(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014309
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】スクリーン枠取付装置
(51)【国際特許分類】
B41F 15/18 20060101AFI20240125BHJP
B41F 15/14 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B41F15/18
B41F15/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117033
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】川井 宗明
【テーマコード(参考)】
2C035
【Fターム(参考)】
2C035AA02
2C035FA01
2C035FD01
2C035FD42
(57)【要約】
【課題】スクリーン枠取付装置において、簡素な構成で簡単に、被印刷物の弛みがスキージの進行方向に移動するのを防止する。
【解決手段】スクリーン枠取付装置1は、スクリーンSを保持するスクリーン枠100が取り付けられる取付部材10と、被印刷物Mを保持する保持部20とを備える。この保持部20は、スクリーンSに対向する領域に位置する複数の凸部の一例である複数の突起22aを有する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンを保持するスクリーン枠が取り付けられる取付部材と、
被印刷物を保持する保持部とを備え、
前記保持部は、前記スクリーンに対向する領域に位置する複数の凸部を有する
ことを特徴とするスクリーン枠取付装置。
【請求項2】
前記保持部に対して前記取付部材の反対側に配置されるベース板と、
前記スクリーンに平行に配置され、前記取付部材及び前記保持部のそれぞれを、前記ベース板に対して回転可能に支持する回転支持部材と
を更に備えることを特徴とする請求項1記載のスクリーン枠取付装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記スクリーン側に位置する保持板を更に有し、
前記複数の凸部は、前記保持板から前記スクリーン側に突出する突出状態と前記保持板から前記スクリーン側に突出しない収納状態とをとる
ことを特徴とする請求項1又は2記載のスクリーン枠取付装置。
【請求項4】
前記保持部は、スライドすることによって前記複数の凸部を一括して前記収納状態から前記突出状態に移動させるスライド部を更に有する
ことを特徴とする請求項3記載のスクリーン枠取付装置。
【請求項5】
前記保持部は、前記保持板を前記複数の凸部よりも前記スクリーン側に位置するように付勢することによって前記複数の凸部を前記収納状態に維持する付勢部材を更に有し、
前記保持板は、前記突出状態の前記複数の凸部が貫通する複数の貫通孔を有し、
前記複数の凸部は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記保持板と相対的に接近することによって前記収納状態から前記突出状態に遷移する
ことを特徴とする請求項3記載のスクリーン枠取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンを保持するスクリーン枠が取り付けられ、被印刷物を保持するスクリーン枠取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャツのような繊維の編み物である被印刷物(ワーク)に印刷を行う場合、通常は中敷きを使用する。中敷きの役割は、第一に片面の布だけに印刷を行い、もう片面の布にインクが浸透しないよう防止するためであり、第二に被印刷物を保持し、スクリーンのセットやスキージング時に被印刷物がズレないようにするためである。
【0003】
しかし、中敷きのような保持部を用いても、スキージング時に被印刷物の弛みがスキージの進行方向に移動し、画像が歪んだり、シワとなって印刷を行えない部分が発生したりする不具合が生じる。
【0004】
このような不具合を解消するために、中敷きの表面にスプレー糊等を塗布して被印刷物を固定することが行われている。
【0005】
