IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィルテック株式会社の特許一覧

特開2024-143123包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置
<>
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図1
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図2
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図3
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図4
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図5
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図6
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図7
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図8
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図9
  • 特開-包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143123
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20241003BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20241003BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/082
B23K26/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055631
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】523115966
【氏名又は名称】フィルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】薄 豊彦
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA01
4E168CB04
4E168DA28
4E168EA15
4E168EA17
4E168GA01
4E168GA02
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】 多数の包埋カセットについて多くの情報を扱う場合において短い時間で印字が可能な包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置を提供する。
【解決手段】 包埋カセットの印刷機構部は、印字可能な側面を有する包埋カセットを搬送し前記側面に印字する包埋カセットの印刷機構部であって、前記包埋カセットを載置する第1の印字位置となる水平面と、該水平面に続く第2の印字位置となる載置面と、前記包埋カセットのカセット搬送方向の左右少なくとも一方に前記第1の印字位置の側部の水平面上に形成される側面鏡部を有する印字部とを具備し、前記包埋カセットが前記載置面上の前記印字部の前記第2の印字位置に搬送された状態で当該包埋カセットの水平に保持される斜側面及び垂直側面の少なくとも一方の面と、前記側面鏡部は、共に前記レーザー照射域内に位置することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字可能な側面を有する包埋カセットを搬送し前記側面に印字する包埋カセットの印刷機構部であって、
所定のレーザー照射域にレーザー光を照射するレーザー照射機構部と、
前記包埋カセットを載置する第1の印字位置となる水平面と、該水平面に続く第2の印字位置となる傾斜面と、前記包埋カセットのカセット搬送方向の左右少なくとも一方に前記第1の印字位置の側部の水平面上に形成される側面鏡部を有する印字部とを具備し、
前記包埋カセットが前記傾斜面上の前記第2の印字位置に搬送された状態で当該包埋カセットの水平に保持される斜側面及び垂直側面の少なくとも一方の面と、前記側面鏡部は、共に前記レーザー照射域内に位置することを特徴とする包埋カセットの印刷機構部。
【請求項2】
請求項1記載の包埋カセットの印刷機構部であって、前記第2の印字位置となる傾斜面の保持される角度は、前記包埋カセットの斜側面が水平となる角度と、前記包埋カセットの垂直側面が水平となる角度との間で切り替えることが可能であることを特徴とする包埋カセットの印刷機構部。
【請求項3】
請求項1記載の包埋カセットの印刷機構部であって、前記レーザー照射機構部は、所要のレーザー光を発生させるレーザー光発生部と、前記レーザー光発生部で発生したレーザー光の射出方向を制御する方向制御部とからなることを特徴とする包埋カセットの印刷機構部。
【請求項4】
請求項1記載の包埋カセットの印刷機構部であって、前記側面鏡部は、前記レーザー照射機構部から照射されるレーザー光を水平方向に反射する傾斜角を以って配置されることを特徴とする包埋カセットの印刷機構部。
【請求項5】
請求項1記載の包埋カセットの印刷機構部と、
前記包埋カセットの印刷機構部のカセットの搬送方向の上流側に配設される包埋カセットのローダー部と、
前記包埋カセットの印刷機構部のカセットの搬送方向の下流側に配設される包埋カセットのストック部とを有することを特徴とする包埋カセットの印刷装置。
