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特開2024-143115樹脂組成物、成形体、成形体の製造方法、化粧品容器、衛生材料、発泡体および発泡体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143115
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体、成形体の製造方法、化粧品容器、衛生材料、発泡体および発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20241003BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20241003BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L23/04
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
B65D1/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055621
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】礒川 素朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 貞樹
(72)【発明者】
【氏名】大木 和幸
(72)【発明者】
【氏名】久木田 佳那
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴広
(72)【発明者】
【氏名】西村 圭司
【テーマコード(参考)】
3E033
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA15
3E033BA30
3E033BB01
3E033BB08
3E033CA20
3E033FA02
3E033FA03
4F074AA20
4F074AA23A
4F074BB25
4J002BB042
4J002BB231
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】従来の化石燃料から得られる樹脂のみを使用して製造する樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスを有しつつ、環境配慮性が向上した樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、エチレン系重合体(B)(ただし、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)に該当するものを除く)と、を含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、
エチレン系重合体(B)(ただし、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)に該当するものを除く)と、
を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン系重合体(B)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)中の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量が、1質量%以上49質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン系重合体(B)が、低密度ポリエチレンを含む請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン系重合体(B)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、前記エチレン系重合体(B)との合計含有量が、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、2質量%以上100質量%以下である、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーから選択される少なくとも一種を含む、請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の前記不飽和カルボン酸がアクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、メルトマスフローレート(MFR)が、0.1g/10分以上300g/10分以下である、請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
【請求項12】
請求項11に記載の成形体の製造方法であって、
前記樹脂組成物を射出成形する工程を含む成形体の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の成形体の製造方法であって、
前記樹脂組成物をブロー成形する工程を含む成形体の製造方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を含む化粧品容器。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を含む衛生材料。
【請求項16】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を含む発泡体。
【請求項17】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を発泡させる工程を含む発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体、成形体の製造方法、化粧品容器、衛生材料、発泡体および発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部が金属陽イオンで中和されたアイオノマーは、ヒートシール性、熱接着性、透明性、耐油性、耐衝撃性、耐摩耗性、低温特性などが優れるため、包装用フィルム、接着用フィルム、自動車内装材、同外装材、ゴルフボール外皮、工具、各種部品などの広汎な用途に用いられている。
このようなエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の少なくとも一部が金属陽イオンで中和されたアイオノマーを含む樹脂に関する文献としては、特許文献1~4のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、フィルムの総質量に対し、5~60質量%のアイオノマー樹脂を有する転写加飾用基体フィルムが記載され、当該転写加飾用基体フィルムを用いると、基体フィルム中に、特定量のアイオノマー樹脂を含有させることにより、比較的低温条件下においても、転写加飾フィルムの成型品に対する追従性(真空成型性)が良好となるとされている。
【0004】
特許文献2には、充填物に接する内表面層がエチレン-不飽和カルボン酸共重合体及びアイオノマー樹脂を含む熱収縮性フィルムであって、上記エチレン-不飽和カルボン酸共重合体の含有量と上記アイオノマー樹脂の含有量との合計を100重量%としたときに、上記エチレン-不飽和カルボン酸共重合体の含有量が70重量%以上95重量%以下であり、上記アイオノマー樹脂の含有量が5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする熱収縮性フィルムが記載され、セルフウエルド性に優れ、且つ、低温でのシール強度が高い熱収縮性フィルムを提供できるとされている。
【0005】
特許文献3には、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体(A)25質量%~64質量%のアイオノマー樹脂と、オレフィン系重合体(B)36質量%~75質量%と、を含有し、金属イオンで中和された前記アイオノマー樹脂の中和度は52%以上である、樹脂組成物(但し、樹脂組成物中の中和前の樹脂成分の合計を100質量%とする)が記載され、耐熱性及び耐傷性に優れる樹脂組成物、成形体並びに樹脂組成物の製造方法を提供できる、とされている。
【0006】
特許文献4には、半導体製造工程用テープの基材フィルムであって、A)エチレン及び(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂、並びに、B)エチレン、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合体の構成成分とする3元共重合体を含むものからなり、前記成分B)の使用量が、成分A)+B)の総量に基づき、5質量%以上であり且つ50質量%以下の範囲である基材フィルムが記載され、ダイシング特性、エキスパンド性、柔軟性、耐熱性及び成形性に優れる半導体製造工程用テープの基材フィルムを提供できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-160339号公報
