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特開2024-143113樹脂組成物、成形体、電線被覆材、合わせガラス中間膜、太陽電池封止材、太陽電池用積層シート、発泡体および履物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143113
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体、電線被覆材、合わせガラス中間膜、太陽電池封止材、太陽電池用積層シート、発泡体および履物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20241003BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20241003BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L23/04
H01B7/02 Z
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055619
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】一関 主税
(72)【発明者】
【氏名】本野 慶人
(72)【発明者】
【氏名】芝田 保喜
(72)【発明者】
【氏名】山本 貞樹
(72)【発明者】
【氏名】礒川 素朗
【テーマコード(参考)】
4J002
5F251
5G309
【Fターム(参考)】
4J002BB04X
4J002BB06W
4J002GF00
4J002GJ01
4J002GQ01
5F251JA04
5F251JA05
5G309RA07
(57)【要約】
【課題】従来の化石燃料から得られる樹脂のみを使用して製造する樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性および樹脂コンパウンド物性を有しながら、環境配慮性が向上した樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、エチレン系重合体(B)(ただし、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)に該当するものを除く)と、を含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、
エチレン系重合体(B)(ただし、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)に該当するものを除く)と、
を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン系重合体(B)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)中の不飽和エステルに由来する構成単位の含有量が、1質量%以上99質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン系重合体(B)が、低密度ポリエチレンを含む請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン系重合体(B)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、前記エチレン系重合体(B)との合計含有量が、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、2質量%以上100質量%以下である、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・不飽和エステル共重合体を含む、請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む、請求項1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、メルトマスフローレート(MFR)が、0.1g/10分以上300g/10分以下である、請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を含む電線被覆材。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を含む合わせガラス中間膜。
【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を含む太陽電池封止材。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を含む太陽電池用積層シート。
【請求項16】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を加熱発泡してなる発泡体。
【請求項17】
請求項16に記載の発泡体からなる履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体、電線被覆材、合わせガラス中間膜、太陽電池封止材、太陽電池用積層シート、発泡体および履物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・アクリル酸エチル共重合体などのエチレン・不飽和エステル共重合体は、透明性、柔軟性、耐候性、耐衝撃性、低温特性、フィラ-充填性などが優れているところから、種々の用途に使用されている。このようなエチレン・不飽和エステル共重合体を含む樹脂に関する文献としては、特許文献1~3のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、(A)エチレン残基単位93~97重量%、酢酸ビニル残基単位3~7重量%からなり、JIS K6924-1で測定したメルトマスフローレイトが8~30g/10分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体 39~84.9重量%、(B)エチレン残基単位80~90重量%、酢酸ビニル残基単位10~20重量%からなるエチレン-酢酸ビニル共重合体 5~20重量%、(C)低密度ポリエチレン5~20重量%、(D)粘着付与剤樹脂5~20重量%、及び(E)帯電防止剤(E)0.1~1重量%、を含んでなる接着性樹脂組成物が記載されている。当該接着性樹脂組成物によれば、短時間ヒートシール性、ヒートシール強度安定性およびヒートシール時間依存性に優れ、さらに、この接着性樹脂組成物からなる接着層を支持体上に形成してなる易剥離性フィルムは、例えば、紙製容器に接着した場合、剥離時に紙製容器に毛羽立ちを生じることがなく、また、接着後に高温環境下で保管しても初期の剥離特性を維持する特性に優れることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、電子部品収納用ポケットを有するプラスチック製キャリアテ-プに熱融着される接着剤層を有するカバ-テ-プにおいて、接着剤層がエチレン-αオレフィン共重合体またはαオレフィン共重合体の少なくとも一種とエチレン-酢酸ビニル共重合体とを主成分とする組成物により形成されていることを特徴とする電子部品搬送体用カバ-テ-プが記載されている。