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特開2024-143105光透過性導電層および光透過性導電性シート
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  • 特開-光透過性導電層および光透過性導電性シート 図1
  • 特開-光透過性導電層および光透過性導電性シート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143105
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光透過性導電層および光透過性導電性シート
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241003BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01B5/14 A
B32B7/025
C23C14/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055609
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 望
(72)【発明者】
【氏名】田邉 凌祐
【テーマコード(参考)】
4F100
4K029
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AA33A
4F100AK25A
4F100AK36B
4F100AK36C
4F100AK41A
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100DE01A
4F100EH66A
4F100JA11A
4F100JG01A
4F100JG04
4F100JK12A
4F100JK17
4F100JN01A
4F100YY00A
4K029AA11
4K029AA25
4K029BA03
4K029BA10
4K029BA15
4K029BA17
4K029BA35
4K029BA43
4K029BA44
4K029BA46
4K029BB02
4K029BC08
4K029CA06
4K029DC05
4K029DC34
4K029DC39
4K029KA01
5G307FA02
5G307FB01
5G307FB02
5G307FC10
(57)【要約】
【課題】低抵抗であって、屈曲性に優れる光透過性導電層および光透過性導電性シートを提供する。
【解決手段】光透過性導電層2は、第1主面21と、第1主面21と厚み方向に対向する第2主面22とを備える。また、光透過性導電層2の厚みは、50nm超過であり、光透過性導電層2は、結晶粒を有し、結晶粒の平均結晶粒径は、105nm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と厚み方向に対向する第2主面とを備える、光透過性導電層であって、
前記光透過性導電層の厚みは、50nm超過であり、
前記光透過性導電層は、結晶粒を有し、
前記結晶粒の平均結晶粒径は、105nm以下である、光透過性導電層。
【請求項2】
前記結晶粒は、最大結晶粒径が110nm以上の結晶粒を含む、請求項1に記載の光透過性導電層。
【請求項3】
前記結晶粒の総数に対する、結晶粒径が100nm以上の結晶粒の含有割合は、70%以下である、請求項1に記載の光透過性導電層。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光透過性導電層と、
前記光透過性導電層の前記第1主面および/または前記第2主面の側に、基材層と
を備える、光透過性導電性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性導電層および光透過性導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明な基材と透明な導電層とを厚さ方向に順に備える光透過性導電性シートが知られている。インジウムスズ複合酸化物(ITO)からなる光透過性導電層は、液晶ディスプレイ、タッチパネル、および光センサなどの各種デバイスにおける透明電極をパターン形成するための導体膜として用いられる。
【0003】
一方、タッチパネルの応答速度向上などの観点から、低抵抗の光透過性導電層(ITO層)を備える、光透過性導電性シートに対する需要が高まっている。そこで、光透過性導電層に含まれる結晶粒の平均結晶粒径を大きくし、低抵抗化させることが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-152827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、透明導電性フィルムには、近年、低抵抗であり、さらに、屈曲性に優れることが要求されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の光透過性導電層は、含まれる結晶粒の平均結晶粒径が大きいため、光透過性導電層を曲げた場合に、曲げ部分に大きな応力がかかり、クラックが発生する、つまり、屈曲性が低いという不具合がある。
【0007】
