(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143107
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/16 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C22B1/16 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055612
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】燒谷 将大
(72)【発明者】
【氏名】大菅 宏児
(72)【発明者】
【氏名】宮川 一也
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA18
4K001CA19
4K001KA01
4K001KA05
4K001KA06
(57)【要約】
【課題】複数の造粒物を造り分ける造粒工程において、使用原料の特性を考慮した適正な造粒物の成分設計を行うことにより、焼結鉱の強度や生産性などの向上を図ることができる焼結鉱の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、核粒子2の外周囲に付着層3が形成されている造粒物A及び造粒物Bを造り分けて、それらの造粒物A,Bを混合し焼成して焼結鉱の製造する焼結プロセスを操業するに際して、造粒物A及び造粒物Bのそれぞれにおける低アルミナ鉱石の配合割合≦30mass%、造粒物Aと造粒物Bの付着層での加重平均[C/F]≧0.115を満たし、低アルミナ鉱石を造粒物Aに傾斜配合し、造粒物Bの付着層3の[C/F]≧0.08となるように石灰石4を造粒物Aに傾斜配合し、造粒物Aの付着層3中の結晶水成分≦4.0mass%となるように高結晶水鉱石を造粒物Aに傾斜配合して造粒物A,Bを製造する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核粒子の外周囲に付着層が形成されている造粒物A及び造粒物Bを造り分けて、それらの造粒物A及び造粒物Bを混合し焼成して焼結鉱の製造する焼結プロセスを操業するに際して、以下の(1),(2)を満たす造粒物A及び造粒物Bを製造することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(1)造粒物A及び造粒物Bのそれぞれにおける低アルミナ鉱石の配合割合≦30mass%
(2)造粒物Aと造粒物Bの付着層での加重平均[C/F]≧0.115
なお、[C/F]とはCaO(mass%)/Fe2O3(mass%)のことである。
【請求項2】
造粒機ごとに装入する所定の原料の量を変更して配合する「原料の傾斜配合」を行って造粒物Aと造粒物Bを造り分けるに際しては、
造粒物Aに低アルミナ鉱石が多く配合されるように、前記低アルミナ鉱石を造粒物Aに傾斜配合する
ことを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
造粒物Aに石灰石が多く配合されるように、前記石灰石を造粒物Aに傾斜配合すると共に、造粒物Bの付着層の[C/F]≧0.08とする
ことを特徴とする請求項2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
造粒物Aに高結晶水鉱石が多く配合されるように、前記高結晶水鉱石を造粒物Aに傾斜配合すると共に、造粒物Aの付着層中における結晶水成分≦4.0mass%とする
ことを特徴とする請求項3に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石と副原料を混合して造粒し、造粒物を焼き固めて焼結鉱を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、焼結プロセス(焼結鉱を製造する工程)では、まず造粒機で、鉄鉱石と副原料(石灰石等)を混合して熱源となる炭材を加え、焼結原料となる造粒物を作製したのち、その造粒物を焼結機に充填し、焼成して成品となる焼結鉱を得る。
【0003】
このうち、造粒工程では、原料ホッパより造粒機に装入された上記原料に対して加水しながら転動させることで、核となる鉱石の周りに微粉鉱石や石灰石などが付着して付着層が形成される。このようにして、付着層が形成された造粒物が製造される。なお、造粒機については、ドラムミキサーやパンペレタイザーを用いる方法が一般的である。造粒物は焼結機にて焼成され、焼結鉱が製造される。このような焼結鉱を製造する技術としては、例えば、特許文献1~3などに開示されているものがある。
【0004】
特許文献1は、焼結鉱の製造方法において、高炉操業に影響を及ぼす焼結鉱の化学成分を変更することなく、焼結鉱の歩留や生産性を安定して確実に向上させることを目的としている。
【0005】
具体的には、焼結原料として配合される各種粉鉱石をAl2O3含有量に応じて、2つの系列(高Al2O3含有量側=第1系列(A)、低Al2O3含有量側=第2系列(B))に分類し、この分類された各系列(A,B)の粉鉱石に対し、CaO源(4A,4B)と粉体燃料(7A,7B)を配合し、この各系列(A,B)の配合物をそれぞれ混合・造粒(8A,8B)した後、この各系列の造粒物を混合(9)して全焼結原料とし、この全焼結原料を焼成(10)して焼結鉱を製造する方法において、第1系列(A)の配合物中における0.5mm以下の微粉部分の塩基度(質量比CaO/SiO2)を4.4~7.3の範囲とするとともに、第1系列(A)の配合物(返鉱と粉体燃料を除く)と第2系列(B)の配合物(粉体燃料を除く)の混合比率を質量比で2:8~8:2の範囲とすることとされている。
【0006】
特許文献2は、焼結鉱の製造方法において、微粉鉱石(ペレットフィード)を多量に配合する場合に、燒結鉱生産性と燒結鉱強度を向上させることを可能にすることを目的としている。
【0007】
