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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143126
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】端末装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/3206 20190101AFI20241003BHJP
   G06F 1/329 20190101ALI20241003BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20241003BHJP
   G05F 1/67 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G06F1/3206
G06F1/329
H02J7/35 A
G05F1/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055636
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】入内嶋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】今成 浩巳
(72)【発明者】
【氏名】垣内 勇人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 英幾
【テーマコード(参考)】
5B011
5G503
5H420
【Fターム(参考)】
5B011DA12
5B011DA13
5B011EA10
5B011LL00
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503CB13
5G503GD06
5H420BB03
5H420BB12
5H420CC03
5H420DD02
5H420EB37
5H420FF03
5H420FF14
5H420FF22
(57)【要約】
【課題】効率的に太陽電池を利用できる形で、IoT等のネットワークにおける端末装置を提供する。
【解決手段】ネットワークにおける端末装置20であって、太陽電池10から得られる電力によって稼働(21)するように構成されており、前記太陽電池10から得られる出力電圧を監視(22)し、前記太陽電池の最大動作電圧点の近傍での出力電圧が維持されるように、前記ネットワーク上へのデータ送信の間隔を調整(28)したうえで、当該データ送信(29)を行う第1処理を実行する
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークにおける端末装置であって、太陽電池から得られる電力によって稼働するように構成されており、
前記太陽電池から得られる出力電圧を監視し、前記太陽電池の最大動作電圧点の近傍での出力電圧が維持されるように、前記ネットワーク上へのデータ送信の間隔を調整したうえで、当該データ送信を行う第1処理を実行することを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記太陽電池に対する日照量を取得し、当該日照量が多いと判定される場合に、
前記第1処理では、前記出力電圧が前記太陽電池の最大動作電圧点を所定量より上回ることがないような頻度として、前記データ送信の間隔を調整したうえで、当該データ送信を行うことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記最大動作電圧点を、前記日照量に少なくとも基づく値として設定することを特徴とする請求項2に記載の端末装置。
【請求項4】
前記太陽電池に対する日照量を取得し、当該日照量が少ないと判定される場合に、
前記第1処理では、前記出力電圧が前記太陽電池の最大動作電圧点を所定量より下回ることがないような頻度として、前記データ送信の間隔を調整したうえで、当該データ送信を行うことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項5】
前記最大動作電圧点を、前記日照量に少なくとも基づく値として設定することを特徴とする請求項4に記載の端末装置。
【請求項6】
前記端末装置は充電池を備え、前記太陽電池から得られる電力で当該充電池を充電することが可能なように構成されており、
前記太陽電池に対する日照量を取得し、当該日照量が中程度に該当する判定される場合に、
前記第1処理では、前記出力電圧が前記太陽電池の最大動作電圧点を所定量より上回ることがないような頻度として、前記データ送信の間隔を調整したうえで、当該データ送信を行い、