【特許文献2】国際公開2017/169208号
【特許文献3】国際公開2019/044784号
【特許文献4】特開2012-089732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、このようなエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の少なくとも一部が金属陽イオンで中和されたアイオノマーを含む樹脂としては、化石燃料由来の樹脂が一般的である。しかしながら、化石燃料である石油は、その枯渇が危ぶまれるとともに、製品の製造工程および製品となった後の廃棄過程等において多くの二酸化炭素を排出するため、地球温暖化への影響が懸念されている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の化石燃料から得られる樹脂のみを使用して製造する樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスを有しつつ、環境配慮性が向上した樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、エチレン系重合体(B)(ただし、上記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)に該当するものを除く)とを含む樹脂組成物において、各成分の少なくとも一部に、バイオマス由来の原料を使用して製造した成分を用いることによって、従来の化石燃料由来の原料のみを使用して製造した樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスを有しながら、環境配慮性が向上した樹脂組成物が得られることを見出した。
【0011】
本発明は、以下の樹樹脂組成物、成形体、成形体の製造方法、化粧品容器、衛生材料、発泡体および発泡体の製造方法を提供する。
【0012】
[1]
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、
エチレン系重合体(B)(ただし、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)に該当するものを除く)と、
を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である樹脂組成物。
[2]
前記樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン系重合体(B)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)中の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量が、1質量%以上49質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記エチレン系重合体(B)が、低密度ポリエチレンを含む[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記エチレン系重合体(B)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、前記エチレン系重合体(B)との合計含有量が、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、2質量%以上100質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーから選択される少なくとも一種を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の前記不飽和カルボン酸がアクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]
JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、メルトマスフローレート(MFR)が、0.1g/10分以上300g/10分以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
[12]
[11]に記載の成形体の製造方法であって、
前記樹脂組成物を射出成形する工程を含む成形体の製造方法。
[13]
[11]に記載の成形体の製造方法であって、
前記樹脂組成物をブロー成形する工程を含む成形体の製造方法。
[14]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む化粧品容器。
[15]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む衛生材料。
[16]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む発泡体。
[17]
[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を発泡させる工程を含む発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、化石燃料由来の樹脂のみを使用して製造された従来の樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスを有しながら、環境配慮性が向上した樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0015】
1.樹脂組成物
本実施形態に係る樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、エチレン系重合体(B)(ただし、上記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)に該当するものを除く)と、を含み、樹脂組成物全体の、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である。
【0016】
本実施形態に係る樹脂組成物によれば、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、エチレン系重合体(B)(ただし、上記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)に該当するものを除く)とを含みつつ、各成分の少なくとも一部に、バイオマス由来の原料を使用して製造した成分を用いることで、化石燃料由来の原料のみを使用して製造された従来の樹脂組成物と同等の基礎物性、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスを有しながら、環境配慮性が向上した樹脂組成物を提供することができる。
【0017】
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の含有量は、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0018】
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン系重合体(B)の含有量は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、柔軟性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0019】
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、エチレン系重合体(B)との合計含有量は、基礎物性、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、エチレン系重合体(B)との合計含有量の上限について制限はないが、例えば、100質量%以下である。
【0020】
<エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)>
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーである。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいが、押出ラミネート加工適性を考慮すると2元ランダム共重合体、3元ランダム共重合体、2元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは3元ランダム共重合体のグラフト共重合体を使用するのが好ましく、より好ましくは2元ランダム共重合体または3元ランダム共重合体である。
