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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143117
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】表示システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20241003BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241003BHJP
   H04N 13/363 20180101ALI20241003BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20241003BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20241003BHJP
【FI】
H04N7/18 J
G08G1/16 C
H04N7/18 U
H04N7/18 K
H04N13/363
H04N13/346
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055624
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝長
(72)【発明者】
【氏名】森 俊也
【テーマコード(参考)】
3D344
5C054
5H181
【Fターム(参考)】
3D344AA26
3D344AA27
3D344AA30
3D344AC25
5C054CA04
5C054CC02
5C054CE00
5C054FA00
5C054FC12
5C054FC13
5C054FC16
5C054FE09
5C054FE14
5C054FE28
5C054HA30
5H181AA01
5H181BB13
5H181CC04
5H181FF23
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF37
5H181LL01
5H181LL02
(57)【要約】
【課題】移動体の最終姿勢角に応じて、表示画像の表示位置を精度良く制御することができる表示システムを提供する。
【解決手段】表示システム2は、表示画像12を示す光を車両4のフロントガラス14に投射することにより、フロントガラス14越しに表示画像12を虚像として表示させる表示部6と、複数の周辺画像に基づいて、複数のカメラにそれぞれ対応する車両4の複数の仮姿勢角を推定する第1~第4の仮姿勢角推定部42,44,46,48と、複数のカメラにそれぞれ対応する複数の処理を決定する重み係数決定部52と、複数の仮姿勢角にそれぞれ複数の処理を施すことにより、車両4の最終姿勢角を推定する最終姿勢角推定部54と、推定された最終姿勢角に応じて、フロントガラス14に対する表示画像12の表示位置を変更する表示位置制御部56とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムであって、
表示画像を示す光を前記移動体の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させる表示部と、
前記移動体に搭載された複数の撮像部によりそれぞれ互いに異なる複数の方向から前記移動体の周辺を撮像した複数の周辺画像を取得する取得部と、
前記複数の周辺画像に基づいて、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する前記移動体の複数の仮姿勢角を推定する仮姿勢角推定部と、
前記複数の撮像部にそれぞれ対応する複数の処理を決定する決定部と、
前記複数の仮姿勢角にそれぞれ前記複数の処理を施すことにより、前記移動体の最終姿勢角を推定する最終姿勢角推定部と、
推定された前記最終姿勢角に応じて、前記表示媒体に対する前記虚像の表示位置を変更する表示位置制御部と、を備える
表示システム。
【請求項2】
前記決定部は、前記複数の処理として、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する複数の重み係数を決定し、
前記最終姿勢角推定部は、前記複数の仮姿勢角にそれぞれ前記複数の重み係数を乗じて加算する積和演算により、前記最終姿勢角を推定する
請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記決定部は、前記移動体に関する移動体情報に基づいて、前記複数の重み係数を決定する
請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記複数の撮像部のうち特定の撮像部は、前記移動体の移動方向と交差する方向である側方から前記移動体の周辺を撮像し、
前記移動体情報は、前記移動体の移動速度を示す速度情報であり、
前記決定部は、前記速度情報に基づいて、前記複数の重み係数のうち前記特定の撮像部に対応する特定の重み係数を、前記移動体の移動速度が大きいほど当該特定の重み係数が小さくなるように決定する
請求項3に記載の表示システム。
【請求項5】
前記移動体情報は、前記複数の撮像部のうち特定の撮像部の撮像方向において前記移動体の周辺に存在する1以上の周辺移動体の数を示す周辺移動体数情報であり、
前記決定部は、前記周辺移動体数情報に基づいて、前記複数の重み係数のうち前記特定の撮像部に対応する特定の重み係数を、前記周辺移動体の数が多いほど当該特定の重み係数が小さくなるように決定する
請求項3に記載の表示システム。
【請求項6】
前記決定部は、前記複数の周辺画像に基づいて、前記複数の重み係数をそれぞれ決定する
請求項2に記載の表示システム。
【請求項7】
前記複数の撮像部のうち特定の撮像部は、特定の方向から前記移動体の周辺を撮像し、
前記決定部は、前記特定の撮像部により撮像された特定の周辺画像における消失点の位置のばらつきが閾値以上である場合には、前記複数の重み係数のうち前記特定の撮像部に対応する特定の重み係数を0とする
請求項6に記載の表示システム。
【請求項8】
前記複数の撮像部のうち特定の撮像部は、特定の方向から前記移動体の周辺を撮像し、
前記決定部は、前記特定の撮像部により撮像された特定の周辺画像の輝度又はコントラスト比が閾値以下である場合には、前記複数の重み係数のうち前記特定の撮像部に対応する特定の重み係数を0とする
請求項6に記載の表示システム。
【請求項9】
移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムにおける制御方法であって、
表示画像を示す光を前記移動体の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させるステップと、
前記移動体に搭載された複数の撮像部によりそれぞれ互いに異なる複数の方向から前記移動体の周辺を撮像した複数の周辺画像を取得するステップと、
前記複数の周辺画像に基づいて、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する前記移動体の複数の仮姿勢角を推定するステップと、
前記複数の撮像部にそれぞれ対応する複数の処理を決定するステップと、
前記複数の仮姿勢角にそれぞれ前記複数の処理を施すことにより、前記移動体の最終姿勢角を推定するステップと、
推定された前記最終姿勢角に応じて、前記表示媒体に対する前記虚像の表示位置を変更するステップと、を含む
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された複数のカメラでそれぞれ異なる複数の方向から車両の周辺を撮像し、撮像した複数の周辺画像を、車両を上方から見下ろした俯瞰画像に視点変換して車両内のディスプレイに表示する技術が知られている。
【0003】
この技術では、複数のカメラによりそれぞれ撮像された複数の周辺画像の各々から特徴点を抽出し、抽出した複数の特徴点の変化に基づいて、車両の姿勢が変化したかを判定する姿勢変化判定装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6614042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の姿勢変化判定装置では、車両の走行状態又は車両の周辺環境等によっては、上述した複数の特徴点の変化を検出し難くなるため、車両の姿勢を精度良く判定することができないという課題が生じる。
【0006】
