IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コイル部品 図1
  • 特開-コイル部品 図2
  • 特開-コイル部品 図3
  • 特開-コイル部品 図4
  • 特開-コイル部品 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143076
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20241003BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055566
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 高弘
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
(72)【発明者】
【氏名】梅田 秀信
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 聖樹
(72)【発明者】
【氏名】石間 雄也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光祐
(72)【発明者】
【氏名】安田 渓斗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聖斗
(72)【発明者】
【氏名】宮下 拓也
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB03
5E070BA12
5E070CB08
5E070CB13
(57)【要約】
【課題】接続導体において応力を緩和できると共に直流抵抗の増大を抑制できるコイル部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品1は、素体2と、素体2内に配置されているコイル8と、素体2に配置されている端子電極4,5と、コイル8と端子電極4,5とを接続している第一接続導体18及び第二接続導体19と、を備え、コイル8には、複数の第一ポアP1が設けられており、第一接続導体18及び第二接続導体19には、複数の第二ポアP2が設けられており、第一接続導体18及び第二接続導体19における単位面積当たりの第二ポアP2の面積は、コイル8における単位面積当たりの第一ポアP1の面積よりも大きい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に配置されているコイルと、
前記素体に配置されている端子電極と、
前記コイルと前記端子電極とを接続している接続導体と、を備え、
前記コイルには、複数の第一空孔が設けられており、
前記接続導体には、複数の第二空孔が設けられており、
前記接続導体における単位面積当たりの前記第二空孔の面積は、前記コイルにおける単位面積当たりの前記第一空孔の面積よりも大きい、コイル部品。
【請求項2】
前記接続導体における単位面積当たりの前記第二空孔の平均大きさは、前記コイルにおける単位面積当たりの前記第一空孔の平均大きさよりも大きい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第二空孔の少なくとも一部には、樹脂が配置されている、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記接続導体において、前記第二空孔は、前記接続導体の表面よりも内側の中央領域に配置されている、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品として、たとえば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のコイル部品は、磁性材料で構成された直方体形状の磁性体部と、磁性体部の内部に配置されているコイルと、磁性体部に設けられ、コイルと電気的に接続される一対の端子電極と、コイルと端子電極とを接続している接続導体と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-76700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、接続導体において応力を緩和できると共に直流抵抗の増大を抑制できるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一側面に係るコイル部品は、素体と、素体内に配置されているコイルと、素体に配置されている端子電極と、コイルと端子電極とを接続している接続導体と、を備え、コイルには、複数の第一空孔が設けられており、接続導体には、複数の第二空孔が設けられており、接続導体における単位面積当たりの第二空孔の面積は、コイルにおける単位面積当たりの第一空孔の面積よりも大きい。
【0006】