本発明は、低抵抗であって、さらに、屈曲性に優れる光透過性導電層および光透過性導電性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、第1主面と、前記第1主面と厚み方向に対向する第2主面とを備える、光透過性導電層であって、前記光透過性導電層の厚みは、50nm超過であり、前記光透過性導電層は、結晶粒を有し、前記結晶粒の平均結晶粒径は、105nm以下である、光透過性導電層を含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、前記結晶粒は、最大結晶粒径が110nm以上の結晶粒を含む、上記[1]に記載の光透過性導電層を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記結晶粒の総数に対する、結晶粒径が100nm以上の結晶粒の含有割合は、70%以下である、上記[1]または[2]に記載の光透過性導電層を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の光透過性導電層と、前記光透過性導電層の前記第1主面および/または前記第2主面の側に、基材層とを備える、光透過性導電性シートを含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、第1主面と、第1主面と厚み方向に対向する第2主面とを備える、光透過性導電層であって、光透過性導電層の厚みは、50nm超過であり、光透過性導電層は、結晶粒を有し、結晶粒の平均結晶粒径は、105nm以下である。そのため、低抵抗であり、さらに、屈曲性に優れる。
【0013】
本発明の光透過性導電性シートは、本発明の光透過性導電層を備える。そのため、低抵抗であり、さらに、屈曲性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の光透過性導電性シートの一実施形態の断面図を示す。
図2図2は、本発明の光透過性導電層、および、光透過性導電性シートの製造方法の一実施形態を示す概略図である。図2Aは、第1工程において、透明基材を準備する工程を示す。図2Bは、第1工程において、透明基材の厚み方向一方面に、光学調整層を形成する工程を示す。図2Cは、第1工程において、透明基材の厚み方向他方面に、ハードコート層を形成する工程を示す。図2Dは、基材層の厚み方向一方面に、光透過性導電層を配置する第2工程を示す。図2Eは、光透過性導電層を加熱する第3工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、本発明の光透過性導電層および光透過性導電性シートの一実施形態を説明する。
【0016】
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向、第1方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側、第1方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側、第1方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0017】
<光透過性導電性シート>
図1に示すように、光透過性導電性シート1は所定の厚みを有するシート形状(フィルム形状を含む)をなし、上下方向(厚み方向)と直交する所定方向(前後方向および左右方向、すなわち、面方向)に延び、平坦な上面(厚み方向一方面)および平坦な下面(厚み方向他方面)を有する。光透過性導電性シート1は、例えば、光学装置に備えられるタッチパネルおよび調光パネルなどの一部品であり、つまり、光学装置ではない。すなわち、光透過性導電性シート1は、光学装置などを作製するための部品であり、LCDモジュールなどの画像表示素子や、LEDなどの光源を含まず、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0018】
また、光透過性導電性シート1は、光透過性導電層2と、基材層3を備える。なお、光透過性導電層2は、第1主面21と第1主面21に対して厚み方向に対向する第2主面22とを備える。つまり、光透過性導電性シート1は、光透過性導電層2と、光透過性導電層2の第1主面21および/または第2主面22の側に、基材層3とを備える。具体的には、光透過性導電性シート1は、光透過性導電層2と、光透過性導電層2の第2主面22の側(厚み方向他方側)に、基材層3とを備える。
【0019】
光透過性導電性シート1の厚みは、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、150μm以下であり、また、例えば、20μm以上、好ましくは、40μm以上、より好ましくは、60μm以上、さらに好ましくは、80μm以上である。
【0020】
<基材層>
基材層3は、光透過性導電性シート1の機械的強度を確保する透明な基材である。
【0021】
基材層3は、シート形状(フィルム形状を含む)を有する。
【0022】
基材層3は、光透過性導電層2の第1主面21および/または第2主面22の側に配置される。好ましくは、基材層3は、光透過性導電層2の第2主面22の側(厚み方向他方側)に配置される。具体的には、基材層3は、光透過性導電層2の第2主面22に接触するように、光透過性導電層2の第2主面22全面に配置される。
【0023】
基材層3は、例えば、透明基材31を備え、必要に応じて、機能層32を備える。好ましくは、基材層3は、透明基材31と、透明基材31の厚み方向一方面および/または厚み方向他方面に、機能層32とを備え、より好ましくは、基材層3は、透明基材31と、透明基材31の厚み方向一方面および厚み方向他方面に、機能層32とを備える。
【0024】
基材層3の厚みは、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、150μm以下であり、また、例えば、20μm以上、好ましくは、40μm以上、より好ましくは、60μm以上、さらに好ましくは、80μm以上である。
【0025】
[透明基材]
透明基材31は可撓性を有し、光透過性導電層2を支持する。
【0026】
透明基材31は、シート形状(フィルム形状を含む)を有する。
【0027】
透明基材31は、例えば、高分子フィルムからなる。そのため、可撓性に優れる。また、透明基材31が、高分子フィルムからなれば、光透過性導電性シート1は、製造効率に優れる。
【0028】
また、透明基材31が、高分子フィルムからなると、光透過性導電性シート1の寸法安定性付与などの観点から、光透過性導電性シート1(結晶質の光透過性導電層2)を再加熱する場合があるが、この光透過性導電性シート1は、加熱安定性に優れる。