前記太陽電池に対する日照量を取得し、当該日照量が前記中程度よりも大きいと判定される場合に、
前記第1処理では、前記出力電圧が前記太陽電池の最大動作電圧点を所定量より上回ることがないような頻度として、前記データ送信の間隔を調整したうえで、当該データ送信を行い、且つ、前記太陽電池から得られる電力で当該充電池を充電するように制御することを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項7】
コンピュータを請求項1ないし6のいずれかに記載の端末装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IoT等のネットワークにおける端末装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池から効率的に発電電力を得るべく、山登り法等を用いて太陽電池の最大電力点を見つけながら電池を充電する専用のMPPT(Maximum power point tracking)制御のチャージコントローラを用いることが一般的に行われている。図1は太陽電池の特性を例示する図であり、上段側に示すような入力電圧の関数としての電流特性(I-V特性)と、入力電圧の関数としての電力特性(P-V特性)が、下段側に示すような太陽電池の様々な状態においてそれぞれ存在する。
【0003】
特許文献1(発明の名称「太陽光発電システムおよびその制御方法」)に開示されるシステムでは、太陽電池の状態として太陽電池への日射量または太陽電池の温度に対応する太陽電池の動作電圧をデータベースとして予め用意しておくことで、MPPT制御を省略可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-181555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、IoT(モノのインターネット)等のネットワーク内で利用される端末との関係において太陽電池を効果的に利用できるようにすることは考慮されていなかった。
【0006】
すなわち、図2に従来構成のシステム例を示すように、太陽電池から充電池への充電をMPPT装置で制御して、この充電地をIoT端末の電源とする構成では、一般にMPPT装置の消費電力が多く小規模型で省電力のものがないため、IoT端末に対して設置するには難があった。また、MPPT装置の稼働自体に太陽電池の電力が消費されてしまう点や、MPPT装置を設けること自体の設備コストも発生した。
【0007】
また、特許文献1の手法では予め構築されているデータベースの利用でMPPT装置を省略できるが、IoT等のネットワーク内での端末との関係で太陽電池を効率的に運用することまでは考慮されていなかった。
【0008】
上記従来技術の課題に鑑み、本発明は、効率的に太陽電池を利用できる形で、IoT等のネットワークにおける端末装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、ネットワークにおける端末装置であって、太陽電池から得られる電力によって稼働するように構成されており、前記太陽電池から得られる出力電圧を監視し、前記太陽電池の最大動作電圧点の近傍での出力電圧が維持されるように、前記ネットワーク上へのデータ送信の間隔を調整したうえで、当該データ送信を行う第1処理を実行することを特徴とする。また、当該端末装置に対応するプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、太陽電池の最大動作電圧点の近傍での出力電圧が維持されるようにした間隔でデータ送信を行うようにすることで、ネットワーク内の端末装置において効率的に太陽電池を利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】太陽電池の特性を例示する図である。
図2】従来構成のシステム例を示す図である。
図3】一実施形態に係るIoTシステムの構成と、各構成要素の機能ブロックを示す図である。
図4図3のIoTシステムの構成を模式的に示す図である。
図5】一実施形態に係る端末装置の動作のフローチャートである。
図6図5のフローによって実現される、太陽電池の出力電圧の挙動の模式的な例を示す図である。
図7図5の第1実施形態の変形例である第2実施形態によって実現される太陽電池の出力電圧の挙動の模式的な例を示す図である。
図8】本発明の実施形態による効果を模式例として、本発明を適用しない場合の対比例の模式例に対して示す図である。
図9】第3実施形態に係る端末装置の動作(場合分け)のフローチャートである。