そこで、本開示は、移動体の姿勢角に応じて、表示画像の表示位置を精度良く制御することができる表示システム及び制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る表示システムは、移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムであって、表示画像を示す光を前記移動体の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させる表示部と、前記移動体に搭載された複数の撮像部によりそれぞれ互いに異なる複数の方向から前記移動体の周辺を撮像した複数の周辺画像を取得する取得部と、前記複数の周辺画像に基づいて、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する前記移動体の複数の仮姿勢角を推定する仮姿勢角推定部と、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する複数の処理を決定する決定部と、前記複数の仮姿勢角にそれぞれ前記複数の処理を施すことにより、前記移動体の最終姿勢角を推定する最終姿勢角推定部と、推定された前記最終姿勢角に応じて、前記表示媒体に対する前記虚像の表示位置を変更する表示位置制御部と、を備える。
【0008】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の非一時的な記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る表示システム等によれば、移動体の姿勢角に応じて、表示画像の表示位置を精度良く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る表示システムを搭載した車両を示す図である。
図2】実施の形態に係る表示システムにより表示画像が表示されるフロントガラスの表示領域を示す図である。
図3】実施の形態に係る表示システムの構成を示す概略図である。
図4】実施の形態に係る表示画像の一例を示す図である。
図5】実施の形態に係る表示システムのコントローラの機能構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態に係る前方画像、右側方画像、左側方画像及び後方画像の一例を示す概略図である。
図7】実施の形態に係る表示システムのコントローラの動作の流れを示すフローチャートである。
図8図7のフローチャートのステップS109の処理を説明するための図である。
図9図7のフローチャートのステップS107の処理を具体的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の第1の態様に係る表示システムは、移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムであって、表示画像を示す光を前記移動体の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させる表示部と、前記移動体に搭載された複数の撮像部によりそれぞれ互いに異なる複数の方向から前記移動体の周辺を撮像した複数の周辺画像を取得する取得部と、前記複数の周辺画像に基づいて、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する前記移動体の複数の仮姿勢角を推定する仮姿勢角推定部と、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する複数の処理を決定する決定部と、前記複数の仮姿勢角にそれぞれ前記複数の処理を施すことにより、前記移動体の最終姿勢角を推定する最終姿勢角推定部と、推定された前記最終姿勢角に応じて、前記表示媒体に対する前記虚像の表示位置を変更する表示位置制御部と、を備える。
【0012】
本態様によれば、仮姿勢角推定部は、複数の周辺画像に基づいて、複数の撮像部にそれぞれ対応する移動体の複数の仮姿勢角を推定する。最終姿勢角推定部は、複数の仮姿勢角にそれぞれ複数の処理を施すことにより、移動体の最終姿勢角を推定する。これにより、例えば移動体の移動状態又は移動体の周辺環境等を考慮して、移動体の最終姿勢角を精度良く推定することができる。その結果、移動体の最終姿勢角に応じて、表示画像の表示位置を精度良く制御することができる。
【0013】
例えば、第2の態様に係る表示システムでは、第1の態様において、前記決定部は、前記複数の処理として、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する複数の重み係数を決定し、前記最終姿勢角推定部は、前記複数の仮姿勢角にそれぞれ前記複数の重み係数を乗じて加算する積和演算により、前記最終姿勢角を推定するように構成してもよい。
【0014】
本態様によれば、決定部は、例えば移動体の移動状態又は移動体の周辺環境等を考慮して、複数の撮像部にそれぞれ対応する複数の重み係数を決定することができる。その結果、最終姿勢角推定部は、複数の仮姿勢角にそれぞれ複数の重み係数を乗じて加算する積和演算により、例えば移動体の移動状態又は移動体の周辺環境等を考慮して、最終姿勢角を精度良く推定することができる。
【0015】
例えば、第3の態様に係る表示システムでは、第2の態様において、前記決定部は、前記移動体に関する移動体情報に基づいて、前記複数の重み係数を決定するように構成してもよい。
【0016】
本態様によれば、決定部は、移動体に関する移動体情報を考慮して、複数の重み係数を決定することができる。
【0017】
例えば、第4の態様に係る表示システムでは、第3の態様において、前記複数の撮像部のうち特定の撮像部は、前記移動体の移動方向と交差する方向である側方から前記移動体の周辺を撮像し、前記移動体情報は、前記移動体の移動速度を示す速度情報であり、前記決定部は、前記速度情報に基づいて、前記複数の重み係数のうち前記特定の撮像部に対応する特定の重み係数を、前記移動体の移動速度が大きいほど当該特定の重み係数が小さくなるように決定するように構成してもよい。
【0018】
本態様によれば、移動体の移動速度が比較的大きい場合には、例えば特定の撮像部により側方から撮像された特定の周辺画像の特徴点を追跡するのが難しくなるため、当該特定の周辺画像に基づいて推定された特定の仮姿勢角の精度は比較的低くなる。そのため、決定部は、速度情報に基づいて、特定の撮像部に対応する特定の重み係数(すなわち、特定の仮姿勢角に乗じる特定の重み係数)を、移動体の移動速度が大きいほど当該特定の重み係数が小さくなるように決定することにより、最終姿勢角を精度良く推定することができる。
【0019】
例えば、第5の態様に係る表示システムでは、第3の態様において、前記移動体情報は、前記複数の撮像部のうち特定の撮像部の撮像方向において前記移動体の周辺に存在する1以上の周辺移動体の数を示す周辺移動体数情報であり、前記決定部は、前記周辺移動体数情報に基づいて、前記複数の重み係数のうち前記特定の撮像部に対応する特定の重み係数を、前記周辺移動体の数が多いほど当該特定の重み係数が小さくなるように決定するように構成してもよい。
【0020】
本態様によれば、周辺移動体の数が比較的多い場合には、例えば特定の撮像部により撮像された特定の周辺画像の特徴点の数が比較的少なくなるため、当該特定の周辺画像に基づいて推定された特定の仮姿勢角の精度は比較的低くなる。そのため、決定部は、周辺移動体数情報に基づいて、特定の撮像部に対応する特定の重み係数(すなわち、特定の仮姿勢角に乗じる特定の重み係数)を、周辺移動体の数が多いほど当該特定の重み係数が小さくなるように決定することにより、最終姿勢角を精度良く推定することができる。
【0021】
例えば、第6の態様に係る表示システムでは、第2の態様において、前記決定部は、前記複数の周辺画像に基づいて、前記複数の重み係数をそれぞれ決定するように構成してもよい。
【0022】
本態様によれば、決定部は、複数の周辺画像を考慮して、複数の重み係数をそれぞれ決定することができる。
【0023】
例えば、第7の態様に係る表示システムでは、第6の態様において、前記複数の撮像部のうち特定の撮像部は、特定の方向から前記移動体の周辺を撮像し、前記決定部は、前記特定の撮像部により撮像された特定の周辺画像における消失点の位置のばらつきが閾値以上である場合には、前記複数の重み係数のうち前記特定の撮像部に対応する特定の重み係数を0とするように構成してもよい。
【0024】
本態様によれば、特定の撮像部により撮像された特定の周辺画像における消失点の位置のばらつきが閾値以上である場合には、当該特定の周辺画像に基づいて推定された特定の仮姿勢角の精度は比較的低くなる。そのため、決定部は、特定の周辺画像における消失点の位置のばらつきが閾値以上である場合に、特定の撮像部に対応する特定の重み係数(す
