IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローリー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-貨幣処理システム及び貨幣処理方法 図1
  • 特開-貨幣処理システム及び貨幣処理方法 図2
  • 特開-貨幣処理システム及び貨幣処理方法 図3
  • 特開-貨幣処理システム及び貨幣処理方法 図4
  • 特開-貨幣処理システム及び貨幣処理方法 図5
  • 特開-貨幣処理システム及び貨幣処理方法 図6
  • 特開-貨幣処理システム及び貨幣処理方法 図7
  • 特開-貨幣処理システム及び貨幣処理方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143071
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】貨幣処理システム及び貨幣処理方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 13/00 20060101AFI20241003BHJP
   G06Q 40/02 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
G07D13/00
G06Q40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055556
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 隆治
(72)【発明者】
【氏名】名村 重男
【テーマコード(参考)】
3E141
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA07
3E141CA17
3E141DA04
3E141JA08
5L040BB01
5L055BB01
(57)【要約】
【課題】鑑定機関に貨幣の鑑定を依頼する係員の作業負担を軽減する。
【解決手段】貨幣処理システムを、貨幣を受け付ける入金部と、貨幣の真偽を識別する識別部と、鑑定機関毎に、各鑑定機関が鑑定対象とする貨幣の種類と各機関が鑑定時に提出を求める書面に関する情報との対応を示す対応情報が保存された記憶部とを含み、対応情報に基づいて、識別部で識別された貨幣に対応する書面に関する情報を選択するように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を受け付ける入金部と、
前記貨幣の真偽を識別する識別部と、
鑑定機関毎に、各鑑定機関が鑑定対象とする貨幣の種類と各機関が鑑定時に提出を求める書面に関する情報との対応を示す対応情報が保存された記憶部と
を含み、
前記対応情報に基づいて、前記識別部で識別された貨幣に対応する書面に関する情報を選択する
ことを特徴とする貨幣処理システム。
【請求項2】
前記識別部が真の貨幣であると識別した貨幣を収納する第1収納部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理システム。
【請求項3】
前記識別部が偽又は偽の可能性があると識別した貨幣を収納する第2収納部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の貨幣処理システム。
【請求項4】
前記対応情報に基づいて、前記第2収納部に収納した貨幣に対応する鑑定機関及び書面を選択すると共に、前記書面に記入すべき情報のうち、前記識別部で得られた情報に基づいて記入可能な情報を、記入済みの状態にした前記書面の書面データを生成して、前記書面データを外部装置に出力することを特徴とする請求項3に記載の貨幣処理システム。
【請求項5】
客の口座に関する情報を管理して、客から受け付けて前記第1収納部に収納した貨幣の金額を前記客の口座に入金する口座処理に関する処理を実行するサーバ装置
をさらに備え、
前記書面データは、前記書面に記入すべき情報のうち、前記サーバ装置が有する情報に基づいて記入可能な情報を、記入済みの状態で生成される
ことを特徴とする請求項4に記載の貨幣処理システム。
【請求項6】
前記外部装置は、前記書面データを用紙に印刷して出力するプリンタであることを特徴とする請求項5に記載の貨幣処理システム。
【請求項7】
前記書面に関する情報を表示する端末装置
をさらに備え、
前記プリンタが出力した用紙に手書きで記入すべき情報があることを前記端末装置の画面に表示して報知する
ことを特徴とする請求項6に記載の貨幣処理システム。
【請求項8】
前記書面データで記入済みの状態にした情報の中に、確認を要する情報が含まれている場合には、確認を指示する情報を前記端末装置の画面上に表示することを特徴とする請求項7に記載の貨幣処理システム。
【請求項9】
前記外部装置は、前記書面データを画面に表示する端末装置であり、
所定の係員が入力すべき情報があることを前記端末装置の画面に表示して報知すると共に、前記係員が情報を入力した場合には、前記書面データを更新して、前記係員が入力した情報を記入済みの状態にする
ことを特徴とする請求項5に記載の貨幣処理システム。
【請求項10】
貨幣処理システムが実行する貨幣処理方法であって、
入金部に貨幣を受け付ける工程と、
前記貨幣の真偽を識別部で識別する工程と、
鑑定機関毎に、各鑑定機関が鑑定対象とする貨幣の種類と各機関が鑑定時に提出を求める書面に関する情報との対応を示す対応情報に基づいて、前記識別部で識別された貨幣に対応する書面に関する情報を選択する工程と