【0029】
高分子フィルムの材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、および、ノルボルネン樹脂が挙げられる。透明基材4は、好ましくは、屈曲性、耐熱性、機械的強度などの観点から、ポリエステル樹脂からなる高分子フィルムが挙げられる。
【0030】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートが挙げられ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリレートが挙げられる。
【0032】
オレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーが挙げられる。
【0033】
高分子フィルムは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0034】
透明基材31の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上である。
【0035】
透明基材31の全光線透過率が、上記下限以上であれば、透明基材31は透明性に優れる。
【0036】
透明基材31の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、50μm以上、さらに好ましくは、80μm以上、とりわけ好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、150μm以下である。
【0037】
透明基材31の厚みが、上記範囲内であれば、光透過性導電性シート1は、薄型化でき、さらに、機械的強度に優れる。
【0038】
透明基材31の厚みは、例えば、膜厚計を用いて測定することができる。
【0039】
[機能層]
機能層32は、透明基材31の厚み方向一方面および/または厚み方向他方面に配置される。好ましくは、機能層32は、透明基材31の厚み方向一方面および厚み方向他方面に配置される。
【0040】
機能層32は、シート形状(フィルム形状を含む)を有する。
【0041】
機能層32としては、例えば、アンチブロッキング層、光学調整層、および、ハードコート層が挙げられ、好ましくは、光学調整層、および、ハードコート層が挙げられる。
【0042】
機能層32が、光学調整層、および、ハードコート層である場合、基材層3は、例えば、透明基材31と、透明基材31の厚み方向他方面にハードコート層33と、透明基材31の厚み方向一方面に光学調整層とを備える。換言すれば、基材層3は、ハードコート層33と、透明基材31と、光学調整層34とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0043】
{ハードコート層}
ハードコート層33は、光透過性導電性シート1に擦り傷を生じ難くするための擦傷保護層である。
【0044】
ハードコート層33は、透明基材31の厚み方向他方面に配置される。具体的には、ハードコート層33は、透明基材31の厚み方向他方面に接触するように、透明基材31の下面(厚み方向他方面)全面に配置される。なお、ハードコート層33は、光透過性導電性シートの最下層である。
【0045】
なお、図1において、ハードコート層33は、透明基材31の厚み方向他方面に配置されているが、これに限定されない。つまり、ハードコート層33は、透明基材31の厚み方向一方側に配置されていてもよく、さらに、複数層配置されていてもよい。また、基材層3が、ハードコート層33と、後述する光学調整層34とを、透明基材31の厚み方向一方側または他方側のうち、同じ方向に備える場合、その積層順は、特に限定されない。
【0046】
ハードコート層33は、例えば、ハードコート組成物から形成される。
【0047】
ハードコート組成物は、例えば、樹脂を含み、必要に応じて、粒子を含有する。つまり、ハードコート層33は、例えば、樹脂を含み、必要に応じて、粒子を含有する。
【0048】
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、および、硬化性樹脂が挙げられる。
【0049】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0050】
硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、および、有機シラン縮合物が挙げられ、好ましくは、アクリル樹脂が挙げられる。
【0051】
また、硬化性樹脂は、例えば、活性エネルギー線(例えば、紫外線、および、電子線)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、および、加熱により硬化する熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0052】
樹脂は、単独使用または2種以上併用できる。
【0053】
粒子としては、例えば、金属酸化物微粒子および有機系微粒子が挙げられる。
【0054】
金属酸化物微粒子の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、および、酸化アンチモンが挙げられる。
【0055】
有機系微粒子の材料としては、ポリメチルメタクリレート、シリコーン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル-スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、および、ポリカーボネートが挙げられる。
【0056】
粒子は、単独使用または2種以上併用できる。
【0057】
ハードコート組成物は、例えば、樹脂を含み、好ましくは、硬化性樹脂を含み、より好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む。具体的には、ハードコート組成物は、アクリル樹脂を含む。