なわち、特定の仮姿勢角に乗じる特定の重み係数)を0とすることにより、最終姿勢角を精度良く推定することができる。
【0025】
例えば、第8の態様に係る表示システムでは、第6の態様において、前記複数の撮像部のうち特定の撮像部は、特定の方向から前記移動体の周辺を撮像し、前記決定部は、前記特定の撮像部により撮像された特定の周辺画像の輝度又はコントラスト比が閾値以下である場合には、前記複数の重み係数のうち前記特定の撮像部に対応する特定の重み係数を0とするように構成してもよい。
【0026】
本態様によれば、特定の撮像部により撮像された特定の周辺画像が暗い場合、又は、特定の周辺画像全体の輝度が均一である場合には、例えば特定の周辺画像の特徴点を追跡するのが難しくなるため、当該特定の周辺画像に基づいて推定された特定の仮姿勢角の精度は比較的低くなる。そのため、決定部は、特定の周辺画像の輝度又はコントラスト比が閾値以下である場合に、特定の撮像部に対応する特定の重み係数(すなわち、特定の仮姿勢角に乗じる特定の重み係数)を0とすることにより、最終姿勢角を精度良く推定することができる。
【0027】
また、本開示の第9の態様に係る制御方法は、移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システムにおける制御方法であって、表示画像を示す光を前記移動体の表示媒体に投射することにより、前記表示媒体越しに前記表示画像を虚像として表示させるステップと、前記移動体に搭載された複数の撮像部によりそれぞれ互いに異なる複数の方向から前記移動体の周辺を撮像した複数の周辺画像を取得するステップと、前記複数の周辺画像に基づいて、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する前記移動体の複数の仮姿勢角を推定するステップと、前記複数の撮像部にそれぞれ対応する複数の処理を決定するステップと、前記複数の仮姿勢角にそれぞれ前記複数の処理を施すことにより、前記移動体の最終姿勢角を推定するステップと、推定された前記最終姿勢角に応じて、前記表示媒体に対する前記虚像の表示位置を変更するステップと、を含む。
【0028】
本態様によれば、上述した第1の態様に係る表示システムと同様に、移動体の最終姿勢角に応じて、表示画像の表示位置を精度良く制御することができる。
【0029】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0030】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0031】
(実施の形態)
[1.表示システムの概要]
まず、図1図4を参照しながら、実施の形態に係る表示システム2の概要について説明する。図1は、実施の形態に係る表示システム2を搭載した車両4を示す図である。図2は、実施の形態に係る表示システム2により表示画像12が表示されるフロントガラス14の表示領域16を示す図である。図3は、実施の形態に係る表示システム2の構成を示す概略図である。図4は、実施の形態に係る表示画像12の一例を示す図である。
【0032】
図1及び図2に示すように、実施の形態に係る表示システム2は、自動車等の車両4(移動体の一例)に搭載されている。図3に示すように、表示システム2は、表示部6と、コントローラ8とを備えている。
【0033】
表示部6は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)であり、車両4のダッシュボード10の内部に配置されている。図1図3に示すように、表示部6では、虚像である表示画像12を表示するための表示光を、例えば車両4のフロントガラス14(表示媒体の一例)における運転席寄りの表示領域16に向けて投射することにより、表示光をフロントガラス14の表示領域16で運転者18に向けて反射させる。これにより、運転者18は、フロントガラス14の表示領域16越しに、虚像である表示画像12をフロントガラス14の前方の景色上に重ね合わせて見ることができる。すなわち、運転者18にとっては、表示画像12は、あたかもフロントガラス14の前方の空間20に表示されているかのように見える。
【0034】
図4に示すように、表示画像12は、例えば車両4が走行している車線22上において、車両4の前方に存在する障害物24を強調表示するための矢印を示す画像である。表示画像12は、当該表示画像12により示される矢印の先端部が障害物24の右隣りに位置するように、フロントガラス14の表示領域16に表示される。説明の都合上、図2では、表示画像12の図示を省略してある。なお、表示画像12は、上述した矢印を示す画像以外に、例えば前方車両又は歩行者を強調表示する画像や、車両4の進行方向を指し示す画像等、フロントガラス14の前方の景色上に重ね合わせて表示できる他の画像であってもよい。
【0035】
図3に示すように、表示部6は、メインハウジング26と、表示ユニット28と、第1のミラー30と、第2のミラー32とを備えている。
【0036】
メインハウジング26は、箱形状に形成されており、例えばアルミニウム等の金属で形成されている。メインハウジング26は、車両4のダッシュボード10の内部に配置されている。メインハウジング26の内部には、表示ユニット28、第1のミラー30及び第2のミラー32が配置されている。メインハウジング26の上面は、フロントガラス14に対向するように配置されている。メインハウジング26の上面には、開口部34が形成されている。この開口部34は、例えば透明な樹脂で形成された板状のカバー部材36で覆われている。
【0037】
表示ユニット28は、表示画像12を表示するための表示光を、第1のミラー30及び第2のミラー32に向けて投射するためのPGU(Picture Generation Unit)である。表示ユニット28は、表示パネル38と、バックライト40とを有している。表示パネル38は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)であり、前面の表示面に表示画像12の元になる画像を表示する。バックライト40は、表示パネル38の背面に向けて光を照射する。
【0038】
第1のミラー30は、例えば凸面ミラーであり、表示ユニット28からの表示光を第2のミラー32に向けて反射する。第2のミラー32は、例えば凹面ミラーであり、第1のミラー30からの表示光をフロントガラス14の表示領域16に向けて反射する。第2のミラー32からの表示光は、カバー部材36を透過してフロントガラス14の表示領域16で反射した後に、運転者18の目に入射する。
【0039】
コントローラ8は、車両4の最終姿勢角θを推定し、推定した最終姿勢角θに応じて、フロントガラス14の表示領域16における表示画像12の表示位置を変更(補正)する。なお、車両4の最終姿勢角θとは、水平面に対する車両4のピッチング角である。コントローラ8の機能構成については、後述する。
【0040】
[2.コントローラの機能構成]
次に、図5及び図6を参照しながら、コントローラ8の機能構成について説明する。図5は、実施の形態に係る表示システム2のコントローラ8の機能構成を示すブロック図である。図6は、実施の形態に係る前方画像60、右側方画像68、左側方画像74及び後方画像80の一例を示す概略図である。
【0041】
なお、本明細書において、「前」、「後」、「左」及び「右」はそれぞれ、車両4の運転席に着座している運転者18から見て前、後、左及び右を意味する。
【0042】
図5に示すように、コントローラ8は、機能構成として、第1の仮姿勢角推定部42(取得部及び仮姿勢角推定部の一例)と、第2の仮姿勢角推定部44(取得部及び仮姿勢角推定部の一例)と、第3の仮姿勢角推定部46(取得部及び仮姿勢角推定部の一例)と、第4の仮姿勢角推定部48(取得部及び仮姿勢角推定部の一例)と、車両情報取得部50と、重み係数決定部52(決定部の一例)と、最終姿勢角推定部54と、表示位置制御部56とを備えている。
【0043】
第1の仮姿勢角推定部42は、車両4に搭載された前方カメラ58(撮像部の一例)により撮像された前方画像60(周辺画像の一例)を取得する。ここで、図6に示すように、前方カメラ58は、例えば車両4のフロントバンパーに配置され、車両4の前進方向(図6において上方向)から車両4の前方(周辺の一例)を撮像する。第1の仮姿勢角推定部42は、前方カメラ58から取得した前方画像60に基づいて、前方カメラ58に対応する車両4の第1の仮姿勢角θ1(仮姿勢角の一例)を推定する。なお、車両4の第1の仮姿勢角θ1とは、水平面に対する車両4のピッチング角である。
【0044】
