(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143099
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ルーフウェザストリップの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/82 20160101AFI20241003BHJP
B60J 10/24 20160101ALI20241003BHJP
B60J 10/40 20160101ALI20241003BHJP
B60J 10/30 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
B60J10/82
B60J10/24
B60J10/40
B60J10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055598
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】倉知 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】柴田 泰三
(72)【発明者】
【氏名】麦島 悟司
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201AA11
3D201BA01
3D201CA16
3D201CA38
3D201DA03
3D201DA23
3D201DA34
3D201EA02B
3D201EA02D
3D201EA03E
3D201EA03G
3D201FA04
(57)【要約】
【課題】開閉可能な可動パネルと、固定パネルを備えた開口部を有する自動車のルーフにおいて、室内高を高くするためのルーフウェザストリップの取付構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
第1パネル11は、ルーフ10の開口部を開閉可能な可動パネルであり、第2パネル12は、第1パネル11の前方側に隣接して固定して配置された樹脂製の固定パネルであり、第2パネル12の第1パネル11側の端部には、第1パネル11側から下方向に鋭角の傾斜面40が形成され、傾斜面40には、第1パネル11側、且つ下方に延伸するウェザストリップ取付部41が形成され、ルーフウェザストリップ20は、取付基部21と中空シール部22を有し、ウェザストリップ取付部41に取付基部21が取付けられ、中空シール部22が傾斜面40及び第1パネル縁部11aに当接する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフに配設された少なくとも2枚のパネルを備え、
第1パネルは、前記ルーフの開口部を開閉可能に構成された可動パネルであり、
第2パネルは、前記第1パネルの車両前方、又は後方に隣接して固定して配置された樹脂製の固定パネルであり、
前記第2パネルの前記第1パネル側の端部には、車両上下方向において、前記第1パネル側から車両下方向に鋭角の傾斜面が形成され、
前記傾斜面には、前記第1パネル側、且つ車両下方に延伸するウェザストリップ取付部が形成され、
ルーフウェザストリップは、断面が略U字形状の取付基部と、前記取付基部に接続する中空シール部を有し、前記ウェザストリップ取付部に前記取付基部が取付けられ、前記中空シール部が前記傾斜面及び前記第1パネルの前記第2パネル側の端部に当接して前記第1パネルと前記第2パネルとの間をシールすることを特徴とするルーフウェザストリップの取付構造。
【請求項2】
前記傾斜面の前記ウェザストリップ取付部より車両上方には、前記第1パネル側、且つ車両下方に突出する突起部が形成され、
前記突起部の突出長さは、前記ウェザストリップ取付部より短く、
前記中空シール部には、貫通孔若しくは凹部形状の係合部が形成され、
前記中空シール部の前記係合部と前記傾斜面の前記突起部が係合する請求項1に記載のルーフウェザストリップの取付構造。
【請求項3】
前記中空シール部の前記傾斜面との当接部分及び/又は前記第1パネルとの当接部分には、凸状の折れ曲がり部が形成されている請求項1又は請求項2に記載のルーフウェザストリップの取付構造。
【請求項4】
前記第2パネルの車両下方には、ハウジングが配置され、前記取付基部の前記傾斜面側の端部及び/又は前記取付基部の前記ハウジング側には、前記取付基部を構成する部材より硬度の低い低硬度部が形成され、前記低硬度部が、前記傾斜面及び/又は前記ハウジングに当接する請求項1又は請求項2に記載のルーフウェザストリップの取付構造。
【請求項5】