図10】一般的なコンピュータにおけるハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図3は、一実施形態に係るIoTシステム100の構成と、各構成要素の機能ブロックを示す図であり、図4は、図3のIoTシステムの構成を模式的に示す図である。図3に示される通り、IoTシステム100は、発電部11及び出力部12を含む太陽電池設備10と、受信部21と、出力電圧監視部22と、蓄電部23と、日照量取得部25及び温度取得部26を含む環境情報取得部24と、計画部28及びIoT機能部29を含む制御部27と、を含む端末装置20と、別装置40と、を備える。
【0013】
一例では、端末装置20及び別装置40はいずれも、IoTネットワークNW内の任意の一つのIoT端末として構成される。IoTネットワークNWは、一例ではBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)技術等を用いることによる既知のアドホックネットワークとして構成することができ、基地局や固定網が存在しない形で、端末装置20や別装置40といった各IoT端末が自局の電波が届かない宛先端末にデータを送信する場合に、中継可能な端末を探し、当該中継端末を介してバケツリレー方式に宛先端末までデータ送信を行うようにすることができる。また、一例では、IoTネットワークNWは、アドホックネットワークに限らないその他の任意構成のネットワークとして、無線LAN、LPWA(Low Power Wide Area)、5G等で構成することもでき、基地局を介して、IoTネットワークのデータ等を管理するデータサーバ等へと端末装置20からアクセスする構成を取ることも可能である。別装置40は、アドホックネットワークの場合に端末装置20がBluetooth(登録商標)等の近距離通信でアクセスする別の端末装置であってもよいし、無線LAN等のネットワークの場合に端末装置20がアクセスする基地局であってもよい。また、ネットワークNWは、その用途がIoTに限られない任意のネットワークであってもよいが、以下では説明例として、IoTネットワークNWやIoTシステム100として説明を行う。
【0014】
発電部11は太陽電池パネル(及びその周辺回路)として構成され、環境光から発電した電力を出力部12へと出力する。出力部12は電力送信回路として構成され、発電部11の発電電力を常時、端末装置20の受信部21へと送信する。
【0015】
受信部21は電力受信回路及び端末装置20の各回路その他のハードウェアへの給電回路として構成され、出力部12から得た太陽電池の発電電力を蓄電部23や、制御部27や、環境情報取得部24へと給電する。受信部21による給電処理は、計画部28から得られる計画に従ったものとして実施することが可能である。なお、制御部27が停止状態にあって計画部28からの計画が利用できない場合は、蓄電部23が蓄電可能な場合に受信部21から給電する等の形で、所定ルールに沿った給電を行うようにしてよい。
【0016】
また、受信部21では、出力部12から太陽電池の発電電力を得る際には、可能な限り最大動作電圧Vmax付近において受信するように、出力部12に対して最大動作電圧Vmaxで出力させるように設定を行ったうえで電力を受信する。最大動作電圧Vmaxの設定は、計画部28からその時点での照度等に基づくものとして受信部21において設定値を受け付け、出力部12に対して最大動作電圧Vmaxで出力させるように設定できる。
【0017】
出力電圧監視部22は、出力部12から得られる電圧(太陽電池の発電電圧に相当)を常時、監視してその結果を計画部28へと出力する。蓄電部23はリチウムイオン電池等の二次電池(及びその周辺回路)として構成され、受信部21から得られる電力によって蓄電(充電)を行ったり、当該蓄電された電力を端末装置20の各部の稼働電力として供給したりする。蓄電部23における蓄電処理及び/又は給電処理は、計画部28から得られる計画に従ったものとして実行することが可能である。
【0018】
環境情報取得部24は、太陽電池設備10が配置されている環境の環境情報を定期的に取得して、計画部28へとこの環境情報を出力する。日照量取得部25は、太陽電池設備10の近辺に配置された日照センサの計測結果を取得することにより、あるいは、太陽電池設備10の配置箇所の天候情報を、ネットワーク上の別途の天候情報管理サーバ等から取得することにより、太陽電池設備10の環境における日照量の情報を、環境情報に含まれるものとして取得する。温度取得部26は、太陽電池設備10の近辺に配置された温度センサの計測結果を取得することにより、あるいは、太陽電池設備10の配置箇所の温度情報(気温)を、ネットワーク上の別途の天候情報管理サーバ等から取得することにより、太陽電池設備10の環境における温度の情報を、環境情報に含まれるものとして取得する。
【0019】
