(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143122
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】誘導装置
(51)【国際特許分類】
F41G 7/30 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F41G7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055630
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】柴山 万優子
(57)【要約】
【課題】発射された複数の飛しょう体を衝突させることなく標的の迎撃を可能とする誘導装置を得ること。
【解決手段】誘導装置は、飛しょう体に含まれる誘導装置であって、飛しょう体と標的との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度と、飛しょう体の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度とを利用して舵角指令を算出する航法計算機14を有する。航法計算機14は、複数の飛しょう体が標的に向かって発射された後に標的に命中する前に複数の飛しょう体が衝突することを回避するための会合角オフセット量を算出する会合角オフセット量演算部22と、会合角オフセット量をもとに、複数の飛しょう体が衝突することがないように飛しょう体の会合角を調整して加速度指令を算出する誘導制御処理部20と、加速度指令をもとに舵角指令を算出するオートパイロット21とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体に含まれる誘導装置であって、
前記飛しょう体と標的との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度と、前記飛しょう体の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度とを利用して舵角指令を算出する航法計算機を備え、
前記航法計算機は、
前記飛しょう体を含む複数の飛しょう体が前記標的に命中するように前記標的に向かって発射された後に前記標的に命中する前に前記複数の飛しょう体が衝突することを回避するための前記飛しょう体の会合角オフセット量を算出する会合角オフセット量演算部と、
前記飛しょう体と前記標的との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度と、前記飛しょう体の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度と、前記会合角オフセット量演算部によって算出された前記会合角オフセット量とをもとに、前記複数の飛しょう体が衝突することがないように前記飛しょう体の会合角を調整して加速度指令を算出する誘導制御処理部と、
前記誘導制御処理部によって算出された前記加速度指令をもとに前記舵角指令を算出するオートパイロットとを有する
ことを特徴とする誘導装置。
【請求項2】
前記会合角オフセット量演算部は、前記複数の飛しょう体の各々の符号付進入角を算出し、
前記複数の飛しょう体のうちの任意の飛しょう体の前記符号付進入角は、前記標的の速度ベクトルに対して前記任意の飛しょう体と前記標的との相対位置ベクトルがなす角度である
ことを特徴とする請求項1に記載の誘導装置。
【請求項3】
前記複数の飛しょう体は、二つの飛しょう体であって、
前記二つの飛しょう体の符号付進入角の符号が異なっていて、前記二つの飛しょう体のうちの前記飛しょう体の符号付進入角が前記二つの飛しょう体のうちの他方の飛しょう体の符号付進入角より小さく、前記飛しょう体の符号付進入角の符号が正である場合の前記会合角オフセット量を算出するための式である第1の式と、
前記二つの飛しょう体の符号付進入角の符号が異なっていて、前記二つの飛しょう体のうちの前記飛しょう体の符号付進入角が前記二つの飛しょう体のうちの他方の飛しょう体の符号付進入角より小さく、前記飛しょう体の符号付進入角の符号が負である場合の前記会合角オフセット量を算出するための式である第2の式と、
前記二つの飛しょう体の符号付進入角の符号が同じであって、前記二つの飛しょう体のうちの前記飛しょう体の符号付進入角が前記二つの飛しょう体のうちの他方の飛しょう体の符号付進入角より小さく、前記飛しょう体の符号付進入角の符号が正である場合の前記会合角オフセット量を算出するための式である第3の式と、
前記二つの飛しょう体の符号付進入角の符号が同じであって、前記二つの飛しょう体のうちの前記飛しょう体の符号付進入角が前記二つの飛しょう体のうちの他方の飛しょう体の符号付進入角より小さく、前記飛しょう体の符号付進入角の符号が負である場合の前記会合角オフセット量を算出するための式である第4の式とが与えられており、
前記会合角オフセット量演算部は、
前記二つの飛しょう体の符号付進入角の符号が異なっているか否かを判定し、
前記二つの飛しょう体のうちの前記飛しょう体の符号付進入角が前記二つの飛しょう体のうちの他方の飛しょう体の符号付進入角より小さいか否かを判定し、
前記飛しょう体の符号付進入角の符号が正であるか負であるかを判定し、
前記二つの飛しょう体の符号付進入角の符号が異なっていて、前記飛しょう体の符号付進入角が前記他方の飛しょう体の符号付進入角より小さく、前記飛しょう体の符号付進入角の符号が正であると判定した場合、前記第1の式を用いて前記飛しょう体の前記会合角オフセット量を算出し、
前記二つの飛しょう体の符号付進入角の符号が異なっていて、前記飛しょう体の符号付進入角が前記他方の飛しょう体の符号付進入角より小さく、前記飛しょう体の符号付進入角の符号が負であると判定した場合、前記第2の式を用いて前記飛しょう体の前記会合角オフセット量を算出し、