前記中空シール部の硬度は、前記取付基部より低く、前記低硬度部の硬度は、前記中空シール部の硬度以下である請求項4に記載のルーフウェザストリップの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な可動パネルと、固定パネルを備えた開口部を有する車両のルーフにおいて、固定パネルに取付けられ、可動パネルの端部との間をシールするルーフウェザストリップの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉可能な可動パネルと、固定パネルを備えた開口部を有する自動車のルーフにおいて、固定パネル側に取付けられ、可動パネルの端部との間をシールするルーフウェザストリップの取付構造としては、例えば、特許文献1乃至特許文献3に記載されたものが知られている。
図4は、特許文献1に記載された技術である。ルーフ装置100は、ルーフパネル110の開口部を開閉する可動パネル120と、ルーフパネル110の開口縁と可動パネル120との間に設けられてこれら開口縁と可動パネル120との間をシールするルーフウェザストリップ200とを備えている。ルーフパネル110の開口縁はルーフパネル本体130から鉛直方向下方に延びるフランジ部140を含む。ルーフウェザストリップ200はフランジ部140を内包する取付基部210を有する。又、ルーフパネル110に取り付けられて可動パネル120を支持するガイドレール150にはルーフウェザストリップ200の取付基部210を挟持する挟持部160が設けられる。上記の構成にすることにより、組み付け後のルーフウェザストリップ200が挟持部を通じて安定して保持されるので、ルーフウェザストリップ200の信頼性を向上させることができるようになる。
【0003】
図5は、特許文献2に記載された技術である。ルーフウェザストリップ200は、固定パネル170を取付ける固定ベースパネル180の先端部に取付けられる取付基部210と、可動パネル120に当接するシール部190を有する。取付基部210は、固定ベースパネル180の先端部に係合するパネル係合部230と、固定パネル170の先端部に取付けられたパネルリム240に係合するリム係合部250を有する。パネル係合部230は取付基部210の下面側に形成され、リム係合部250は取付基部210の上面側に形成される。上記の構成にすることにより、取付基部210の先端側の側部がパネル係合部230により固定ベースパネル180の先端に係合し、取付基部210の固定パネル170側のリム係合部250がパネルリム240に係合して、取付基部210の両側の側端を確実に取付けることができる。
【0004】
図6は、特許文献3に記載された技術である。ルーフウェザストリップ200は、第1ウェザストリップ部270と、第2ウェザストリップ部280と、第1ウェザストリップ部270と第2ウェザストリップ部280を一体的に結合する連結部290を有する。又、連結部290上方に突出し、かつ、長手方向に伸びる凸状部320を形成して、スライディングルーフパネル330と固定ルーフパネル260との間をシールする。第1ウェザストリップ部270と、第2ウェザストリップ部280の下方には、両面接着テープ300が貼り付けられ、この両面接着テープ300により、ルーフウェザストリップ200がベースプレート340に取付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-62023号公報
【特許文献2】特開2013-199143号公報
【特許文献3】特開2010-260394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開閉可能な可動パネルと、固定パネルを備えた開口部を有する自動車のルーフにおいては、ルーフに開閉可能な可動パネルを有しない車両に比較して、車内の空間を示す指標の一つである室内高、すなわち、車両の中心部付近における平坦な床面より天井内張りまでの垂直最大距離が10mmから30mm程度短くなっている。そのため、特に身長の高い人にとっては、ヘッドクリアランスが小さい旨の不満の指摘が報告されている。
【0007】
近年、急速に拡大する電気自動車(EV)では、床下にバッテリーを搭載する場合が多く、その分床面が上方に位置し、それに伴い座面も上方に移動するので、乗車する人のヘッドクリアランスがさらに小さくなる。したがって、ルーフに開閉可能な可動パネルを有する車両では、ヘッドクリアランスの狭小が顕著な問題となる可能性がある。
【0008】