【0021】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)における不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、およびマレイン酸モノエチル等からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、得られる成形体の柔軟性をより向上させる観点から、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0022】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は、少なくともエチレンと不飽和カルボン酸とが共重合した共重合体のアイオノマーであり、さらに第3の共重合成分が共重合した3元以上の多元共重合体としてもよい。
第3の共重合成分としては、例えば、不飽和カルボン酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、不飽和炭化水素(例えば、プロピレン、ブテン、1,3-ブタジエン、ペンテン、1,3-ペンタジエン、1-ヘキセン等)、ビニル硫酸やビニル硝酸等の酸化物、ハロゲン化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ビニル基含有1,2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
これらの中でも、第3の共重合成分としては、柔軟性をより向上させる観点から、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部位の好ましい炭素数は1以上4以下)がより好ましい。
なお、これら他の共重合成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は、好ましくはバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを含む。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、またエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のエチレンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0024】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)中の、エチレンに由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の全体を100質量%としたとき、耐熱性および機械的強度等をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、透明性をより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは93質量%以下である。
【0025】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)中の、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の全体を100質量%としたとき、得られる成形体の柔軟性をより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、加工適性および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは49質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下より好ましくは20質量%以下である。
【0026】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)中の、エチレンおよび不飽和カルボン酸以外のモノマーに由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の全体を100質量%としたとき、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)中の、エチレンおよび不飽和カルボン酸以外のモノマーに由来する構成単位の含有量の下限に制限はないが、0質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、8質量%以上であってもよい。
【0027】
ここで、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)中のエチレンに由来する構成単位の含有量、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量およびエチレンおよび不飽和カルボン以外のモノマーに由来する構成単位の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外吸収分光法(FT-IR)により測定することができる。
【0028】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、銀、水銀などの1価の金属イオン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉛、チタン、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、カドミウム、錫などの多価金属イオンなどが挙げられる。これらの金属イオンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、工業化製品の入手がより容易である観点から、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は、好ましくはナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、バリウムからなる群から選択される一種または二種以上の金属イオンを含み、より好ましくはナトリウム、亜鉛およびマグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含みの金属イオンを含み、更に好ましくは、ナトリウムおよび亜鉛から選択される一種または二種の金属イオンを含む。
また不飽和カルボン酸のアイオノマーとしては、上記金属イオンの他にも、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-ジメチルアミノシクロヘキサン等のアミノ化合物を含むものであってもよい。
【0029】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度は、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下であり、またエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度の下限に制限は無いが、透明性および機械的強度をより良好にする観点から、例えば1%以上であり、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上、更に好ましくは40%以上である。
なお、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度とは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体に含まれる全カルボキシ基のモル数に対する、金属イオンによって中和されているカルボキシ基のモル数の割合(モル%)である。
ここで、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度は、例えば、焼却残渣分析法により測定することができる。
【0030】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の各重合成分を高温、高圧下でラジカル重合させた後、得られたエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体と金属イオンを含む酸化物、水酸化物、または炭酸塩等とを反応させることによって得ることができる。
また、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は市販されているものを用いてもよい。