前記二つの飛しょう体の符号付進入角の符号が同じであって、前記飛しょう体の符号付進入角が前記他方の飛しょう体の符号付進入角より小さく、前記飛しょう体の符号付進入角の符号が正であると判定した場合、前記第3の式を用いて前記飛しょう体の前記会合角オフセット量を算出し、
前記二つの飛しょう体の符号付進入角の符号が同じであって、前記飛しょう体の符号付進入角が前記他方の飛しょう体の符号付進入角より小さく、前記飛しょう体の符号付進入角の符号が負であると判定した場合、前記第2の式を用いて前記飛しょう体の前記会合角オフセット量を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の誘導装置。
【請求項4】
前記航法計算機が有する前記会合角オフセット量演算部によって算出された前記会合角オフセット量をもとに算出された前記舵角指令をもとに、前記飛しょう体を誘導する操舵装置
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発射された飛しょう体を目標に誘導する誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、シーカ又は誘導装置等を有する飛しょう体を高速ミサイルに命中させるように発射し、高速ミサイルを飛しょう体で迎撃することが考えられている。以下では、飛しょう体が迎撃する対象は「標的」と記載される。高速ミサイルは、「標的」の例である。
【0003】
標的を迎撃する場合、飛しょう体を標的に命中させて、標的を無力化することができる確率を少しでも高くする必要がある。
【0004】
飛しょう体を標的に命中させる確率を高くする方法として、例えば、一つの標的に向けて複数の飛しょう体を同時又は同時に近い時間差で発射し、複数の飛しょう体のうちの少なくとも一つの飛しょう体が標的に命中する確率を高くする方法が考えられる。
【0005】
また、例えば、特許文献1に示されているように、カウンタパラレル航法を用いて正面衝突又は正面衝突に近い状態で飛しょう体を標的に命中させて標的を破壊する方法も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の方法では、発射された複数の飛しょう体の各々が一つの標的に正面衝突しようとする。そのため、複数の飛しょう体が接近することで、標的に命中する前に複数の飛しょう体が衝突してしまい、標的を迎撃することができない可能性がある。
【0008】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、発射された複数の飛しょう体を衝突させることなく標的の迎撃を可能とする誘導装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る誘導装置は、飛しょう体に含まれる誘導装置であって、当該飛しょう体と標的との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度と、当該飛しょう体の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度とを利用して舵角指令を算出する航法計算機を有する。航法計算機は、当該飛しょう体を含む複数の飛しょう体が標的に命中するように標的に向かって発射された後に標的に命中する前に複数の飛しょう体が衝突することを回避するための当該飛しょう体の会合角オフセット量を算出する会合角オフセット量演算部を有する。航法計算機は、当該飛しょう体と標的との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度と、当該飛しょう体の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度と、会合角オフセット量演算部によって算出された会合角オフセット量とをもとに、複数の飛しょう体が衝突することがないように当該飛しょう体の会合角を調整して加速度指令を算出する誘導制御処理部と、誘導制御処理部によって算出された加速度指令をもとに舵角指令を算出するオートパイロットとを更に有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る誘導装置は、発射された複数の飛しょう体を衝突させることなく標的の迎撃を可能とするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】発射された二つの飛しょう体が標的を迎撃する様子を示す図
【
図2】実施の形態に係る誘導装置の構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態に係る誘導装置が有する航法計算機の構成を示すブロック図
【
図4】実施の形態に係る誘導装置の航法計算機が有する会合角オフセット量演算部が用いる記号の定義を説明するための図
【
図5】実施の形態に係る誘導装置の航法計算機が有する会合角オフセット量演算部が行う動作の手順を示すフローチャート
【
図6】実施の形態に係る誘導装置が有する追尾装置、慣性装置、送受信装置、航法計算機及び操舵装置の少なくとも一部の機能がプロセッサによって実現される場合のプロセッサを示す図
【
図7】実施の形態に係る誘導装置が有する追尾装置、慣性装置、送受信装置、航法計算機及び操舵装置の少なくとも一部の機能が処理回路によって実現される場合の処理回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施の形態に係る誘導装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
実施の形態.
