(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143072
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】薬液合成装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/24 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055558
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南里 一樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 清人
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075BA10
4G075CA63
4G075DA02
4G075EB01
4G075EC06
4G075ED15
(57)【要約】
【課題】洗浄液の消費量を抑えることができる薬液合成装置を提供することを目的としている。
【解決手段】薬液が収容された収容容器と、前記薬液と担体とを反応させる反応容器と、を備え、前記収容容器から前記反応容器に配管を通じて前記薬液が外気に触れることなく送液される薬液合成装置であって、前記収容容器と前記反応容器との間には、前記薬液を一時的に溜めるバッファ部が設けられ、前記バッファ部は、前記薬液が送液される前記配管の余長で形成されている構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容された収容容器と、
前記薬液と担体とを反応させる反応容器と、を備え、
前記収容容器から前記反応容器に配管を通じて前記薬液が外気に触れることなく送液される薬液合成装置であって、
前記収容容器と前記反応容器との間には、前記薬液を一時的に溜めるバッファ部が設けられ、
前記バッファ部は、前記薬液が送液される前記配管の余長で形成されていることを特徴とする薬液合成装置。
【請求項2】
前記バッファ部は、コイル状の形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の薬液合成装置。
【請求項3】
前記バッファ部は、前記バッファ部の端部が上下に位置するように配置され、前記バッファ部内に溜められた前記薬液が前記バッファ部の下端部から排出されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薬液合成装置。
【請求項4】
前記バッファ部は、前記収容容器から前記配管を通じて送液される薬液が前記バッファ部の下端部から導入されることを特徴とする請求項3に記載の薬液合成装置。
【請求項5】
前記バッファ部は、前記収容容器から前記配管を通じて送液される洗浄液が前記バッファ部の上端部から導入されることを特徴とする請求項3に記載の薬液合成装置。
【請求項6】
前記バッファ部の上端部と下端部との位置関係が入れ替わるように前記バッファ部を変位させる変位機構を備えることを特徴とする請求項3に記載の薬液合成装置。
【請求項7】
前記バッファ部を鉛直方向に振動させる振動機構を備えることを特徴とする請求項3に記載の薬液合成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気に触れることなく送液される薬液を合成させる薬液合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、ペプチド、ポリマー、核酸等を化学合成する薬液合成装置では、複数の薬液(試薬)を反応容器に供給し化学合成が行われる。たとえば、核酸を合成する場合には、反応容器内に担体(多孔質のビーズ)を多数設け、この反応容器に薬液を順次供給しながら、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行って担体についた塩基を次々に伸長させる。
【0003】
この薬液合成装置の一例として、下記特許文献1には、特定の薬液を溜める収容容器と、収容容器から供給された薬液を計量する計量機構と、計量後の薬液を一時的に溜める受け入れタンク(以下、バッファ部と呼ぶ)と、供給された薬液を化学合成させる反応容器と、を備えたものが開示されている。この薬液合成装置において、バッファ部は、計量機構と反応容器の間に設けられ、配管により計量機構と反応容器のそれぞれに接続されている。そして、計量後の薬液が配管を通じてバッファ部に送液され、バッファ部で溜められた薬液が、配管を通じて反応容器に順次供給される。これにより、反応容器内で物質が生成される。