具体的には、第1の仮姿勢角推定部42は、前方画像60から複数の特徴点を抽出し、抽出した複数の特徴点を時間方向に追跡することにより、複数のオプティカルフロー62を検出する。また、第1の仮姿勢角推定部42は、検出した複数のオプティカルフロー62に基づいて、前方画像60における消失点64の座標(平面座標)を推定する。そして、第1の仮姿勢角推定部42は、推定した消失点64の座標と基準座標との差分に基づいて、車両4の第1の仮姿勢角θ1を推定する。なお、第1の仮姿勢角推定部42は、第1の仮姿勢角θ1を推定する際に、例えば特許第3719095等に記載の公知の方法を用いてもよい。このことは、後述する第2~第4の仮姿勢角θ2~θ4を推定する際も同様である。さらに、第1の仮姿勢角推定部42は、前方画像60に基づいて、(a)オプティカルフロー62の数、(b)消失点64のばらつき(例えば分散)、(c)前方画像60の輝度、(d)前方画像60のコントラスト比を算出する。
【0045】
ここで、消失点64のばらつきについて説明する。例えば、オプティカルフロー62が一点に収束する場合は、消失点64のばらつきが小さいと言える。逆に、オプティカルフロー62が一点に収束せずある範囲にばらついている場合は、当該範囲が大きいほど消失点64のばらつきが大きいと言える。また、消失点64のばらつきが小さいほど消失点64の精度が高く、消失点64のばらつきが大きいほど消失点64の精度が低いと言える。
【0046】
第2の仮姿勢角推定部44は、車両4に搭載された右側方カメラ66(撮像部の一例)により撮像された右側方画像68(周辺画像の一例)を取得する。ここで、図6に示すように、右側方カメラ66は、例えば車両4の右側ドアミラーに配置され、車両4の右方向から車両4の右側方(周辺の一例)を撮像する。車両4の右方向とは、図6において右方向であり、車両4の移動方向(前進方向又は後退方向)と交差する方向である。第2の仮姿勢角推定部44は、取得した右側方画像68に基づいて、右側方カメラ66に対応する車両4の第2の仮姿勢角θ2(仮姿勢角の一例)を推定する。なお、車両4の第2の仮姿勢角θ2とは、水平面に対する車両4のピッチング角である。
【0047】
具体的には、第2の仮姿勢角推定部44は、右側方画像68から複数の特徴点を抽出し、抽出した複数の特徴点を時間方向に追跡することにより、複数のオプティカルフロー70を検出する。また、第2の仮姿勢角推定部44は、検出した複数のオプティカルフロー70に基づいて、右側方画像68における消失点(図示せず)の座標(高さ座標)を推定する。そして、第2の仮姿勢角推定部44は、推定した消失点の座標と基準座標との差分に基づいて、車両4の第2の仮姿勢角θ2を推定する。さらに、第2の仮姿勢角推定部44は、右側方画像68に基づいて、(a)オプティカルフロー70の数、(b)消失点のばらつき、(c)右側方画像68の輝度、(d)右側方画像68のコントラスト比を算出する。
【0048】
第3の仮姿勢角推定部46は、車両4に搭載された左側方カメラ72(撮像部の一例)により撮像された左側方画像74(周辺画像の一例)を取得する。ここで、図6に示すように、左側方カメラ72は、例えば車両4の左側ドアミラーに配置され、車両4の左方向から車両4の左側方(周辺の一例)を撮像する。車両4の左方向とは、図6において左方向であり、車両4の移動方向と交差する方向である。第3の仮姿勢角推定部46は、取得した左側方画像74に基づいて、左側方カメラ72に対応する車両4の第3の仮姿勢角θ3(仮姿勢角の一例)を推定する。なお、車両4の第3の仮姿勢角θ3とは、水平面に対する車両4のピッチング角である。
【0049】
具体的には、第3の仮姿勢角推定部46は、左側方画像74から複数の特徴点を抽出し、抽出した複数の特徴点を時間方向に追跡することにより、複数のオプティカルフロー76を検出する。また、第3の仮姿勢角推定部46は、検出した複数のオプティカルフロー76に基づいて、左側方画像74における消失点(図示せず)の座標(高さ座標)を推定する。そして、第3の仮姿勢角推定部46は、推定した消失点の座標と基準座標との差分に基づいて、車両4の第3の仮姿勢角θ3を推定する。さらに、第3の仮姿勢角推定部46は、左側方画像74に基づいて、(a)オプティカルフロー76の数、(b)消失点のばらつき、(c)左側方画像74の輝度、(d)左側方画像74のコントラスト比を算出する。
【0050】
第4の仮姿勢角推定部48は、車両4に搭載された後方カメラ78(撮像部の一例)により撮像された後方画像80(周辺画像の一例)を取得する。ここで、図6に示すように、後方カメラ78は、例えば車両4のリアバンパーに配置され、車両4の後退方向(図6において下方向)から車両4の後方(周辺の一例)を撮像する。第4の仮姿勢角推定部48は、後方カメラ78から取得した後方画像80に基づいて、後方カメラ78に対応する車両4の第4の仮姿勢角θ4(仮姿勢角の一例)を推定する。なお、車両4の第4の仮姿勢角θ4とは、水平面に対する車両4のピッチング角である。
【0051】
具体的には、第4の仮姿勢角推定部48は、後方画像80から複数の特徴点を抽出し、抽出した複数の特徴点を時間方向に追跡することにより、複数のオプティカルフロー82を検出する。また、第4の仮姿勢角推定部48は、検出した複数のオプティカルフロー82に基づいて、後方画像80における消失点84の座標(平面座標)を推定する。そして、第4の仮姿勢角推定部48は、推定した消失点84の座標と基準座標との差分に基づいて、車両4の第4の仮姿勢角θ4を推定する。さらに、第4の仮姿勢角推定部48は、後方画像80に基づいて、(a)オプティカルフロー82の数、(b)消失点84のばらつき、(c)後方画像80の輝度、(d)後方画像80のコントラスト比を算出する。
【0052】
車両情報取得部50は、例えば車両4に搭載されたCAN(Controller Area Network)又はADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)等から、車両4に関する車両情報(移動体情報の一例)を取得する。車両情報は、例えば、車両4の移動速度(車速)を示す速度情報、及び、車両
4の周辺に存在する1以上の周辺車両(周辺移動体の一例)の数を示す周辺車両数情報(周辺移動体数情報の一例)等を含む。車両情報取得部50は、取得した車両情報を重み係数決定部52に出力する。
【0053】
重み係数決定部52は、前方カメラ58、右側方カメラ66、左側方カメラ72及び後方カメラ78にそれぞれ対応する第1の重み係数W1、第2の重み係数W2、第3の重み係数W3及び第4の重み係数W4(複数の処理の一例)を決定する。具体的には、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの車両情報、並びに、前方画像60、右側方画像68、左側方画像74及び後方画像80に基づいて、第1~第4の重み係数W1~W4を決定する。重み係数決定部52による第1~第4の重み係数W1~W4の決定方法については、後述する。
【0054】
最終姿勢角推定部54は、第1の仮姿勢角θ1、第2の仮姿勢角θ2、第3の仮姿勢角θ3及び第4の仮姿勢角θ4にそれぞれ、第1の重み係数W1、第2の重み係数W2、第3の重み係数W3及び第4の重み係数W4を乗じて加算する積和演算により、車両4の最終姿勢角θを推定する。
【0055】
表示位置制御部56は、表示部6の表示パネル38に描画される画像を制御する。具体的には、表示位置制御部56は、最終姿勢角推定部54により推定された最終姿勢角θに応じて、フロントガラス14の表示領域16における表示画像12(虚像)の表示位置を変更するように、表示部6の表示パネル38を制御する。
【0056】
[3.コントローラの動作]
次に、図7図9を参照しながら、コントローラ8の動作について説明する。図7は、実施の形態に係る表示システム2のコントローラ8の動作の流れを示すフローチャートである。図8は、図7のフローチャートのステップS109の処理を説明するための図である。図9は、図7のフローチャートのステップS107の処理を具体的に示すフローチャートである。
【0057】
図7に示すように、第1の仮姿勢角推定部42は、前方カメラ58より取得した前方画像60から複数の特徴点を抽出し(S102)、抽出した複数の特徴点を時間方向に追跡する(S103)。次いで、第1の仮姿勢角推定部42は、複数のオプティカルフロー62を検出し、検出した複数のオプティカルフロー62に基づいて、前方画像60における消失点64の座標を推定する(S104)。次いで、第1の仮姿勢角推定部42は、推定した消失点64の座標と基準座標との差分に基づいて、車両4の第1の仮姿勢角θ1を推定する(S105)。この時、第1の仮姿勢角推定部42は、前方画像60に基づいて、(a)オプティカルフロー62の数、(b)消失点64のばらつき、(c)前方画像60の輝度、(d)前方画像60のコントラスト比も算出する。