【0031】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、機械的強度をより向上させる観点から、好ましくは900kg/m以上であり、より好ましくは910kg/m以上、更に好ましくは920kg/m以上であり、また押出ラミネート加工適性および柔軟性をより良好とする観点から、好ましくは980kg/m以下、より好ましくは960kg/m以下、更に好ましくは950kg/m以下である。
【0032】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
また、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは0.3g/10分以上、更に好ましくは0.5g/10分以上であり、そして、耐熱性や機械的強度等をより向上させる観点から、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは80g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下である。
【0033】
<エチレン系重合体(B)>
エチレン系重合体(B)は、ポリエチレンまたはエチレンと極性モノマーとの共重合体である(ただし、上記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)に該当するものを除く)。機械的強度をより向上させる観点から、エチレン系重合体(B)は好ましくはポリエチレンを含む。
【0034】
エチレン系重合体(B)としては、得られる成形体の機械的強度をより向上させる観点から、好ましくはポリエチレンを含み、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群から選択される少なくとも一種を含み、更に好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。
また、エチレン系重合体(B)は、高圧法、中圧法または低圧法によって製造される。高圧法によって製造されることが好ましい。
これらエチレン系重合体(B)は、単一の重合体であっても、二種以上のエチレン系重合体の混合物であってもよい。
【0035】
エチレンと極性モノマーとの共重合体としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0036】
エチレン系重合体(B)は、好ましくはバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む。
エチレン系重合体(B)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは93質量%以上であり、またエチレン系重合体(B)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のエチレンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0037】
エチレン系重合体(B)の、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、機械的強度をより向上させる観点から、好ましくは900kg/mを超え、より好ましくは905kg/m以上、更に好ましくは910kg/m以上、更に好ましくは915kg/m以上であり、また溶融物性、射出成形性、ブロー成形性および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは940kg/m以下、より好ましくは930kg/m以下、更に好ましくは925kg/m以下であり、すなわち、低密度ポリエチレンの範囲に入るものが好ましい。
【0038】
また、エチレン系重合体(B)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と混合し、成形できる限り制限されないが、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上、更に好ましくは1.5g/10分以上であり、そして好ましくは100g/10分以下、より好ましくは70g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下である。
【0039】
<バイオマス由来エチレン>
本実施形態に係るバイオマス由来のエチレンの製造方法は制限されず、公知の方法を用いることができる。以下にバイオマス由来のエチレンの製造方法の例を挙げる。
【0040】
「バイオマス」とは、主に動植物に由来する有機物である資源を指し、化石燃料を除いたものをいう。
バイオマス由来のエチレンの製造方法は、例えば、植物原料を微生物により発酵させてバイオマス由来のエタノール(バイオエタノール)を生産し、脱水して製造する方法と、植物油廃棄物や残渣油を原料に製造されるバイオマスナフサから抽出する方法がある。
前者の原料としては、非可食原料と可食原料とがある。非可食原料としては、例えば、パルプ、ケナフ、稲わら等のセルロース系作物、古紙、製紙残渣、木材、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、工場煙道ガス、廃ガス等が例示できる。可食原料としては、例えば、サトウキビ、おから、トウモロコシ、イモ類、小麦、米等の炭水化物系作物、そば、および大豆等が例示できる。前者の原料として、これらからなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
後者の原料としては、各種廃棄物や未利用の資源、資源作物等を用いることができる。具体的には、菜種油、大豆油等の油脂、ユーカリ油等の精油、植物油粕等を用いることができる。
原料からプラスチック製品が廃棄されるまでのライフサイクルにおける二酸化炭素発生量を削減する観点から、バイオマスナフサから抽出されたエチレンを用いることが好ましい。
【0041】
バイオマスナフサからのエチレンの抽出は、化石燃料由来のナフサからの抽出と同様に、加熱、分解、蒸留、精製といった公知の方法を用いることができる。
【0042】
バイオエタノールの製造方法は制限されず、例えば、サトウキビやトウモロコシ等の可食原料であるバイオマス原料に、酵母に代表されるエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させて、糖を発酵させることで、エタノールを生産させた後、エタノールを精製して得ることができる。エタノールの精製は、蒸留、膜分離、抽出等の従来公知の方法を用いることができる。
また、非可食原料をバイオマス原料として使用する製造方法としては、例えば、古紙や製紙残渣等のごみ資源である非可食原料を燃焼させて発生する合成ガス(一酸化炭素や水素を主成分とするガス)、工場等から排出される煙道ガスや廃ガスを炭素源とし、微生物に発酵させることにより、エタノールを得ることができる。
【0043】
上記のように得られたエタノールを脱水反応することにより、バイオマス由来エチレンを得ることができる。脱水反応には、触媒の種類、加熱温度、圧力等の条件が求められるが、従来公知の方法を用いることができる。
【0044】
このようにして得られるバイオマスエチレンの製造工程において、エタノール発酵工程や脱水工程中に、高級アルコールや高級アルケン不純物が生成され得る。このため、エタノールの脱水の前、または脱水後に、こうした副生物を取り除くことができる。
【0045】
<バイオマス度>
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物全体の、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度は、環境配慮性を向上させる観点から、0質量%を超え、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、また樹脂組成物全体のバイオマス度の上限に制限は無いが、100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
ASTM D6866においては、バイオマス由来の放射性炭素(14C)濃度を測定することにより、バイオマス度を算出する。化石燃料由来の炭素は放射性炭素(14C)が一定の値を示すため、バイオマス由来炭素との区別が可能である。
例えばポリエチレンにおいて、バイオマス度が0質量%を超えて100質量%未満である場合、バイオマス由来のエチレンと化石燃料由来のエチレンの双方を含むといえる。
【0046】
本実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)およびバイオマス由来のエチレンを含むエチレン系重合体(B)の重合方法は制限されず、化石燃料由来エチレンを原料とした場合と同様の従来公知の方法を用いることができる。
【0047】
<その他の成分>