【0058】
また、ハードコート組成物は、例えば、チキソトロピー付与剤、光重合開始剤、充填剤(例えば、有機粘土)、および、レベリング剤を適宜の割合で配合することができる。さらに、ハードコート組成物は、公知の溶剤で希釈することができる。
【0059】
また、ハードコート層33を形成するには、詳しくは後述するが、ハードコート組成物の希釈液を透明基材31の厚み方向他方面に塗布し、必要により、乾燥させる。乾燥後、例えば、活性エネルギー線照射により、ハードコート組成物を硬化させる。
【0060】
これにより、ハードコート層33を形成する。
【0061】
ハードコート層33の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上、より好ましくは、1μm以上、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、3μm以下である。
【0062】
ハードコート層33の厚みは、例えば、ハードコート層33の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で、観察することで特定できる。
【0063】
{光学調整層}
光学調整層34は、光透過性導電層2のパターン視認を抑制し、さらに、光透過性導電性シート1内の界面での反射を抑制しつつ、光透過性導電性シート1に優れた透明性を確保するために、光透過性導電性シート1の光学物性(例えば、屈折率)を調整する層である。
【0064】
光学調整層34は、透明基材31の厚み方向一方面に配置される。具体的には、光学調整層34は、透明基材31の厚み方向一方面に接触するように、透明基材31の上面(厚み方向一方面)全面に配置される。なお、光学調整層34は、光透過性導電層2の第2主面22と接触する。
【0065】
なお、図1において、光学調整層34は、透明基材31の厚み方向一方面に配置されているが、これに限定されない。つまり、光学調整層34は、透明基材31の厚み方向他方側に配置されていてもよく、さらに、複数層配置されていてもよい。また、基材層3が、ハードコート層33と、光学調整層34とを、透明基材31の厚み方向一方側または他方側のうち、同じ方向に備える場合、その積層順は、特に限定されない。
【0066】
光学調整層34は、例えば、光学調整組成物から形成される。
【0067】
光学調整組成物は、例えば、樹脂を含み、必要に応じて、粒子を含有する。つまり、光学調整層34は、例えば、樹脂を含み、必要に応じて、粒子を含有する。
【0068】
樹脂としては、例えば、上記ハードコート組成物で挙げた樹脂が挙げられ、好ましくは、メラミン樹脂、アルキド樹脂、および、有機シラン縮合物が挙げられる。
【0069】
粒子としては、上記ハードコート組成物で挙げた粒子が挙げられる。
【0070】
光学調整組成物は、例えば、樹脂を含み、好ましくは、硬化性樹脂を含み、より好ましくは、熱硬化性樹脂を含む。具体的には、光学調整組成物は、メラミン樹脂、アルキド樹脂、および、有機シラン縮合物を含む。
【0071】
また、光学調整組成物は、例えば、チキソトロピー付与剤、光重合開始剤、充填剤(例えば、有機粘土)、および、レベリング剤を適宜の割合で配合することができる。さらに、光学調整組成物は、公知の溶剤で希釈することができる。
【0072】
また、光学調整層34を形成するには、詳しくは後述するが、光学調整組成物の希釈液を透明基材31の厚み方向一方面に塗布し、必要により、乾燥させる。乾燥後、例えば、加熱することにより、光学調整組成物を硬化させる。
【0073】
これにより、光学調整層34を形成する。
【0074】
光学調整層34の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、より好ましくは、10nm以上、さらに好ましくは、20nm以上、とりわけ好ましくは、30nm以上、また、例えば、1000nm以下、好ましくは、500nm以下、より好ましくは、100nm以下、さらに好ましくは、50nm以下である。
【0075】
光学調整層34の厚みは、例えば、瞬間マルチ測光システムを用いて観測される干渉スペクトルの波長に基づいて算出することができる。また、光学調整層34の断面を、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)で、観察することで厚みを特定してもよい。
【0076】
<光透過性導電層>
光透過性導電層2は、優れた導電性を有する透明な層である。
【0077】
光透過性導電層2は、第1主面21と第1主面21に対して厚み方向に対向する第2主面22を備える。また、光透過性導電層2の第1主面21および/または第2主面22の側に、基材層3が配置される。好ましくは、光透過性導電層2の第2主面22の側(厚み方向他方側)に、基材層3が配置される。具体的には、光透過性導電層2は、第2主面22の側(厚み方向他方側)に、光学調整層34と、透明基材31と、ハードコート層33とを順に備える。つまり、光透過性導電層2は、光学調整層34の厚み方向一方面に接触するように、光学調整層34の上面(厚み方向一方面)全面に配置される。なお、光透過性導電層2は、光透過性導電性シートの最上層である。
【0078】
第1主面21は、厚み方向一方側に露出する。第1主面21は、平坦面である。
【0079】
第2主面22は、第1主面21の厚み方向他方側に間隔を隔てて対向配置される。第2主面22は、第1主面21に平行な平坦面である。この一実施形態では、光透過性導電層2は、第2主面22の側(厚み方向他方側)に、光学調整層34と、透明基材31と、ハードコート層33とを順に備える。
【0080】
なお、平坦面とは、第1主面21と第2主面22とが略平行の平面であることを問わない。例えば、観察できない程度の微細な凹凸、波打ちは、許容される。
【0081】
光透過性導電層2の材料としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属および/または半金属を含む金属酸化物が挙げられる。金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子をドープしていてもよい。