コイル部品では、端子電極に外力(実装時などの外力)が加わると、端子電極に接続されている接続導体に応力が加わり得る。接続導体に応力が加わると、接続導体に不具合(たとえば破損などの欠陥)が生じるおそれがある。本発明の一側面に係るコイル部品では、接続導体における第二空孔の単位面積当たり面積は、コイルにおける第一空孔の単位面積当たりの面積よりも大きい。このように、接続導体は、コイルよりも空孔を多く含んでいるため、コイルよりも剛性(強度)が低く、コイルに比べて柔軟性を有している。したがって、コイル部品では、接続導体において応力を緩和(吸収)することができる。また、コイル部品では、コイルにおける第一空孔の単位面積当たりの面積は、接続導体における第二空孔の単位面積当たり面積よりも小さい。このように、コイル部品では、コイルの第一空孔を接続導体の第二空孔よりも少なくしているため、接続導体において第二空孔を多く含んでいる場合であっても、コイル部品全体として直流抵抗が増大することを抑制できる。
【0007】
(2)上記(1)のコイル部品において、接続導体における単位面積当たりの第二空孔の平均大きさは、コイルにおける単位面積当たりの第一空孔の平均大きさよりも大きくてもよい。この構成では、接続導体に柔軟性を持たせることができる。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)のコイル部品において、第二空孔の少なくとも一部には、樹脂が配置されていてもよい。この構成では、接続導体の硬度よりも樹脂の硬度が低い場合、第二空孔に樹脂を配置することによって、接続導体の柔軟性を維持しつつ、コイル部品の製造工程においてめっき液が接続導体内に浸入することを抑制できる。接続導体の硬度よりも樹脂の硬度が高い場合、第二空孔に樹脂を配置することによって、接続導体の剛性を調整できる。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つのコイル部品において、接続導体において、第二空孔は、接続導体の表面よりも内側の中央領域に配置されていてもよい。コイル部品のQ特性は、導体の抵抗成分に依存する。高周波域では、表皮効果により、電流(信号)は、導体の表面近傍を流れやすい。したがって、接続導体の表面及び表面近傍での抵抗成分が増加すると、コイル部品のQ特性は低下する。コイル部品では、第二空孔は、接続導体の表面よりも内側の中央領域に配置されていている。この構成では、接続導体の表面側の密度を中央領域よりも高くできるため、接続導体の表面及び表面近傍での抵抗成分を低くできる。したがって、コイル部品では、Q特性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、接続導体において応力を緩和できると共に直流抵抗の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、積層コイル部品の斜視図である。
図2図2は、図1に示す積層コイル部品の断面構成を示す図である。
図3図3は、コイルの構成を示す斜視図である。
図4図4(a)は、コイルの断面構成を概略的に示す図であり、図4(b)は、第一接続導体及び第二接続導体の断面構成を概略的に示す図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、第一接続導体及び第二接続導体において中央領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1に示されるように、積層コイル部品1は、素体2と、素体2の両端部にそれぞれ配置された端子電極4及び端子電極5と、を備えている。
【0014】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、その外表面として、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e、2fと、を有している。一対の主面2c,2dが対向している対向方向が第一方向D1である。一対の端面2a,2bが対向している対向方向が第二方向D2である。一対の側面2e,2fが対向している対向方向が第三方向D3である。本実施形態では、第一方向D1は、素体2の高さ方向である。第二方向D2は、素体2の長手方向であり、第一方向D1と直交している。第三方向D3は、素体2の幅方向であり、第一方向D1と第二方向D2とに直交している。
【0015】
一対の端面2a,2bは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の端面2a,2bは、第三方向D3(一対の主面2c,2dの短辺方向)にも延びている。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の側面2e,2fは、第二方向D2(一対の端面2a,2bの長辺方向)にも延びている。主面2dは、積層コイル部品1を他の電子機器(たとえば、回路基板、又は、電子部品など)に実装する際、他の電子機器と対向する実装面として規定され得る。
【0016】
図3に示されるように、素体2は、複数の磁性体層6が積層されることによって構成されている。各磁性体層6は、第一方向D1に積層されている。すなわち、第一方向D1が積層方向である。素体2は、積層されている複数の磁性体層6を有している。実際の素体2では、複数の磁性体層6は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0017】