【請求項6】
請求項5記載の包埋カセットの印刷装置であって、さらに装置の本体の外側を覆う筐体を有し、その筐体内には前記ローダー部は複数の前記包埋カセットを載置できるラックを複数有することを特徴とする包埋カセットの印刷装置。
【請求項7】
印字可能な側面を有する包埋カセットを装着して前記側面に印字する包埋カセットの印刷機構部であって、
所定のレーザー照射域にレーザー光を照射するレーザー照射機構部と、
前記包埋カセットを載置する印字位置となる水平面と、前記包埋カセットの左右少なくとも一方に印字位置の側部の水平面上に形成される側面鏡部を有する印字部とを具備し、
前記印字部は、前記印字位置の背面側に一対の第2の側面鏡部を有し、前記側面鏡部及び前記第2の側面鏡部は共に前記レーザー照射域内に位置して、前記包埋カセットの側面にレーザーを照射することを特徴とする包埋カセットの印刷機構部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は病理検査に使用される包埋カセットに必要な印字をするための印刷機構部及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、臨床検査や前臨床検査等には、薄切片標本が用いられており、この薄切片標本は、薄切片は、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックを上述した厚さで極薄に薄切して作製されたものである。また、包埋ブロックは、人体や試験動物等から取り出されてホルマリン固定された生体試料をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンで固めてブロック状に作製したものである。そして、この包埋ブロックの作製には、一般的に専用の容器である包埋カセットが使用されている。
【0003】
一般的に、包埋カセットは、耐キシレン性、耐アルコール性、耐酸性、耐ホルマリン性を有する材料により形成され、包埋ブロックが固定される収容部を備えており、収容部の底面はメッシュ状に形成されている。また、包埋カセットに固定された包埋ブロックの品質管理を正確に行うために、包埋ブロック内に包埋されている生体試料の種類等を認識する識別コードを包埋カセットに印字する包埋カセットの印字装置が一般的に使用されている(例えば、特許文献1 参照。)。
【0004】
この包埋カセット印字装置は、印字前の包埋カセットが保持されたホルダと、ホルダから連続的に搬送される包埋カセットに対して印字を行う印字部とを備え、この印字部において熱転写式等の接触式の印字方式により包埋カセットの印字面に印字を行うものである。また、包埋カセットには、印字面として45度の傾斜を持った斜側面を有する包埋カセットと、傾斜面がない垂直な側面からなる包埋カセットとがあり、その両方の包埋カセットにレーザー光で印字可能な印字装置(例えば、特許文献2参照。)も知られている。また、包埋カセットに生体試料を入れ、蓋を占めた状態の包埋カセットを手動で印字部にセットして印字することもできる。
【0005】
また、包埋カセットには、レーザー印字に対応するための添加剤が加えられていることがあり、アンチモンと錫の混合物を共沈で生じた後に焼成して生じた粉末を添加剤とするもの(特許文献3参照。)や、二硫化モリブデンを添加剤とするもの(特許文献4)なども知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-54480号公報
【特許文献2】特許第6130574号公報
【特許文献3】特許第4493071号公報
【特許文献4】特開平3-106944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような包埋カセットに印字する方法としては、上述のようにレーザー光を用いて印字をすることが行われているが、1つの包埋カセットについての情報量を増加させる必要性もあり、斜側面を有する包埋カセットと、垂直側面を有する包埋カセットの両方について、左右の側面にも印字をすることで包埋カセットの利便性を向上させ、該包埋カセットに固定される包埋ブロックの品質管理を正確に維持できることから、包埋カセットの多くの側面へ印字可能な包埋カセットの印刷装置が求められている。さらに、このような情報管理は多くの包埋カセットについてそれぞれ正確に進める必要があり、短い時間の工程で進めることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は、多数の包埋カセットについて多くの情報を扱う場合において短い時間で印字が可能な包埋カセットの印刷機構部及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の技術的な課題に鑑み、本開示にかかる包埋カセットの印刷機構部は、印字可能な側面を有する包埋カセットを搬送し前記側面に印字する包埋カセットの印刷機構部であって、所定のレーザー照射域にレーザー光を照射するレーザー照射機構部と、前記包埋カセットを載置する第1の印字位置となる水平面と、該水平面に続く第2の印字位置となる傾斜面と、前記包埋カセットのカセット搬送方向の左右少なくとも一方に前記第1の印字位置の側部の水平面上に形成される側面鏡部を有する印字部とを具備し、前記包埋カセットが前記傾斜面上の前記第2の印字位置に搬送された状態で当該包埋カセットの水平に保持される斜側面及び垂直側面の少なくとも一方の面と、前記側面鏡部は、共に前記レーザー照射域内に位置することを特徴とする。
【0010】