具体的には、焼結原料を、主焼結原料と副焼結原料とに分け、それぞれを混合・造粒する、主造粒工程と、副造粒工程とを並列で有し、前記主造粒工程と前記副造粒工程で製造したそれぞれの造粒物を合わせ、前記合わせた造粒物を焼成する焼結鉱の製造方法であって、前記副造粒工程は、前記副焼結原料の一部である微粉鉱石と粉鉱石の比が1.5/1以上3/1未満であり、バインダーが、生石灰と破砕鉱石であって、前記破砕鉱石は、前記副焼結原料に対し3質量%以上7質量%未満であることとされている。
【0008】
特許文献3は、被還元性が劣る短冊状CaFの生成を抑制するとともに常温強度及び耐還元粉化性の優れた非晶質スラグの生成を促進し、常温強度、還元粉化性、被還元性の優れた焼結鉱を歩留り良く製造することができることを目的としている。
【0009】
具体的には、焼結原料の事前処理方法において、結原料として配合する各種粉鉱石の化学成分と配合比から全粉鉱石の{平均Al2O3重量含有割合/(平均Al2O3重量含有割合+平均Fe2O3重量含有割合)}値と平均SiO2重量含有割合値を計算し、これら平均値を基準として各種粉鉱石を分類し、前記平均値より低い{Al2O3重量含有割合/(Al2O3重量含有割合+Fe2O3重量含有割合)}値を持ちかつ前記平均値より高いSiO2重量含有割合値を持つ粉鉱石について、媒溶剤として配合するCaO源を全焼結原料の平均(CaO重量含有割合/SiO2重量含有割合)値よりも高くなるように配合し、この配合物を全焼結原料の混合、造粒に先立って混合、造粒することとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-114485号公報
【特許文献2】特開2016-191122号公報
【特許文献3】特開昭63-076825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
さて、
図1に、造粒原料1を造粒して、焼結鉱を製造する焼結プロセスの概略を模式的に示す。
図1に示すように、焼結鉱を製造するに際しては、ドラムミキサー8などの造粒設備7で事前に処理された造粒原料1(以下、造粒物1と呼ぶ。)を焼結機10上のパレット台車に供給し、炭材を含む原料充填層の表面に着火し、下方よりガスを吸引して燃焼を伝播させる。その燃焼をさせている際、複数の造粒物1間を溶融同化させて凝固することで、成品の焼結鉱を製造する。
【0012】
図2に、造粒物1の概略を模式的に示す。
図2に示すように、多くの造粒物1は、+1mmの核となる鉱石2に、石灰石4、-1mmの微粉鉱石5(または副原料)で覆われた形状をしている。すなわち、造粒物1は、周囲に付着層3が形成されたものであり、擬似粒子ともいわれる。
【0013】
ところで、焼結機上において造粒物が燃焼により溶融する際に、造粒物の溶融起点となる部分は、比表面積の多い付着層の部分であり、溶融した付着層から発生したカルシウムフェライト系(CF)の融液が周囲の造粒物を巻き込んで同化させながら、焼結反応が進む。このとき、造粒物間の溶融同化性が良好であるほど、結合組織が強固となり、強度の高い成品の焼結鉱が得られることとなる。
【0014】
この造粒物間の溶融同化性は、発生する融液の量や粘性などに依存するものであり、それらは付着層の成分、すなわち造粒時に使用する原料の銘柄の性状によって左右される。例えば、微粉の多い鉄鉱石を使用した場合、造粒物の付着層中の鉄分が相対的に高くなり、その一方で溶融成分のCaOが相対的に低下することで、融液の発生量が低下する。また、アルミナ成分の多い鉱石を使用した場合、融液の発生量は十分でも、融液粘性が上昇し同化不良となって脆弱な構造となってしまう。
【0015】
さらに、焼結鉱の生産性に関しては、焼成機内の歩留と原料充填層の通気性が支配的である。その原料充填層での通気性が良好であれば、焼成時間が短縮されるので生産量を向上させることができる。焼結機内の通気性を確保するためには、原料充填層の空隙率を上げる(密度を低下させる)ことが必要である。
【0016】
造粒物から粘性の高い融液が発生した場合は、焼結機の下方からガスを吸引した際に流動しづらくなり、ガスパスの形成を阻害して通気性が悪化し、焼結鉱の生産性が低下する。また、融液量が少ない場合は、未焼が発生してしまい、焼成機内の歩留悪化で、焼結鉱の生産性が低下する。逆に、融液量が多すぎると、ガス流動を阻害し焼成ムラを発生させる。
【0017】
すなわち、焼結機内の通気性向上のためには、適正な融液量、融液粘性などが重要である。上記した焼成時の溶融制御には、造粒にて使用する原料の選定により、造粒物の付着層成分を適切に設計することが重要である。しかしながら、鉱石の性状は一般的に概ね決まっており、また鉱石の需給制約上、原料の選定や量などをコントロールすることは困難である。
【0018】
特許文献1は、高結晶水鉱石の配合に関する指定をしていない。つまり、付着層の結晶水成分の上限が不明である。また、特許文献2、3は、造粒物の付着層の[C/F](=CaO/Fe2O3)の値を規定していない。つまり、特許文献2、3は、適正な造粒物の成分設計を行うことが困難である。
【0019】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、複数の造粒物を造り分ける造粒工程において、使用原料の特性を考慮した適正な造粒物の成分設計を行うことにより、焼結鉱の強度や生産性などの向上を図ることができる焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
【0021】
本発明にかかる焼結鉱の製造方法は、核粒子の外周囲に付着層が形成されている造粒物A及び造粒物Bを造り分けて、それらの造粒物A及び造粒物Bを混合し焼成して焼結鉱の
製造する焼結プロセスを操業するに際して、以下の(1),(2)を満たす造粒物A及び造粒物Bを製造することを特徴とする。
【0022】
(1)造粒物A及び造粒物Bのそれぞれにおける低アルミナ鉱石の配合割合≦30mass%
(2)造粒物Aと造粒物Bの付着層での加重平均[C/F]≧0.115
なお、[C/F]とはCaO(mass%)/Fe2O3(mass%)のことである。