【0004】
このような薬液合成装置に用いられるバッファ部では、バッファ部に溜める薬液の種類を変更するとき、あるいは、反応容器における合成処理後等の所定のタイミングでバッファ部の内壁の洗浄作業が行われる。この洗浄作業では、バッファ部に洗浄液を供給して一定時間洗浄液を溜めさせた後に、バッファ部から排出させることによって、バッファ部の内壁を洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記薬液合成装置では、洗浄液の消費量が多くなってしまうという問題があった。すなわち、上記薬液合成装置では、液はね等でバッファ部の薬液を溜めていなかった部分の内壁にも薬液が付着する場合がある。そこで、洗浄後のバッファ部に薬液が残ることを防ぐため、バッファ部に溜める薬液の量に関わらず、バッファ部が満量になるまで洗浄液を満たしている。そのため、上記薬液合成装置では、バッファ部に溜める薬液の量に対して洗浄液の消費量が多くなってしまっていた。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、洗浄液の消費量を抑えることができる薬液合成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の薬液合成装置は、薬液が収容された収容容器と、前記薬液と担体とを反応させる反応容器と、を備え、前記収容容器から前記反応容器に配管を通じて前記薬液が外気に触れることなく送液される薬液合成装置であって、前記収容容器と前記反応容器との間には、前記薬液を一時的に溜めるバッファ部が設けられ、前記バッファ部は、前記薬液が送液される前記配管の余長で形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記薬液合成装置によれば、薬液を一時的に溜めるためのバッファ部が、収容容器から反応容器に薬液を送液するための配管の余長で形成されているため、バッファ部を洗浄するときに薬液と同じように配管に洗浄液を送液させることによって、洗浄液が配管の内壁に接した状態で配管の余長部分全体を流れるため、バッファ部の内壁に付着した薬液を洗い流すことができる。そのため、従来のようにバッファ部が満量になるまで洗浄液を満たす必要がなく、バッファ部の内壁全体を洗浄することが可能になる。すなわち、バッファ部の容量に対して少量の洗浄液でバッファ部を洗浄することができるため、バッファ部の洗浄に要する洗浄液の消費量を抑えることができる。
【0010】
また、前記バッファ部は、コイル状の形状を有している構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、バッファ部がコイル状の形状を有しているため、バッファ部をコンパクトにすることができる。これにより、装置をコンパクト化しやすくなる。
【0012】
また、前記バッファ部は、前記バッファ部の端部が上下に位置するように配置され、前記バッファ部内に溜められた前記薬液が前記バッファ部の下端部から排出される構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、バッファ部に溜められた薬液がバッファ部の下端部から排出されるため、重力に逆らうことのない薬液の排出が可能になる。
【0014】
また、前記バッファ部は、前記収容容器から前記配管を通じて送液される薬液が前記バッファ部の下端部から導入される構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、薬液がバッファ部の下端部から導入されるため、薬液よりも比重の小さいエアが導入中の薬液に混入しにくくなる。そのため、薬液に混入したエアによりバッファ部の容量が消費されることを防ぐことが可能になるため、バッファ部の満量に薬液を溜めることが可能になる。これにより、薬液にエアが混入する場合と比べてバッファ部の容量を効率よく使用することができる。
【0016】
また、前記バッファ部は、前記収容容器から前記配管を通じて送液される洗浄液が前記バッファ部の上端部から導入される構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、洗浄液がバッファ部の上端部からバッファ部に導入されてバッファ部の下端部から排出されるため、バッファ部の全体に洗浄液を流すことが可能になる。これにより、バッファ部の満量に洗浄液を溜めることなく、バッファ部の内壁に付着する薬液を確実に洗い流すことができる。
【0018】