又、車両の軽量化の観点から、パネルの樹脂化、ルーフウェザストリップの取付部分の小型化も重要である。さらに、樹脂パネルに接着でルーフウェザストリップを取付ける場合には、樹脂パネル表面の脱脂処理やプライマー加工が必要であり、組付け時の作業性が悪い。又、両面接着テープの場合、テープの劣化によりパネルやルーフウェザストリップからの剥がれによる水漏れや、ルーフウェザストリップが剥がれることによるパネル作動不良も問題になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、車両のルーフに配設された少なくとも2枚のパネルを備え、第1パネルは、ルーフの開口部を開閉可能に構成された可動パネルであり、第2パネルは、第1パネルの車両前方又は後方に隣接して固定して配置された樹脂製の固定パネルであり、第2パネルの第1パネル側の端部には、車両上下方向において、第1パネル側から車両下方向に鋭角の傾斜面が形成され、傾斜面には、第1パネル側、且つ車両下方に延伸するウェザストリップ取付部が形成され、ルーフウェザストリップは、断面が略U字形状の取付基部と、取付基部に接続する中空シール部を有し、ウェザストリップ取付部に取付基部が取付けられ、中空シール部が傾斜面及び第1パネルの第2パネル側の端部に当接して第1パネルと第2パネルとの間をシールすることを特徴とするルーフウェザストリップの取付構造である。
【0010】
請求項1の本発明では、車両のルーフに配設された少なくとも2枚のパネルを備え、第1パネルは、ルーフの開口部を開閉可能に構成された可動パネルであり、車両のルーフの開口部を覆う少なくとも2枚のパネルを備え、第1パネルは、開口部を開閉可能に構成された可動パネルであり、第2パネルは、第1パネルの車両前方若しくは後方に隣接して固定して配置された樹脂製の固定パネルであり、第2パネルの第1パネル側の端部には、車両上下方向において、第1パネル側から車両下方向に鋭角の傾斜面が形成され、傾斜面には、ウェザストリップ取付部が形成されるので、第1パネルと第2パネル間の限られた空間において、断面が略U字形状の取付基部と、中空シール部の寸法を従来と同程度に維持しつつ、ルーフウェザストリップの取付基部の取付け、並びに中空シール部による第1パネルと第2パネル間のシールを可能とすることができる。
又、第2パネルを樹脂製とすることにより、車両の軽量化が図ることができる。
【0011】
ここで、「可動パネル」とは、車両のルーフに形成された開口部を開閉可能に、車両の前後方向に移動可能なパネルをいう。又、「固定パネル」とは、車両ルーフに取付けられ、車両の前後方向には移動しないパネルをいう。なお、固定パネルには、可動パネルが開口部を開く時に、固定パネルの可動パネル側が車両の上方に移動する動作が含まれる。
【0012】
又、ウェザストリップ取付部は、第1パネル側、且つ車両下方に延伸するように形成されるので、傾斜方向の延伸長に対する縦方向の寸法増加が抑制される。このため、ルーフウェザストリップの取付基部の車内側先端部も、特許文献1に比較して車両上方に位置させることができる。その結果、ルーフに開閉可能な可動パネルと、固定されたパネルを備えた開口部を有する車両において、室内高を長くすることができる。
【0013】
又、ルーフウェザストリップは、断面が略U字形状の取付基部と、中空シール部を有し、ウェザストリップ取付部に取付基部が取付けられるので、取付基部によって、ルーフウェザストリップをウェザストリップ取付部に確実に固定することができる。さらに、その取付は、両面接着テープ等の接着によるものではないので、ルーフウェザストリップの接着による取付けに比較して、取付け時の作業性が向上し、又、接着による取付け後の劣化に伴う不具合を解消することができる。
【0014】
又、中空シール部が傾斜面及び第1パネルの第2パネル側の端部に当接して第1パネルと第2パネルとの間をシールするので、中空シール部を挟んで、第1パネル側と第2パネル側への水の侵入を防止することができる。
【0015】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、傾斜面のウェザストリップ取付部より上方には、第1パネル側、且つ車両下方に突出する突起部が形成され、突起部の突出長さは、ウェザストリップ取付部より短く、中空シール部には、貫通孔若しくは凹部形状の係合部が形成され、中空シール部の係合部と傾斜面の突起部が係合するルーフウェザストリップの取付構造である。
【0016】
第1パネルは開閉可能であるが、第1パネルが閉まった状態、つまり、中空シール部と第1パネルの端部が当接した状態で放置される時間が長い。そのため、中空シール部と第1パネルの端部が固着する場合がある。中空シール部と第1パネルの端部が固着した状態で第1パネルを開くと、中空シール部が車両の前後方向に引張られ、取付基部が変形してウェザストリップ取付部から外れ易くなる可能性や中空シール部と取付基部の接続部分の強度が低下する可能性がある。
【0017】
