(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143077
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】膣内精液注入器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/43 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B17/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055569
(22)【出願日】2023-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトの掲載日:令和4年4月1日 ウェブサイト:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/OldPdfData/22B2X10020000019_1_01/2 (2)ウェブサイトの掲載日:令和4年9月12日 ウェブサイト:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/OldPdfData/22B2X10020000019_1_01/3 (3)ウェブサイトの掲載日:令和4年10月5日 ウェブサイト:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/200940_22B2X10020000019_1_01_04 (4)ウェブサイトの掲載日:令和4年10月6日 ウェブサイト:https://www.kitazato.co.jp/ja/news/#article-951 (5)ウェブサイトの掲載日:令和4年10月6日 ウェブサイト:https://white-ai.jp/ (6)ウェブサイトの掲載日:令和4年10月6日 ウェブサイト:https://www.youtube.com/watch?v=ElDofRShjfY (7)ウェブサイトの掲載日:令和4年10月6日 ウェブサイト:https://www.youtube.com/watch?v=-0vY4UssMAw (8)ウェブサイトの掲載日:令和4年8月29日 ウェブサイト:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BC8CDKYS?ref=myi_title_dp (9)令和4年11月21日ミアグレースクリニック新潟、その他3名に見本を提供 (10)令和4年5月27日株式会社Natural ART総合研究所 Natural ART Clinic日本橋に販売
(71)【出願人】
【識別番号】509038108
【氏名又は名称】株式会社北里コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 太
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160HH01
(57)【要約】
【課題】膣内への精液注入口を有する先端部の挿入が容易であり、かつ、膣内に精液を確実に注入することができる膣内精液注入器具を提供する。
【解決手段】膣内精液注入器具1は、吸引吐出具3と膣内挿入具2とを備える。膣内挿入具は、ハブ40、中空シャフト部41とを備える挿入具本体部材4と、中空シャフト部を被包する弾性チューブ6を備える。弾性チューブは、先端開口62を備える。中空シャフト部は、基端側から、シャフト本体部42、中空テーパ部49、中空膨出部43、シャフト部先端開口50とを備える。シャフト本体部は、先端部に設けられた側口45a,45bを備える。中空シャフト部への弾性チューブ装着状態において、シャフト部先端開口は、弾性チューブの先端部内かつ基端側に位置し、かつ、側口は、弾性チューブの内面と離間している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空チップ部を有する吸引吐出具と、前記吸引吐出具の前記中空チップ部に装着される膣内挿入具とを備える膣内精液注入器具であって、
前記膣内挿入具は、前記中空チップ部に装着されるハブと、前記ハブの先端面より突出し、かつ前記ハブより小径の中空シャフト部とを備える挿入具本体部材と、前記中空シャフト部のほぼ全体を被包する弾性チューブとを備え、
前記弾性チューブは、円筒状のチューブ本体部と、前記チューブ本体部の先端に位置する弾性チューブ先端開口とを備え、前記中空シャフト部および前記弾性チューブの長さは、40~100mmであり、