図1は、発射された二つの飛しょう体1A,1Bが標的2を迎撃する様子を示す図である。二つの飛しょう体1A,1Bは、複数の飛しょう体の例である。飛しょう体1Aは発射された飛しょう体1Aを標的2に誘導する誘導装置を有しており、飛しょう体1Bは発射された飛しょう体1Bを標的2に誘導する誘導装置を有している。
図1が示す例では、飛行中の標的2を迎撃するために、発射装置3Aが飛しょう体1Aを発射し、発射装置3Bが飛しょう体1Bを発射する。一つの発射装置が発射装置3A及び発射装置3Bを有していてもよいし、一つの発射装置が発射装置3Aの機能及び発射装置3Bの機能を有していて飛しょう体1A及び飛しょう体1Bを発射してもよい。
【0014】
飛しょう体1Aは、標的2に命中する際に角度φAで標的2に衝突し、飛しょう体1Bは、標的2に命中する際に角度φBで標的2に衝突する。一般的に、角度φA及び角度φBはいずれも「会合角」と呼ばれる。飛しょう体1A及び飛しょう体1Bが標的2に正面衝突する場合、会合角は0度である。
図1には、飛しょう体1A及び飛しょう体1Bが標的2に命中する際の点である会合点も示されている。
図1には、標的2を捜索し追随するレーダシステム5、及び、レーダシステム5が送信する指令をもとに誘導諸元を二つの飛しょう体1A,1Bの各々に送信する射撃管制装置6も示されている。
【0015】
図2は、実施の形態に係る誘導装置10の構成を示すブロック図である。誘導装置10は、二つの飛しょう体1A,1Bの各々に含まれている。
図2には、誘導装置10を有する飛しょう体1も示されている。飛しょう体1は、二つの飛しょう体1A,1Bの総称である。誘導装置10は、標的2を追尾し、飛しょう体1と標的2との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度等を観測又は算出する追尾装置11と、飛しょう体1の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度等を観測又は算出する慣性装置12とを有する。誘導装置10は、レーダシステム5から送信された情報を受信する送受信装置13を更に有する。
【0016】
誘導装置10は、追尾装置11によって得られた飛しょう体1と標的2との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度と、慣性装置12によって得られた飛しょう体1の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度とを利用して舵角指令を算出する航法計算機14を有する。更に言うと、航法計算機14は、追尾装置11によって得られた飛しょう体1と標的2との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度等と、慣性装置12によって得られた飛しょう体1の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度等と、送受信装置13によって受信された情報とをもとに、舵角指令を算出する。航法計算機14は、飛しょう体1を含む複数の飛しょう体が標的2に命中するように標的2に向かって発射された後に標的2に命中する前に複数の飛しょう体が衝突することを回避するための飛しょう体1の会合角オフセット量を算出する機能も有する。
【0017】
誘導装置10は、航法計算機14によって会合角オフセット量をもとに算出された舵角指令をもとに、飛しょう体1を誘導する操舵装置15を更に有する。つまり、操舵装置15は、飛しょう体1の操舵を行う。飛しょう体1は、推進装置16を更に有する。
図2には、推進装置16も示されている。
【0018】
次に、誘導装置10の動作を説明する。追尾装置11は、標的2を追尾し、飛しょう体1と標的2との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度等を観測又は算出し、観測結果及び算出結果を航法計算機14に出力する。慣性装置12は、飛しょう体1の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度等を観測又は算出し、観測結果及び算出結果を航法計算機14に出力する。送受信装置13は、レーダシステム5から送信された情報を受信し、受信した情報を航法計算機14に出力する。
【0019】
航法計算機14は、追尾装置11、慣性装置12及び送受信装置13から出力された情報を受け取り、受け取った情報をもとに舵角指令を算出し、舵角指令を操舵装置15に出力する。また、航法計算機14は、標的2に関連する情報である標的情報と、誘導装置10を有する飛しょう体1に関連する情報である飛しょう体情報とを送受信装置13に出力する。送受信装置13は、航法計算機14からの情報をレーダシステム5に送信する。航法計算機14の詳細は、