当該電子部品搬送体用カバ-テ-プによれば、プラスチック製キャリアテ-プの離型処理の有無にかかわらず、また、接着剤への帯電防止剤或いは導電性粒子の添加に左右されることなく、プラスチック製キャリアテ-プに充分な接着力で熱シ-ルでき、剥離もスム-ズに行うことができるから、電子部品を安全に搬送でき、この安全に搬送した電子部品を装着工程においてジャンピングトラベルなくピックアップできることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、エチレン酢酸ビニル共重合体(A)、オレフィン系ポリマー(B)、ワックス(C)及び粘着付与樹脂(D)を含む熱溶融性組成物であって、荷重21.18N、190℃で測定したMFRが100~2700(g/10分)であるエチレン酢酸ビニル共重合体(A):2~25質量%、荷重21.18N、190℃で測定したMFRが0.5~60(g/10分)であるオレフィン系ポリマー(B):10~40質量%、融点が40~65℃のワックス(C):35~65質量%、軟化点が100~160℃の粘着付与樹脂(D):3~25質量%を含む熱溶融性組成物が記載されている。当該熱溶融性組成物によれば、内容物を充填した食品容器を密封するための適切なシール性能及び開封強度を有し、容器の開封時に容易に剥離することができ、容器の開封時に内容物が付着することなく、容器の開封時に容器のフランジに熱溶融性組成物が残ることなく、運搬時、落下時においても内容物が飛散しない耐衝撃性を有する熱溶融性組成物を提供することが出来たことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-25047号公報
【特許文献2】特開平10-17015号公報
【特許文献3】特開2018-150444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、このようなエチレン・不飽和エステル共重合体を含む樹脂としては、化石燃料由来の樹脂が一般的である。しかしながら、化石燃料である石油は、その枯渇が危ぶまれるとともに、製品の製造工程および製品となった後の廃棄過程等において多くの二酸化炭素を排出するため、地球温暖化への影響が懸念されている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の化石燃料から得られる樹脂のみを使用して製造する樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性および樹脂コンパウンド物性の性能バランスを有しながら、環境配慮性が向上した樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、エチレン系重合体(B)(ただし、上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)に該当するものを除く)と、を含む樹脂組成物において、各成分の少なくとも一部に、バイオマス由来の原料を使用して製造した成分を用いることによって、従来の化石燃料由来の原料のみを使用して製造した樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性および樹脂コンパウンド物性の性能バランスを有しながら、環境配慮性が向上した樹脂組成物が得られることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の樹脂組成物、成形体、電線被覆材、合わせガラス中間膜、太陽電池封止材、太陽電池用積層シート、発泡体および履物を提供する。
【0011】
[1]
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、
エチレン系重合体(B)(ただし、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)に該当するものを除く)と、
を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である樹脂組成物。
[2]
前記樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン系重合体(B)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)中の不飽和エステルに由来する構成単位の含有量が、1質量%以上99質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記エチレン系重合体(B)が、低密度ポリエチレンを含む[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記エチレン系重合体(B)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、前記エチレン系重合体(B)との合計含有量が、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、2質量%以上100質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・不飽和エステル共重合体を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]
JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、メルトマスフローレート(MFR)が、0.1g/10分以上300g/10分以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
[12]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む電線被覆材。
[13]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む合わせガラス中間膜。
[14]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む太陽電池封止材。
[15]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む太陽電池用積層シート。
[16]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を加熱発泡してなる発泡体。
[17]
[16]に記載の発泡体からなる履物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化石燃料由来の樹脂のみを使用して製造された従来の樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性および樹脂コンパウンド物性の性能バランスを有しながら、環境配慮性が向上した樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0014】
1.樹脂組成物
本実施形態に係る樹脂組成物は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、エチレン系重合体(B)(ただし、上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)に該当するものを除く)と、を含み、樹脂組成物全体の、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である。
【0015】
本実施形態に係る樹脂組成物によれば、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、エチレン系重合体(B)とを含みつつ、各成分の少なくとも一部に、バイオマス由来の原料を使用して製造した成分を用いることで、化石燃料由来の原料のみを使用して製造された従来の樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性および樹脂コンパウンド物性の性能バランスを有しながら、環境配慮性が向上した樹脂組成物を提供することができる。
