中央位置に来た時に停止して、6つの苗載せ部12aが各々6つの資材補給装置20と対向した状態であり、植付装置3が最上昇位置まで上昇している。
【0046】
また、6つの資材補給装置20の各補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22の前方下端位置で停止した状態となっているが、自動で各補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22の前方下端位置で停止した状態となっていない場合には、リモコンで電動モータ29を操作して各補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22の前方下端位置で停止した状態とする。
【0047】
すると、左から2つ目の資材補給装置20の下段苗枠26a前端部に吊り下げられた肥料載置ラック35が畦U近くの低い位置にあり、畦Uにいる作業者が畦Uに置いている肥料袋Fを容易に且つ作業性良く肥料載置ラック35に載置することができる。この時、肥料袋Fの上部は、開けておく。
【0048】
なお、左から2つ目の左右回動規制レール23は、施肥タンク10上面の供給口10aに対向する部分がストッパ開放用電動モータにてストッパ状態と開放状態に切り換え自在となっている。
【0049】
そして、畦Uにいる作業者がリモコンで左から2つ目の補助苗枠ユニット21の電動モータ29を操作して補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22の上方に移動させて、下段苗枠26aが施肥タンク10上面の供給口10aに対向する位置まで移動させて停止させ、リモコンでストッパ開放用電動モータを操作して左から2つ目の左右回動規制レール23の施肥タンク10上面の供給口10aに対向する部分を開放すると、下段苗枠26aの回動体28が後方下方に向いて回動して供給口10a内に先端が突入し、下段苗枠26aが施肥タンク10と連通した状態となる。
【0050】
そこで、作業者が肥料載置ラック35の下部を把持して上動回動させて肥料載置ラック35と下段苗枠26aを一直線状にすると、肥料袋Fの上部開口から肥料が下段苗枠26a上をスライドして供給口10aから施肥タンク10内に供給される。
【0051】
従って、畦Uにいる作業者は、楽な姿勢で容易に且つ作業性良く施肥タンク10への肥料補給作業が行なえる。
【0052】
なお、肥料補給作業を終えると、リモコンでストッパ開放用電動モータを操作して左から2つ目の左右回動規制レール23の施肥タンク10上面の供給口10aに対向する部分をストッパ状態とし、電動モータ29を操作して左から2つ目の補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22の前方下端位置まで移動させて停止した状態とする。
【0053】
また、各補助苗枠ユニット21の下段苗枠26a、中段苗枠26b及び上段苗枠26c前端が畦U近くの上方に位置し、且つ、略水平状態なので、畦Uにいる作業者は畦Uに置いているマット状土付き苗Nを容易に且つ作業性良く下段苗枠26a、中段苗枠26b及び上段苗枠26cに載置することができる。
【0054】
そして、リモコンでロボット田植機1を作業状態に起動すると、制御装置は、苗載台12の各苗載せ部12aの苗切れセンサS1または苗補給可能センサS2がマット状土付き苗Nの無いことを検出しているので、電動モータ29を正転させて各補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22後方上方に移動させ、苗供給位置停止センサ30の上段苗枠26c、中段苗枠26b、下段苗枠26aの検出にて、順次、上段苗枠26c、中段苗枠26b、下段苗枠26aに載置しているマット状土付き苗Nを苗載せ部12aに供給し、苗切れセンサS1及び苗補給可能センサS2がマット状土付き苗Nを検出すると、電動モータ29を逆転させて各補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22前方下方の待機位置停止センサ31が下段苗枠26aを検出する位置まで移動させる。
【0055】