【0058】
前方カメラ58、右側方カメラ66、左側方カメラ72及び後方カメラ78によりそれぞれ取得した前方画像60、右側方画像68、左側方画像74及び後方画像80のそれぞれに基づいて仮姿勢角が推定されるまで、以下のようにして、上述したステップS102~S105が繰り返し実行される(S101,S106)。
【0059】
ステップS102に戻り、第2の仮姿勢角推定部44は、右側方カメラ66より取得した右側方画像68から複数の特徴点を抽出し(S102)、抽出した複数の特徴点を時間方向に追跡する(S103)。次いで、第2の仮姿勢角推定部44は、複数のオプティカルフロー70を検出し、検出した複数のオプティカルフロー70に基づいて、右側方画像68における消失点の座標を推定する(S104)。次いで、第2の仮姿勢角推定部44は、推定した消失点の座標と基準座標との差分に基づいて、車両4の第2の仮姿勢角θ2
を推定する(S105)。この時、第2の仮姿勢角推定部44は、右側方画像68に基づいて、(a)オプティカルフロー70の数、(b)消失点のばらつき、(c)右側方画像68の輝度、(d)右側方画像68のコントラスト比も算出する。
【0060】
ステップS102に戻り、第3の仮姿勢角推定部46は、左側方カメラ72より取得した左側方画像74から複数の特徴点を抽出し(S102)、抽出した複数の特徴点を時間方向に追跡する(S103)。次いで、第3の仮姿勢角推定部46は、複数のオプティカルフロー76を検出し、検出した複数のオプティカルフロー76に基づいて、左側方画像74における消失点の座標を推定する(S104)。次いで、第3の仮姿勢角推定部46は、推定した消失点の座標と基準座標との差分に基づいて、車両4の第3の仮姿勢角θ3を推定する(S105)。この時、第3の仮姿勢角推定部46は、左側方画像74に基づいて、(a)オプティカルフロー76の数、(b)消失点のばらつき、(c)左側方画像74の輝度、(d)左側方画像74のコントラスト比も算出する。
【0061】
ステップS102に戻り、第4の仮姿勢角推定部48は、後方カメラ78より取得した後方画像80から複数の特徴点を抽出し(S102)、抽出した複数の特徴点を時間方向に追跡する(S103)。次いで、第4の仮姿勢角推定部48は、複数のオプティカルフロー82を検出し、検出した複数のオプティカルフロー82に基づいて、後方画像80における消失点84の座標を推定する(S104)。次いで、第4の仮姿勢角推定部48は、推定した消失点84の座標と基準座標との差分に基づいて、車両4の第4の仮姿勢角θ4を推定する(S105)。この時、第4の仮姿勢角推定部48は、後方画像80に基づいて、(a)オプティカルフロー82の数、(b)消失点84のばらつき、(c)後方画像80の輝度、(d)後方画像80のコントラスト比も算出する。
【0062】
以上のようにして、第1の仮姿勢角θ1、第2の仮姿勢角θ2、第3の仮姿勢角θ3及び第4の仮姿勢角θ4の全てが推定された後に、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの車両情報、並びに、前方画像60、右側方画像68、左側方画像74及び後方画像80に基づいて、第1~第4の重み係数W1~W4を決定する(S107)。なお、ステップS107の具体的な処理については、後述する。
【0063】
次いで、最終姿勢角推定部54は、第1の仮姿勢角θ1、第2の仮姿勢角θ2、第3の仮姿勢角θ3及び第4の仮姿勢角θ4にそれぞれ、第1の重み係数W1、第2の重み係数W2、第3の重み係数W3及び第4の重み係数W4を乗じて加算する積和演算により、車両4の最終姿勢角θを推定する(S108)。すなわち、最終姿勢角推定部54は、次式1により最終姿勢角θを推定する。なお、以下において、iは1~4の整数(i=1,2,3,4)である。
【0064】
【数1】
【0065】
次いで、表示位置制御部56は、最終姿勢角推定部54により推定された最終姿勢角θに応じて、フロントガラス14の表示領域16における表示画像12の表示位置を変更するように、表示部6の表示パネル38を制御する(S109)。その後、図7のフローチャートの処理を終了する。
【0066】
ここで、図8を参照しながら、上述したステップS109の処理について具体的に説明する。
【0067】
図8の(a)に示すように、車両4が前傾も後傾もしていない場合には、最終姿勢角推定部54は、例えば最終姿勢角θ=0°と推定する。この場合、図8の(b)に示すように、表示画像12は、当該表示画像12により示される矢印の先端部が障害物24の右隣りに位置しているので、表示位置制御部56は、最終姿勢角θ(=0°)に基づいて、フロントガラス14の表示領域16における表示画像12の表示位置を変更しない。
【0068】
また、図8の(c)に示すように、例えば車両4のトランクルームに重量物を積載することにより、車両4が後傾している場合には、最終姿勢角推定部54は、例えば最終姿勢角θ>0°と推定する。この場合、図8の(d)に示すように、運転者18から見て、フロントガラス14の表示領域16と車両4の前方の景色との位置関係が、図8の(b)に示す両者の位置関係から変化する。これに伴い、運転者18から見て、表示画像12により示される矢印の先端部は、障害物24の右隣りの位置よりも上方にずれるようになる。そのため、表示位置制御部56は、図8の(d)に示すように、最終姿勢角θ(>0°)に基づいて、フロントガラス14の表示領域16における表示画像12の表示位置を、図8の(b)に示す表示位置よりも下方に変更する。これにより、表示画像12により示される矢印の先端部の位置は、障害物24の右隣りの位置に補正される。
【0069】
また、図8の(e)に示すように、例えば車両4の助手席に重量物を積載することにより、車両4が前傾している場合には、最終姿勢角推定部54は、例えば最終姿勢角θ<0°と推定する。この場合、図8の(f)に示すように、運転者18から見て、フロントガラス14の表示領域16と車両4の前方の景色との位置関係が、図8の(b)に示す両者の位置関係から変化する。これに伴い、運転者18から見て、表示画像12により示される矢印の先端部は、障害物24の右隣りの位置よりも下方にずれるようになる。そのため、表示位置制御部56は、図8の(f)に示すように、最終姿勢角θ(<0°)に基づいて、フロントガラス14の表示領域16における表示画像12の表示位置を、図8の(b)に示す表示位置よりも上方に変更する。これにより、表示画像12により示される矢印の先端部の位置は、障害物24の右隣りの位置に補正される。
【0070】
なお、表示画像12の表示位置を変更する際には、運転者18に対して違和感を与えないように、表示画像12の表示位置を徐々に変更するのが好ましい。
【0071】
以下、図9を参照しながら、上述したステップS107の処理について具体的に説明する。
【0072】
図9に示すように、まず、重み係数決定部52は、第1の仮姿勢角推定部42により算出された前方画像60のオプティカルフロー62の数に基づいて、第1の重み係数W1を算出する(S1072)。具体的には、重み係数決定部52は、次式2により第1の重み係数W1を算出する。
【0073】
【数2】
【0074】
なお、上式2において、NOF1は前方画像60のオプティカルフロー62の数であり、NOF2は右側方画像68のオプティカルフロー70の数であり、NOF3は、左側方画像74のオプティカルフロー76の数であり、NOF4は後方画像80のオプティカルフロー82の数である。上式2は、オプティカルフロー62の数が多いほど、前方画像60に基づいて推定された第1の姿勢角θ1の信頼度が高いことを意味している。
【0075】
次いで、重み係数決定部52は、第1の仮姿勢角推定部42により推定された消失点64の座標のばらつきに基づいて、第1の重み係数W1を算出する(S1073)。具体的には、重み係数決定部52は、消失点64の座標のばらつきが第1の閾値未満である場合には、ステップS1072で算出した第1の重み係数W1をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、消失点64の座標のばらつきが第1の閾値以上である場合には、ステップS1072で算出した第1の重み係数W1を0とする。第1の重み係数W1を0とする場合には、上式1から、最終姿勢角θを推定する際に、前方画像60に基づいて推定された第1の姿勢角θ1を実質的に除外することになる。これは、消失点64の座標のばらつきが第1の閾値以上である場合には、前方画像60に基づいて推定された第1の姿勢角θ1の信頼度が極端に低いことを意味している。なお、ステップS1073で第1の重み係数W1を0とした場合には、後述するステップS1074~S1076を省略してもよい。