また、前記バッファ部の上端部と下端部との位置関係が入れ替わるように前記バッファ部を変位させる変位機構を備える構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、変位機構を備えているため、バッファ部内に薬液が残ることを防ぐことができる。すなわち、変位機構によりバッファ部の上端部と下端部との位置関係が入れ替わるようにバッファ部を変位させることが可能になるため、変位前のバッファ部の端部の位置に関わらず、バッファ部に溜められた薬液を確実にバッファ部の下端部から排出させることができるようになる。これにより、重力に逆らうことのない薬液の排出を常に行うことが可能になる。
【0020】
また、前記バッファ部を鉛直方向に振動させる振動機構を備える構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、振動機構を備えているため、バッファ部に薬液が残ることを防ぐことができる。すなわち、振動機構によりバッファ部を鉛直方向に振動させることによって、バッファ部の内壁に付着する薬液をバッファ部の下端部に向かって落下させてバッファ部から排出させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の薬液合成装置によれば、洗浄液の消費量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態における薬液合成装置を概略的に示す図であり、バッファ部に薬液を排出するときの状態を示している。
【
図2】本発明の第一実施形態における薬液合成装置を概略的に示す図であり、バッファ部から薬液を導入するときの状態を示している。
【
図3】本発明の第二実施形態における薬液合成装置を概略的に示す図である。
【0024】
〔第一実施形態〕
本発明の薬液合成装置に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0025】
図1および
図2は、本発明の第一実施形態における薬液合成装置100を概略的に説明するための図であり、
図1はバッファ部3から薬液を排出させるときの状態を示し、
図2はバッファ部3に薬液を導入させるときの状態を示している。なお、本実施形態では、流体として薬液(試薬)が用いられる例を説明するが、本発明は薬液に限定されるものではなく、薬液以外の液体を化学合成、混合等を行う場合にも適用することができる。
【0026】
薬液合成装置100は、
図1に示すように、薬液が収容された収容容器1と、薬液を計量する計量部2と、図示しない担体(多孔質のビーズ)を収容した反応容器4と、この反応容器4から排出された薬液を貯留する図示しない排液タンクと、を備えており、収容容器1、反応容器4、および排液タンクは配管5で連結されている。また、収容容器1と反応容器4の間には、薬液を一時的に溜めるバッファ部3が設けられている。そして、収容容器1から反応に必要な所定の薬液を計量部2で計量しながら、バッファ部3に供給して溜めさせ、反応容器4に順次供給することにより、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行うことで担体についた塩基を次々に伸長させる。これにより、タンパク質、ペプチド、核酸等の合成物を生成する。そして、反応完了後の薬液は、排液タンクに送液されることにより排出される。
【0027】
収容容器1は、化学合成で用いる薬液を収容するためのものである。この収容容器1は、複数設けられており、
図1の例では、2つの収容容器1のみを図示しているが、実際には多数の収容容器1が設けられている。そして、それぞれの収容容器1には、配管51によりバッファ部3と連結されており、収容容器1に収容された薬液が配管51を通じてバッファ部3に送液されるようになっている。ここで、配管51は、中空の管状部材(チューブ)によって形成されており、以下の説明で登場する配管52、53・・・も同じ構成を有している。なお、配管51、52、・・は、特に区別する必要がない場合は、単に配管5と呼ぶ。また、配管5は、薬液による腐食を防止するためにフッ素系樹脂によって形成されるとよい。
【0028】
また、収容容器1には、図示しない加圧手段(ガスタンク)が配管61により接続されている。この加圧手段により配管61を通じて収容容器1にガスが供給されると、収容容器1が加圧され配管51を通じて薬液がバッファ部3に送液される。そして、配管51および配管61にはバルブ71が設けられており、バルブ71の開閉状態を切り替えることにより、複数の収容容器1から選択された薬液のみをバッファ部3に送液できるようになっている。なお、加圧手段により収容容器1に供給されるガスは、収容容器1に収容された薬液と反応しないガス(たとえば、アルゴンガス等の不活性ガス)である。
【0029】