なお、下段苗枠26a、中段苗枠26b及び上段苗枠26c底面には、苗検出センサ32が設けられており、下段苗枠26a、中段苗枠26b及び上段苗枠26cの全苗検出センサ32がマット状土付き苗Nの無いことを検出した場合も、制御装置は、電動モータ29を逆転させて各補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22前方下方の待機位置停止センサ31が下段苗枠26aを検出する位置まで移動させる。
【0056】
次に、リモコンを操作してロボット田植機1を田植作業開始にすると、制御装置は、記憶している作業経路が付加された地図データに基づいて、圃場にてGPSにより測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて位置情報を算出しながら左右走行用電動モータ、左右前輪走行用電動モータ、操向用アクチュエータ及び植付け用電動モータを作動制御して、該経路に沿って自律走行して自動的に田植作業をする。
【0057】
そして、制御装置は、苗載台12の6つの苗載せ部12aに各々設けた苗切れセンサS1の何れかが苗減少を検出すると、苗載台12が左右往復移動の左右中央位置に来た時に田植作業及び機体の進行を停止し(苗載台12の中央停止機構は、従来周知の構成で、植付装置3の機枠に苗載台12が左右移動する時の左右移動中央位置を検出するセンサを設けて、該センサにて苗載台12が左右移動の中央位置に位置したことを検出して植付装置3の駆動及び走行を自動停止する)、植付装置3を最上昇位置まで上昇させる。
【0058】
次に、制御装置は、苗切れセンサS1が苗減少を検出した苗載せ部12aに対応する補助苗枠ユニット21の電動モータ29を正転させて補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22後方上方に移動させ、苗供給位置停止センサ30の上段苗枠26c(中段苗枠26b、下段苗枠26a)の検出にて移動を停止して、前述の要領にて上段苗枠26c(中段苗枠26b、下段苗枠26a)に載置しているマット状土付き苗Nを苗載せ部12aに供給する。
【0059】
その時、上段苗枠26cの苗検出センサ32がマット状土付き苗Nを検出している場合は、上段苗枠26cの検出にて移動を停止して、前述の要領にて上段苗枠26cに載置しているマット状土付き苗Nを苗載せ部12aに供給し、更に、補助苗枠ユニット21の電動モータ29を正転させて補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22後方上方に更に移動させ、苗供給位置停止センサ30の中段苗枠26bの検出にて移動を停止して、前述の要領にて中段苗枠26bに載置しているマット状土付き苗Nを苗載せ部12aに供給する。
【0060】
なお、その時、苗補給可能センサS2がマット状土付き苗Nを検出していなければ、更に、補助苗枠ユニット21の電動モータ29を正転させて補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22後方上方に更に移動させ、苗供給位置停止センサ30の下段苗枠26aの検出にて移動を停止して、前述の要領にて下段苗枠26aに載置しているマット状土付き苗Nを苗載せ部12aに供給する。
【0061】
また、上段苗枠26cの苗検出センサ32がマット状土付き苗Nを検出していない場合は、中段苗枠26bの検出にて移動を停止して、前述の要領にて中段苗枠26bに載置しているマット状土付き苗Nを苗載せ部12aに供給し、更に、補助苗枠ユニット21の電動モータ29を正転させて補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22後方上方に更に移動させ、苗供給位置停止センサ30の下段苗枠26aの検出にて移動を停止して、前述の要領にて下段苗枠26aに載置しているマット状土付き苗Nを苗載せ部12aに供給する。
【0062】
また、上段苗枠26c及び中段苗枠26bの苗検出センサ32がマット状土付き苗Nを検出していない場合は、下段苗枠26aの検出にて移動を停止して、前述の要領にて下段苗枠26aに載置しているマット状土付き苗Nを苗載せ部12aに供給する。
【0063】