【0023】
好ましくは、造粒機ごとに装入する所定の原料の量を変更して配合する「原料の傾斜配合」を行って造粒物Aと造粒物Bを造り分けるに際しては、造粒物Aに低アルミナ鉱石が多く配合されるように、前記低アルミナ鉱石を造粒物Aに傾斜配合するとよい。
【0024】
好ましくは、造粒物Aに石灰石が多く配合されるように、前記石灰石を造粒物Aに傾斜配合すると共に、造粒物Bの付着層の[C/F]≧0.08とするとよい。
【0025】
好ましくは、造粒物Aに高結晶水鉱石が多く配合されるように、前記高結晶水鉱石を造粒物Aに傾斜配合すると共に、造粒物Aの付着層中における結晶水成分≦4.0mass%とするとよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の焼結鉱の製造方法によれば、複数の造粒物を造り分ける造粒工程において、使用原料の特性を考慮した適正な造粒物の成分設計を行うことにより、焼結鉱の強度や生産性などの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】焼結鉱を製造する焼結プロセスの概略を模式的に示した図である。
【
図2】焼結プロセスで製造された造粒物の概略を模式的に示した図である。
【
図3】本実施形態の造粒工程(造粒設備)の概略を模式的に示した図である。
【
図4】造粒工程における分割造粒法の一例を示した図である。
【
図5】単一造粒での造粒物の付着層の[C/F]と、焼結回転強度の関係を示した図である。
【
図6】カナダ産精鉱配合(低アルミナ鉱石)と、造粒性の関係を示した図である。
【
図7】付着層中の結晶水と、焼結回転強度のバラつきの関係を示した図である。
【
図8】石灰石の均等配合と、石灰石の傾斜配合の概略を模式的に示した図である。
【
図9】分割造粒した造粒物Bの付着層の[C/F]と、焼結回転強度の関係を示した図である。
【
図10】カナダ産精鉱(低アルミナ鉱石)や豪州鉱(高結晶水鉱石)などの原料が、どちらか一方側の造粒物1に偏在した際における焼結機内の影響について示した図である。
【
図11】角鍋試験による焼結強度及び焼結鉱の生産性の結果の評価を示した図である。
【
図12】本発明にかかる焼結鉱の製造方法の手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明にかかる焼結鉱の製造方法の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
【0029】
本発明にかかる焼結鉱の製造方法は、以下に述べることを検討し、焼結原料となる複数の造粒物1(本実施形態では、造粒物A及び造粒物B)を造り分ける造粒工程において、使用原料の特性を考慮した適切な造粒物A,Bの成分設計を行うことで、焼結鉱の強度や生産性などの向上を図ることができる知見を得た。
【0030】
すなわち、本発明の焼結鉱の製造方法は、核粒子2の外周囲に付着層3が形成されている造粒物A及び造粒物Bを造り分けて、それらの造粒物A及び造粒物Bを混合し焼成して焼結鉱の製造する焼結プロセスを操業するに際して、以下の(1),(2)を満たす造粒物A及び造粒物Bを製造することを特徴とする。
【0031】
(1)造粒物A及び造粒物Bのそれぞれにおける低アルミナ鉱石の配合割合≦30mass%
(2)造粒物Aと造粒物Bの付着層での加重平均[C/F]≧0.115
なお、[C/F]とはCaO(mass%)/Fe2O3(mass%)のことである。
【0032】
さらに好ましくは、造粒機(本実施形態では、ドラムミキサー8,9)ごとに装入する所定の原料の量を変更して配合する「原料の傾斜配合」を行って造粒物Aと造粒物Bを造り分けるに際しては、造粒物Aに低アルミナ鉱石が多く配合されるように、低アルミナ鉱石を造粒物Aに傾斜配合するとよい。
【0033】
さらに好ましくは、造粒物Aに石灰石4が多く配合されるように、石灰石4を造粒物Aに傾斜配合すると共に、造粒物Bの付着層の[C/F]≧0.08とするとよい。
【0034】
さらに好ましくは、造粒物Aに高結晶水鉱石が多く配合されるように、高結晶水鉱石を造粒物Aに傾斜配合すると共に、造粒物Aの付着層中における結晶水成分≦4.0mass%とするとよい。
【0035】
以下に、本発明にかかる焼結鉱の製造方法をより詳しく説明する。
【0036】
造粒物1を製造する際には、使用する鉱石や副原料などにより、全体的な造粒物1の性状が概ね決定される。例えば、単一(1種類)の造粒物1を作製した場合、すべての造粒物1がほぼ同様の溶融挙動を示すため、溶融同化状態のコントロールには至らない。
【0037】
そこで、造粒系統を複数設けて造粒物1を造り分けて、各造粒物1の機能を分担させることで、溶融同化を促進させ、焼結強度並びに原料充填層の通気性の向上、すなわち生産性の向上を図る。
【0038】
具体的には、複数のうち1つの造粒物1(以下、造粒物Aと呼ぶ)に副原料である石灰石、低アルミナ鉱石、高結晶水鉱石等を優先的に(他の造粒物1(以下、造粒物Bと呼ぶ)より多く)配合し、易溶融性の造粒物Aを製造する。この低アルミナ鉱石などが多く配合された造粒物Aは、低粘性かつ多量の融液を発生するため、焼結時に残りの難溶融性の造粒物Bを巻き込みながら同化を進展させて、強固な焼結体(焼結鉱)を形成させることができる。
【0039】
図1に、焼結鉱を製造する焼結プロセスの概略を模式的に示す。
図2に、焼結プロセス(造粒工程)で製造された造粒物1の概略を模式的に示す。
【0040】
一般に、焼結プロセスでは、鉄鉱石に対して、副原料(石灰石4等)を混合して熱源となる炭材を加え、造粒機(ドラムミキサー8,9)で焼結原料となる造粒物1を作製し、その造粒物1を焼結機10に充填し、焼成して成品となる焼結鉱を製造する。
【0041】
このうち、造粒工程では、
図1に示すように、原料層6(原料ホッパ6)より造粒機に装入された上記原料に対して加水しながら転動させることで、
