(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143082
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20241003BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055577
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚大
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA08
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC06
5H605EC01
5H605EC05
5H605EC20
5H611BB01
5H611BB07
5H611QQ03
5H611TT01
5H611TT06
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】コネクタを適切に組み付け可能な駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置1は、モータ80と、フレーム部材40と、基板20と、コネクタユニット50と、カバー60と、を備える。コネクタユニット50は、ベース部51、ベース部51のモータ80と反対側に設けられるコネクタ部52およびベース部51のモータ80側に設けられる複数の端子保持部53が一体に形成されており、端子保持部53から突出し、弾性接触により基板20と接続されるコネクタ端子55を有する。カバー60は、コネクタユニット50と別体で設けられ、コネクタ部52が外部に露出した状態で、基板20およびコネクタ端子55を内部に収容する。フレーム部材40には、コネクタ端子55と基板20とが接続される端子領域において、基板20側に突出して基板20と当接する荷重受け部461~466が形成されている。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(80)と、
前記モータの軸方向の一方側に設けられるフレーム部材(40)と、
前記フレーム部材の前記モータと反対側に固定される基板(20)と、
ベース部(51)、前記ベース部の前記モータと反対側に設けられるコネクタ部(52)および前記ベース部の前記モータ側に設けられる複数の端子保持部(53)が一体に形成されており、前記端子保持部から突出し、弾性接触により前記基板と接続されるコネクタ端子(55)を有するコネクタユニット(50)と、
前記コネクタユニットとは別体で設けられ、前記コネクタ部が外部に露出した状態で前記基板および前記コネクタ端子を内部に収容するカバー(60)と、
を備え、
前記フレーム部材には、前記コネクタ端子と前記基板とが接続される端子領域において、前記基板側に突出して前記基板と当接する荷重受け部(461~466、71~74)が形成されている駆動装置。
【請求項2】
前記フレーム部材には、固定部材(291~293)により前記基板が固定される基板固定部(491~493)が形成されており、
前記荷重受け部の高さは、前記基板固定部の高さと等しい請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記コネクタ端子の先端側にて、前記基板に挿通される箇所を端子先端部とすると、
前記荷重受け部(461~466)は、それぞれの前記端子先端部の外周に環状に形成される請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記コネクタ端子の先端側にて、前記基板に挿通される箇所を端子先端部とすると、
前記荷重受け部(71、72)は、少なくとも一部が開放された状態にて、複数の前記端子先端部からなる端子群を囲んで設けられる請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記コネクタ端子の先端側にて、前記基板に挿入される箇所を端子先端部とすると、
前記荷重受け部(73、74)は、前記端子先端部に隣接して設けられる請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記コネクタ端子は、径方向に複数列に配列されており、径方向内側の端子は、径方向外側の端子と周方向位置をずらして配置されている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記荷重受け部は、前記コネクタ端子が挿通される前記基板のスルーホールに形成される配線パターンとは離間しており、絶縁層にて前記基板と当接する請求項1に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記カバーは、前記基板の径方向外側にて前記フレーム部材の前記モータと反対側に固定される第1固定部(601)、および、前記コネクタ部の径方向外側にて前記ベース部の前記モータと反対側に固定される第2固定部(611)を有する請求項1に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータと、モータへの通電を制御するコントローラとを組み付けて構成される駆動装置が知られている。