(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143080
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04291 20160101AFI20241003BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241003BHJP
【FI】
H01M8/04291
H01M8/04 N
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055573
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】深見 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】柏木 幸一
(72)【発明者】
【氏名】増田 勝平
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC06
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB35
5H127EE13
5H127EE17
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】寸法誤差を吸収可能で、耐久性の高い加湿器を構成する。
【解決手段】燃料電池に供給される乾燥気体に対して燃料電池から送り出された含水気体の水分を与える加湿ユニットHと、乾燥気体が流入する流入ポート13aと乾燥気体が加湿ユニットHで加湿されて生成された加湿気体が流出する流出ポート13dとを有し、加湿ユニットHを収容するケースCと、を備えている。ケースCは、加湿ユニットHを収容するケース本体12と、ケース本体12の開口端部に固定された蓋体13とを有しており、加湿ユニットHとケース本体12との間には、乾燥気体が流通可能な空間Sが設けられ、空間Sは、流入ポート13aと、流入ポート13aとは反対側となる加湿ユニットH及びケース12の間と、を連通させている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に供給される乾燥気体に対して前記燃料電池から送り出された含水気体の水分を与える加湿ユニットと、
前記乾燥気体が流入する流入ポートと前記乾燥気体が前記加湿ユニットで加湿されて生成された加湿気体が流出する流出ポートとを有し、前記加湿ユニットを収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記加湿ユニットを収容する開口端部を含むケース本体と、当該開口端部に固定された蓋体とを有しており、
前記加湿ユニットと前記ケース本体との間には、前記乾燥気体が流通可能な空間が設けられており、当該空間は、前記流入ポートと、前記流入ポートとは反対側となる前記加湿ユニット及び前記ケースの間と、を連通させている加湿器。
【請求項2】
前記加湿ユニットの端部は、前記蓋体と接着されている請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記加湿ユニットのセパレータには、前記流入ポートと連通する前記空間が切り欠き形成されている請求項1又は2に記載の加湿器。
【請求項4】
前記加湿ユニットと前記ケース本体との間には、防振部材が配置されている請求項1又は2に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に接続される加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等に搭載される燃料電池の乾燥を防ぎ、電気化学反応を良好に維持するために用いられる加湿器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の加湿器は、燃料電池に供給される乾燥気体に対して燃料電池から送り出された含水気体の水分を与える加湿ユニット(文献ではプレート積層体)と、加湿ユニットを収容するケース(文献では流体チャネルハウジング)とを備えている。この加湿ユニットのプレート側方とケースとの間に一定の間隔を設けて、左右方向の振動によってプレートがケースと接触しないように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の加湿器のように加湿ユニットをケースに収容することにより、加湿ユニットのプレート間の締付力を低減することが可能となる。一方、複数のプレートを積層する際に、プレート間の位置ずれや成形誤差により、プレート間の締付力が増加することや、プレート毎に締付力の偏りが生ずることもある。その結果、加湿器が左右前後方向の振動等を受けてプレートが破損するおそれがあった。
【0006】