【0076】
次いで、重み係数決定部52は、第1の仮姿勢角推定部42により算出された前方画像60の輝度及びコントラスト比に基づいて、第1の重み係数W1を算出する(S1074)。具体的には、重み係数決定部52は、前方画像60の輝度が第2の閾値を超え、且つ、前方画像60のコントラスト比が第3の閾値を超える場合には、ステップS1073で算出した第1の重み係数W1をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、前方画像60の輝度が第2の閾値以下である場合(すなわち、前方画像60全体が暗い場合)、又は、前方画像60のコントラスト比が第3の閾値以下である場合(すなわち、前方画像60全体の輝度が均一である場合)には、ステップS1073で算出した第1の重み係数W1を0とする。第1の重み係数W1を0とする場合には、上式1から、最終姿勢角θを推定する際に、前方画像60に基づいて推定された第1の姿勢角θ1を実質的に除外することになる。これは、前方画像60の輝度が第2の閾値以下である場合、又は、前方画像60のコントラスト比が第3の閾値以下である場合には、前方画像60に基づいて推定された第1の姿勢角θ1の信頼度が極端に低いことを意味している。なお、ステップS1074で第1の重み係数W1を0とした場合には、後述するステップS1075,S1076を省略してもよい。
【0077】
次いで、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの速度情報に基づいて、第1の重み係数W1を算出する(S1075)。具体的には、重み係数決定部52は、速度情報に基づいて、車両4の車速が大きいほど第1の重み係数W1が小さくなるように、第1の重み係数W1を決定する。例えば、重み係数決定部52は、車両4の車速が第4の閾値未満である場合には、ステップS1074で算出した第1の重み係数W1に係数「2」を乗じたものを、第1の重み係数W1として算出する。また例えば、重み係数決定部52は、車両4の車速が第5の閾値(>第4の閾値)を超える場合には、ステップS1074で算出した第1の重み係数W1に係数「0.5」を乗じたものを、第1の重み係数W1として算出する。これは、車両4の車速が大きいほど、前方画像60の特徴点を追跡するのが難しくなるため、車両4の車速が第5の閾値を超える場合には、前方画像60に基づいて推定された第1の姿勢角θ1の信頼度が比較的低いことを意味している。
【0078】
次いで、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの周辺車両数情報に基づいて、第1の重み係数W1を算出する(S1076)。ここで、周辺車両数情報は、車両4の前方(すなわち、前方カメラ58の撮像方向)に存在する1以上の周辺車両の数を示す情報である。重み係数決定部52は、周辺車両数情報により示される周辺車両の数が第6の閾値以下である場合には、ステップS1075で算出した第1の重み係数W1をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、周辺車両数情報により示される周辺車両の数が第6の閾値を超える場合(例えば、車両4の前方に大型の周辺車両等が走行している場合)には、ステップS1075で算出した第1の重み係数W1に係数「0.01」を乗じたものを、第1の重み係数W1として算出する。これは、車両4の前方に存在する周辺車両の数が多いほど、前方画像60の特徴点の数が少なくなるため、車両4の前方に存在する周辺車両の数が第6の閾値を超える場合には、前方画像60に基づいて推定された第1の姿勢角θ1の信頼度が比較的低いことを意味している。
【0079】
前方カメラ58、右側方カメラ66、左側方カメラ72及び後方カメラ78によりそれぞれ取得した前方画像60、右側方画像68、左側方画像74及び後方画像80のそれぞれに基づいて重み係数が算出されるまで、以下のようにして、上述したステップS1072~S1076が繰り返し実行される(S1071,S1077)。
【0080】
ステップS1072に戻り、重み係数決定部52は、第2の仮姿勢角推定部44により算出された右側方画像68のオプティカルフロー70の数に基づいて、第2の重み係数W2を算出する(S1072)。具体的には、重み係数決定部52は、次式3により第2の重み係数W2を算出する。次式3は、オプティカルフロー70の数が多いほど、右側方画像68に基づいて推定された第2の姿勢角θ2の信頼度が高いことを意味している。
【0081】
【数3】
【0082】
次いで、重み係数決定部52は、第2の仮姿勢角推定部44により推定された消失点の座標のばらつきに基づいて、第2の重み係数W2を算出する(S1073)。具体的には、重み係数決定部52は、消失点の座標のばらつきが第1の閾値未満である場合には、ステップS1072で算出した第2の重み係数W2をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、消失点の座標のばらつきが第1の閾値以上である場合には、ステップS1072で算出した第2の重み係数W2を0とする。第2の重み係数W2を0とする場合には、上式1から、最終姿勢角θを推定する際に、右側方画像68に基づいて推定された第2の姿勢角θ2を実質的に除外することになる。これは、消失点の座標のばらつきが第1の閾値以上である場合には、右側方画像68に基づいて推定された第2の姿勢角θ2の信頼度が極端に低いことを意味している。
【0083】
次いで、重み係数決定部52は、第2の仮姿勢角推定部44により算出された右側方画像68の輝度及びコントラスト比に基づいて、第2の重み係数W2を算出する(S1074)。具体的には、重み係数決定部52は、右側方画像68の輝度が第2の閾値を超え、且つ、右側方画像68のコントラスト比が第3の閾値を超える場合には、ステップS1073で算出した第2の重み係数W2をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、右側方画像68の輝度が第2の閾値以下である場合、又は、右側方画像68のコントラスト比が第3の閾値以下である場合には、ステップS1073で算出した第2の重み係数W2を0とする。第2の重み係数W2を0とする場合には、上式1から、最終姿勢角θを推定する際に、右側方画像68に基づいて推定された第2の姿勢角θ2を実質的に除外することになる。これは、右側方画像68の輝度が第2の閾値以下である場合、又は、右側方画像68のコントラスト比が第3の閾値以下である場合には、右側方画像68に基づいて推定された第2の姿勢角θ2の信頼度が極端に低いことを意味している。
【0084】
次いで、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの速度情報に基づいて、第2の重み係数W2を算出する(S1075)。具体的には、重み係数決定部52は、速度情報に基づいて、車両4の車速が大きいほど第2の重み係数W2が小さくなるように、第2の重み係数W2を決定する。例えば、重み係数決定部52は、車両4の車速が第4の閾値未満である場合には、ステップS1074で算出した第2の重み係数W2に係数「2」を
乗じたものを、第2の重み係数W2として算出する。また例えば、重み係数決定部52は、車両4の車速が第5の閾値を超える場合には、ステップS1074で算出した第2の重み係数W2に係数「0.5」を乗じたものを、第2の重み係数W2として算出する。これは、車両4の車速が大きいほど、右側方画像68の特徴点を追跡するのが難しくなるため、車両4の車速が第5の閾値を超える場合には、右側方画像68に基づいて推定された第2の姿勢角θ2の信頼度が比較的低いことを意味している。
【0085】
次いで、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの周辺車両数情報に基づいて、第2の重み係数W2を算出する(S1076)。ここで、周辺車両数情報は、車両4の右側方(すなわち、右側方カメラ66の撮像方向)に存在する1以上の周辺車両の数を示す情報である。重み係数決定部52は、周辺車両数情報により示される周辺車両の数が第6の閾値以下である場合には、ステップS1075で算出した第2の重み係数W2をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、周辺車両数情報により示される周辺車両の数が第6の閾値を超える場合(例えば、車両4の右側方に複数の周辺車両が並走している場合)には、ステップS1075で算出した第2の重み係数W2に係数「0.01」を乗じたものを、第2の重み係数W2として算出する。これは、車両4の右側方に存在する周辺車両の数が多いほど、右側方画像68の特徴点の数が少なくなるため、車両4の右側方に存在する周辺車両の数が第6の閾値を超える場合には、右側方画像68に基づいて推定された第2の姿勢角θ2の信頼度が比較的低いことを意味している。