計画部28は、出力電圧監視部22で監視されている太陽電池の出力電圧と、蓄電部23の二次電池の電圧(所定のマップを参照することで二次電池の充電残量に対応付けできる電圧)と、環境情報取得部24から取得される環境情報と、の少なくとも一部に基づいて、端末装置20の稼働計画を立て、端末装置20を当該稼働計画に従う形で稼働させる。
【0020】
計画部28において計画する対象には以下(計画PL1,PL2とする)が含まれる。
●計画PL1…制御部27(CPU等のプロセッサ)の具体的な処理内容のうちの1つとしての、IoT機能部29による送受信の頻度の設定
●計画PL2…受信部21において受信した太陽電池の電力を、蓄電部23(二次電池)の蓄電や、制御部27(CPU等のプロセッサ)の処理等にどのように割り当てるか
【0021】
計画部28はまた、環境情報取得部24から取得される環境情報における照度及び/または温度を所定のマップと照合して、当該照度及び/又は温度に置かれている際の太陽電池の最大電力点(図1のI-V特性またはP-V特性における電力Pが最大となる点)を定め、この最大電力点に対応する最大動作電圧Vmaxを受信部21に通知し、受信部21が、出力部12に対して(可能な限り)この最大動作電圧Vmax付近で発電電力を出力するように設定することを、上記の計画PL1,PL2によって可能とさせる。
【0022】
こうして、出力部12は、太陽電池が置かれている当該照度及び/又は温度に応じた最大電力点(最大動作電圧Vmax、最大電力Pmax及び対応する電流I=Pmax/Vmax)において最大電力Pmaxを出力するよう動作する。受信部21でこの最大電力Pmaxを受信して端末装置20においてこれをそのまま全部消費し続ける場合は、最大電力Pmaxの供給及び消費のバランスが取れた状態が安定して継続することとなる。一方で、端末装置20の動作や照度に応じた個別状況において、例えば、データ送信時は最大電力Pmaxよりも大きな電力を消費し、データ送信しない待機時は最大電力Pmaxよりも少ない電力消費でも済むといった状況があるため、出力部12に設定されている最大動作点から幾分か乖離した状態での太陽電池の電力出力及び受信部21における電力受信が行われることとなるが、以下にその詳細を説明するように、計画部28の計画によりこの乖離を可能な限り小さく最適化して運用することが可能である。
【0023】
IoT機能部29は、所定の用途を実現するためのIoTシステム100において、この端末装置20に割り当てられているIoT端末としての所定の役割を果たすものであり、端末装置20において収集等した、当該所定の用途に応じた任意の情報(例えば、農業IoTの用途であれば、環境情報取得部24で取得できる天候等に関連する情報としての環境情報)を、IoTネットワークNW内の別端末40へと送信する機能を担う。IoT機能部29はさらに、別装置40から送信される情報を受信してもよい。
【0024】
図5は、一実施形態に係る端末装置20の動作(主として制御部27関連の動作)のフローチャートであり、当該フローを開始するに際して、計画部28から取得される環境情報のうち少なくとも照度情報に基づき、この照度を予め設定してある閾値と比較することで、太陽電池設備10が置かれた環境における照度が低いか高いかを判定し、低いと判定された場合はフローF51を実行し、高いと判定された場合はフローF52を実行する。
【0025】
フローF51が開始されると、ステップS51では計画部28が、現在時刻が予め設定しておくIoT機能部29における別装置40へのデータ送信契機(送信タイミング、例えば10分毎のタイミングなど)に該当するか否かを判定し、該当する場合はステップS52へと進み、該当しない場合はこのステップS51に留まってタイミングが訪れるまで待機する。
【0026】
ステップS52では計画部28が、出力電圧監視部52で監視されている現在時刻tまでの太陽電池の出力電圧V(t)が、最大動作点電圧値Vmaxまで上昇し、現時刻tにおいて上回っているか(V(t)>Vmaxとなっているか)否かを判定し、肯定判定の場合はステップS53へと進み、否定判定の場合はステップS55へと進む。ステップS55では、(ステップS53へ進んだ場合とは異なり、)現時刻tにおいてIoT機能部29から別装置40へのデータ送信を行うことなく、ステップS51に戻る。(従って、ステップS51の送信タイミングが例えば10分ごとに設定されていた場合でも、現在時刻tでの出力電圧V(t)が足りない場合には、結果的なデータ送信が20分おきや30分おきとなる場合もありうる。)
【0027】
ステップS53では計画部28がIoT機能部29に対して、別装置40へのデータ送信を行うべき旨の指示を行うことで、当該指示に従う形でのデータ送信が、受信部21で受信されている太陽電池の出力電圧を用いることによって行われてから、ステップS54へと進む。ステップS54は、出力電圧監視部22において、当該データ送信に電力が利用されたことによって太陽電池の出力電圧が低下したことを確認して、ステップS51へと戻る。(なお、このステップS54は、端末装置20における自発的な処理のステップではなく、ステップS53の処理の結果として出力電圧が低下する現象が発生することを確認的に表現したものである。)