また、本開示にかかる包埋カセットの印刷機構部は、前記第2の印字位置となる載置面の保持される角度は、前記包埋カセットの斜側面が水平となる角度と、前記包埋カセットの垂直側面が水平となる角度との間で切り替えることが可能であり、この切り替え動作とレーザー光の照射による印字は連動するように制御される。前記レーザー照射機構部は、所要のレーザー光を発生させるレーザー光発生部と、前記レーザー光発生部で発生したレーザー光の射出方向を制御する方向制御部とからなる構成とすることもでき、例えば、方向制御部としてはガルバノスキャナーなどを組み込むことができる。さらに、前記第1の印字位置でレーザー光の照射に使用される前記側面鏡部は、前記レーザー照射機構部から照射されるレーザー光を水平方向に反射する傾斜角を以って配置されることを特徴とする。
【0011】
本開示は、上述の如き包埋カセットの印刷機構部を具備する印刷装置にも及び、本開示にかかる印刷装置は、上述の機構を有する包埋カセットの印刷機構部と、前記包埋カセットの印刷機構部のカセットの搬送方向の上流側に配設される包埋カセットのローダー部と、前記包埋カセットの印刷機構部のカセットの搬送方向の下流側に配設される包埋カセットのストック部とを有する構造とすることができる。
【0012】
また、本開示にかかる包埋カセットの印刷装置は、さらに装置の本体の外側を覆う筐体を有し、その筐体内には前記ローダー部は複数の前記包埋カセットを載置できるラックを複数有する構造とすることができる。なお、本明細書においては、印刷と印字の用語は、互換性があるものとし、印字の用語を用いる場合でも2次元バーコードやその他のマークの如き画像を対象面に印刷し得るものと解釈される。
【0013】
本開示にかかるもう1つの包埋カセットの印刷機構部は、印字可能な側面を有する包埋カセットを装着して前記側面に印字する包埋カセットの印刷機構部であって、所定のレーザー照射域にレーザー光を照射するレーザー照射機構部と、前記包埋カセットを載置する印字位置となる水平面と、前記包埋カセットの左右少なくとも一方に印字位置の側部の水平面上に形成される側面鏡部を有する印字部とを具備し、前記印字部は、前記印字位置の背面側に一対の第2の側面鏡部を有し、前記側面鏡部及び前記第2の側面鏡部は共に前記レーザー照射域内に位置して、前記包埋カセットの側面にレーザーを照射することを特徴とする。
【0014】
そのもう1つの包埋カセットの印刷機構部によれば、レーザー照射域内に左右の側面鏡部と一対の第2の側鏡面部が配置されることから、包埋カセットの側面の印字は全てレーザー照射の反射光を使用して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例の模式的な斜視図である。
図2】本発明の実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例の模式的な斜視図であり、主に装置の下部側の部品だけを抽出して示す図である。
図3】本発明の実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例の模式的な斜視図であり、主に内部天板よりも下に位置する部品だけ抽出して示す図である。
図4】前記実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例の模式的な側面図である。
図5】前記実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例の模式的な正面図である。
図6】前記実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例に使用される包埋カセットの斜視図である。
図7】前記実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例における包埋カセットの搬送状態を示す模式図である。
図8】前記実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例における包埋カセットとその印刷箇所の関係を示す模式図である。
図9】本発明の他の実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例の模式的な正面図である。
図10】前記他の実施形態にかかる包埋カセットの印刷装置の一例の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は第1の実施形態の包埋カセットの印刷装置10の斜視図であり、該印刷装置10はその主要部の1つとして包埋カセットの印字部12を有し、この印字部12に包埋カセットを供給するためのローダー部14と、印字済みの包埋カセットを蓄積するためのストック部16とを有する。また、印刷装置10の筐体22内の上部には、後述するような所定のレーザー照射域にレーザー光を照射するレーザー照射機構部18を有しており、印字部12とレーザー照射機構部18により印刷機構部11が構成される。
【0018】
図1乃至図4に示すように、本実施形態の包埋カセットの印刷装置10は、通常の印刷機のように紙やフィルムを送る代わりに、包埋カセット20若しくは包埋カセット21をローダー部14から印字部12に搬送し、その印字部12でレーザー照射機構部18からのレーザー光で印字を行ってから、包埋カセット20、21を蓄積するためのストック部16に蓄積するように包埋カセット20、21を搬送する。
【0019】
本実施形態において搬送される包埋カセット20、21は、形状に応じて2つのタイプに分かれる。包埋カセット20は傾斜面を有するタイプであり、もう1つの包埋カセット21は4つの側面が全て垂直側面であるスクエアタイプである。包埋カセット20、21は、図6に示すように、耐薬品性や耐アルコール性に優れたポリアセタールやフッ素樹脂等の樹脂製であり、その中央部に凹部24が形成されている。
【0020】