本実施形態に係る樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、シリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、波長変換剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤および顔料等からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
また、本実施形態に係る樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)およびエチレン系重合体(B)以外の樹脂を配合することもできる。
【0048】
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)、エチレン系重合体(B)および任意の添加剤を、同時にまたは連続的に混合することによって調製することができ、その混合順序に制限はない。調製方法としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましい。
【0049】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物の物性について説明する。
【0050】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、メルトマスフローレート(MFR)は、成形性、加工適性および射出成形性をより向上させる観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、更に好ましくは0.5g/10分以上であり、そして好ましくは300g/10分以下、より好ましくは200g/10分以下、更に好ましくは100g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下である。
【0051】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、溶融物性、射出成形性およびブロー成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは910kg/m以上、より好ましくは915kg/m以上、更に好ましくは920kg/m以上、更に好ましくは925kg/m以上であり、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは960kg/m以下、より好ましくは955kg/m以下、更に好ましくは950kg/m以下、更に好ましくは945kg/m以下である。
【0052】
本実施形態に係る樹脂組成物において、融点は、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、柔軟性および加工適性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは135℃以下、より好ましくは125℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは115℃以下である。融点は、例えば、示唆走査熱量計(DSC)等によって測定される。
【0053】
本実施形態に係る樹脂組成物において、凝固点は、溶融物性、射出成形性、ブロー成形性および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、そして好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下、更に好ましくは80℃以下である。凝固点は、例えば、示唆走査熱量計(DSC)等によって測定される。
【0054】
本実施形態に係る樹脂組成物において、融解潜熱量は、溶融物性、射出成形性、ブロー成形性および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは10J/g以上、より好ましくは20J/g以上、更に好ましくは30J/g以上であり、そして好ましくは130J/g以下、より好ましくは120J/g以下、更に好ましくは110J/g以下である。融解潜熱量は、例えば、示唆走査熱量計(DSC)等によって測定される。
【0055】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7127:1999に準拠して測定される降伏点応力は、靭性等の機械的強度をより向上させる観点から、好ましくは5MPa以上、より好ましくは8MPa以上、更に好ましくは10MPa以上である。
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7127:1999に準拠して測定される降伏点応力の上限に制限は無いが、例えば30MPa以下であってもよく、また、25MPa以下であってもよい。
【0056】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7161-1:2014に準拠して測定される破断点応力は、靭性等の機械的強度をより向上させる観点から、好ましくは5MPa以上、より好ましくは8MPa以上、更に好ましくは10MPa以上である。
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7161-1:2014に準拠して測定される破断点応力の上限に制限は無いが、例えば50MPa以下であってもよく、また40MPa以下であってもよい。
【0057】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7161-2:2014に準拠して測定される破断点伸びは、柔軟性をより向上させる観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは100%以上、更に好ましくは130%以上、更に好ましくは150%以上であり、機械的強度および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは700%以下、より好ましくは650%以下、更に好ましくは600%以下、更に好ましくは550%以下、更に好ましくは500%以下である。
【0058】
本実施形態に係る樹脂組成物の破断点応力(JIS K 7161-1:2014準拠)および破断点伸び(JIS K 7161-2:2014準拠)は、引張試験機を用いて測定される。測定は、本実施形態の樹脂組成物のプレスシートを上記JIS規格に準拠したダンベル型に切り出して試験片とし、チャック間距離:90mm、引張速度:50mm/min、23℃、相対湿度50%RHの条件で、引っ張ることにより測定できる。破断点伸びは、引張試験における、試験片の決められた標点間での破断直前の伸びを表している。また、破断点応力は、引張試験における破断の際に破断点の引張力を試験片の初期断面積で除した値である。
【0059】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7106:1995に準拠して測定される、23℃における曲げ剛性率は、耐熱性および機械的特性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは150MPa以上、より好ましくは180MPa以上、更に好ましくは200MPa以上であり、柔軟性、追従性、加工適性、取り扱い性の性能バランスをより向上させる観点から好ましくは400MPa以下、より好ましくは380MPa以下、更に好ましくは350MPa以下、更に好ましくは320MPa以下である。
【0060】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7215:1986に準拠して測定される、ショアA硬度は、成形性および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは70以上、より好ましくは75以上、更に好ましくは80以上、更に好ましくは85以上であり、成形性および柔軟性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは120以下、より好ましくは110以下、更に好ましくは100以下である。
【0061】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7215:1986に準拠して測定されるショアD硬度は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、更に好ましくは50以上であり、柔軟性および加工適性をより向上させる観点から、好ましくは80以下、より好ましくは75以下、更に好ましくは70以下である。
【0062】
なお、ショアA硬度およびショアD硬度は、JIS K 7215:1986に準拠して、タイプDデュロメータを用い、23℃条件にて測定される。
【0063】