素体2(磁性体層6)は、複数の金属磁性粒子を含んでいる。金属磁性粒子は、軟磁性合金(軟磁性材料)から構成される。軟磁性合金は、たとえば、Fe-Si系合金である。軟磁性合金がFe-Si系合金である場合、軟磁性合金は、Pを含んでいてもよい。軟磁性合金は、たとえば、Fe-Ni-Si-M系合金であってもよい。「M」はCo、Cr、Mn、P、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Al、及び希土類元素から選択される一種以上の元素を含む。
【0018】
素体2では、金属磁性粒子同士が結合している。金属磁性粒子同士の結合は、たとえば金属磁性粒子の表面に形成される酸化膜同士の結合によって実現されている。酸化膜の厚さは、たとえば、5nm以上60nm以下である。酸化膜は、一又は複数の層によって構成されていてもよい。
【0019】
図1及び図2に示されるように、端子電極4は、素体2の端面2a側に配置されており、端子電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。すなわち、端子電極4及び端子電極5は、一対の端面2a,2bの対向方向に互いに離間して位置している。端子電極4及び端子電極5は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。端子電極4及び端子電極5は、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)及びガラスフリットを含む導電性ペーストの焼結体として構成される。端子電極4及び端子電極5には、電気めっきが施されることにより、その表面にはめっき層が形成されている。電気めっきには、たとえばNi、Snなどが用いられる。
【0020】
端子電極4は、一方の端面2a側に配置されている。端子電極4は、端面2a上に位置する第一電極部分4aと、主面2c上に位置する第二電極部分4bと、主面2d上に位置する第三電極部分4cと、側面2e上に位置する第四電極部分4dと、側面2f上に位置する第五電極部分4eと、の五つの電極部分を含んでいる。第一電極部分4aと第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。端子電極4は、1つの端面2a、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一電極部分4a、第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eは、一体的に形成されている。
【0021】
本実施形態では、端子電極4の第二電極部分4b及び第三電極部分4cの縁(端面)は、たとえば第三方向D3に沿っている。第二電極部分4bの縁は、主面2c上において、直線的に形成されている。第三電極部分4cの縁は、主面2d上において、直線的に形成されている。端子電極4の第四電極部分4d及び第五電極部分4eの縁は、第一方向D1に沿っている。第四電極部分4dの縁は、側面2e上において、直線的に形成されている。第五電極部分4eの縁は、側面2f上において、直線的に形成されている。なお、第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eのそれぞれの縁の形状は、湾曲していてもよいし、凹凸状に形成されていてもよい。
【0022】
端子電極5は、他方の端面2b側に配置されている。端子電極5は、端面2b上に位置する第一電極部分5aと、主面2c上に位置する第二電極部分5bと、主面2d上に位置する第三電極部分5cと、側面2e上に位置する第四電極部分5dと、側面2f上に位置する第五電極部分5eと、の五つの電極部分を含んでいる。第一電極部分5aと第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。端子電極5は、1つの端面2b、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一電極部分5a、第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eは、一体的に形成されている。
【0023】
本実施形態では、端子電極5の第二電極部分5b及び第三電極部分5cの縁は、たとえば第三方向D3に沿っている。第二電極部分5bの縁は、主面2c上において、直線的に形成されている。第三電極部分5cの縁は、主面2d上において、直線的に形成されている。端子電極5の第四電極部分5d及び第五電極部分5eの縁は、第一方向D1に沿っている。第四電極部分5dの縁は、側面2e上において、直線的に形成されている。第五電極部分5eの縁は、側面2f上において、直線的に形成されている。なお、第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eのそれぞれの縁の形状は、湾曲していてもよいし、凹凸状に形成されていてもよい。
【0024】