例えば特許文献1では、給電用コネクタ端子および信号用コネクタ端子がプレスフィット端子であって、弾性接触により基板に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、コネクタがカバー部材と一体であるため、コネクタと基板とを接続する際、ブラインド状態での組み付けとなる。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コネクタを適切に組み付け可能な駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置は、モータ(80)と、フレーム部材(40)と、基板(20)と、コネクタユニット(50)と、カバー(60)と、を備える。フレーム部材は、モータの軸方向の一方側に設けられる。基板は、フレーム部材のモータと反対側の面に固定される。
【0007】
コネクタユニットは、ベース部(51)、ベース部のモータと反対側に設けられるコネクタ部(52)およびベース部のモータ側に設けられる複数の端子保持部(53)が一体に形成されており、端子保持部から突出し、弾性接触により基板と接続されるコネクタ端子(55)を有する。カバーは、コネクタユニットとは別体で設けられ、コネクタ部が外部に露出した状態で基板およびコネクタ端子を内部に収容する。
【0008】
フレーム部材には、コネクタ端子と基板とが接続される端子領域において、基板側に突出して基板と当接する荷重受け部(461~466、71~74)が形成されている。これにより、コネクタユニットと基板とを適切に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態による電動パワーステアリング装置を示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態による駆動装置を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態による駆動装置を示す平面図である。
【
図7】第1実施形態によるECUを示す斜視図である。
【
図8】第1実施形態によるECUを示す斜視図である。
【
図13】
図9のXIII-XIII線断面図である。
【
図15】第1実施形態によるフレーム部材を示す斜視図である。
【
図16】第1実施形態によるフレーム部材を示す斜視図である。
【
図17】第1実施形態によるフレーム部材の平面図である。
【
図22】第1実施形態による基板にコネクタユニットを組み付けた状態を示す平面図である。
【
図27】第1実施形態によるフレーム部材の基板を組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図28】第1実施形態による基板にコネクタユニットを組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図29】第1実施形態によるフレーム部材を示す平面図である。
【
図30】第1実施形態によるコネクタ端子と基板との接続状態を示す模式図である。
【
図31】第2実施形態によるフレーム部材を示す平面図である。
【
図32】第2実施形態による荷重受け部を説明する平面図である。
【
図33】第2実施形態による荷重受け部を説明する平面図である。
【
図35】第3実施形態による荷重受け部を説明する平面図である。
【
図36】第3実施形態による荷重受け部を説明する平面図である。
【
図37】第4実施形態によるECUを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による駆動装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態を
図1~
図30に示す。駆動装置1は、モータ80と、制御ユニットとしてのECU10と、を備え、車両のステアリング操作を補助するための操舵装置である電動パワーステアリング装置8に適用される。
図1は、電動パワーステアリング装置8を備えるステアリングシステム90の全体構成を示すものである。ステアリングシステム90は、操舵部材であるステアリングホイール91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98、および、電動パワーステアリング装置8等を備える。
【0012】
ステアリングホイール91は、ステアリングシャフト92と接続される。ステアリングシャフト92には、操舵トルクを検出するトルクセンサ93が設けられる。ステアリングシャフト92の先端には、ピニオンギア96が設けられる。ピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には、タイロッド等を介して一対の車輪98が連結される。
【0013】