本実施形態に係る樹脂組成物において、JIS K 7206:2016に準拠して、10N荷重にて測定されるビカット軟化点は、耐熱性、柔軟性、加工適性および取り扱い性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
【0064】
ビカット軟化点は、下記のように測定される。
本実施形態に係る樹脂組成物を用いて、JIS K 7206:2016に準拠して、熱変形試験装置を用いて、樹脂組成物のプレスシートから得られる試験片の上部中央に針状圧子治具を試験片に接触するように設置し、10Nの荷重をかけながら、伝熱媒体であるシリコンオイルを20℃から昇温速度50℃/hで温度上昇させ、針状圧子が試験片の表面から1mm侵入したときの伝熱媒体の温度を計測する。
【0065】
なお、上記物性に用いられる本実施形態に係る樹脂組成物のプレスシートは、下記の通り作製されるものである。
本実施形態の樹脂組成物を、160℃、4分加熱し、その間ガス抜きを5回行った後、160℃、4分、9.8MPa(100kg/cm)条件にてプレス成形し、次いで20℃、3分、14.7MPa(150kg/cm)の条件でプレス成形し、厚み3mmのプレスシートを作製する。
【0066】
本実施形態に係る樹脂組成物の160℃における溶融張力は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは150mN以上、より好ましくは200mN以上、更に好ましくは250mN以上であり、そして好ましくは1000mN以下、好ましくは950mN以下、さらに好ましくは900mN以下、さらに好ましくは850mN以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の160℃における最大引取り速度は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは10m/分以上、より好ましくは13m/分以上、更に好ましくは15m/分以上であり、そして好ましくは40m/分以下、より好ましくは35m/分以下、更に好ましくは30m/分以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の160℃における平均引取り速度は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは10m/分以上、より好ましくは13m/分以上、更に好ましくは15m/分以上であり、そして好ましくは40m/分以下、好ましくは35m/分以下、好ましくは30m/分以下である。
【0067】
本実施形態に係る樹脂組成物の180℃における溶融張力は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは50mN以上、より好ましくは80mN以上、更に好ましくは100mN以上、更に好ましくは120mN以上であり、そして好ましくは450mN以下、より好ましくは430mN以下、更に好ましくは400mN以下、更に好ましくは380mN以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の180℃における最大引取り速度は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは20m/分以上、より好ましくは25m/分以上、更に好ましくは30m/分以上であり、そして好ましくは70m/分以下、より好ましくは65m/分以下、更に好ましくは60m/分以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の180℃における平均引取り速度は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは20m/分以上、より好ましくは25m/分以上、更に好ましくは30m/分以上であり、そして好ましくは60m/分以下、より好ましくは55m/分以下、更に好ましくは50m/分以下である。
【0068】
本実施形態に係る樹脂組成物の200℃における溶融張力は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは55mN以上、より好ましくは60mN以上、更に好ましくは65mN以上であり、そして好ましくは160mN以下、より好ましくは150mN以下、更に好ましくは145mN以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の200℃における最大引取り速度は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは40m/分以上、より好ましくは50m/分以上、更に好ましくは60m/分以上であり、そして好ましくは130m/分以下、より好ましくは120m/分以下、更に好ましくは110m/分以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の200℃における平均引取り速度は、加工適性をより向上させる観点から、好ましくは30m/分以上、より好ましくは20m/分以上、更に好ましくは50m/分以上であり、そして好ましくは110m/分以下、より好ましくは100m/分以下、更に好ましくは95m/分以下である。
【0069】
本実施形態に係る樹脂組成物の溶融張力、最大引取り速度および平均引取り速度の測定方法について、160℃における場合を例として説明する。
メルトテンションテスターを用いて、樹脂組成物を160℃に加熱した直径9.55mmのバレルに充填する。樹脂組成物を、直径2.095mmのキャピラリーダイから、ピストン降下速度5mm/分にて、紐状に押し出す。得られた紐状の樹脂組成物を、キャピラリーダイの下方300mmの位置に設置したロードセル付きプーリーに通過させ、紐状の樹脂組成物を巻取りロールで巻き取る。このとき、紐状の樹脂組成物の巻き取り速度を初速度5.0m/分から1分後に200m/分となるように直線的に上昇させ、紐状の樹脂組成物が破断したときのロードセル付きプーリーにかかる荷重を溶融張力[mN]とする。また、紐状の樹脂組成物が破断したときの巻取り速度の値を最大引取速度[m/分]とする。また、紐状の樹脂組成物の巻き取り開始から、紐状の樹脂組成物が破断するまでの巻取り速度の値の平均を平均引取速度[m/分]とする。
180℃および200℃における溶融張力、最大引取り速度および平均引取り速度の測定は、上記においてバレルの加熱温度を180℃または200℃に変更する以外は上記と同様に測定する。
【0070】
2.成形体
本実施形態の成形体は、本実施形態の樹脂組成物を成形して得られる。成形方法としては制限されず、押出成形、射出成形、圧縮成形、中空成形等の公知の成形方法を用いることができ、シート形状、フィルム形状、板形状、それ以外の立体形状等の各種形状に成形することにより得ることができる。
また、本実施形態の成形体は、本実施形態の樹脂組成物のみからなるものであってもよいし、本実施形態の樹脂組成物と他の成分とからなるものであってもよい。
また、本実施形態の成形体は、部材の一部であってもよいし全部であってもよい。
【0071】
また、本実施形態の成形体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、その表面にフレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、無機または有機化合物によるハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理、電磁遮蔽処理等をおこなってもよい。これらの処理は、成形体の表面に蒸着、スパッタリング、ディッピング、熱転写等により行うことができる。
【0072】
本実施形態の成形体は特に制限されないが、例えば、光学材料、電子部品、各種機械部品、発泡体、シート、フィルム、管、チューブ、玩具、日用雑貨等の幅広い分野で用いることができる。
【0073】
3.成形体の製造方法
本実施形態の成形体の製造方法は、本実施形態の樹脂組成物を射出成形する工程を含んでもよい。
本実施形態の成形体の製造方法は、本実施形態の樹脂組成物を用いるため、基礎物性および溶融物性の性能バランスに優れ、射出成形に適している。射出成形により、自動車内外装材、家電、土木建築材、生活用品、スポーツ用品、工業用品などの分野で使用可能な各種形状、特に複雑な形状の成形品を製造することができる。
【0074】
射出成形の温度は、150以上250℃以下程度の範囲が好ましい。射出成形に際して、樹脂組成物に上述した任意の添加剤を配合しておくことができる。射出成形に際してこれらの添加剤を配合する場合は、予め樹脂組成物に一部又は全部の添加剤を、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて溶融混合して得た樹脂組成物を使用することができる。その際、一部又は全部の添加剤は、マスターバッチの形で使用することができる。射出成形においてはまた、成形品の表面にエンボス処理を施すことによって、金型からの離型性を改良し、またラミネート時のガラスの割れを防止するために、表面エンボス形状を有する射出成形金型を用いて成形することが好ましい。エンボス形状は任意であり、例えば梨地状、ダイヤ格子状、連続した直線状、連続した曲線状、多数の凸部を有する突起状など各種形状のものが使用できる。