そこで、寸法誤差を吸収可能で、耐久性の高い加湿器が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加湿器の特徴構成は、燃料電池に供給される乾燥気体に対して前記燃料電池から送り出された含水気体の水分を与える加湿ユニットと、前記乾燥気体が流入する流入ポートと前記乾燥気体が前記加湿ユニットで加湿されて生成された加湿気体が流出する流出ポートとを有し、前記加湿ユニットを収容するケースと、を備え、前記ケースは、前記加湿ユニットを収容する開口端部を含むケース本体と、当該開口端部に固定された蓋体とを有しており、前記加湿ユニットと前記ケース本体との間には、前記乾燥気体が流通可能な空間が設けられており、当該空間は、前記流入ポートと、前記流入ポートとは反対側となる前記加湿ユニット及び前記ケースの間と、を連通させている点にある。
【0008】
本構成では、加湿ユニットとケース本体との間に空間を設け、この空間は、流入ポートと、流入ポートとは反対側となる加湿ユニット及びケースの間(燃料電池側)とを連通させている。このため、仮に加湿ユニットに寸法誤差があった場合でも、この空間によって左右前後方向の寸法誤差を吸収できる。その結果、加湿ユニットをケース本体に収容した状態で、加湿ユニットが邪魔することなく、ケース本体と蓋体とを接続することが可能となる。
【0009】
また、本構成における加湿ユニットとケース本体との間の空間は、高圧の乾燥気体が流通し、当該空間は、流入ポートと燃料電池側とを連通させている。つまり、加湿ユニットとケース本体との間の閉空間が乾燥気体によって加圧された状態となっている。このため、加湿器が左右前後方向の振動等を受けた場合でも、乾燥気体がクッション機能を発揮し、加湿ユニットの破損を防止できる。このように、寸法誤差を吸収可能で、耐久性の高い加湿器となっている。
【0010】
他の特徴構成は、前記加湿ユニットの端部は、前記蓋体と接着されている点にある。
【0011】
本構成のように、加湿ユニットと蓋体とが接着されていれば、従来のようにシール部材を介在させる場合に比べて、加湿ユニットの姿勢を安定させることが可能となる。また、上述した空間により、加湿ユニットの寸法誤差が吸収されるので、接着精度が要求されず、加湿ユニットと蓋体とを容易に接着することができる。
【0012】
他の特徴構成は、前記加湿ユニットのセパレータには、前記流入ポートと連通する前記空間が切り欠き形成されている点にある。
【0013】
本構成のように、加湿ユニットのセパレータに設けられた切り欠きを上述した空間として機能させると共に、流入ポートと連通させれば、切り欠いた空間を加湿ユニット内の乾燥気体の流通空間と兼用できるため、加湿器のコンパクト化を図ることができる。
【0014】
他の特徴構成は、前記加湿ユニットと前記ケース本体との間には、防振部材が配置されている点にある。
【0015】
本構成のように、加湿ユニットとケース本体との間に防振部材を配置すれば、振動等による加湿ユニットの破損を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】加湿空気供給ユニットと燃料電池とを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1には、車両に搭載される燃料電池FCのカソード側に供給される乾燥空気(乾燥気体の一例:カソードガス)を加湿し、加湿空気(加湿気体の一例)として供給する加湿空気供給ユニットAを示している。
【0018】
燃料電池FCは、複数の燃料電池セル(図示せず)を一対の端部プレート1の間に挟み込んだ構造を有している。燃料電池FCは、燃料ガス供給ユニットBからアノード側に燃料ガスとして水素ガスが供給され、加湿空気供給ユニットAからカソード側に酸化剤ガスとして加湿された空気が供給される。
【0019】
燃料電池FCは、水素ガスが供給され、空気(加湿空気)が供給されることにより燃料電池セルにおける電気化学反応により発電を行う。燃料電池FCは、一対の端部プレート1の一方の外面に加湿空気供給ユニットAを備えている。
【0020】
燃料電池セルは、カソード側電極を構成する高分子電解質膜を適度の湿潤状態に維持することにより高い発電性能が維持される。この理由から、加湿空気供給ユニットAは、外部から供給される乾燥空気に水分を与えて加湿空気を作り出し、この加湿空気を燃料電池セルのカソード側に供給する。
【0021】
〔加湿空気供給ユニット〕
図1~
図3に示すように、加湿器10は、端部プレート1の外面に固定されている。加湿空気供給ユニットAは、外部のコンプレッサ等から加圧された乾燥空気が供給される空気供給ポートPaと、加湿空気を燃料電池FCに供給する加湿空気供給ポートPbとを備えている。尚、加湿器10は、端部プレート1の外面に加湿器10を固定せずに、別の支持部材に固定されても良い。
【0022】
