(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143081
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】荷室における防水構造
(51)【国際特許分類】
B60J 7/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B60J7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055575
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 秀幸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】跳ね上げ式ドアを採用する荷室内への雨水の侵入を抑制できる荷室における防水構造を提供する。
【解決手段】荷室3をなす箱体3に形成された開口部4と、開口部4の上部側において、箱体3の幅方向に設けたヒンジ部5と、開口部4周縁において幅方向両側に立設された立設枠6,6と、開口部4の周縁上部において幅方向に設けられたウェザーストリップ7と、ウェザーストリップ7よりも箱体3の外側に配置され、ヒンジ部5を介して上下に開閉可能に設けた跳ね上げ式ドア8と、を有する防水構造1であり、開口部4の幅方向に沿って延びるように形成されると共に、ヒンジ部5の下方側、及び互いのヒンジ部5の間を覆うカバー部材10を有し、カバー部材10は、両端側が立設枠6,6に向けて、開口部4の幅方向に沿って延長されており、カバー部材10の延長端14A及び立設枠6の間に隙間dが設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室をなす箱体の複数の側面のうちの少なくとも1つに形成された開口部と、
前記開口部の上部側において、前記箱体の幅方向に沿って設けられた少なくとも1つのヒンジ部と、
前記開口部の周縁において幅方向両側に立設された一対の立設枠と、
前記開口部の周縁上部において幅方向に沿って延びるように設けられたウェザーストリップと、
前記ウェザーストリップよりも前記箱体の外側に配置され、前記ヒンジ部を介して上下方向に開閉可能に設けられた跳ね上げ式ドアと、
を有する荷室における防水構造であって、
前記開口部の幅方向に沿って延びるように形成されると共に、前記ヒンジ部の下方側、及び互いの前記ヒンジ部の間を覆うカバー部材を有しており、
前記カバー部材は、両端側が、前記立設枠に向けて、前記開口部の幅方向に沿って延長されており、
前記カバー部材の延長端及び前記立設枠の間に所定の隙間が設けられていること、を特徴とする荷室における防水構造。
【請求項2】
前記カバー部材が、耐水性及び可撓性を有する素材で形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の荷室における防水構造。
【請求項3】
前記カバー部材が、前記開口部の幅方向に沿って谷折り形成された折り目を有していること、を特徴とする請求項1又は2に記載の荷室における防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室における防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等における荷室に、跳ね上げ式ドアや観音式ドア等が設けられている。前記のような、荷室は、雨天時にドアを開けた際に、雨水が荷室内に侵入しないよう、庇等の雨除けが設けられることがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の雨除け庇は、別途に板体を設ける必要があり、前記板体を収容するスペースも必要とする問題がある。そのため、別途に板体や収容スペースを設けることなく、防水することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者らは、
図5に示すように、トラック等の車両80においては、荷室84の後部に跳ね上げ式ドア86(単に、ドア86とも称する)を設けた構成とすることについて検討した。前記のような跳ね上げ式ドア86を採用した車両80では、ドア86の上面を流れた水81が、互いのヒンジ部82の間やヒンジ部82から流れ落ちないように、ヒンジ部82の間やヒンジ部82の下方側にカバー部材87が設けられる。