【0016】
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量は、柔軟性、溶融物性および樹脂コンパウンド物性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0017】
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン系重合体(B)の含有量は、機械的強度および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、柔軟性および加工適性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0018】
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、エチレン系重合体(B)との合計含有量は、基礎物性、溶融物性および樹脂コンパウンド物性の性能バランスを向上させる観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、上記エチレン系重合体(B)との合計含有量の上限について制限はないが、例えば、100質量%以下である。
【0019】
<エチレン・不飽和エステル共重合体(A)>
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレンと、少なくとも1種の不飽和エステルとの共重合体である。
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいが、生産性を考慮すると2元ランダム共重合体、3元ランダム共重合体、2元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは3元ランダム共重合体のグラフト共重合体を使用するのが好ましく、より好ましくは2元ランダム共重合体又は3元ランダム共重合体である。
また、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレン・ビニルエステル共重合体および、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される1種または2種を含むことが好ましく、エチレン・ビニルエステル共重合体を含むことがより好ましい。
またエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレンおよび不飽和エステル以外の重合性モノマーを含んでもよく、例えば、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のα-オレフィンを例示することができる。
【0020】
エチレン・ビニルエステル共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体から選択される1種または2種以上を含み、基礎物性をより向上させる観点から、好ましくは、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含む。
【0021】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸エステルの少なくとも1種の共重合体である。
具体的には、エチレンと不飽和カルボン酸アルキルエステルとからなる共重合体を示すことができる。
【0022】
不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及びマレイン酸モノエチル等からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の生産性及び衛生性をより向上させる観点から、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
これらの不飽和カルボン酸は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
不飽和カルボン酸アルキルエステルにおけるアルキル部位としては、炭素数1~12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2-エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。好ましくは、アルキルエステルにおけるアルキル部位の炭素数1~8である。これらの中でも、上記アルキル部位は、メチル及びエチルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、メチルを含むことがより好ましい。
【0024】
不飽和カルボンエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチルおよび(メタ)アクリル酸n-ブチルから選択される1種または2種以上を用いることがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルから選択される1種または2種を用いることが更に好ましく、(メタ)アクリル酸メチルを用いることが更に好ましい。
【0025】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)中の、エチレンに由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の全体を100質量%としたとき、機械的強度、加工性および生産性等の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、溶融物性をより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0026】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)中の不飽和エステルに由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の全体を100質量%としたとき、柔軟性および加工適性をより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、加工適性および機械的強度の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0027】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体である場合、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率は、JIS K7192:1999に準拠してエチレン・酢酸ビニル共重合体を電気炉で500℃以上に加熱して分解し、得られた酢酸ビニルに由来する酢酸を中和滴定によって求めることができる。
【0028】
また、樹脂組成物全体に対するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)中の不飽和エステルに由来する構成単位の含有量は、機械的強度、加工性および生産性等の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、また、加工適性および機械的強度の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0029】
なお、樹脂組成物の不飽和エステルに由来する構成単位の含有率は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)中の不飽和エステルに由来する構成単位の含有量(質量%)と、樹脂組成物全量中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量との積により算出される。