を含むことを特徴とする貨幣処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鑑定機関への貨幣の鑑定依頼に係る作業を支援する貨幣処理システム及び貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、客が口座へ預け入れる貨幣を貨幣処理装置によって識別計数し、識別計数結果に基づいて客の口座処理を実行する貨幣処理システムが利用されている。貨幣処理中に偽又は偽の疑いがある貨幣が見つかると、この貨幣が、真偽を確定するために所定の鑑定機関へ鑑定に出される場合がある。例えば、特許文献1には、客との取引中に見つかった偽又は偽の疑いがある硬貨を様々な方法で処理することができるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-128887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
店舗で見つかった偽又は偽の疑いがある貨幣を、貨幣の発行元に送付することを求められる国がある。例えば、店舗で見つかった偽又は偽の疑いがある貨幣を該貨幣の発行元に送付して真偽の鑑定を依頼する。貨幣は各国の中央銀行で鑑定されることが多いが、中央銀行を含む複数の機関が貨幣を発行する国もある。鑑定依頼を行う際、貨幣に関する情報を記入した書面の提出を求められるが、書面のフォーマットは鑑定の依頼先によって異なる。依頼作業を行う係員は、送付先ごとに異なる書面を準備しなければならず、準備作業が係員にとっての負担となっていた。
【0005】
本開示は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、貨幣の鑑定依頼を行う係員を支援することができる貨幣処理システム及び貨幣処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る貨幣処理システムは、貨幣を受け付ける入金部と、前記貨幣の真偽を識別する識別部と、鑑定機関毎に、各鑑定機関が鑑定対象とする貨幣の種類と各機関が鑑定時に提出を求める書面に関する情報との対応を示す対応情報が保存された記憶部とを含み、前記対応情報に基づいて、前記識別部で識別された貨幣に対応する書面に関する情報を選択する。書面に関する情報には、鑑定機関が提出を求める書面の書式情報と、鑑定機関がこの書面への記入を求める記入情報との少なくともいずれか一方が含まれる。前記鑑定機関は貨幣の発行銀行であってもよい。この場合、複数の発行銀行それぞれについて、各発行銀行が発行する貨幣と、各発行銀行が貨幣の鑑定時に提出を求める書面に関する情報との対応を示した情報が、前記対応情報となる。前記識別部が、貨幣がいずれの発行銀行が発行した貨幣であるかを識別して、貨幣処理システムが、識別結果に基づいて、前記貨幣の鑑定時に提出する書面を選択すればよい。
【0007】
上記構成において、前記識別部が真の貨幣であると識別した貨幣を収納する第1収納部をさらに備えていてもよい。
【0008】
上記構成において、前記識別部が偽又は偽の可能性があると識別した貨幣を収納する第2収納部をさらに備えていてもよい。前記第1収納部から繰り出した貨幣を出金するための出金部をさらに備え、前記識別部が偽又は偽の可能性があると識別した貨幣が前記出金部に搬送されてもよい。所定の権限を有する者以外は、偽又は偽の可能性がある貨幣を前記出金部から取り出せないように、前記出金部にシャッターが設けられていてもよい。
【0009】
上記構成において、前記対応情報に基づいて、前記第2収納部に収納した貨幣に対応する鑑定機関及び書面を選択すると共に、前記書面に記入すべき情報のうち、前記識別部で得られた情報に基づいて記入可能な情報を、記入済みの状態にした前記書面の書面データを生成して、前記書面データを外部装置に出力してもよい。
【0010】
上記構成において、客の口座に関する情報を管理して、客から受け付けて前記第1収納部に収納した貨幣の金額を前記客の口座に入金する口座処理に関する処理を実行するサーバ装置をさらに備え、前記書面データは、前記書面に記入すべき情報のうち、前記サーバ装置が有する情報に基づいて記入可能な情報を、記入済みの状態で生成されてもよい。
【0011】
上記構成において、前記外部装置は、前記書面データを用紙に印刷して出力するプリンタであってもよい。
【0012】
上記構成において、前記書面に関する情報を表示する端末装置をさらに備え、前記プリンタが出力した用紙に手書きで記入すべき情報があることを前記端末装置の画面に表示して報知してもよい。
【0013】
上記構成において、前記書面データで記入済みの状態にした情報の中に、確認を要する情報が含まれている場合には、確認を指示する情報を前記端末装置の画面上に表示してもよい。
【0014】
上記構成において、前記外部装置は、前記書面データを画面に表示する端末装置であり、所定の係員が入力すべき情報があることを前記端末装置の画面に表示して報知すると共に、前記係員が情報を入力した場合には、前記書面データを更新して、前記係員が入力した情報を記入済みの状態にしてもよい。
【0015】
本開示に係る貨幣処理方法は、貨幣処理システムが実行する貨幣処理方法であって、入金部に貨幣を受け付ける工程と、前記貨幣の真偽を識別部で識別する工程と、鑑定機関毎に各鑑定機関が鑑定対象とする貨幣の種類と各機関が鑑定時に提出を求める書面に関する情報との対応を示す対応情報に基づいて、前記識別部で識別された貨幣に対応する書面に関する情報を選択する工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る貨幣処理システム及び貨幣処理方法によれば、偽又は偽の疑いがある貨幣の鑑定依頼を行う係員を支援することができる。係員は鑑定依頼を容易に行えるようになり、係員の作業負担が軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る貨幣処理システムが行う処理の概要を説明するための模式図である。
図2図2は、貨幣処理装置の構成例を説明するための図である。
図3図3は、貨幣処理装置が実行する入金処理の例を説明するための図である。
図4図4は、貨幣処理装置が実行する入金処理の別の例を説明するための図である。
図5図5は、貨幣処理システムで行われる疑券の処理を説明するための模式図である。
図6図6は、貨幣処理装置がレポートのフォーマットを選択する方法を説明するための図である。
図7図7は、係員がデータを入力してレポートを完成させる方法を説明するための図である。