【0082】
光透過性導電層2としては、具体的には、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)などのインジウム含有酸化物、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などのアンチモン含有酸化物などが挙げられ、好ましくは、インジウム含有酸化物、より好ましくは、インジウムスズ複合酸化物(ITO)が挙げられる。
【0083】
光透過性導電層2が、インジウムスズ複合酸化物を含むと、低抵抗化が可能である。
【0084】
光透過性導電層2の材料としてITOを用いる場合、酸化スズの含有割合は、酸化スズおよび酸化インジウムの合計量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、8質量%以上、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下、より好ましくは、12質量%以下である。
【0085】
酸化スズの含有割合が、上記下限以上であれば、低抵抗化が促進される。酸化スズの含有割合が、上記上限以下であれば、光透過性導電層2は、加熱安定性に優れる。
【0086】
光透過性導電層2における酸化スズ濃度は、X線光電子分光法によって、測定され、酸化スズの含有割合が算出できる。また、酸化スズの含有割合は、光透過性導電層2をスパッタリングで形成するときに用いられるターゲットの成分(既知)から推測することもできる。
【0087】
光透過性導電層2は、結晶粒を有し、好ましくは、複数の結晶粒を有する。結晶粒は、グレインと称されることもある。
【0088】
また、光透過性導電層2は、複数の結晶粒を有するため、粒界を有する。なお、粒界とは、互いに隣接する複数の結晶粒の境界を意味する。
【0089】
なお、以下で記載する結晶粒の粒径は、円相当径である。
【0090】
結晶粒の平均結晶粒径は、105nm以下であり、好ましくは、100nm以下、より好ましくは、95nm以下、また、例えば、20nm以上、好ましくは、40nm以上、より好ましくは、60nm以上、さらに好ましくは、80nm以上である。
【0091】
結晶粒の平均結晶粒径が、上記上限以下であれば、結晶粒が小さいため、屈曲性に優れる。また、結晶粒の平均結晶粒径が、上記下限以上であれば、低抵抗化が可能である。
【0092】
なお、結晶粒の平均結晶粒径は、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)を用いて、結晶粒を撮影し、撮影された画像を画像解析処理することにより、求めることができる。詳細は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0093】
結晶粒は、最大結晶粒径が、例えば、100nm以上、好ましくは、110nm以上、より好ましくは、130nm以上、さらに好ましくは、150nm以上、とりわけ好ましくは、170nm以上の結晶粒を含む。
【0094】
最大結晶粒径が上記下限以上の結晶粒を含めば、低抵抗化が可能である。
【0095】
また、結晶粒の最大結晶粒径は、例えば、300nm以下、好ましくは、250nm以下、より好ましくは、220nm以下である。
【0096】
最大結晶粒径が上記上限以下の結晶粒であれば、過度に粗大な結晶粒が、存在せず、屈曲性に優れる。
【0097】
なお、結晶粒の最大結晶粒径は、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)を用いて、結晶粒を撮影し、撮影された画像を画像解析処理することにより、求めることができる。詳細は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0098】
光透過性導電層2において、結晶粒の総数に対する、結晶粒径が100nm以上の結晶粒の含有割合は、例えば、80%以下、好ましくは、70%以下、より好ましくは、60%以下、さらに好ましくは、50%以下、とりわけ好ましくは、40%以下、また、例えば、0%超過、好ましくは、5%以上、より好ましくは、10%以上、さらに好ましくは、20%以上、とりわけ好ましくは、30%以上である。
【0099】
結晶粒の総数に対する、結晶粒径が100nm以上の結晶粒の含有割合が、上記上限以下であれば、屈曲性に優れる。また、結晶粒の総数に対する、結晶粒径が100nm以上の結晶粒の含有割合が、上記下限以上であれば、低抵抗化が可能である。
【0100】
光透過性導電層2において、結晶粒の総数に対する、結晶粒径が150nm以上の結晶粒の含有割合が、例えば、50%以下、好ましくは、30%以下、より好ましくは、20%以下、さらに好ましくは、10%以下、とりわけ好ましくは、5%以下である。
【0101】
結晶粒の総数に対する、結晶粒径が150nm以上の結晶粒の含有割合が、上記上限以下であれば、屈曲性に優れる。
【0102】
なお、結晶粒の総数に対する、特定の結晶粒径以上の結晶粒の含有割合は、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)を用いて、結晶粒を撮影し、撮影された画像を画像解析処理することにより、求めることができる。詳細は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0103】
また、光透過性導電層2は、結晶粒を有するため、結晶質である。つまり、光透過性導電層2は、面方向で、非晶質な領域を含まず、結晶質な領域のみを含むことが好ましい。なお、非晶質な領域を含む透明導電層は、例えば、透明導電層の面方向の結晶粒を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより、同定される。
【0104】