【0030】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の、JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、メルトマスフローレート(MFR)は、樹脂コンパウンド物性をより向上させる観点から、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1.0g/10分以上、更に好ましくは3.0g/10分以上であり、そして好ましくは300g/10分以下、より好ましくは250g/10分以下、更に好ましくは200g/10分以下、更に好ましくは150g/10分以下、更に好ましくは100g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下である。
【0031】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、好ましくはバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるエチレン・不飽和エステル共重合体を含む。
また、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン以外のα-オレフィンを含む場合、バイオマス由来のエチレン以外のα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるエチレン・不飽和エステル共重合体を含んでもよい。
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、またエチレン・不飽和エステル共重合体(A)のバイオマス度の上限に特に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のエチレンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0032】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温、高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。また、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は市販されているものを用いてもよい。
【0033】
<エチレン系重合体(B)>
エチレン系重合体(B)は、ポリエチレンまたはエチレンと極性モノマーとの共重合体である。ただし、エチレン系重合体(B)には、上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)に該当するものは含まれない。機械的強度をより向上させる観点から、エチレン系重合体(B)は好ましくはポリエチレンを含む。
【0034】
エチレン系重合体(B)としては、得られる成形体の機械的強度をより向上させる観点から、好ましくはポリエチレンを含み、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群から選択される少なくとも一種を含み、更に好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。
また、エチレン系重合体(B)は、高圧法、中圧法または低圧法によって製造される。高圧法によって製造されることが好ましい。
これらエチレン系重合体(B)は、単一の重合体であっても、二種以上のエチレン系重合体の混合物であってもよい。
【0035】
エチレン系重合体(B)は、好ましくはバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む。
エチレン系重合体(B)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは93質量%以上であり、またエチレン系重合体(B)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のエチレンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0036】
エチレン系重合体(B)の、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、機械的強度をより向上させる観点から、好ましくは900kg/mを超え、より好ましくは905kg/m以上、更に好ましくは910kg/m以上、更に好ましくは915kg/m以上、更に好ましくは920kg/m以上であり、また機械的強度および柔軟性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは940kg/m以下、より好ましくは930kg/m以下、更に好ましくは925kg/m以下であり、すなわち、低密度ポリエチレンの範囲に入るものが好ましい。
【0037】
また、エチレン系重合体(B)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と混合し、成型できる限り制限されないが、好ましくは0.01g/10分以上であり、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上、更に好ましくは2g/10分以上であり、そして、好ましくは100g/10分以下であり、より好ましくは70g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下である。
【0038】
<バイオマス由来エチレン>
本実施形態に係るバイオマス由来エチレンの製造方法は制限されず、公知の方法を用いることができる。以下にバイオマス由来エチレンの製造方法の例を挙げる。
【0039】
「バイオマス」とは、主に動植物に由来する有機物である資源を指し、化石燃料を除いたものをいう。
バイオマス由来のエチレンの製造方法は、例えば、植物原料を微生物により発酵させてバイオマス由来のエタノール(バイオエタノール)を生産し、脱水して製造する方法と、植物油廃棄物や残渣油を原料に製造されるバイオマスナフサから抽出する方法がある。
前者の原料としては、非可食原料と可食原料とがある。非可食原料としては、例えば、パルプ、ケナフ、稲わら等のセルロース系作物、古紙、製紙残渣、木材、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、工場煙道ガス、廃ガス等が例示できる。可食原料としては、例えば、サトウキビ、おから、トウモロコシ、イモ類、小麦、米等の炭水化物系作物、そば、および大豆等が例示できる。前者の原料として、これらからなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
後者の原料としては、各種廃棄物や未利用の資源、資源作物等を用いることができる。具体的には、菜種油、大豆油等の油脂、ユーカリ油等の精油、植物油粕等を用いることができる。
原料からプラスチック製品が廃棄されるまでのライフサイクルにおける二酸化炭素発生量を削減する観点から、バイオマスナフサから抽出されたエチレンを用いることが好ましい。
【0040】
バイオマスナフサからのエチレンの抽出は、化石燃料由来のナフサからの抽出と同様に、加熱、分解、蒸留、精製といった公知の方法を用いることができる。
【0041】
バイオエタノールの製造方法は制限されず、例えば、サトウキビやトウモロコシ等の可食原料であるバイオマス原料に、酵母に代表されるエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させて、糖を発酵させることで、エタノールを生産させた後、エタノールを精製して得ることができる。エタノールの精製は、蒸留、膜分離、抽出等の従来公知の方法を用いることができる。