また、収容容器1の1つには、洗浄液が収容されている。この洗浄液は、バッファ部3を洗浄するために使用され、前述した薬液の送液と同様の構成で送液されるようになっている。
【0030】
計量部2は、薬液を計量するためのものである。この計量部2は、汎用の秤であり、この計量部2上に収容容器1が載せられている。すなわち、計量部2は、収容容器1の重さを計量し、収容容器1からバッファ部3に送液される薬液を計量できるようになっている。そして、計量部2により1度の合成反応に必要な薬液量が計量されると、選択された収容容器1とバッファ部3とを接続する配管51のバルブ71を閉状態に切り替え、収容容器1からバッファ部3への薬液の送液が停止されるようになっている。
【0031】
また、収容容器1の下流側には、バッファ部3が設けられている。バッファ部3は、収容容器1と反応容器4との間で薬液を一時的に溜めるためのものである。このバッファ部3には、配管51が接続される第1ポート31と、配管52が接続される第2ポート32が設けられており、第1ポート31と配管51は接続部91を介して接続され、第2ポート32と配管52は接続部92を介して接続されている。また、配管52は、三方弁81により下流側の配管53、配管64が接続されている。そして、バッファ部3は、収容容器1から配管51を通じて薬液が導入され、配管52を通じて薬液が反応容器4に送液されるようになっている。
【0032】
具体的には、選択された収容容器1とバッファ部3とを接続する配管51のバルブ71を開状態に切り替え、選択された収容容器1が加圧手段により加圧されることにより、その薬液が配管51を通じて第1ポート31からバッファ部3に導入される。このとき、第2のポート32に接続された配管52と配管53を接続する三方弁81によって、配管52と配管53を開通させることにより、バッファ部3からガスが排出されるようになっている。そして、収容容器1から送液された1度の合成反応に必要な薬液が計量部2により計量されると、バルブ71を閉状態に切り替えるとともに三方弁81により配管52と配管53を遮断させることにより、バッファ部3に合成反応に必要な薬液が溜められる。なお、バッファ部3から排出されたガスは、配管52と配管53を通じて排液タンクに排出されるようになっている。
【0033】
また、バッファ部3からの送液は、加圧手段により行われる。本実施形態では、第1ポート31に接続される配管51には、連結部93により配管62が接続され、配管62には加圧手段が接続されている。そして、加圧手段により配管62と配管51を通じてガスがバッファ部3に供給されることにより、バッファ部3が加圧され配管52を通じて薬液が反応容器4に送液される。また、配管62には、バルブ72が設けられており、バルブ72の開閉状態を切り替えることにより、バッファ部3から反応容器4への薬液の送液と送液の停止が行われる。
【0034】
反応容器4は、供給された薬液を化学反応させる反応場を提供するためのものである。この反応容器4は、一方向に延びる円筒管が使用されており、反応容器4内には図示しない多数の担体が収容されている。そして、反応容器4に薬液が供給されると、その内部において薬液と担体が化学合成され、担体についた塩基が伸長される。これにより、反応容器4内に合成物が生成され、生成された合成物を取り出すことができるようになっている。
【0035】
また、反応容器4には、下端部に配管54が接続されており、配管54には三方弁82により配管53が接続され、配管53には三方弁81により配管52が接続されている。すなわち、バッファ部3から送液された薬液が配管52、配管53、および配管54を通じて反応容器4に供給されるようになっている。また、反応容器4には、上端部にガスを排出するための配管63が接続され、配管63に設けられたバルブ73の開状態に切り替えることにより、反応容器4からガスが排出されるようになっている。
【0036】
また、反応容器4には、上端部に配管64により上述の加圧手段が接続されており、この加圧手段により反応容器4が加圧されて薬液が排出されるようになっている。本実施形態では、配管64には三方弁81により配管52が接続されており、加圧手段から配管62、配管51、バッファ部3、配管52、および配管64を通じてガスが反応容器4に供給される。そして、反応容器4にガスが供給されることにより、反応容器4が加圧され薬液が配管54に排出される。
【0037】
