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特開2024-143120ポンプ制御装置および低温液体供給システム
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  • 特開-ポンプ制御装置および低温液体供給システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143120
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポンプ制御装置および低温液体供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F17C13/02 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055628
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】井口 了介
(72)【発明者】
【氏名】金井 裕明
(72)【発明者】
【氏名】岸 雄大
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 弘考
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB04
3E172BD02
3E172BD07
3E172DA90
3E172EB03
3E172EB10
3E172GA11
3E172KA03
3E172KA21
(57)【要約】
【課題】吐出圧力の減少を抑制しながら、払出ポンプから吐出される低温液体の質量流量を高くする。
【解決手段】低温液体を貯蔵するタンクから払い出される低温液体の熱量に関する情報を取得する熱量取得部と、取得した熱量に基づいて、タンクに設けられ低温液体を払い出す払出ポンプが払い出す低温液体の質量流量を制御する制御部と、を備えるポンプ制御装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液体を貯蔵するタンクから払い出される低温液体の熱量に関する情報を取得する熱量取得部と、
取得した前記熱量に基づいて、前記タンクに設けられ低温液体を払い出す払出ポンプが払い出す低温液体の質量流量を制御する制御部と、
を備えるポンプ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記熱量に基づいて、前記払出ポンプの各々が単位時間あたりに払い出す低温液体の質量流量である定格質量流量を設定して、当該払出ポンプの各々を制御することを特徴とする請求項1に記載のポンプ制御装置。
【請求項3】
前記熱量に関する情報は、前記タンク内の低温液体の熱量を定期的に測定した結果であることを特徴とする請求項2に記載のポンプ制御装置。
【請求項4】
前記熱量取得部は、前記タンクに供給される低温液体が産出された産出地において測定された低温液体の熱量である産地測定熱量を取得し、
前記制御部は、前記産地測定熱量に基づいて前記定格質量流量を設定することを特徴とする請求項2に記載のポンプ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記タンク内の低温液体の熱量が大きくなるにつれて、前記定格質量流量を大きくすることを特徴とする請求項2に記載のポンプ制御装置。
【請求項6】
低温液体を貯蔵する低温タンクと、
前記低温タンクに貯蔵されている低温液体を需要先に払出すための複数の払出ポンプと、
前記低温タンク内の低温液体の熱量に関する情報を取得する熱量取得部と、
取得した前記熱量に基づいて、各々の前記払出ポンプが払い出す低温液体の質量流量の上限となる最大質量流量を設定するポンプ制御装置と、
を備える低温液体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ制御装置および低温液体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
LNG基地では、LNGタンクに貯蔵された液化天然ガス(Liquefied Natural Gas、以下、「LNG」と称す)を気化して、一般家庭やガス発電施設などの需要先に供給する運用を行っている。LNG基地には、LNGを気化する気化器があり、この気化器へのLNGの送液は、LNGタンク内に設けられる複数のポンプがLNGを汲み上げることによって行われる。