図8図8は、貨幣処理装置が、出力先の外部装置に応じて識別コードを変更する処理の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る貨幣処理システム及び貨幣処理方法の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る貨幣処理システム1が行う処理の概要を説明するための模式図である。貨幣処理システム1は、店舗に設置された貨幣処理装置100を含む。貨幣処理システム1が、銀行サーバ12を支援する銀行支援サーバ11を含んでいてもよい。
【0019】
貨幣処理装置100は銀行のATM(現金自動預払機)として機能する。店舗の種類は特に限定されず、客に商品を販売する流通店舗であってもよいし、金融機関の店舗であってもよい。客は、貨幣処理装置100に貨幣を入出金させることによって、客の銀行口座への預入取引と、銀行口座からの引出取引とを行うことができる(S1)。銀行支援サーバ11は、客が所持するスマートフォン等の通信端末200を利用して、客の銀行口座と、客が貨幣を入出金する貨幣処理装置100とを特定する。
【0020】
例えば、銀行支援サーバ11は、銀行口座の口座番号、口座名義等を含む口座情報を登録した利用者に、利用者ID及びパスワードを含む認証情報を付与する。銀行支援サーバ11は、客が通信端末200に入力する認証情報に基づいて認証処理を実行して、客の口座情報を特定する。貨幣処理装置100は、銀行支援サーバ11が貨幣処理装置100を特定可能な装置番号(識別情報)を含む図形コードを、操作表示部80に表示する。客が、通信端末200が備えるカメラで図形コードを読み取ると、図形コードから装置番号を取得した銀行支援サーバ11は、客が取引に利用する貨幣処理装置100を特定する。
【0021】
預入取引の場合、貨幣処理装置100が、客が入金した貨幣を識別計数して入金金額を銀行支援サーバ11へ送信する。銀行支援サーバ11は、入金金額及び客の口座情報を銀行サーバ12へ送信する。銀行サーバ12は、客の銀行口座の残高を入金金額に基づいて更新する。こうして、預入取引の口座処理が実行される(S2)。
【0022】
引出取引の場合、客は、通信端末200又は貨幣処理装置100の操作表示部80で出金金額を指定する。銀行支援サーバ11は、客の口座情報に基づいて、客の銀行口座から出金金額分を引出可能であるか否かを銀行サーバ12へ問い合わせる。出金可能であることが確認できると、貨幣処理装置100が、出金金額分の貨幣を出金して、出金完了を銀行支援サーバ11へ通知する。銀行支援サーバ11は、出金金額及び客の口座情報を銀行サーバ12へ送信する。銀行サーバ12は、客の銀行口座の残高を出金金額に基づいて更新する。こうして、引出取引の口座処理が実行される(S2)。
【0023】
貨幣処理システム1は、預入取引時に貨幣処理装置100が偽又は偽の疑いがある貨幣を発見して、店舗の係員がこの貨幣を処理する必要がある場合に、係員が行う作業を支援する。貨幣は紙幣であってもよいし、硬貨であってもよいが、以下、紙幣を例に説明する。偽の紙幣(偽券)と、偽の疑いがある紙幣(疑券)とは同様に処理されるため、以下、偽の疑いがある疑券を例に説明する。
【0024】
図1に示すように、貨幣処理装置100は、預入取引時に客が入金した紙幣を識別して疑券が見つかると、疑券を装置内の所定収納部に収納して装置内に確保すると共に(S3)、疑券の発見を係員に知らせる報知処理を実行する(S4)。貨幣処理装置100は、客が貨幣処理装置100に入金した貨幣の中から疑券が見つかったため、入金金額から疑券の金額分を除いて預入取引が行われることを、操作表示部80に表示して客に報知する。
【0025】
貨幣処理装置100は、紙幣の真偽を鑑定する複数の鑑定機関と、各鑑定機関が鑑定対象とする紙幣の種類と、各鑑定機関が鑑定時に提出を求める書面に関する情報との対応を示す対応情報を記憶している。
【0026】
書面に関する情報には、鑑定機関が提出を求める書面の書式情報と、鑑定機関がこの書面への記入を求める記入情報との少なくともいずれか一方が含まれる。書式情報は、書面を作成するための情報である。書式情報には、例えば、書面のサイズと、書面に印刷する文字、図形、絵柄等の情報と、各情報を印刷する位置とが含まれる。記入情報には、疑券の記番号と、疑券が処理された取引の取引日時と、疑券が処理された店舗、すなわち場所を特定可能な情報と、疑券を処理した貨幣処理装置100を特定可能な情報と、疑券を処理した係員を特定可能な情報との少なくともいずれか1つが含まれる。書面に関する情報は、鑑定機関の求めに応じて適宜決定されるもので、その内容は特に限定されないが、以下、鑑定機関が提出を求める書面の書式情報と、鑑定機関が書面への記入を求める記入情報とを含む場合を例に、単に、フォーマットと記載して説明を続ける。
【0027】
例えば、貨幣処理装置100は、通貨毎に、疑券発見の報告に用いるレポートのフォーマットを管理する。同じ通貨が複数の発行銀行から発行されている場合、貨幣処理装置100は、発行銀行毎に、レポートのフォーマットを管理する。レポートのフォーマットは、各通貨の真偽を鑑定する発行銀行等の各鑑定機関によって定められている。
【0028】
貨幣処理装置100は、発見した疑券に対応するレポートのフォーマットを選択して、入力可能な情報を該情報に対応する位置に入力したレポートデータを生成する(S5)。 すなわち、貨幣処理装置100は、疑券の種類に基づいて、疑券を鑑定する鑑定機関と、概鑑定機関が提出を求める書面とを選択すると共に、選択した書面に記入すべき情報のうち記入可能な情報を記入済みの状態にした書面データを生成する。例えば、取引日時、疑券の金種、客の口座情報、店舗の名称及び住所、貨幣処理装置100の装置番号等の情報が、レポートの所定位置に入力されたレポートデータが生成される。
【0029】
鑑定機関は国や通貨によって異なり、中央銀行、紙幣の発行銀行、紙幣の印刷局等が鑑定機関に含まれ得る。以下、同じ金種の紙幣が、中央銀行と、中央銀行とは異なる複数の発行銀行とによって発行される英国紙幣を例に説明を続ける。なお、以下の説明では、中央銀行と発行銀行の両方を示す際に発行銀行と記載する。