【0006】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討したところ、上述した車両80では、水81がカバー部材87の幅方向両端(両端に位置するヒンジ部82,82における幅方向外側)の隙間83,83から、下方に流れ落ちて荷室84の内部に降り注ぐ可能性があるとの知見に至った。すなわち、ドア86の上面を流れた水81が、特にドア86の幅方向両端の隙間83,83から、勢い良く流れ落ちることがあり得るとの知見に至った。これにより、本発明者らは、跳ね上げ式ドアを採用する荷室においては、上述した課題を解決する防水構造を備えたものとすることが好ましいとの知見を得た。
【0007】
そこで、本発明は、跳ね上げ式ドアを採用する荷室において、荷室内への水の侵入を抑制できる荷室における防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の荷室における防水構造は、荷室をなす箱体の複数の側面のうちの少なくとも1つに形成された開口部と、前記開口部の上部側において、前記箱体の幅方向に沿って設けられた少なくとも1つのヒンジ部と、前記開口部の周縁において幅方向両側に立設された一対の立設枠と、前記開口部の周縁上部において幅方向に沿って延びるように設けられたウェザーストリップと、前記ウェザーストリップよりも前記箱体の外側に配置され、前記ヒンジ部を介して上下方向に開閉可能に設けられた跳ね上げ式ドアと、を有する荷室における防水構造であって、前記開口部の幅方向に沿って延びるように形成されると共に、前記ヒンジ部の下方側、及び互いの前記ヒンジ部の間を覆うカバー部材を有しており、前記カバー部材は、両端側が、前記立設枠に向けて、前記開口部の幅方向に沿って延長されており、前記カバー部材の延長端及び前記立設枠の間に所定の隙間が設けられていること、を特徴とする荷室における防水構造。
を特徴とするものである。
【0009】
上述した荷室における防水構造(以下、単に「防水構造」とも称する)は、前記開口部の幅方向に沿って延びるように形成されると共に、ヒンジ部の下方側、及び互いのヒンジ部の間を覆うカバー部材を有しており、前記カバー部材は、両端側が、立設枠に向けて、前記開口部の幅方向に沿って延長されている。これにより、上述した防水構造は、跳ね上げ式ドア(以下、単に「ドア」とも称する)を開けた状態において、ドア表面を伝って流れ落ちる水(例えば、雨水)が、ヒンジ部の下方側や互いのヒンジ部の間から、下方に落下することを抑制できる。また、カバー部材がヒンジ部の下方側に設けられているので、ドアを閉じた際に、カバー部材がドアと開口部周縁との空間に収容される。したがって、上述した防水構造は、ドアを閉じた際に、カバー部材が、外部に露出することを抑制できる。そのため、上述した防水構造は、外観の見栄えを損なうことを抑制できる。
【0010】
(2)上述した本発明の荷室における防水構造は、前記カバー部材が、耐水性及び可撓性を有する素材で形成されていること、を特徴とするとよい。
【0011】
上述した荷室における防水構造は、かかる構成とすることにより、ドアを閉じたときは、カバー部材が、湾曲又は屈曲して開口部の外周部分に収容され、ドアを開けたときは、カバー部材が、元の状態に復原する。そのため、上述した防水構造は、カバー部材が、開口部等と干渉することを抑制でき、カバー部材を収容するスペースを別途に設ける必要がない。
【0012】
(3)上述した本発明の荷室における防水構造は、前記カバー部材が、前記開口部の幅方向に沿って谷折り形成された折り目を有していること、を特徴とするとよい。
【0013】
上述した荷室における防水構造は、かかる構成とすることにより、カバー部材における開口部(荷室)の幅方向への剛性を高めることができる。また、上述した防水構造は、カバー部材の折り目に沿って水路が形成されるので、水を立設枠方向に排水できる。
【0014】
(4)上述した本発明の荷室における防水構造は、前記カバー部材における少なくとも上面側が、疎水性を呈するように形成されており、前記立設枠は、表面が親水性を呈するように形成されていること、を特徴とするとよい。
【0015】