図2に示すように、核となる鉱石2の周りに石灰石4や微粉鉱石5などが付着して付着層3が形成される。このようにして、付着層3が形成された造粒物1が製造される。なお、造粒機については、例えば、ドラムミキサー8やパンペレタイザー11を用いる方法が一般的である。造粒物1は焼結機10にて焼成され、焼結鉱が製造される。
【0042】
本実施形態においては、混合し焼成する焼結プロセスにおいて、複数の造粒機(ドラムミキサー8,9)で、焼結鉱の原料となる複数の造粒物1(造粒物A、造粒物B)を造り分ける。
【0043】
図3に、本実施形態の造粒工程(造粒設備7)の概略を模式的に示す。
【0044】
図3に示すように、本実施形態では、複数の系統を備える原料工程から切り出された原料を、二つの系統を並列に備えたの造粒設備7で、2種類の造粒物1を造り分ける。具体的には、II系統のドラムミキサー8で、溶融しやすい造粒物Aを造粒し、I系統のドラムミキサー9で、溶融しにくい造粒物Bを造粒する。これら造粒物Aと造粒物Bを混合し、焼結機10にて焼成して焼結鉱を製造する。
【0045】
【0046】
図4に示すように、造粒工程では、複数の系統を備える原料工程(原料層6a,6b)から切り出された原料を、複数の造粒設備7(ドラムミキサー8、パンペレタイザー11など)で造粒物1を造り分けておき、各造粒物1を混合して焼結機10に投入する方法がある(いわゆる、分割造粒法)。
【0047】
図4の例では、ドラムミキサー8で一方の造粒物1を造粒し、パンペレタイザー11で他方の造粒物1を造粒し、2種類の造粒物1を混合し、焼結機10にて焼成して焼結鉱を製造する。なお、本発明は
図4の例でも適用可能である。
【0048】
このような、分割造粒方法は、焼結機10内での複数の造粒物1間の溶融挙動を変化させ、通気性向上を狙った技術として知られている。分割造粒方法で造粒される造粒物1には、焼成した際に溶けやすく周囲の造粒物1を巻き込みながら同化させる役割を持つ融液供給側の造粒物1(本実施形態では、造粒物A)と、融液受容側の造粒物1(本実施形態では、造粒物B)と、に分けられる。すなわち、融液共有側の造粒物Aには、低粘性かつ多量の融液を発生させる性状に設計することが重要である。つまり、溶融しやすい造粒物Aと溶融しにくい造粒物Bを造粒することが必要となる。
【0049】
焼結機10内では、炭材を含む原料充填層の表面から着火し、下方より大気を吸引して燃焼を伝播させる。燃焼が充填された造粒物1に伝播される際、造粒物1の一部が溶融して、粉コークスを燃焼させたときの燃焼熱で、カルシウムフェライト系(CF)の融液が生成され、その融液が吸引ガスの流れに沿って下方へ流動して、粉鉱石同士を融液によるスラグ結合で塊成化して、他の造粒物1を同化させる。溶融同化した造粒物1が冷却されることで、焼結体(焼結鉱)を得る。
【0050】
このとき、造粒物1から発生する融液性状によって、各造粒物1間の溶融同化特性が変化する。例えば、造粒物1に高アルミナ原料を使用した場合は、発生する融液の粘性が上昇し、融液は高粘性となり下方に流動しづらく、他の造粒物1を同化させにくい上に、壁のようになってガス流動を阻害して、原料充填層の通気性の悪化を招く虞がある。つまり、生産性の低下につながる。また、難溶融性の原料を使用した場合、発生する融液量が不足し、同化不良(すなわち、未焼部分の発生)により生産性の低下を招いてしまう。
【0051】
このように、焼結鉱を製造するプロセスにおいては、焼結機10内の原料充填層の通気性を確保し、燃焼に必要な空気を原料充填層に安定供給する必要がある。そのためには、焼結の前処理工程である造粒工程にて、鉄鉱石と石灰石4等の原料を適切に混合して造粒し、擬似粒子化した造粒物1を製造することが必要となってくる。
【0052】
そこで、本発明では、一方の造粒物Aにおいて、石灰石4、低アルミナ鉱石や高結晶水鉱石などの微粉鉱石5の傾斜配合を行う(造粒物Bより多く配合する)こととしている。なお、造粒物A,Bを製造する際の副原料(石灰石4、低アルミナ鉱石や高結晶水鉱石などの微粉鉱石5)の「傾斜配合」については、後ほど詳しく説明する。
【0053】
ここで、表1に、本実施形態で用いたパラメータの定義について示す。
【0054】
【0055】
例えば、表1に示すように、本実施形態における「低アルミナ鉱石」については、 アルミナ含有量が1.0mass%未満と低い鉄鉱石を用いている。この低アルミナ鉱石において、代表的なものはカナダ産精鉱であり、粒度が微細である(-1mmの粉率が約90%)という特徴を持つ。ただし、アルミナ含有量が低いため、発生する融液の粘性は低いが、他の鉱石
と比べると付着層3となる-1mmの粒度範囲では比較的粒径が大きいため反応性が悪く、溶け残りが多い。また、鉱石表面は、平滑で造粒性は良くない。
【0056】
なお、粒径は篩分け法による測定値であり、-1mmは「1mmアンダー、目開き1mmの篩を通過するもの」であり、+1mmは「1mmオーバー、目開き1mmの篩を通過できないもの」である。
【0057】
また、本実施形態における「高結晶水鉱石」については、結晶水含有量が10.0mass%以上と高い鉄鉱石を用いている。この高結晶水鉱石において、代表的なものは豪州鉱であり、幅広い粒度分布を持つ。ただし、高結晶水鉱石はマイクロオーダーの粉が多いため、溶融性が良く多量の融液を生成するが、結晶水が遊離する際に気泡となり、融液中に残存するため融液の構造粘性は高い。
【0058】
本実施形態においては、全ての造粒物1(造粒物A及び造粒物B)の付着層3での加重平均[C/F](=CaO/Fe2O3)が0.115以上を満たすこととしている。このことについて、以下に詳しく説明する。
【0059】
なお、造粒物A及び造粒物Bそれぞれの付着層3での加重平均[C/F]については、以下に示す式で算出することができる。
【0060】
・造粒物A及び造粒物Bそれぞれの加重平均[C/F]=造粒物Aの重量/(造粒物Aの重量+造粒物Bの重量)×造粒物Aの付着層3の[C/F]+造粒物Bの重量/(造粒物Aの重量+造粒物Bの重量)×造粒物Bの付着層3の[C/F]
ところで、焼結時での造粒物1の溶融起点は比表面積の多い付着層3である。この付着層3の成分を造粒時にコントロールすることにより、焼結時に発生する融液性状が決まる。なお、本実施形態における付着層3とは、-1mmの微粒子で構成された付着粉の凝集体のことである。