傾斜面を有するタイプの包埋カセット20は、上面視矩形状に形成されており、上面側が凹部24の開口となっている。また、包埋カセット20の底面26には、メッシュ部28が形成されている。このメッシュ部28は、底面26を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔がアレイ状に形成されたものであり、この貫通孔を介して凹部24の底面26側と上面側とが連通する。包埋カセット20には、4つの側面30S、30L、30R、30Bがあり、本実施形態の印刷装置を使用することで、裏側の側面30Bを除いて3つの側面30S、30L、30Rのいずれにも病理情報などについて印刷可能となる。包埋カセット20の1つの側面は例えば45度の角度で立ちあがる斜側面30Sであり、凹部24を挟んで反対側が垂直の側面30Bであり、上面視矩形の長辺となる2辺にも左右の側面30R、30Lが設けられ、側面30R、30L及び垂直側面30Bはそれぞれ底面26から直角に立ち上がる面を有する。
【0021】
スクエアタイプの包埋カセット21は、上面視矩形状に形成されており、上面側が凹部24の開口となっている。また、包埋カセット21の底面26には、メッシュ部28が形成されている。このメッシュ部28は、底面26を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔がアレイ状に形成されたものであり、この貫通孔を介して凹部24の底面26側と上面側とが連通する。包埋カセット21には、4つの側面30V、30L、30R、30Bがあり、本実施形態の印刷装置を使用することで、裏側の側面30Bを除いて3つの側面30V、30L、30Rのいずれにも病理情報などについて印刷可能となる。包埋カセット21の正面側の側面は垂直に立ちあがる側面30Vであり、凹部24を挟んで反対側が垂直の側面30Bであり、上面視矩形の長辺となる2辺にも左右の側面30R、30Lが設けられ、これら側面30V、30L、30R、30Bはそれぞれ底面26から直角に立ち上がる面を有する。包埋カセット21を包埋カセット20と比較すると、正面側の側面が斜面か垂直な側面であるかという点で異なっており、本機構では、この側面の角度の違いに応じて傾斜面52の角度を変化させることができる。
【0022】
印刷装置10には、例として、複数の未印刷状態の包埋カセット20、21がセットされ、未印刷状態の包埋カセット20、21も臓器の部位別や症例別、或いは染色別にカセットの樹脂の着色を変えることがあり、異なるサイズやメッシュ部28の仕切りの違いなど種々の包埋カセット20、21がある。同じ種類の包埋カセット20、21を1つのラック内に積み重ねて、個別にロードできるように工夫されているのも本実施形態の印刷装置10の1つの特徴とされる。なお、本明細書において、包埋カセット20、21は広く定義される容器であり、その用途については人や動物の細胞等を病理学的に保持して処理するような容器であれば良い。また、本実施形態の印刷装置は、包埋カセットの形状を模した他の用途のカセットに対する印字も可能であることから、本明細書においては、特にカセットは包埋用途に限ることなく、形状と印字可能な特徴を以って包埋カセットとして定義するものである。なお、包埋カセット20とは異なる形状のスクエアタイプの包埋カセット21は、4つの側面は底面26から直角に立ち上がる面を有するが、その用途は傾斜面30Sを有する包埋カセット20と同様とされる。
【0023】
このような包埋カセット20、21は、本実施形態の印刷装置10において、ローダー部14から供給される。ローダー部14は、中心軸周りにモーター駆動に応じて回転可能な円筒形状のターンテーブル34を有し、そのターンテーブル34の外周部に等間隔で8つのラック36が取り付けられている。ラック36は水平に保持された包埋カセット20、21を内部に収納可能な中空の角柱形状の部材であり、例えば透明な樹脂材で成型され側部に窓を有した部材であって、およそ20個乃至25個程度の包埋カセット20、21を積み上げて収納可能である。同じ形状の包埋カセット20、21を同じラックに収納し、収納された包埋カセット20、21は、上下で角部が揃う様に積み重ねられた位置関係となる。ラック36に収納した際には、包埋カセット20の斜側面30Sがターンテーブル34の中心側に揃うようにラック36にセットされ、包埋カセット21の垂直の側面30Vがターンテーブル34の中心側に揃うようにラック36にセットされる。
【0024】
円筒状のターンテーブル34は、8個のラック用の切り欠きを有する底部円板部35と、そこから棒状の支持部材37を介して接続し、同じく8個のラック用の切り欠きを有する中間円板部39を有する。底部円板部35と中間円板部39の切り欠きは、同じ回転軸上の同じ回転角の位置に同調して設けられており、これにより1つのラックは垂直方向を長手方向として底部円板部35と中間円板部39の両切り欠きに嵌合させることができる。中間円板部39は中心軸に近い部分でその上部に固定された筒体の外側にギア部38に固定されている。すなわち、ギア部38はターンテーブル34と同軸となるように設けられ、そのギア部38と噛み合うギア41は内部天板40を貫通するモーター42の駆動軸に嵌合しており、内部天板40上のモーター42の駆動軸が回転すると、ギア41及びギア部38を介してターンテーブル34を回転させることができ、ターンテーブル34の各36を所定に位置まで回転させることができる。モーター42の回転制御は図示しない制御部からの命令に従うものであり、また、図示しない光センサーなどでターンテーブル34の位置を読み込みながら、位置の制御がなされる。印刷装置10には、正面の位置があり、その正面の位置に印字部12が設置される。即ち、ターンテーブル34が回転して正面の位置に来たラック36の最下部にある包埋カセット20、21が後述するプッシャー部43により押し出され、印字部12で印字される。