上述した荷室における防水構造は、かかる構成とすることにより、カバー部材上の水をスムーズに立設枠に向けて排水できると共に、排水された水を立設枠の表面で受け止めることができる。これにより、上述した防水構造は、立設枠の表面で水が跳ねて飛散することを抑制できるので、荷室内への水の侵入を抑制できる。
【0016】
(5)上述した本発明の荷室における防水構造は、前記隙間が、3mm以下に形成されていること、を特徴とするとよい。
【0017】
上述した荷室における防水構造は、かかる構成とすることにより、カバー部材における延長端を立設枠に近接させることができる。また、上述した防水構造は、カバー部材の延長端及び立設枠の間の隙間が3mm以下に形成されているので、カバー部材の延長端から流れ出す水が、表面張力によって、立設枠に引き寄せられる。そのため、上述した防水構造は、カバー部材を通じて排水される水を確実に立設枠に伝わらせることができる。これにより、上述した防水構造は、水が荷室内に侵入することを抑制できる。
【0018】
(6)上述した本発明の荷室における防水構造は、前記箱体が、車両に対して、着脱可能又は着脱不能に搭載されるものであること、を特徴とするとよい。
【0019】
上述した荷室における防水構造は、かかる構成とすることにより、荷室に跳ね上げ式ドアを採用するトラック、バン等の車両やハッチバック式の車両等の各種の車両に適用できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、跳ね上げ式ドアを採用する荷室において、荷室内への水の侵入を抑制できる荷室における防水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防水構造の一部切欠き斜視図である。
【
図3】(a)は、本発明の一実施形態に係る防水構造を構成するカバー部材の平面図であり、(b)は、(a)のA-A方向断面矢視図である。
【
図4】(a)は、本発明の一実施形態に係る防水構造の左方向断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る防水構造の一部切欠き平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態に係る荷室3における防水構造1(以下、単に「防水構造1」とも称する)の詳細を説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。また、
図4(a)においては、断面部分のハッチングを一部省略している。また、本実施形態では、防水構造1が、トラック2(車両2)における荷室3(箱体3とも称する)に採用されている場合を例として説明する。
【0023】
図1に示すように、トラック2(一部省略)の後部には、荷室3をなす箱体3が搭載されている。なお、荷室3は、トラック2の荷台上に着脱不能に搭載されているもの、又は、着脱可能に搭載されているもののいずれであってもよい。箱体3は、例えば、直方体形状に形成されており、底面3B、天井面3T、左側面3L、右側面3R、及び前面(図示せず)を有している。箱体3の後面は、本実施形態では、後述する跳ね上げ式ドア8により形成されている。なお、これらの各面は、箱体3(荷室3)をトラック2に対して、着脱不能とする場合は、トラック2側の部材(例えば、荷台)と共用してもよい。防水構造1は、上述した荷室3における後部に搭載されている。以下では、まず、防水構造1の一部を構成する荷室3について説明し、その後、防水構造1を構成するカバー部材10の詳細について説明する。
【0024】
荷室3は、4つの側面のうちの後部に形成された開口部4と、開口部4の上部側に設けられた3つのヒンジ部5L,5M,5Rと、開口部4の幅方向両側に立設された一対の立設枠6,6と、を備えている。また、荷室3は、前記の他、開口部4の周縁上部に設けられたウェザーストリップ7(
図4(a)参照)と、跳ね上げ式ドア8等を備えている。
【0025】
開口部4は、荷室3の後部において、略矩形状に開口されている。荷室3は、開口部4を通じて、荷物等の収容及び取り出しが許容されている。本実施形態では、
図4(a)に示すように、開口部4の上部開口縁の上方側に空間4Aが形成されている。
【0026】
3つのヒンジ部5L,5M,5R(以下、特に区別する必要がない場合は、単に「ヒンジ部5」とも称する)は、
