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  • 特開-クッション 図1
  • 特開-クッション 図2
  • 特開-クッション 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143058
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/22 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A47C27/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055538
(22)【出願日】2023-03-30
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】312001661
【氏名又は名称】有限会社ケーアンドケーメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】市川 伊知郎
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AD04
3B096AD07
3B096BA01
(57)【要約】
【課題】クッション材の内部に硬いものがあるという違和感を与えることなく、しかも内に水が残り難いクッションを提供する。
【解決手段】カバー部材2は、クッション1の使用時に該クッションの下面を構成する部分が、繊維生地よりも摩擦抵抗の大きな網目状シート材5によって構成されている。クッション材3が、ゴム弾性を有する三次元網状繊維構造体8と、被覆部7とから構成される。被覆部7は、三次元網状繊維構造体8がカバー部材2内に収納された状態で網目状シート材5と対向する三次元網状繊維構造体の表面部分8Aを除いて、三次元網状繊維構造体8を覆う発泡プラスチックまたはプラスチック製海綿体である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に少なくとも人と触れる部分が繊維生地によって構成されているカバー部材内にクッション材が収納されているクッションであって、
前記カバー部材は、前記クッションの使用時に該クッションの下面を構成する部分が、前記繊維生地よりも摩擦抵抗の大きな網目状シート材によって構成されており、
前記クッションが、ゴム弾性を有する三次元網状繊維構造体と、前記三次元網状繊維構造体が前記カバー部材内に収納された状態で前記網目状シート材と対向する前記三次元網状繊維構造体の表面部分を除いて、前記三次元網状繊維構造体を覆う発泡プラスチックまたはプラスチック製海綿体からなる被覆部とから構成されていることを特徴とするクッション。
【請求項2】
前記三次元網状繊維構造体は、輪郭形状が六面体形状を有しており、前記網目状シート材と対向する前記三次元網状繊維構造体の前記表面部分が前記六面体形状の1面を構成しており、
前記三次元網状繊維構造体の前記六面体形状の残りの5面を構成する5つの表面部分と前記被覆部とが接合されている請求項1に記載のクッション。
【請求項3】
前記三次元網状繊維構造体の吸水性は、前記網目状シート材を通して浸入した水を前記被覆部まで吸い上げることがない吸水性である請求項1に記載のクッション。
【請求項4】
前記繊維生地と前記被覆部との間に防水フィルムが配置されている請求項1に記載のクッション。
【請求項5】
前記防水フィルムは前記繊維生地に接合されている請求項3に記載のクッション。
【請求項6】
前記繊維生地は、撥水性、防汚性及び防かび性を備えている請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に水が残留し難いクッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2008-113798号公報(特許文献1)及び特開2015-119761号公報(特許文献2)には、使用時に少なくとも人と触れる部分が織物生地によって構成されているカバー部材内にクッション材が収納されているクッションが開示されている。クッション材は、三次元網状繊維構造体と、三次元網状繊維構造体の上面のみを発泡プラスチックまたはプラスチック製海綿体で覆う被覆部とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-113798号公報
【特許文献2】特開2015-119761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元網状繊維構造体は、発泡プラスチックまたはプラスチック製海綿体と比べて硬質である。そのため従来のように、三次元網状繊維構造体の上面のみを発泡プラスチックまたはプラスチック製海綿体からなる被覆部で被覆する場合には、三次元網状繊維構造体の上面側の角部の存在及び側面の存在が、カバー部材を通して、使用者に感知されやすい。そのため特に使用者が、レオタードや水着のように薄い衣服しか身につけていない場合には、クッション材の中に硬いものがあるという違和感を強く感じることがある。また従来のクッションは、使用者の体が水で濡れていて、使用者の体から流れ落ちた水がクッションの内部に浸入することを想定していない。そのため特許文献1及び特許文献2には、防腐及び防かびのために、クッションの内部に水が残らないようにするには、どのような対策を講ずれば良いのかを示唆する記載はない。