【0028】
一方で、図5においてフローF52が開始されると、ステップS61では計画部28が、出力電圧監視部22から得られる太陽電池の出力電圧を常時監視している状態において、ステップS62へと進む。
【0029】
ステップS62では計画部28が、出力電圧監視部52で監視されている現在時刻tまでの太陽電池の出力電圧V(t)が、最大動作点電圧値Vmaxに所定値ΔV>0を加算した値Vmax+ΔVまで上昇し、現時刻tにおいて上回っているか(V(t)>Vmax+ΔVとなっているか)否かを判定し、肯定判定の場合はステップS63へと進み、否定判定の場合はステップS65へと進む。ステップS65では、(ステップS63へ進んだ場合とは異なり、)現時刻tにおいてIoT機能部29から別装置40へのデータ送信を行うことなく、ステップS61に戻る。
【0030】
ステップS63では計画部28がIoT機能部29に対して、別装置40へのデータ送信を行うべき旨の指示を行うことで、当該指示に従う形でのデータ送信が、受信部21で受信されている太陽電池の出力電圧を用いることによって行われてから、ステップS64へと進む。ステップS64は、出力電圧監視部22において、当該データ送信に電力が利用されたことによって太陽電池の出力電圧が低下したことを確認して、ステップS61へと戻る。(なお、このステップS64は、端末装置20における自発的な処理のステップではなく、ステップS63の処理の結果として出力電圧が低下する現象が発生することを確認的に表現したものである。)
【0031】
図6は、以上の図5のフローによって実現される、太陽電池の出力電圧の挙動(出力電圧監視部22において常時監視している結果として得られる挙動)の模式的な例を示す図であり、フローF51が適用され続けている間にはグラフ例EX61の挙動となり、フローF52が適用され続けている間にはグラフ例EX62の挙動となる。
【0032】
グラフ例EX61では、フローF51の適用により、環境の照度が比較的低い場合であっても、出力電圧が最大動作点電圧からあまり下がりすぎないようにすることで太陽電池からの発電電力を可能な限り効率的に活用しながらも、できる限り高い頻度で、端末装置20に課せられた役割であるデータ送信の処理を断続的に実行することが可能となる。
【0033】
グラフ例EX62では、フローF52の適用により、環境の照度が比較的高い場合に、出力電圧が最大動作点電圧からあまり上がりすぎないようにすることで太陽電池からの発電電力を可能な限り効率的に活用して、且つ、比較的高い照度によって豊富に利用可能な太陽電池からの発電電力を活用して高頻度に、端末装置20に課せられた役割であるデータ送信の処理を断続的に実行することが可能となる。
【0034】
なお、図5のフローにおける最大動作点電圧Vmaxは、特許文献1の手法と同様に、環境情報取得部24から取得される現時刻tでの日照量L(t)の関数Vmax(L(t))として、あるいは、さらに同様に取得される現時刻tの温度T(t)も追加された関数Vmax(L(t),T(t))として、環境情報を当該関数を表現した所定のマップ情報と照合して、計画部28において取得した値を利用すればよい。
【0035】
図7は、図5の実施形態(第1実施形態とする)の変形例(第2実施形態とする)によって実現される太陽電池の出力電圧の挙動(出力電圧監視部22において常時監視している結果として得られる挙動)の模式的な例を示す図であり、図7の例EX71は図6の例EX61と同一であって、低照度の場合の挙動である。一方で、図7の例EX72及び例EX73は、図6の例EX61における高照度の場合に対応しているが、これをさらに2段階に分け、高照度のうち低い側を中照度として、例EX72の挙動が、図5の例EX62と同一の挙動として実現されており、一方で、第2実施形態での新たな挙動として、高照度のうち高い側の挙動が例EX73として示されている。
【0036】
ここで、図5及び図6の第1実施形態では、蓄電部23への充電は常に行わない状態において、受信部21で得られた太陽電池の出力電力を全て、端末装置20の稼働に利用すること(端末装置20の稼働電力の全てを太陽電池からまかなうこと)を前提としていた。一方で、図7の第2実施形態は、日照量が特に多いと判定される場合においては、蓄電部23への充電も行うようにするものである。すなわち、図6の例EX62は日照量が多い場合にデータ送信を高頻度に行い、蓄電部23の充電は行わないものとなっており、図7の例EX72は例EX62と同一であるのに対し、例EX73では例EX62とは異なり、日照量が顕著に多いことから、データ送信を高頻度に行い、且つ、蓄電部23への充電も行うようにしている。