光透過性導電層2が結晶質である場合には、例えば、光透過性導電層2を、5質量%の塩酸水溶液に15分間浸漬した後、水洗および乾燥し、第1主面21において15mm程度の間の二端子間抵抗を測定し、二端子間抵抗が10kΩ以下である。一方、上記した二端子間抵抗が10kΩ超過であれば、光透過性導電層2は、非晶質である。
【0105】
光透過性導電層2の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上である。
【0106】
光透過性導電層2の全光線透過率が、上記下限以上であれば、光透過性導電層2は透明性に優れる。
【0107】
光透過性導電層2の厚みは、50nm超過、好ましくは、55nm以上、より好ましくは、60nm以上、さらに好ましくは、80nm以上、とりわけ好ましくは、100nm以上、最も好ましくは、120nm以上、また、例えば、1000nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、250nm以下、さらに好ましくは、200nm以下、とりわけ好ましくは、150nm以下、最も好ましくは、130nm以下である。
【0108】
光透過性導電層2の厚みが、上記下限以上であれば、低抵抗化が可能である。また、光透過性導電層2の厚みが、上記上限以下であれば、屈曲性に優れる。
【0109】
なお、光透過性導電層2の厚みは、例えば、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)を用いて、光透過性導電シート10の断面を観察することにより測定することができる。
【0110】
光透過性導電層2の比抵抗は、例えば、5.0×10-4Ω・cm以下、好ましくは、3.0×10-4Ω・cm以下、より好ましくは、2.8×10-4Ω・cm以下、さらに好ましくは、2.6×10-4Ω・cm以下、また、例えば、0.1×10-4Ω・cm以上、好ましくは、0.5×10-4Ω・cm以上、より好ましくは、1.0×10-4Ω・cm以上である。
【0111】
なお、比抵抗は、JIS K7194に準拠して、4端子法により測定することができる。
【0112】
光透過性導電層2の表面抵抗値は、例えば、200Ω/□以下、好ましくは、80Ω/□以下、より好ましくは、50Ω/□以下、さらに好ましくは、40Ω/□以下、とりわけ好ましくは、30Ω/□以下、最も好ましくは、25Ω/□以下、また、通常、0Ω/□超過、また、1Ω/□以上である。
【0113】
なお、表面抵抗値は、JIS K7194に準拠して、4端子法により測定することができる。
【0114】
なお、光透過性導電性シート10における光透過性導電層2の数は、特に限定されず、例えば、1層である。具体的には、1層の基材層3に対する光透過性導電層2の数は、例えば、1層である。
【0115】
<光透過性導電性シートの製造方法>
光透過性導電性シート1の製造方法を、図2を参照して説明する。
【0116】
光透過性導電性シート1の製造方法は、基材層3を作製する第1工程と、基材層3の厚み方向一方面に、光透過性導電層2を積層(配置)する第2工程と、光透過性導電層2を加熱し、結晶化する第3工程とを備える。また、この製造方法では、各層を、例えば、ロールトゥロール方式で、順に配置する。
【0117】
[第1工程]
第1工程では、基材層3を作製する。
【0118】
基材層3を作製するには、図2Aに示すように、まず、透明基材31を準備する。
【0119】
次いで、図2Bに示すように、透明基材31の厚み方向一方面に、光学調整組成物の希釈液を塗布し、乾燥後、紫外線照射または加熱により、光学調整組成物を硬化させる。これにより、透明基材31の厚み方向一方面に、光学調整層34を形成する。
【0120】
さらに、図2Cに示すように、透明基材31の厚み方向他方面に、ハードコート組成物の希釈液を塗布し、乾燥後、紫外線照射または加熱により、ハードコート組成物を硬化させる。これにより、透明基材31の厚み方向他方面に、ハードコート層33を形成する。これにより、基材層3を作製する。
【0121】
[第2工程]
第2工程では、図2Dに示すように、基材層3(光学調整層34)の厚み方向一方面に、光透過性導電層2を積層(配置)する。
【0122】
光透過性導電層2を積層する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。好ましくは、スパッタリング法が挙げられる。
【0123】
スパッタリング法は、真空装置のチャンバー内において、光透過性導電層2の材料からなるターゲットに、被着体(基材層3)の厚み方向一方面を対向させながら、ガスを供給するとともに電圧を印加することによりガスイオンを加速しターゲットに照射させて、ターゲット表面からターゲット材料をはじき出して、そのターゲット材料を被着体表面に積層させる。また、基材層3は、成膜ロールの周方向に沿って、密着している。
【0124】
スパッタリング法としては、例えば、2極スパッタリング法、ECR(電子サイクロトロン共鳴)スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリ
ング法などが挙げられる。好ましくは、マグネトロンスパッタリング法が挙げられる。
【0125】
スパッタリング法に用いる電源は、例えば、直流(DC)電源、交流中周波(AC/MF)電源、高周波(RF)電源、直流電源を重畳した高周波電源が挙げられ、好ましくは、DC電源が挙げられる。
【0126】
つまり、第2工程において、好ましくは、DCマグネトロンスパッタリング装置が用いられる。
【0127】
ターゲットとしては、例えば、光透過性導電層2を構成する上記した金属酸化物が挙げられる。具体的には、光透過性導電層2の材料としてITOを用いる場合、ITOからなるターゲットを用いる。
【0128】
ターゲット上の水平磁場強度は、例えば、10mT以上、好ましくは、60mT以上であり、また、例えば、300mT以下である。
【0129】
ターゲット上の水平磁場強度を上記範囲とすることで、光透過性導電層2を低抵抗化することが可能である。
【0130】