また、非可食原料をバイオマス原料として使用する製造方法としては、例えば、古紙や製紙残渣等のごみ資源である非可食原料を燃焼させて発生する合成ガス(一酸化炭素や水素を主成分とするガス)、工場等から排出される煙道ガスや廃ガスを炭素源とし、微生物に発酵させることにより、エタノールを得ることができる。
【0042】
上記のように得られたエタノールを脱水反応することにより、バイオマス由来エチレンを得ることができる。脱水反応には、触媒の種類、加熱温度、圧力等の条件が求められるが、従来公知の方法を用いることができる。
【0043】
このようにして得られるバイオマスエチレンの製造工程において、エタノール発酵工程や脱水工程中に、高級アルコールや高級アルケン不純物が生成され得る。このため、エタノールの脱水の前、または脱水後に、こうした副生物を取り除くことができる。
【0044】
<バイオマス度>
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物全体の、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度は、環境配慮性を向上させる観点から、0質量%を超え、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、また樹脂組成物全体のバイオマス度の上限に制限は無いが、100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
ASTM D6866においては、バイオマス由来の放射性炭素(14C)濃度を測定することにより、バイオマス度を算出する。化石燃料由来の炭素は放射性炭素(14C)が一定の値を示すため、バイオマス由来炭素との区別が可能である。
例えばポリエチレンにおいて、バイオマス度が0質量%を超えて100質量%未満である場合、バイオマス由来のエチレンと化石燃料由来のエチレンの双方を含むといえる。
【0045】
本実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むエチレン・不飽和エステル共重合体(A)およびバイオマス由来のエチレンを含むエチレン系重合体(B)の重合方法は制限されず、化石燃料由来エチレンを原料とした場合と同様の従来公知の方法を用いることができる。
【0046】
<その他の成分>
本実施形態に係る樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、シリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、波長変換剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤および顔料等からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
また、本実施形態に係る樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でエチレン・不飽和エステル共重合体(A)およびエチレン系重合体(B)以外の樹脂を配合することもできる。
【0047】
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)、エチレン系重合体(B)および任意の添加剤を、同時にまたは連続的に混合することによって調製することができ、その混合順序に制限はない。調製方法としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましい。
また必要に応じてペレットとすることができる。
【0048】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物の物性について説明する。
【0049】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、メルトマスフローレート(MFR)は、溶融物性、成形性および加工適性をより向上させる観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上、更に好ましくは2.0g/10分以上であり、そして好ましくは300g/10分以下、より好ましくは200g/10分以下、更に好ましくは100g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下である。
【0050】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、機械的強度をより向上させる観点から、好ましくは910kg/m以上、より好ましくは915kg/m以上、更に好ましくは920kg/m以上、更に好ましくは925kg/m以上であり、機械的強度および加工適性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは950kg/m以下、より好ましくは945kg/m以下である。
【0051】
本実施形態に係る樹脂組成物において、融点は、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上であり、柔軟性および樹脂コンパウンド物性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは140℃以下であり、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは115℃以下である。融点は、例えば、示唆走査熱量計(DSC)等によって測定される。
【0052】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7161-1:2014に準拠して測定される破断点応力は、靭性等の機械的強度をより向上させる観点から、好ましくは5MPa以上、より好ましくは8MPa以上、更に好ましくは10MPa以上である。
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7161-1:2014に準拠して測定される破断点応力の上限に制限は無いが、例えば30MPa以下であってもよく、また、20MPa以下であってもよい。
【0053】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7161-2:2014に準拠して測定される破断点伸びは、柔軟性をより向上させる観点から、好ましくは450%以上、より好ましくは480%以上、更に好ましくは500%以上、更に好ましくは520%以上であり、機械的強度および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは900%以下、より好ましくは850%以下、更に好ましくは830%以下、更に好ましくは800%以下である。
【0054】
本実施形態に係る樹脂組成物の破断点応力(JIS K 7161-1:2014準拠)および破断点伸び(JIS K 7161-2:2014準拠)は、引張試験機を用いて測定される。測定は、本実施形態の樹脂組成物のプレスシートを上記JIS規格に準拠したダンベル型に切り出して試験片とし、チャック間距離:90mm、引張速度:50mm/min、23℃、相対湿度50%RHの条件で、引っ張ることにより測定できる。破断点伸びは、引張試験における、試験片の決められた標点間での破断直前の伸びを表している。また、破断点応力は、引張試験における破断の際に破断点の引張力を試験片の初期断面積で除した値である。