図3を用いて説明する。
【0020】
飛しょう体1は、推進装置16により推力を得て、操舵装置15により運動が制御され、標的2に向けて誘導飛しょうを行う。
【0021】
図3は、実施の形態に係る誘導装置10が有する航法計算機14の構成を示すブロック図である。航法計算機14は、誘導制御処理部20、オートパイロット21及び会合角オフセット量演算部22を有する。会合角オフセット量演算部22は、飛しょう体1を含む複数の飛しょう体が標的2に命中するように標的2に向かって発射された後に標的2に命中する前に複数の飛しょう体が衝突することを回避するための飛しょう体1の会合角オフセット量を算出する。誘導制御処理部20は、飛しょう体1と標的2との相対距離、相対速度、相対角度及び相対角速度と、飛しょう体1の位置、速度、加速度、姿勢角及び姿勢角速度と、会合角オフセット量演算部22によって算出された会合角オフセット量とをもとに、複数の飛しょう体が衝突することがないように飛しょう体1の会合角を調整して加速度指令を算出する。オートパイロット21は、誘導制御処理部20によって算出された加速度指令をもとに舵角指令を算出する。
図3には、追尾装置11、慣性装置12及び操舵装置15も示されている。
【0022】
次に、航法計算機14の動作を説明する。誘導制御処理部20は、追尾装置11及び慣性装置12からの情報をもとに加速度指令を算出する。誘導制御処理部20は、算出した加速度指令をオートパイロット21に出力する。誘導制御処理部20は、慣性装置12にも加速度指令を出力する。オートパイロット21は、誘導制御処理部20によって算出された加速度指令をもとに舵角指令を算出し、算出した舵角指令を操舵装置15に出力する。
【0023】
誘導制御処理部20は、標的2に向かって飛しょうしている飛しょう体1を標的2に正面衝突させるため、会合角が0度となるよう加速度指令を算出する。しかしながら、複数の飛しょう体が発射された場合、複数の飛しょう体が接近することで、標的2に命中する前に複数の飛しょう体が衝突してしまい、標的2を迎撃することができない可能性がある。
【0024】
そこで、会合角オフセット量演算部22は、標的2に命中する前に複数の飛しょう体が衝突することを回避するための飛しょう体1の会合角オフセット量を算出する。会合角オフセット量演算部22は、算出した会合角オフセット量を誘導制御処理部20に与え、誘導制御処理部20は、発射された複数の飛しょう体が衝突することがないように飛しょう体1の会合角を調整する。これにより、複数の飛しょう体の各々は一つの標的2に正面衝突に近い状態で命中する。このように、誘導装置10は、標的2の迎撃を可能とする終末誘導を実施する。
【0025】
なお、会合角オフセット量演算部22は、航法計算機14に含まれているのではなく、個別の装置として誘導装置10に存在していてもよいし、誘導装置10が有する複数の装置のうちの航法計算機14以外の装置に含まれていてもよい。
【0026】
直撃破壊に必要な会合角が例えば「0度±5度」のような許容範囲を持っているので、会合角オフセット量は、複数の飛しょう体の各々の会合角が前述の許容範囲内に収まるように、かつ、複数の飛しょう体が衝突しないように設定される。会合角オフセット量の具体的な算出方法については後述する。
【0027】
なお、複数の飛しょう体のうちの会合角オフセット量が印加される飛しょう体は、複数の飛しょう体のうちの一部の飛しょう体であってもよいし、すべての飛しょう体であってもよい。
図1の例では、会合角オフセット量が印加される飛しょう体は、二つの飛しょう体1A,1Bの一方であってもよいし、双方であってもよい。会合角オフセット量が印加される飛しょう体は、運用構想、シミュレーション、及び模擬試験の一部又は全部等をもとに決定される。以下では、複数の飛しょう体が
図1に示されている二つの飛しょう体1A,1Bであって、会合角オフセット量が二つの飛しょう体1A,1Bのうちの一方に印加される場合について説明する。
【0028】
図4は、実施の形態に係る誘導装置10の航法計算機14が有する会合角オフセット量演算部22が用いる記号の定義を説明するための図である。z軸が下向きである直交座標系において、原点に標的2が存在していることを仮定する。飛しょう体1及び標的2は、点で示されている。座標系は、例として直交座標系が用いられるが、直交座標系以外の座標系であってもよい。
【0029】
標的2の速度ベクトルを速度ベクトルVtとし、飛しょう体1と標的2との相対位置ベクトルを相対位置ベクトルrとし、標的2の速度ベクトルVtに対して相対位置ベクトルrがなす角度を符号付進入角θとする。飛しょう体1と標的2との相対位置ベクトルrは、飛しょう体1に対する標的2の位置ベクトルである。符号付進入角θは、速度ベクトルVtの始点と相対位置ベクトルrの終点とを一致させた場合の速度ベクトルVtの線分と相対位置ベクトルrの線分とが成す小さい方の角度である。標的2の速度ベクトルVtは、下記の式(1)で表現される。飛しょう体1と標的2との相対位置ベクトルrは、下記の式(2)で表現される。符号付進入角θについては後に更に説明する。