運転者がステアリングホイール91を回転させると、ステアリングホイール91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によってラック軸97の直線運動に変換される。一対の車輪98は、ラック軸97の変位量に応じた角度に操舵される。
【0014】
電動パワーステアリング装置8は、駆動装置1、および、モータ80の回転を減速してラック軸97に伝える動力伝達部としての減速ギア89等を備える。本実施形態の電動パワーステアリング装置8は、所謂「ラックアシストタイプ」であるが、モータ80の回転をステアリングシャフト92に伝える所謂「コラムアシストタイプ」等としてもよい。
【0015】
モータ80は、3相ブラシレスモータである。モータ80は、操舵に要するトルクの一部または全部を出力するものであって、車両電源5から供給される電力により駆動され、減速ギア89を正逆回転させる。
【0016】
図2~
図6に示すように、駆動装置1は、モータ80の軸方向の一方側にECU10が一体的に設けられており、いわゆる「機電一体型」である。ECU10は、モータ80の出力軸とは反対側において、シャフト870の軸Axに対して同軸に配置されている。ここで、「同軸」とは、例えば組み付けや設計に係る誤差やズレは許容されるものとする。以下、モータ80の軸方向を駆動装置1の軸方向とみなし、単に「軸方向」とする。「径方向」、「周方向」についても同様である。
【0017】
モータ80は、モータケース830、ステータ860、ロータ865、および、モータ巻線880等を有する。モータケース830は、底部831および筒部832からなる略有底筒状に形成され、開口がECU10側となるように設けられている。底部831には、軸受871が設けられる。筒部832には、ステータ860が固定される。モータケース830の開口側には、フレーム部材40が圧入固定される。
【0018】
ステータ860は、モータケース830に固定されており、モータ巻線880が巻回される。モータ巻線880は、2組の3相巻線から構成されている。以下、それぞれの巻線組に対応する通電制御に係る構成単位を「系統」とする。ロータ865は、ステータ860の径方向内側に設けられ、ステータ860に対して相対回転可能に設けられる。
【0019】
シャフト870は、ロータ865に嵌入され、ロータ865と一体に回転する。シャフト870は、軸受871、872により、モータケース830およびフレーム部材40に回転可能に支持される。ECU10によりモータ巻線880への通電が制御されることで、ステータ860に回転磁界が形成される。ロータ856は、ステータ860に形成される回転磁界により、シャフト870を軸として回転する。
【0020】
シャフト870のECU10側の端部は、フレーム部材40に形成される軸孔409に挿通され、ECU10側に露出する。シャフト870のECU10側の端部には、マグネット875が設けられる。フレーム部材40には、リード線挿通孔401が形成され、モータ巻線880の各相と接続されるリード線881がECU10側に取り出される。
【0021】
図7~
図13に示すように、ECU10は、基板20、コネクタユニット50、および、カバー60等を有する。基板20は、複数(本実施形態では3)のねじ等である固定部材291~293によりフレーム部材40に固定される。基板20には、モータ80の駆動制御に係るインバータを構成するスイッチング素子、マイコンやASIC、コンデンサ等の電子部品が実装される。
【0022】
基板20のフレーム部材40側の面には、スイッチング素子、および、回転角センサ等が実装される。スイッチング素子等は、ヒートシンク45に放熱可能に設けられている。回転角センサは、マグネット875と対向する箇所に設けられ、マグネット875の回転磁界を検出することで、モータ80の回転を検出する。アルミ電解コンデンサ等の比較的大型の部品は、基板20のフレーム部材40と反対側の面に実装されている。
【0023】
図15~
図21に示すように、フレーム部材40は、例えばアルミ合金等の金属で形成され、モータケース830の開口を塞ぐように設けられている。フレーム部材40は、軸方向視円形に形成されており、モータ80の反対側の面には、外縁に沿ってシール溝43が形成されている。また、フレーム部材40のモータ80と反対側の面には、ヒートシンク45、荷重受け部461~466、および、基板固定部491~493が設けられている。荷重受け部461~466等の詳細は後述する。
【0024】
図22~
図25に示すように、コネクタユニット50は、ベース部51、コネクタ部52、端子保持部53、および、コネクタ端子55等を有する。
図22~
図25は、ECU10のカバー60を外した状態を示している。ベース部51、コネクタ部52および端子保持部53は、樹脂等で一体に形成されている。
【0025】
ベース部51は、略円板状に形成されている。ベース部51のモータ80と反対側の面には、コネクタ部52の径方向外側であって、外縁に沿うようにシール溝511が形成されている。コネクタ部52は、ベース部51からモータ80と反対方向に突出して設けられている。コネクタ部52は、間口が軸方向外側を向いて形成されており、図示しないハーネスを挿抜可能に設けられている。