図1に示すように、開口部4の上部側において、箱体3(荷室3)の幅方向(車幅方向)に沿って設けられている。本実施形態では、荷室3の幅方向両端側に一対のヒンジ部5L,5Rが配されており、荷室3の中央にヒンジ部5Mが配されている。ヒンジ部5は、
図4(b)に示すように、一端側が荷室3の天井面3Tにおける横枠21の下面側にボルトやリベット、あるいは接着剤等で締結されている。また、ヒンジ部5の他端側は、後述する跳ね上げ式ドア8の上端側にボルトやリベット、あるいは接着剤等で締結されている。
【0027】
図1に示すように、立設枠6,6は、開口部4の周縁において、幅方向両側に立設されている。言い換えると、立設枠6,6は、荷室3における後部ピラーに相当するものであり、荷室3を支持している。立設枠6,6は、例えば、鉄、アルミニウム等の金属や繊維強化樹脂等を素材として形成されている。また、詳細は後述するが、立設枠6,6が、疎水性の素材で形成されている場合は、表面に親水性の塗装等が施され、表面が親水性を呈するように形成することが望ましい。
【0028】
ウェザーストリップ7(
図4(a)参照)は、開口部4の周縁上部において幅方向に沿って延びるように設けられている。本実施形態では、ウェザーストリップ7が開口部4の外周縁を取り囲むように設けられている。ウェザーストリップ7は、防水性のゴムや樹脂等で形成されており、水(例えば、雨水)の排水路を形成している。したがって、ウェザーストリップ7は、ドア8及び荷室3の間から侵入する水が開口部4から侵入しないよう、前記排水路を通じて、荷室3の外部に排出することができる。
【0029】
跳ね上げ式ドア8(ドア8とも称する)は、略矩形状の板状部材で形成されている。ドア8は、鉄やアルミニウム等の金属や繊維強化樹脂等を素材として形成されている。ドア8は、ウェザーストリップ7よりも箱体3(荷室3)の外側に配置(
図4(a)参照)されており、ヒンジ部5を介して上下方向に開閉することができる。また、ドア8は、
図1に示すように、適宜のダンパー20,20により、開放した状態で、保持することができる。
【0030】
以上が、本発明の一実施形態に係る防水構造1の一部を構成する荷室3の構成であり、次に、本発明の防水構造1を構成するカバー部材10の詳細について説明する。
【0031】
図3(a)は、カバー部材10単体(荷室3及びドア8から取り外した状態)の平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のA-A方向矢視断面図である。
図3(a)に示すように、カバー部材10は、開口部4の幅方向(荷室幅方向)に沿って延びるように形成されており、幅方向に長尺な略矩形状のシート材として形成されている。また、カバー部材10は、可撓性のあるシート材(例えば、ゴム、軟質塩化ビニール樹脂等)として形成されている。すなわち、カバー部材10は、耐水性及び可撓性を有する素材で形成されている。また、カバー部材10は、少なくとも上面側が、疎水性を呈するように形成されている。なお、カバー部材10が親水性での素材で形成されている場合は、塗装等により表面に疎水性の被膜等を形成してもよい。
【0032】
カバー部材10は、カバー本体11と、カバー部材10を荷室3に取り付けるための荷室側取り付け代12と、カバー部材10をドア8に取り付けるためのドア側取り付け代13と、カバー延長部14等を備えている。
【0033】
カバー本体11は、幅方向に延びるように形成されており、幅方向両端側に設けられた一対のヒンジ部5L,5Rの間及びヒンジ部5L,5Rの下方側を覆う長さに形成されている。また、カバー本体11には、短手方向の中間において、開口部4の幅方向に沿って谷折り形成された折り目11A(
図3(b)参照)が形成されている。そのため、上述した防水構造1は、カバー部材10における開口部4(荷室3)の幅方向への剛性を高めることができる。また、上述した防水構造1は、カバー部材10の折り目11Aに沿って水路が形成されるので、当該水路を通じて、水を立設枠6,6方向に排水できる。
【0034】
荷室側取り付け代12は、一端側が幅方向に沿って折り曲げられることにより、幅方向に延びるように形成されている。また、ドア側取り付け代13は、他端側が幅方向に沿って折り曲げられることにより、幅方向に延びるように形成されている。荷室側取り付け代12は、