前記挿入具本体部材の前記中空シャフト部は、所定長延びるシャフト本体部と、前記シャフト本体部の先端より前方に延びかつ外径が縮径する中空テーパ部と、前記中空テーパ部の先端に設けられた中空膨出部と、前記中空膨出部の先端に形成されたシャフト部先端開口と、前記中空テーパ部または前記シャフト本体部の先端部に設けられた複数の側口とを備え、
前記挿入具本体部材の前記中空シャフト部に前記弾性チューブが装着された状態において、前記シャフト部先端開口は、前記弾性チューブの先端部内かつ前記弾性チューブ先端開口より基端側に位置し、前記挿入具本体部材の前記側口は、前記弾性チューブの内面と離間していることを特徴とする膣内精液注入器具。
【請求項2】
前記挿入具本体部材の前記シャフト本体部は、後端側部分と、前記後端側部分より小径の先端側部分とを備え、前記中空シャフト部に前記弾性チューブが装着された状態において、前記シャフト本体部の前記後端側部分は、前記弾性チューブの内面と密着し、前記シャフト本体部の前記先端側部分、前記中空テーパ部および前記中空膨出部は、前記弾性チューブの内面との間に空隙を備えている請求項1に記載の膣内精液注入器具。
【請求項3】
前記弾性チューブは、先端部角が環状に面取りされた先端縮径部を備えている請求項1または2に記載の膣内精液注入器具。
【請求項4】
前記膣内挿入具は、半硬質樹脂により形成されており、前記弾性チューブは、弾性材料により形成されている請求項1または2に記載の膣内精液注入器具。
【請求項5】
前記膣内挿入具は、半硬質樹脂により形成されており、前記中空シャフト部は、作業者の手による湾曲形状付けが可能である請求項1または2に記載の膣内精液注入器具。
【請求項6】
前記吸引吐出具は、前記中空チップ部を備える外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、前記ガスケットに装着されたプランジャを備えるシリンジである請求項1または2に記載の膣内精液注入器具。
【請求項7】
前記膣内挿入具は、ポリオレフィンにより形成されており、前記弾性チューブは、シリコーンゴムにより形成されている請求項1または2に記載の膣内精液注入器具。
【請求項8】
前記弾性チューブの先端と前記中空シャフト部の先端間距離は、0.5mm~5mmである請求項1または2に記載の膣内精液注入器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの膣内に精液を注入するための膣内精液注入器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工授精は、採取精液を試験管に移し、パーコール法等により良好精子を試験管底部に沈殿、濃縮し、試験管上層の未成熟精子、他細胞成分、精漿等を除去し、試験管底部に残留する良好精子濃度の高い精液を金属管製の授精針を装着した注射筒に吸引し、この授精針を膣から徐々に子宮口に挿入した後、子宮腔内にゆっくりと精液を注入することにてなされる。このような人工授精に使用する人工授精用カテーテルとして、特許2657651公報(特許文献1)に示すものがある。
最近では、受胎希望者本人自ら、膣内に精液を注入する器具が提供されている。このような人工授精に使用する人工授精用カテーテルとして、実用新案登録3205250公報(特許文献2)に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2657651公報
【特許文献2】実用新案登録3205250公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許2657651公報(特許文献1)に示す人工授精用カテーテル20は、カテーテルチューブ22と、カテーテルチューブの後端部に取り付けられたハブとからなり、ハブは、注射筒に接続可能であり、カテーテルチューブは、柔軟性材料のみからなり、屈曲自在となっており、さらに、カテーテルチューブは、先端は丸味を帯びた閉塞端であり、かつ、先端部の断面片半領域にのみ、カテーテルチューブの内外を連通する側孔を有している。
特許文献1のような子宮内に精液を注入するのは、受胎希望者本人が自ら行うことは容易ではない。
また、実用新案登録3205250公報(特許文献2)に示すものは、シリンジ10と、シリンジ先端に設けられる細長いパイプからなる精液注入用カテーテル20とから構成される精液注入用具であり、精液注入用カテーテルの太さが5mm以上20mm以下に形成されている。また、精液注入用カテーテル20は人体に害のないシリコーンゴム等のエラストマーにより形成されたパイプが用いられている。