【0026】
コネクタ部52には、車両系コネクタ521、522、および、トルクセンサ93と接続される信号系コネクタ523、524が含まれ、それぞれ系統毎に設けられている。本実施形態では、車両系コネクタ521、522と、信号系コネクタ523とで、間口が異なるコネクタとして構成されている。
【0027】
車両系コネクタ521、522は、車両電源5および車両通信網6と接続される(
図1参照)。すなわち本実施形態の車両系コネクタ521、522は、電源およびグランドと接続されるパワー系コネクタと、車両通信網6と接続される通信系コネクタとが一体になった一体型のハイブリッドコネクタである。本実施形態の車両通信網6は、CAN(Controller Area Network)であるが、CAN以外のものであってもよい。
図1では、車両通信網6を「CAN」と記載した。
【0028】
端子保持部53は、コネクタ部52よりも径方向外側の領域である外周領域にて、ベース部51からモータ80側に突出して設けられ、内部にコネクタ端子55がモールドされている。端子保持部53の先端からは、コネクタ端子55が突出している。なお、基板20上においては、コネクタ部52を軸方向に投影した投影領域の外側を外周領域とする。
【0029】
端子保持部53には、電源端子保持部531、グランド端子保持部533、534、および、信号端子保持部535、536が含まれる。電源端子保持部531は、2系統分がまとめて1つ設けられている。グランド端子保持部533、534および信号端子保持部535、536は、系統毎に設けられている。
【0030】
コネクタ端子55には、電源端子551、552、グランド端子553、554、信号端子555、556が含まれる。電源端子551、552は車両電源5と接続され、グランド端子553、554は車両グランドと接続される。信号端子555、556には、車両通信網6と接続される端子、および、トルクセンサ93と接続される端子が含まれる。
【0031】
電源端子551、552は、一方の端部がそれぞれ車両系コネクタ521、522に設けられ、中間部がベース部51および電源端子保持部531に埋設され、先端側が電源端子保持部531から突出して設けられている。
【0032】
グランド端子553は、一方の端部が車両系コネクタ521に設けられ、中間部がベース部51およびグランド端子保持部533に埋設され、先端側がグランド端子保持部533から突出して設けられている。グランド端子554は、一方の端部が車両系コネクタ522に設けられ、中間部がベース部51およびグランド端子保持部534に埋設され、先端側がグランド端子保持部534から突出して設けられている。
【0033】
信号端子555は、一方の端部が車両系コネクタ521または信号系コネクタ523に設けられ、中間部がベース部51および信号端子保持部535に埋設され、先端側が信号端子保持部535から突出して設けられている。信号端子556は、一方の端部が車両系コネクタ522または信号系コネクタ524に設けられ、中間部がベース部51および信号端子保持部536に埋設され、先端側が信号端子保持部536から突出して設けられている。
【0034】
電源端子保持部531およびグランド端子保持部533、534は、車両系コネクタ521、522側の外周領域に比較的まとまって設けられている。グランド端子保持部533、534は、電源端子保持部531を挟んで両側に設けられている。
【0035】
電源端子551、552は、1つの固定部材291の径方向内側の領域にて基板20と接続する。グランド端子553、554は、固定部材291の両側に設けられている。すなわち、電源端子551、552およびグランド端子553、554は、固定部材291を囲むように基板20と接続している。また、電源端子551、552およびグランド端子553、554は、径方向外側から見て横並びに配置されている。
【0036】
信号端子保持部535、536は、信号系コネクタ523、524側の外周領域に離間して設けられている。信号端子555、556には、トルクセンサ93と接続されるトルク信号端子、および、車両通信網6と接続される通信端子が含まれる。信号端子555は固定部材292と周方向にて隣接して配列されており、信号端子556は固定部材293と周方向にて隣接して配列されている。信号端子555、556は、最外周側に7本、その内側に6本の径方向2列に設けられているが、端子数や配列は、信号数等に応じて任意に設計可能である。
【0037】
端子551~556の先端は、弾性変形可能な環状に形成されており、プレスフィット接続により基板20と接続される(
図26参照)。
図26では、信号端子556を例示したが、他の端子551~555の先端も同様の形状に形成されている。
【0038】
電源端子551、552は、電源端子保持部531から露出する基部側が幅広の平板状に形成されており、先端側は複数(本実施形態では2)に分岐している(