【0075】
本実施形態の成形体の製造方法は、本実施形態の樹脂組成物をブロー成形する工程を含んでもよい。
本実施形態の成形体の製造方法は、本実施形態の樹脂組成物を用いるため、基礎物性および溶融物性の性能バランスに優れ、ブロー成形に適している。ブロー成形により、小型細物製品を製造することができる。また、ブロー成形に用いた場合、高速成形が可能であり、また成形条件幅が広く生産性を高めることができる。
【0076】
4.化粧品容器
本実施形態の化粧品容器は、本実施形態の樹脂組成物を含む。
化粧品容器としては制限されないが、例えば、有底筒状の本体および口頸部を有する中空成形体等の形状が挙げられる。収容される化粧品としては、化粧水や美容液などの液状の基礎化粧品や、リキッドファンデーションなどの液状のメークアップ化粧品を挙げることができる。ここで、化粧品が液状であるとは流動性を有することを意味し、低粘度液体のほか、高粘度の懸濁液やペースト状物を含む。
またさらに、本実施形態の化粧品容器は、上記の中空成形体等の容器を包装する包装体とすることもできる。本実施形態の樹脂組成物を用いてフィルムを形成し、フィルムの片面または両面に、本実施形態の樹脂組成物以外の樹脂層あるいは紙層を積層し、積層体とし、包装体とすることもできる。
【0077】
5.衛生材料
本実施形態の衛生材料は、本実施形態の樹脂組成物を含む。
衛生材料としては、紙おむつのギャザーやバックシート、生理用品、医療用ディスポーザルシート、手術用・処置用ガウン裏地、絆創膏などの医療衛生材料等が挙げられる。
【0078】
6.発泡体
本実施形態の発泡体は、本実施形態の樹脂組成物を含む。
本実施形態の樹脂組成物を発泡体に用いる場合、樹脂組成物は、必要に応じて化学発泡剤や発泡助剤等を含むことができる。
本実施形態の発泡体は、本実施形態の樹脂組成物を用いているため、基礎物性、溶融物性、射出成形性、ブロー成形性および耐熱性の性能バランスに優れ、断熱材、吸音材、靴底、ブイ、自動車部品、雑貨等の用途で広く使用される。
【0079】
本実施形態の樹脂組成物を発泡体に用いる場合、樹脂組成物を溶融混練した後、必要に応じペレット化するなどの工程を経て、Tダイあるいはロール等により目的物に適した形状、例えばシート状に成形することにより行うことができる。樹脂組成物の成形温度は、樹脂組成物の組成や成形方法によっても異なるが、一般的に100~200℃の温度範囲で成形方法に合った温度を選択するのがよい。
【0080】
このようにして得られた成形体から発泡体を形成するためには、プレス、炉、発泡浴などを用いて発泡を行えばよい。電子線架橋を行う場合は、発泡前に成形体に電子線を照射し、架橋を行えばよい。発泡の条件は、化学発泡剤、発泡助剤等の種類によって異なるが、一般には150~250℃の温度範囲から発泡方法に合った温度を選択するのがよい。
また、成形体から発泡させる際の発泡倍率は、例えば2.1倍以上であり、クッション性をより向上させる観点から、好ましくは3.1倍以上であり、また、機械的強度をより向上させる観点から、好ましくは10倍以下、より好ましくは8倍以下である。
【0081】
7.発泡体の製造方法
本実施形態の発泡体の製造方法は、本実施形態の樹脂組成物を発泡させる工程を含む。
本実施形態の発泡体の製造方法では、本実施形態の樹脂組成物を用いて、架橋発泡体等の発泡体を製造することができる。発泡体の製造においては、本実施形態の樹脂組成物に、発泡剤および架橋剤からなる群から選択される一種または二種以上を添加して用いることができる。
発泡体の製造に用いられる樹脂組成物は、未架橋かつ未発泡状態であり、溶融状態であってもよいし、また、冷却固化したペレットまたはシートであってもよい。
【0082】
本実施形態の発泡体の製造方法に制限はないが、好ましくはプレス成形、押出成形、射出成形からなる群から選択される一種である。
プレス成形としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物からなるシートをプレス成形機を用いて得ることができる。シート成形時においては、発泡剤および架橋剤の分解温度以下でシート成形することが好ましく、具体的には、例えば100℃以上130℃以下の、樹脂成分が溶融状態となる温度条件に設定してシート成形することが好ましい。得られたシートを、例えば130℃以上200℃以下に熱した金型に、裁断して挿入し、例えば30kgf/m以上300kgf/m以下程度の圧力を10分以上90分以下かけることにより、発泡体を製造することができる。
押出成形としては、本実施形態の樹脂組成物を押出機から押出し、大気中に解放すると同時に発泡させることにより、発泡体を製造することができる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。
射出成形としては、本実施形態の樹脂組成物を、発泡剤および架橋剤の分解温度以下で金型内に射出して、金型内で例えば130℃以上200℃以下程度の温度に保って架橋発泡させることができる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。
【0083】
また、電離性放射線照射による架橋方法により架橋発泡体を得ることもできる。例えば、本実施形態の樹脂組成物に、発泡剤として有機系熱分解型発泡剤を添加し、有機系熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融混練し、得られた混練物をたとえばシート状に成形し、シート状の発泡体を得る。次いで、得られたシート状の発泡体に電離性放射線を所定量照射してシート状発泡体を架橋させた後、得られたシート状の架橋発泡体を有機系熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させることによって、シート状の架橋発泡体を得ることができる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが用いられる。このうちコバルト-60のγ線、電子線が好ましく用いられる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0085】
以下、本実施形態を、実施例等を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら制限されるものではない。
【0086】
[材料]
各成分は、以下のものを用いた。メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:1999に準拠して、190℃、2160g荷重の条件で測定した。密度は、JIS K 7112:1999に準拠して測定した。バイオマス度は、ASTM D6866に準拠して測定した。
【0087】
<アイオノマー(A)>
・アイオノマー1:エチレンに由来する構成単位の含有量:85質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量:15質量%、中和度:54%ナトリウム)、MFR(190℃、2160g荷重):0.9g/10分、バイオマス度:0質量%
・アイオノマー2:エチレンに由来する構成単位の含有量:90質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量:10質量%、中和度:50%ナトリウム、MFR(190℃、2160g荷重):1.6g/10分、バイオマス度:0質量%
【0088】
<エチレン系重合体(B)>
・低密度ポリエチレン1:低密度ポリエチレン、ブラスケム社製、SEB818、MFR(190℃、2160g荷重):8.7g/10分、密度:918kg/m、バイオマス度:95質量%
・低密度ポリエチレン2:低密度ポリエチレン、三井・ダウポリケミカル社製、MFR(190℃、2160g荷重):7.2g/10分、密度:918kg/m、バイオマス度:0質量%
・低密度ポリエチレン3:低密度ポリエチレン、ブラスケム社製、SEB853、MFR(190℃、2160g荷重):2.7g/10分、密度:923kg/m、バイオマス度:95質量%
・低密度ポリエチレン4:低密度ポリエチレン、三井・ダウポリケミカル社製、MFR(190℃、2160g荷重):1.9g/10分、密度:921kg/m、バイオマス度:0質量%
【0089】
[実施例1~6および比較例1~6]
<樹脂組成物(P)の作製>
表1に示す配合割合で各材料を予め混合し、スクリュー径30mmφの二軸押出機に投入し、下記の押出条件ないし溶融混練条件で溶融混練し、造粒して樹脂組成物(P)のペレットを作製した。
【0090】