また、加湿空気供給ユニットAは、燃料電池FCから送り出される含水空気(含水気体の一例)が流入する含水空気流入ポートPcと、含水空気から水分を取り除いた除湿空気を送り出す除湿空気排出ポートPdとを有している。特に、加湿空気供給ポートPbと、含水空気流入ポートPcとは、端部プレート1に孔状に形成されている。
【0023】
加湿器10は、乾燥空気が供給される乾燥空気供給部14aと、加湿空気を送り出す加湿空気供給部14bと、燃料電池FCから含水空気が供給される含水空気流入部14cと、除湿空気を送り出す除湿空気排出部14dとを備えている。
【0024】
加湿器10は、乾燥空気供給部14aに供給される乾燥空気に対し、含水空気流入ポートPcから送り出される含水空気に含まれる水分を与えるにより加湿空気を作り出す。このように作り出した加湿空気は、加湿空気供給部14bから加湿空気供給ポートPbに供給される。また、加湿器10において含水空気は、水分を奪われることにより除湿空気に変化し、除湿空気排出ポートPdから排出される。この加湿器10の詳細は後述する。
【0025】
図1、
図2に示すように、加湿空気供給ユニットAは、空気供給ポートPaからの空気を乾燥空気供給部14aに供給する乾燥空気流路21を備え、この乾燥空気流路21の中間に三方弁V1を備え、三方弁V1で分岐する分岐流路22を備えている。
【0026】
加湿空気供給ユニットAは、加湿空気供給部14bからの加湿空気を加湿空気供給ポートPbに供給する加湿空気供給路23を備え、この加湿空気供給路23に分岐流路22が合流している。
【0027】
加湿空気供給ユニットAは、含水空気流入ポートPcからの含水空気を含水空気流入部14cに送る含水空気取得流路24を備えている。また、加湿空気供給ユニットAは、除湿空気排出部14dに送られる除湿空気を除湿空気排出ポートPdに送る除湿空気排出流路25を備え、この除湿空気排出流路25の中間に調圧弁V2を備えている。
【0028】
〔加湿器〕
加湿器10は、ケースCと、このケースCに複数枚のセパレータ3が積層され収容される加湿ユニットHとを有している。加湿ユニットHは、乾燥空気(乾燥気体の一例)に対し、燃料電池FCから送り出される含水空気(含水気体の一例)に含まれる水分を与えることにより加湿空気(加湿気体の一例)が生成される。ケースCは、複数枚のセパレータ3が積層される積層方向に開放端部を有するケース本体12と、ケース本体12の開口端部を覆うように固定される蓋体13とを備えている。
【0029】
ケースCは、ケース本体12と蓋体13との接触面に環状のパッキン11(
図4参照)を備え、ケース本体12と蓋体13を複数のボルト15で締結することにより、
図3に示すマニホールド14での空気の給排を可能にしつつ、空気の漏出を不能にする気密型に構成されている。尚、パッキン11はケース本体12と蓋体13との少なくとも一方に接着することにより固定されても良い。
【0030】
図2、
図3に示すように、蓋体13は、乾燥空気が流入する第1ポート13a(流入ポートの一例)と、加湿空気を送り出す第2ポート13b(流出ポートの一例)と、含水空気が供給される第3ポート13cと、除湿空気が排出される第4ポート13dとが、蓋体13に貫通孔状に形成されている。
【0031】
蓋体13は、外面側を覆う位置に空気を給排するマニホールド14を備えている。マニホールド14は、第1ポート13a(流入ポート)に連通する乾燥空気供給部14aが外方に膨出形成され、これに乾燥ガス供給筒14apが連通状態で一体形成されている。
【0032】
マニホールド14は、第2ポート13b(流出ポート)に連通する加湿空気供給部14bが外方に膨出形成され、これに加湿ガス供給筒14bpが連通状態で一体形成されている。マニホールド14は、第3ポート13cに連通する含水空気流入部14cが外方に膨出形成され、これにガス流入筒14cpが連通状態で一体形成されている。
【0033】
マニホールド14は、第4ポート13dに連通する除湿空気排出部14dが外方に膨出形成され、これにガス排出筒14dpが連通状態で一体形成されている。
【0034】
図3~
図5に示すように、ケース本体12の内部空間S(空間の一例)には、加湿ユニットHを構成する複数のセパレータ3が積層状態で収容される。この内部空間Sは、第1ポート13aと連通状態にあり、乾燥空気の圧力が加湿ユニットHのうち第1ポート13aの反対側のエンドプレート4の背面(蓋体13と反対の面)に作用する。このようにエンドプレート4の背面に乾燥空気の圧力が作用することにより、複数のセパレータ3は密着状態に維持される。これらの構成は以下に説明する。
【0035】
〔加湿器:セパレータの加圧/防振〕
図3、
図4に示すように、加湿ユニットHは、積層された複数のセパレータ3と、蓋体13と反対側のセパレータ3に接触状態で配置されるエンドプレート4と、蓋体13とセパレータ3との間に配置されるシール5と、複数の防振部材6と、複数のセパレータ3を圧接させる方向に軽く付勢力を作用させる圧縮コイルバネ7とを備えている。
【0036】
この加湿器10は、燃料電池FCの端部プレート1にケース本体12の底部(開口端部の反対側)が連結されている。