図25等参照)。同様に、グランド端子553、554は、グランド端子保持部533、534から露出する基部側が幅広の平板状に形成されており、先端側が複数に分岐している。プレスフィット接続の場合、接続部を弾性変形させるべく、端子を比較的細く形成する必要がある反面、端子が細いと大電流の通電が困難となる。そこで、端子551~554の先端側を複数に分岐させることで、プレスフィット接続と大電流の通電を両立させている。
【0039】
電源端子551、552およびグランド端子553、554が接続される領域をパワー端子領域Rp、信号端子555が接続される領域を信号端子領域Rs1、信号端子556が接続される領域を信号端子領域Rs2とすると、領域Rp、Rs1、Rs2は、外周領域に離間して分散配置されている。本実施形態では、端子領域を3箇所に分散配置することで、ねじ等の固定部材を用いず、端子551~556のプレスフィット接続のみにてコネクタユニット50を基板20に保持している。
【0040】
本実施形態では、基板20のモータ80と反対側の面にアルミ電解コンデンサ等の比較的大型の部品が実装されており、基板20とベース部51とが実装される電子部品の高さに応じて離間して設けられている。そのため、端子保持部531~536の軸方向長さは、端子551~556が座屈せず、コネクタユニット50の荷重を保持可能な大きさに設けられている。本実施形態では、端子保持部531~536の軸方向長さは、基板20とベース部51との長さの1/2以上となっている。
【0041】
図17~
図21および
図29に示すように、フレーム部材40のフレーム部41のモータ80と反対側の面には、端子551~556のプレスフィット荷重を受ける荷重受け部461~466が突出して形成され、頂面にて基板20と当接する。荷重受け部461~466は、各端子の先端が挿入される筒状に形成されている。
【0042】
荷重受け部461~466の高さH1は、ヒートシンク45よりも高く、基板固定部491~493の高さH2と等しい(
図18~
図21参照)。ここで、フレーム部材40のモータ80と反対側の面において、ヒートシンク45等が形成されていない箇所を基準面としたときの軸方向長さを高さとし、「高さが等しい」とは、荷重受け部461~466にてプレスフィット時の荷重を受けることができる程度の誤差は許容されるものとする。後述の実施形態についても同様である。
【0043】
荷重受け部461~464は、端子領域Rpにて基板20と当接する。荷重受け部461、462は、それぞれ電源端子551、552と基板20との接続箇所に設けられており、分岐した先端部に対応する2つの筒部が連なって形成されている。荷重受け部463、464は、それぞれグランド端子553、554と基板20との接続箇所に設けられており、荷重受け部461、462と同様、分岐した先端部に対応する2つの筒部が連なって形成されている。
【0044】
荷重受け部465は端子領域Rs1にて基板20と当接し、荷重受け部66は端子領域Rs2にて基板20と当接する。荷重受け部465は、それぞれの信号端子555に対応する筒部が連なって形成されている。荷重受け部466は、それぞれの信号端子556に対応する筒部が連なって形成されている。
【0045】
荷重受け部461~465と基板20の配線パターンとの関係を
図30に示す。
図30は、基板20が6層基板であって、電源端子551および荷重受け部461を例として記載した。荷重受け部461は、端子551が挿通されるスルーホールの配線パターン21から絶縁ギャップG(例えば0.5mm)以上離間した箇所に設けられている。また、基板20において、紙面上側を第1層、下側を第N層(6層基板であればN=6)とすると、荷重受け部461が形成される位置において、第N層には配線パターンを設けず、基板20は、レジスト層にて荷重受け部461と当接する。また、端子551と接続される配線パターンは、第1層~第(N-1)層に形成する。これにより、端子551と荷重受け部461との絶縁を確保することができる。
【0046】
なお、グランド端子553、554に対応する荷重受け部463、464と基板20との当接箇所には、第N層にグランドパターンが形成され、グランドパターンと荷重受け部463、464とが当接するようにしてもよい。
【0047】
図2~
図13に示すように、カバー60は、例えばアルミ等で略筒状に形成されている。カバー60の軸方向の一端側には、フレーム部41のシール溝43に嵌まり合う挿入部601が形成されている。カバー60には、シール溝43の径方向外側と対向する箇所に、フランジ部602が形成されている。また、
図14に示すように、カバー60には、シール溝43の径方向内側にてフレーム部材40と当接する着座部605を設けてもよい。
【0048】
図13に戻り、カバー60の軸方向の他端側には径方向内側に折り曲げられる環状部61が形成されている。環状部61の先端には、挿入部611が形成される。挿入部611は、コネクタユニット50のベース部51のシール溝511と嵌まり合う。シール溝43、511に接着材を塗布した状態にてカバー60を被せることで、カバー60と、フレーム部材40およびコネクタユニット50とは、接着材で固定される。
【0049】