請求項2の本発明では、傾斜面のウェザストリップ取付部より上方には、第1パネル側、且つ車両下方に突出する突起部が形成され、突起部の突出長さは、ウェザストリップ取付部より短く、中空シール部には、貫通孔若しくは凹部形状の係合部が形成され、中空シール部の係合部と傾斜面の突起部が係合するので、中空シール部と第1パネルの端部が固着し、その状態で第1パネルを開いた時も、突起部と係合部の係合により中空シール部の前後方向への移動により取付基部の開口の先端部分が開くことを抑制し、且つ上記固着状態を剥がし、ウェザストリップ取付部から取付基部が外れ易くなること、中空シール部と取付基部の接続部分の接続強度が低下することを防止することができる。
又、第1パネルが閉じる時の中空シール部にかかる取付基部の開口の先端部分を開かせる応力に対抗することができる。
【0018】
請求項3の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、中空シール部の傾斜面との当接部分及び/又は第1パネルとの当接部分には、凸状の折れ曲がり部が形成されているルーフウェザストリップの取付構造である。
【0019】
請求項3の本発明では、ルーフウェザストリップの中空シール部において、第2パネルの傾斜面との当接部分及び/又は第1パネルとの当接部分には、凸状の折れ曲がり部が形成されているので、第1パネルを閉じた時には、凸状の折れ曲がり部が第1パネル及び/又は第2パネルにまず当接し、凸状形状が緩和されるように変形して第1パネル及び/又は第2パネルとの間をシールする。その結果、中空シール部の変形の再現性が増大する。又、中空シール部と第1パネル及び/又は第2パネルとのと当接部から水が車内側に漏れ出すことを防止することができる。
【0020】
請求項4の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、第2パネルの車両下方には、ハウジングが配置され、取付基部の傾斜面側の端部及び/又は取付基部のハウジング側には、取付基部を形成する部材より硬度の低い低硬度部が形成され、低硬度部が、傾斜面及び/又はハウジングに当接するルーフウェザストリップの取付構造である。
【0021】
請求項4の本発明では、第2パネルの車両下方には、ハウジングが配置され、取付基部の傾斜面側の端部及び/又は取付基部のハウジング側には、取付基部を形成する部材より硬度の低い低硬度部が形成され、低硬度部が、傾斜面及び/又はハウジングに当接するので、低硬度部が取付基部の傾斜面側の端部に形成された場合、取付基部を第2パネルのウェザストリップ取付部に取付けた時に低硬度部が撓み、ルーフウェザストリップの取付位置を安定させることができる。又、中空シール部が経年劣化した時も、止水性能を確保することができる。一方、低硬度部が取付基部のハウジング側に形成された場合、ルーフウェザストリップの取付基部を第2パネルのウェザストリップ取付部に取付けた後、ハウジングに挟まれた時に、低硬度部が撓むことにより、上方への付勢力となり、ルーフウェザストリップの取付位置を安定させ、ルーフウェザストリップの取付基部を第2パネルのウェザストリップ取付部に確実に固定することができる。その結果、ルーフウェザストリップの取付基部がウェザストリップ取付部から抜けることを防止し、第2パネルの突起部との係合や、中空シール部の配置位置を安定させることができる。
【0022】
又、ルーフウェザストリップの取付基部が第2パネルのウェザストリップ取付部に確実に固定されているので、中空シール部を第2パネルの傾斜面と第1パネルの第2パネル側の端部に確実に当接させることができる。又、車両が振動した場合も、低硬度部が撓むことにより、ハウジングと取付基部、取付基部と第2パネルとの間で異音が発生することを防止することができる。又、特許文献1の挟持部や特許文献2、特許文献3のように可動パネルの下方にウェザストリップ取付部を延設する必要がなくなるので、ルーフウェザストリップの取付部分を小さくすることができる。
なお、本請求項4において、低硬度部が形成される部位は、取付基部の傾斜面側の端部の場合、取付基部のハウジング側の場合、取付基部の傾斜面側の端部と取付基部のハウジング側両方の場合が含まれる。
【0023】
請求項5の本発明は、請求項4の発明において、中空シール部の硬度は、取付基部より低く、低硬度部の硬度は、中空シール部の硬度以下であるルーフウェザストリップの取付構造である。
【0024】
請求項5の本発明では、中空シール部の硬度は、取付基部より低いので、変形し易く、第2パネルの傾斜面と第1パネルの第2パネル側の端部に確実に当接させることができる。又、低硬度部の硬度は、中空シール部の硬度以下であるので、さらに変形し易く、ハウジングに挟まれた時に、低硬度部が撓むことにより、ルーフウェザストリップの取付基部を第2パネルのウェザストリップ取付部に確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0025】