【0030】
【0031】
【0032】
飛しょう体1と標的2との相対位置ベクトルrは、会合角オフセット量演算部22によって飛しょう体1及び標的2の位置ベクトルが用いられて算出されてもよいし、レーダシステム5が送信する指令をもとに射撃管制装置6から誘導諸元として与えられてもよい。
【0033】
符号付進入角θの符号が正である領域を領域Aとし、符号付進入角θの符号が負である領域を領域Bとする。なお、
図4ではアジマス方向で領域が分けられているが、象限の分け方ではアジマス方向及びエレベーション方向のどちらが用いられてもよい。
【0034】
直撃破壊に必要な会合角の許容値をθ’とする。θ’はスカラ量である。θ’の値は、標的2及び飛しょう体1の運動特性及び会合条件等に依存し、運用構想、シミュレーション及び模擬試験の一部又は全部等をもとに決定される。
【0035】
図5は、実施の形態に係る誘導装置10の航法計算機14が有する会合角オフセット量演算部22が行う動作の手順を示すフローチャートである。
図5を用いて会合角オフセット量の算出方法を説明する。なお、説明のため、二つの飛しょう体1A,1Bが発射され、飛しょう体1Aの符号付進入角θをθ
1Aとし、飛しょう体1Bの符号付進入角θをθ
1Bとする。会合角オフセット量をβとし、符号の定義は符号付進入角θと同様とする。
【0036】
ステップS1において、会合角オフセット量演算部22は、下記の式(3)を用いて、二つの飛しょう体1A,1Bの各々の符号付進入角θを算出する。なお、正面衝突するように初中期誘導が行われるため、符号付進入角θの範囲は-90度≦θ≦90度の範囲であり、符号付進入角θは直撃破壊に必要な会合角の許容範囲θ’に収まっているものとする。
【0037】
【0038】
ステップS2において、会合角オフセット量演算部22は、ステップS1で算出した結果をもとに、二つの飛しょう体1A,1Bの符号付進入角θの符号が異なっているか否かを判定する。会合角オフセット量演算部22は、二つの飛しょう体1A,1Bの符号付進入角θの符号が異なっていると判定した場合(S2でYes)、ステップS3の動作を行う。会合角オフセット量演算部22は、二つの飛しょう体1A,1Bの符号付進入角θの符号が同じであると判定した場合(S2でNo)、ステップS4の動作を行う。
【0039】
ステップS3において、会合角オフセット量演算部22は、二つの飛しょう体1A,1Bのうちの符号付進入角θが小さい飛しょう体を判定する。二つの飛しょう体1A,1Bのうちの符号付進入角θが小さい方が、標的2の速度ベクトルに近い。会合角オフセット量演算部22は、二つの飛しょう体1A,1Bのうちの飛しょう体1Aの方が符号付進入角θが小さいと判定した場合(S3で飛しょう体1A)、ステップS5の動作を行う。会合角オフセット量演算部22は、二つの飛しょう体1A,1Bのうちの飛しょう体1Bの方が符号付進入角θが小さいと判定した場合(S3で飛しょう体1B)、ステップS6の動作を行う。
【0040】
ステップS4において、会合角オフセット量演算部22は、二つの飛しょう体1A,1Bのうちの符号付進入角θが小さい飛しょう体を判定する。二つの飛しょう体1A,1Bのうちの符号付進入角θが小さい方が、標的2の速度ベクトルに近い。会合角オフセット量演算部22は、二つの飛しょう体1A,1Bのうちの飛しょう体1Aの方が符号付進入角θが小さいと判定した場合(S4で飛しょう体1A)、ステップS7の動作を行う。会合角オフセット量演算部22は、二つの飛しょう体1A,1Bのうちの飛しょう体1Bの方が符号付進入角θが小さいと判定した場合(S4で飛しょう体1B)、ステップS8の動作を行う。
【0041】
ステップS5からステップS8において、会合角オフセット量演算部22は、以下の式(4)から式(7)を用いて会合角オフセット量βを算出する。式(4)から式(7)において、係数αは0<α<1を満たす値であり、運用構想、シミュレーション、及び模擬試験の一部又は全部等から決定される。会合角オフセット量βは、二つの飛しょう体1A,1Bのうちの一方の飛しょう体に印加されることが仮定されており、他方の飛しょう体の会合角オフセット量演算部22によって算出される会合角オフセット量βは0である。
【0042】
ステップS5において、飛しょう体1Aの会合角オフセット量演算部22は、式(4)を用いて、飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aが正である場合と負である場合とで場合分けして飛しょう体1Aの会合角オフセット量βを算出する。