【0025】
なお、本実施形態では、ラックの数を8個として説明しているが、ラックの数は1つでも良く、2つでも良く、それ以上の任意の数を選択することもでき、もしラックの数が1つの場合は、ラックを切り替えるための回転動作は不要となる。また、ターンテーブル34のサイズを変えてラックの高さを変えることで、収納できる包埋カセット20、21の数を変えることもできる。また、ラックを採用せずに、より簡易なシステムとして、第2の実施形態として説明するような、1つ1つ操作者が手で包埋カセット20、21をセットするような仕組みも可能である。
【0026】
このようなターンテーブル34の下部には、図2に示すように、ローダー部14の一部であるプッシャー部43が配設されている。プッシャー部43では、一対のギア付きプーリー45、46にベルト44が張架され、プーリー45、46の一方には、ベルト44を駆動するための、図示しないモーターが同軸となるように取り付けられている。ベルト44の一部には、角柱状のスライド部材47が水平方向に位置をずらして取り付けられており、このスライド部材47はターンテーブル34の下部で水平方向に延長された一対のガイド棒48、48に沿って移動できる。この角柱状のスライド部材47は矩形状で包埋カセット20、21と同等の厚みを有する押し込み平板49に接続しており、スライド部材47の水平移動に従って押し込み平板49も水平移動できる。この押し込み平板49は、その先端部49tがターンテーブル34の正面に位置するラック36の最下部に位置した1つの包埋カセット20、21を押し出す。この押し込み平板49の押し出し量は、2段階となっており、最初に包埋カセット20、21をラックの位置から印字部12の第1の印字位置となる水平面50の位置までであり、次いで水平面50にある包埋カセット20、21を傾斜面52まで搬送するように、水平面50と傾斜面52の境界付近まで押し込む。押し込み平板49は、水平面50と傾斜面52の境界付近まで押し込んだ後は、次の包埋カセット20、21の押し出しに備えて、先端部49tはターンテーブル34のラックの位置よりも奥側に後退する。即ち、押し込み平板49として取り得る位置は、ターンテーブル34が回転して所定のラック36を正面に位置される場合でも、そのラックの邪魔とならない最奥の位置、包埋カセット20、21を押して水平面50の第1の印字位置に運ぶための位置、その包埋カセット20、21を傾斜面52まで落とすための位置の3つの位置を順番に取るように動作する。この押し込み平板49の動作は、プッシャー部43のベルト44の動作と連動しており、包埋カセット20、21の位置を図示しない光センサーなどで検知しながら搬送を進めることができる。
【0027】
本実施形態では、1つのプッシャー部43に1つのベルト44が設けられ、そのベルト44の駆動から押し込み平板49を水平動作するようにしているが、代替的には、水平面50の第1の印字位置に運ぶ動作と、水平面50から傾斜面52まで包埋カセット20、21を送る動作を異なる搬送手段でそれぞれ行うようにすることもできる。例えば、水平面50から傾斜面52まで包埋カセット20、21を送るために、水平面50の奥側を持ち上げて傾かせ、傾斜面52に直線的に連続するような斜面にした上で、包埋カセット20が斜面を滑り落ちるような構成とすることもできる。
【0028】
次に、印字部12の上部に配された内部天板40上には、内部天板40に取り付けられる形でレーザー照射機構部18が設けられており、このレーザー照射機構部18は所要のレーザー光を発生させるレーザー光発生部55と、そのレーザー光発生部55で発生したレーザー光の射出方向を制御する方向制御部56とからなる。レーザー光発生部55は例えばCas Laser 社製のpulsed fiber laserであり、装置内部の光ファイバーを利用しながらパルス出力をすることができ、レーザーマーキング用途に一般的に使用されるレーザーである。レーザー光発生部55の光射出部には、例えばガルバノスキャナーなどからなる方向制御部56が取り付けられている。コンピュータなどの図示しない制御装置が方向制御部56には接続されており、制御装置からの電気信号に応じて方向制御部56内の鏡の角度を調整することで任意の方向へのレーザー光の照射が可能となり、この方向制御部56の制御により、レーザー光によるマーキング、すなわち印字が実現される。方向制御部56の制御装置は、本印刷装置の全体を制御するシステムの一部として本体内部に制御ボードの様な形式で搭載することもでき、或いは外付けしたコンピュータを利用したり、或いはインターネットなどの情報網を介してサーバーに接続するような形式や、これらの組み合わせであっても良い。
【0029】
このレーザー照射機構部18の方向制御部56からは、レーザー光が出力されるが、図5に示すように、方向制御部56の直下には、所定のレーザー照射域LBRがある。レーザー照射機構部18からのレーザー光は、その出射方向を偏向させることが可能であり、レーザー照射域LBRはレーザー光の届く範囲である。そして、特に本実施形態の印刷装置10では、第1の印字位置と第2の印字位置に導かれるレーザー光は、1つのレーザー照射機構部18のレーザー照射域LBRの範囲内であり、その結果、単一のレーザー照射機構部18で、包埋カセット20の左右側面及び斜側面30S、或いは包埋カセット21の左右側面及び垂直側面30Vの全部に印字をすることができる。
【0030】