例えば、特許文献1には、払い出しに必要な台数の払出ポンプを運転し1台がトリップしても予備ポンプが起動するまでの間、支障なくLNGをガス消費先に払い出すことができるLNG基地の払出ポンプ装置を提供するために、払出ポンプの払出側に、低温液のまま加圧して貯蔵するLNGホルダを設け、本来の払い出しに必要な台数の払出ポンプを運転し、そのうちの1台がポンプトリップして停止しても予備の払出ポンプが起動するまで、LNGホルダからLNGを供給する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-318499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、LNGを汲み上げる払出ポンプの運転には、運転に必要な電力の費用や払出ポンプの定期的な点検修理を行う費用等のコストがかかる。そのため、払出ポンプの運転台数を減少させると、コストの削減を図ることができる。
LNGや液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas、以下、「LPG」と称す)等の低温液体を払い出す払出ポンプの運転台数を削減する方法として、各々の払出ポンプから吐出される低温液体の質量流量を増やすることが考えられる。しかしながら、単に、払出ポンプから流れる低温液体の質量流量を増加させると、吐出圧力が低下する。そして、払出ポンプの吐出圧力の減少は、払出ライン上でLNGが留まってしまう原因となりうる。
本発明の目的は、吐出圧力の減少を抑制しながら、払出ポンプから吐出される低温液体の質量流量を高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用されるポンプ制御装置は、低温液体を貯蔵するタンクから払い出される低温液体の熱量に関する情報を取得する熱量取得部と、取得した前記熱量に基づいて、前記タンクに設けられ低温液体を払い出す払出ポンプが払い出す低温液体の質量流量を制御する制御部と、を備えるポンプ制御装置である。
ここで、前記制御部は、前記熱量に基づいて、前記払出ポンプの各々が単位時間あたりに払い出す低温液体の質量流量である定格質量流量を設定して、当該払出ポンプの各々を制御することを特徴とすることができる。
また、前記熱量に関する情報は、前記タンク内の低温液体の熱量を定期的に測定した結果であることを特徴とすることができる。
また、前記熱量取得部は、前記タンクに供給される低温液体が産出された産出地において測定された低温液体の熱量である産地測定熱量を取得し、前記制御部は、前記産地測定熱量に基づいて前記定格質量流量を設定することを特徴とすることができる。
また、前記制御部は、前記タンク内の低温液体の熱量が大きくなるにつれて、前記定格質量流量を大きくすることを特徴とすることができる。
【0006】
他の観点から捉えると、本発明が適用される低温液体供給システムは、低温液体を貯蔵する低温タンクと、前記低温タンクに貯蔵されている低温液体を需要先に払出すための複数の払出ポンプと、前記低温タンク内の低温液体の熱量に関する情報を取得する熱量取得部と、取得した前記熱量に基づいて、各々の前記払出ポンプが払い出す低温液体の質量流量の上限となる最大質量流量を設定するポンプ制御装置と、を備える低温液体供給システムである。
【発明の効果】
【0007】
本願の発明によると、吐出圧力の減少を抑制しながら、払出ポンプから吐出される低温液体の質量流量を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態が適用されるLNG供給システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】本実施の形態に係る全体制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図3】全体制御装置が行う処理の一例を示す図である。
図4】ポンプ制御部で行われる制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<LNG供給システム1の全体構成>
図1は、本実施の形態が適用されるLNG供給システム1の全体構成の一例を示す図である。
本実施の形態が適用されるLNG供給システム1は、低温液体の一例としてのLNGを貯蔵するLNGタンク10と、LNGタンク10にLNGを供給するLNG受入ライン11と、LNGの熱量を計測するガスクロマトグラフ12と、LNGタンク10内のLNGの液密度を計測する液密度計13と、LNGタンク10に貯蔵されているLNGを払い出す複数のポンプ20-1、20-2、20-3、20-4、20-5と、を備える。また、LNG供給システム1は、LNGを気化させる気化器50(図1の例では、2つの気化器50-1と50-2)と、LNGタンク10から払い出されたLNGを気化器50-1、50-2に払い出すための管路である払出ライン40と、払出ライン40に流れるLNGの流量を調整する流量調整弁71-1、71-2と、払出ライン40を流れるLNGの流量を計測する流量計72-1、72-2と、気化器50によって気化されたNG(Natural Gas)を需要先に送る幹線導管60とを備える。さらに、LNG供給システム1は、LNG供給システム1の全体を制御する全体制御装置30を備える。
【0010】
LNGタンク10は、例えば、LNGを貯蔵する内槽と、その周囲に設けられる外槽と、内槽と外槽との間に設けられ、保冷材(例えば、パーライト)が充填される保冷層とを備えた地下式の二重殻タンクである。