上記二軸押出機における押出条件ないし溶融混練条件は、次の通りである。
・スクリュー有効長L/D:35
・押出機設定温度(℃):C1(110)、C2(160)、C3(180)、C4(180)、C5(180)、H(180)、D(180)
・スクリュー回転数:200rpm
・スクリーンメッシュ:60/120/60
・押出量:15kg/h
【0091】
[樹脂組成物(P)のバイオマス度]
各例で得られた樹脂組成物(P)のバイオマス度(質量%)について、原料として使用した低密度ポリエチレン1または低密度ポリエチレン3のバイオマス度ならびに樹脂組成物(P)の全体を100質量%とした場合の低密度ポリエチレン1または低密度ポリエチレン3の含有量から計算により求めた。
【0092】
[樹脂組成物(P)の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量]
各例で得られた樹脂組成物(P)の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量(質量%)について、原料として使用したアイオノマー(A)の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量ならびに樹脂組成物(P)の全体を100質量%とした場合のアイオノマー(A)の含有量から計算により求めた。
【0093】
[樹脂組成物(P)のMFR]
各例で得られた樹脂組成物(P)のMFR(g/10分)について、JIS K 7210:1999に準拠して、190℃、2160g荷重条件にて測定した。
【0094】
[樹脂組成物(P)の密度]
各例で得られた樹脂組成物(P)の密度(kg/cm)について、JIS K 7112:1999に準拠して測定した。
【0095】
[樹脂組成物(P)の融点、凝固点および融解潜熱量]
各例で得られた樹脂組成物(P)の融点(℃)、凝固点(℃)および融解潜熱量(J/g)について、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
【0096】
<プレスシート作製>
各例で得られた樹脂組成物(P)を、160℃、4分加熱し、その間ガス抜きを5回行った後、160℃、4分、9.8MPa(100kg/cm)条件にてプレス成形し、次いで20℃、3分、14.7MPa(150kg/cm)の条件でプレス成形し、厚み3mmのプレスシートを作製した。
【0097】
得られたプレスシートについて、降伏点応力、破断点応力、破断点伸び、曲げ剛性率、ショアA硬度、ショアD硬度およびビカット軟化点を下記の方法に基づいて評価した。
【0098】
[降伏点応力]
各例で得られたプレスシートについて、JIS K 7127:1999に準拠して引張試験を行い、降伏点応力(MPa)を測定した。
【0099】
[破断点応力および破断点伸び]
各例で得られたプレスシートについて、破断点応力(JIS K 7161-1:2014準拠)および破断点伸び(JIS K 7161-2:2014準拠)を、引張試験機を用いて測定した。プレスシートを上記JIS規格に準拠したダンベル型に切り出して試験片とし、チャック間距離:90mm、引張速度:50mm/min、23℃、相対湿度50%RHの条件で、引っ張ることにより測定した。破断点伸びは、引張試験における、試験片の決められた標点間での破断直前の伸びを表している。また、破断点応力は、引張試験における破断の際に破断点の引張力を試験片の初期断面積で除した値である。
【0100】
[曲げ剛性率]
各例で得られたプレスシートについて、JIS K 7106に準拠して、の曲げ剛性率(MPa)を測定した。プレスシートを長さ100mm、幅20mm、厚さ3mmの大きさに切り出して試験片とし、東洋精機製作所製自動読取り型「オルゼン式スティフネステスター」を用いて、23℃条件にて測定した。
【0101】
[ショアA硬度およびショアD硬度]
各例で得られたプレスシートについて、JIS K 7215:1986に準拠して、ショアA硬度およびショアD硬度を測定した。プレスシートを長さ100mm、幅20mm、厚さ3mmの大きさに切り出して試験片とし、タイプDデュロメータを用い、23℃条件にて測定した。
【0102】
[ビカット軟化点]
各例で得られたプレスシートのビカット軟化点(℃)について、JIS K 7206:2016に準拠して測定した。熱変形試験装置を用いて、プレスシート上部中央に針状圧子治具をプレスシートに接触するように設置し、10Nの荷重をかけながら、伝熱媒体であるシリコンオイルを20℃から昇温速度50℃/hで温度上昇させ、針状圧子が試験片の表面から1mm侵入したときの伝熱媒体の温度を計測した。
【0103】
<溶融張力、最大引取速度および平均引取速度>
得られた樹脂組成物(P)の溶融張力および最大引取速度を、以下の方法で測定した。
メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、樹脂組成物(P)を、160℃に加熱した直径9.55mmのバレルに充填した。樹脂組成物(P)を、直径2.095mmのキャピラリーダイから、ピストン降下速度5mm/分にて、紐状に押し出した。得られた紐状の樹脂組成物(P)を、キャピラリーダイの下方300mmの位置に設置したロードセル付きプーリーに通過させ、紐状の樹脂組成物(P)を巻取りロールで巻き取った。このとき、紐状の樹脂組成物(P)の巻き取り速度を初速度5.0m/分から1分後に200m/分となるように直線的に上昇させ、紐状の樹脂組成物(P)が破断したときのロードセル付きプーリーにかかる荷重を溶融張力[mN]として求めた。また、紐状の樹脂組成物(P)が破断したときの巻取り速度の値を最大引取速度[m/分]とした。また、紐状の樹脂組成物(P)の巻き取り開始から、紐状の樹脂組成物(P)が破断するまでの巻取り速度の値の平均を平均引取速度[m/分]とした。
上記と同様の方法で、バレルの加熱温度を180℃および200℃に変更して、同様の測定を行った。
160℃、180℃および200℃における溶融張力、最大引取速度および平均引取速度の結果を表1に示す
【0104】
[射出成形性の評価]
<角板シートの作製>
実施例1~3および比較例1~3において得られた樹脂組成物(P)を下記の射出成形機を用いて下記条件にて射出成形し、長さ150mm×幅80mm×厚さ2mmの角板シートを得た。得られた角板シートについて、金型離型性を評価した。また、角板シートの色を観察した。得られた評価結果を表1に示す。
<射出成形機及び射出成形条件>
・射出成形機:東芝機械社製、IS-220F
・成形温度:250℃
・金型:フィルムゲート
・金型温度(チラー温度):60℃
【0105】
<金型離型性の評価>
樹脂組成物(P)の金型離型性は、以下の基準で評価した。
(基準)
A(良好):角板シートを金型から取り外した後、金型に樹脂の剥がれ残りが観察されない
B(不良):角板シートを金型から取り外した後、金型に樹脂の剥がれ残りが観察される
【0106】
[ブロー成形性の評価]
実施例4~6および比較例4~6において得られた樹脂組成物(P)を、ダイ開口500mm幅から樹脂厚みが20μm、引取速度が80m/分、ダイ開口の先端からニップロールまでの距離(エアーギャップ)が110mmの条件で、ラミネート押出成形した後、押出量を一定に固定したまま、引取速度を増加させたときに、溶融膜の耳が揺れ始めた時の引取速度(m/分)をドローダウンとした。また、得られた溶融膜の色を観察した。結果を表1に示す。
【0107】
<ドローダウンの評価>
樹脂組成物(P)のドローダウン性を、以下の基準で評価した。
(基準)
A(良好):ドローダウンが400m/分を超える
B(不良):ドローダウンが400m/分未満
【0108】
【表1】
【0109】
表1から明らかなように、実施例1の樹脂組成物(P)は、バイオマス由来の原料が含まれているにも関わらず、MFR、密度、融点、凝固点、融解潜熱量、降伏点応力、破断点応力、破断点伸び、曲げ剛性率、ショアA硬度、ショアD硬度およびビカット軟化点が、いずれも化石燃料由来の原料のみを使用した樹脂組成物(P)(比較例1)と同等であった。実施例2と比較例2との比較、実施例3と比較例3との比較、実施例4と比較例4との比較、実施例5と比較例5との比較、実施例6と比較例6との比較においても、同様であった。
また、実施例1の樹脂組成物(P)は、バイオマス由来の原料が含まれているにも関わらず、射出成形における金型剥離性および外観が、いずれも化石燃料由来の原料のみを使用した樹脂組成物(P)(比較例1)と同等の性能を有していた。実施例2と比較例2との比較、実施例3と比較例3との比較においても、同様であった。
また、実施例4の樹脂組成物(P)は、バイオマス由来の原料が含まれているにも関わらず、ブロー成形におけるドローダウンおよび外観が、いずれも化石燃料由来の原料のみを使用した樹脂組成物(P)(比較例4)と同等の性能を有していた。実施例5と比較例5との比較、実施例6と比較例6との比較においても、同様であった。