【0030】
疑券発見の報知を受けた係員が、貨幣処理装置100の操作表示部80又は係員が所持する通信端末300で所定の操作を行うと、貨幣処理装置100は、プリンタ90によってレポートデータを用紙に印刷したレポートを出力する(S6)。また、係員が所定操作を行うと、貨幣処理装置100は、装置内に確保していた疑券を装置外へ排出する(S7)。
【0031】
係員は、疑券を貨幣処理装置100に入金した客と一緒に、発行銀行に送付するレポートを作成する(S8)。プリンタ90から出力されたレポートは、疑券の発行銀行が指定するフォーマットで作成されている。また、レポートには、取引日時、疑券の金種等、貨幣処理システム1が取得可能な情報が既に印刷された状態にある。このため、係員は、貨幣処理システム1が取得できなかった情報を記入するだけでよい。例えば、客からの聴き取りが必要な情報が係員によって記入されることになる。
【0032】
レポートを完成させた係員は、レポートの後処理を行う。例えば、係員は、レポートをコピーして一部を客へ渡し、一部を店舗に保管する。また、係員は、疑券とレポートを所定の方法で発行銀行へ郵送する(S9)。貨幣処理装置100が、プリンタ90からレポートを出力する際に、発行銀行の住所等を封筒に印刷して出力する設定とすることもできる。この場合、係員は、発行銀行の名称及び住所が印刷された封筒に、疑券及びレポートを収めて発送すればよい。
【0033】
このように、貨幣処理システム1は、銀行口座への預入取引で客が貨幣処理装置100に入金した紙幣の中から疑券が見つかった場合に、所定フォーマットのレポートを添えて疑券を鑑定に出す係員の作業を支援することができる。貨幣処理システム1は、発見された疑券に対応する発行銀行を選択すると共に、この発行銀行が指定するフォーマットのレポートデータを生成する。貨幣処理システム1は、レポートへの記入が必要な情報のうち、貨幣処理システム1が有する情報を記入した状態でレポートデータを生成する。貨幣処理システム1が印刷出力するレポートは、記入可能な情報が記入済みの状態にあるため、係員は、貨幣処理システム1で記入できなかった残りの情報を記入するだけでよい。これにより、係員の作業負担が軽減されると共に、レポートフォーマット及び記入内容を誤る人的ミスを防止することができる。
【0034】
図2は、貨幣処理装置100の構成例を説明するための図である。図2(a)は、貨幣処理装置100の内部構成を示す断面模式図である。図2(b)は、貨幣処理装置100の機能構成を示すブロック図である。貨幣処理装置100は、入金部10、出金部20、搬送部30、識別部40、一時保留部50、疑券収納部60、収納部70、操作表示部80及びプリンタ90を含む。搬送部30は、入金部10と、出金部20と、識別部40と、一時保留部50と、疑券収納部60と、収納部70との間を接続する搬送路に沿って、紙幣を搬送する。
【0035】
貨幣処理装置100は、入金処理及び出金処理を含む複数種類の貨幣処理を実行することができる。入金部10は、入金処理時に紙幣を受け付けて装置内の搬送路へ1枚ずつ繰り出す。出金部20は、出金処理時に収納部70から繰り出された紙幣を装置外へ排出する。
【0036】
識別部40は、搬送部30が搬送する紙幣の金種及び真偽を識別する。例えば、識別部40は、イメージセンサを含む複数種類のセンサを有する。識別部40は、紙幣の光学特徴、磁気特徴等の特徴情報を各センサで取得して、特徴情報に基づいて紙幣の金種及び真偽を識別する。また、識別部40は、識別時に紙幣を撮像した紙幣画像の取得と、紙幣の記番号の読取処理とを実行する。
【0037】
例えば、真の紙幣の特徴情報が通貨別かつ金種別に予めテンプレートとして準備されている。識別部40は、識別対象の紙幣から得られた特徴情報をテンプレートと比較することによって紙幣を識別する。同じ通貨の紙幣が異なる発行銀行から発行される場合は、発行銀行毎にテンプレートが準備される。これにより、識別部40は、各紙幣について、通貨、金種及び発行銀行に関する情報を識別することができる。
【0038】
発行銀行に関する情報には、紙幣に付されている文字、文字列、絵柄等が含まれる。識別部40が、各紙幣に含まれる、発行銀行を識別可能な文字、文字列、絵柄等を識別することによって、各紙幣の発行銀行が特定される。
【0039】
一時保留部50は、紙幣を一時的に収納する。疑券収納部60は、識別部40が疑券と識別した紙幣を収納する。収納部70は、紙幣の収納と、収納した紙幣の繰り出しとを行う。収納部70の数は特に限定されない。例えば、複数の収納部70に紙幣が金種別に収納される。図2(b)に示した破線より下側が金庫になっていて、大量の紙幣を収納する収納部70が金庫内に収められる場合もある。
【0040】
操作表示部80はタッチパネル式の液晶表示装置を含んで構成される。操作表示部80は、各種情報の入力を受け付ける操作部として機能する。操作表示部80は、各種情報を表示する表示部としても機能する。プリンタ90は、所定の用紙にレポートデータを印刷することによって、レポートを出力する。操作表示部80及びプリンタ90が、貨幣処理装置100から独立して設けられ、有線又は無線で貨幣処理装置100と通信可能に接続されて利用される態様であってもよい。
【0041】
図2(b)に示すように、貨幣処理装置100は、図2(a)に示す構成に加えて、制御部101、通信部102及び記憶部103を有する。通信部102は、外部装置との通信に利用される。外部装置には、銀行支援サーバ11と、客が所持する通信端末200と、店舗の係員が所持する通信端末300とが含まれる。
【0042】
記憶部103は、貨幣処理装置100の動作に必要な各種情報を記憶する不揮発性の記憶装置である。各通貨の発行銀行と、各発行銀行が指定するレポートのフォーマットと、これらの対応を示す情報と、レポートデータの生成及びレポート出力に必要な各種情報とが記憶部103に保存される。疑券収納部60に収納中の疑券の情報が記憶部103に保存される。複数の収納部70それぞれに収納中の紙幣の金種及び金種別枚数を含む在高情報が記憶部103に保存される。