【0011】
LNG受入ライン11は、LNGタンカーから荷揚げされたLNGをLNGタンク10に受け入れるための管路である。例えば、LNGタンカー(図示せず)のアンローディングアーム(図示せず)がLNG受入ライン11に接続されLNGタンカーからLNGが供給される。
【0012】
ガスクロマトグラフ12は、熱で気化する気体や液体に含まれる特定のガスの量(濃度)を測定する装置である。LNG受入ライン11を流れるLNGの一部を採取してLNGの熱量を計測する。ここで、LNGの熱量とは、LNGが燃焼した場合に発生する熱量であり、単位体積当たりの発熱量(MJ/m3)で表される。
【0013】
本実施の形態に係るポンプ20は、通常時は、ポンプ20を2台から4台運転させ、いずれかのポンプ20が緊急停止した際のバックアップとして少なくとも1台を予備のポンプ20として待機させている。以下、ポンプ20-1、20-2、20-3、20-4、20-5の各々を区別なく説明する場合には、単に「ポンプ20」と表記する。なお、LNG供給システム1に含まれるポンプ20の数は図1の例に限定されない。
【0014】
払出ライン40は、ポンプ20から吐出されたLNGを、気化器50に払い出すための管路である。払出ライン40は、気化器50-1に接続する第1払出ライン41と、第1払出ライン41と分岐して気化器50-2に接続する第2払出ライン42とを含む。第1払出ライン41には、気化器50-1に流入するLNGの流量を調整するための流量調整弁71-1と気化器50-1に流れる質量流量を測定する流量計72-1とが設けられている。また、第2払出ライン42には、気化器50-2に流れるLNGの流量を調整するための流量調整弁71-2と気化器50-2に流れる質量流量を測定する流量計72-2とが設けられている。
【0015】
気化器50は、公知の気化器と同様に、気化器50-1、50-2に供給されたLNGを海水等で気化させてNGを生成するための装置である。
幹線導管60は、気化器50-1と、気化器50-2とに分岐して接続し、気化器50-1が気化したNGと気化器50-2が気化したNGとが合流する。この合流したNGの送出圧力が所定の値になるように調整がなされている。この所定の値は、諸事情で定められる。例えば、需要先が必要とする送出圧力や、幹線導管60がさらに他の導管に接続されるような場合はその導管に基づく条件によって、幹線導管60の送出圧力の所定の値が定められる。本実施の形態では、幹線導管60の送出圧が2.7MPaとなるように調整されている。なお、幹線導管60の送出圧は、幹線導管60の接続先の状況で一定の範囲で変動する。
【0016】
全体制御装置30は、LNG供給システム1全体を制御するCPU(Central Processing Unit)31と、演算に際して作業エリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)32と、CPU31が実行する各種プログラム等を記憶するメモリであるROM(Read Only Memory)33と、を備える。また、各種情報を記憶する記憶装置34と、データの送受信を行う信通インターフェース(以下、「通信I/F」と表記する)35とを備える。全体制御装置30は、全体制御装置30が制御する機器に通信手段を介して接続され、また、各種検出手段と通信手段を介して接続される。ここで、全体制御装置30が制御する機器は、例えば、ポンプ20や流量調整弁71-1、71-2である。また、各種検出手段とは、例えば、ガスクロマトグラフ12、液密度計13、流量計72-1、72-2等である。
全体制御装置30がポンプ制御装置の一例である。
【0017】
<全体制御装置30の機能構成>
次に、図2を参照し、本実施の形態に係る全体制御装置30の機能構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る全体制御装置30の機能構成の一例を示す図である。
全体制御装置30は、気化器50へのLNGの流量を調整する調整弁制御部310と、ポンプ20が吐出するLNGの質量流量を制御するポンプ制御部320とを備える。
【0018】
調整弁制御部310は、需要取得部311と、気化器流量決定部312と、流量取得部313と、調整弁制御部314と、を備える。
需要取得部311は、需要先に流すLNGの需要量を取得する。LNGの需要量は、需要者から常時受け付ける。
気化器流量決定部312は、気化器50-1と気化器50-2に流すLNGの量を、需要量に応じて、決定する。気化器50-1と気化器50-2とに流すLNGの量は、同じ量を流してもよいし、気化器50-1と気化器50-2とで異なる量のLNGを流してもよい。
流量取得部313は、気化器50-1と50-2とに流入するLNGの質量流量を取得する。流量取得部313は、気化器50-1に流れる流量情報を流量計72-1から取得し、気化器50-2に流れる流量情報を流量計72-2から取得する。