【0005】
本発明の目的は、クッション材の内部に硬いものがあるという違和感を与えることなく、しかも内部に水が残り難いクッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、使用時に少なくとも人と触れる部分が繊維生地(織物、編物)によって構成されているカバー部材内にクッション材が収納されているクッションを対象とする。本発明において、カバー部材は、クッションの使用時に該クッションの下面を構成する部分が、繊維生地よりも摩擦抵抗の大きな網目状シート材によって構成されている。そしてクッションが、ゴム弾性を有する三次元網状繊維構造体と、被覆部とから構成される。被覆部は、三次元網状繊維構造体がカバー部材内に収納された状態で網目状シート材と対向する三次元網状繊維構造体の表面部分を除いて、三次元網状繊維構造体を覆う発泡プラスチック(発泡体、フォーム)またはプラスチック製海綿体(スポンジ)である。
【0007】
本発明によれば、三次元網状繊維構造体がカバー部材内に収納された状態で網目状シート材と対向する三次元網状繊維構造体の表面部分を除いて、三次元網状繊維構造体と比べて軟らかい被覆部が三次元網状繊維構造体と三次元網状繊維構造体の角部の間に位置し、また該角部に連続する三次元網状繊維構造体の側面を覆うことになる。その結果、使用者は、三次元網状繊維構造体の存在を意識しないで、クッションを使用できるようになる。またカバー部材の上から内部に入った水は、クッションの下面側に位置するカバー部材の網目状シート材を通して、カバー部材の外部に排出される。したがって三次元網状繊維構造体の大部分が被覆部に覆われていても、クッションの内部に水が残ることを防止できる。
【0008】
三次元網状繊維構造体は、輪郭形状が六面体形状を有しており、網目状シート材と対向する三次元網状繊維構造体の表面部分が六面体形状の1面を構成している場合、三次元網状繊維構造体の六面体形状の残りの5面を構成する5つの表面部分と被覆部とは接合されているのが好ましい。このようにすると三次元網状繊維構造体と被覆部は一体化された状態になるので、クッションを乱暴に扱ったとしても、被覆部が移動して、被覆部によって網目状シート材が塞がれることを防止できる。
【0009】
三次元網状繊維構造体の吸水性は、網目状シート材を通して浸入した水を被覆部まで吸い上げることがない吸水性であることが好ましい。このようにすると仮に網目状シート材を通ってカバー部材の外部から水が浸入しても、三次元網状繊維構造体経由で被覆部まで水が吸い上げられることがなく、このことによってもクッションの内部に水が残ることを阻止することができる。
【0010】
繊維生地と被覆部との間に防水フィルムが配置されていてもよい。このようにすれば、繊維生地側から水が積極的に浸入することを防止できる。なお防水フィルムは繊維生地に接合されているのが好ましい。このようにすれば、防水フィルムの位置ずれによって、水が被覆部に浸入することを防止できる。
【0011】
繊維生地は、撥水性、防汚性及び防かび性を備えているのが好ましい。繊維生地が、このような性質を有していれば、水がかかるような場所でクッションが使用されても大きな支障は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は本発明をプールサイドに置かれる椅子の座面に使用されるクッションを立てた状態で正面側からみた斜視図であり、(B)は図1(A)のクッションを立てた状態で裏面側からみた斜視図である。
図2】ファスナを開いてクッション材を一部露出させた状態でクッションを裏面側からみた斜視図である。
図3】(A)はクッション材の斜視図であり、(B)は図3(A)のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態の一例のクッション1を詳細に説明する。図1(A)は本発明をプールサイドに置かれる椅子の座面に使用されるクッション1を立てた状態で正面側からみた斜視図であり、図1(B)は図1(A)のクッションを立てた状態で裏面側からみた斜視図である。また図2はファスナを開いてクッション材3を一部露出させた状態でクッションを裏面側からみた斜視図である。さらに図3(A)はクッション材3の斜視図であり、図3(B)は図3(A)のB-B線断面図である。これらの図において、クッション1は、カバー部材2とカバー部材2の内部に収納されたクッション材3とから構成されている。
【0014】
カバー部材2は、使用時に少なくとも人と触れる部分(主面2Aと側面2B~2E)が繊維生地(織物、編物)によって構成されており、使用時に裏面2Fとなる部分が網目状シート材5によって構成されている。本実施の形態で用いる繊維生地には、撥水加工、防汚加工及び防かび加工が施されており、100回の洗濯及び乾燥を繰り返しても撥水性、防汚性及び防かび性の効果は持続される。繊維生地が、このような性質を有していれば、水がかかるような場所でクッションが使用されても大きな支障は生じない。また本実施の形態で用いる繊維生地の裏面には、水の浸透を防ぐために防水フィルムが接合されている。そして本実施の形態では、カバー部材2の側面2Bに図示しないファスナ4が設けられており、またカバー部材2には、椅子に取り付ける際に使用する取付用の紐2Gが設けられている。図2に示すように、ファスナ4を開いた状態にしてカバー部材2の内部にクッション材3が挿入される。