一方、苗切れセンサS1が苗減少を検出していない苗載せ部12aでも苗補給可能センサS2がマット状土付き苗Nを検出していなければ、マット状土付き苗Nを1枚供給可能であるから、該苗補給可能センサS2がマット状土付き苗Nを検出していない苗載せ部12aに対応する補助苗枠ユニット21の電動モータ29を正転させて上述と同じ要領にて補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22後方上方に移動させ、苗供給位置停止センサ30の上段苗枠26c(中段苗枠26b、下段苗枠26a)の検出にて移動を停止して、上段苗枠26c(中段苗枠26b、下段苗枠26a)に載置しているマット状土付き苗Nを苗載せ部12aに供給する。
【0064】
そして、苗供給作業が終了すると、制御装置は、移動させた補助苗枠ユニット21の電動モータ29を逆転させて補助苗枠ユニット21を左右アーチ状レール22に沿って前方下方に移動し、左右アーチ状レール22の前方下端位置で停止し、植付装置3を作業位置まで下降させて前進して田植作業を再開する。
【0065】
図7は、補助苗枠ユニット21の他の実施形態を示す斜視図である。
【0066】
即ち、補助苗枠ユニット21は、平面視で四角の枠体25にマット状土付き苗Nを載置する下段苗枠26a下部が固定され、中段苗枠26b及び上段苗枠26cの下部が左右方向の枢支軸40にて回動自在に枢支されている。
【0067】
補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22の前方下端位置にある時は、下段苗枠26a、中段苗枠26b及び上段苗枠26cが同じ間隔で配置された苗載置状態となっており、補助苗枠ユニット21が左右アーチ状レール22の後方上方位置にある時は、中段苗枠26b及び上段苗枠26cが枢支軸40まわりに回動して後方に倒れた退避状態となる。
【0068】
<別実施形態>
【0069】
(1)
図8及び
図9は、他の実施形態を示す直進アシスト機能付きの田植機1の直進アシスト制御方式を説明する図である。
【0070】
即ち、田植機1は、圃場に入ると最初の1工程目の田植作業走行で基準点A,BをGPSにて記憶し、走行基準線A-Bを設定し、以後、往復作業工程でGPSにより測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて位置情報を算出しながら走行基準線A-Bと平行に走行して田植作業を行なう。
【0071】
また、ドローン50がGPSにより測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて位置情報を算出しながら田植機1の真上で田植機1の往復作業工程に合わせて走行基準線A-Bと平行に飛行する。
【0072】
その際に、
図9に示すように、ドローン50は、距離aと距離bと角度dから余弦定理にて算出した基準点A-B間距離cと実際の基準点A-B間距離が一致するように田植機1に指令して田植機1の位置を補正する。
【0073】
従って、田植機1の走行軌跡のずれが大きくなる前に田植機1の走行を補正することができる。
【0074】
(2)他の実施形態として、乗用型田植機の操縦者が着座する座席に着座センサ(操縦者が着座するとその荷重を検出して操縦者が着座していると判断する)を設けて、乗用田植機が走行中に操縦者が座席から離れた場合(立ち上がった場合)には、制御装置が速度規制をして走行速度を所定速度まで低下し、その後、操縦者が着座しても速度規制をして走行速度を所定速度まで低下したままとし、HSTレバー等の変速装置が中立を検出(機体の停止を検出)して、速度規制を解除する。
【0075】
なお、操縦者が座席から離れた状態(立ち上がった状態)で乗用田植機が走行を開始した場合には、制御装置が速度規制をして走行速度を所定速度まで低下し、その後、操縦者が着座しても速度規制をして走行速度を所定速度まで低下したままである。
【0076】
また、副変速が高速(移動速)である場合またはPTOである場合(停車して植付装置3や施肥装置9等の作業装置を駆動する場合)には、制御装置は、操縦者が座席から離れても速度規制をしない。
【符号の説明】
【0077】
2 走行車体
3 植付装置
10 施肥タンク
10a 供給口
12 苗載台
21 補助苗枠ユニット
22 レール(アーチ状レール)
23 回動規制レール
25 連結体(枠体)
26a 苗枠(下段苗枠)
26b 苗枠(中段苗枠)
26c 苗枠(上段苗枠)
27 枢支軸
28 回動体
29 アクチュエータ(電動モータ)
32 苗検出センサ
35 肥料載置ラック
N 苗(マット状土付き苗)
S1 苗切れセンサ