図4(a)に示すように、荷室3の天井面3Tにおける横枠21の下面側に取り付けられている。また、ドア側取り付け代13は、ドア8の上端に取り付けられている。すなわち、カバー部材10は、ヒンジ部5L,5M,5Rの下方側に位置し、ヒンジ部5L,5M,5Rの間及びヒンジ部5L,5M,5Rの下面側を覆うものとされている。
【0035】
カバー延長部14は、
図1及び
図2に示すように、カバー本体11における長手方向(開口部の幅方向)に沿う両端側に形成されている。より具体的には、カバー延長部14は、立設枠6,6に向けて、開口部4の幅方向に沿って延長形成されている。言い換えると、カバー延長部14は、両端側が、ヒンジ部5L,5Rから立設枠6,6に向けて突出形成されている。また、カバー延長部14は、延長端14A及び立設枠6の間に所定の隙間dが設けられている。ここで、隙間dは、例えば、3mm以下に形成されている。
【0036】
したがって上述した防水構造1は、カバー部材10における延長端14Aを立設枠6に近接させることができる。また、上述した防水構造1は、カバー延長部14(カバー部材10)の延長端14A及び立設枠6の間の隙間dが3mm以下に形成されているので、カバー部材10の延長端14Aから流れ出す水が、表面張力によって、立設枠6に引き寄せられる。そのため、上述した防水構造1は、カバー部材10を通じて排水される水を確実に立設枠6に伝わらせることができる。これにより、上述した防水構造1は、水が荷室3内に侵入することを抑制できる。ここで、立設枠6は、表面が親水性を呈するように
形成されていることが望ましい。これにより、カバー延長部14を通じて排出された水が、立設枠6側に引き寄せられやすくなる。ここで、立設枠6は、表面が親水性を呈するように形成されているとよい。これにより、カバー部材10の延長端14Aから排水された水が、より一層、立設枠6に引き寄せられやすくなるので、荷室3内への水の侵入が確実に抑制される。
【0037】
以上が、本発明の一実施形態に係る荷室3における防水構造1の構成であり、次に荷室3における防水構造1の作用効果について以下に説明する。
【0038】
上述した防水構造1は、開口部4の幅方向に沿って延びるように形成されると共に、ヒンジ部5の下方側、及び互いのヒンジ部5の間を覆うカバー部材10を有しており、カバー部材10は、両端側が、立設枠6に向けて、開口部4の幅方向に沿って延長されている。これにより、上述した防水構造1は、ドア8を開けた状態において、ドア8の表面を伝って流れ落ちる水(例えば、雨水)が、ヒンジ部5の下方側や互いのヒンジ部5の間から、下方に落下することを抑制できる。また、カバー部材10がヒンジ部5の下方側に設けられているので、ドア8を閉じた際に、カバー部材10がドア8と開口部4周縁との空間に収容される。したがって、上述した防水構造1は、ドア8を閉じた際に、カバー部材10が、外部に露出することを抑制できる。そのため、上述した防水構造1は、外観の見栄えを損なうことを抑制できる。
【0039】
また、上述した防水構造1は、カバー部材10が、耐水性及び可撓性を有する素材で形成されていることにより、ドアを閉じたときは、カバー部材が、湾曲又は屈曲して開口部の外周部分に収容され、ドアを開けたときは、カバー部材が、元の状態に復原する。そのため、上述した防水構造1は、カバー部材10が、開口部4等と干渉することを抑制でき、カバー部材10を収容するスペースを別途に設ける必要がない。
【0040】
また、上述した防水構造1は、カバー部材10における少なくとも上面側が、疎水性を呈するように形成されており、立設枠6は、表面が親水性を呈するように形成されている。したがって、上述した防水構造1は、カバー部材10上の水をスムーズに立設枠6に向けて排水できると共に、排水された水を立設枠6の表面で受け止めることができる。これにより、上述した防水構造1は、立設枠6の表面で水が跳ねて飛散することを抑制できるので、荷室3内への水の侵入を抑制できる。
【0041】
また、上述したように、防水構造1は、箱体3(荷室3)が、トラック2に対して、着脱可能又は着脱不能に搭載できるように構成されている。そのため、上述した防水構造1は、荷室3に跳ね上げ式ドア8を採用するトラック、バン等の車両やハッチバック式の車両等の各種の車両に適用できる。
【0042】
以上が、本発明の一実施形態に係る荷室3における防水構造1の構成及び作用効果であるが、本発明の荷室3における防水構造1は、上述した実施形態には限定されず、各種の変形を行うことができる。