スパッタリング時の成膜温度(具体的には、基材層3の温度)としては、例えば、100℃以下、好ましくは、50℃以下、より好ましくは、0℃以下、さらに好ましくは、-5℃以下、また、例えば、-20℃以上である。
【0131】
スパッタリング時の成膜温度が、上記範囲内であれば、基材層3を十分冷却でき、光透過性導電層2の成膜時の結晶成長(特に、光透過性導電層2の厚み方向の結晶成長)を抑制できるため、後述する第3工程を経た後の光透過性導電層2において、結晶粒を得やすい。
【0132】
スパッタリング成膜装置内の気圧としては、例えば、1.0Pa以下、好ましくは、0.5Pa以下であり、また、例えば、0.01Pa以上、好ましくは、0.1Pa以上である。
【0133】
導入されるガス(スパッタリングガス)としては、例えば、不活性ガスが挙げられ、好ましくは、アルゴンガスである。また、反応性ガス(例えば、酸素)を併用することもできる。
【0134】
スパッタリングガスおよび反応性ガスの合計導入量に対する、反応性ガスの導入量の割合としては、例えば、0.1流量%以上、好ましくは、1.0流量%以上、より好ましくは、2.0流量%以上、また、例えば、10.0流量%以下、好ましくは、8.0流量%以下、より好ましくは、5.0流量%以下である。
【0135】
スパッタリングガスおよび反応性ガスの合計導入量に対する、反応性ガスの導入量の割合を調整することで、光透過性導電層2において、結晶粒6の粒径を調整することができる。
【0136】
これによって、非晶質の光透過性導電層2と、基材層3とを備える、非晶質の光透過性導電性シート1を得る。
【0137】
<第3工程>
第3工程では、非晶質の光透過性導電層2を加熱する。例えば、加熱装置(例えば、赤外線ヒーター、および、熱風オーブン)によって、非晶質の光透過性導電層2を加熱する。
【0138】
加熱温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、110℃以上、また、例えば、200℃未満、好ましくは、180℃以下である。また、加熱時間は、例えば、1分以上、好ましくは、10分間以上、より好ましくは、20分間以上、また、例えば、24時間以下、好ましくは、4時間以下、より好ましくは、1時間以下である。
【0139】
これにより、図2Eに示すように、非晶質の光透過性導電層2が結晶化され、結晶質の光透過性導電層2が形成される。
【0140】
これにより、光透過性導電層2が得られるとともに、光透過性導電層2と、基材層3とを備える、光透過性導電性シート1が得られる。
【0141】
その後、光透過性導電層2をパターンニングすることもできる。パターンニングは、例えば、エッチングによって実施される。
【0142】
<作用効果>
本発明は、第1主面と、第1主面と厚み方向に対向する第2主面とを備える、光透過性導電層であって、光透過性導電層の厚みは、50nm超過であり、光透過性導電層は、結晶粒を有し、結晶粒の平均結晶粒径は、105nm以下である。そのため、低抵抗であり、さらに、屈曲性に優れる。
【0143】
具体的には、光透過性導電層は、厚みが50nm超過であるため、低抵抗であり、さらに、結晶粒を有し、その平均結晶粒径が105nm以下であるため、屈曲性に優れる。
【0144】
また、本発明の光透過性導電層を備える、光透過性導電性シートは、低抵抗であり、さらに、屈曲性に優れる。
【実施例0145】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0146】
実施例1
<光透過性導電性シートの製造>
[第1工程]
長尺の透明基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ100μm、三菱ケミカル社製)のロールを用意し、PETフィルムの厚み方向一方面に、熱硬化型の樹脂組成物C1を塗布し、塗膜を形成した。樹脂組成物C1の塗膜を、185℃で1分間加熱し、硬化させた。これにより、厚さ35nmの光学調整層を形成した。なお、樹脂組成物C1は、メラミン樹脂100質量部と、アルキド樹脂100質量部と、有機シラン縮合物50質量部とを含む樹脂組成物である。次いで、PETフィルムの厚み方向他方面に、紫外線硬化型の樹脂組成物C2を塗布し、塗膜を形成した。樹脂組成物C2の塗膜を、紫外線照射によって、硬化させた。これにより、厚さ2μmのハードコート層を形成した。なお、樹脂組成物C2は、アクリル樹脂を含む樹脂組成物である。
【0147】
これにより、基材層(ハードコート層と、透明基材と、光学調整層とを厚み方向一方側に向かって順に備える)を作製した。
【0148】
[第2工程]
基材層(光学調整層)の厚み方向一方面に、反応性スパッタリング法により、厚さ125nmの非晶質光透過性導電層を積層(配置)した。反応性スパッタリング法では、ロールトゥロール方式で成膜プロセスを実施できるスパッタ成膜装置(DCマグネトロンスパッタリング装置)を使用した。
【0149】
詳しくは、ターゲットとして、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体(酸化スズ濃度は10質量%)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。ターゲット上の水平磁場強度は90mTとした。基材層の搬送速度は、2.0m/分とした。成膜温度(基材層の温度)は、-8℃とした。
【0150】
また、スパッタ成膜装置が備える成膜室内の到達真空度が、0.8×10-4Paに至るまでスパッタ成膜装置内を真空排気した後、スパッタ成膜装置内に、スパッタリングガスとしてアルゴンと、反応性ガスとして酸素とを導入し、スパッタ成膜装置内の気圧を0.4Paとした。なお、スパッタ成膜装置に導入されるアルゴンおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は約3.4流量%であった。
【0151】
これにより、厚さ125nmの非晶質の光透過性導電層を備える、光透過性導電性シートを得た。
【0152】
[第3工程]