特許文献1および2のものでは、注入用開口が、膣内壁に当接して閉塞することがあり、用いるチューブが弾性のものでは、腰がなく膣内への挿入が容易ではなく、逆に、チューブが半硬質なものでは、挿入時に膣内壁に損傷を与える可能性があった。
本発明の目的は、膣内への精液注入口を有する先端部の挿入が容易であり、かつ、膣内に精液を確実に注入することができる膣内精液注入器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 中空チップ部を有する吸引吐出具と、前記吸引吐出具の前記中空チップ部に装着される膣内挿入具とを備える膣内精液注入器具であって、
前記膣内挿入具は、前記中空チップ部に装着されるハブと、前記ハブの先端面より突出し、かつ前記ハブより小径の中空シャフト部とを備える挿入具本体部材と、前記中空シャフト部のほぼ全体を被包する弾性チューブとを備え、
前記弾性チューブは、円筒状のチューブ本体部と、前記チューブ本体部の先端に位置する弾性チューブ先端開口とを備え、前記中空シャフト部および前記弾性チューブの長さは、40~100mmであり、
前記挿入具本体部材の前記中空シャフト部は、所定長延びるシャフト本体部と、前記シャフト本体部の先端より前方に延びかつ外径が縮径する中空テーパ部と、前記中空テーパ部の先端に設けられた中空膨出部と、前記中空膨出部の先端に形成されたシャフト部先端開口と、前記中空テーパ部または前記シャフト本体部の先端部に設けられた複数の側口とを備え、
前記挿入具本体部材の前記中空シャフト部に前記弾性チューブが装着された状態において、前記シャフト部先端開口は、前記弾性チューブの先端部内かつ前記弾性チューブ先端開口より基端側に位置し、前記挿入具本体部材の前記側口は、前記弾性チューブの内面と離間している膣内精液注入器具。
【0006】
(2) 前記挿入具本体部材の前記シャフト本体部は、後端側部分と、前記後端側部分より小径の先端側部分とを備え、前記中空シャフト部に前記弾性チューブが装着された状態において、前記シャフト本体部の前記後端側部分は、前記弾性チューブの内面と密着し、前記シャフト本体部の前記先端側部分、前記中空テーパ部および前記中空膨出部は、前記弾性チューブの内面との間に空隙を備えている上記(1)に記載の膣内精液注入器具。
(3) 前記弾性チューブは、先端部角が環状に面取りされた先端縮径部を備えている上記(1)または(2)に記載の膣内精液注入器具。
(4) 前記膣内挿入具は、半硬質樹脂により形成されており、前記弾性チューブは、弾性材料により形成されている上記(1)から(3)のいずれかに記載の膣内精液注入器具。
(5) 前記膣内挿入具は、半硬質樹脂により形成されており、前記中空シャフト部は、作業者の手による湾曲形状付けが可能である上記(1)から(4)のいずれかに記載の膣内精液注入器具。
(6) 前記吸引吐出具は、前記中空チップ部を備える外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、前記ガスケットに装着されたプランジャを備えるシリンジである上記(1)から(5)のいずれかに記載の膣内精液注入器具。
(7) 前記膣内挿入具は、ポリオレフィンにより形成されており、前記弾性チューブは、シリコーンゴムにより形成されている上記(1)から(6)のいずれかに記載の膣内精液注入器具。
(8) 前記弾性チューブの先端と前記中空シャフト部の先端間距離は、0.5mm~5mmである上記(1)から(7)のいずれかに記載の膣内精液注入器具。
【発明の効果】
【0007】
本発明の膣内精液注入器具は、中空チップ部を有する吸引吐出具と、吸引吐出具の中空チップに装着される膣内挿入具とを備える。膣内挿入具は、中空チップ部に装着されるハブと、ハブの先端面より突出し、かつハブより小径の中空シャフト部とを備える挿入具本体部材と、中空シャフト部のほぼ全体を被包する弾性チューブとを備え、弾性チューブは、円筒状のチューブ本体部と、チューブ本体部の先端に位置する弾性チューブ先端開口とを備え、中空シャフト部および弾性チューブの長さは、40~100mmであり、挿入具本体部材の中空シャフト部は、所定長延びるシャフト本体部と、シャフト本体部の先端より前方に延びかつ外径が縮径する中空テーパ部と、中空テーパ部の先端に設けられた中空膨出部と、中空膨出部の先端に形成されたシャフト部先端開口と、中空テーパ部またはシャフト本体部の先端部に設けられた複数の側口とを備え、挿入具本体部材の中空シャフト部に弾性チューブが装着された状態において、シャフト部先端開口は、弾性チューブの先端部内かつ弾性チューブ先端開口より基端側に位置し、挿入具本体部材の側口は、弾性チューブの内面と離間している。