車両のルーフに配設された少なくとも2枚のパネルを備え、第1パネルは、ルーフの開口部を開閉可能に構成された可動パネルであり、第2パネルは、第1パネルの車両前方若しくは後方に隣接して固定して配置された樹脂製の固定パネルであり、第2パネルの第1パネル側の端部には、車両上下方向において、第1パネル側から車両下方向に鋭角の傾斜面が形成され、傾斜面には、第1パネル側、且つ車両下方に突出するウェザストリップ取付部が形成されるので、第1パネルと第2パネル間の限られた空間において、断面が略U字形状の取付基部と、中空シール部の寸法を従来と同程度に維持しつつ、ルーフウェザストリップの取付基部の取付け、並びに中空シール部による第1パネルと第2パネル間のシールを可能とすることができる。
又、第2パネルを樹脂製とすることにより、車両の軽量化が図ることができる。
【0026】
又、ウェザストリップ取付部は、第1パネル側、且つ車両下方に延伸するように形成されるので、傾斜方向の延伸長に対する縦方向の寸法増加が抑制される。このため、ルーフウェザストリップの取付基部の車内側先端部も、特許文献1に比較して車両上方に位置させることができる。その結果、ルーフに開閉可能な可動パネルと、固定されたパネルを備えた開口部を有する車両において、室内高を長くすることができる。
【0027】
又、ルーフウェザストリップは、断面が略U字形状の取付基部と、中空シール部を有し、ウェザストリップ取付部に取付基部が取付けられるので、取付基部によって、ルーフウェザストリップをウェザストリップ取付部に確実に固定することができる。さらに、その取付は、両面接着テープ等の接着によるものではないので、ルーフウェザストリップの接着による取付けに比較して、取付け時の作業性が向上し、又、接着による取付け後の劣化に伴う不具合を解消することができる。
【0028】
又、中空シール部が傾斜面及び第1パネルの第2パネル側の端部に当接して第1パネルと第2パネルとの間をシールするので、中空シール部を挟んで、第1パネル側と第2パネル側への水の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】車両のルーフを車両上方から見た時の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるルーフウェザストリップの断面図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるルーフウェザストリップを第2パネルに取付け、ハウジングを配置し、第1パネルを閉じた時の
図1におけるA-A断面図である。
【
図4】従来形態を示す断面図である(特許文献1)。
【
図5】従来形態を示す断面図である(特許文献2)。
【
図6】従来形態を示す断面図である(特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態について
図1から
図3に基づき説明する。なお、以下では、車両1の前後方向を「前後方向」といい、車両1の高さ方向の上方及び下方をそれぞれ「上方」及び「下方」という。又、車両1の幅方向を「幅方向」という。
【0031】
図1は、車両1のルーフ2を車両上方から見た時の平面図である。車両1は、セダンタイプの自動車であり、ルーフ2は、前後方向にパネルで4分割されており、所謂、パノラマルーフ(パノラマムールーフ)と呼ばれるタイプの一つである。第1パネル11は可動パネルであり、第2パネル12、第3パネル13、第4パネル14は固定パネルである。第1パネル11と第3パネル13は、ガラス板からなり、車内側のカバーを移動させることにより、広い領域で車内の開放感を高めたり、光を車内に取り込むことができる。なお、車両1はセダンタイプの自動車には限定されず、ルーフもパノラマルーフタイプには限定されない。
【0032】
第1パネル11は、開口部10を開閉可能に取り付けられている。すなわち、第1パネル11は、その前側部位を支点に後側部位が上昇するチルトアップ動作、及び前後方向へのスライド動作可能に取り付けられている。第1パネル11による開閉作動においては、チルトアップ状態のままスライド動作する、いわゆるアウタースライディング式が採用されている。なお、第1パネル11には、その周縁部に沿う、ポリウレタンの樹脂材からなる略四角環状であり、第2パネル12側の端部に該当する第1パネル縁部11aが形成されている。なお、第1パネル縁部11aの樹脂材はポリウレタンには限られない。
【0033】
一方、第2パネル12は、第1パネル11の前方に位置し、開口部10の前部を閉塞するように取り付けられている。第2パネル12は、第1パネル11が後側に移動した時に、車内に風が入り込まないように、第1パネル11側の端部(第2パネル端部15(