また、その他には、ワーク保持テーブルの上に多孔質フィルタを乗せ、この多孔質フィルタの下からワークを真空吸着するワークセット方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにスプレー糊を中敷き等の保持部に塗布する場合、被印刷物を保持部にセットする際にべと付き、意図する位置に被印刷物をセットしにくいというデメリットがある。
【0008】
また、糊には被印刷物の糸くず等が付着するため、繰り返し印刷を行うと粘着力が落ちてしまう。更に、一定時間放置すると糊は固まって粘着力が無くなる。よって、スプレー糊を用いる場合、一定サイクルで清掃や再塗布が必要となる。
【0009】
また、上述の真空吸着を用いたワークセット方法では、装置が大掛かりとなり、特に、簡易に使用するスクリーン枠取付装置にはサイズ的にもコスト的にも見合わない。
【0010】
本発明の目的は、簡素な構成で簡単に、被印刷物の弛みがスキージの進行方向に移動するのを防止することができるスクリーン枠取付装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの態様では、スクリーン枠取付装置は、スクリーンを保持するスクリーン枠が取り付けられる取付部材と、被印刷物を保持する保持部とを備え、前記保持部は、前記スクリーンに対向する領域に位置する複数の凸部を有する。
【発明の効果】
【0012】
前記態様によれば、簡素な構成で簡単に、被印刷物の弛みがスキージの進行方向に移動するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施の形態に係るスクリーン枠取付装置を示す斜視図である。
【
図2】一実施の形態における被印刷物の装着を説明するためのスクリーン枠取付装置の斜視図である。
【
図3】一実施の形態におけるスクリーン枠の取り付けを説明するためのスクリーン枠取付装置の斜視図である。
【
図4】一実施の形態におけるスキージングを説明するためのスクリーン枠取付装置の斜視図である。
【
図5】一実施の形態における保持部を示す斜視図である。
【
図7】一実施の形態における保持部を示す右側面図である。
【
図8】一実施の形態における保持板の一部を下方から見た斜視図である。
【
図9】一実施の形態における突起ユニット及びスライド部を示す斜視図である。
【
図11】一実施の形態における下板の一部を示す斜視図である。
【
図12】一実施の形態におけるカムの動きを説明するための突起ユニット及びスライド部の一部の底面図(その1)である。
【
図13】一実施の形態におけるカムの動きを説明するための突起ユニット及びスライド部の一部の底面図(その2)である。
【
図14】一実施の形態における突起軸の回転を説明するための突起ユニット及びスライド部の一部の斜視図である。
【
図15】一実施の形態における突起が突出状態の保持部の一部を示す斜視図である。
【
図16】一実施の形態におけるスキージング時の被印刷物を示す右側面図である。
【
図17】比較例におけるスキージング時の被印刷物を示す右側面図である。
【
図18】一実施の形態の第1変形例における突起が収納状態の保持部を示す断面図である。
【
図19】一実施の形態の第1変形例における突起が突出状態の保持部を示す断面図である。
【
図20】一実施の形態の第2変形例における突起が収納状態の保持部を示す断面図である。
【
図21】一実施の形態の第2変形例における突起が突出状態の保持部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係るスクリーン枠取付装置について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、一実施の形態に係るスクリーン枠取付装置1を示す斜視図である。
【0016】
なお、
図1及び後述する
図2~
図21に示す前後方向、左右方向、及び上下方向は、回転支持部材40を前部側とし、回転支持部材40の長手方向を左右方向とした場合の一例にすぎないが、例えば、上下方向が鉛直方向であり、前後方向及び左右方向が水平方向である。
【0017】
図1に示すように、スクリーン枠取付装置1は、取付部材10と、保持部20と、ベース板30と、回転支持部材40とを備える。スクリーン枠取付装置1は、
図3に示すようにスクリーンSを保持するスクリーン枠100が取り付けられ、
図2及び
図3に示すように被印刷物Mを保持する装置である。ここで、被印刷物Mは、例えば、