【0061】
擬似粒子化された造粒物1の溶融同化性を示す指標として、付着層3のCaOとFe2O3との質量比である[C/F](=CaO(mass%)/Fe2O3(mass%))がある。この付着層3の加重平均[C/F]の値が高いほど相対的に融液の発生量が増えるため溶融性は良い。一方、付着層3の加重平均[C/F]の値が低ければ融液量が少ないため、溶融性が悪いと判断することができる。
【0062】
ここで、造粒物1の付着層3の加重平均[C/F]の強度影響を小型の鍋試験で調査した。なお、試験方法や条件については、表2、表3などの実施条件の項目(実験1)に記載している。また、本試験例は、単一造粒法で造粒し、焼結時の吸引風量を一定としたものであり、造粒物1の平均的な成分影響を調査できる方法である。
【0063】
表2に、小型の焼結鍋試験(実験1、実験2)の実施条件について示す。
【0064】
【0065】
表3に、単一造粒試験時における原料配合条件(実験1)を示す。
【0066】
【0067】
図5に、単一造粒での造粒物1の付着層3の加重平均[C/F]と、焼結回転強度の結果を示す。
【0068】
図5に示すように、付着層3の加重平均[C/F]が0.115を下回ると融液量が不足し、各造粒物1間の溶融同化が進展せず成品である焼結鉱の回転強度が急激に低下することが分かった。すなわち、溶融同化性の向上に必要な造粒物1の平均的な付着層3の加重平均[C/F
]は、0.115以上必要である。
【0069】
このことから、本発明では、造粒物A及び造粒物Bそれぞれの付着層3での加重平均[C/F]≧0.115を満たすものとしている。
【0070】
本実施形態においては、特定の造粒物1(造粒物A)を造粒する造粒機(ドラムミキサー8)内へ低アルミナ鉱石を装入するに際して、低アルミナ鉱石の配合率:30mass%を上限とするとともに、低アルミナ鉱石を傾斜配合することとしている。このことについて、以下に詳しく説明する。
【0071】
なお、低アルミナ鉱石の配合率については、以下に示す式で算出することができる。
【0072】
・低アルミナ鉱石の配合率=(造粒物A中の低アルミナ鉱石量/造粒物A中の全原料量)×100(mass%)
さて、低アルミナ鉱石とは、アルミナ含有量が1.0mass%未満の鉱石のことである。この低アルミナ鉱石について、代表的なものはカナダ産精鉱であり、粒度が微細である(-1mmの粉率が約90%)という特徴を持つ。低アルミナであるため発生する融液の粘性は低いが、他の鉱石と比べると付着層3となる-1mmの粒度範囲では比較的粒径が大きいため反応性が悪く、溶け残りが多い。表面は平滑で造粒性は悪い。なお、本実施形態では、低アルミナ鉱石として、カナダ産精鉱を用いている。ただし、カナダ産精鉱は一例である。
【0073】
また、「傾斜配合」とは、複数の造粒物1(本実施形態では、造粒物A、造粒物B)を造り分ける際、造粒物1(本実施形態では、造粒物A)内の特定原料の配合割合を、他の造粒物1(造粒物B)より多くすることである。
【0074】
詳しくは、副原料(石灰石4、低アルミナ鉱石や高結晶水鉱石などの微粉鉱石5)の「傾斜配合」とは、並列に配備された造粒設備7(本実施形態では、ドラムミキサ8,9)において、副原料の総使用量を一定とした下で(副原料の全体量を変えずに)、それぞれのドラムミキサー8,9毎に副原料の量を変えて配合する方法である。
【0075】
例えば、一方側(A系統)のドラムミキサー8に副原料を多く配合し、他方側(B系統)のドラムミキサー9に副原料を少なく配合する方法である。このように、ドラムミキサー8,9に対して、副原料を「傾斜」して(副原料の量を変えて)配合することで、副原料の配合量が多い造粒物A(溶剤が多く溶けやすい)と、副原料の配合量が少ない造粒物B(溶剤が少なく溶けにくい)とを、同時に製造することができる(表1を参照)。
【0076】
なお、以降の説明においては、ドラムミキサー8,9ごとに副原料の量を変えて配合することを、副原料の「傾斜配合」と呼ぶこととする。例えば、ドラムミキサー8で造粒される造粒物Aに低アルミナ鉱石を多く配合することを、低アルミナ鉱石「傾斜配合」と呼ぶ。
【0077】
言い換えれば、ドラムミキサー8,9において、各ミキサーにおける低アルミナ鉱石の量を同量とせず、異量とすることを、「低アルミナ鉱石の傾斜配合」と呼ぶ。
【0078】
低アルミナ鉱石は融液の粘性が低いため融液を多量に発生するが、高結晶水鉱石は発生する融液粘性は高いものの融液を多量に発生させる。低アルミナ鉱石を特定の造粒物1(本実施形態では、造粒物A)に傾斜配合した場合、その造粒物Aの溶融性が良好となる。
【0079】
造粒物Aは、もう片側の造粒物1(造粒物B)に対して融液供与体として機能する。つまり、低アルミナ鉱石の配合を、造粒物A>造粒物B(傾斜配合)とすることで、融液供給側の造粒物Aの低粘度化を図る。
【0080】
しかし、低アルミナ鉱石として代表的なものは、粒度が微細なカナダ産精鉱であり、-1mmの粉率が高い(約90%)という特徴を持つ。低アルミナ鉱石がカナダ産精鉱の場合、そのほとんどが造粒物1中で付着層3として存在する。
【0081】
そのため、カナダ産精鉱の低アルミナ鉱石が増配されると、付着層3中の鉄分が増加し、付着層3の[C/F]は低下するため溶融性が悪化する。さらに、付着層3の厚みも増えるため、焼結機10内の乾燥帯で付着した微粉の低アルミナ鉱石が剥離しやすくなり、焼結機10内の通気性の悪化の要因となる。
【0082】
図6に、カナダ産精鉱配合と、造粒性の関係を示す。ただし、低アルミナ鉱石の一例として、カナダ産精鉱を示す。
【0083】
図6に示すように、カナダ産精鉱は、表面が平滑で濡れ性が良いため、造粒性は悪い。
そのため、造粒機(ドラムミキサー8,9)内のカナダ産精鉱の配合が30mass%を超えると未造粒粉が増え、造粒が破綻してしまう。このことから、造粒機(ドラムミキサー8,9)内のカナダ産精鉱(低アルミナ鉱石)の配合上限は、30mass%となる。