積層コイル部品1は、図2に示されるように、素体2内にコイル8と、第一接続導体18及び第二接続導体19と、が配置されている。図3に示されるように、コイル8は、複数のコイル導体10,11,12,13,14,15,16,17と、第一接続導体18及び第二接続導体19とが電気的に接続されて螺旋状に構成されている。コイル導体10と第一接続導体18とは、一体に形成されている。コイル導体17と第二接続導体19とは、一体に形成されている。隣接するコイル導体10,11,12,13,14,15,16,17は、スルーホール導体(図示省略)で電気的に接続されている。
【0025】
第一接続導体18及び第二接続導体19のそれぞれは、たとえば、長方形状を呈している。本実施形態では、第一接続導体18及び第二接続導体19のそれぞれは、長辺が第三方向D3に沿い、短辺が第二方向D2に沿っている。第一接続導体18及び第二接続導体19の厚み方向は、第一方向D1である。第一接続導体18は、素体2の端面2aに露出して、端子電極4(第一電極部分4a)に接続されている。第二接続導体19は、素体2の端面2bに露出して、端子電極5(第一電極部分5a)に接続されている。
【0026】
コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17、第一接続導体18及び第二接続導体19は、コイルの導体として通常用いられる導電性材料からなる。導電性材料としては、たとえば、Ag、Cu、Au、Al、Pd、Pd/Ag合金などを用いることができる。コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17と第一接続導体18及び第二接続導体19とは、同じ導電性材料で形成されていてもよいし、異なる導電性材料で形成されていてもよい。コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17、第一接続導体18及び第二接続導体19は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0027】
図4(a)に示されるように、コイル8(コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17)のそれぞれには、複数の第一ポア(第一空孔)P1が設けられている。図4(b)に示されるように、第一接続導体18及び第二接続導体19のそれぞれには、複数の第二ポア(第二空孔)P2が設けられている。第一ポアP1及び第二ポアP2は、個々に独立して設けられていてもよいし、複数が連続して(繋がって)設けられていてもよい。第一ポアP1及び第二ポアP2の形状は、特に限定されない。
【0028】
図5(a)及び図5(b)に示されるように、第一接続導体18及び第二接続導体19のそれぞれにおいて、複数の第二ポアP2は、第一接続導体18及び第二接続導体19の表面18S,19Sよりも内側の中央領域Aに配置されている。中央領域Aは、第一接続導体18及び第二接続導体19において、表面18S,19Sよりも第一方向D1、第二方向D2及び第三方向D3の中央(中心)寄りの位置である。中央領域Aは、第一接続導体18及び第二接続導体19のそれぞれにおける第二方向D2及び第三方向D3に延在している。本実施形態において、複数の第二ポアP2は、第一接続導体18及び第二接続導体19において均等に分散配置されておらず、第一接続導体18及び第二接続導体19のそれぞれの中央領域Aに偏在している。第一接続導体18及び第二接続導体19のそれぞれにおいて、第二ポアP2は、中央領域Aの方が他の部分よりも存在割合が高いとも言える。第二ポアP2は、第一接続導体18及び第二接続導体19のそれぞれにおいて、中央領域A以外の位置に配置されていてもよい。
【0029】
コイル8において、複数の第一ポアP1は、コイル8の表面よりも内側の中央領域に配置されていてもよいし、コイル8において均等に分散配置されていてもよい。本実施形態では、複数の第一ポアP1は、コイル8の表面よりも内側の中央領域に配置されていることが好ましい。
【0030】
図4(b)に示されるように、複数の第二ポアP2のうちの少なくとも一部の第二ポアP2には、樹脂Rが配置されていてもよい。樹脂Rは、第二ポアP2の全体に配置(充填)されていてもよいし、第二ポアP2の一部に配置されていてもよい。樹脂Rは、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂、すなわち、絶縁性樹脂である。絶縁性樹脂は、たとえば、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、又はエポキシ樹脂を含む。樹脂Rの硬度は、第一接続導体18及び第二接続導体19の硬度よりも低くてもよいし、第一接続導体18及び第二接続導体19の硬度よりも高くてもよい。図4(b)に示す例では、樹脂Rは、第一接続導体18及び第二接続導体19よりも硬度が低い樹脂Rが複数の第二ポアP2のうちの一部に配置されている。なお、複数の第一ポアP1のうちの少なくとも一部の第一ポアP1においても、樹脂(図示省略)が配置されていてもよい。
【0031】