次に、本実施形態の印刷装置10の包埋カセットの印字部12について説明する。印字部12は、ローダー部14からの包埋カセット20、21を受け取り、レーザー照射機構部18からのレーザー光を包埋カセット20、21に照射して印字を行い、印字済み包埋カセット20、21を蓄積するためのストック部16に包埋カセット20、21を送る機構である。この印字部12は、ローダー部14の正面側に配され、レーザー照射機構部18の方向制御部56の下に位置する。印字部12は、第1の印字位置に対応する水平面50と、第2の印字位置に対応する傾斜面52を有しており、特に傾斜面52の保持される角度は、包埋カセット20の斜側面30Sが水平となる角度と、包埋カセット21の垂直側面30Vが水平となる角度との間で切り替えることが可能である。
【0031】
印字部12における第1の印字位置に対応する水平面50には、レーザー照射機構部18から照射されたレーザー光を包埋カセット20、21の側面に対して概ね水平方向に反射するための一対の側面鏡部54R、54Lが設けられている。一対の側面鏡部54R、54Lは、包埋カセット20、21のカセット搬送方向の両側に第1の印字位置の側部の水平面50上に配設されており、図示しない螺子などで鏡面の向きを微調整することも可能である。一対の側面鏡部54R、54Lは、長方形の鏡面54Mと該鏡面を支持する支持台からなり、少なくとも包埋カセット20、21のカセット搬送方向の全長に亘って延長されており、水平面50上の第1の印字位置にある包埋カセット20、21の左右側面に対する印字が可能とされる。一対の側面鏡部54R、54Lは、レーザー照射機構部18のレーザー照射域LBR内に位置する。この第1の印字位置において、包埋カセット20、21は、プッシャー部43の押し込み平板49の押し込み動作に従って、ラック36の位置から水平面50上を一対の側面鏡部54R、54Lの間を流れるように摺動させられ、包埋カセット20、21の端部が水平面50と傾斜面52の境界に至ったところで止められる。
【0032】
この搬送が停止した後に第1の印字位置での印字が行われる。第1の印字位置での印字は、一対の側面鏡部54R、54Lを用いた印字であり、レーザー照射機構部18の方向制御部56から射出したレーザー光が側面鏡部54R、54Lの鏡面のいずれかで反射して第1の印字位置に位置決めされている包埋カセット20の左右の側面30R、30Lのいずれかに印字する。本実施形態の印刷装置10では、包埋カセット20、21の左右両側に側面鏡部54R、54Lが存在するため、特に包埋カセット20、21を動かさずに左右両方の印字が可能である。包埋カセット20、21の片側のみの印字で良い場合には、不要な側でレーザー光の照射をしなければ良く、また、必要な印字は常に左右の一方だけという場合は、必要な側だけの側面鏡部を設ける構造であっても良い。さらに第1の印字位置自体に包埋カセット20、21を反転させる機構を設ければ、1つの側面鏡部を設けるだけでも良い。
【0033】
このような第1の印字位置で包埋カセット20、21の左右の側面30R、30Lへの印字を完了させた後、押し込み平板49の先端部49tが更に包埋カセット20、21を前方に押し、包埋カセット20、21は第2の印字位置に落とし込むように搬送される。第2の印字位置は、印字部12における傾斜面52上の位置であり、傾斜面52は印字部12の水平面50から包埋カセット20、21の搬送方向の先端側でおよそ45度の傾斜角で下る斜面である。傾斜面52には、ガイド部材62が設けられており、滑り落ちる包埋カセット20、21の左右の位置を規制する。この傾斜面52の途中には、図示しない出没可能な係止部があり、滑り落ちる包埋カセット20、21を係止部で止めて包埋カセット20、21を第2の印字位置に位置決めする。
【0034】
包埋カセット20の斜側面30Sがターンテーブル34の中心側に揃うようにラックにセットされていた場合には、包埋カセット20の後端部が斜側面30Sを有するため、包埋カセット20が45度の傾斜角がある第2の印字位置に止められている状態で、その包埋カセット20の後端部の斜側面30Sは水平面50と傾斜面52の境界を少し過ぎた位置で水平に保持される。この斜側面30Sが水平に保持された状態で方向制御部56から射出したレーザー光により印字が行われる。この第2の印字位置でのレーザーによる印字は鏡を介せず直接描画するように行われる。これは第2の印字位置での包埋カセット20の斜側面30Sの位置は、レーザー照射機構部18のレーザー照射域LBR内であり、印字後は係止部が後退して包埋カセット20は傾斜面52の最下部に至る。
【0035】
4つの側面が垂直なスクエアタイプの包埋カセット21は、第2の印字位置で、側面30Vが水平になるように保持された後で印字される。包埋カセット21の側面30Vを水平になるように保持するために、傾斜面52は包埋カセット21を載置した状態で回動されてその角度を90度にまで変える。第2の印字位置の傾斜面52の裏面には、傾斜面52を構成する板部材を横断するように回動中心軸58が水平方向に伸びており、傾斜面52の傾斜角度を回動中心軸58周りに変えることができるように回動中心軸58は配設されている。本実施形態の印刷装置10は、傾斜面52の傾斜角度の制御をモーター59の駆動により行うことができ、第2の印字位置に包埋カセット21が到達したところで、モーター59を作動させて傾斜面52の傾斜角度を90度まで上げることができる。このように傾斜面52を操作することで、包埋カセット21の側面30Vがターンテーブル34の内側に揃うようにラックにセットされていた場合には、第2の印字位置への搬送後は包埋カセット21の側面30Vが水平に保持される。この側面30Vが水平に保持された状態で方向制御部56から射出したレーザー光により鏡を介せず直接印字できる。これは第2の印字位置での包埋カセット21の側面30Vの位置は、包埋カセット20の斜側面30Sの場合と同様に、レーザー照射機構部18のレーザー照射域LBR内であり、印字後は傾斜角45度の傾斜面52に一旦戻り、係止部が後退して包埋カセット21は斜めに滑って傾斜面52の最下部に至る。
【0036】