【0084】
すなわち、本発明では、造粒物A中の低アルミナ鉱石の配合割合≦30mass%を満たすものとしている。また、造粒物Aに低アルミナ鉱石が多く配合されるように、低アルミナ鉱石を造粒物Aに傾斜配合する。
【0085】
つまり、アルミナ含有量が1.0mass%以下である低アルミナ鉱石を傾斜配合した造粒物Aの付着層3中のアルミナ濃度が、他の造粒物Bの付着層3中のアルミナ濃度より低くなるように設定する。また、造粒物A中の低アルミナ鉱石の配合上限を、30mass%とする。すなわち、造粒物Aにおいては、低アルミナ鉱石の配合率≦30mass%を最大限満たすように、低アルミナ鉱石を優先的に配合する。
【0086】
本実施形態においては、造粒物Aの付着層3中における結晶水成分が4.0mass%を超えないように、高結晶水鉱石を傾斜配合することとしている。このことについて、以下に詳しく説明する。
【0087】
なお、造粒物Aの付着層3中における結晶水成分については、以下に示す式で算出することができる。ただし、結晶水成分の基準については付着層3に基づく。
【0088】
・結晶水成分=造粒物Aの付着層3中に含まれる結晶水の割合(mass%)
高結晶水鉱石として代表的なものは豪州鉱であり、本実施形態では結晶水含有量が10mass%以上の鉱石を高結晶水鉱石と呼ぶ。豪州鉱は、カナダ産精鉱(低アルミナ鉱石)に比べて粒度分布は広く、結晶水成分が高い。高結晶水鉱石(豪州鉱)は、超微粒子を含むため、表面積が大きく溶けやすい。高結晶水鉱石は、マイクロオーダーの粉が多いため、溶融性は良く多量の融液を生成するが、結晶水が遊離する際に気泡となり、融液中に残存するため融液の構造粘性は高い。
【0089】
つまり、豪州鉱は融液量が多い。ところが、一方で、結晶水成分の分解反応は吸熱反応であり、この吸熱反応は融液生成を阻害する。このような、結晶水の分解反応に起因して融液内に気泡が生成し、融液の構造粘性は高いという特徴を持つ。
【0090】
ただし、高結晶水鉱石の融液量は比較的多いため、先に述べた低アルミナ鉱石のカナダ産精鉱を傾斜配合した造粒物Aに豪州鉱も抱き合わせて配合することで、粘性の低い融液が多量に生成することにより、融液供与体として十分に機能するようになる。このことから、豪州鉱(高結晶水鉱石)には、溶融促進効果があると考えられる。
【0091】
つまり、高結晶水鉱石の配合を、造粒物A>造粒物B(傾斜配合)とすることで、融液供給側となる造粒物Aの融液生成量の増加を図る。傾斜配合の定義については、先に述べた通りであり、造粒物A内の特定原料の配合割合を、他の造粒物Bより多くすることである。すなわち、ドラムミキサー8で造粒される造粒物Aに高結晶水鉱石を多く配合する。
【0092】
なお、本実施形態では、高結晶水鉱石として、上記したように豪州鉱を用いている。ただし、豪州鉱は一例である。
【0093】
図7に、付着層3中の結晶水と、焼結回転強度のバラつきの関係を示す。
【0094】
図7、表2、表3などに示すように、単一造粒鍋試験の結果(実験1)より、付着層3中の結晶水成分が4.0mass%を超えると強度バラつきが生じるため、付着層3中の結晶水成分は4.0mass%が上限となる。
【0095】
すなわち、本発明では、造粒物Aの付着層中における結晶水成分≦4.0mass%を満たすものとしている。また、造粒物Aに石灰石4が多く配合されるように、石灰石4を造粒物Aに傾斜配合する。
【0096】
つまり、結晶水含有量が10mass%以上である高結晶水鉱石を傾斜配合した造粒物Aの付着層3中の結晶水濃度が、他の造粒物Bの付着層3中の結晶水濃度より高くなるように設定する。また、1つの造粒物A中の付着層3の結晶水成分の上限については、4.0mass%である。
【0097】
本実施形態においては、造粒物A以外の造粒物1、すなわち造粒物Bの付着層3中における[C/F]が0.08を下回らない範囲で、造粒物Aに石灰石4を傾斜配合することとしている。このことについて、以下に詳しく説明する。
【0098】
なお、造粒物Bの付着層3中における[C/F]については、以下に示す式で算出することができる。ただし、造粒物Bの[C/F]の基準については付着層3に基づく。
【0099】
・造粒物Bの[C/F]=造粒物B中の付着層3中のCaO割合/造粒物B中の付着層3のFe
2O
3割合(-)
図8に、石灰石4の均等配合と、本発明にかかる石灰石4の傾斜配合の概略を模式的に示す。
【0100】
図8に示すように、石灰石4の傾斜配合とは、通常の石灰石4の均等配合と比べ、特定の造粒物Aに石灰石4を寄せる(造粒物Aに石灰石4を多く傾斜配合する)ことで溶融しやすい状態とし、優先的に溶けた造粒物Aから発生する流動性の高い融液が、周囲にある造粒物Bを巻き込みながら融液流動することで溶融同化を促進し、原料充填層の通気性と焼結強度を両立させることを目的とした技術である。
【0101】
つまり、造粒物1の溶融性については石灰石4が支配的であるため、石灰石4の配合を、造粒物A>造粒物B(傾斜配合)とすることで、融液供給側の造粒物Aの溶融性の向上を図る。
【0102】
先に述べた通り、低アルミナ鉱石であるカナダ産精鉱を優先配合した造粒物Aは、付着層3の[C/F]の値が低下し溶融性が悪化する。そこで、造粒物Aに石灰石4を加えることで、付着層3の[C/F]の値を上昇させ、造粒物Aの溶融性を担保することが可能である。
【0103】
分割造粒法における付着層3の[C/F]の影響を小型鍋試験で調査した。なお、試験方法や条件については、表2、表4などの実施条件の項目(実験2)に記載している。
【0104】
表4に、並列造粒試験時における原料配合条件(実験2)を示す。なお、本実施形態では、造粒設備7について、I系統とII系統の二つの系統とし、造粒方式はドラムミキサー方式(二系統のドラムミキサー8,9)とした(
図3を参照)。また、I系統での総量:II系統での総量=65:35とした。
【0105】
【0106】