第一接続導体18及び第二接続導体19のそれぞれにおける単位面積当たりの第二ポアP2の面積は、コイル8(コイル導体10,11,12,13,14,15,16)における単位面積当たりの第一ポアP1の面積よりも大きい。すなわち、第一接続導体18及び第二接続導体19は、コイル8よりも多くのポアを含んでいる。第一接続導体18及び第二接続導体19における単位体積あたりの第二ポアP2の体積は、コイル8の単位体積あたりの第一ポアP1の体積よりも大きいとも言える。第一接続導体18及び第二接続導体19における第二ポアP2の体積密度は、コイル8における第一ポアP1の体積密度よりも高い。体積密度とは、単位体積当たりのポアが占める体積を意味する。
【0032】
第一接続導体18及び第二接続導体19は、コイル8よりもポアを多く含んでいる。これにより、第一接続導体18及び第二接続導体19は、コイル8よりも単位体積当たりの密度が疎である。そのため、第一接続導体18及び第二接続導体19の単位体積当たりの密度は、コイル8の単位体積当たりの密度よりも低いと言える。
【0033】
第二ポアP2の平均大きさは、第一ポアP1の平均大きさよりも大きい。第一ポアP1の平均大きさは、たとえば、0.1μm以上2.0μm以下であり、好ましくは、0.5μm以上1.0μm以下である。第二ポアP2の平均大きさは、たとえば、1.0μm以上10.0μm以下であり、好ましくは、2.0μm以上5.0μm以下である。第二ポアP2の平均大きさは、たとえば、第一ポアP1の平均大きさの1.1倍以上10倍以下である。
【0034】
第一ポアP1及び第二ポアP2の各平均大きさは、たとえば、以下のようにして得られる。コイル8、第一接続導体18及び第二接続導体19を含む積層コイル部品1の断面写真を取得する。断面写真は、たとえば、一対の側面2e,2fに平行であり、かつ、一対の側面2e,2fから所定距離だけ離れている平面で積層コイル部品1を切断したときの断面を撮影することにより得られる。この場合、上記平面は、一対の一対の側面2e,2fから等距離に位置していてもよい。取得した断面写真をソフトウェアにより画像処理する。画像処理により、第一ポアP1及び第二ポアP2の境界を判別し、第一ポアP1及び第二ポアP2の面積を求める。求めた第一ポアP1及び第二ポアP2の面積から、円相当径に換算した大きさ(径)をそれぞれ求める。ここでは、第一ポアP1及び第二ポアP2のそれぞれについて、100個以上の大きさを算出し、分布を求める。求めた分布における積算値50%での径(d50)を「平均大きさ」とする。
【0035】
続いて、積層コイル部品1の製造方法について説明する。
【0036】
金属磁性粒子、絶縁性樹脂及び溶剤などを混合して、スラリーを用意する。用意したスラリーを、ドクターブレード法によって基材(たとえば、PETフィルムなど)上に塗布して、磁性体層6となるグリーンシートを形成する。次に、グリーンシートにおけるスルーホール導体の形成予定位置に、レーザー加工によって貫通孔を形成する。
【0037】
続いて、第一の導電性ペーストをグリーンシートの貫通孔内に充填する。第一の導電性ペーストは、導電性金属粉末及びバインダ樹脂などを混合して作製される。続いて、グリーンシートの上に、コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17、第一接続導体18及び第二接続導体19となる導体を設ける。このとき、導体は、貫通孔内の導電性ペーストと接続される。
【0038】
コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17は、第一の導電性ペーストをたとえばスクリーン印刷法によって形成する。第一接続導体18及び第二接続導体19は、第二の導電性ペーストをたとえばスクリーン印刷法によって形成する。第二の導電性ペーストは、導電性金属粉末及びバインダ樹脂などを混合して作製される。第二の導電性ペーストは、第一の導電性ペーストよりも、バインダ樹脂を多く含む。
【0039】
続いて、グリーンシートを積層する。ここでは、導体が設けられた複数のグリーンシートを基材から剥がして積層し、積層方向に加圧して積層体を形成する。このとき、コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17、第一接続導体18及び第二接続導体19となる導体が積層方向に重なるように、各グリーンシートを積層する。
【0040】
続いて、グリーンシートの積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。続いて、グリーンチップを焼成する。焼成により、各部に含まれるバインダ樹脂が除去(分解)される。第二の導電性ペーストは、第一の導電性ペーストよりもバインダ樹脂の含有量が多いため、バインダ樹脂が除去されると、コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17よりも第一接続導体18及び第二接続導体19の方に多くポアが形成される。これにより、コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17に第一ポアP1が形成され、第一接続導体18及び第二接続導体19に第二ポアP2が形成される。続いて、チップ部品を樹脂液に浸し、チップ部品に樹脂を含浸させる。以上により、素体2が得られる。
【0041】