特に、膣内挿入具における膣内に挿入される部分は、中空シャフト部と、そのほぼ全体を被包する弾性チューブとにより形成されているため、挿入時における十分な押し込み性を持ち、かつ膣内に損傷を与えることなく、膣内への精液注入口を有する先端部の挿入が容易である。そして、精液は、シャフト部先端開口、複数の側口より流出した後、弾性チューブの先端開口より吐出されるので、膣内に精液を確実に注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の膣内精液注入器具の実施例の正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した膣内精液注入器具の拡大平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した膣内精液注入器具に用いられている膣内挿入具の挿入具本体部材の拡大正面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した挿入具本体部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の膣内精液注入器具を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の膣内精液注入器具1は、中空チップ部34を有する吸引吐出具3と、吸引吐出具3の中空チップ部34に装着される膣内挿入具2とを備える。
膣内挿入具2は、中空チップ部34に装着されるハブ40と、ハブ40の先端面より突出し、かつハブ40より小径の中空シャフト部41とを備える挿入具本体部材4と、中空シャフト部41のほぼ全体を被包する弾性チューブ6とを備える。
【0010】
弾性チューブ6は、円筒状のチューブ本体部61と、チューブ本体部61の先端に位置する弾性チューブ先端開口62とを備え、中空シャフト部41および弾性チューブ6の長さは、40~100mmである。
挿入具本体部材4の中空シャフト部41は、所定長延びるシャフト本体部42と、シャフト本体部42の先端より前方に延びかつ外径が縮径する中空テーパ部49と、中空テーパ部49の先端に設けられた中空膨出部43と、中空膨出部43の先端に形成されたシャフト部先端開口50と、中空テーパ部49またはシャフト本体部42の先端部に設けられた複数の側口45a,45bとを備える。
【0011】
挿入具本体部材4の中空シャフト部41に弾性チューブ6が装着された状態において、シャフト部先端開口50は、弾性チューブ6の先端部内かつ弾性チューブ先端開口62より基端側に位置し、挿入具本体部材4の側口45a,45bは、弾性チューブ6の内面から離間している。
【0012】
本発明の膣内精液注入器具1は、吸引吐出具3と、吸引吐出具3に装着される膣内挿入具2とを備える。
この実施例では、吸引吐出具3は、中空チップ部34を備える外筒31と、外筒31内に摺動可能に収納されたガスケット32と、ガスケット32に装着されたプランジャ33とを備えるシリンジが用いられている。なお、吸引吐出具3は、中空チップ部を備え、液体(特に、精液)の吸引と、吸引した液体(特に、精液)の吐出が可能であればよく、シリンジに限定されるものではない。
【0013】
この実施例で用いられている吸引吐出具であるシリンジ3は、
図1および
図2に示すように、中空チップ部(ノズル)34が設けられ、後端部にフランジ35を有する外筒31と、外筒内を摺動するガスケット32と、ガスケット32に取り付けられたプランジャ(押子)33とを備えている。
【0014】
プランジャ33は、
図1に示すように、断面が十字状の本体部と、本体部の先端部に設けられ、ガスケット32と螺合する螺合部からなる。また、本体部の先端部には、先端側円盤部が形成され、後端には、押圧用の後端円盤部36が形成されている。
【0015】
また、ガスケット32の内部は、
図2に示すように、プランジャ33の先端部に設けられた螺合部と螺合する螺合用の凹部が形成されている。ガスケット32は、本発明の実施例では、先端部付近と基端部付近が拡径しており、この部分において外筒内面と接触している。また、ガスケットは、先端部付近と中央部付近と基端部付近にリブが設けられ、この部分において外筒内面と接触しているものであってもよい。
【0016】
外筒31は、透明もしくは半透明材料により形成されている。外筒31の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルのような各種樹脂が挙げられる。ガスケット32の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン-αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