本試験例では、2種類の造粒物Aと造粒物Bを造り分けた。一方側の造粒物1は、付着層3の[C/F]の値を高くした、溶けやすい造粒物Aである。他方側の造粒物1は、付着層3の[C/F]の値を低くした、溶けにくい造粒物Bである。ここで、造粒物B(低[C/F]の造粒物1)の強度影響について調査した。なお、各条件で使用した原料の総量については、同様であり、造粒物A/造粒物Bへの分配比のみを変更した。
【0107】
図9に、分割造粒した造粒物Bの付着層3の[C/F]と、焼結回転強度の関係を示す。
【0108】
図9に示すように、造粒物Bの付着層3の[C/F]が0.08を下回ると、焼結回転強度が低下する。つまり、造粒物A/造粒物Bの平均的な付着層3の加重平均[C/F]>0.115を維持しつつ、造粒物Bの付着層3の[C/F]>0.08であれば、焼結強度を維持することができる。
【0109】
造粒物B側の加重平均[C/F]の下限が0.115より緩和できた理由は、分割造粒法による効果である。カナダ産精鉱(低アルミナ鉱石)および石灰石4を造粒物Aに傾斜配合する際は、造粒物Bの付着層3の[C/F]の値が0.08を下回らないように設計する。
【0110】
すなわち、本発明では、造粒物Bの付着層の[CaO/Fe2O3]≧0.08を満たすものとしている。また、造粒物Aに高結晶水鉱石が多く配合されるように、高結晶水鉱石を造粒物Aに傾斜配合する。
【0111】
つまり、石灰石4は、造粒物A,Bの付着層3の[C/F]をそれぞれ見合って配合の分配
比を調整する。また、石灰石4を傾斜配合していない側の造粒物Bの付着層3の[C/F]の値が0.08を下回らないように設定する。
【0112】
上記の制約条件を満たして造粒された造粒物Aと造粒物Bを混合して焼成し、焼結鉱を製造する。
【0113】
造粒物Bに関しては、複数の系統(並列配置でも可)を備える造粒設備7で作製した造粒物1でも構わない。
【0114】
上記より、カナダ産精鉱(低アルミナ鉱石)がどちらか一方側の造粒物1に偏在すると、付着層3の[C/F]の値が低下することにより、焼結機10内で局所的な融液不足となる。それに加えて、造粒物1の崩壊による原料充填層の通気性の悪化を招く虞がある。
【0115】
また、豪州鉱(高結晶水鉱石)がどちらか一方側の造粒物1に偏在すると、局所的な高粘性融液の生成により、焼結時にムラ焼けの発生やガス流動の阻害により、原料充填層の通気性の悪化を招く虞がある。
【0116】
図10に、カナダ産精鉱(低アルミナ鉱石)や豪州鉱(高結晶水鉱石)が、どちらか一方側の造粒物1に偏在した際における焼結機10内の影響について示す。
【0117】
図10に示すように、原料分配が均一な場合と比べ、カナダ産精鉱が片寄せされる(原料分配に偏りがある)と、乾燥帯で付着した微粉の低アルミナ鉱石が剥離しやすくなる。このようになると、焼結機10の焼結槽(原料充填層)内の空隙を埋めてしまい、原料充填層の通気性が悪化する。これにより、焼結鉱の生産性の低下を招く虞があると考えられる。
【0118】
また、燃焼帯では、造粒物1の付着層3の[C/F]の低下及び結晶水成分の上昇により、燃焼帯において局所的に融液不足や融液粘性の上昇を招いてしまう。以上の造粒や焼成の制約を満足する造粒物A/造粒物Bの原料の分配により、焼結強度と生産性の向上をさせることができる。
【0119】
大型鍋試験にて、石灰石4の傾斜配合、および、低アルミナ鉱石と高結晶水鉱石の優先配合の効果について調査した。なお、試験方法や条件については、後述する表5の実施条件の項目(実験3)に記載している。
【0120】
表5に、大型の焼結鍋試験(実験3)の条件について示す。
【0121】
【0122】
本実験例では、焼結時において吸引圧力を一定化して行った。また、大型鍋試験は、実機の焼結機10を模擬したものであり、焼結強度並びに生産性の評価も行った。
【0123】
表6、表7に、本発明の焼結鉱の製造方法に従って実施した実施例、および、比較例を示す。なお、表6は、一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
【0124】
【0125】
【0126】
図11に、角鍋試験による焼結強度及び、焼結鉱の生産性の結果と評価を示す。
【0127】
図11、表6、表7に示すように、条件aについては、I系統側(造粒物B)の付着層3の[C/F]を0.08未満となるよう、石灰石4の配合量で調整した。条件b、cについては、I系統/II系統等における造粒物1の付着層3の[C/F]を同等とするため、石灰石4の配合量で調整した。条件dについては、石灰石4は等量配合であり、I系統/II系統等における造粒物1の付着層3の[C/F]は同等である。また、条件e,d’,fについては、II系統に対し、石灰石4の傾斜配合を行った。ただし、条件b~dのI系統/II系統等における造粒物1の付着層3の[C/F]については、同じとした。
【0128】
ここで、上記で述べた造粒物BをI系統側のドラムミキサー9で造粒し、造粒物AをII系統側のドラムミキサー8で造粒することとした。なお、I系統側の造粒物Bの付着層3の[C/F]の制約を守っていない条件a(I系統のドラムミキサー9で造粒された造粒物Bの付着層3の[C/F]≒0.07)で造粒した場合、焼結強度及び生産性ともに低い。
【0129】
そこで、付着層3の[C/F]の制約を守った条件bで造粒した場合では、焼結強度が改善した。微粉が多い低アルミナ鉱石のカナダ産精鉱を、I系統に配合を片寄らせた条件a,bから、条件c→条件dへ、II系統側へ優先配合すると、生産性が改善した。
【0130】
本実施形態での優先配合とは、先に述べた造粒制約(カナダ産精鉱(低アルミナ鉱石)の配合上限:30mass%)を最大限、満足するまで配合を偏在させることである。例えば、低アルミナ鉱石の配合率を29mass%など、30mass%に近くに設定する。
【0131】
石灰石4の傾斜配合を行い且つ、結晶水を多く含む豪州鉱(高結晶水鉱石)をII系統側の造粒物Aへ優先配合することで、上記で述べた溶融促進効果が得られ、生産性及び焼結強度ともに最大化した。なお、配合条件の詳細については、上で示している表6、表7などの実験条件表に記載している。
【0132】
ここで、本実施例及び比較例について、説明する。