【0086】
ステップS1072に戻り、重み係数決定部52は、第3の仮姿勢角推定部46により算出された左側方画像74のオプティカルフロー76の数に基づいて、第3の重み係数W3を算出する(S1072)。具体的には、重み係数決定部52は、次式4により第3の重み係数W3を算出する。次式4は、オプティカルフロー76の数が多いほど、左側方画像74に基づいて推定された第3の姿勢角θ3の信頼度が高いことを意味している。
【0087】
【数4】
【0088】
次いで、重み係数決定部52は、第3の仮姿勢角推定部46により推定された消失点の座標のばらつきに基づいて、第3の重み係数W3を算出する(S1073)。具体的には、重み係数決定部52は、消失点の座標のばらつきが第1の閾値未満である場合には、ステップS1072で算出した第3の重み係数W3をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、消失点の座標のばらつきが第1の閾値以上である場合には、ステップS1072で算出した第3の重み係数W3を0とする。第3の重み係数W3を0とする場合には、上式1から、最終姿勢角θを推定する際に、左側方画像74に基づいて推定された第3の姿勢角θ3を実質的に除外することになる。これは、消失点の座標のばらつきが第1の閾値以上である場合には、左側方画像74に基づいて推定された第3の姿勢角θ3の信頼度が極端に低いことを意味している。
【0089】
次いで、重み係数決定部52は、第3の仮姿勢角推定部46により算出された左側方画像74の輝度及びコントラスト比に基づいて、第3の重み係数W3を算出する(S1074)。具体的には、重み係数決定部52は、左側方画像74の輝度が第2の閾値を超え、且つ、左側方画像74のコントラスト比が第3の閾値を超える場合には、ステップS1073で算出した第3の重み係数W3をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、左側方画像74の輝度が第2の閾値以下である場合、又は、左側方画像74のコントラスト比が第3の閾値以下である場合には、ステップS1073で算出した第3の重み係数W3を0とする。第3の重み係数W3を0とする場合には、上式1から、最終姿勢角θを推定する際に、左側方画像74に基づいて推定された第3の姿勢角θ3を実質的に除外することになる。これは、左側方画像74の輝度が第2の閾値以下である場合、又は、左側方画像74のコントラスト比が第3の閾値以下である場合には、左側方画像74に基づいて推定された第3の姿勢角θ3の信頼度が極端に低いことを意味している。
【0090】
次いで、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの速度情報に基づいて、第3の重み係数W3を算出する(S1075)。具体的には、重み係数決定部52は、速度情報に基づいて、車両4の車速が大きいほど第3の重み係数W3が小さくなるように、第3の重み係数W3を決定する。例えば、重み係数決定部52は、車両4の車速が第4の閾値未満である場合には、ステップS1074で算出した第3の重み係数W3に係数「2」を乗じたものを、第3の重み係数W3として算出する。また例えば、重み係数決定部52は、車両4の車速が第5の閾値を超える場合には、ステップS1074で算出した第3の重み係数W3に係数「0.5」を乗じたものを、第3の重み係数W3として算出する。これは、車両4の車速が大きいほど、左側方画像74の特徴点を追跡するのが難しくなるため、車両4の車速が第5の閾値を超える場合には、左側方画像74に基づいて推定された第3の姿勢角θ3の信頼度が比較的低いことを意味している。
【0091】
次いで、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの周辺車両数情報に基づいて、第3の重み係数W3を算出する(S1076)。ここで、周辺車両数情報は、車両4の左側方(すなわち、左側方カメラ72の撮像方向)に存在する1以上の周辺車両の数を示す情報である。重み係数決定部52は、周辺車両数情報により示される周辺車両の数が第6の閾値以下である場合には、ステップS1075で算出した第3の重み係数W3をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、周辺車両数情報により示される周辺車両の数が第6の閾値を超える場合(例えば、車両4の左側方に複数の周辺車両が並走している場合)には、ステップS1075で算出した第3の重み係数W3に係数「0.01」を乗じたものを、第3の重み係数W3として算出する。これは、車両4の左側方に存在する周辺車両の数が多いほど、左側方画像74の特徴点の数が少なくなるため、車両4の左側方に存在する周辺車両の数が第6の閾値を超える場合には、左側方画像74に基づいて推定された第3の姿勢角θ3の信頼度が比較的低いことを意味している。
【0092】
ステップS1072に戻り、重み係数決定部52は、第4の仮姿勢角推定部48により算出された後方画像80のオプティカルフロー82の数に基づいて、第4の重み係数W4を算出する(S1072)。具体的には、重み係数決定部52は、次式5により第4の重み係数W4を算出する。次式5は、オプティカルフロー82の数が多いほど、後方画像80に基づいて推定された第4の姿勢角θ4の信頼度が高いことを意味している。
【0093】
【数5】
【0094】
次いで、重み係数決定部52は、第4の仮姿勢角推定部48により推定された消失点84の座標のばらつきに基づいて、第4の重み係数W4を算出する(S1073)。具体的には、重み係数決定部52は、消失点84の座標のばらつきが第1の閾値未満である場合には、ステップS1072で算出した第4の重み係数W4をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、消失点84の座標のばらつきが第1の閾値以上である場合には、ステップS1072で算出した第4の重み係数W4を0とする。第4の重み係数W4を0とする場合には、上式1から、最終姿勢角θを推定する際に、後方画像80に基づいて推定された第4の姿勢角θ4を実質的に除外することになる。これは、消失点の座標のばらつきが第1の閾値以上である場合には、後方画像80に基づいて推定された第4の姿勢角θ4の信頼度が極端に低いことを意味している。
【0095】
次いで、重み係数決定部52は、第4の仮姿勢角推定部48により算出された後方画像80の輝度及びコントラスト比に基づいて、第4の重み係数W4を算出する(S1074)。具体的には、重み係数決定部52は、後方画像80の輝度が第2の閾値を超え、且つ、後方画像80のコントラスト比が第3の閾値を超える場合には、ステップS1073で算出した第4の重み係数W4をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、後方画像80の輝度が第2の閾値以下である場合、又は、後方画像80のコントラスト比が第3の閾値以下である場合には、ステップS1073で算出した第4の重み係数W4を0とする。第4の重み係数W4を0とする場合には、上式1から、最終姿勢角θを推定する際に、後方画像80に基づいて推定された第4の姿勢角θ4を実質的に除外することになる。これは、後方画像80の輝度が第2の閾値以下である場合、又は、後方画像80のコントラスト比が第3の閾値以下である場合には、後方画像80に基づいて推定された第4の姿勢角θ4の信頼度が極端に低いことを意味している。
【0096】
次いで、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの速度情報に基づいて、第4の重み係数W4を算出する(S1075)。具体的には、重み係数決定部52は、速度情報に基づいて、車両4の車速が大きいほど第4の重み係数W4が小さくなるように、第4の重み係数W4を決定する。例えば、重み係数決定部52は、車両4の車速が第4の閾値未満である場合には、ステップS1074で算出した第4の重み係数W4に係数「2」を乗じたものを、第4の重み係数W4として算出する。また例えば、重み係数決定部52は、車両4の車速が第5の閾値を超える場合には、ステップS1074で算出した第4の重み係数W4に係数「0.5」を乗じたものを、第4の重み係数W4として算出する。これは、車両4の車速が大きいほど、後方画像80の特徴点を追跡するのが難しくなるため、車両4の車速が第5の閾値を超える場合には、後方画像80に基づいて推定された第4の姿勢角θ4の信頼度が比較的低いことを意味している。