続いて、素体2の両端部に端子電極4及び端子電極5となる第三の導電性ペーストをたとえばディップ法によって設ける。第三の導電性ペーストは、導電性金属粉末及びバインダ樹脂などを混合して作製される。続いて、熱処理を施すことにより、第三の導電性ペーストを焼き付けて、焼付電極を形成する。最後に、焼付電極の表面にめっきを施して、めっき層を形成する。以上の工程により、積層コイル部品1が得られる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1では、第一接続導体18及び第二接続導体19における第二ポアP2の単位面積当たり面積は、コイル8における第一ポアP1の単位面積当たりの面積よりも大きい。このように、第一接続導体18及び第二接続導体19は、コイル8よりも空孔を多く含んでいるため、コイル8よりも剛性(強度)が低く、コイル8に比べて柔軟性を有している。したがって、積層コイル部品1では、第一接続導体18及び第二接続導体19において応力を緩和(吸収)することができる。また、積層コイル部品1では、コイル8における第一ポアP1の単位面積当たりの面積は、第一接続導体18及び第二接続導体19における第二ポアP2の単位面積当たり面積よりも小さい。このように、積層コイル部品1では、コイル8の第一ポアP1を第一接続導体18及び第二接続導体19の第二ポアP2よりも少なくしているため、第一接続導体18及び第二接続導体19において第二ポアP2を多く含んでいる場合であっても、積層コイル部品1全体として直流抵抗が増大することを抑制できる。
【0043】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第一接続導体18及び第二接続導体19における単位面積当たりの第二ポアP2の平均大きさは、コイル8における単位面積当たりの第一ポアP1の平均大きさよりも大きい。この構成では、第一接続導体18及び第二接続導体19に柔軟性を持たせることができる。
【0044】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第二ポアP2の少なくとも一部には、樹脂Rが配置されていてもよい。この構成では、第一接続導体18及び第二接続導体19の硬度よりも樹脂Rの硬度が低い場合、第二ポアP2に樹脂Rを配置することによって、第一接続導体18及び第二接続導体19の柔軟性を維持しつつ、積層コイル部品1の製造工程においてめっき液が第一接続導体18及び第二接続導体19内に浸入することを抑制できる。第一接続導体18及び第二接続導体19の硬度よりも樹脂Rの硬度が高い場合、第二ポアP2に樹脂Rを配置することによって、第一接続導体18及び第二接続導体19の剛性を調整できる。
【0045】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第一接続導体18及び第二接続導体19において、第二ポアP2は、第一接続導体18及び第二接続導体19の表面18S,19Sよりも内側の中央領域Aに配置されている。積層コイル部品1のQ特性は、導体の抵抗成分に依存する。高周波域では、表皮効果により、電流(信号)は、導体の表面近傍を流れやすい。したがって、第一接続導体18及び第二接続導体19の表面18S,19S及び表面18S,19S近傍での抵抗成分が増加すると、積層コイル部品1のQ特性は低下する。積層コイル部品1では、第二ポアP2は、表面18S,19Sの表面18S,19Sよりも内側の中央領域Aに配置されていている。この構成では、第一接続導体18及び第二接続導体19の表面18S,19S側の密度を中央領域Aより高くできるため、第一接続導体18及び第二接続導体19の表面18S,19S及び表面18S,19S近傍での抵抗成分を低くできる。したがって、積層コイル部品1では、Q特性の向上が図れる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0047】
上記実施形態では、素体2(磁性体層6)が複数の金属磁性粒子を含んでいる形態を一例に説明した。しかし、素体2は、金属磁性粒子を含んでいなくてもよい。
【0048】
上記実施形態では、コイル8が、コイル導体10,11,12,13,14,15,16,17を含んで構成されている形態を一例に説明した。しかし、コイルを構成するコイル導体の数及び形状は限定されない。
【0049】
上記実施形態では、端子電極4が第一電極部分4a、第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eを含んでおり、端子電極5が第一電極部分5a、第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eを含んでいる形態を一例に説明した。しかし、端子電極は、素体2の端面2a,2bのみに配置されていてもよいし、素体2の端面2a,2b及び主面2dにわたって配置されていてもよい(L字端子)。
【符号の説明】
【0050】
1…積層コイル部品、2…素体、4…端子電極、5…端子電極、8…コイル、18…第一接続導体、18S…表面、19…第二接続導体、19S…表面、A…中央領域、P1…第一ポア(第一空孔)、P2…第二ポア(第二空孔)、R…樹脂。
図1
図2
図3
図4
図5