図3))が上方に持ち上がる構成になっている。なお、第2パネル12は、第1パネル11側の第2パネル端部15が上方に持ち上がらない構成であってもよい。
【0034】
図2は、ルーフウェザストリップ20の断面図である。ルーフウェザストリップ20は、取付基部21と取付基部21に連結する中空シール部22を有している。取付基部21は、第1縦辺部23と第2縦辺部24が連結部25で繋がった断面略U字状をなしている。第1縦辺部23の内側には、リップ26が形成され、第2縦辺部24の内側にはリブ27が形成されている。
【0035】
取付基部21の第2縦辺部24の端部と、第1縦辺部23と連結部25を跨ぐ部分には、第1縦辺部23及び連結部25より硬度の低い低硬度部である第1低硬度部28と第2低硬度部29が形成されている。
【0036】
中空シール部22は、取付基部21の第2縦辺部24の外側に連結され、断面略D字状をなしている。なお、中空シール部22は、取付基部21の第2縦辺部24と連結部25の外側に連結されていてもよい。中空シール部22は弧形状であるが、2個所に凸状の折れ曲がり部である第1折れ曲がり部30と第2折れ曲がり部31が形成されている。第1折れ曲がり部30と第2折れ曲がり部31を形成する位置については、後述する。
【0037】
又、中空シール部22において、第1折れ曲がり部30と取付基部21の第2縦辺部24との間には、中空シール部22を貫通する貫通孔である係合部32が形成されている。係合部32は、後述する第2パネル12に形成される突起部42が係合部32の内部に挿入されて中空シール部22と突起部42が係合可能な位置に形成される。なお、係合部32は、中空シール部22を貫通する貫通孔ではなく、突起部42の先端部分を受け入れる凹部形状としてもよい。
【0038】
図3は、ルーフウェザストリップ20を第2パネル12に取付け、ハウジング50を装着し、第1パネル11を閉じた時の
図1におけるA-A断面図である。第2パネル12は樹脂製である。第2パネル12の第1パネル11側の第2パネル端部15には、車両上下方向において、第1パネル11側から下方向に鋭角の傾斜面40が形成されている。本実施形態では、第2パネル12の上側面12aと傾斜面40との間の角度Xは30度である。なお、角度Xは、15度から40度が望ましい。15度未満の場合は、傾斜面40の長さは確保できるが、第2パネル端部15の強度が不足するので望ましくない。又、40度を越えると第2パネル端部15の強度は問題ないが、傾斜面40の長さが短く、傾斜面40に後述するウェザストリップ取付部41の形成スペースを確保することが難しくなるので望ましくない。
【0039】
傾斜面40には、第1パネル11側、且つ車両下方に延伸する柱状のウェザストリップ取付部41が形成されている。本実施形態では、ウェザストリップ取付部41の第2パネル下面12b側は、第2パネル下面12bから下方に少し突出している。なお、傾斜面40の角度Xと後述するルーフウェザストリップ20の取付基部21の大きさを調整することにより、ウェザストリップ取付部41を第2パネル下面12bより上方の傾斜面40に形成することも可能である。
【0040】
ウェザストリップ取付部41は、傾斜面40に対して垂直に形成されている。なお、ウェザストリップ取付部41は、傾斜面40に垂直に形成することに限定されない。ウェザストリップ取付部41を傾斜面40から第1パネル11側、且つ下方に形成することにより、室内高を長くすることができる。ただし、第1パネル11側、且つ下方に形成することは、ルーフウェザストリップ20の取付基部21の第1パネル11側への突出量が増大する。又、ルーフウェザストリップ20には、水に対するシール性や、第1パネル11と第2パネル12に挟まれることに伴う見栄え等、他の要求性能を満足する必要がある。したがって、上記傾斜面40の角度と共に、様々な要件を考慮してウェザストリップ取付部41の角度を設定する。
【0041】
柱状のウェザストリップ取付部41は、車両1の幅方向に間隔を有し、直線上に複数形成されている。ウェザストリップ取付部41の幅方向の断面は、矩形である。なお、ウェザストリップ取付部41は、車両1の幅方向に直線状、つまり、板状に形成してもよい。
【0042】
又、傾斜面40において、ウェザストリップ取付部41より上方には、第1パネル11側、且つ車両下方に突出する柱状の突起部42が形成されている。突起部42は、ウェザストリップ取付部41と平行に形成されている。なお、平行には限定されない。突起部42は、中空シール部22と係合可能であればよいので、傾斜面40からの突出長さは、ウェザストリップ取付部41より短い。突起部42は、車両1の幅方向に間隔を有し、直線上に複数形成した。又、柱状の突起部42の幅方向の断面は、円形、楕円形や矩形などとすることができる。