【0043】
制御部101は、貨幣処理装置100の各部を制御する。例えば、制御部101に対応するプログラムが記憶部103又は専用の記憶装置に予め記憶されており、このプログラムがCPU等のハードウェアによって実行されることにより、制御部101の機能及び動作が実現される。制御部101が、操作表示部80を介して入出力される情報と、通信部102を介して送受信される情報と、記憶部103に記憶された情報とに基づいて、各部を制御することにより、本実施形態に記載する貨幣処理装置100の機能及び構成が実現される。
【0044】
客が銀行口座から現金を引き出す引出取引が行われる際に、貨幣処理装置100が出金処理を実行する。出金処理時には、出金対象の各紙幣が収納部70から繰り出されて、搬送部30によって搬送され、出金部20から排出される。排出される前に紙幣が識別部40で識別される態様であってもよい。
【0045】
客が銀行口座へ現金を預け入れる預入取引が行われる際に、貨幣処理装置100が入金処理を実行する。図3は、貨幣処理装置100が実行する入金処理の例を説明するための図である。図3(a)に実線矢印で示すように、客から受け付けた紙幣が入金部10から装置内の搬送路へ1枚ずつ繰り出されて、搬送部30によって搬送される。識別部40は、搬送部30が搬送する各紙幣を識別する。識別結果に基づいて、入金可能な紙幣は一時保留部50へ収納される。一方、疑券と識別された紙幣は、図3(a)に破線矢印で示すように、疑券収納部60へ収納される。
【0046】
貨幣処理装置100は、入金可能な紙幣を一時保留部50に収納した状態で、操作表示部80の画面上に入金金額を表示する。客が、操作表示部80で、入金金額を承認する所定操作を行うと、貨幣処理装置100は、図3(b)に示すように、一時保留部50の全ての紙幣を1枚ずつ搬送路に繰り出して、搬送部30によって搬送し、各紙幣の金種に対応する収納部70に収納する。一時保留部50の紙幣を識別部40で識別してから収納部70へ収納する態様であってもよい。入金処理時に疑券が見つかっていなければ、一時保留部50の紙幣を収納部70へ収納して入金処理が完了する。
【0047】
入金処理時に疑券が見つかって疑券収納部60に収納された場合は、図1で説明したように、疑券の発見が係員に報知される。係員が操作表示部80又は通信端末300で所定操作を行うと、図3(b)に示すように、疑券収納部60から疑券が繰り出されて搬送部30によって搬送され、出金部20から排出される。また、貨幣処理装置100は、疑券の発行銀行に応じたレポートデータを自動生成する。係員が操作表示部80又は通信端末300で所定操作を行うと、一部の情報が記入済みの状態でプリンタ90からレポートが出力される。
【0048】
なお、入金金額を操作表示部80に表示した際に、客が操作表示部80を操作して預入取引をキャンセルすると、貨幣処理装置100は、入金処理を中止して、一時保留部50へ収納していた紙幣を出金部20から排出して客へ返却する。一時保留部50を利用することにより、客が入金部10から入金した紙幣をそのまま返却することができる。疑券は疑券収納部60に収納され、客が預入取引をキャンセルしても客に返却されない。疑券収納部60の疑券は、係員による指示に応じて出金部20から排出される。客が預入取引をキャンセルした場合でも、疑券は、係員による監視下で処理されることになる。係員は、客が預入取引をキャンセルした場合でも、プリンタ90からレポートを出力して、図1で説明したように疑券を処理することができる。
【0049】
図3に示す構成は例示であって、貨幣処理装置100の構成を限定するものではない。本実施形態に記載する貨幣処理装置100の動作を実現できれば、貨幣処理装置100の構成は特に限定されない。また、入金処理の実行方法についても、上述した内容に限定されるものではない。図4は、貨幣処理装置100が実行する入金処理の別の例を説明するための図である。図4に実線矢印で示すように、入金部10から入金された紙幣が、一時保留部50に収納されることなく、識別部40による識別後に収納部70へ収納される態様であってもよい。貨幣処理装置100が一時保留部50を含まない態様であってもよい。紙幣の一時保留を行わない場合も、図4に破線矢印で示すように、疑券を疑券収納部60に収納して保管し、係員の指示に基づいて疑券を出金部20から装置外へ排出して、上述したように処理することができる。
【0050】
図5は、貨幣処理システム1で行われる疑券の処理を説明するための模式図である。貨幣処理装置100は、上述したように入金処理を実行する(S11)。入金処理時に識別部40で疑券を検出すると(S12)、貨幣処理装置100は、これを係員に知らせる報知処理を実行する(S13)。
【0051】
貨幣処理装置100は、識別部40によって疑券から取得した情報を、処理情報として記憶部103に保存する(S14)。処理情報には、疑券の処理日時、通貨、金種、枚数及び記番号が含まれる。処理情報には、紙幣の表面全体を撮像した紙幣画像と裏面全体を撮像した紙幣画像とが含まれる。紙幣情報に、記番号が印刷された部分領域を撮像した記番号画像が含まれていてもよい。
【0052】
貨幣処理装置100は、疑券の種類に応じたレポートのフォーマットを選択する(S15)。疑券を発行した発行銀行が特定されて、この発行銀行が指定するレポートのフォーマットが選択されることになる。
【0053】
図6は、貨幣処理装置100がレポートのフォーマットを選択する方法を説明するための図である。貨幣処理装置100の記憶部103には、図6(a)に示すように、通貨と、発行銀行と、識別コードと、レポートフォーマットとの対応を示す情報が保存されている。また、図6(b)に示すように、レポートフォーマット毎に、レポートデータ及び関連情報が記憶部103に保存されている。
【0054】
図6(a)に使用地域として示したように、英国では、英国中央銀行であるイングランド銀行が発行する紙幣に加えて、スコットランド地方にある3つの銀行が発行する紙幣と、北アイルランド地方の5つの銀行が発行する紙幣とが使用されている。このように、複数の発行銀行が同一通貨、同一金種の紙幣を発行する場合でも、貨幣処理装置100は、識別部40で紙幣を識別して、各紙幣の発行銀行を特定することができる。