調整弁制御部314は、流量調整弁71-1、71-2の開度を変更して、気化器50-1、50-2に流れるLNGの量を調整する。
【0019】
ポンプ制御部320は、熱量取得部321と、液密度取得部322と、吐出質量決定部323と、ポンプ台数決定部324とを有する。
【0020】
熱量取得部321は、LNGタンク10内のLNGの熱量に関する情報を取得する。ここで、LNGの熱量とは、LNGを燃やした場合に発生する熱量であり、例えば、単位体積当たりの発熱量(MJ/m3)で表される。LNGの熱量を計測する方法としては、そのLNG気化ガスに対し燃焼させたときに得られる熱量を測定する方法や、ガス成分分析を行うことによりガス発熱量を算出する方法などがある。本実施の形態では、ガスクロマトグラフ12を用いて、LNGタンク10にLNGを流し込む際に、LNGの熱量を測定する。LNGタンク10内のLNGの熱量に関する情報は、例えば、LNGが産出された産出地において測定されたLNGの熱量を取得する方法や、LNGタンク10にタンカーからLNGを供給する際に、ガスクロマトグラフ12を用いて気体を分析し熱量を把握する、または、月一回の実測により把握するなど、特に限定されない。LNGが産出された産出地において測定されたLNGの熱量が産地測定熱量の一例である。
【0021】
液密度取得部322は、LNGタンク10内のLNGの液密度を取得する。本実施の形態では、LNGタンク10内の液密度計13によって計測される。液密度計13が計測したLNGの液密度は、熱量に関する情報の一例である。液密度は、LNGタンク10内の液密度計13から随時取得する方法以外にも、例えば、LNGタンク10内のLNGを定期的に(例えば1月に1回)計測する方法や、LNGタンク10にLNGを供給する場合に、LNGタンク10内のLNGの密度を計測する方法を用いてもよい。
【0022】
吐出質量決定部323は、熱量に関する情報に応じて、ポンプ20の1台当たりの吐出質量流量を決定する。この吐出質量流量が定格質量流量の一例である。吐出質量決定部323は、第1払出ライン41において流量調整弁71-1の上流側のLNGの圧力が下流側の圧力より大きくなる条件を満たす吐出質量流量、かつ、第2払出ライン42において流量調整弁71-2の上流側のLNGの圧力が下流側の圧力より大きくなる条件を満たす吐出質量流量に決定する。吐出質量流量に定められる。吐出質量決定部323は、LNGの熱量に関する情報と、上記2つの条件を満たす吐出質量流量の関係を事前の実験やシミュレーションにより把握している。
【0023】
ポンプ台数決定部324は、需要量に応じたLNGの流量を気化器50に流すために必要な台数を決定し、ポンプ20を制御する。ここで、必要な台数は、ポンプ20の1台当たりの吐出質量流量に台数を乗算した質量流量が少なくとも需要量を超える値になる台数である。なお、ポンプ20のいずれかが緊急停止した場合に備え、需要量に所定の余裕値を加えた量より供給量が多くなるように、必要な台数を決定してもよい。
【0024】
以下、全体制御装置30が行う処理を説明する。
<全体制御装置30の処理>
図3は、全体制御装置30が行う処理の一例を示す図である。
図3のフローチャートを用いて、全体制御装置30がポンプ20を動作させる台数を決定する処理を説明する。
LNGの熱量に関する情報は、熱量および/または液密度の情報である。そこで、まず、熱量取得部321または液密度取得部322の少なくとも一方は、LNGタンク10内のLNGの熱量に関する情報を取得する(ステップ201)。次に、吐出質量決定部323は、熱量に関する情報に基づいて、ポンプ20の1台当たりの吐出質量流量を決定する。(ステップ202)。より具体的には、LNGの熱量および/または液密度が低い場合には吐出質量流量を小さくし、LNGの熱量および/または液密度が高い場合には吐出質量流量を大きくすることで、ポンプの吐出圧力を一定以上に維持するように制御する。
【0025】
次に、需要取得部311は、LNGの需要先から需要量を取得する(ステップ203)。そして、ステップ203で取得した需要量と、ステップ202で決定した流量とから、ポンプ台数決定部324は、運転するポンプ20の台数を決定し(ステップ204)、決定した台数のポンプ20を運転させるように指示を出す(ステップ205)。
【0026】
次に、LNGの熱量に関する情報とポンプ一台当たりの吐出質量流量との関係について説明する。
図4は、ポンプ制御部320で行われる制御例を示す図である。ここでは、ベルヌーイの定理により「LNGの液密度(LNG密度)・ポンプ揚程・気化器流量」から流量調整弁上流圧が一定となるようにポンプ能力を決定している。
【0027】
図4には、LNGの熱量であるLNGの熱量81と、LNGの液密度であるLNGの液密度82と、ポンプ20の1台あたりの吐出質量流量であるポンプ能力83と、流量調整弁71-1、71-2の上流側の圧力であるFCV上流圧84と、気化器50―1と50-2とに流れるLNGの流量85と、流量調整弁71-1、71-2の開度86と、流量調整弁71-1、71-2の下流側の圧力である下流圧87と、が示されている。