【0043】
ルーフウェザストリップ20は、取付基部21、係合部32を除く中空シール部22及び第1低硬度部28と第2低硬度部29が押出成形により成形され、成形後に係合部32を除去して形成することにより作製される。なお、係合部32が凹部形状の場合は、係合部32を含めて押出成形により成形される。係合部32が凹部形状の場合は、突起部42は、柱状でもよく、板状であってもよい。
【0044】
ルーフウェザストリップ20の材料には、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を使用し、取付基部21はソリッド材、中空シール部22及び第1低硬度部28と第2低硬度部29はスポンジ材を使用した。ソリッド材の硬度は、国際ゴム硬度(IRHD)60以上である。又、中空シール部22の比重は、0.4以上1.0以下である。なお、中空シール部22の硬度は、第1低硬度部28と第2低硬度部29の硬度と同じであってもよい。又、第1低硬度部28と第2低硬度部29の硬度は、異なっていてもよい。
【0045】
図3に示すように、ルーフウェザストリップ20の取付基部21を第2パネル12のウェザストリップ取付部41に取付けると、取付基部21の内部に形成されているリップ26とリブ27がウェザストリップ取付部41に当接(弾接)して取付基部21が保持される。又、突起部42がルーフウェザストリップ20の係合部32に挿入される。
【0046】
又、取付基部21は、第2パネル12とハウジング50に挟まれることにより、取付基部21の第1低硬度部28が傾斜面40に当接して撓み、第2低硬度部29がハウジング50に当接して撓むことにより取付基部21が第2パネル12とハウジング50間に固定される。又、第1低硬度部28と第2低硬度部29が変形して取付基部21がウェザストリップ取付部41に付勢されることにより、ルーフウェザストリップ20の取付位置が安定し、突起部42との係合状態も安定になる。
【0047】
中空シール部22は、第1パネル11の第1パネル縁部11aに当接すると、潰れるように大きく撓んで変形する。この時、中空シール部22が最初に第1パネル縁部11aに当接する部分に第2折れ曲がり部31を形成することにより、変形時の起点とすることができ、凸形状が緩和するように変形するので、変形形状の再現性が増大する。
【0048】
一方、傾斜面40側では、中空シール部22が当接する部分、又は、上記の変形に伴い、中空シール部22が最初に傾斜面40に当接する部分に第1折れ曲がり部30を形成することにより、第1折れ曲がり部30より第1パネル11側を主に変形させることができる。なお、第1折れ曲がり部30と第2折れ曲がり部31はどちらか一方を形成してもよい。
【0049】
中空シール部22については、ルーフウェザストリップ20を第2パネル12に取付け、ハウジング50を配置し、第1パネル11を閉じた時に、
図3に示すように、第1パネル11と第2パネル12の上方に中空シール部22がはみ出さない、又は、第1パネル11と第2パネル12の上面から一定値下方に位置させることにより、見栄えを損なわない必要がある。中空シール部22に第1折れ曲がり部30と第2折れ曲がり部31を形成し、中空シール部22の変形の再現性を増大することは、上記効果にもつながる。
【0050】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、第2パネル12は樹脂製であり、第1パネル11の車両前方若しくは後方に隣接して固定して配置され、第2パネル12の第1パネル11側の端部には、車両上下方向において、第1パネル11側から車両下方向に鋭角の傾斜面40が形成され、傾斜面40には、ウェザストリップ取付部41が形成されるので、第1パネル11と第2パネル12間の限られた空間において、断面が略U字形状の取付基部21と、中空シール部22の寸法を従来と同程度に維持しつつ、ルーフウェザストリップ20の取付基部21の取付け、並びに中空シール部22による第1パネル11と第2パネル12間のシールを可能とすることができる。又、第2パネル12を樹脂製とすることにより、車両の軽量化が図られる。
【0051】
(2)本実施形態では、ウェザストリップ取付部41は、傾斜面40から第1パネル11側、且つ車両下方に延伸するように形成されるので、傾斜方向の延伸長に対する縦方向の寸法増加が抑制され、室内高を長くすることができる。
【0052】
(3)本実施形態では、ルーフウェザストリップ20は、断面が略U字形状の取付基部21と、中空シール部22を有し、ウェザストリップ取付部41に取付基部21が取付けられるので、取付基部21によって、ルーフウェザストリップ20をウェザストリップ取付部41に確実に固定することができる。