【0055】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7106:1995に準拠して測定される、23℃における曲げ剛性率は、耐熱性および機械的強度の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは15MPa以上、より好ましくは20MPa以上、更に好ましくは25MPa以上、更に好ましくは30MPa以上であり、柔軟性、追従性、加工適性、取り扱い性の性能バランスをより向上させる観点から好ましくは150MPa以下、より好ましくは140MPa以下、更に好ましくは130MPa以下、更に好ましくは120MPa以下である。
【0056】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7215:1986に準拠して測定される、ショアA硬度は、成形性および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは70以上、より好ましくは75以上、更に好ましくは80以上であり、成形性および柔軟性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは120以下、より好ましくは110以下、更に好ましくは100以下である。
【0057】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7215:1986に準拠して測定される、ショアD硬度は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは25以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは35以上であり、柔軟性および加工適性をより向上させる観点から、好ましくは70以下、より好ましくは65以下、更に好ましくは60以下、更に好ましくは55以下である。
【0058】
なお、ショアA硬度およびショアD硬度は、JIS K 7215:1986に準拠して、タイプDデュロメータを用い、23℃条件にて測定される。
【0059】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7206:2016に準拠して、10N荷重にて測定されるビカット軟化点は、耐熱性、柔軟性、加工適性および取り扱い性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
【0060】
ビカット軟化点は、下記のように測定される。
本実施形態に係る樹脂組成物を用いて、JIS K 7206:2016に準拠して、熱変形試験装置を用いて、樹脂組成物のプレスシートから得られる試験片の上部中央に針状圧子治具を試験片に接触するように設置し、10Nの荷重をかけながら、伝熱媒体であるシリコンオイルを20℃から昇温速度50℃/hで温度上昇させ、針状圧子が試験片の表面から1mm侵入したときの伝熱媒体の温度を計測する。
【0061】
なお、上記物性に用いられる本実施形態に係る樹脂組成物のプレスシートは、下記の通り作製されるものである。
本実施形態の樹脂組成物を、160℃、4分加熱し、その間ガス抜きを5回行った後、160℃、4分、9.8MPa(100kg/cm)条件にてプレス成型し、次いで20℃、3分、14.7MPa(150kg/cm)の条件でプレス成型し、厚み3mmのプレスシートを作製する。
【0062】
本実施形態に係る樹脂組成物の160℃における溶融張力は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは50mN以上、より好ましくは55mN以上、更に好ましくは60mN以上であり、そして好ましくは100mN以下、好ましくは95mN以下、好ましくは90mN以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の160℃における最大引取り速度は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは10m/分以上、より好ましくは13m/分以上、更に好ましくは15m/分以上であり、そして好ましくは35m/分以下、好ましくは30m/分以下、好ましくは25m/分以下である。
【0063】
本実施形態に係る樹脂組成物の180℃における溶融張力は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは25mN以上、より好ましくは30mN以上、更に好ましくは33mN以上であり、そして好ましくは80mN以下、好ましくは70mN以下、好ましくは60mN以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の180℃における最大引取り速度は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは10m/分以上、より好ましくは15m/分以上、更に好ましくは20m/分以上であり、そして好ましくは50m/分以下、好ましくは45m/分以下、好ましくは40m/分以下である。
【0064】
本実施形態に係る樹脂組成物の200℃における溶融張力は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは10mN以上、より好ましくは15mN以上、更に好ましくは18mN以上であり、そして好ましくは60mN以下、好ましくは50mN以下、好ましくは40mN以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の200℃における最大引取り速度は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは15m/分以上、より好ましくは20m/分以上、更に好ましくは25m/分以上であり、そして好ましくは60m/分以下、好ましくは55m/分以下、好ましくは50m/分以下である。
【0065】
本実施形態に係る樹脂組成物の溶融張力および最大引取り速度の測定方法について、160℃における場合を例として説明する。
メルトテンションテスターを用いて、樹脂組成物を160℃に加熱した直径9.55mmのバレルに充填する。樹脂組成物を、直径2.095mmのキャピラリーダイから、ピストン降下速度5mm/分にて、紐状に押し出す。得られた紐状の樹脂組成物を、キャピラリーダイの下方300mmの位置に設置したロードセル付きプーリーに通過させ、紐状の樹脂組成物を巻取りロールで巻き取る。このとき、紐状の樹脂組成物の巻き取り速度を初速度5.0m/分から1分後に200m/分となるように直線的に上昇させ、紐状の樹脂組成物が破断したときのロードセル付きプーリーにかかる荷重を溶融張力[mN]とする。また、紐状の樹脂組成物が破断したときの巻取り速度の値を最大引取速度[m/分]とする。
180℃および200℃における溶融張力および最大引取り速度の測定は、上記においてバレルの加熱温度を180℃または200℃に変更する以外は上記と同様に測定する。
【0066】
2.成形体
本実施形態の成形体は、本実施形態の樹脂組成物を成形して得られる。成形方法としては制限されず、押出成形、射出成形、圧縮成形、中空成形等の公知の成形方法を用いることができ、シート形状、フィルム形状、板形状、それ以外の立体形状等の各種形状に成形することにより得ることができる。
また、本実施形態の成形体は、本実施形態の樹脂組成物のみからなるものであってもよいし、本実施形態の樹脂組成物と他の成分とからなるものであってもよい。
また、本実施形態の成形体は、部材の一部であってもよいし全部であってもよい。
【0067】