例えば特許文献1のように、コネクタとカバーが一体である場合、コネクタと基板との接続部分がブラインドでの組み付けとなるため、端子が基板の端子孔に正しく挿入できたかの検査が困難である。また、コネクタ一体のカバーとモータフレームとの接続に接着材を用いる場合、コネクタと接着材の線膨張率の差があると、コネクタ端子と基板との接続部が、温度変化による膨張収縮の影響を受けるため、端子抜けや摩耗等により接続の信頼性が確保できない虞がある。
【0050】
そこで本実施形態では、コネクタ端子55をカバー60とは別体のコネクタユニット50として樹脂モールドによりASSY化し、フレーム部材40に固定された基板20に、コネクタユニット50を組み付ける。
【0051】
具体的には、
図27に示すように、フレーム部材40に基板20を組み付ける。この状態から、
図28に示すように、端子551~556を基板20にプレスフィット接続することにより、コネクタユニット50を組み付ける。そして、コネクタユニット50が基板20に組み付けられた状態から、カバー60を被せ、フレーム部材40およびコネクタユニット50にカバー60を組み付ける(
図7等)。
【0052】
本実施形態では、コネクタユニット50とカバー60とが別体であるので、
図23等に示すように、コネクタユニット50と基板20との接続を、目視可能な状態で行うことができる。また、コネクタユニット50とカバー60とを別体とすることで、端子551~556と基板20との接続部がコネクタ樹脂に比べて線膨張率が大きい接着材の熱変形の影響をダイレクトに受けないので、接続の信頼性低下を抑えることができる。
【0053】
参考例として、基板とコネクタとをオフラインにて組み付けてからモータ側に組み付ける場合、モータと基板との電気的接続や、基板固定のためのスペースを空けておく必要があり、コネクタを配置可能な面積が狭くなる。これに対し、本実施形態では、基板20をフレーム部材40に組み付けることで、リード線881と基板20との接続を行った後で、コネクタユニット50を基板20に接続可能である。これにより、フレーム部材40への基板20の組み付け、および、モータ80と基板20との接続をコネクタがない状態でできるので、コネクタを配置可能なスペースを広く確保することができる。また、荷重受け部461~466を設けることで、端子挿入荷重による基板20の歪みを抑制するための治具等が不要である。
【0054】
以上説明したように、駆動装置1は、モータ80と、フレーム部材40と、基板20と、コネクタユニット50と、カバー60と、を備える。フレーム部材40は、モータ80の軸方向の一方側に設けられる。基板20は、フレーム部材40のモータ80と反対側に固定される。
【0055】
コネクタユニット50は、ベース部51、ベース部51のモータ80と反対側に設けられるコネクタ部52、および、ベース部51のモータ80側に設けられる複数の端子保持部53が一体に形成されている。コネクタユニット50は、端子保持部53から突出し、弾性接触により基板20と接続されるコネクタ端子55を有する。カバー60は、コネクタユニット50と別体で設けられ、コネクタ部52が外部に露出した状態で、基板20およびコネクタ端子55を内部に収容する。
【0056】
フレーム部材40には、コネクタ端子55と基板20とが接続される端子領域において、基板20側に突出して基板20と当接する荷重受け部461~466が形成されている。詳細には、本実施形態では、コネクタ端子55の先端側にて基板20に挿通されている箇所を端子先端部とすると、荷重受け部461~466は、それぞれの端子先端部の外周に環状に形成されている。
【0057】
本実施形態では、コネクタユニット50とカバー60とが別体であるので、コネクタ端子55と基板20との接続をカバー60にて覆われていない状態にて行うことができ、端子が基板20に正しく挿入されたかどうかの検査が可能である。また、プレスフィット接続時の荷重を受ける荷重受け部461~466が設けられているので、プレスフィット荷重を適切に受けることができる。したがって、コネクタを適切に組み付けることができる。
【0058】
フレーム部材40には、固定部材291により基板20が固定される基板固定部491~493が形成されている。荷重受け部461~465の高さH1は、基板固定部491~493の高さH2と等しい。これにより、荷重受け部461~466にて、適切にプレスフィット荷重を受けることができる。
【0059】
荷重受け部461~466は、コネクタ端子55が挿通される基板20のスルーホールに形成される配線パターンとは離間しており、絶縁層にて基板20と当接する。これにより、コネクタ端子55とフレーム部材40との絶縁を確保することができる。
【0060】
カバー60は、基板20の径方向外側にてフレーム部材40のモータ80と反対側に固定される挿入部601、および、コネクタ部52の径方向外側にてベース部51のモータ80と反対側に固定される挿入部611を有する。これにより、コネクタユニット50を基板20に組み付けた状態にて、モータ80の反対側からカバー60を被せることで、カバー60を適切に組み付けることができる。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態を
図31~