【0017】
膣内挿入具2は、ハブ40と中空シャフト部41とを備える挿入具本体部材4と、中空シャフト部41のほぼ全体を被包する弾性チューブ6とを備える。
【0018】
挿入具本体部材4は、
図1,
図2、
図4~
図7に示すように、中空チップ部34への装着のための中空ハブ40と、中空ハブ40の先端面より先端側に突出し、かつハブ40の外径より小径の外径を有する中空シャフト部41を備える。
【0019】
ハブ40は、
図2、
図4、
図5、
図7に示すように、先端面を形成する平板部44と、平板部44の後端面外周部より、後方(後端方向)に延びる外筒部46と、平板部44の後端面より延び、外筒部46の内側に位置する内筒部48とを備える。そして、内筒部48の内部41aが、中空チップ部34を受け入れ、液密状態にて接続可能な接続部となっている。また、内筒部48の内部41aの先端部は、先端方向に向かって内径が縮径している。
【0020】
ハブ40は、外面に、ハブ40の中心軸に平行に延びるリブ47を備えている。中空チップ部34へのハブ40の装着時に、このリブ47を用いて、ハブ40を回転させながら中空チップ部34への装着を行うことができる。さらに、ハブ40は、外筒部46と内筒部48を連結する複数の補強部53を備えている。複数の補強部53は、ハブ40の中心軸に対して、ほぼ等角度となるように設けられている。複数の補強部53の数としては、3~10が好ましく、特に、4~8が好ましい。また、外筒部46と内筒部48間には、補強部53により区分された複数の空隙部53aが形成されている。
【0021】
中空シャフト部41は、中空ハブ40の先端面の中央部より、先端側に突出すし、かつハブ40の外径より小径の外径を有している。中空シャフト部41は、所定長延びるシャフト本体部42と、シャフト本体部42の先端より前方に延びかつ外径が縮径する中空テーパ部49と、中空テーパ部49の先端に設けられた中空膨出部43と、中空膨出部43の先端に形成されたシャフト部先端開口50と、中空テーパ部49またはシャフト本体部42の先端部に設けられた複数の側口45a,45bとを備える。
【0022】
シャフト本体部42は、後端部が後端方向(ハブ40方向)に向かって拡径する湾曲テーパ部となっており、シャフト本体部42の後端部とハブ40間における屈曲を防止するものとなっている。シャフト本体部42内には、ルーメン51が形成されており、ルーメン51の後端は、ハブ40の内筒部48の内部41aと連通している。また、ルーメン51の内径は、後端から先端まで、ほぼ同一径となっている。
【0023】
また、この実施例では、挿入具本体部材4のシャフト本体部42は、後端側部分42aと、後端側部分42aより小径(若干小径)の先端側部分42bとを備える。また、後端側部分42aと先端側部分42bの境界部には、段差部42cが形成されている。
【0024】
中空シャフト部41は、シャフト本体部42の先端より前方に延びかつ外径が縮径する中空テーパ部49を備えている。中空テーパ部49は、シャフト本体部42の長さより短く、中空シャフト部41の全長の0.03~0.15倍程度の長さとなっており、特に、中空シャフト部41の全長の0.04~0.1倍程度の長さであることが好ましい。
【0025】
そして、中空シャフト部41は、シャフト本体部42の先端、言い換えれば、中空テーパ部49の先端に設けられた中空膨出部43を備えている。中空膨出部43は、中空シャフト部41の先端部を形成している。中空膨出部43は、略球状となっている。そして、中空膨出部43の先端にはシャフト部先端開口50が設けられており、このシャフト部先端開口50は、シャフト本体部42内のルーメン51、ハブ40の内筒部48の内部41aと連通している。中空膨出部43の外径は、シャフト本体部42の外径(後端側部分42aおよび先端側部分42b)および後述する弾性チューブ6の先端部の内径よりも小さいものとなっている。中空膨出部43の外径は、中空テーパー部49の外径より、0.5~2.0mm程度大きいことが好ましい。
【0026】