このように、印字部12での印字動作では、一対の側面鏡部54R、54Lを利用した第1の印字位置での包埋カセット20、21の左右に側面30R、30Lに対する印字と、第2の印字位置での傾斜面52上での包埋カセット20の斜側面30Sに対する印字と、第2の印字位置での傾斜面52を垂直に保持した場合の包埋カセット21の垂直な側面30Vに対する印字とを行うことができ、これらは印字する際に保持される側面30S、30Vや側面鏡部54R、54Lの位置が全部レーザー照射機構部18のレーザー照射域LBR内であり、単一のレーザー照射機構部からのレーザー光でこれらの印字動作に対応することができる。特に、これらの印字動作は、レーザー照射機構部18の方向制御部56からの距離がレーザー照射域LBR内で全て概ね同程度であり、焦点を合わせるなどの光強度の維持の面でも有効である。
【0037】
なお、包埋カセット21の垂直な側面30Vに対する印字が不要なシステムでは、傾斜面52をさらに回動させて約90度の傾斜角にするような機構は不要であり、回動させるようなモーター59は不要である。また、傾斜面52をさらに回動させて約90度の傾斜角にする方法の他に、傾斜面52に保持された包埋カセット21の垂直側面30Vに垂直にビームの入射角を作るような鏡などを出没させる方法でも良い。傾斜面52をさらに回動させて約90度の傾斜角にする手段をモーター制御ではなく、手動とすることも可能である。
【0038】
傾斜面52の最下部に搬送された包埋カセット20、21は、印字済みの包埋カセットを蓄積するためのストック部16に送られる。このストック部16では、傾斜面52の最下部から包埋カセット20、21が1つごとにストック部16側の最下部に差し込まれるように搬送され、1つの包埋カセット20、21が差し込まれる前にその分の空間を確保するようにストックされている包埋カセット20、21の全体が斜め上側に送られる。ストック部16全体は斜めのラックのような構造を有し、モーターの駆動のよって、ストックされている包埋カセット20、21の全体が斜め上側に送ることができる。このストック部16に集められる包埋カセット20、21は印字済みのカセットであり、必要に応じて作業者が印字済みの包埋カセット20、21を取り出すことができる。
【0039】
以上が本実施形態の包埋カセットの印刷装置の構造と主な動作の説明であるが、図7を参照しながら、包埋カセット20、21の搬送の流れについて説明し、図8を参照しながらレーザー光による印字の流れについて説明する。
【0040】
本実施形態の包埋カセットの印刷装置10では、図7に示すように、包埋カセット20、21(図7(a)乃至(c)では包埋カセット20のみ示す。)を搬送する。まず、(a)に示すように、複数の包埋カセット20、21は積層されラック36に収納された状態で保持され、(b)ではプッシャー部43の押し込み平板49の先端部49tが最下部の包埋カセット20、21を後ろから押し、包埋カセット20、21を(c)の第1の印字位置に搬送する。この第1の印字位置では、上部のレーザー照射機構部18から印字すべき情報に沿ったレーザー光が照射され、照射されたレーザー光は側面鏡部54R、54Lの斜めの鏡面で一度反射して包埋カセット20、21の左右側面30R、30Lに到達して印字が行われる。
【0041】
この第1の印字位置での印字動作の後は、(d),(e)の流れの工程は包埋カセット20の斜側面30Sに印字するパターンであり、(f),(g)の流れは包埋カセット21の垂直な側面30Vに印字するパターンである。本実施形態の印刷装置10では、どちらかのパターンで印字可能であり、どちらかは制御装置からの命令で決めることも可能であるが、ターンテーブル34でのラックに収納されている状態の包埋カセット20、21の向きを検知したり、第1の印字位置における包埋カセット20、21の傾斜面の有無などを検知して自動制御とすることも可能である。
【0042】
(d),(e)の流れの場合には、包埋カセット20を支持する傾斜面52が斜めのままに保持され、そこに包埋カセット20が搬送され、その結果、斜側面30Sが水平に保持される。この斜側面30Sが水平に保持された状態で、第2の印字作業(d)が進められ、斜側面30Sに印字される。印字作業の後、包埋カセット20はストック部16に積層されるように収納される。
【0043】
(f),(g)の流れの場合には、包埋カセット21を支持する傾斜面52が斜めのままに包埋カセット21が搬送され、包埋カセット21が第2の印字位置に到達したところで、傾斜面52が回動してほぼ垂直な面となる。すると、包埋カセット21の垂直な側面30Vが水平に保持されること(工程(f))になり、そこで第2の印字動作が進められる。第2の印字動作の後は、ほぼ垂直な面となっていた傾斜面52をもとに戻して斜めにし、係止部を引いて、最下部まで搬送し、包埋カセット21はストック部16に収納される(工程(g))。
【0044】
本実施形態の包埋カセットの印刷装置10では、図8に示すように、包埋カセット20、21に対する印字が行われる。(a)は、一対の側面鏡部54R、54Lを利用した第1の印字位置での包埋カセット20、21の左右に側面30R、30Lに対する印字であり、第2の印字位置に移動する前に完了する。(b)は第2の印字位置での傾斜面52上での包埋カセット20の斜側面30Sに対する印字であり、包埋カセット20を斜めの傾斜面52上に保持して、斜側面30Sを水平に維持して印刷するものである。(c)は第2の印字位置での傾斜面52上での包埋カセット21であるが、包埋カセット21の垂直側面30Vに対する印字であり、第2の印字位置での傾斜面52を垂直に保持することで、包埋カセット21の垂直側面30Vを水平に維持して印字するものである。これらは印字する際に保持される側面30S、30Vや側面鏡部54R、54Lの位置が全部レーザー照射機構部18のレーザー照射域LBR内であり、単一のレーザー光照射機構でこれらの印字動作に対応することができる。