図34に示す。第2実施形態および第3実施形態は、主に荷重受け部が上記実施形態と異なっているので、この点を中心に説明する。
図31には、第1実施形態の
図29に対応しており、切欠線の右側部分は左側部分と略対称であるため、記載および説明を適宜省略する。
【0062】
図31に示すように、フレーム部材40のモータ80と反対側の面には、荷重受け部71、72が突出して設けられている。荷重受け部71、72の高さは、上記実施形態と同様、基板固定部491~493と同じである。荷重受け部71、72は、各端子551~556と絶縁可能な程度(例えば0.5mm)離間して設けられている。
【0063】
図32に示すように、荷重受け部71は、電源端子551の2つの先端部に対して1つ設けられている。詳細には、荷重受け部71は、電源端子551の2つの先端部の径方向内側に設けられる内側壁部711、および、内側壁部711の両端から径方向外側に延びる側壁部712からなり、全体として径方向外側に開口する形状に形成されている。電源端子552およびグランド端子553、554に対しても同様に、2つの先端部に対して1つの荷重受け部71が設けられている。
【0064】
図33に示すように、荷重受け部72は、複数の信号端子555に対して1つ設けられている。詳細には、荷重受け部72は、複数の信号端子555の径方向内側に設けられる内側壁部721、および、内側壁部721の両端から径方向外側に延びる側壁部722からなり、全体として径方向外側に開口する形状に形成されている。側壁部722は、内側壁部721の両端、および、端子間に設けられている。
【0065】
図33の例では、端子間に設けられる側壁部722は2つであって、開口が3つ形成されているが、荷重等に応じ、側壁部722の位置や数、形状等は適宜設定可能である。また、荷重受け部72が複数に分割されていてもよい。
【0066】
荷重受け部71、72は、複数の端子を囲み、径方向外側に開口する形状に形成されている。これにより、端子551~556と基板20とを接続した後に、端子551~556の接続状態を径方向外側から確認することができる。また、
図34に示すように、信号端子555が複数列に端子が配置されている場合、内側に配置される端子を、外側に配置される端子と周方向位置をずらすことで、内側に配置される端子の接続状態の確認がしやすくなる。なお、ここでは端子555が2列に配置されている例を示したが、3列以上の場合も同様である。
【0067】
本実施形態では、コネクタ端子55の先端側にて基板20に挿通されている箇所を端子先端部とすると、荷重受け部71、72は、少なくとも一部が開放された状態にて、複数の端子先端部からなる端子群を囲んで設けられている。本実施形態の荷重受け部71、72は、径方向外側が開放された状態にて、端子群を囲んで設けられている。補足として、「端子群」とは、信号端子555、556のように複数の端子に限らず、基部側が共通する電源端子551の2つの端子先端部についても「端子群」とみなす。
【0068】
コネクタ端子55は、径方向に複数列に配列されており、径方向内側の端子は、径方向外側の端子と周方向位置をずらして配置されている。これにより、コネクタユニット50を基板20に組み付けた後に、基板20とコネクタ端子55との接続状態を確認することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
(第3実施形態)
第3実施形態を
図35および
図36に示す。第3実施形態では、フレーム部材40のモータ80と反対側の面には、荷重受け部73、74が突出して設けられている。荷重受け部73、74の高さは、上記実施形態と同様、基板固定部491~493と同じである。荷重受け部73、74は、各端子551~556と絶縁可能な程度(例えば0.5mm)離間して設けられている。
【0070】
図35に示すように、荷重受け部73は、電源端子551の2つの先端部の両外側と中間に設けられている。グランド端子553に対しても同様に、両外側と中間に荷重受け部73が設けられている。
【0071】
図36に示すように、荷重受け部74は、概ね周方向に隣接して配置されている信号端子555の両外側と端子間に設けられている。荷重受け部74は、概ね径方向に沿う方向に形成されており、信号端子555に隣接して配置されている、ともいえる。
【0072】
荷重受け部73、74の位置や数、形状等は、端子挿入時に受ける荷重等に応じ、適宜設定可能である。例えば、荷重受け部73について、電源端子551の両外側のみに形成し、端子間に設けるのを省略してもよい。また例えば、荷重受け部74について、全ての端子間に設ける必要がなく、1つおきや2つおき、といった具合に、一部を省略してもよい。
【0073】
荷重受け部73、74は、基板20の内側から外側に延びて形成されているので、端子551~556と基板20とを接続した後に、端子551~556の接続状態を径方向外側から確認することができる。
【0074】