図2に示すTシャツのように内部に保持部20が挿入されるように装着されるものであるが、ハンカチなどの平面状のものなどであってもよく、特に制限されない。また、スクリーンSは、例えば、サーマルヘッドを用いた感熱穿孔を施すことによって、或いは、光硬化性の薬剤を印刷部分以外で硬化させることによって、印刷部分となる領域に孔が形成されている。
【0018】
図1に示すように、取付部材10は、例えば矩形枠状を呈し、スクリーンSを保持するスクリーン枠100が取り付けられる。取付部材10は、スクリーンSを下側に露出するための矩形の開口部11を有し、スクリーン枠100を保持する。開口部11の周囲には、スクリーン枠100を収容するために上部側から窪んだ保持用凹部12が設けられている。保持用凹部12には、スクリーン枠100の位置決めのための2つの位置決めピン13と、スクリーン枠100を取り外すための2つの取り外し用凹部14とが設けられている。なお、取付部材10としては、枠状を呈するものに限られず、例えば、スクリーン枠100の片側(例えば前部)のみを例えば挟持するなどして支持するものなどであってもよい。
【0019】
2つの位置決めピン13は、保持用凹部12のうちの左側及び右側のそれぞれの後部に設けられている。2つの取り外し用凹部14は、保持用凹部12のうちの左側の後部において位置決めピン13の前後に設けられている。
【0020】
図3に示すように、2つの位置決めピン13は、スクリーン枠100の2つのピン挿入孔101に挿入される。このように、2つの位置決めピン13が2つのピン挿入孔101に挿入されることによって、スクリーン枠100が取付部材10に対して位置決めされる。より詳細には、2つの位置決めピン13は、右側の位置決めピン13よりも左側の位置決めピン13の直径が大きく形成されており、スクリーン枠100の2つのピン挿入孔101も、右側のピン挿入孔101よりも左側のピン挿入孔101の内径が大きく形成されており、これによりスクリーン枠100が表裏逆に取り付けられないようになっている。
【0021】
図1に示すベース板30は、保持部20に対して取付部材10の反対側(下側)に配置されている。ベース板30は、台座として機能する。そのため、特に、被印刷物Mがハンカチなどの平面状で保持部20上のみに配置される場合には、保持部20が台座として機能するため、ベース板30は省略されてもよい。
【0022】
回転支持部材40は、前後左右平面に拡がるスクリーンSに平行(左右方向)に配置され、取付部材10及び保持部20のそれぞれを、ベース板30に対して回転可能に支持する。一例ではあるが、回転支持部材40は、ベース板30の前端に設けられた左右1対のフランジ部に挿入され、取付部材10の前端及び保持部20の前端を回転可能に支持する回転軸部材である。なお、回転支持部材40が省略され、取付部材10と保持部20とが例えば上下動などによって相対的に接近や離隔してもよい。
【0023】
図2及び
図3に示すように、保持部20は、例えば、取付部材10との間に被印刷物Mを挟み込むことによって、被印刷物Mを保持する。
図5及び
図7に示すように、保持部20は、取付部材10側(上側)に位置する保持板21と、保持部20の底面に設けられた下板24を有する。また、
図9及び
図10に示すように、保持部20は、突起ユニット22と、スライド部23とを有する。
【0024】
図8に示すように、保持板21は、複数の貫通孔21aと、複数の突起軸軸受け21bと、複数のカム軸軸受け21cとを有する。複数の貫通孔21aは、例えば、貫通方向に直交する断面形状が涙型(楕円の長軸の片側を尖った角に変更した形状)を呈し、後述する複数の突起22aをスクリーンS側に突出させるために設けられている(
図15に示す突出状態(1)参照)。複数の突起軸軸受け21bは、後述する突起ユニット22の突起軸22bを回転可能に支持する。複数のカム軸軸受け21cは、後述するスライド部23の回転不能なカム軸23bを支持する。
【0025】
図9及び
図10に示す突起ユニット22は、複数の突起22aと、複数の突起軸22bと、複数のカム22c、複数のストッパ22dとを有する。
【0026】
複数の突起22aは、
図4に示すスクリーンSに対向する領域(スクリーンSの下方)に位置する。複数の突起22aは、
図15に示すように保持板21からスクリーンS側(上側)に突出する突出状態(1)と、
図6に示すように保持板21からスクリーンS側に突出しない収納状態(2)とをとる。複数の突起22aは、