【0055】
例えば、貨幣処理装置100は、同じ5ポンドの紙幣であっても、この紙幣が、図6(a)に示す9つの発行銀行のうちいずれの銀行で発行されたものであるかを識別して、識別結果に識別コードを含めることができる。例えば、イングランド銀行が発行した5ポンド紙幣は「5-GBP」、スコットランド銀行が発行した5ポンド紙幣は「5-BOS」というように、識別コードを付して各紙幣の発行銀行が区別される。
【0056】
貨幣処理装置100は、図6(a)に示す識別コードとレポートフォーマットの対応に基づいて、疑券の識別コードに応じたレポートフォーマットでレポートデータを生成する。例えば、貨幣処理装置100は、疑券の識別コードが「GBP」であればレポートフォーマット「A」のレポートデータを生成し、識別コードが「BOS」であればレポートフォーマット「B」のレポートデータを生成し、識別コードが「BOI」であればレポートフォーマット「C」のレポートデータを生成する。
【0057】
貨幣処理装置100は、図6(b)に示すように記憶部103に保存されている複数のレポートデータの中から、疑券のレポートフォーマットに対応するレポートデータを読み出して、入力可能な情報を入力する。
【0058】
図5に示すように、貨幣処理装置100の記憶部103には、入金処理時に得られる処理情報に加えて、固定情報が保存されている。固定情報には、貨幣処理装置100が設置されている店舗の情報と、貨幣処理装置100の情報とが含まれる。店舗の情報には、例えば、店舗を特定するための店舗番号(識別情報)と、店舗の住所と、店舗の電話番号とが含まれる。装置の情報には、例えば、装置の型番と、装置を特定するための製造番号等の装置番号(識別情報)とが含まれる。固定情報に、疑券の処理を担当する係員の氏名、係員を特定するための係員番号(識別情報)等の係員情報が含まれていてもよい。
【0059】
貨幣処理装置100は、通信部102を利用して、疑券を入金した客の口座情報を取得することができる。口座情報には、例えば、客の銀行口座がある銀行名及び支店名と、客の銀行口座の口座番号と、口座名義とが含まれる。銀行名及び支店名に代えて又は加えて、銀行番号及び支店番号が口座情報に含まれる態様であってもよい。
【0060】
レポートデータには、レポートに記入する情報の種類と、該情報を記入するレポート上の位置とを示す情報が含まれている。貨幣処理装置100は、図5に示すように、処理情報、固定情報及び口座情報の中から、レポートデータに入力可能な情報、すなわちレポートに記入可能な情報を選択する(S16)。貨幣処理装置100は、選択した情報を、この情報を記入する位置に入力したレポートデータを生成する(S17)。
【0061】
すなわち、貨幣処理装置100は、レポートに記入すべき各情報が、処理情報、固定情報及び口座情報に含まれているか否かを確認して、含まれていれば、この情報が、対応する位置に記入された状態のレポートデータを生成する。所定情報を所定位置に記入した状態で、プリンタ90によって印刷可能なデータであれば、レポートデータの種類は特に限定されない。例えば、レポートデータが画像データであってもよいし、文書作成ソフトウェアで作成された文書データであってもよいし、XMLやHTML等のマークアップ言語による文書データであってもよい。画像データを利用する場合は、処理情報、固定情報及び口座情報の中から選択した情報を、レポートの画像上で、各情報に対応する位置に合成してレポートデータを生成すればよい。文書データを利用する場合は、処理情報、固定情報及び口座情報の中から選択した情報を、文書データ内の各情報に対応する位置に入力してレポートデータを生成すればよい。
【0062】
こうして、疑券に対応したレポートフォーマットが自動選択されて、レポートに記入する情報のうち貨幣処理システム1が特定可能な情報が自動入力されたレポートデータが生成される。
【0063】
疑券の発見を係員に報知した貨幣処理装置100は、図5に示すように、係員の所持する通信端末300の画面上に、疑券に関する情報を表示して係員に伝達することができる(S18)。例えば、画面上に、貨幣処理装置100の識別部40が撮像した疑券の画像及び記番号画像、疑券の識別結果、疑券の処理日時等が表示される。画面上には、疑券排出ボタンと、レポート印刷ボタンと、終了ボタンとが表示される。係員が終了ボタンを押すと画面上の情報が消えて初期画面に戻る。係員が疑券排出ボタンを押すと、これを認識した貨幣処理装置100が、疑券収納部60から疑券を繰り出して出金部20から排出する(S19)。係員がレポート印刷ボタンを押すと、これを認識した貨幣処理装置100が、生成したレポートデータをプリンタ90で印刷して出力する(S20)。係員は、疑券の現物を確認することができる(S21)。係員は、レポートに記入すべき情報が残っていれば、これを記入してレポートを完成させる(S22)。
【0064】
図6(b)に示すように、貨幣処理装置100の記憶部103には、レポートフォーマット毎に、関連情報が保存されている。関連情報には、疑券を処理する係員に伝達する内容が含まれている。例えば、レポート上に係員が記入する項目があることを示す情報や、客から聴き取って記入する項目があることを示す情報が、関連情報に含まれる。例えば、レポート作成時に係員が注意すべき内容や、係員が客に伝達しなければならない内容が、関連情報に含まれる。
【0065】
貨幣処理装置100は、図6(b)に示す関連情報に基づいて、図5に示すように通信端末300の画面上に係員への伝達事項を表示する。プリンタ90から出力されたレポートに係員が記入すべき項目がある場合に、記入を指示する情報が表示される。係員が注意すべき内容、客に伝えなければならない内容が表示される。これにより、係員は、画面表示に従ってレポート作成及び客への対応を行うことができる。例えば、係員は、客が口座名義人と同一人物であることを確認して、異なる場合は客の氏名をレポートに記入する。例えば、係員は、疑券混入の心当たりがあるかを客から聴き取ってレポートに記入する。