【0028】
上述したように、本実施の形態では、幹線導管60の送出圧が2.7MPaとなるように調整されている。また、幹線導管60の送出圧は、幹線導管60の接続先の状況で一定の範囲で変動する。ここで、流量調整弁71-1の下流圧87は、気化器50-1を通るときの圧力損が加わった分の圧力となる。同様に、流量調整弁71-2の下流圧87は、気化器50-2を通るときの圧力損が加わった分の圧力となる。流量調整弁71-1および71-2の下流圧87は、幹線導管60の送出圧が変動することにより、一定の範囲で変動する。図4の下流圧87は、過去の実績から通常起こり得る範囲で最も高い値の下流圧87が採用されている。すなわち、図4で採用された下流圧87より、FCV上流圧84が大きければ、ポンプ20から吐出されたLNGは流量調整弁71-1および71-2を通ることが可能となる。
【0029】
LNGの熱量とLNGの液密度には相関があることが知られており、LNGの熱量が大きくなるとLNGの液密度も大きくなる。例えば、LNG熱量が39.74(MJ/m3)の場合にLNG密度が418.5(kg/m3)、LNG熱量が40.5(MJ/m3)の場合にLNG密度が425.0(kg/m3)等、LNG熱量が上がると、LNG密度が上がる。本実施の形態におけるポンプ20の吐出圧力の維持に際して、LNGの熱量および/またはLNGの液密度の値を利用できる。
【0030】
本実施の形態では、ポンプ20から吐出されたLNGが流量調整弁71-1および71-2を通れるように、流量調整弁(71-1、71-2)のFCV上流圧84が、予め定められた程度で一定となるように制御している。図4に示す例では、3.433(MPa)~3.459(MPa)の範囲で制御されている。この制御を行うために、ポンプ20の1台あたりの吐出質量流量であるポンプ能力83を調整している。図4に示す例では、LNGの熱量81および/またはLNGの液密度82が最も低い場合に、ポンプ能力を105(t/h)とし、LNGの熱量81および/またはLNGの液密度82が最も高い場合に、132.5(t/h)としている。このように、LNGの熱量81および/またはLNGの液密度82が低い場合には、払出ポンプから吐出される低温液体の質量流量であるポンプ能力83を高くすることができない。その一方で、LNGの熱量81および/またはLNGの液密度82が高くなれば、ポンプ能力83を高くすることができる。
【0031】
また、流量調整弁(71-1、71-2)のFCV上流圧84をほぼ一定となるように制御した状態で、気化器(50-1、50-2)は、LNGの熱量81が39.74(MJ/m3)のときに135/205(t/h)であるが、LNGの熱量81が45(MJ/m3)のときに160/250(t/h)となっている。このように、吐出圧力の減少を抑制した状態であっても、需要側へ流れるLNGの量を増加させることが可能である。このことにより、払出ポンプであるポンプ20の運転台数を減らした場合でも吐出圧力の減少を抑制した状態で、低温液体の質量流量を高くすることが可能となる。
【0032】
また、本実施の形態では、全体制御装置30の記憶装置34に、図4で示される表を記憶している。そして、吐出質量決定部323(図2参照)は、この表を参照してLNGの熱量81または/およびLNGの液密度82に対応するポンプ能力83をポンプ20の1台当たりの吐出質量流量として決定する(図3のS202参照)。本実施の形態では、ベルヌーイの定理により流量調整弁71-1、71-2の上流圧がほぼ一定となるようにポンプ能力を決定しているが、LNG基地ごとにLNGの熱量81または/およびLNGの液密度82とポンプ能力83の対応関係をシミュレーションや実験により、LNG基地ごとに決定して、記憶装置34に記憶させてもよい。
なお、吐出質量決定部323(図2参照)は、図4で示される表を記憶せずに、ベルヌーイの定理により「LNGの液密度(LNG密度)・ポンプ揚程・気化器流量」から流量調整弁71-1、71-2の上流圧が一定となるようなポンプ能力を算出して、算出して出したポンプ能力をポンプ20の1台当たりの吐出質量流量として決定してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…LNG供給システム、10…LNGタンク、11…LNG受入ライン、12…ガスクロマトグラフ、13…液密度計、20-1、20-2、20-3、20-4、20-5…ポンプ、30…全体制御装置、31…CPU、40…払出ライン、41…第1払出ライン、42…第2払出ライン、50…気化器、60…幹線導管、71-1…流量調整弁、71-2…流量調整弁、72-1…流量計、72-2…流量計、310…調整弁制御部、311…需要取得部、312…気化器流量決定部、313…流量取得部、314…調整弁制御部、320…ポンプ制御部、321…熱量取得部、322…液度取得部、323…吐出質量決定部、324…ポンプ台数決定部
図1
図2
図3
図4