本実施形態では、荷重受け部73、74は、端子先端部に隣接して設けられている。ここで、「隣接して設けられる」とは、絶縁を確保可能な程度のギャップが設けられており、端子先端部と荷重受け部との間に他の部材が配置されていない状態である。詳細には、荷重受け部73、74には、配列される端子先端部の両外側に設けられる外側壁、および、端子間を仕切る仕切り壁の少なくとも一方が含まれる。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0075】
(第4実施形態)
第4実施形態を
図37に示す。
図37は、
図11に対応する断面図であって、ECU11は、基板20の他に、コネクタ基板25を有する。すなわち本実施形態のECU11には2枚の基板が設けられている。基板の枚数は3以上であってもよい。コネクタ基板25は、図示しないねじ等の固定部材にてコネクタユニット50のベース部51のモータ80側の面に固定されている。コネクタ基板25は、図示しない基板間接続部品により、基板20と各種信号を送受信可能に接続されている。
【0076】
パワー端子557には、電源端子およびグランド端子が含まれる。パワー端子557は、一方の端部が車両系コネクタ521、522に設けられ、ベース部51内部にて分岐する。分岐した先端側は、一方がコネクタ基板25に接続され、他方側が基板20に接続される。基板20に接続される側の構成は、上記実施形態と同様である。信号端子558は、一方の端部が車両系コネクタ521、522に設けられて車両通信網6と接続され、他方の端部がコネクタ基板25と接続される。
【0077】
信号端子559は、一方の端部が信号系コネクタ523、524に設けられ、他方の端部がコネクタ基板25に接続される。また、信号端子558、559に加え、上記実施形態にて説明した信号端子555、556が設けられている。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0078】
実施形態では、挿入部601が「第1固定部」に対応し、挿入部611が「第2固定部」に対応する。また、パワー端子領域Rp、信号端子領域Rs1、Rs2が「端子領域」に対応する。
【0079】
(他の実施形態)
上記実施形態では、端子551~556の先端は環状に形成されている。他の実施形態では、端子の先端は、弾性変形による接続が可能な形状であれば、環状以外の形状であってもよい。また、他の実施形態では、荷重受け部の形状は、プレスフィット荷重を受けることが可能であれば、上記実施形態と異なる形状であってもよい。また、他の実施形態では、荷重受け部の形状は、端子領域ごとに異なっていてもよい。
【0080】
上記実施形態では、外周領域において、端子領域が3箇所に分散配置されている。他の実施形態では、弾性接続にてコネクタユニットの荷重を保持可能であればよく、端子領域は2または4以上であってもよい。
【0081】
上記実施形態では、車両系コネクタおよび信号系コネクタが2つずつ設け、間口数が4である。他の実施形態では、例えば車両系コネクタを共通化する、といった具合に、間口数は1~3、または5以上であってもよい。また、上記実施形態では、車両系コネクタは、パワー系コネクタと通信系コネクタとが一体になったハイブリッドコネクタである。他の実施形態では、パワー系コネクタと通信系コネクタとが別体であってもよい。
【0082】
上記実施形態では、フレーム部材は、モータケースに圧入されている。他の実施形態では、フレーム部材とモータケースとをねじ等で固定する等、モータケースとフレーム部材との接続方法は、圧入以外であってもよい。
【0083】
上記実施形態では、モータは2系統の3相巻線を有するブラシレスモータである。他の実施形態では、モータ巻線の系統数は2系統に限らず、1系統または3系統以上であってもよく、ブラシレスモータ以外のモータであってもよい。
【0084】
上記実施形態では、駆動装置は電動パワーステアリング装置に適用される。他の実施形態では、電動パワーステアリング装置以外の車載装置に適用してもよいし、車載以外の装置に適用してもよい。
【0085】
「前記コネクタ端子は、径方向に複数列に配列されており、径方向内側の端子は、径方向外側の端子と周方向位置をずらして配置されている」点についての開示は、駆動装置に係る各開示と組み合わせてもよい。
【0086】
「前記荷重受け部は、前記コネクタ端子が挿通される前記基板のスルーホールに形成される配線パターンとは離間しており、絶縁層にて前記基板と当接する」点についての開示は、駆動装置に係る各開示と組み合わせてもよい。
【0087】
「前記カバーは、前記基板の径方向外側にて前記フレーム部材の前記モータと反対側に固定される第1固定部(601)、および、前記コネクタ部の径方向外側にて前記ベース部の前記モータと反対側に固定される第2固定部(611)を有する」点についての開示は、駆動装置に係る各開示と組み合わせてもよい。
【0088】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0089】
1・・・駆動装置
10、11・・・ECU
20・・・基板
40・・・フレーム部材
461~466、71~74・・・荷重受け部
50・・・コネクタユニット
51・・・ベース部 52・・・コネクタ部
53・・・端子保持部 55・・・コネクタ端子
60・・・カバー