【0066】
貨幣処理装置100は、入力可能な情報を入力済みの状態でレポートを印刷出力するが、情報の確度が所定の閾値以下である場合には、係員に確認を指示する情報を通信端末300の画面上に表示する。例えば、記番号の読み取り時に読み取れない桁があった場合や、記番号の読取結果の正確性を示す数値が所定の閾値以下であった場合に、係員に、レポートに印刷されている記番号が、疑券の記番号と一致することを確認するよう指示する情報が表示される。係員は、レポートに印刷された記番号と疑券現物とが一致することを確認して、必要に応じてレポートを修正することができる。このように、係員が利用する通信端末300の画面上に、作業手順や注意事項等、係員の作業を支援する情報が表示されるため、係員は作業を容易に進めることができる。
【0067】
上述した貨幣処理システム1の構成は機能概略的なものであり、貨幣処理システム1の構成が物理的に該構成に限定されるものではない。各装置の分散・統合の形態は上述した例に限定されず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0068】
例えば、本実施形態では、貨幣処理装置100、すなわち貨幣処理装置100の制御部101が、疑券に対応する発行銀行を選択して、この発行銀行が指定するフォーマットのレポートデータを生成する例を説明したが、発行銀行の選択及びレポートデータの生成が、サーバ装置等の外部装置で行われる態様であってもよい。上述した発行銀行の選択及びレポートデータの生成に必要な情報が外部装置の記憶部に保存され、この外部装置、又はこの外部装置と通信可能なさらに別の外部装置が、発行銀行の選択及びレポートデータの生成を行う態様であってもよい。この場合も、外部装置で生成されたレポートデータを貨幣処理装置100に受信することで、上述した各処理を実行することができる。
【0069】
本実施形態では、識別部40で疑券と識別された紙幣が疑券収納部60に収納された後、出金部20から排出される例を説明したが、識別部40で疑券と識別された紙幣が、装置内に収納されることなく、出金部20から排出される態様であってもよい。これにより、貨幣処理装置100が疑券収納部60を含まない構成である場合でも、上述したように疑券を処理することが可能となる。
【0070】
出金部20に排出された疑券を、所定権限を有する係員のみが取り出せるように、すなわち客が出金部20から疑券を取り出せないように、出金部20にシャッターを設ける態様であってもよい。例えば、電磁ロック等のロック機構によってロック可能なシャッターを出金部20に設け、通常はロック解除状態にしておいて、識別部40で疑券が見つかった場合に貨幣処理装置100がシャッターをロック状態にすればよい。係員が、操作表示部80又は通信端末300で所定操作を行うことによって、貨幣処理装置100がシャッターのロックを解除して、係員が出金部20から疑券を取り出せるようにすればよい。
【0071】
本実施形態では、疑券の発行銀行に応じて、疑券の鑑定機関である発行銀行が提出を求める書面の書式情報と、発行銀行がこの書面への記入を求める記入情報との両方を含むフォーマットが選択される例を説明したが、選択対象がこれに限定されるものではなく、書式情報のみが選択される態様であってもよいし、記入情報のみが選択される態様であってもよい。
【0072】
本実施形態では、疑券を発行元の中央銀行や発行銀行に送付する例を主に説明したが、疑券が、他の機関へ送付される態様であってもよい。例えば、疑券を民間の鑑定機関へ送付する場合や、警察等の捜査機関へ届ける場合も、疑券の送付先である各機関が提出を求める書面のデータを、通貨や識別コード等の紙幣の種類と関連付けることで、上述したように、疑券の送付先に応じた書面を作成することができる。
【0073】
本実施形態では、疑券を例に説明を行ったが、貨幣処理システム1は偽券を疑券と同様に処理するため、上述した疑券の処理は、偽券の処理と読み替えることができる。例えば、偽の紙幣に関する特徴情報が登録されたデータベースが予め準備され、識別部40は、このデータベースに登録された特徴情報を有する紙幣を偽券と識別する場合がある。例えば、各紙幣を一意に特定するための記番号が同じ紙幣が複数枚ある等、明らかに偽の紙幣と分かる場合もある。このように、偽券であることが明らかな場合も、上述した疑券と同じ方法で偽券に関するレポートを作成して発行銀行へ送付する作業が行われる。なお、本実施形態で言う疑券の種類は特に限定されないが、例えば、人を騙すために見た目を真の紙幣に似せて作られた疑券、機械識別を欺くために真の紙幣が有する特徴情報を含むように作られた疑券等が、上述した方法で処理される。
【0074】
本実施形態では、貨幣処理装置100がレポートデータに入力できない項目については、プリンタ90でレポートを印刷出力してから、係員が記入する例を説明したが、係員がデータ入力を行ってから印刷する態様であってもよい。
【0075】
図7は、係員がデータを入力してレポートを完成させる方法を説明するための図である。例えば、貨幣処理装置100が、通信端末300の画面上に、図7に示すようにレポートデータを表示して、係員が、通信端末300を操作して、レポートデータ上に情報を入力してレポートデータを完成させる態様であってもよい。画面上に疑券の表面及び裏面の画像を表示して、疑券を貨幣処理装置100の疑券収納部60に収納したままで、係員がレポート作成を行う態様であってもよい。レポートデータ上で、係員が確認すべき項目や入力すべき項目に、これを示す吹き出し等の所定マークが表示される態様であってもよい。画面上に、係員が注意すべき項目等が表示される態様であってもよい。貨幣処理装置100が、画面上のレポート印刷ボタンをグレーアウトして押せない状態で表示して、係員が必要なデータ全てを入力した後、レポート印刷ボタンを押せるように更新する態様であってもよい。係員は、図7に示す画面で必要な情報を全て入力してレポートデータを完成させた後、レポート印刷ボタンを押してプリンタ90にレポートを印刷させることができる。