非晶質の光透過性導電層を備える、光透過性導電性シートを、熱風オーブンにて、155℃で30分間加熱し、光透過性導電層を結晶化させた。
【0153】
これにより、光透過性導電層と、光透過性導電層の第2主面の側(厚み方向他方側)に基材層とを備える、実施例1の光透過性導電性シートを得た。
【0154】
比較例1
第2工程において、スパッタリングガスとしてクリプトンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして光透過性導電性シートを得た。
【0155】
比較例2
第3工程において、光透過性導電性シートを、加熱せず、非晶質の光透過性導電層を結晶化させなかったこと以外は、実施例1と同様にして光透過性導電性シートを得た。
【0156】
<評価>
[光透過性導電層の厚み]
実施例1および各比較例の光透過性導電層の厚みを、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)観察(断面観察)により測定した。具体的には、まず、集束イオンビーム(FIB)マイクロサンプリング法により、実施例1および各比較例の光透過性導電層の断面観察用サンプルを作製した。FIBマイクロサンプリング法では、FIB装置(商品名「FB2200」、Hitachi製)を使用し、加速電圧を10kVとした。次いで、断面観察用サンプルにおける光透過性導電層の厚さを、FE-TEM観察によって測定した。FE-TEM観察では、FE-TEM装置(商品名「JEM-2800」、JEOL製)を使用し、加速電圧を200kVとした。その結果を表1に示す。
【0157】
[抵抗値]
実施例1および比較例の光透過性導電性シートの抵抗値(R0)を、四端子法にて、測定した。抵抗値に関して、次の基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0158】
{基準}
〇:40Ω/□以下
×:40Ω/□超過
【0159】
[結晶粒径(平面視)]
実施例1および比較例1の光透過性導電性シートを切り出し、ウルトラミクロトームの試料ホルダに固定した。次いで、光透過性導電層面に対して極鋭角にミクロトームナイフを設置し、切断面が光透過性導電層と略平行となるように切削して観察試料を得た。この観察試料をFE-TEM装置(商品名「JEM-2800」、JEOL製)を使用し、加速電圧;200kVとして、光透過性導電層の平面視における結晶粒を撮影した(直接倍率:100,000倍)。なお、撮影範囲は、約1400nm×1400nmとした。次いで、撮影された画像を画像解析処理することにより、結晶粒界によって規定される領域(各結晶粒界内領域)に存在するピクセルの数から、各結晶粒界内領域の面積を求め、その面積と同じ面積の円の直径を結晶粒径(円相当径)として算出し、平均結晶粒径、最大結晶粒径を求めた。また、FE-TEMにより観察(撮影)した結晶粒における、結晶粒径が100nm以上の結晶粒の数を求め、観察した結晶粒の総数に対する、100nm以上の結晶粒の含有割合を求めた。また、同様にして、150nm以上の結晶粒の含有割合を求めた。その結果を表1に示す。なお、比較例2の光透過性導電性シートは、非晶質であるため、結晶粒を有さない。
【0160】
[屈曲性]
実施例1および各比較例の光透過性導電性シートを、それぞれ幅10mm、長さ150mmに切断した。この切断した光透過性導電性シートを、光透過性導電層が外側となる状態かつ基材層の厚み方向他方面(ハードコート層)がマンドレルと接触する状態となるように、マンドレルの上に配置した。次いで、光透過性導電性シートの長さ方向の両端をクリップで留め、そのクリップの中央に1000gの重りを取り付けた。すなわち、光透過性導電性シートの幅に対して100g/mmの荷重を、下側に向かって印加して、光透過性導電性シートを折り曲げた。この折り曲げ状態を10秒間持続させた。折り曲げ状態で、屈曲部をマジックで塗った後、折り曲げ状態を開放し、マジック塗り部を顕微鏡にて観察した。マンドレルの直径を大径から小径に1mmごとに変更していき、このマジック塗り部の観察において、クラックが確認できなかった最小の径を表1に示す。クラックが確認できなかった径が小さいほど、耐屈曲性に優れる。なお、マンドレルの直径を変更するごとに、新たな光透過性導電性シートを用いた。
【0161】
【表1】
【符号の説明】
【0162】
1 光透過性透明導電性シート
2 光透過性導電層
3 基材層
21 第1主面
22 第2主面
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と厚み方向に対向する第2主面とを備える、光透過性導電層であって、
前記光透過性導電層の厚みは、50nm超過であり、
前記光透過性導電層は、結晶粒を有し、
前記結晶粒の平均結晶粒径は、105nm以下であり、
前記結晶粒の総数に対する、結晶粒径が100nm以上の結晶粒の含有割合は、5%以上、80%以下である、光透過性導電層。
【請求項2】
前記結晶粒は、最大結晶粒径が110nm以上の結晶粒を含む、請求項1に記載の光透過性導電層。
【請求項3】
前記結晶粒の総数に対する、結晶粒径が100nm以上の結晶粒の含有割合は、70%以下である、請求項1に記載の光透過性導電層。
【請求項4】
第1主面と、前記第1主面と厚み方向に対向する第2主面とを備える、光透過性導電層であって、
前記光透過性導電層の厚みは、50nm超過であり、
前記光透過性導電層は、インジウムスズ複合酸化物からなり、
前記光透過性導電層は、結晶粒を有し、
前記結晶粒は、最大結晶粒径が110nm以上の結晶粒を含み、
前記結晶粒の平均結晶粒径は、105nm以下である、光透過性導電層。
【請求項5】
前記結晶粒の総数に対する、結晶粒径が100nm以上の結晶粒の含有割合は、70%以下である、請求項4に記載の光透過性導電層。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の光透過性導電層と、
前記光透過性導電層の前記第1主面および/または前記第2主面の側に、基材層と
を備える、光透過性導電性シート。