【0133】
表6に示すように、比較例の条件aは、造粒物B(I系統)における低アルミナ鉱石の配合率が32.2mass%で、配合条件の規定を満たしておらず、造粒物Bの付着層3の[C/F]が0.07であり、成分条件の規定を満たしていないため、生産性及び回転強度が低い。これにより、総合評価として、所望の結果を得られていない。
【0134】
比較例の条件bは、造粒物B(I系統)における低アルミナ鉱石の配合率が30.7mass%で、配合条件の規定を満たしていないため、生産性及び回転強度が低い。これにより、総合評価として、所望の結果を得られていない。
【0135】
比較例の条件cは、配合条件の規定を満たしていないため、総合評価として所望の結果を得られていない。なお、本実験例では、造粒物B(I系統)および造粒物A(II系統)の低アルミナ鉱石の配合量および付着層3の[C/F]を同等とした比較例の条件cをベースの条件としている。
【0136】
比較例の条件dは、条件f(本実施例)と比べて、付着層3の[C/F]の傾斜が小さい。すなわち、付着層3の[C/F]において、造粒物B(I系統)と造粒物A(II系統)との差が0.01と小さく、実プロセスの変動を考慮すると少なくとも0.02以上の差が無ければ有意な効果は得られない。その結果、回転強度が低く、総合評価として所望の結果を得られていない。
【0137】
比較例の条件eは、造粒物B(I系統)における高結晶水鉱石の配合率が0で配合条件の規定を満たしていないため、回転強度が低い。これにより、総合評価として、所望の結果を得られていない。
【0138】
比較例の条件d’は、条件f(本実施例)と比べて、高結晶水鉱石の配合率の傾斜が小さく、付着層結晶水成分は造粒物B(I系統)が高い。すなわち、高結晶水鉱石の配合率において、造粒物B(I系統)と造粒物A(II系統)との差が小さい。その結果、回転強度が低く、総合評価として所望の結果を得られていない。付着層結晶水成分は造粒物A(II系統)側が高ければ、本実施例の条件fと同等の効果が得られる。
【0139】
本実施例の条件fは、造粒物A(II系統)に対する、低アルミナ鉱石、高結晶水鉱石、石灰石4の傾斜配合に関して、配合条件の規定を満たし且つ、造粒物B(I系統)に対して十分に配合に差がある。その結果、生産性及び回転強度が向上することとなった。これにより、総合評価として所望の良好な結果を得ることができた。
【0140】
複数の造粒物A,Bを造り分ける焼結プロセス(造粒工程)において、使用原料の特性を考慮した造粒物A,Bの成分設計(特定原料(低アルミナ鉱石)の配合率の上限値(≦30mass%)の設定や、付着層3の[C/F]等の上下限値の範囲(全造粒物1の付着層3の加重平均[C/F]≧0.115、造粒物Aの付着層3の結晶水成分≦4.0mass%、造粒物Bの付着層3の[C/F]≧0.08)の設定など)に関する閾値の設定を行うことにより、焼成時の各造粒物A,B間の溶融同化性を向上させ、成品(焼結鉱)の品質や生産性を向上させることができる。
【0141】
ここで、造粒物1を造粒するときの造粒設計の考え方を以下に示す。
【0142】
複数ある造粒物1の少なくとも一つに、カナダ産精鉱(低アルミナ鉱石)・石灰石4・豪州鉱(高結晶水鉱石)を傾斜配合する。理由として、低アルミナで且つ付着層3の[C/F]の値が高い造粒物Aを造ることで、この造粒物Aを融液供与体として機能させるためである。
【0143】
各造粒機(本実施形態では、ドラムミキサー8,9)内のカナダ産精鉱(低アルミナ鉱石)の配合上限は、30mass%とする。理由として、低アルミナ鉱石の配合率:30mass%以上で造粒性が悪化するためである。
【0144】
各造粒物1の付着層3の結晶水成分の上限は、4.0mass%とする。理由として、局所的な高粘性融液の生成で、焼成ムラが生じる可能性が有るためである。
【0145】
図12に、本発明にかかる焼結鉱の製造方法の手順を示す。
【0146】
図12に示すように、まず、使用する原料から造られる平均的な造粒物1の付着層3の加重平均[C/F]が0.115以上であること、付着層3の結晶水成分が4.0mass%未満であることを確認する。つまり、付着層3の加重平均[C/F]が0.115未満である場合、もしくは、付着層3の結晶水成分が4.0mass%以上である場合、本発明は適用できないので確認する。
【0147】
(i)低アルミナ鉱石を造粒物1の1つ(造粒物A)に優先配合する。このとき、その造粒物A内における低アルミナ鉱石の配合割合が30mass%を超えないようにし、可能な範囲の最大限に設定する。
【0148】
(ii)低アルミナ鉱石を優先配合した造粒物Aに、高結晶水鉱石を傾斜配合する。このと
き、付着層3の結晶水成分が4.0mass%にならないように設定する。
【0149】
(iii)低アルミナ鉱石を傾斜配合した方の造粒機(本実施形態では、II系統側のドラムミキサー8)に、石灰石4を傾斜配合する。このとき、残りの造粒物Bの付着層3の[C/F]が0.08を下回らないように、可能な範囲の最大限に設定する。
【0150】
本発明の焼結鉱の製造方法によれば、複数の造粒物A,Bを造り分ける造粒工程において、使用原料の特性を考慮した適正な造粒物A,Bの成分設計を行うことにより、焼結鉱の強度や生産性などの向上を図ることができる。
【0151】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0152】
また、本実施形態で詳説した造粒物A、造粒物Bについては、説明する上で便宜的に称したものであり、それらの名称の付し方については任意である。つまり、造粒物1に関し、AをBに、BをAと称してもよい。また、複数の系統を備える造粒設備7に関しても、同様に、I系統、II系統は説明する上で便宜的に称したものであり、任意である。
【符号の説明】
【0153】
1 造粒物
A 造粒物
B 造粒物
2 核粒子
3 付着層
4 石灰石
5 微粉鉱石
6 原料層(原料ホッパ)
7 造粒設備
8 ドラムミキサー(II系統)
9 ドラムミキサー(I系統)
10 焼結機
11 パンペレタイザー