【0037】
図7の第2実施形態は、日照量に対する第1閾値TH1と第2閾値TH2(TH2>TH1)を設けて、第1実施形態の変形として次のように実現することができる。
●第1ケース…日照量<TH1の場合、例EX71(例EX61と同一)の制御を行う。
●第2ケース…TH1≦日照量<TH2の場合、例EX72(例EX62と同一)の制御を行う。
●第3ケース…日照量≧TH2の場合、例EX73の制御を行う。
【0038】
第2ケースと第3ケースの場合分けは、図5のフローF52のステップS62が肯定判定の場合の追加処理として行い、第2ケースに該当する場合はステップS63においてデータ送信のみを行い、且つ、蓄電部23の充電は行わないようにし、第3ケースに該当する場合はステップS63においてデータ送信を行い、且つ、蓄電部23の充電も行うようにすればよい。
【0039】
以上、本発明の各実施形態によれば、太陽電池からの給電を受けて稼働するIoTシステム100における端末装置20に関して、太陽電池の発電効率を確保することと、端末装置20の稼働効率を確保することを両立することが可能となる。
【0040】
図8は、本発明の実施形態による効果を模式例EX91として、本発明を適用しない場合の対比例の模式例EX92に対して示す図である。対比例EX92では、本発明の実施形態のようなスケジューリング制御を行わないため、日照量が少ない場合に高頻度すぎる形でデータ送信を行うことにより、太陽電池の出力電圧が最大動作点電圧から顕著に低くなってしまい、最大動作点電圧への回復を待つ時間が発生してしまうことで、データ送信の間隔が不均一となってしまい、且つ、太陽電池の電力も効率的に利用できない形となってしまう。これに対して、本発明の実施形態の実施形態の模式例EX91では、例えば前記第1実施形態により、低照度の際は最大動作点から下がりすぎないように且つ、可能な限り高頻度にデータ送信を行い、高照度の際は最大動作点を上回りすぎないように高頻度にデータ送信を行うことで、太陽電池の電力を効率的に利用しながら、IoTシステム100としての役割を効率的に果たすことが可能となる。
【0041】
以下、種々の補足例、代替例、追加例などについて説明する。
【0042】
(1) 本発明の実施形態によれば、グリーンエネルギーである太陽電池を電源として効率的にIoTシステム100を運用することが可能となるため、地球温暖化の原因となる二酸化酸素の排出を低減することに寄与でき、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」に貢献することが可能となる。
【0043】
(2) 図9は、第3実施形態に係る端末装置20の動作(主として制御部27関連の動作のうち電力制御の場合分け)のフローチャートである。第3実施形態も第1実施形態や第2実施形態と類似の考え方により、IoTシステム100としての機能を、可能な限りにおいて、太陽電池を用いて効率的に実現するものであり、電力制御の場合分けのために時間帯やその他の要因も考慮するのが第3実施形態である。すなわち、太陽電池が置かれている環境の照度(及び温度)に対応する最大動作点の情報と、端末装置20の各種状態(データ送信時であるか、または、データ非送信の待機時であるか、の状態区別と、このデータ送信/非送信と並行して蓄電部23に充電しているか充電していないか、の状態区別によって定まる状態)における端末装置20の所定の消費電力の情報と、により、図9のようにルールベースの場合分けで、電力利用を最適化することができる。
【0044】
図9のフローは、太陽電池の電力が利用できる、夜間ではない日中において実行されるものであり、当該フローを開始するとステップS81では、端末装置20にIoTシステム100において課せられた所定の役割において、時間ごとの別装置40へのデータ送信が不要であるか否かを判定し、否定判定の場合はステップS86へと進み、肯定判定の場合はステップS82へと進む。ステップS86では、最大動作電圧は保持せずに、当該設定されている時間ごとで定期的にデータ送信を行うようにし、且つ、蓄電部23の充電も行うように設定する。ステップS86は、予め設定されているスケジューリングを最優先することで、太陽電池からの電力利用は必ずしも最適化されない場合分け(すなわち、本発明による効率化を選択的に解除する場合)に該当する。
【0045】
ステップS82以降へ進んだ場合は、予め設定されているスケジューリングに幾分か沿わないことになることも許容する形で、電力効率を確保する処理が行われる。ステップS82では現時刻の日照量が第1閾値TH1以上であるか否かを判定し、否定判定(日照量が「小」の場合)であればステップS83へ進み、肯定判定(日照量が「中」または「大」)であればステップS87へ進む。