また、反応容器4の下流側には、反応容器4で反応完了後に排出された薬液を貯留する図示しない排液タンクが設けられている。この排液タンクは、反応容器4に比べて容量が大きく形成されており、反応容器4から薬液が複数回排出された場合でも貯留できるようになっている。また、反応容器4と排液タンクは、三方弁82により接続された配管54と配管55により接続されており、反応容器4から排出された薬液が配管54と配管55を通じて排液タンクに送液されるようになっている。なお、反応容器4に薬液を供給する場合は三方弁82により配管53と配管54を開通させて配管55を遮断し、反応容器4から排液タンクに薬液を排出する場合は三方弁82により配管54と配管55を開通させて配管53を遮断する。
【0038】
また、薬液合成装置100では、バッファ部3に溜める薬液の種類を変更するとき、あるいは、反応容器4における合成処理後等の所定のタイミングで、先にバッファ部3で溜められて反応容器4に送液された薬液と、後にバッファ部3で溜める薬液とが混合しないようにバッファ部3の洗浄が行われる。このバッファ部3の洗浄は上述の洗浄液を収容容器1からバッファ部3に送液することによって行われる。
【0039】
本実施形態では、バッファ部3は、収容容器1から反応容器4に薬液を送液するための配管5の余長で形成されている。すなわち、バッファ部3は配管5の余長部分になっており、配管5と同様に中空の管状部材(チューブ)により構成されている。そして、薬液と同じように収容容器1から配管5に洗浄液を送液させることにより、洗浄液が配管5の内壁に接した状態で配管5の余長部分に流れるため、バッファ部3の内壁に付着した薬液を洗い流すことができる。すなわち、従来のタンクのようにバッファ部3が満量になるまで洗浄液を満たすことなく、バッファ部3の内壁全体を洗浄することが可能になるため、バッファ部3の容量に対して少量の洗浄液でバッファ部3を洗浄することができる。なお、バッファ部3と配管5は、中空の管状部材であればよく、それぞれが別の部材により構成されていてもよい。
【0040】
また、バッファ部3は、コイル状の形状を有している。そのため、バッファ部3が直線形状を有していた場合において配管5の余長部分の長さが同じであっても、バッファ部3の見目の長さを短くすることができるため、バッファ部3をコンパクトにすることができる。これにより、装置をコンパクト化しやすくなる。
【0041】
また、バッファ部3は、バッファ部3の端部が上下に位置するように配置され、薬液がバッファ部3の下端部から排出されるようになっている。ここでいうバッファ部3の端部とは、上述の第1ポート31と上述の第2ポート32のことであり、
図1に示すように、第1ポート31が上、第2ポート32が下に位置するように、図示しないアームによりバッファ部3を支持させている。具体的には、鉛直方向に離れた2か所にアームを設け、上側に設けられたアーム側に第1ポート31が位置するようにバッファ部3を把持させ、下側に設けられたアーム側に第2ポート32が位置するようにバッファ部3を把持させている。
【0042】
そして、加圧手段により配管62と配管51を通じてガスが第1ポート31からバッファ部3に供給され、バッファ部3が加圧されることにより、バッファ部3に溜められた薬液が第2ポート32から排出され配管52を通じて反応容器4に送液される。すなわち、バッファ部3に溜められた薬液が重力方向の下側に向かって排出される。これにより、重力に逆らうことのない薬液の排出が可能になるため、バッファ部3に薬液が残りにくくなり、薬液を無駄なく反応容器4に送液することができるようになる。
【0043】
また、薬液がバッファ部3の下端部から導入されるようになっている。ここで、本実施形態における薬液合成装置100は、バッファ部3の上端部と下端部との位置関係が入れ替わるようにバッファ部3を変位させる図示しない変位機構を備えており、変位機構によってバッファ部3を変位させることにより、
図2のように第1ポート31が下端部にできるようになっている。
【0044】
具体的に説明する。変位機構は、上述のアームと、アームが取り付けられる図示しないホルダーと、ホルダーを回転させる図示しないエア駆動式のアクチュエータを有しており、アクチュエータによりホルダーを回転させることによりバッファ部3を変位させるようになっている。具体的には、アクチュエータの回転軸がホルダーに接続され、アクチュエータを動作させることによりホルダーが回転軸を中心に回転するようになっている。これにより、アームに支持されたバッファ部3をホルダーとともに回転させることができる。本実施形態では、変位機構によってバッファ部3を約180°回転させることにより、
図1に示す第1ポート31が上、第2ポート32が下に位置する状態と、
図2に示す第1ポート31が下、第2ポート32が上に位置する状態になるように、第1ポート31および第2ポート32の位置関係を入れ替えるようになっている。
【0045】