【0045】
以上のように、本実施形態の印刷装置10では、包埋カセット20の4つの側面に対して単一のレーザー光照射機構でこれらの印字動作に対応することができる。特に、これらの4つの側面への印字動作は、レーザー照射機構部18の方向制御部56からの距離がレーザー照射域LBR内で全て概ね同程度であり、焦点を合わせるなどの光強度の維持の面でも有効である。また、本実施形態の印刷装置10では、包埋カセット20、21をラック36からストック部16まで、自動的に搬送させることができ、大量の包埋カセット20、21に連続的に印字をする場合に、本実施形態の印刷装置10を利用することで、大幅な時間短縮を図ることができる。
【0046】
第2の実施形態に係る包埋カセットの印刷機構部を有する印刷装置について、図9及び図10を参照しながら説明する。本実施形態の印刷装置では、左右一対の側面鏡部96、94を有しているところは、先の第1の実施形態の印刷装置と同様であるが、本実施形態の印刷装置は、包埋カセット20,21の斜側面30Sと垂直な側面30Vにもレーザー光を反射して印字するための一対の第2の側面鏡部である鏡部90、92が設けられており、包埋カセット20,21の側面は鏡部で反射したレーザー光による印字が進められる。
【0047】
本実施形態の包埋カセット20、21の印刷装置80は、概ね直方体形状の筐体82の内部に、図示しないコンピュータなどの装置に接続されて所要のレーザー光を発生させるレーザー照射機構部84と、その下部に配置される支持台86とを有している。支持台86の上部には、包埋カセット20、21の載置部があり、作業者はその載置部に包埋カセット20、21を嵌合させて位置決めすることができる。位置決めの具体的な方法の一例としては、包埋カセット20、21の載置部の奥側に係止部を設け、載置部に包埋カセット20、21を載せた後で手前側から押し込むようにして包埋カセット20、21の端部を係止部に係止させて位置決めすることができる。載置部上で位置決めされた包埋カセット20、21の側面には、左右一対の側面鏡部96、94がこれら側面から所定の間隔を開けて対峙しており、レーザー照射機構部84からのレーザー光を反射して包埋カセット20、21の左右側面に照射することができる。
【0048】
載置台上で位置決めされた包埋カセット20、21の奥側には、一対の鏡部90、92が上下に離間して設けられている。上側の鏡部90は概ね水平に対して73.5度の角度で立がる鏡面を有しており、鏡部90の中心と斜側面30Sの離間距離は38.3mm程度である。下側の鏡部92は概ね水平に対して42度の角度で立がる鏡面を有しており、鏡部92の中心と垂直な側面30Vの離間距離は11mm程度である。斜側面30Sを有する包埋カセット20には、載置台上で斜側面30Sの法線が斜め上を向くことから、一対の鏡部90,92のうちの上側の鏡部90で反射したレーザー光が照射される。垂直な側面30Vを有する包埋カセット21には、載置台上で垂直な側面30Sの法線は水平な方向であり、一対の鏡部90,92のうちの下側の鏡部90で反射したレーザー光が照射される。
【0049】
上述の構成では、1つのレーザー照射機構部84のレーザー照射部85からのレーザー光は、左右一対の側面鏡部96、94に照射されると共に、一対の鏡部90、92にも照射されることから、単一のレーザー光により、包埋カセット20、21の左右側面、並びに包埋カセット20の斜側面30Sと包埋カセット21の垂直な側面30Vにも印字することができる。レーザー照射機構部84のレーザー照射部85からのレーザー光の照射域内に4つの側面鏡部96、94及び鏡部90、92が位置するため、包埋カセット20,21の全ての印字可能な側面に対して印字することができる。印字終了後は、作業者が手で包埋カセット20、21を入れ替え次の作業に移るか、作業を終了する。
【0050】
なお、一対の鏡部96,94の代わりに、2つの反射面を有する1つの鏡を設けることもでき、この場合は、2つの反射面の向きを一対の鏡部96,94の取り付けられた反射面の向きと合わせれば良い。
【0051】
以上のように、本実施形態の印刷装置では、レーザー照射機構部84のレーザー照射部85からのレーザー光の照射域内に4つの側面鏡部96、94及び鏡部90、92が位置するため、包埋カセット20,21の全ての印字可能な側面に対して印字することができる。本実施形態の印刷装置では、作業者が包埋カセットを所定位置に係止すれば、印字を開始することができ、左右側面の印字の直後に、斜側面30S若しくは垂直な側面30Vへの印字、あるいはその逆の順番の印字を進めることができ、全体としての印字時間の短縮を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 印刷装置
11 印刷機構部
12 印字部
14 ローダー部
16 ストック部
18 レーザー照射機構部
20 包埋カセット
22 筐体
24 凹部
26 底面
28 メッシュ部
30S 斜側面
30B 垂直側面
30R、30L 側面
34 ターンテーブル
35 底部円板部
36 ラック
37 支持部材
38 ギア部
39 中間円板部
40 内部天板
41 ギア
42 モーター
43 プッシャー部
44 ベルト
45、46 ギア付きプーリー
47 スライド部材
48 ガイド棒
49 押し込み平板
49t 先端部
50 水平面
52 傾斜面
54R、54L 側面鏡部
56 方向制御部
58 回動中心軸
59 モーター
62 ガイド部材
80 印刷装置
82 筐体
84 レーザー照射機構部
85 レーザー照射部
86 支持台
90、92 鏡部
96、94 側面鏡部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10