【0046】
ステップS83では、現時刻が夕方に近いか否かを、現時刻が夕方として設定されている所定の時間帯に該当するか否かによって判定し、肯定の場合(夕方の場合)はステップS84へと進み、最大動作電圧を保持するように蓄電部23への充電を行いつつ、さらに間引かれたデータ送信間隔で、データ送信処理を行うようにする。否定の場合(日中の場合)はステップS85へ進み、最大動作電圧を保持するようにデータ送信間隔を間引いてデータ送信を行うようにし、蓄電部23への充電は行わないようにする。
【0047】
なお、ステップS84とS85の違いは、蓄電部23への充電の有無であり、ステップS84では太陽電池の電力が得られない夜間に備えて、夕方に予め蓄電部23の充電を行うようにしており、この結果として、ステップS85よりもデータ送信頻度が下がることとなる。
【0048】
ステップS87では、現時刻の日照量が第2閾値TH2以上(前述の通りTH2>TH1で設定しておく)であるか否かを判定し、否定判定(日照量が「中」の場合)であればステップS88へ進み、肯定判定(日照量が「大」の場合)であればステップS90へ進む。ステップS90では、日照量が豊富であることから、最大動作電圧を保持するようにして蓄電部23への充電を行い、且つ、定期的に(予め設定されているスケジュールを破らない形で定期的に)にデータ送信を行うようにする。
【0049】
ステップS88では、現時刻が夕方に近いか否かを、現時刻が夕方として設定されている所定の時間帯に該当するか否かによって判定し、肯定の場合(夕方の場合)はステップS89へと進み、最大動作電圧を保持するように蓄電部23への充電を行いつつ、さらに間引かれたデータ送信間隔で、データ送信処理を行うようにする。否定の場合(日中の場合)はステップS91へ進み、最大動作電圧付近を維持するように定期的に(予め設定されているスケジュールを破らない形で定期的に)データ送信を行うようにし、蓄電部23への充電は行わないようにする。
【0050】
なお、ステップS89とS91の違いは、蓄電部23への充電の有無と、予め設定されているスケジュールに即さない/即する、の違いであり、ステップS89では太陽電池の電力が得られない夜間に備えて、夕方に予め蓄電部23の充電を行うようにしており、この結果として、ステップS91よりもデータ送信頻度が下がることとなる。
【0051】
(3) <ハードウェア構成>
図10は、一般的なコンピュータにおけるハードウェア構成の例を示す図である。端末装置20は、このような構成を有する1台以上のコンピュータ装置70として実現可能である。なお、2台以上のコンピュータ装置70で端末装置20を実現する場合、ネットワーク経由で処理に必要な情報の送受を行うようにしてよい。コンピュータ装置70は、所定命令を実行するCPU(中央演算装置)71、CPU71の実行命令の一部又は全部をCPU71に代わって又はCPU71と連携して実行する専用プロセッサとしてのGPU(グラフィックス演算装置)72、CPU71(及びGPU72)にワークエリアを提供する主記憶装置(メモリ)としてのRAM73、補助記憶装置(ストレージ)としてのROM74、通信インタフェース75、ディスプレイ76、マウス、キーボード、タッチパネル等によりユーザ入力を受け付ける入力インタフェース77、環境情報取得部24のセンサを構成することができるセンサ類81とこれらの間でデータを授受するためのバスBSと、受信部21、出力電圧監視部22及び蓄電部23を構成することができる電源関連回路82とを備える。
【0052】
端末装置20の制御部27は、各部の機能に対応する所定のプログラムをROM74から読み込んで実行するCPU71及び/又はGPU72によって実現することができる。なお、CPU71及びGPU72は共に、演算装置(プロセッサ)の一種である。ここで、表示関連の処理が行われる場合にはさらに、ディスプレイ76が連動して動作し、データ送受信に関する通信関連の処理が行われる場合にはさらに通信インタフェース75が連動して動作するようにしてよい。
【符号の説明】
【0053】
100…IoTシステム、10…太陽電池設備、20…端末装置、40…別装置
11…発電部、12…出力部、21…受信部、22…出力電圧監視部、23…蓄電部、24…環境情報取得部、25…日照情報取得部、26…温度取得部、27…制御部、28…計画部、29…IoT機能部
図1
図2
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図5
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図8
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図10