【0043】
【0044】
ステップS6において、飛しょう体1Bの会合角オフセット量演算部22は、式(5)を用いて、飛しょう体1Bの符号付進入角θ1Bが正である場合と負である場合とで場合分けして飛しょう体1Bの会合角オフセット量βを算出する。
【0045】
【0046】
ステップS7において、飛しょう体1Aの会合角オフセット量演算部22は、式(6)を用いて、飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aが正である場合と負である場合とで場合分けして飛しょう体1Aの会合角オフセット量βを算出する。
【0047】
【0048】
ステップS8において、飛しょう体1Bの会合角オフセット量演算部22は、式(7)を用いて、飛しょう体1Bの符号付進入角θ1Bが正である場合と負である場合とで場合分けして飛しょう体1Bの会合角オフセット量βを算出する。
【0049】
【0050】
上述の通り、二つの飛しょう体1A,1Bの符号付進入角θの符号が異なっていて、飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aが飛しょう体1Bの符号付進入角θ1Bより小さく、飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aの符号が正である場合と負である場合との会合角オフセット量βを算出するための式(4)が与えられている。二つの飛しょう体1A,1Bの符号付進入角θの符号が異なっていて、飛しょう体1Bの符号付進入角θ1Bが飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aより小さく、飛しょう体1Bの符号付進入角θ1Bの符号が正である場合と負である場合との会合角オフセット量βを算出するための式(5)が与えられている。二つの飛しょう体1A,1Bの符号付進入角θの符号が同じであって、飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aが飛しょう体1Bの符号付進入角θ1Bより小さく、飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aの符号が正である場合と負である場合との会合角オフセット量βを算出するための式(6)が与えられている。更に、二つの飛しょう体1A,1Bの符号付進入角θの符号が同じであって、飛しょう体1Bの符号付進入角θ1Bが飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aより小さく、飛しょう体1Bの符号付進入角θ1Bの符号が正である場合と負である場合との会合角オフセット量βを算出するための式(7)が与えられている。
【0051】
会合角オフセット量演算部22は、二つの飛しょう体1A,1Bの符号付進入角θの符号が異なっているか否かを判定し、飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aが飛しょう体1Bの符号付進入角θ1Bより小さいか否かを判定し、飛しょう体1Aの符号付進入角θ1Aが正であるか負であるかを判定する。二つの飛しょう体1A,1Bの各々では、会合角オフセット量演算部22は、判定結果に対応する式を用いて会合角オフセット量βを算出する。
【0052】
上述の通り、実施の形態に係る誘導装置10は、誘導装置10を有する飛しょう体1を含む複数の飛しょう体が標的2に命中するように標的2に向かって発射された後に標的2に命中する前に複数の飛しょう体が衝突することを回避するための飛しょう体1の会合角オフセット量βを算出し、会合角オフセット量βをもとに舵角指令を算出する。そのため、誘導装置10によれば、発射された複数の飛しょう体を衝突させることなく標的2の迎撃を可能とするという効果が得られる。
【0053】
図6は、実施の形態に係る誘導装置10が有する追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15の少なくとも一部の機能がプロセッサ97によって実現される場合のプロセッサ97を示す図である。つまり、追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15の少なくとも一部の機能は、メモリ98に格納されるプログラムを実行するプロセッサ97によって実現されてもよい。プロセッサ97は、CPU(Central Processing Unit)、処理システム、演算システム、マイクロプロセッサ、又はDSP(Digital Signal Processor)である。
図6には、メモリ98も示されている。
【0054】