さらに、中空シャフト部41は、先端側部位に設けられた複数の側口45a,45bを備える。側口45a,45bは、シャフト本体部42の先端部に設けることが好ましい。なお、側口45a,45bは、中空テーパ部49に設けてもよい。さらには、シャフト本体部42の先端部と中空テーパ部49の後端部の境界部に設けてもよい。シャフト本体部42の先端部に設けることが好ましい。また、側口45a,45bは、1つ目をシャフト本体部42の先端部に設け、2つ目を中空テーパ部49に設けてもよい。側口45a,45bの数は、2個が好適であるが、3個以上であってもよい。また、この実施例では、側口45a,45bは、シャフト本体部42の中心軸に対して向かい合うように設けられている。なお、側口45a,45bは、シャフト本体部42の軸方向にずれた位置に設けてもよい。
【0027】
挿入具本体部材4の形成材料としては、低可撓性を有する半硬質材料が好適である。具体的には、挿入具本体部材4の形成材料は、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、スチレン系樹脂[例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート-スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体)]などのフッ素樹脂が好適である。特に、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー)が好ましい。
【0028】
さらに、挿入具本体部材4は、半硬質樹脂により形成されており、中空シャフト部41は、作業者の手による湾曲形状付けが可能であることが好ましい。このようにすることにより、膣への挿入が容易となる。そして、膣内挿入具2は、上述したようなポリオレフィンにより形成し、弾性チューブ6は、シリコーンゴムにより形成することが好ましい。
【0029】
弾性チューブ6は、挿入具本体部材4の中空シャフト部41に装着(被嵌)され、中空シャフト部41のほぼ全体を被包している。弾性チューブ6は、円筒状のチューブ本体部61と、チューブ本体部61の先端に位置する弾性チューブ先端開口62とを備え、中空シャフト部41および弾性チューブ6の長さは、40~100mmである。また、この実施例では、弾性チューブ6は、先端から後端まで貫通した内腔64を有するチューブ体である。
【0030】
この実施例では、
図1および
図2に示すように、弾性チューブ6は、先端部角が環状に面取りされた先端縮径部63を備えている。弾性チューブ6は、先端縮径部63を除き、先端部から後端まで、ほぼ同一内径、同一外径となっている。弾性チューブ6の外径としては、3~10mm程度が好ましく、特に、4~8mmが好ましい。
【0031】
そして、
図2に示すように、挿入具本体部材4の中空シャフト部41に弾性チューブ6が装着された状態において、シャフト部先端開口50は、弾性チューブ6の先端部内かつ弾性チューブ先端開口62より基端側に位置し、挿入具本体部材4の側口45a,45bは、弾性チューブ6の内面と離間している。弾性チューブ6は、側口45a,45bに密着せず、開口を封鎖しない。
【0032】
特に、この実施例では、
図2に示すように、中空シャフト部41に弾性チューブ6が装着された状態において、シャフト本体部42の後端側部分42aは、弾性チューブ6の内面と密着し、シャフト本体部42の先端側部分42b、中空テーパ部49および膨出部43は、弾性チューブ6の内面との間に空隙を備えている。弾性チューブ6の内径は、シャフト本体部42の後端側部分42aの内径よりは若干小さいものとなっており、中空シャフト部41に弾性チューブ6が装着された状態において、弾性チューブ6は、シャフト本体部42の後端側部分42aと接触する部分において、若干押し広げられた状態となっている。このため、弾性チューブ6は、中空シャフト部41より、容易に離脱しないものとなっている。そして、弾性チューブ6の先端と中空シャフト部42の先端間距離は、0.5mm~5mmであることが好ましい。特に、0.7~4mmであることが好ましい。また、弾性チューブ6の内径は、シャフト本体部42の先端側部分42bの内径よりは若干大きいものとなっている。
【0033】
弾性チューブ6の形成材料としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム等の各種ゴム類、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエン、軟質塩化ビニル等の各種樹脂、またはこれらのうち2以上を組み合わせたもの等が挙げられるが、そのなかでも特に、生体に対し不活性で、比較的物性変化の少ないシリコーンゴムが好ましい。
【符号の説明】
【0034】
1 膣内精液注入器具
2 膣内挿入具
3 吸引吐出具
4 挿入具本体部材
6 弾性チューブ
41 中空シャフト部
42 シャフト本体部
43 中空膨出部
49 中空テーパ部
45a,45b 側口