上記構成の変位機構によって第1ポート31をバッファ部3の下端部にすることにより、薬液がバッファ部3の下端部から導入されるようになっている。すなわち、バッファ部3に薬液を導入するときは、変位機構によって、第1ポート31が下、第2ポート32が上に位置するようにバッファ部3を変位させ、第1ポート31から薬液を導入させている。そのため、導入された薬液は、バッファ部3の下端部から上端部に向かって薬液が流れるようになっている。このように、バッファ部3の下端部から薬液を導入すると、薬液よりも比重が小さいエア(ガス)が導入中の薬液に混入しにくくなる。そのため、薬液に混入したエアによりバッファ部3の容量が消費されることを防ぐことが可能になるため、バッファ部3の満量に薬液を溜めることが可能になる。これにより、薬液にエアが混入する場合と比べてバッファ部3の容量を効率よく使用することができる
【0046】
また、洗浄液がバッファ部3の上端部から導入され、下端部から排出されるようになっている。すなわち、変位機構によって、第1ポート31が上、第2ポート32が下に位置するようにバッファ部3を変位させることにより、洗浄液がバッファ部3の上端部からバッファ部3に導入されバッファ部3の下端部から排出されるようになっている。そのため、バッファ部3の全体に洗浄液を流すことが可能になる。これにより、バッファ部3の満量に洗浄液を溜めることなく、バッファ部3の内壁に付着する薬液を確実に洗い流すことができる。
【0047】
また、本実施形態では、バッファ部3の第2ポート32から排出された洗浄液は、配管52、配管64を通じて反応容器4に送液される。すなわち、三方弁81により配管52と配管64を開通させ配管53を遮断させることにより、バッファ部3の洗浄に使用した後の洗浄液が反応容器4に送液されるようになっている。これにより、バッファ部3の洗浄に使用した洗浄液を反応容器4の洗浄にも使用することができる。
【0048】
また、第1ポート31と接続される配管51、および第2ポート32と接続される配管52には、可撓性のチューブが用いられており、バッファ部3が回転しても第1ポート31と第2ポート32から外れることなくバッファ部3の動きに柔軟に追従するように変形できるようになっている。これにより、変位機構によりバッファ部3が回転して変位させた場合でも、配管51と配管52が、その変形に追従し、収容容器1や反応容器4等の他の構成要素に影響を与えることなくバッファ部3を変位させることができるようになっている。
【0049】
また、薬液合成装置100は、バッファ部3を鉛直方向に振動させる図示しない振動機構を備えている。振動機構は、上述のアームと、アームを鉛直方向に変位させる図示しないアクチュエータを有し、アクチュエータによりアームを鉛直方向に繰り返し変位させることにより、アームに支持されたバッファ部3を上下に振動させることができるようになっている。このように振動機構によってバッファ部3を振動させることにより、バッファ部3の内壁に付着する薬液をバッファ部の下端部に向かって落下させてバッファ部3から排出させることが可能になる。これにより、バッファ部3に薬液が残りにくくなり、薬液を無駄なく反応容器4に送液することができるようになる。また、バッファ部3に2種類以上の薬液が溜められた場合において、振動機構によりバッファ部3を振動させると、バッファ部3で薬液を撹拌することができる。また、バッファ部3を洗浄する場合において、バッファ部3に洗浄液が溜められた状態で振動機構によりバッファ部3を振動させると、バッファ部3の内壁に付着した薬液を洗い落しやすくなる。
【0050】
このように、上記実施形態における薬液合成装置100によれば、薬液を一時的に溜めるためのバッファ部3が、収容容器1から反応容器4に薬液を送液するための配管5の余長で形成されているため、バッファ部3を洗浄するときに薬液と同じように配管5に洗浄液を送液させることによって、洗浄液が配管5の内壁に接した状態で配管5の余長部分全体を流れるため、バッファ部3の内壁に付着した薬液を洗い流すことができる。そのため、従来のようにバッファ部3が満量になるまで洗浄液を満たす必要がなく、バッファ部3の内壁全体を洗浄することが可能になる。すなわち、バッファ部3の容量に対して少量の洗浄液でバッファ部3内を洗浄することができるため、バッファ部3の洗浄に要する洗浄液の消費量を抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態では、薬液合成装置100が変位機構を備えているため、バッファ部3に薬液が残ることを防ぐことができる。すなわち、変位機構によりバッファ部3の上端部と下端部との位置関係が入れ替わるようにバッファ部3を変位させることが可能になるため、バッファ部3を変位させる前の第1ポート31と第2ポート32の位置に関わらず、確実にバッファ部3の下端部から薬液を排出させることが可能になる。これにより、重力に逆らうことのない薬液の排出を常に行うことができる。