図6に示す収納状態(2)における上面が貫通孔21aの断面形状と同様の涙型を呈する。突起22aの形状は任意であるが、
図15に示す突出状態(1)において、上端である先端が尖っている(鋭角になっている)と、被印刷物Mの位置ズレを防止することができる。なお、突起22aは、凸部の一例である。この凸部としては、保持部20の上面(例えば、保持板21の上面)に設けられた粗面の凸部などであってもよいし、或いは、保持部20の上面に配置された網状の部材の線材部分などであってもよく、特に制限されない。
【0027】
図10に示すように、複数の突起軸22bは、左右方向に延び、間隔をあけて前後方向に並ぶように配置されている。複数の突起軸22bのそれぞれには、上述の突起22aが複数設けられている。突起軸22bは、上述の保持板21の突起軸軸受け21b及び後述する下板24の突起軸軸受け24aによって回転可能に支持されている。
【0028】
複数のカム22cは、角が丸まった矩形板状を呈し、長手方向の一端である上端において、複数の突起軸22bのそれぞれの右端近傍(
図10参照)及び左端近傍(
図9参照)に1つずつ固定されている。カム22cは、突起軸22bと一体に回転する。
【0029】
図10に示すように、複数のストッパ22dは、複数の突起軸22bのそれぞれの左右方向の両端において突起軸22bに固定されている。
図15に示すように、ストッパ22dは、保持板21において左右方向に移動不能に固定されている。これにより、後述するスライド部23の左右方向へのスライドに伴って突起ユニット22が左右方向へ移動するのが防止されている。
【0030】
図9及び
図10に示すように、スライド部23は、左右1対のツマミ23aと、複数のカム軸23bと、複数のカム溝23cとを有し、右方向にスライドすることによって、複数の突起22aを一括して収納状態(2)から突出状態(1)に移動させる。その逆に、スライド部23は、左方向にスライドすることによって、複数の突起22aを一括して突出状態(1)から収納状態(2)に移動させる。
【0031】
図5及び
図7に示すように、左右1対のツマミ23aは、保持板21の右側及び左側に突出する。ツマミ23aの上面及び底面のうち少なくとも一方には、使用者がつまんでスライド部23を左右にスライドさせやすいように、滑り止め23a-1が設けられている。この滑り止め23a-1は、例えば、前後方向に延びる複数の凸部である。
【0032】
図10に示す複数のカム軸23bは、左右方向に延び、突起軸22bよりも長い間隔で、前後方向に並ぶように配置されている。なお、複数のカム軸23bは、前後方向に延びる部材などによって一体に固定され、回転しない。カム軸23bは、上述の保持板21のカム軸軸受け21c及び後述する下板24のカム軸軸受け24bによって支持されている。
【0033】
複数のカム溝23cは、カム軸23bと右側のツマミ23aとの間、及び、カム軸23bと左側のツマミ23aとの間のそれぞれにおいて、前後方向に並ぶように設けられている。複数のカム溝23cのそれぞれには、上述の突起ユニット22のカム22cの下端が収容される。前後方向に並んだ複数のカム溝23cは、左方向にかけて前方に湾曲するものと、左方向にかけて後方に湾曲するものとが交互に並んでいる。
【0034】
図11に示すように、下板24は、複数の突起軸軸受け24aと、複数のカム軸軸受け24bとを有する。突起軸軸受け24aは、突起ユニット22の突起軸22bを、保持板21の突起軸軸受け21bとで挟み込んで回転可能に支持する。カム軸軸受け24bは、スライド部23の回転不能なカム軸23bを、保持板21のカム軸軸受け21cとで挟み込んで支持する。
【0035】
ここで、例えば
図2に示す被印刷物Mの保持部20に対する装着後や取り外し前などに、突起ユニット22の複数の突起22aを
図6に示す収納状態(2)から
図15に示す突出状態(1)に移動させる手法の一例について説明する。
【0036】
まず、作業者は、
図10及び
図12に示すように突起ユニット22のカム22cがスライド部23のカム溝23cの右端にある状態(突起22aが収納状態(2))で、
図14に示すように、右側のツマミ23a(又は左側のツマミ23a)をつまんで、スライド部23を右側にスライドさせる。これにより、
図13及び