【0053】
(4)本実施形態では、傾斜面40のウェザストリップ取付部41より上方には、第1パネル11側、且つ車両下方に突出する突起部42が形成され、突起部42の突出長さは、ウェザストリップ取付部41より短く、中空シール部22には、貫通孔の係合部32が形成され、中空シール部22の係合部32と傾斜面40の突起部42が係合するので、中空シール部22と第1パネル11の端部(第1パネル縁部11a)が長時間の当接で固着し、その状態で第1パネル11を開いた時も、突起部42と係合部32の係合により中空シール部22の前後方向への移動により取付基部21の開口の先端部分が開くことを抑制し、且つ上記固着状態を剥がし、ウェザストリップ取付部41から取付基部21が外れ易くなること、中空シール部22と取付基部21の接続部分の接続強度が低下することを防止することができる。又、第1パネル11が閉じる時の中空シール部22にかかる取付基部21の開口の先端部分を開かせる応力に対抗することができる。
【0054】
(5)本実施形態では、中空シール部22において、第2パネル12の傾斜面40との当接部分、第1パネル11との当接部分には、凸状の第1折れ曲がり部30と第2折れ曲がり部31が形成されているので、第1パネル11を閉じた時には、第1折れ曲がり部30と第2折れ曲がり部31の凸状形状が緩和されるように変形するので、変形形状の再現性が増大する。又、中空シール部22と第1パネル11及び第2パネル12とのと当接部から水が車内側に漏れ出すことを防止することができる。さらに、第1パネル11と第2パネル12の上方に中空シール部22がはみ出さない、又は、第1パネル11と第2パネル12の上面から一定値下方に位置させることができる。
【0055】
(6)本実施形態では、中空シール部22の硬度は、取付基部21の硬度より低いので、中空シール部22は、変形し易く、第2パネル12の傾斜面40と第1パネル11の第2パネル側の第1パネル縁部11aに確実に当接させ、第1パネル11と第2パネル12との間をシールするので、中空シール部22を挟んで、第1パネル11側と第2パネル12側への水の侵入を防止することができる。
【0056】
(7)本実施形態では、取付基部21の第2縦辺部24の端部と、第1縦辺部23と連結部25を跨ぐ部分には、第1縦辺部23及び連結部25より硬度の低い低硬度部である第1低硬度部28と第2低硬度部29が形成されているので、ルーフウェザストリップ20の取付基部21を第2パネル12のウェザストリップ取付部41に取付けた後、ハウジング50に挟まれた時に、第1低硬度部28と第2低硬度部29が撓むことにより、ルーフウェザストリップ20の取付基部21を第2パネル12のウェザストリップ取付部41に確実に固定することができる。又、ルーフウェザストリップ20の取付基部21が確実に固定されているので、中空シール部22を第2パネル12の傾斜面40と第1パネル11の第1パネル縁部11aに確実に当接させることができる。さらに、車両1が振動した場合も、第1低硬度部28と第2低硬度部29が撓むことにより、ハウジング50と取付基部21、取付基部21と第2パネル12との間で異音が発生することを防止することができる。又、第2パネル12において、ルーフウェザストリップ20の取付部分を小さくすることができる。
【0057】
本発明は、特許請求の範囲に記載された発明に加え、以下の構成を含む。
前記第2パネルの車両下方には、ハウジングが配置され、前記取付基部の前記傾斜面側の傾斜面側端部及び/又は前記取付基部の前記ハウジング側には、前記取付基部を構成する部材より硬度の低い低硬度部が形成され、前記低硬度部が、前記傾斜面及び/又は前記ハウジングに当接する請求項3に記載のルーフウェザストリップの取付構造。
【0058】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0059】
ルーフウェザストリップ20を構成する材料としては、EPDMの他に、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等で形成することができる。熱可塑性エラストマーとしては、TPVの他、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)が耐候性、リサイクル、コスト等の観点から望ましい。
【符号の説明】
【0060】
10 ルーフ
11 第1パネル
11a 第1パネル縁部
12 第2パネル
20 ルーウェザストリップ
21 取付基部
22 中空シール部
28 第1低硬度部
29 第2低硬度部
30 第1折れ曲がり部
31 第2折れ曲がり部
32 係合部
40 傾斜面
41 ウェザストリップ取付部
42 突起部
50 ハウジング