【0037】
セパレータ3は全体的に板状であり、第1ポート13aに対応する領域を切り欠いた切欠部3X(空間の一例)が形成されている。これにより第1ポート13aに供給された乾燥空気は切欠部3Xから内部空間Sに流れる。また、セパレータ3は、第2ポート13b、第3ポート13c、第4ポート13dの夫々に連通する位置に第2開口3b、第3開口3c、第4開口3dの夫々が貫通状態で形成されている。
【0038】
図6に示すように、セパレータ3は、一方の面側(乾燥流路側と称することもある)に乾燥空気が流れる乾燥流路3DLが凹状に形成されている。これに対し、セパレータ3は、他方の面側(含水流路側と称することもある)に含水空気が流れる含水流路3WLが凹状に形成されている。
【0039】
乾燥流路3DLは、切欠部3Xと第2開口3bの間でガスの流動を可能にする。また、含水流路3WLは、第3開口3cと第4開口3dとの間でのガスの流動を可能にする。
【0040】
図6に示される2つのセパレータ3を、同図の円弧状の矢印で示すように移動させることで重ね合わせることにより、乾燥流路3DLと含水流路3WLとの境界に水交換膜3Mが挟み込まれる状態となる。このように複数のセパレータ3を重ね合わせるように積層することにより、切欠部3X、第2開口3b、第3開口3c、第4開口3dは、各々が連通すると共に、切欠部3Xと第2開口3bとが連通し、第3開口3cと第4開口3dとが連通する。
【0041】
図3に示すように、シール5は、第2開口3b、第3開口3c、第4開口3dに対応する位置に、第2スペース5b、第3スペース5c、第4スペース5dが開口状に形成されている。
【0042】
加湿ユニットHは、この加湿ユニットHを構成するエンドプレート4の反対側の面がシール5と一体的に蓋体13の内面に接着されている。
【0043】
このような構成から、加湿ユニットHは、第1ポート13aから供給された乾燥空気がセパレータ3の乾燥流路3DLに流れる際に、含水空気がセパレータ3の含水流路3WLに流れることにより、含水空気の水分が水交換膜3Mを通過して乾燥流路3DLに流れる乾燥空気に与えられる。
【0044】
その結果、加湿空気が第2ポート13bから送り出され、加湿空気供給ポートPbから燃料電池FCに供給される。また、除湿空気が第4ポート13dから送り出され、除湿空気排出ポートPdから排出される。
【0045】
図3、
図4に示すように、防振部材6は、ゴムや柔軟に変形する樹脂材料等が用いられ、ケース本体12の内面の複数の凹状溝Gと、セパレータ3の外周の複数の凹状溝Gとに亘って嵌め込む状態で配置されている。
【0046】
複数の防振部材6は、外部からセパレータ3に作用する振動を減衰させる防振機能を有している。
【0047】
圧縮コイルバネ7は、複数のセパレータ3を接触する方向に軽く付勢力を作用させる。この付勢力は、複数のセパレータ3を軽く接触させる程度のものであり、外部から振動が作用する状況でも、複数のセパレータ3の分離を抑制する。
【0048】
加湿器10は、乾燥空気流路21から乾燥空気供給部14a、第1ポート13aに順次流れた乾燥空気が、セパレータ3の切欠部3XからケースCの内部空間Sに供給される。このように供給された乾燥空気の多くは、乾燥流路3DLに流れ、加湿されることで加湿空気に変化し加湿空気供給部14bから送り出される。
【0049】
これに対し、乾燥流路3DLに流れなかった乾燥空気は、エンドプレート4の外端面から複数のセパレータ3を圧接させる方向に圧力を作用させる。これにより、複数のセパレータ3は圧接状態に維持される。この乾燥空気によって複数のセパレータ3を圧接させる力は、圧縮コイルバネ7の付勢力より大きい値に設定されている。
【0050】
〔実施形態の作用効果〕
このように、コンプレッサ等から供給される加圧空気を、第1ポート13aから加湿器10の内部空間Sに供給することにより、複数のセパレータ3を圧接状態に維持できる。このため、締結力を利用する機械的な機構によって圧接状態に維持する構成と比較して寸法精度高く維持する必要がなく、締結力に耐えるようにケース本体12や蓋体13の強度を高くする必要もない。
【0051】
また、加湿器10は、ケースCと加湿ユニットHと寸法誤差を吸収することが可能であり、例えば、多少の寸法誤差があってもケースCを構成するケース本体12の内部空間Sに加湿ユニットHを収容し、ケース本体12を構成する蓋体13をケース本体12に接続固定できる。
【0052】
特に、このように加圧空気の圧力を利用する構成では、エンドプレート4の表面の全体に圧力が作用するため、均一な圧力を複数のセパレータ3に作用させて圧接状態に維持することも可能となる。
【0053】
複数のセパレータ3は、個体差により、重ね合わせ方向に直線的に積み上がらず、重ね合わせ方向に対して傾斜することもある。このように複数のセパレータ3を適正な姿勢で積層できない場合でも、加圧空気の圧力を利用することにより、複数のセパレータ3に圧力を作用させた状態で重ね合わせ状態に維持できる。また、この構成では、機械的な締結力を作用させる構成のように圧力分布が不均一にならず、耐久性の向上が可能となる。