図14に示すように、カム溝23cの左端側に突起ユニット22のカム22cが位置することになる。なお、被印刷物Mが保持部20を覆うように装着されている状態でも、ツマミ23aは、保持部20の左右に突出しているため、作業者が被印刷物Mの外からスライド部23をつまむことが可能である。
【0037】
複数のカム溝23cは、左方向にかけて前方又は後方に湾曲するため、複数のカム22cは、カム軸23b(スライド部23)が右方向に移動することに伴って回転する。カム22cが回転すると、このカム22cと一体に突起軸22b及び複数の突起22aが回転し、
図15に示すように、突起22aが保持板21の貫通孔21aからスクリーン枠100側(上側)に突出する(突出状態(1))。このときの突起22aの保持板21からの突出量は、被印刷物Mの厚さなどにもよるが、例えば、数mm以下、望ましくは1mm以下である。
【0038】
そのため、
図4に示すように、取付部材10と保持部20とで挟み込んで保持された被印刷物Mに対し、作業者がスクリーンS上にインク(ペーストの一例)を供給してスキージ200でスキージングを行う場合、突起22aが被印刷物Mに引っ掛かる。これにより、
図16に示すように、スキージングが行われても、被印刷物Mの弛みがスキージング方向(前方)に寄らずに維持される。
【0039】
一方、
図17に示す比較例のように、突起22aが設けられていない場合、スキージングが行われると、被印刷物Mの弛みがスキージング方向(前方)に寄ってしまう。
【0040】
なお、
図15に示す突出状態(1)の突起22aを
図6に示す収納状態(2)に戻す場合には、作業者は、
図5に示す左側のツマミ23a(又は右側のツマミ23a)をつまんで、スライド部23を左側にスライドさせる。これにより、
図10及び
図12に示すように、カム22cは、カム溝23c(スライド部23)が左方向に移動することに伴って回転し、
図6に示す収納状態(2)に戻る。
【0041】
以上説明した本実施の形態では、スクリーン枠取付装置1は、スクリーンSを保持するスクリーン枠100が取り付けられる取付部材10と、被印刷物Mを保持する保持部20とを備える。この保持部20は、スクリーンSに対向する領域に位置する複数の凸部の一例である複数の突起22aを有する。
【0042】
これにより、作業者がスキージ200を用いてスキージングを行う場合に、被印刷物Mが複数の突起22aに引っ掛かるため、被印刷物Mの弛みがスキージング方向に移動するのを防止することができる。また、保持部20の突起22aを用いるため、スプレー糊を用いて保持部20の上面に被印刷物Mを固定する態様などと比較して、意図する位置に被印刷物Mを装着しやすくなるとともに、清掃や再塗布などの手間がかかるのを回避することができる。したがって、作業者の印刷作業が簡単になる。更には、被印刷物Mを保持部20に固定するために真空吸着を用いる態様などと比較して、スクリーン枠取付装置1が複雑な構成となるのを回避することができる。以上より、本実施の形態によれば、簡素な構成で簡単に、被印刷物Mの弛みがスキージ200の進行方向に移動するのを防止することができる。これにより、被印刷物Mの弛みがスキージ200の進行方向に移動することに起因して、印刷画像が歪んだり、スキージングが行えなくなったりすることを防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、スクリーン枠取付装置1は、保持部20に対して取付部材10の反対側に配置されるベース板30と、スクリーンSに平行に配置され、取付部材10及び保持部20のそれぞれを、ベース板30に対して回転可能に支持する回転支持部材40を更に備える。
【0044】
これにより、回転支持部材40を回転中心として取付部材10と保持部20とを接近させて被印刷物Mを保持することで、取付部材10と保持部20との位置ズレ、ひいては被印刷物Mの位置ズレを防止することができる。そのため、被印刷物Mの装着やスクリーン枠100の取り付けなどの作業を簡単に行うことができる。また、ベース板30が配置されていることによって、
図2に示すTシャツのように、保持部20の上下に亘って装着される被印刷物Mをベース板30によっても保持することができる。
【0045】
また、本実施の形態では、保持部20は、スクリーンS側に位置する保持板21を更に有し、複数の突起22aは、保持板21からスクリーンS側に突出する突出状態(1)と保持板21からスクリーンS側に突出しない収納状態(2)とをとる。
【0046】