また、本実施形態の成形体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、その表面にフレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、無機または有機化合物によるハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理、電磁遮蔽処理等をおこなってもよい。これらの処理は、成形体の表面に蒸着、スパッタリング、ディッピング、熱転写等により行うことができる。
【0068】
本実施形態の成形体は特に制限されないが、例えば、光学材料、電子部品、各種機械部品、発泡体、シート、フィルム、管、チューブ、玩具、日用雑貨等の幅広い分野で用いることができる。
【0069】
3.電線被覆材
本実施形態の電線被覆材は、本実施形態の樹脂組成物または本実施形態の成形体を含む。本実施形態の電線被覆材は、導体である電線の表面を保護するための材料である。
電力ケーブルは、一般的に、内側から順に、導体/内半道電層/絶縁層/外半道電層/遮蔽層/シースという層構成となっており、電線被覆材は、導体の外側の内半道電層/絶縁層/外半道電層/遮蔽層/シースの部分を指す。本実施形態の樹脂組成物は、これらの層のいずれに用いられてもよいが、溶融物性に優れていることから、絶縁層および半道電層からなる群から選択される一種または二種に用いられることが好ましい。
【0070】
電線被覆材は、絶縁性、難燃性および放熱性の性能バランスをより向上させる観点から、フィラー、難燃剤等を含んでいてもよい。
また、本実施形態の電線被覆材は、従来公知の電線被覆材に含まれる成分を含んでいてもよい。
また、導体の外周に直接、電線被覆材が被覆されていてもよいし、導体と電線被覆材との間に、他の中間部材、例えば、シールド導体や他の絶縁体などが介在されていてもよい。
【0071】
導体の材質や導体径は特に制限されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。また、電線被覆材の厚さについても、特に制限はなく、導体径などを考慮して適宜定めることができる。
【0072】
電線被覆材の製造方法としては、バンバリミキサー、加圧ニーダー、ロールなどの従来公知の混練機を用いて溶融混練した本実施形態に係る樹脂組成物を、従来公知の押出成形機などを用いて導体の外周に押出被覆するなどして製造することができる。
【0073】
4.合わせガラス中間膜および太陽電池封止材
本実施形態の合わせガラス中間膜は、本実施形態の樹脂組成物または本実施形態の成形体を含む。
合わせガラス中間膜は、その両面にガラス等の透明板状部材を設けることにより、合わせガラスを製造するものである。合わせガラス中間膜に様々な機能を付与することにより、合わせガラスに着色や紙、布などを挟んで意匠性を付与したり、防犯性を付与したり、耐候性や強度等の効果を付与することができる。
【0074】
本実施形態に係る合わせガラス中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上であり、そして好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
合わせガラス中間膜の厚みが上記下限値以上であると、合わせガラス中間膜の機械的強度をより向上させることができる。また、合わせガラス中間膜の厚みが上記上限値以下であると、得られる合わせガラスの光学特性や層間接着性をより良好にすることができる。
【0075】
本実施形態に係る合わせガラス中間膜の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
本実施形態に係る合わせガラス中間膜の製造方法としては、例えば、プレス成形法、押出成形法、Tダイ成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。
【0076】
本実施形態の太陽電池封止材は、本実施形態の樹脂組成物または本実施形態の成形体を含む。
本実施形態に係る太陽電池封止材も合せガラス中間膜と同様の膜厚が好ましく、同様の製造方法で製造することができる。
【0077】
5.太陽電池用積層シート
本実施形態の太陽電池用積層シートは、本実施形態の樹脂組成物を含む。
太陽電池用積層シートは、太陽電池において、太陽電池素子を外気から保護するための封止材およびバックシートが一体化したものである。本実施形態の樹脂組成物は、基礎物性、溶融物性および樹脂コンパウンド物性の性能バランスに優れるため、本実施形態の太陽電池用積層シートにおいて、封止材とバックシートとの間の接着層として用いることができる。
太陽電池用積層シートの厚みは、封止材が封止材としての性能を発揮することができれば制限されない。
【0078】
太陽電池素子としては、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、ガリウム-砒素、銅-インジウム-セレン、カドミウム-テルルなどのIII-V族やII-VI族化合物半導体系など、各種太陽電池素子を用いることができる。
【0079】
6.発泡体
本実施形態の発泡体は、本実施形態の樹脂組成物を加熱発泡してなる。
本実施形態の樹脂組成物を発泡体に用いる場合、樹脂組成物は、必要に応じて化学発泡剤や発泡助剤等を含むことができる。
本実施形態の発泡体は、本実施形態の樹脂組成物を用いているため、基礎物性、溶融物性および樹脂コンパウンド物性の性能バランスに優れ、断熱材、吸音材、靴底、ブイ、自動車部品、雑貨等の用途で広く使用される。
【0080】
本実施形態の樹脂組成物を発泡体に用いる場合、樹脂組成物を溶融混練した後、必要に応じペレット化するなどの工程を経て、Tダイあるいはロール等により目的物に適した形状、例えばシート状に成形することにより行うことができる。樹脂組成物の成形温度は、樹脂組成物の組成や成形方法によっても異なるが、一般的に100~200℃の温度範囲で成形方法に合った温度を選択するのがよい。
【0081】
このようにして得られた成形体から発泡体を形成するためには、プレス、炉、発泡浴などを用いて発泡を行えばよい。電子線架橋を行う場合は、発泡前に成形体に電子線を照射し、架橋を行えばよい。発泡の条件は、化学発泡剤、発泡助剤等の種類によって異なるが、一般には150~250℃の温度範囲から発泡方法に合った温度を選択するのがよい。
また、成形体から発泡させる際の発泡倍率は、例えば2.1倍以上であり、クッション性をより向上させる観点から、好ましくは3.1倍以上であり、また、軽量性をより向上させる観点から、好ましくは10倍以下、より好ましくは8倍以下である。
【0082】
7.履物
本実施形態の履物は、本実施形態の発泡体からなる。
本実施形態の発泡体は、本実施形態の履物において、踵部を構成するカウンター部材として用いられる。
履物としては、スポーツシューズ、革靴、ケミカルシューズ、サンダル等が挙げられる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0084】
以下、本実施形態を、実施例等を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら制限されるものではない。
【0085】
[材料]
各成分は、以下のものを用いた。メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:1999に準拠して、190℃、2160g荷重の条件で測定した。密度は、JIS K 7112:1999に準拠して測定した。バイオマス度は、ASTM D6866に準拠して測定した。
【0086】
<エチレン・不飽和エステル共重合体(A)>