【0015】
カバー部材2の裏面2Fに用いられる網目状シート材5は、繊維生地よりも摩擦抵抗が大きいため、この摩擦抵抗によって、クッション1の移動がある程度規制されている。また網目状シート材5は、カバー部材2の内部に入った水が自然に重力で外部に排出される程度の通水性を有している。
【0016】
図3に示すように、クッション材3は、被覆部7とゴム弾性を有する三次元網状繊維構造体8とから構成される。被覆部7は、三次元網状繊維構造体8よりも軟らかい。そして被覆部7は、三次元網状繊維構造体8がカバー部材2内に収納された状態で網目状シート材5と対向する三次元網状繊維構造体8の表面部分8Aを除いて、三次元網状繊維構造体8を覆う発泡プラスチック(発泡体、フォーム)またはプラスチック製海綿体(スポンジ)である。本実施の形態では、被覆部7は、発泡プラスチックの一種である透水タイプのポリウレタンフォームを用いて構成されている。ポリウレタンフォームは、常法によりポリオール化合物、発泡剤である水、触媒、整泡剤を含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分を混合して反応させることにより得られる。本実施の形態で用いる被覆部7は、広い面積の平板部7Aと、幅の狭い短冊部7B~7Eとが、三次元網状繊維構造体8に接着材層9を介して接合されて構成されている。
【0017】
三次元網状繊維構造体8は、熱可塑性弾性樹脂の連続線条のランダムループから形成されている。三次元網状繊維構造体8の連続線条を構成する熱可塑性弾性樹脂としては、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。
【0018】
三次元網状繊維構造体8は、輪郭形状が六面体形状を有しており、網目状シート材5と対向する三次元網状繊維構造体8の表面部分8Aが六面体形状の1面を構成しており、三次元網状繊維構造体8の六面体形状の残りの5面を構成する5つの表面部分と被覆部7とは接着材層9により接合されている。接着材層9により三次元網状繊維構造体8と被覆部7が一体化された状態になると、クッションを乱暴に扱ったとしても、被覆部7が移動して、被覆部7によって網目状シート材5が塞がれることを防止できる。
【0019】
本実施の形態で用いる三次元網状繊維構造体8の吸水性は、網目状シート材5を通して浸入した水を被覆部7まで吸い上げることがない吸水性を有している。そのため仮に網目状シート材5を通ってカバー部材2の外部から水が浸入しても、三次元網状繊維構造体8経由で被覆部7まで水が吸い上げられることがなく、このことによってもクッションの内部に水が残ることを阻止することができる。
【0020】
本実施の形態によれば、三次元網状繊維構造体8がカバー部材2内に収納された状態で網目状シート材5と対向する三次元網状繊維構造体8の表面部分を除いて、三次元網状繊維構造体8と比べて軟らかい被覆部7が、三次元網状繊維構造体8と三次元網状繊維構造体8の角部の間に位置し、またこの角部に連続する三次元網状繊維構造体8の側面を覆うことになる。その結果、使用者は、三次元網状繊維構造体8の存在を意識しないで、クッションを使用できるようになる。またカバー部材2の上から内部に入った水は、クッションの下面側に位置するカバー部材2の網目状シート材5を通して、カバー部材2の外部に排出される。したがって三次元網状繊維構造体8の大部分が被覆部に覆われていても、クッションの内部に水が残ることを防止できる。
【0021】
上記実施の形態では、被覆部7をポリウレタンフォームで形成したが、被覆部7をプラスチック製海綿体すなわちスポンジで形成してもよい。被覆部7に用いるフォームまたはスポンジは、透水性を有する連続気泡タイプでも独立気泡タイプのいずれでもよい。
【0022】
上記実施の形態のクッションは、椅子の座面に使用するクッションであったが、椅子の背もたれに使用するクッションにも本発明を適用できるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、三次元網状繊維構造体がカバー部材内に収納された状態で網目状シート材と対向する三次元網状繊維構造体の表面部分を除いて、三次元網状繊維構造体と比べて軟らかい被覆部が三次元網状繊維構造体と三次元網状繊維構造体の角部の間に位置し、また該角部に連続する三次元網状繊維構造体の側面を覆うことになるので、使用者は、三次元網状繊維構造体の存在を意識しないで、クッションを使用できるようになる。またカバー部材の上から内部に入った水は、クッションの下面側に位置するカバー部材の網目状シート材を通して、カバー部材の外部に排出されるので、三次元網状繊維構造体の大部分が被覆部に覆われていても、クッションの内部に水が残ることを防止できる。
【符号の説明】
【0024】
1 クッション
2 カバー部材
3 クッション材
4 ファスナ
5 網目状シート材
7 被覆部
8 三次元網状繊維構造体
9 接着材層
図1
図2
図3