【0097】
次いで、重み係数決定部52は、車両情報取得部50からの周辺車両数情報に基づいて、第4の重み係数W4を算出する(S1076)。ここで、周辺車両数情報は、車両4の後方(すなわち、後方カメラ78の撮像方向)に存在する1以上の周辺車両の数を示す情報である。重み係数決定部52は、周辺車両数情報により示される周辺車両の数が第6の閾値以下である場合には、ステップS1075で算出した第4の重み係数W4をそのまま採用する。一方、重み係数決定部52は、周辺車両数情報により示される周辺車両の数が第6の閾値を超える場合(例えば、車両4の後方に大型の周辺車両等が走行している場合)には、ステップS1075で算出した第4の重み係数W4に係数「0.01」を乗じたものを、第4の重み係数W4として算出する。これは、車両4の後方に存在する周辺車両の数が多いほど、後方画像80の特徴点の数が少なくなるため、車両4の後方に存在する周辺車両の数が第6の閾値を超える場合には、後方画像80に基づいて推定された第4の姿勢角θ4の信頼度が比較的低いことを意味している。
【0098】
以上のようにして第1~第4の重み係数W1~W4の全てが算出された後、重み係数決定部52は、上述のように推定された第1~第4の仮姿勢角θ1~θ4のうち、第1~第4の仮姿勢角θ1~θ4の平均値から大きく乖離した仮姿勢角(すなわち、仮姿勢角の外れ値)を除外する(S1078)。
【0099】
次いで、重み係数決定部52は、最終的に第1~第4の重み係数W1~W4を決定する(S1079)。この時、上述したステップS1078で除外した仮姿勢角がある場合には、第1~第4の重み係数W1~W4のうち、除外した仮姿勢角に対応する重み係数を0とする。その後、図7のフローチャートのステップS108に進む。
【0100】
[4.効果]
車両4の走行状態又は車両4の周辺環境等によっては、前方画像60、右側方画像68、左側方画像74及び後方画像80の少なくとも1つにおいて、特徴点を追跡するのが困難となる場合がある。
【0101】
例えば、車両4の車速が大きい場合や、車両4の前方に複数の周辺車両が走行している場合、前方画像60が建物の影等で暗い場合、前方カメラ58のレンズに汚れ又は雨滴等が付着している場合等には、前方画像60において特徴点を追跡するのが困難となる。この場合には、前方画像60に基づいて推定された第1の仮姿勢角θ1の信頼度が低下するため、最終姿勢角θを推定する際に、第1の仮姿勢角θ1に乗じる第1の重み係数W1を小さく(又は0に)決定する。また、第2の仮姿勢角θ2、第3の仮姿勢角θ3及び第4の仮姿勢角θ4についても、上記と同様の方法で決定する。
【0102】
これにより、最終姿勢角推定部54は、例えば車両4の走行状態又は車両4の周辺環境等を考慮して、最終姿勢角θを精度良く推定することができる。その結果、車両4の最終姿勢角θに応じて、表示画像12の表示位置を精度良く制御することができる。
【0103】
(他の変形例)
以上、一つ又は複数の態様に係る表示システムについて、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を上記実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0104】
例えば、上記実施の形態では、表示部6からの表示光をフロントガラス14の表示領域16で反射させたが、これに限定されず、表示部6からの表示光をコンバイナ(表示媒体の一例)で反射させるようにしてもよい。
【0105】
また例えば、上記実施の形態では、前方カメラ58、右側方カメラ66、左側方カメラ72及び後方カメラ78の4つのカメラを用いたが、これに限定されず、3つ以下のカメラを用いてもよいし、5つ以上のカメラを用いてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態では、「仮姿勢角推定部」を、第1の仮姿勢角推定部42、第2の仮姿勢角推定部44、第3の仮姿勢角推定部46及び第4の仮姿勢角推定部48で構成したが、これに限定されず、これらを1つにまとめて構成してもよい。同様に、上記実施の形態では、「取得部」を、第1の仮姿勢角推定部42、第2の仮姿勢角推定部44、第3の仮姿勢角推定部46及び第4の仮姿勢角推定部48で構成したが、これに限定されず、これらを1つにまとめて構成してもよい。
【0107】
また、上記実施の形態では、表示位置制御部56は、最終姿勢角θに応じて、表示部6の表示パネル38を制御することにより、フロントガラス14に対する表示画像12の表示位置を変更したが、これに限定されない。例えば、表示位置制御部56は、第1のミラー30及び第2のミラー32の少なくとも一方をメインハウジング26に対して変位(回動又は移動)させることにより、フロントガラス14に対する表示画像12の表示位置を変更させてもよい。
【0108】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したコンピュータプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの非一時的な記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み出して実
行することによって実現されてもよい。
【0109】
また、上記実施の形態に係るコントローラ8の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0110】
上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしても良い。前記ICカード又は前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等から構成されるコンピュータシステムである。前記ICカード又は前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしても良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカード又は前記モジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしても良い。
【0111】
本開示は、上記第9の態様に係る制御方法であるとしても良い。また、この制御方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしても良いし、前記コンピュータプログラムを含むデジタル信号であるとしても良い。また、本開示は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)、半導体メモリ等に記録したものとしても良い。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしても良い。また、本開示は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしても良い。また、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、又は前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本開示は、例えば車両に搭載されるヘッドアップディスプレイに用いられる表示システム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
2 表示システム
4 車両
6 表示部
8 コントローラ
10 ダッシュボード
12 表示画像
14 フロントガラス
16 表示領域
18 運転者
20 空間
22 車線
24 障害物
26 メインハウジング
28 表示ユニット
30 第1のミラー
32 第2のミラー
34 開口部
36 カバー部材
38 表示パネル
40 バックライト
42 第1の仮姿勢角推定部
44 第2の仮姿勢角推定部
46 第3の仮姿勢角推定部
48 第4の仮姿勢角推定部
50 車両情報取得部
52 重み係数決定部
54 最終姿勢角推定部
56 表示位置制御部
58 前方カメラ
60 前方画像
62,70,76,82 オプティカルフロー
64,84 消失点
66 右側方カメラ
68 右側方画像
72 左側方カメラ
74 左側方画像
78 後方カメラ
80 後方画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9