・エチレン・酢酸ビニル共重合体1:エチレンに由来する構成単位の含有量:72質量%、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量:28質量%、MFR(190℃、2160g荷重):4g/10分、バイオマス度:0質量%
・エチレン・酢酸ビニル共重合体2:エチレンに由来する構成単位の含有量:72質量%、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量:28質量%、MFR(190℃、2160g荷重):6g/10分、バイオマス度:0質量%
【0087】
<エチレン系重合体(B)>
・低密度ポリエチレン1:低密度ポリエチレン:ブラスケム社製、SEB853、MFR(190℃、2160g荷重):2.7g/10分、密度:923kg/m、バイオマス度:95質量%
・低密度ポリエチレン2:低密度ポリエチレン、三井・ダウポリケミカル社製、MFR(190℃、2160g荷重):3.7g/10分、密度:923kg/m、バイオマス度:0質量%
【0088】
[実施例1~6および比較例1~3]
<樹脂組成物(P)の作製>
表1に示す配合割合で各材料を予め混合し、スクリュー径30mmφの二軸押出機に投入し、下記の押出条件ないし溶融混練条件で溶融混練し、造粒して樹脂組成物(P)のペレットを作製した。
【0089】
上記二軸押出機における押出条件ないし溶融混練条件は、次の通りである。
・スクリュー有効長L/D:35
・押出機設定温度(℃):C1(110)、C2(160)、C3(180)、C4(180)、C5(180)、H(180)、D(180)
・スクリュー回転数:200rpm
・スクリーンメッシュ:60/120/60
・押出量:15kg/h
【0090】
[樹脂組成物(P)のバイオマス度]
各例で得られた樹脂組成物(P)のバイオマス度(質量%)について、原料として使用した低密度ポリエチレン1のバイオマス度ならびに樹脂組成物(P)の全体を100質量%とした場合の低密度ポリエチレン1の含有量から計算により求めた。
【0091】
[樹脂組成物(P)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量]
各例で得られた樹脂組成物(P)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量(質量%)について、原料として使用したエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量ならびに樹脂組成物(P)の全体を100質量%とした場合のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量から計算により求めた。
【0092】
[樹脂組成物(P)のMFR]
各例で得られた樹脂組成物(P)のMFR(g/10分)について、JIS K 7210:1999に準拠して、190℃、2160g荷重条件にて測定した。
【0093】
[樹脂組成物(P)の密度]
各例で得られた樹脂組成物(P)の密度(kg/cm)について、JIS K 7112:1999に準拠して測定した。
【0094】
[樹脂組成物(P)の融点]
各例で得られた樹脂組成物(P)の融点(℃)について、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
【0095】
<プレスシート作製>
各例で得られた樹脂組成物(P)を、160℃、4分加熱し、その間ガス抜きを5回行った後、160℃、4分、9.8MPa(100kg/cm)条件にてプレス成型し、次いで20℃、3分、14.7MPa(150kg/cm)の条件でプレス成型し、厚み3mmのプレスシートを作製した。
【0096】
得られたプレスシートについて、破断点応力、破断点伸び、曲げ剛性率、ショアA硬度、ショアD硬度およびビカット軟化点を下記の方法に基づいて評価した。
【0097】
[破断点応力および破断点伸び]
各例で得られたプレスシートについて、破断点応力(JIS K 7161-1:2014準拠)および破断点伸び(JIS K 7161-2:2014準拠)を、引張試験機を用いて測定した。プレスシートを上記JIS規格に準拠したダンベル型に切り出して試験片とし、チャック間距離:90mm、引張速度:50mm/min、23℃、相対湿度50%RHの条件で、引っ張ることにより測定できる。破断点伸びは、引張試験における、試験片の決められた標点間での破断直前の伸びを表している。また、破断点応力は、引張試験における破断の際に破断点の引張力を試験片の初期断面積で除した値である。
【0098】
[曲げ剛性率]
各例で得られたプレスシートについて、JIS K 7106:1995に準拠して、曲げ剛性率(MPa)を測定した。プレスシートを長さ100mm、幅20mm、厚さ3mmの大きさに切り出して試験片とし、東洋精機製作所製自動読取り型「オルゼン式スティフネステスター」を用いて、23℃条件にて測定した。
【0099】
[ショアA硬度およびショアD硬度]
各例で得られたプレスシートについて、JIS K 7215:1986に準拠して、ショアA硬度およびショアD硬度を測定した。プレスシートを長さ100mm、幅20mm、厚さ3mmの大きさに切り出して試験片とし、タイプDデュロメータを用い、23℃条件にて測定した。
【0100】
[ビカット軟化点]
各例で得られたプレスシートのビカット軟化点(℃)について、JIS K 7206:2016に準拠して測定した。熱変形試験装置を用いて、プレスシート上部中央に針状圧子治具をプレスシートに接触するように設置し、10Nの荷重をかけながら、伝熱媒体であるシリコンオイルを20℃から昇温速度50℃/hで温度上昇させ、針状圧子が試験片の表面から1mm侵入したときの伝熱媒体の温度を計測した。
【0101】
<溶融張力および最大引取速度>
得られた樹脂組成物(P)の溶融張力および最大引取速度を、以下の方法で測定した。
メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、樹脂組成物(P)を、160℃に加熱した直径9.55mmのバレルに充填した。樹脂組成物(P)を、直径2.095mmのキャピラリーダイから、ピストン降下速度5mm/分にて、紐状に押し出した。得られた紐状の樹脂組成物(P)を、キャピラリーダイの下方300mmの位置に設置したロードセル付きプーリーに通過させ、紐状の樹脂組成物(P)を巻取りロールで巻き取った。このとき、紐状の樹脂組成物(P)の巻き取り速度を初速度5.0m/分から1分後に200m/分となるように直線的に上昇させ、紐状の樹脂組成物(P)が破断したときのロードセル付きプーリーにかかる荷重を溶融張力[mN]として求めた。また、紐状の樹脂組成物(P)が破断したときの巻取り速度の値を最大引取速度[m/分]として求めた。
上記と同様の方法で、バレルの加熱温度を180℃および200℃に変更して、同様の測定を行った。
160℃、180℃および200℃における溶融張力および最大引取速度の結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1から明らかなように、実施例1及び実施例2の樹脂組成物(P)は、バイオマス由来の原料が含まれているにも関わらず、MFR、密度、融点、破断点応力、破断点伸び、曲げ剛性率、ショアA硬度、ショアD硬度、ビカット軟化点が、いずれも酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量が同じであり、化石燃料由来の原料のみを使用した樹脂組成物(P)(比較例1)と同等であった。
また、実施例1及び実施例2の樹脂組成物(P)は、160℃、180℃、200℃における溶融張力が化石燃料由来の原料のみを使用した樹脂組成物(P)(比較例1)と同等であった。
実施例3及び実施例4と比較例2との比較、実施例5及び実施例6と比較例3との比較においても、同様であった。