【0052】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態における薬液合成装置100について
図3を用いて説明する。本実施形態における薬液合成装置100は、第1ポート31と第2ポート32の位置が固定され、配管5と配管6の接続と各バルブの動作により、バッファ部3に薬液を導入する位置と洗浄液を導入する位置を変えている点で第一実施形態と異なっている。なお、以下の説明では、第一実施形態と同様の点について具体的説明は省略し、相反する部分を中心に説明する。
【0053】
図3は、本実施形態における薬液合成装置100を示す図である。
【0054】
本実施形態では、第1ポート31が下、第2ポート32が上に位置するようにバッファ部3がアームに支持されて固定されている。すなわち、本実施形態におけるバッファ部3は、第1ポート31が下端部になり、第2のポート32が上端部になっている。そして、第1ポート31には、連結部92により配管51と配管52が接続されている。すなわち、バッファ部3の下端部から薬液の導入と排出が行われるようになっている。
【0055】
具体的に説明する。バルブ71を開状態に切り替えることにより、収容容器1から配管51を通じて送液された薬液が第1ポート31からバッファ部3に導入される。また、第2ポート32には、三方弁83によりバッファ部3からガスを排出するための配管65が接続されており、三方弁83により第2ポート32と配管65を開通させることにより、配管65を通じてバッファ部3からガスが排出されるようになっている。
【0056】
また、第2ポート32には、三方弁83により配管56が接続され、配管56には三方弁84により配管62が接続されている。そして、配管62により接続された加圧手段によりバッファ部3が加圧されて薬液が排出されるようになっている。すなわち、三方弁83により第2ポート32と配管56を開通させて配管65を遮断し、三方弁84により配管56と配管62を開通させることにより、加圧手段から配管62と配管56を通じて第2ポート32からバッファ部3にガスが供給されると、バッファ部3が加圧され第1ポート31から薬液が排出されて配管52を通じて薬液が反応容器4に送液される。
【0057】
ここで、本実施形態では、バッファ部3がアームによって固定されているため、第1ポート31と第2ポート32の位置関係が変化しないようになっている。すなわち、薬液の導入と排出がバッファ部3の下端部から必ず行われるようになっている。そのため、バッファ部3の容量以下の量の薬液をバッファ部3に導入する場合に、バッファ部3に薬液が流れない部分を生じさせることが可能になる。これにより、バッファ部3の内壁において薬液が付着する部分を少なくすることができるため、洗浄後のバッファ部3に薬液が残るリスクを低減することができる。
【0058】
また、配管56には三方弁84により配管57が接続され、配管57には洗浄液が収容された図示しない収容容器が接続されている。すなわち、三方弁83により第2ポート32と配管56を開通させて配管64を遮断させ、三方弁84により配管56と配管57を開通させて配管62を遮断させることにより、収容容器から送液された洗浄液が配管57と配管56を通じて第2ポート32からバッファ部3に導入されるようになっている。そして、第2ポート32から導入された洗浄液は、バッファ部3を流れて第1ポート31から排出される。
【0059】
以上の構成により、本実施形態における薬液合成装置100は、第1ポート31と第2ポート32の位置が固定された状態であっても、配管5と配管6の接続と各バルブの動作により、バッファ部3の下端部から薬液の導入と排出を行うことができ、バッファ部3の上端部から洗浄液の導入を行い、バッファ部3の下端部から洗浄液の排出を行うことができるようになっている。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、バッファ部3がコイル状の形状を有している例について説明したが、別の形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0061】
100 薬液合成装置
1 収容容器
2 計量部
3 バッファ部
31 第1ポート
32 第2ポート
4 反応容器
5 配管
51 配管
52 配管
53 配管
54 配管
55 配管
56 配管
57 配管
6 配管
61 配管
62 配管
63 配管
64 配管
65 配管
71 バルブ
81 三方弁
82 三方弁
83 三方弁
84 三方弁
91 連結部
92 連結部
93 連結部
94 連結部