追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15の少なくとも一部の機能がプロセッサ97によって実現される場合、当該少なくとも一部の機能は、プロセッサ97と、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせとによって実現される。ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ98に格納される。プロセッサ97は、メモリ98に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15の少なくとも一部の機能を実現する。
【0055】
追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15の少なくとも一部の機能がプロセッサ97によって実現される場合、誘導装置10は、追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15によって実行されるステップの少なくとも一部が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ98を有する。メモリ98に格納されるプログラムは、追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15が実行する手順又は方法の少なくとも一部をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0056】
メモリ98は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性若しくは揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク又はDVD(Digital Versatile Disk)等である。
【0057】
図7は、実施の形態に係る誘導装置10が有する追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15の少なくとも一部の機能が処理回路99によって実現される場合の処理回路99を示す図である。つまり、実施の形態に係る誘導装置10が有する追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15の少なくとも一部の機能は、処理回路99によって実現されてもよい。
【0058】
処理回路99は、専用のハードウェアである。処理回路99は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
【0059】
追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15の少なくとも一部の機能は、追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15の残部の機能を実現するハードウェアと別の専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0060】
追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15が有する複数の機能について、当該複数の機能の一部がソフトウェア又はファームウェアで実現され、当該複数の機能の残部が専用のハードウェアで実現されてもよい。このように、追尾装置11、慣性装置12、送受信装置13、航法計算機14及び操舵装置15が有する複数の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって実現することができる。
【0061】
航法計算機14が有する誘導制御処理部20、オートパイロット21及び会合角オフセット量演算部22の一部又は全部の機能は、プロセッサによって実現されてもよいし、処理回路によって実現されてもよい。当該プロセッサは、プロセッサ97と同様のプロセッサである。当該処理回路は、処理回路99と同様の処理回路である。
【0062】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略又は変更することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,1A,1B 飛しょう体、2 標的、3A,3B 発射装置、5 レーダシステム、6 射撃管制装置、10 誘導装置、11 追尾装置、12 慣性装置、13 送受信装置、14 航法計算機、15 操舵装置、16 推進装置、20 誘導制御処理部、21 オートパイロット、22 会合角オフセット量演算部、97 プロセッサ、98 メモリ、99 処理回路。