【0076】
本実施形態では、図6に示すように、貨幣処理装置100が、発行銀行が異なる紙幣を区別して識別情報に識別コードを付する例を説明したが、貨幣処理装置100が外部装置に出力する識別コードが、図6に示した識別コードと異なる態様であってもよい。
【0077】
図8は、貨幣処理装置100が、出力先の外部装置に応じて識別コードを変更する処理の例を説明するための図である。貨幣処理装置100が紙幣の識別情報を外部装置に出力する際に、外部装置が求める識別コードが、図6に示す識別コードと異なる場合がある。貨幣処理装置100の記憶部103には、図8(a)に示すように、貨幣処理装置100内で利用する識別コード(図中「装置コード」)と、外部装置へ出力する出力コードとの対応を示す情報が保存されている。出力コードには、第1コード、第2コード等の複数種類のコードが含まれている。例えば、外部装置が、図6に示したイングランド銀行が発行した紙幣と、スコットランド地方の3つの銀行が発行した銀行と、北アイルランド地方の5つの銀行が発行した紙幣とを区別するだけでよい場合、貨幣処理装置100は、図8(a)に示す装置コードに代えて、第1コードを付加した識別情報を出力する。同様に、外部装置が、英国紙幣を他国通貨と区別するだけでよい場合、貨幣処理装置100は、装置コードに代えて、第2コード又は第3コードを付加した識別情報を出力する。外部装置が、英国紙幣の識別コードを「GBP」として処理する場合は第2コード、英国紙幣の識別コードを「UKP」として処理する場合は第3コードが付加される。貨幣処理装置100の記憶部103には、図8(b)に示すように、外部装置と出力コードとの対応を示す情報が保存されており、貨幣処理装置100は、この対応情報に基づいて、識別情報に付加する識別コードを外部装置に応じて変更することができる。
【0078】
識別情報に付加する識別コードを変更する場合、貨幣処理装置100は、貨幣処理装置100内で管理する識別情報と、外部装置に出力した識別情報との対応が分かるように、外部装置に出力する識別情報を生成する。例えば、貨幣処理装置100が、識別部40によって図8(c)に示すNo.1~3の3枚の紙幣の識別情報を得たものとする。識別情報には、貨幣処理装置100が使用する識別コードと、金種と、紙幣の発行年を示すシリーズとが含まれている。
【0079】
これらの識別情報を、第1コードを利用する第1装置に出力すると、図8(c)に示すように、第1装置での処理時には、No.2の紙幣とNo.3の紙幣の識別コードが同一になり、発行銀行が異なることが分からなくなってしまう。このため、貨幣処理装置100は、シリーズを示す2桁の数字のうち十の位の数字を、発行銀行毎に異なる数字に変更して第1装置へ出力する。これにより、第1装置で同じ識別コードで処理されるNo.2の紙幣とNo.3の紙幣とが、異なる発行銀行で発行された紙幣であることを確認できるようになる。十の位の数字は、英国の9つの発行銀行それぞれで違う数字にする。例えば、識別コード「GBP」の数字は「1」、識別コード「BOS」の数字は「2」、識別コード「RBS」の数字は「3」というように、各発行銀行の識別コードと数字の対応を決めることで、第1装置から貨幣処理装置100に受信した識別情報の識別コードを、元の識別コードに戻すことも可能となる。
【0080】
同様に、貨幣処理装置100で得られたNo.1~3の識別情報を、第2コードを利用する第2装置に出力すると、図8(c)に示すように、第2装置での処理時には、全ての紙幣の識別コードが同一になり、発行銀行が異なることが分からなくなってしまう。このため、貨幣処理装置100は、各紙幣のデータに付加情報を追加して第2装置へ出力する。これにより、第2装置で同じ識別コードで処理される3枚の紙幣が、異なる発行銀行で発行された紙幣であることを確認できるようになる。付加情報は、英国の9つの発行銀行それぞれで違う値にする。例えば、識別コード「GBP」の数字は「00」、識別コード「BOS」の数字は「01」、識別コード「RBS」の数字は「02」というように、各発行銀行の識別コードと付加情報の対応を決めることで、第1装置から貨幣処理装置100に受信した識別情報の識別コードを、元の識別コードに戻すことも可能となる。
【0081】
例えば、貨幣処理装置100が、金融流通分野で策定されたXFS等の規格に従って、外部装置へ識別情報を出力する課程で、図8で説明したように、識別コードの変換、シリーズを示すデータの変更、付加情報の追加等の処理を行えばよい。
【0082】
上述したように、本実施形態に係る貨幣処理システムでは、貨幣の真偽を鑑定する鑑定機関と、各鑑定機関が鑑定対象とする貨幣の種類と、各鑑定機関が鑑定時に提出を求める書面の情報との対応を示す対応情報を管理することができる。これにより、貨幣処理システムは、貨幣の鑑定依頼が必要になった際に、鑑定対象の貨幣の種類に対応する鑑定機関と、該鑑定機関が提出を求める書面とを特定することができる。貨幣処理システムは、特定した書面に記入すべき情報のうち、貨幣処理時に得られた情報に基づいて記入可能な情報を、記入済みの状態にした書面の書面データを生成し、該書面データを外部装置に出力することができる。例えば、書面に記入すべき内容のうち、貨幣処理システムが記入できる情報が既に記入された状態で書面が印刷出力される。このため、書面を完成させる係員の作業負担が大幅に軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本開示に係る貨幣処理システム及び貨幣処理方法は、貨幣の鑑定が必要になった際に、鑑定依頼の作業を行う係員の作業負担を軽減するために有用である。
【符号の説明】
【0084】
1 貨幣処理システム
10 入金部
11 銀行支援サーバ
12 銀行サーバ
20 出金部
30 搬送部
40 識別部
50 一時保留部
60 疑券収納部
70 収納部
80 操作表示部
90 プリンタ
100 貨幣処理装置
200、300 通信端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8