【0043】
本実施形態では、防水構造1が、荷室3後方側のバックドアに採用されたものを例示したが、これには限定されず、防水構造1は、例えば、荷室3の側面3L,3Rなど、各種の面に採用された跳ね上げ式ドア8に利用できる。また、本実施形態では、防水構造1が、荷室3後方側のバックドアにのみ、単一で設けられている場合を例示したが、例えば、側面3L,3R等に跳ね上げ式ドア8が複数設けられている場合は、防水構造1が複数のドア8に対して設けられていてもよい。また、箱体3(荷室3)は、各種の形状や大きさのものが利用できる。また、箱体3の各面は、車両2の荷台等、他の部材を利用するものでもよい。
【0044】
また、本実施形態では、ヒンジ部5が、3個設けられている場合を例示したが、ヒンジ部5は、単一のものや、複数のものなど、各種の個数のものを採用できる。例えば、ヒンジ部5が単一のものである場合は、幅方向に長尺なヒンジ部5を利用すればよい。また、ヒンジ部5の形状や大きさも各種のものが利用できる。また、立設枠6,6の形状や大きさも、荷室3の形状や大きさに応じて、各種の形状や大きさの立設枠6,6が利用できる。また、本実施形態では、立設枠6,6の表面が親水性を呈するように形成されているが、これには、限定されず、立設枠6,6の表面は、必要に応じて親水性を呈するように形成すればよい。また、立設枠6,6の表面を親水性化する場合は、例えば、親水性の塗装など、各種の手段を用いて親水性化することができる。
【0045】
また、ウェザーストリップ7の材質、形状、大きさは、各種のものが利用できる。また、跳ね上げ式ドア8は、ウェザーストリップ7よりも箱体3の外側に配置される各種の形状や大きさのものが利用できる。また、カバー部材10は、複数のヒンジ部5が設けられる場合は、複数のヒンジ部5の間を覆うと共に、各ヒンジ部5そのものの隙間を覆うことができる長さに形成するとよい。また、カバー部材10は、ヒンジ部5が単一のものである場合は、ヒンジ部5そのものを覆う長さに形成するとよい。
【0046】
また、本実施形態では、カバー部材10の延長端14A(カバー延長部14)及び立設枠6の間の隙間が、3mm以下に形成されているが、本発明の防水構造1は、これには限定されない。例えば、前記隙間は、立設枠6の表面の組成や車両2の形状等に応じて、防水性を損なわない範囲で、各種の間隔に設定することができる。すなわち、カバー部材10における幅方向両側(カバー延長部14)における延長量は、立設枠6の表面の組成や車両2の形状等に応じて、防水性を損なわない範囲で、各種の延長量とすることができる。
【0047】
本実施形態では、カバー部材10が、耐水性及び可撓性を有する素材で形成されているが、カバー部材10は、本発明の目的を損なわない範囲で各種の素材を採用することができる。例えば、可撓性の度合いは、荷室3及びドア8の取り付け形状や間隔、あるいは、ドア8と閉じた際の収容状態等に応じて、各種の度合いに設定できる。また、本実施形態では、カバー部材10が、開口部4の幅方向に沿って谷折り形成された折り目11Aを有しているが、折り目11Aは、カバー部材10の剛性等に応じて設ければよく、折り目11Aを設けない構成とすることもできる。
【0048】
本実施形態では、カバー部材10における少なくとも上面側が、疎水性を呈するように形成されており、立設枠6の表面が親水性を呈するように形成されているが、これには限定されず、カバー部材10は、防水性を発揮できる各種の素材を利用することができる。
【0049】
以上が、本発明に係る荷室における防水構造の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の荷室における防水構造は、跳ね上げ式ドアを採用する各種の荷室に利用することができる。また、本発明の荷室における防水構造は、荷室に跳ね上げ式ドアを採用するトラック、バン等の車両やハッチバック式の車両等の各種の車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :防水構造
2 :車両(トラック)
3 :箱体(荷室)
4 :開口部
5 :ヒンジ部
5L:ヒンジ部
5M:ヒンジ部
5R:ヒンジ部
6 :立設枠
7 :ウェザーストリップ
8 :跳ね上げ式ドア(ドア)
10 :カバー部材
11A:折り目
14 :カバー延長部
14A:延長端
d :隙間