【0054】
この加湿器10では、ケース本体12の内面と、複数のセパレータ3の外周との間に間隙を形成すると共に、ケース本体12の内面と、複数のセパレータ3の外周との間に防振部材6を備えている。これにより、外部から振動が作用した場合には、ケース本体12の内面とセパレータ3の外周とが直接的に接触する不都合を抑制し、防振部材6が振動を減衰させる。
【0055】
複数の防振部材6は、ケース本体12と複数のセパレータ3の外周との間に備えられている。このため、セパレータ3の積層方向に直交する方向に振動が作用した場合でも、ケース本体12の内面とセパレータ3の外周との当接による破損を防止し、振動の減衰により、複数のセパレータ3の位置関係を変化させる不都合を招くことがない。
【0056】
圧縮コイルバネ7は、複数のセパレータ3を軽く接触させる程度の付勢力を作用させるため、付勢力に耐えるようにケースCの強度を高める必要がない。また、加圧空気が供給されない状況において、外部から振動が作用した場合でも、圧縮コイルバネ7の付勢力により複数のセパレータ3の分離を抑制する。
【0057】
ケースCと加湿ユニットHと寸法誤差を吸収可能な構成であるため、蓋体13に対し、加湿ユニットHがシール5を挟む形態で接着固定される際にも、接着精度を高くする必要がない。
【0058】
加湿ユニットHの複数のセパレータ3の一部を切り欠いた形状となる切欠部3Xを形成し、この切欠部3Xに第1ポート13a(流入ポート)から加圧された乾燥空気を供給することにより、切欠部3Xを加圧のための空気の供給と、乾燥空気の供給とに兼用し、加湿器10の小型化が可能となる。
【0059】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0060】
(a)圧縮コイルバネ7に代えて、ゴムや柔軟に変形する樹脂等の防振部材を用いる。また、この防振部材と、圧縮コイルバネ7とを併せて用いることも考えられる。
【0061】
(b)防振部材6は、全てのセパレータ3に接触させる必要はなく、例えば、複数のセパレータ3の一部に接触させるように配置することが可能である。また、防振部材6を、エンドプレート4にだけ接触させるように構成することも可能である。
【0062】
つまり、複数のセパレータ3は、積層状態で互い接触する状態にある。このため、積層方向に交差する方向に外力が作用した場合でも、積層方向で隣り合うセパレータ3の間に作用する保持力(摩擦力または接着力)によって、これらの位置関係が容易に変化することはない。このような理由から、別実施形態(b)のように一部のセパレータ3、あるいは、エンドプレート4に作用する外力を減衰させるように防振部材6を配置することも考えられる。尚、複数のセパレータ3の間にはゴムガスケット、接着剤、接着シート等を挟み込むこともあり、これらにより摩擦力や接着力を得ることが可能である。
【0063】
この別実施形態(b)の防振部材6なゴムや樹脂に限るものではなく、バネ板、トーションバネのように金属材料の利用が可能であり、このようなバネ材と、ゴムや樹脂との組み合わせによって防振部材6を構成しても良い。
【0064】
(c)防振部材6として、エンドプレート4の全周と、ケース本体12の内周とに接触するように環状のゴムや樹脂を設けることも考えられる。尚、環状の防振部材6を用いる場合には、第1ポート13aから供給された乾燥空気を、エンドプレート4の背面(蓋体13と反対の面)に供給するため、防振部材6の一部を切り欠いて加圧空気が流通する流路を設けることや、加圧空気が流れる専用の流路をケース本体12の内面や、セパレータ3の外周に形成することが必要となる。
【0065】
(d)セパレータ3に形成される切欠部3Xに代えて、例えば、第1ポート13aから供給された乾燥空気を、乾燥流路3DLに流す貫通孔を形成すると共に、第1ポート13aから供給された乾燥空気を、ケースCの内部空間Sに供給する流通空間を形成する。
【0066】
この別実施形態(d)の具体的な構成として、積層状態にある複数のセパレータ3を貫通する構造の流通空間や、ケース本体12の内面に溝状に形成された流通空間を考えることができる。
【0067】
尚、上記した実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、燃料電池のカソード側のガスを加湿する加湿器に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
3 セパレータ
3X 切欠部(空間)
4 エンドプレート
6 防振部材
10 加湿器
12 ケース本体
13 蓋体
13a 第1ポート(流入ポート)
13b 第2ポート(流出ポート)
C ケース
H 加湿ユニット
S 内部空間(空間)
FC 燃料電池