そのため、スキージングを行う場合などに突起22aを突出状態(1)とし、例えば、被印刷物Mの装着時や取り外し時に収納状態(2)とすることで、被印刷物Mの装着や取り外しを簡単に行うことができる。
【0047】
また、本実施の形態では、保持部20は、スライドすることによって複数の突起22aを一括して収納状態(2)から突出状態(1)に移動させるスライド部23を更に有する。
【0048】
これにより、スライド部23をスライドさせる簡単な作業で、突起22aを突出状態(1)にすることができる。
【0049】
上述の実施の形態では、保持部20において、スクリーンS側(上側)に位置する保持板21と、スライドすることによって複数の突起22a(凸部)を一括して収納状態(2)から突出状態(1)に移動させるスライド部23とが別の部材として配置される例を述べた。しかし、単一の部材が保持板及びスライド部として機能してもよい。ここで、この保持板及びスライド部として機能するスライド保持板71について第1変形例として説明する。
【0050】
図18及び
図19は、一実施の形態の第1変形例における保持部70を示す断面図である。
【0051】
本第1変形例では、複数の凸部の一例である複数の突起72は、上述の突起22aと同一形状にすることができる。また、突起72は、上述の突起22aと同様に、左右方向に延び前後方向に並んで配置された複数の突起軸73のそれぞれに複数設けられている。すなわち、本第1変形例においても、保持部70は、
図4に示すスクリーンSに対向する領域に位置する複数の突起72(凸部)を有し、保持部70は、
図1に示す取付部材10との間に被印刷物Mを挟み込んで保持する。
【0052】
複数の突起軸73は、例えば下板74によって回転可能に支持されて配置されている。
【0053】
スライド保持板71は、上下方向にかけて前後方向に傾斜した貫通孔71aを有する。また、スライド保持板71は、例えば、
図18に示す前方の位置と、
図19に示す後方の位置とに前後方向にスライド移動可能に配置されている。スライド保持板71は、上記の前方の位置と後方の位置とのそれぞれにおいて、例えば下板74に対して引っ掛け部材などのロック手段によってロックされるとよい。
【0054】
スライド保持板71が
図18に示す前方の位置にあるとき、貫通孔71aの内部に突起72の先端(上端)が位置し、突起72は収納状態(2)である。このとき、突起72は、例えば、ねじりバネなどによって突起軸73とともに
図18における反時計回りに付勢されているとよい。或いは、突起72は、貫通孔71aの縁(後端部分)に接触して
図18に示す位置に保持されているとよい。
【0055】
スライド保持板71が
図19に示す後方の位置にスライドすると、貫通孔71aの縁(前端部分)が突起72を後方に押圧して移動させ、突起72及び突起軸73を
図19における時計回りに回転させ、突起72が貫通孔71a(保持部70)から上側に突出する突出状態(1)となる。
【0056】
このように、スライド保持板71は、保持部70のうち
図4に示すスクリーンS側(上側)に位置する保持板として機能するとともに、スライドすることによって複数の突起72(凸部)を一括して
図18に示す収納状態(2)から
図19に示す突出状態(1)に移動させるスライド部として機能する。なお、スライド部としては、下板74などの他の部材であってもよい。下板74がスライド部として機能する場合、例えば、スライド保持板71が移動せず、突起72、突起軸73、及び下板74が前後方向にスライドすることになる。
【0057】
次に、スライド部(例えば、スライド部23やスライド保持板71)ではなく、付勢部材84を用いた突起82の突出状態(1)と収納状態(2)との遷移について説明する。
【0058】
図20及び
図21は、一実施の形態の第2変形例における保持部80を示す断面図である。
【0059】
図20に示す保持部80は、上側(
図4に示すスクリーンS側)に位置する保持板81と、スクリーンSに対向する領域に位置する複数の凸部の一例である突起82と、保持部80の底面に設けられた下板83と、保持板81を複数の突起82よりも上側に位置するように付勢することによって複数の突起82を収納状態(2)に維持する付勢部材84とを有する。
【0060】
保持板81は、
図21に示す突出状態(1)の複数の突起82が貫通する複数の貫通孔81aを有する。
【0061】
ここで、例えば、
図2に示すように被印刷物Mが保持部20(保持部80)に装着され、
図3に示すように取付部材10が保持部20(保持部80)側に接近するように回転することによって、保持板81は、取付部材10の自重で付勢部材84の付勢力に抗して下降する。これにより、複数の突起82は、貫通孔81aから上方に突出し、収納状態(2)から突出状態(1)に遷移する。付勢部材84は、例えば圧縮バネであるが、例えば、ゴムなどの圧縮バネ以外の弾性体であってもよい。
【0062】
突起82は、下板83の上面に固定されている。なお、保持板81が下降するのに代えて、例えば、保持板81が上下方向に移動しないように固定された状態で、突起82が持ち上げられることによって、付勢部材84の付勢力に抗して保持板81と突起82とが上下方向に相対的に接近してもよい。
【0063】
本第2変形例では、保持部80は、保持板81を複数の凸部の一例である複数の突起82よりもスクリーンS側(上側)に位置するように付勢することによって複数の突起82を収納状態(2)に維持する付勢部材84を更に有する。また、保持板81は、突出状態(1)の複数の突起82が貫通する複数の貫通孔81aを有し、複数の突起82は、付勢部材84の付勢力に抗して保持板81と相対的に接近することによって収納状態(2)から突出状態(1)に遷移する。
【0064】
これにより、
図1に示す取付部材10の自重で保持板81が下降することなどによって、突起82を突出状態(1)に遷移させることができる。そのため、例えば、被印刷物Mの装着時や取り外し時には付勢部材84の付勢力によって、突起82を収納状態(2)に維持しながら、スキージングを行う場合などに突起82を突出状態(1)とすることができる。したがって、被印刷物Mの装着や取り外しを簡単に行うことができる。
【0065】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0066】
[付記1]
スクリーンを保持するスクリーン枠が取り付けられる取付部材と、
被印刷物を保持する保持部とを備え、
前記保持部は、前記スクリーンに対向する領域に位置する複数の凸部を有する
ことを特徴とするスクリーン枠取付装置。
【0067】
[付記2]
前記保持部に対して前記取付部材の反対側に配置されるベース板と、
前記スクリーンに平行に配置され、前記取付部材及び前記保持部のそれぞれを、前記ベース板に対して回転可能に支持する回転支持部材と
を更に備えることを特徴とする付記1記載のスクリーン枠取付装置。
【0068】
[付記3]
前記保持部は、前記スクリーン側に位置する保持板を更に有し、
前記複数の凸部は、前記保持板から前記スクリーン側に突出する突出状態と前記保持板から前記スクリーン側に突出しない収納状態とをとる
ことを特徴とする付記1又は2記載のスクリーン枠取付装置。
【0069】
[付記4]
前記保持部は、スライドすることによって前記複数の凸部を一括して前記収納状態から前記突出状態に移動させるスライド部を更に有する
ことを特徴とする付記3記載のスクリーン枠取付装置。
【0070】
[付記5]
前記保持部は、前記保持板を前記複数の凸部よりも前記スクリーン側に位置するように付勢することによって前記複数の凸部を前記収納状態に維持する付勢部材を更に有し、
前記保持板は、前記突出状態の前記複数の凸部が貫通する複数の貫通孔を有し、
前記複数の凸部は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記保持板と相対的に接近することによって前記収納状態から前記突出状態に遷移する
ことを特徴とする付記3記載のスクリーン枠取付装置。
【符号の説明】
【0071】
1 スクリーン枠取付装置
10 取付部材
11 開口部
12 保持用凹部
13 位置決めピン
14 取り外し用凹部
20 保持部
21 保持板
21a 貫通孔
21b 突起軸軸受け
21c カム軸軸受け
22 突起ユニット
22a 突起
22b 突起軸
22c カム
22d ストッパ
23 スライド部
23a ツマミ
23a-1 滑り止め
23b カム軸
23c カム溝
24 下板
24a 突起軸軸受け
24b カム軸軸受け
30 ベース板
40 回転支持部材
70 保持部
71 スライド保持板
71a 貫通孔
72 突起
73 突起軸
74 下板
80 保持部
81 保持板
81a 貫通孔
82 突起
83 下板
84 付勢部材
100 スクリーン枠
101 ピン挿入孔
200 スキージ
M 被印刷物
S スクリーン